これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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別れ

 三代目を見送った後、トビラと大蛇丸は研究室を出てオビトのいる病室へと向かった。

 その道中、トビラの自宅近くを通ったのだが、その時にトビラはチャクラ感知に妙なものが引っかかったことに気づいた。

 

――これは……まさか兄さん?!

 

「どこへ行くの? トビラ君」

「俺の家だ。少し寄り道をする」

 

 トビラは仕方なく大蛇丸を連れたまま自宅へ向かった。

 そして彼の予想通り、そこにはオビトがいた。

傍らには事切れた祖母、そしてシスイとイタチも。

 

「兄さん」

 

 トビラの声にオビトが顔を上げた。

 その顔は涙でぐしょぐしょになっていた。

 

「トビラ。ばあちゃんが死んだ」

「そのようだな。シスイ、おばあ様はいつ?」

「ついさっき。オビトと話した後に……なあ、トビラさん。オビトが生きていたこと、知ってたんですか? いつから?」

 

 トビラはシスイの質問には答えず、オビトの隣に腰を下ろし、祖母の顔を見た。

 安らかな死に顔だ。

 何も言わない弟にオビトが言った。

 

「トビラ。お前の代わりに俺が見送った。ばあちゃん、お前のこといつでも見守ってるってよ」

「……そうか。ありがとう、兄さん」

 

 寄り添う双子の背後から、今度はシスイがトビラに詰問しようとしたところをイタチが止めた。

 

「シスイ。遺族の語らいを邪魔するな。無粋だ」

「っ……」

 

 シスイ自身も分かっていることだった。

 それでも6歳の少年には受け入れるには難しいことばかりだった。

 親しんでいたおばあちゃんが死んだことも、死んだと思っていたオビトが生きていたことも、トビラがそれを黙っていたことも、そしてオビトの祖母がオビトをオビトと気づかないまま死んでしまったことも。

 

 オビトと初対面で、オビトの祖母とも入れ込むほどの交流が無かったイタチはフラットな気持ちでシスイのそばにいた。

 そして大蛇丸は部屋に入らず廊下からそんなうちはの少年たちを眺めていたが、おもむろに声をかけた。

 

「オビト君、死に目に会えただけ良かったわね。見送りが済んだなら君は帰るべき場所へ行かないと」

「オビトが帰る場所はこの家だろ。というかあなたは誰ですか」

 

 シスイの問いに大蛇丸は笑みを浮かべただけで、こちらも答えはしなかった。

 

「トビラ君。この子たちにオビト君を見られたけどどうする気? 子供は口止めなんかできないわよ」

「シスイもイタチも年の割に聡明だ。二人とも、兄さんのことは他言無用で頼む」

「そもそもオビトに何があったのか……顔の傷のこともなんも聞いてないですよ。教えて下さい」

「時期が来れば分かる。今はただ、おばあ様を俺と見送ったことにしてくれ」

「おばあちゃんを見送ったのはオビトです。あなたは間に合わなかった」

 

 トビラを責めるように見つめるシスイにオビトが口を挟んだ。

 

「いや、トビラも間に合ったんだよ。シスイ、俺すぐ元気になっからさ、そしたらまた手裏剣術の修業も見てやるよ。だから今はトビラの言う通り、内緒にしてくれよ」

「オビトはそれでいいのかよっ?! もっと早くトビラさんがオビトのことをおばあちゃんに教えていれば……それかオビトをここに連れて来ていれば」

 

 言い募るシスイを傍らのイタチが止めた。

 

「シスイ、やめろ。何か事情があるのなら俺らが口を出すべきではない。トビラさん。このことは俺の父にも内緒ですか?」

「ああ。フガクにもまだ言わないでくれ」

「そうですか。シスイ、俺らはもう帰るぞ」

 

 3歳のイタチがスタスタとシスイを引っ張りながら歩き、出て行った。

 シンとした部屋の中でオビトが明るい声で言った。

 

「いやぁ、アイツ……イタチだったか? まだちいせーくせにしっかりしてて、なんか昔のトビラみてーだな! はは! はは……」

 

 オビトの笑い声が虚しく響き、そしてまた部屋は静かになった。

 大蛇丸は彼の言葉には触れず、トビラへ言った。

 

「オビト君は私が連れて行ってあげるわ。ちゃんと綱手の待つ病室にね」

「うわ! 俺、こっそり抜け出したんだけど綱手のおばさんまだ気づいてねーといいなぁ!」

「残念だけど、綱手はこっちに向かっているみたいよ。ふふ……早くしないとこの家にも来ちゃうわね」

 

 大蛇丸は腕から出す白蛇を撫でながら言った。

 それを見たトビラは、

 

――蛇に綱手を監視させていたのか。

 

 と大蛇丸の手法に気づいた。

 

「兄さん、大蛇丸と共に綱手の病室へ。俺はおばあ様の葬儀の準備をする」

「悪いな、トビラ。全部任せちまって……あとさ、シスイの言っていたこと気にするなよ。……俺がもっと早く里に戻れていれば間に合ったことなんだから」

 

 押し殺したように言いながらそっぽを向いたオビト、そんな兄を後ろから見つめるトビラ。

 そっくりな三つ巴の写輪眼が二人の目に灯っていたことに気づいたのは大蛇丸だけだった。

 

 こうして大蛇丸とオビトは家を出ていき、途中で綱手と合流して病室へと戻った。

 オビトを連れ去ったと勘違いした綱手が本気のパンチを繰り出したことで大蛇丸が危うく死にかかったり、オビトを脱走させてしまったシズネがガチ泣きしたり、今度は本当にオビトが綱手にベッドへ沈められたり、火影を打診された自来也がブチギレ状態で大蛇丸のところへ乗り込んだり、となんやかんやあった。

 

 その裏でトビラは粛々と祖母の死を見送った。

 即日で行った簡易的な葬儀にはトビラとフガク、シスイとイタチが参列したのだった。

 




1月も終わるのでこのお話もここでエタります。
今までのご愛読ありがとうございました。

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