これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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オビトたちがミナト班になってからそう時間が経ってないぐらいの時系列。
2023年7月17日に発売されたジャンプに
ミナト外伝が載った記念。


ミナト外伝が出たね(番外編)

 

 オビトは走っていた。

 汗まみれになりながら、ただひたすらに走っていた。

 

「ん! ようやく来たね、オビト」

 

 ミナトとの待ち合わせ場所に到着したオビトは手に膝をつき、荒くなった息を整えた。

 いつもは任務の集合に遅れたオビトを責めるカカシも今日はいない。

 

「じゃあさっそく始めようか。君と俺の修業をね」

 

 なぜなら今回の目的は任務じゃないからだ。

 

「押忍!」

 

 汗を乱雑に手でぬぐったオビトは張り切って返事をした。

 

「ミナト先生! 俺に飛雷神を教えてよ!」

「飛雷神を? ……そういえばオビト。君は時空間忍術を使う巻物を持っていたね」

「これだろ?」

 

 オビトが出した巻物はかつて弟のトビラがアカデミーの卒業祝いにくれたものだった。

 すでに下忍になっていたトビラが任務の合間を縫って修行に付き合ってくれたおかげでオビトはすでに手裏剣の口寄せを難なく使いこなせるようになっていた。

 任務で一緒のミナトも当然、オビトが巻物を使えることは知っている。

 

「ん! 手裏剣の口寄せが使えるということは時空間忍術の基礎はできている」

「へへっ? 先生もそう思う? まあ俺、エリートのうちは一族だしさ、トビラの兄ちゃんだし……」

「けど、改善点も多いって話は前にもしたよね」

「…………」

 

 調子に乗りかけていたオビトはすぐに黙った。

 実は任務で巻物を使った時にもたついて動きが止まってしまい、そこを狙って敵に攻撃されそうになってしまった。

 運よく近くにいたカカシが助けてくれたのだが、ムカつく嫌味も言われてしまったためオビトにとっては屈辱的な思い出となっている。

 その時、ミナトから巻物を使うタイミングを見極める大切さやすぐに動けるように意識を保つ重要さは説かれていた。

 

「オビト、飛雷神を使えるようになりたいなら、常に考えながら戦う必要がある」

「考えながら?」

「ああ。飛雷神はこのマーキングの先にしか飛べない」

 

 ミナトが見せたのはオビトも見覚えがあるマーキング付きクナイだ。

 他の忍たちが使っているものとは違い、剣のような特殊な形をしている。

 そして、持ち手には何やら落書きのような特殊な文字が書かれた札が巻かれている。

 

「だから、このクナイをどこに飛ばすか」

 

 ミナトは近くの森に持っていたクナイを飛ばした。

 グサッと刺さった音がした。

 

「そしてどのタイミングで自分自身が飛ぶか、常に考える必要がある。敵の動きを予測しないといくら飛んだって攻撃が当たらないからね」

「でも先生。俺だって任務の時はいっつも考えながら戦ってるぜ。じゃねーと死んじまうよ」

「ん! そうだね。だからこれからやるのは忍として必須の能力を高める修行だ」

「おお! やっと本題になったな! んでんで! どんな修行なんだ?」

「これだよ」

 

 そう言ってミナトが取り出しのは鈴だ。

 

「え……まさか鈴取り合戦? また?」

「以前やった時のことは覚えているね? ルールはその時と同じだよ」

「そんなのすぐ終わっちまうぜ」

「なら始めようか。期限は日が沈むまで……始め!」

 

 ミナトがそう言った瞬間、オビトの目の前から姿を消した。

 

「ええ?! え? ミナト先生?! どこ行ったんだ?!」

 

 突然のことに戸惑ったオビトだが、すぐに思い出した。

 

「あ! さっきのマーキング付きクナイ! 森の中か!」

 

 説明の最中にミナトが飛ばしたクナイの場所へとオビトは向かった。

 だが、すでにそこにミナトの姿はなく、クナイだけが残されていた。

 

「どこ行ったんだよ! クソッ! 飛雷神じゃどこに逃げたのか痕跡も辿れねー!」

 

 辺りを見渡し、嘆いたオビトは思い至った。

 

「まさかこれ……逃げ続けるミナト先生から鈴を取れってことか?」

「ん! その通り」

 

 突如現れたミナトにオビトは反応しきれず、気づけば首元にクナイが向けられていた。

 

「オビト、マーキングがあるってことはいつ俺が飛んできてもおかしくないってことだよ。それを意識していないとこういった攻撃に反応できない」

「はは……は……」

 

 タラーと冷や汗がオビトの汗を伝った。

 戦場で活躍する『木の葉の黄色い閃光』については弟のトビラからも聞いたことがある。

 姿を見たらすぐ逃げろ、と他里で言われるぐらいに恐れられていることも。

 オビトはその理由を少し体感出来たような気がした。

 

「これが戦場なら君はここで終わりだ。油断はいけないよ」

「……はい」

「同じことが3回続いたら今日はそこで終わりにしよう。飛雷神を使う代わりに俺が動く範囲は森の中だけにしておくよ。いいね?」

「……3回もいらねーよ」

 

 苦し紛れの強がりにミナトは苦笑し、そしてまた姿を消した。

 アカデミー卒業したばかりの頃にやったことのある鈴取り合戦を侮っていたオビトだったが、もう油断はしていなかった。

 いつ、さっきのように急にミナトが現れて攻撃をしてくるか分からない。

 

「つまりクナイのそばにはいない方がいいってことだよな」

 

 オビトは森の中を駆け、他にクナイが刺さっている場所がないか探すことにした。

 

「感知タイプのトビラならミナト先生がいる場所も探せるかもしれねーんだけどなぁ……それか写輪眼が開眼してれば……」

 

 あいにく、この時のオビトの両目はただの黒目。

 そして感知も使えないため、他の手段でミナトを探すしかない。

 

「ミナト先生のクナイ、見つからねーなぁ……あ! あった!」

 

 木の根元に刺さっていたのは特徴的な形のクナイ、さっき見たばかりのものと同じだ。

 

「あのクナイのそばにいたらまたすぐに移動されちまうからな。ちょっと距離を取っておかねーと……」

「オビト、注意深く観察することも忍に必要なことだよ」

「え?! な、なんで?!」

 

 オビトの後ろの木にクナイは刺さっていなかった。

 いつ、前方に刺さったクナイからミナトが出て来ても反応できるように注意していたのに、彼はなぜかオビトの真後ろから現れ、そしてまたしても首元にクナイを向けて来ていた。

 

「よく見てごらん。あのクナイにマーキングはついていないよ」

「……あ!」

 

 よくよく持ち手のところを見ると、札がついていない。

 つまり、マーキングがされていないただの変な形のクナイというわけだ。

 

「でもミナト先生、いったいどっから出て来たんだよ! 気配なんか感じなかったぞ!」

「後ろを見てみるといいよ」

 

 ミナトがそう言うので、クナイを突き付けられたまま恐る恐る後ろを振り向いた。

 

「あ!」

 

 オビトの後ろの木の幹に落書きがあった。

 

「クナイにしかマーキングが出来ないとは言っていないからね」

「ず、ずりーよ! そんなこと言ったらいつどこから先生が出て来るか分からねーじゃねーか!」

「だから常に考えなきゃね。それにチャクラには限りがあるから俺も無限大に飛雷神が使えるわけではないよ」

「んなこと言ったって……」

 

 ミナトの言い分を理不尽に思えてしまうのも無理はなかった。

 そもそも、他里の上忍でさえ神出鬼没なミナトを攻略できないからこそ、「見かけたら逃げろ」と言われているのだ。

 下忍のオビトが反応できないのもわけない。

 

「そういえばオビト。3回もいらないって言っていたけど、もう1回目は終わったね」

「っ! 次はねーよ! ぜってー先生の鈴、取るんだからな!」

 

 だが、オビトの士気は下がっていなかった。

 少年の身体故の小ささを利用し、身をかがめてミナトのクナイから逃れ、距離を取った。

 

「火遁・豪火球の術!」

 

 彼の口から放たれる火球、それがミナトに当たることはない。

 術を出したばかりのオビトはすぐさま後ろを振り向き、通常の形のクナイを振り上げた。

 カチン、と金属がぶつかる音がした。

 

「ん! 次は反応できたね」

「隙ができやすいのは巻物を使った時だけじゃねーってことぐらい、俺でも分かるぜ!」

 

 オビトは元気よく言うものの、調子に乗ることはなくミナトの攻撃に集中していた。

 しばらくクナイ同士で打ち合った後、ミナトはまたしても姿を消した。

 

「マーキングのない場所に移動した方がいいと思っていたけど……むしろマーキングの側にいた方がいいんじゃねーか?」

 

 オビトは森の散策をやめ、マーキング付きクナイのある初めの場所に戻った。

 

「ミナト先生はこのマーキングの先に来るってことだろ? なら……」

 

 オビトはアカデミー生の頃から弟のトビラやカカシと共にトラップづくりをしていた。

 特にトビラはなんてことない素材でえげつないトラップを作るのが得意で、オビトも当然その作り方を覚えていた。

 

「へへへ……」

 

 トラップづくりをしている最中も警戒していたものの、ミナトの襲来は無かった。

 そしてそう時間もかからずに目的のものは完成した。

 

「先生がこのクナイに飛んできたら俺の勝ちだぜ」

 

 オビトはトラップを仕掛けた木の根元にマーキング付きクナイを刺し直した。

 ミナトが飛雷神でその場に現れ、地に足をつけた瞬間にたちまちトラップが発動し、釣り上げられた魚のように木の枝に仕掛けてあった網で捕まえられてしまうだろう。

 さらには手裏剣も迫ってくるようにしておいた。

 手裏剣と罠、両方に意識をとられているうちにオビトは鈴を取る。

 完璧な計画だ。

 

「これでいつ来てもいいぜ!」

 

 オビトが待ち望んだ展開はすぐに来た。

 彼が計画した通りにミナトが罠の木の下に現れたのだ。

 が。

 

「あっ?!」

 

 空中に姿を現したミナトは地面に足をつけることなく、クナイの上に片足を置いてバランスを取った。

 罠の発動条件は地に足をつけること。

 そのため、網も手裏剣も飛んでくることはない。

 

「あぶねっ!」

 

 さらにはミナトが持っていたクナイをオビトに投げつけて来た。

 すんでのところでそれを避けた。

 その時、オビトの視界の隅に見えたのは投げつけられたクナイに施されたマーキング。

 

(ミナト先生がまたこっちに来るっ!)

 

 せめて後ろを取られないように身構えるオビト。

 その目の前にミナトが現れ、オビトに触れた。

 

「ん?」

 

 気づけばオビトは木の下にいた。

 飛雷神で飛ばされたと気づいた時、その足は地面についていた。

 

「ぬぁあああーーーーっ!!!」

 

 迫りくる網、さらには手裏剣。

 目の前にいたミナトはシュンっと姿を消していた。

 どうやらミナトがオビトを木の下に連れて行き、自分だけさっさと罠から逃げたようだ。

 木の下に現れた後にクナイを投げ、それを頼りにオビトに触れ、また木の下にオビトだけ置いて自分だけは投げたクナイのある場所に戻る。

 そんな短距離の往復ではあるものの、ミナト本人以外は追いつけないぐらい高速な移動が行われていた。

 

「やべーっ!」

 

 仕掛けた罠に自分で引っかかる形となってしまったオビトはせめて手裏剣だけは叩き落としたものの、網から逃れることはできなかった。

 オビトの罠を利用したミナトは投げたクナイを回収し、罠の下に来た。

 

「この短時間の割にはしっかりとした罠だ。けど、強力な術や罠はカウンターを受けた時にダメージになりやすいから注意が必要だね」

「くっそーーー! ミナト先生! こんな罠すぐに抜け出すからそこで待っててくれよ!」

 

 もがくオビトにミナトは首を振った。

 

「いや、ここまでだ」

 

 ミナトがあっさりとクナイで網を切ったため、オビトはずてっと顔から落ちた。

 が、そんなことも気にせず師に食らいつく。

 

「なんでだよ! 今のはさっきまでみたいにクナイ首に当てられてねーだろ! 俺はまだやれるぞ!」

「その背中をどうにかするのが先だ」

 

 ミナトが指すオビトの背には手裏剣が深々と刺さっていた。

 全部叩き落としたつもりだったが、網に気を取られたせいで防ぎきれていなかったようだ。

 

「こんな怪我どうってことねーよ! 俺は火影になるんだ! こんなのでいちいち止まってられるかよ!」

「体調管理も忍には必須だよ、オビト。それにすまないが俺の方も日が沈むまで付き合っていられなくなったみたいだ」

「え?」

 

 首を傾げるオビトの元にガサゴソと人が近づく音がした。

 

「あ、いたいた! おーい!」

「リン! なんでここに?」

「オビト、修行頑張ってる? それとミナト先生、火影様がお呼びみたいですよ」

「ん! わざわざ呼びに来てくれたんだね。リンもカカシもありがとう」

 

 手を振り駆け寄るリンの後ろにはカカシもついていた。

 今日のミナト班は休みだ。

 

「なんでカカシがリンと一緒にいるんだよ!」

「ミナト先生を探すリンを手伝っていたんだよ。お前、先生と修行するって自慢していたからどうせここだろうとは思っていたけど……何やってたの?」

 

 カカシが胡乱げに見る先にあったのは半壊したトラップとボロボロのオビト。

 

「うっせーな! すっげー修行してたんだよ!」

「自分の罠に自分で引っかかったようにしか見えないけど……」

「なっ! そういうんじゃねーよ! これはだな……」

「オビト! 怪我してるよ!」

 

 オビトの背に気づいたリンが駆け寄った。

 

「リン、カカシ。オビトを救護室に連れて行ってあげてね」

「はい!」

「先生! 俺は別にこんぐらいの傷……」

 

 オビトの言い訳も聞かず颯爽と姿を消したミナト、そして残された3人。

 医療忍術を習い始めたばかりのリンでは治せない傷のため、結局オビトはとぼとぼと救護室へ向かうこととなった。

 

(こういう時は気を遣って俺とリンを二人っきりにしろよ、バカカシ……)

 

 怪我して格好の付かないところを見られた恥ずかしさもあり、オビトは恨みを込めた視線をカカシに送る。

 が、オビトの願いもむなしく、結局リンと二人っきりになることはなく、さらにはカカシに勝負を挑むガイが乱入してくるなど騒がしい一日の終わりとなったのだった。

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