これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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戦犯、大蛇丸!

 マダラの近くから現れたオビトは目を見開いたまま声も出なかった。

 トビラももう誤魔化しようが無かった。

 それよりも、マダラへの憎悪に近い怒りを抑えられなかった。

 

「マダラ! 貴様、兄さんに何を吹き込んだ?!」

「吹き込んだ? 俺はただ教えてやっただけだ。真実を。俺を呼び出したオビトの願いのままにな」

「兄さんが貴様を呼び出した……?」

 

 今のマダラは死んだときの老人姿ではなく、若いころの姿の穢土転生体だ。

 てっきりゼツがマダラを呼び出したのかと思ったトビラだが。

 

「僕は穢土転生なんてできないヨ~。やり方を知らないからネ」

「兄さんだって知らないはずだ! それは俺の術だ」

 

 言い切ったトビラにピクリとオビトの肩が動いた。

 マダラの口元にふっと嘲笑が浮かぶ。

 

「扉間……禁術の記録は徹底的に消しておくべきだったな。いや、消したのに掘り起こされたのか?」

 

 チラリと大蛇丸の秘密の研究室がある方を向くマダラ。

 それだけでトビラは察した。

 

「まさか大蛇丸の研究結果でも盗み見たか。あやつめ……俺の穢土転生の研究までしていたとは」

「俺の知っている穢土転生とは少々勝手が違うがな……」

「僕もまさかオビトが穢土転生するなんて思わなかったヨ~! 僕らの仲間を生贄にした時はびっくりしちゃった。意外とひどい奴なんだネ」

 

 穢土転生を開発したのは千手扉間だ。

 トビラは自分以外が行った穢土転生を慎重に観察した。

 

(マダラの人格が縛られていない。大蛇丸め、独自の穢土転生を生み出していたのか。そもそも穢土転生には素体が……生きた人間が必要だ。ゼツの仲間ということは柱間細胞の人造体を使ったのか? そして穢土転生自体はマダラの指示ではない……)

 

 思いもしない状況だが、トビラは努めて冷静であろうとした。

 

「確かに俺の中には二代目火影千手扉間としての意識はある。それについては後で話をする。うちはオビト、ひとまずマダラから離れこちらへ来い。そいつは里に仇なす者だ」

「お前……やっぱりトビラじゃなかったんだな……」

「分かっただろう、オビト。これがお前の弟の正体だ。いや、弟を殺した男、とでも言うべきか」

 

 トビラは焦っていた。

 いつものオビトなら弟の言うことを信じてくれるのに、もう彼はトビラを弟と見ていなかった。

 だからせめてかつて里を守っていた火影として呼びかけたのだが、オビトはむしろマダラに懐いていた。

 その事実が余計にトビラを苛立たせる。

 

(どうにかしてオビトとマダラを離さなければ)

 

「オビト、こうなっては死以外にお前の弟を救うことはできない。あの身体はもう扉間のものだ」

「俺は……」

「お前がやらないなら俺がやってやろう。せめてもの情けだ」

 

 オビトが言い切らないうちにマダラがトビラに襲い掛かって来た。

 マダラの蹴り、突き、その一つ一つが重たく速い。

 写輪眼でマダラの動きを読み取ろうとするトビラだが、相手はかつてうちはを束ねていた最強の忍。

 

「写輪眼で俺に勝てるとでも思ったか?」

 

 完全にトビラの動きを読み切ったマダラが彼の首を掴んでぶら下げた。

 さぁっと風が吹き、髪で隠れていたマダラの片目が露わになった。

 

「貴様っ! なぜ片目がない?! あの洞窟では両目があったはずなのに……」

「そう見せていただけだ。そうだな、お前の片目をこちらにはめるとするか」

 

 絶体絶命の状態ではあるがトビラは思案せずにはいられなかった。

 

(マダラの本来の両目は洞窟にいた時からついていなかったということか? まさか両目があるかのような幻術をかけていたのか? 俺が気づかないほど精密に……)

 

 相手に気づかれないよう幻術をかけていたとしたら、マダラが洞窟であっさりとトビラに殺されたのにも合点が行く。

 

(俺に殺されてでも両目の不在を秘密にしたかったということは……マダラの両目はどこか別のところに……もしかすると別の誰かにはまっているのか?)

 

 トビラはオビトに目を向けた。

 

(兄さんではない。他のうちは一族の誰かか……そうじゃない別の者か……)

 

 一瞬のうちに考えを巡らすトビラだが、そもそもマダラの手から逃れられない。

 だが、その時。

 マダラの手首が切り落とされた。

 

「大丈夫か?」

 

 解放されたトビラを抱え、マダラから離れたのはサクモだ。

 振り返り、チャクラ刀を構えてマダラを睨む彼はオビトに気づいて声を漏らした。

 

「あの子はまさか……いや、死んだはずだ」

「サクモ、あそこにいるうちはオビトは本物だ。生きている。だが、その隣にいるうちはマダラは死体だ」

「うちはマダラ?! ……! 切り落としたはずの手首が戻っている? なんなんだ、あれは……」

 

 驚くサクモにトビラは冷静に教えた。

 

「穢土転生の身体では死ぬことはない。塵芥でできたその身体にいくら攻撃を加えようとも元に戻ってしまう」

「術の解除方法は?」

「術者が解術するか、封印するしかない。サクモ、俺とオビトが話す時間を稼いでくれ。あの術はオビトでないと解除できない」

「……分かった。隣にいるあの白と黒の生き物は?」

「あちらは俺の分身がどうにかする。気を付けろ、アイツは土の中を自在に移動する」

 

 サクモに切り落とされた手首が戻ったのを確認したマダラが睨みつけて来た。

 

「木ノ葉の手練れか……お前も舞うか?」

 

 サクモはマダラに斬りかかることで応えた。

 

 

 

 サクモがマダラを誘導するように戦い始めたのを確認したトビラは、分身をゼツに向かわせ、本体はオビトに向かった。

 マダラがトビラやサクモに襲い掛かるのを呆然と見ていたオビト。

 だが、近づくトビラに拒絶を見せた。

 

「来るな!」

「今すぐ穢土転生の術を解け! このままだとマダラは里を襲う。そうなればリンやカカシ、ミナトたちも危なくなる」

「お前……本当に二代目火影なら分かってんだろ。穢土転生は呪印札を使うって。分かるよな? だってお前、俺の心臓にもその呪印札、埋め込んでたもんな」

「マダラがお前に仕込んだ呪印札と同じにするな。あれはマダラがその身体を乗っ取ろうとするのを防ぐためのもので……」

「俺の弟の身体を奪い取ったお前が何を防ぐって言うんだよ!」

 

 トビラは強引にオビトに近づくことはできず、一定の距離を保ったまま話しかけるしかできなかった。

 その間も戦い続けるサクモとマダラ。

 

(正気を失っている。かくなる上は幻術で無理やり解術するしかないか)

 

 双子がにらみ合っている中、トビラの分身はうちは火炎陣でゼツを封じ込めていた。

 

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