これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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老人介護は得意だっただろう

 

 サクモがマダラと戦っている間、ゼツを捕らえたトビラの分身は火炎陣の中に向かって尋ねた。

 

「貴様らの目的は何だ。なぜうちはオビトを狙う」

「僕はマダラに言われたままに動くダケ。オビトだってそうダ。ああなったのは全てお前が招いたことダロウ。だってマダラは嘘はついていないのだからネ」

「恣意的な誘導は見られるがな。そもそも、マダラの言うことを信じることもおかしい。あやつが里に仇なしてきた者だとオビトも知っているはずなのだから」

「そうだネ。オビトも二度とマダラに会いたくなかっただろうヨ。でも、マダラはオビトの命を繋いだ恩人ダ。それにうちは一族の元族長。里がうちはを消すつもりだって知ったら、気になってもおかしくないよネ」

「うちはを消す?」

「二代目火影はマダラを恐れていた。だからうちはも嫌って里から遠ざけた。何か起きたらすぐに滅ぼせるようにネ」

「間違った妄言をべらべらと……そんなバカげたことをオビトは信じたというのか?」

「信じてはいなかったヨ。でも、これで信じただろうネ。だって二代目火影が自分の弟の身体を乗っ取ったんだからネ」

 

 トビラの分身は別の角度から質問した。

 

「穢土転生はマダラの意図になかったことのようだな」

「アア。本当は別の……おっと、いくらこれから死ぬとは言え、そこまで言うのはやめておこう。オビトが研究室に潜り込んだのは柱間細胞のことを知りたかっただけダ」

「大蛇丸の研究室はトラップだらけだ。そう簡単に入れるはずがない」

「写輪眼を見くびってもらっちゃァ困るネ。それにオビトはトラップに詳しかったヨ」

 

 子供のころからトビラとオビト、カカシでトラップ作りをしていた弊害が出ていたようだ。

 

「オビトはお前が千手扉間だって言っても信じようとはしなかった。マダラのことも信用しようとはしなかった。でも、お前が年老いたマダラが命乞いをするのも聞かずに無残に殺したって聞いたら動揺していたヨ。オビトは老人に優しいからネ」

「マダラが命乞い? とんだ嘘をつきおって」

「だけどお前はグルグルを簡単に破壊した。知らなかっただろう。オビトは意外とグルグルを気に入っていたんだヨ。アイツは洞窟でオビトのリハビリを手伝ってやっていたからネ」

 

 洞窟に閉じ込められていたとは言え、死にかけていた自分を助け、リハビリの手伝いまでしてくれた者たちを問答無用に殺したトビラをオビトはどう思っただろうか。

 

「オビトは真実を知るためにマダラを呼び戻した。そしてお前の正体を知った。順番は狂ったけれど、概ね計算通りダ。オビトはうちはマダラとなるのサ」

 

 火炎陣の中でゼツがせせら笑っている間、トビラの本体はオビトと向き合っていた。

 互いに気を抜けないにらみ合いの中、オビトが漏らした。

 

「ばあちゃんはお前をトビラだって信じていた。最期の最期まで、お前を見守るって言ってたのに……ばあちゃんは自分の孫じゃない奴を孫だと思ったまま死んだのか?」

「…………」

「お前、ずっと俺らを騙し続けて何がしたかったんだよ。本当にうちはを内側から滅ぼすつもりだったのか? 里を守るために自分がうちはになって見張り続けるつもりだったのかよ」

「それがマダラから聞いた俺の狙いか。見当違いにもほどがある。そもそも俺のこの身体は不本意だ」

「不本意? それなら今すぐ俺の弟にその身体を返せよ。なあ、すげー術が使えた二代目火影なら出来るんだろ? 俺の弟を返してくれよ」

 

 オビトもマダラから真相を聞かされたばかりで動揺していた。

 目の前の少年が弟の可能性をまだ捨てきれていなかった。

 だが、その希望をばっさりと絶ったのは少年本人だった。

 

「それはできない。今、俺の魂が抜ければこの身体もそのまま死ぬ」

 

 こうなった以上、オビトの弟のふりはできない。

 せめて千手扉間として誠実であろうとした。

 だから、これまで隠し続けた真実をオビトに伝えた。

 

「千手扉間としての意識が芽生えたのは熱に浮かされていた3歳の時だ」

「医者も見放したあの時……死にかけて弱っていた俺の弟の身体に入り込んだのか?」

「俺にそのつもりはなかった。俺とて、すぐに扉間としての魂と本来のトビラの魂を分離させようとしたが……あの幼く脆弱な身体ではどうすることもできなかった」

 

 淡々と述べられる真実にオビトの顔はどんどん情けなく歪んでいく。

 

「なぜ千手扉間の俺がその身体に入り込んでしまったのかは分からないが……狙ってやったことではない」

 

 皮肉なことに、語られた真実がオビトへのトドメとなった。

 

「俺……あの時、トビラが目覚めて……すげー嬉しかったのに……絶対に弟は守るってあの時に決めたのに…………あの時にはもうお前、俺の弟じゃなかったのか…………?」

「………………」

 

 その時、ミナトがトビラのそばに降り立った。

 そして少し離れたところに片目を押さえてうずくまるカカシ、それに寄り添うリンとシズネ、綱手が不安げにこちらを伺っていた。

 

「トビラ、現況を」

「オビトがマダラを穢土転生という術で蘇らせた。今のマダラはどれだけ攻撃しても死なない不死身の身体だ。術を解けるのはオビトしかいない」

「そうか……説得の余地は?」

「俺がうちはトビラでなく千手扉間だと知ったせいか、正気を失っている」

 

 すんなりと話す彼らにオビトも気づいていた。

 絶望の増した表情で呆然と呟いた。

 

「ミナト先生も……知ってたのかよ……俺の弟をそいつが殺したって……」

「オビト! 弟に別の人格が入っていたことは確かにショックかもしれない。けど、君らが積み重ねて来た時間は本物だ。二代目は君の弟として生き、君と共に里を守ることにしたんだ!」

「そのためなら俺の弟が死んでもいいって言いたいのかよ?!」

 

 オビトの写輪眼が絶望に呼応して色濃くなっていく。

 

「カカシ! 待って!」

 

 リンたちのそばにいたカカシが飛び出し、トビラたちの方へ駆け寄った。

 片目を押さえ、苦し気だ。

 

「オビト! ダメだ、戻って来い!」

 

 カカシの声はオビトの叫びに打ち消された。

 

「なんだよ……俺は初めっから守れていなかったのかよ!」

 

 オビトの写輪眼がグルグルと変質し、三つ巴が繋がっていく。

 かつてうちは一族と対立していた千手扉間はすぐに気づいた。

 

――万華鏡写輪眼! このタイミングで開眼するか!

 

 あっという間の出来事だった。

 

「うぁああああああっ!!!」

 

 叫びながらうずくまるオビトの身体から放たれた無数の木。

 力が暴走している。

 トビラはすぐに気づいた。

 

「挿し木の術! ミナト、カカシ! 離れろ! あれに当たったら死ぬ!」

 

 オビトに近い場所にいたトビラとミナトはすんでのところで避けた。

 だが、

 

「うぐっ……」

 

 オビトと同じようにうずくまっていたカカシは動けなかった。

 

――まさか写輪眼が共鳴しているのか?! しまった! 飛雷神を……

 

 トビラと同じことを考えていたミナトもマーキング付きクナイをカカシに放った。

 だが、それよりも挿し木が迫る方が早い。

 

「カカシ……」

 

 さらにそれよりも早い存在がいた。

 カカシの前に現れたサクモであったが、持っていたチャクラ刀で挿し木をはじくことはできなかった。

 代わりに、その利き腕と腹が貫かれた。

 

「父さん!」

 

 父親に守られた息子が叫ぶも、サクモは返事ができなかった。

 メキメキと広がる木が彼の腕と腹を潰していく。

 

「うぐっ……」

「サクモ!」

 

 サクモのそばに現れたトビラはとっさにその木を無理やり引っこ抜いた。

 

――利き腕で挿し木の軌道を変えたか! おかげで身体に刺さっていた部分が少なく済んでいる。だが、それでもこのままでは……

 

 トビラとミナトはどちらともなくサクモ達をリンとシズネの前に連れて行った。

 二人とも急なことに動揺し、特にシズネは呆然としていた。

 

「どうしてオビト君があんなことを……」

「今はそれよりもサクモさんを頼む。君らが頼りだ」

 

 ミナトは一瞬だけ綱手に目を向けたが、大量に出血し息も絶え絶えなサクモを見て震える彼女に何も言わなかった。

 一方、うずくまっていたオビトは顔を上げ、サクモの現状に気づき、そして己が何をしてしまったのか理解した。

 

「あ……ああ…………俺がサクモさんを…………うわぁああああああ!」

 

 すべての現実から逃げるかのように発動された神威。

 その瞬間をトビラは見逃さなかった。

 

――飛雷神の術!

 

 お得意の術でオビトに触れたのはトビラだけではなかった。

 

「今度こそ間に合ってくれ!」

 

 ミナトも共にオビトの神威空間へ吸い込まれていた。

 




次回「サクモ 死なない」デュエルスタンバイ!
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