これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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サクモ 死なない

 サクモが負傷しても大蛇丸は封印の準備を続けていた。

 マダラの塵が集まり切るまで、それがタイムミリットだ。

 危うく蝦蟇の炎に大蛇丸も飲み込まれかけたが、機転を利かせたマンダがその場から離れたおかげで火傷せずに済んでいた。

 

「おい大蛇丸! テメー、よくもこの俺様をクソガエルの炎に近づけたな!」

「ちょっとマンダ……集中させてちょうだい」

 

 だが、マダラがいた場所から離れたのがよくなかった。

 塵が集まり切る時間を見誤っていたようだ。

 

――火遁・龍焔業歌

 

 回復したマダラからの攻撃が大蛇丸に集中した。

 いくつもの火炎弾がマンダに着弾し、たちまち発火した。

 

「大蛇丸!」

「自来也! 次はこっちに来とるけん! 構えろ!」

 

――水遁・鉄砲玉!

 

 同様に迫っていた火炎弾の数々にガマブン太が出した巨大な水球がぶつかっていく。

 消しきれなかった一つは、

 

――火遁・炎弾!

 

 自来也が炎で相殺した。

 その時、ドゴォっと音がし、ガマブン太の隣に大蛇丸とマンダが現れた。

 さっきまで彼らがいた場所には蛇の抜け殻だけが残っていた。

 

「オビト君がああなった以上、こちらで封印するしかないわ。出来たらトビラ君の見識を聞きたいところだったけど……向こうもそれどころじゃないみたいね」

「サクモさんがいない今、ワシらでどうにかするしかねーぞ。それにマダラはチャクラ無限。このままバカスカ炎を吐かれちゃぁ鬱陶しいのう」

 

 一方、蒸気に紛れて大蛇丸たちから離れていたマダラは口寄せを行おうとした。

 だが。

 

「フン、九尾は封じられているか。さすがにミトも死んだころかと思ったが……次の人柱力を見つけたな」

 

 ちょうど同じころ、里にいたクシナは腹が熱くなる感覚にうずくまった。

 

「うぐ……なんだってばね……腹が……」

 

――儂を呼ぶこのチャクラ……まさかマダラか!

 

「九尾! 出て来るんじゃないってばね! なんで急に……!」

 

 まさかマダラが蘇っているとは知らないクシナはただひたすらに九尾への封印を強めた。

 そして、口寄せに失敗したマダラはというと、大して気にすることもなく周囲を見渡した。

 

「オビトめ……異空間に消えてしまっては仕上がりを確認できないではないか」

 

 次にマダラが目を向けたのはトビラの分身体がうちは火炎陣で封じているゼツ。

 

「扉間め、うちは一族に伝わる火炎陣を使いおって」

 

 不快に言い捨てたマダラが分身に迫ろうとしたが、

 

「そうはさせん!」

 

――水飴鉄砲!

――蝦蟇油弾!

 

 ガマブン太と自来也それぞれがマダラの動きを封じようとした。

 しかし、蝦蟇の口から放たれた球状の水飴も、自来也の口から放たれた油の玉もマダラは軽々避ける。

 

「まだ遊び足りないか。砂利共が」

 

 言いつつ、マダラの口元には笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 一方、カカシたちに囲まれていたサクモはすでに呼びかけに答えることが出来ていなかった。

 

「父さんっ!」

 

息子の声が遠くに聞こえる。

サクモは落ち行く意識の中で思った。

 

――カカシ……思えばあの時から……俺の信念が揺らいだ時からずっと情けないところばかり見せていた……だらしない父親ですまなかった…………

 

 降り立ったのは真っ暗な空間だった。

 この先に進んで行けば死に別れた妻に会える。

 それは確かな予感だった。

 彼はゆっくりと歩み始めた。

 

――もしも自決を選んでいたら俺は先へと進めず、ここに残っていたのだろうな……あの時に比べれば後悔は少ない……

 

 サクモは任務を失敗したころのことを思い出した。

 

――仲間を守る……それだけが俺の信念だったのに、その信念すらも見失うこともあった。そのせいでカカシにも随分と迷わせてしまった……けど、カカシは迷いながらもちゃんと自分を保ち続けていた……俺には勿体ないくらいに出来た息子だ…………

 

 歩み続けるサクモの脳裏によみがえる彼の一生。

 その中でふと、父の死に涙を流したあと奮起し、夕日に向かって駆けだした少年を思い出した。

 そして彼の言葉を。

 

――「父さんが言ってました……本当の勝利は自分の大切なものを守り抜くことだって」

 

 サクモは思い出した。

 里の者たちに笑われても青春の道を突き進み続け、最期まで息子を守り抜いた忍の生き様を。

 そんな父を死んだ後も尊敬し、青春の道を貫き続ける少年を。

 

――あれからガイ君は立派な忍になった……父親譲りの強い信念を持つカッコイイ忍に…………

 

その時、サクモは己が最後に見たものを思い出した。

 久しく見ていなかった息子の泣き顔、そして残してきてしまった脅威マダラ。

 サクモの足が止まった。

 

――……カカシたちはあの後、どうなっている?

 

 迷いが一度出てしまうともう進めなくなった。

 

――俺は本当にやり切ったと言えるのか?

 

 自問するサクモの耳に届く悲痛な我が子の声。

 途端に彼の意識はただの暗闇から光がぼんやりと感じられる場所へと戻った。

 そして全身に痛みが走った。

 それ以上にその身を突き動かす意志。

 

「父さんっ?!」

「うぐっ……まだだ……まだ俺にも出来ることが…………っ」

 

 身体を起こしたサクモは潰れた利き手とは逆の手でチャクラ刀を握り、自来也たちと戦っていたマダラに向かって投げた。

 突然のことに反応しきれなかったマダラの両手が切り落とされ、塵となる。

 

「あやつめ……まだ動く気力があったか」

 

 自来也と大蛇丸を相手取っていたマダラはサクモの方を見て不思議がるが、その口端は面白いものを見たとばかりに上がっていた。

 

「戻って来たか! それでこそサクモさんだ!」

「意外としぶといのね、あの人」

 

 サクモによって作らされたマダラの一瞬の隙。

 それは自来也たちには十分な時間だった。

 

「土遁・黄泉沼!」

 

 自来也がマダラの足場を奪い、大蛇丸が首を伸ばしてマダラに噛みついた。

 黄泉沼から抜け出ようとしたマダラの全身に直線状の文様が呪印となって走る。

 

「自業呪縛の印……動けんな」

 

 冷静に己の状況を確認するマダラだが、ズブズブと身体は黄泉沼に沈んでいく。

 

「大蛇丸! これで封印されるのか?!」

「まだよ。動きを止めた後に別の封印術を使わないと」

「チッ! ……乱獅子髪の術!」

 

 自来也は髪の毛を伸ばして物理的にマダラを縛った。

 

「動きはワシが止めておくからこのまま封印に移れ!」

「もう準備しているわ」

 

 大蛇丸は封印へと移行していた。

 自来也たちがマダラを抑えている間、息を吹き返したサクモの治療をリンとシズネがしていた。

 

「せめて腹部の穴だけでもっ……!」

「臓器がかなり潰れていますっ……これじゃあ……!」

 

 そんな彼女たちを綱手は震えながら見ていた。

 今にも死にそうなサクモの姿は綱手のトラウマを刺激するには十分だ。

 医療忍術が使えないカカシも自分に打ちひしがれた。

 

――俺はこんな時に何もできないのか?! クソッ!

 

「カカシ! サクモさんに呼びかけて意識を保って!」

「そうです! 今は本人の気力に頼るしかありません!」

 

 リンとシズネに叱咤されたカカシはハッと顔を上げ、サクモに呼びかけた。

 

「父さん!」

「カ……カシ…………」

「サクモさん! あなたは喋らないで!」

「少しでも体力を温存してください!」

 

 医療忍者たちの注意も聞かず、サクモはカカシを見て言った。

 

「俺も……自分の……大切なものを……守り抜く…………」

「父さん、これ以上喋っちゃダメだ!」

「……カッコイイところ……全然見せられなかったけど……せめて最期は親らしいこと……お前を……守りたいと…………」

「俺は父さんをカッコイイ忍だと思っている! 父さん、昔の俺が間違っていた! 仲間を守り続けた父さんはずっとカッコいいよ! だから……だから……」

「ありがとう……カカシ……これで母さんの所へ行けそうだ……」

 

 あまりにも安らかなサクモの微笑みにリンもシズネも諦めかけてしまった。

だが、その時。

 

「あなたたち! 医療忍者の掟を忘れたのですか!」

 

 彼女たちの手に被さるように大人の女性の手が加わった。

 

「第一項、医療忍者は決して隊員の命尽きるまで治療を諦めてはならない!」

 

 その手は綱手のものではなかった。

 

「ノノウ医療部隊長?!」

「どうしてここにっ?!」

「今はそんなことを言っている場合ではありません!」

 

 トラウマで戦線を退いた綱手の穴を埋めるように現れ、たちまち医療部隊長となった薬師ノノウ。

 そんな彼女が加わったことでサクモの治療に光が見えた。

 

「さすが医療部隊長……これなら!」

「なんて正確な医療忍術……!」

「腕はもう手遅れです。けど、命までは諦めずとも済みます。集中していきましょう」

 

 淡々と状態を確認し、リンとシズネを奮起させるノノウ。

 そんな彼女を綱手は呆然としながら見た。

 

――誰だコイツは……かなりの腕を持っている……サクモは……助かるのか……?

 

 ノノウは綱手が医療忍者を辞めてから入って来た医療部隊長だ。

 だが、その技術は一目見ればわかるほどに高い。

 これならば、と見えた希望と、それでもなお浮かんでしまう綱手のトラウマが交差する。

 初めから冷たい死体だった弟、だんだんと冷たくなっていった恋人、そして生き残りそうなサクモ。

 

――シズネたちがいる横で私は……なんて体たらくだ……

 

 綱手はこのとき初めてトラウマで動けない自分に苛立った。

 ノノウ、リン、シズネはその間も治療を続け、カカシの表情も明るくなってきた。

 サクモたちの様子に気づいた自来也もつられてニヤッとした。

 

「どうやらサクモさんは大丈夫そうだの……あとはお前だ! マダラ!」

 

 ギチギチと締め付けを強める自来也。

 特にサクモが切り落とした両腕に塵芥が集まらないよう、丹念に締め上げていた。

 その間も集中して封印を施そうとする大蛇丸。

 一歩も動けないマダラは沼にどんどん沈みながら笑った。

 

「なかなか良いところまで行ったが残念だったな。このうちはマダラに小細工は効かぬ」

 

――須佐能乎!

 

 ぶわっとチャクラの塊が辺りを凌駕した。

 拘束に失敗した二人をマダラが見下ろしている。

 その身を包むのは鎧を纏った二面四椀の巨大なチャクラ体。

 

「な……なんつーデカ物だ」

「さっきのチンケな沼じゃ足りないってことよ。ビビってる暇があるなら動きなさい」

「フン。分かっておる! 土遁・大黄泉沼!」

「などとほざきながら諦めもせず歯向かうのだろうが、それもこのスサノオの前には無駄なあがきだ」

 

 自来也達の動きは読めていたようで、マダラのスサノオがさらに大きくなり、二人に向かって剣を振り落とした。

 

「口寄せ・三重羅生門!」

 

 すかさず大蛇丸が口寄せした巨大な羅生門で衝撃を抑えるも、スサノオの剣は門を砕きながらそのまま彼らに向かった。

 

「いかん! 後ろにはサクモさんたちが……っ!」

 

 自来也が歯噛みしたその時。

 突如現れた黒い如意棒により、スサノオが思いっきり吹っ飛ばされた。 

 大したダメージを受けていないマダラは瓦礫と土煙の中からその人物を確認し、気づいた。

 

「貴様……猿飛佐助のせがれか」

「如何にも! 先代方より里を授かりし三代目火影! 姓は猿飛! 名はヒルゼン! お見知りおきくだされ!」

 

 

 

 

——————三代目火影、参戦!!

 

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