これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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ワシはあやつが好きじゃ

 木ノ葉隠れの里にほど近い場所にある大名殿では重大な会議が開かれていた。

 

「火影の退任なんて何もこのタイミングでしなくても良いと余は思うのだがのう」

 

 集まっているのは三代目火影と相談役のコハル、ホムラ、上忍班長のトリフ、暗部のまとめ役のダンゾウ、そして火の国の大名とその側近たちだ。

 のんびりと呟く大名にコハルとホムラが言い返した。

 

「大名様、今だからこそでございます」

「うちはマダラの脅威がある今、三代目はマダラの方に専念し、里は次なる火影に任せたいと考えております」

 

 さらに大名の側近たちが口々に言い合った。

 

「うちはマダラとはまた懐かしい名を……」

「初代火影が殺したのではなかったのか?」

「何かと曰くのある者であった。蘇ってもおかしくはない」

 

 ヒソヒソ言い合う側近たちを尻目に大名が尋ねた。

 

「しかし、三代目よ。今回は確実に死んだのであろう?」

「ええ。里の者が死体を確認しております。ですが、マダラの行動には不可解な部分が残っております。それをワシは弟子と共に探りたい」

 

 三代目の言葉に大名は眉を寄せた。

 

「ふーむ……うちはマダラと言えば忍の神とも謳われた初代と唯一張り合った伝説の忍。確かに今の世で張り合えるとしたら三代目のお主ぐらいしかおらぬだろうのぅ」

 

 議会の中心に位置する大名は扇を閉じた。

 

「仕方あるまい。して、次の火影は誰がおる? 白い牙かえ?」

「いえ、サクモではございません」

「ならば自来也かえ? ワシもせがれもあやつが好きじゃ」

「自来也でもありません」

 

 首を振る三代目に大名の側近たちがざわついた。

 

「白い牙でも、三代目の弟子の自来也でもないなら誰がいる?」

「同じく三代目の弟子の大蛇丸か?」

「いや、綱手かもしれん」

「三代目よ、じらすでない。誰が火影となるのじゃ?」

「波風ミナトを推薦いたします」

 

 ざわついていた側近たちの間から「ああ」と納得の声が漏れた。

 と同時に、その表情には戸惑いもあった。

 

「波風ミナト……黄色い閃光か」

「此度の大戦では何度も戦況を変えたと聞く」

「確かに実力はある。名声もある。そして徳もある」

「しかしあまりにも若すぎないか?」

「白い牙も自来也も押しのけて火影にさせるのは……」

「さらに次の世代を担う者として今はまだ経験を積ませるべきでは……」

 

 大名たちと似たような反応はすでにホムラ達もしていたため、誰もが思うことなのだろう。

 それでも三代目は大名に主張した。

 

「ミナトは確かに若いが里を任せるに値する忍でございます」

「大名様、三代目だけでなく先ほど名前の挙がった自来也、はたけサクモもミナトを推薦しております」

「上忍班長としても波風ミナトに異論はありません」

 

 三代目の言葉をコハル、トリフが後押しした。

 そしてホムラが繋げた。

 

「里の体制は二代目を亡くした時とは全く違います。今ならば三代目も我々相談役も後ろに控えております」

「ふむ……波風ミナトは誰の弟子であったかえ?」

「自来也の弟子でございます」

「おお! そうであったか! ならば問題ないの。よし、では四代目火影は波風ミナトに任命する」

 

 大名たちも納得の上で議会は終わった。

 里に戻りがてらコハルがぼやいた。

 

「あとは里の者たちによる信任投票か。やれやれ、あまりに目まぐるしいことよ」

「仕方あるまい。のんびりやって何か手遅れになっては里の危機なのだから」

「皆には苦労をかけるの。しかし、ホムラの言う通り手遅れがあってはならんことじゃ」

「問題はこの後だ。確実に里の意見は割れるぞ。確かにミナトはこの大戦で活躍していたがそれ以上に活躍した者がいるのだからな」

 

 トリフの懸念は他の者たちも分かっていた。

 そのためコハルが念を押すように三代目に尋ねた。

 

「本当にはたけサクモは波風ミナトを推していたのだろうな? 今さら本人が立候補してきたら我らがここまで骨を折った意味がなくなる」

「サクモは以前より火影を継ぐ意思はない。それほどにあの時の任務の失敗を悔いておる」

 

 相談役たちが揃って渋い顔をしている中、ダンゾウは無表情のままで言った。

 

「口ではどうとでも言える。まさか殊勝な態度で騙されたのではないだろうな」

「ダンゾウ、ワシはサクモを信じておる。もしわだかまりが生じればワシが対応しよう」

「上忍衆もサクモの名を挙げる者がいたとしてもミナトを反対する者はいないだろう。トリフ、もしも対応に困ることがあるならワシらも説得する」

 

 トリフはホムラの言葉に首を振った。

 

「いや、そこまでの必要はない。お前の言う通り、ミナトも信頼を集めている。本人たちの意志が分かれば上忍衆も納得するだろう」

「次期火影を選ぶのに困るほど次なる芽が育っている、これは悪いことではなかろう。ではこのまま皆を集めるとしよう」

 

 一刻もしないうちに、里にいた上忍衆が集められた。

 その中には上忍のトビラとカカシの姿はあったが、サクモと自来也たち三忍はいない。

 そしてミナトは火影のすぐそばに控えていた。

 

 三代目が退くことにも、次の火影候補にミナトが上がっていることにも上忍たちは驚きどよめいた。

 信任投票は後日行われるということですぐに解散となったが、衝撃の連続にいくら上忍でも動揺を隠せない者ばかりだった。

 

「てっきり白い牙が名指しされるかと思っていたが……」

「やはり数年前のあの任務のせいじゃないか?」

「しかし今回の大戦での活躍が……」

 

 ざわめく会議室を早々に出ようとしたトビラだが、奈良シカクに声をかけられてしまった。

 

「よぉ。お前の担当上忍が火影になるみてーだな」

「俺の、というよりミナトは兄さんの担当上忍だな」

「それとカカシのな」

 

 ふと、トビラはシカクの見解が気になった。

 

「ミナトが四代目になることについて貴様はどう思う?」

「ん? 妥当な判断だと思うぜ。サクモさんが英雄であることに違いはねーが、今の状況の火影ならミナトの方がいいだろう」

「ほぉ」

「忍界最強の三代目が退くとなれば必ず雲隠れはちょっかいかけてくる。便乗して岩隠れ辺りも」

「その可能性は高いだろうな」

「いくら五大国最強とは言え、火の国も疲弊している。どうやら三代目は是が非にも戦争を止めてーらしい。だとしたら、休戦の抑止力としては雷影と互角に戦い、岩隠れにも打撃を与えていたミナトの方が最適だ」

 

 マダラが生きていたことも大蛇丸の実験のことも、オビトが生きて戻ってきたことも上忍たちは知らされていない。

 その中で出したシカクの見解は説得力があった。

 

(さすがは奈良家の次期当主と言ったところか……)

 

 シカクはミナトと年が近い。

 彼も木ノ葉の里を支える重要な忍となるだろう。

 

「ま、それに火影様方のことだ。俺らにも言えねークソめんどくせー理由が色々あるんだろうよ」

 

 最後の言葉はトビラに聞こえるか聞こえないかギリギリの大きさだった。

 

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