これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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頑張れオビト

 自来也は並び立つカカシをチラリと見た。

 

――にしてもコイツ、ヘロヘロだの。オビトからもらった写輪眼にだいぶスタミナを持っていかれている。立っているのもやっとってところか。

 

「自来也様、なぜかは知りませんがマダラは俺に攻撃できない。俺がメインで行きます」

「……よし、サポートは任せろ」

 

 チャクラ刀を握りしめマダラに向かうカカシ。

 強くもない、なのにいたぶることもできない相手との戦いなんて面白くないマダラは離れようとした。

 だが。

 

――仙法・毛針千本!

 

 自来也の髪が千本の針となってマダラの道をふさぐ。

 そこへカカシが飛び込んだ。

 

「あまり調子に乗るな。呪印札をかいくぐってお前を殺す方法なんていくらでもある」

 

 そう言って印を結ぼうとしたマダラだが、その腕に蝦蟇夫婦の舌が絡まり体勢を崩された。

 そこへカカシが斬りつけてくる。

 マダラは反射的に殴り返そうとするのに、呪印札のせいで動きが不自然に止まり、それが大きな隙となっていた。

 そのせいでマダラは綱手を殺しに行くことも、戦線を離脱することもできず、カカシたちの思惑通りに足止めされることとなった。

 当然、マダラにとっては不愉快だ。

 

「こんな中途半端な縛りをしてくるとはオビトめ、教育が足りなかったようだ。アイツが消えた時空間……その目なら干渉できるか」

「これ以上、オビトをお前の好きにはさせない!」

 

 マダラとしてはカカシの写輪眼を奪って自分の目にはめたいところだが、穢土転生の体にとって呪印札の命令は絶対。

 仕方なく、チャクラを足に集中させ、振り下ろした。

 

「うわっ!」

 

 地面に亀裂が入り、カカシの足がもつれる。

 立ち込める砂埃と瓦礫。

 再び印を結ぼうとするマダラを止めようと自来也の髪が絡みついたが、それを見越したマダラは腕に絡みついたその髪を引き寄せた。

 

「ぐっ!」

 

 そして自来也の身体をカカシにぶつけようとした。

 すんでのところで自来也がカカシを突き飛ばしたおかげで二人がぶつかることはなかったが、マダラには好機。

 

「貴様は呪印札の範囲に無い」

「自来也様!」

 

 突き飛ばされたカカシは振り返ってその光景に目を見開いた。

 マダラの腕が自来也の腹を貫いていた。

 

「ガハッ!」

「安心しろ。伝説の三忍は今日で終わらせてやる。三忍全員……いや、分身か」

 

 マダラが見破ったと同時にドロッと蝦蟇の油が弾けた。

 と、同時にマダラの全身に再び封印札付きの白蛇が絡みついていく。

 今度はさっきよりも速いスピードで。

 白蛇に埋もれたマダラが動かなくなり、そばにいた大蛇丸が息を吐いた。

 

「ついにやったんじゃな!」

 

 無事だった自来也本体の肩に乗るフカサクの歓喜の声。

 

「ぐはぁっ!」

 

 だが、封印をやり切った大蛇丸が吐血した。

 瓦礫の中から現れたスサノオの腕が彼の腹を突き刺したからだ。

 

「柱間の木遁分身ほどではないが俺の分身も砂利相手には目くらましになる。まずは一人」

「大蛇丸!」

 

 自来也は叫びながらマダラに殴りかかった。

 それをスサノオの拳が受け止める。

 

「いい加減、砂利の遊びに付き合うのも飽きてきた頃だ」

「それならさっさと地獄に戻りやがれぃ!」

「文句ならそこの半端な禁術遣いに言え。そいつが掘り起こした穢土転生で俺は呼ばれただけなのだから」

 

 マダラはあざ笑い、大蛇丸の方に目を向けた。

 ちょうどカカシが駆け寄っているところだ。

 

「大蛇丸! しっかりしろ! クソっ……リンたちのところまで間に合わないっ!」

 

 カカシが胸から取り出したのはかつてリンからの上忍祝いで貰った個人用特別医療パックだ。

 医療忍者じゃないカカシが何をしても気休めにもならないが、カカシは何かしないではいられなかった。

 が。

 

「……うわっ!」

 

 そんなカカシがのけぞったのも仕方ない。

 腹を貫かれた大蛇丸の口からでろでろと新たな大蛇丸が現れたのだから。

 それに気づいたマダラは鼻で笑った。

 

「なるほど。もはや禁術に憑りつかれた化け物だな」

「ったく、人騒がせな奴だ」

 

 自来也は悪態をつきつつもホッとした。

 だが、かと言って安心はできない。

 現在進行形でマダラのスサノオの腕が彼に殴りかかってきているからだ。

 

「ぐっ」

 

――さすがに堅いっ!

 

 自来也が苦戦している一方、大蛇丸も大粒の汗を流していた。

 あまりの様子にカカシは心配になった。

 

「大蛇丸、かなり消耗しているようだが……」

「さすがにこう何度も封印を破られちゃうとね……それに今の術、まだ試作だからチャクラをかなり使うのよ」

「これは術の範疇なのか」

 

 そもそも大蛇丸を人間の範疇においていいのか、カカシはつい思ってしまった。

 が、今も自来也がマダラと戦っている。

 そんなことを考えている場合ではない。

 

「もしもアンタができないなら俺がやる。オビトの写輪眼のおかげか、だいたい術の内容は分かったから」

「やっぱり写輪眼って便利ね。その写輪眼でトビラ君たちのいる時空間には行けないのかしら」

「俺のチャクラじゃとてもできるとは……できたとしてもミナト先生もトビラが既にいる……きっと向こうでオビトの説得をしているはずだ」

「戻ってくるのがあまりにも遅いわ。案外、オビト君をもう殺して戻れなくなっているのかもしれないわよ」

「オビトはまだ死んでない! アイツは今も……苦しんでいる。この目を通して伝わってくる」

 

 カカシが目を押さえながら言うと、大蛇丸が興味深そうに顔を向けた。

 

「まさか向こうの景色が見えるの?」

「今は見えないけど、さっきは見えた。流れ込むように」

「写輪眼の共有なんて初めてのケースだから気になることばかりだけど……だったらカカシ、なおさらアンタは向こうに行きなさい」

「でも……」

 

 戸惑うカカシの耳に、シズネたちの歓声が聞こえた。

 

「サクモさん! 聞こえますか?」

「カカシ! サクモさんの意識が戻ったよ!」

「行きなさい」

 

 大蛇丸に背を押されたカカシはサクモの顔を覗き込んだ。

 

「父さん!」

「カカシ……俺はまだ戦えそうだ」

 

 治療を受けながらもサクモが無事だった手を伸ばしたため、カカシはチャクラ刀を差し出した。

 

「父さん、俺もまだ出来ることがありそうなんだ。オビトのところに行って来る。アイツ、遠回りばっかりして迷子になっているみたいだから」

「なら、俺のことは気にしなくていいと言っておいてくれ。仲間の攻撃を躱せなかった俺の責任だからね」

「ああ。……リン、少しでいい。俺のチャクラを回復してくれないか。この写輪眼でオビトのいるところに行って来る」

 

 カカシがリンに頼むと、シズネが先に口を挟んだ。

 

「リン、この先は私一人でもできます。カカシさんの回復を」

「ありがとう、シズネ。……その医療パック、使ってくれていたんだね」

 

 リンはカカシの回復をしながらちょうど彼が持っていた医療パックに目を向けた。

 

「大切な上忍祝いだから。……この写輪眼もどちらも」

「……もしオビトが怪我していたらちゃんとここに連れて来てね」

「もちろん」

「頑張れ、カカシ。待ってるから」

 

 頷いたカカシは自身の写輪眼にチャクラを集中した。

 

――オビト、お前からもらった上忍祝いとリンのチャクラでお前に会いに行く。さっさとこっちに戻って来い!

 

 カカシの時空間忍術が発動された。

 

 

 

 神威空間ではミナトが懸命にオビトに話しかけていた。

 

「オビト。君にとっての世界はトビラだけじゃないはずだ。リンにカカシ、同じうちは一族の子供たち、君が親切にして来た里中の老人たち。その全てを無にするつもりかい」

「じゃあ先生は俺に偽物の世界で生きろって言いたいのかよ。トビラが元からいない世界なんて俺にとってはまがい物でしかないのに……」

「トビラはここにいる。たとえ二代目の意識があろうと、彼が君の弟であることに変わりはない」

「そいつは…………」

 

 否定しようとするオビトの表情が歪んだ。

 トビラの表情もそっくりに歪んでいた。

 堂々巡りになっていたところで、彼らの中心の空間が歪み、カカシが現れた。

 

「カカシっ?! どうして君がここに?!」

「オビトの写輪眼でここまでどうにか……」

 

 そう言いながらも、カカシは立つスタミナすら無く、膝をついている。

 

「うっ……!」

 

 さらに、開眼したばかりの万華鏡写輪眼の力を使ったせいか、かなりの苦痛を感じるらしい。

 目を押さえ、息も絶え絶えなカカシにミナトもトビラも駆け寄った。

 が、カカシはそんな状態でまっすぐにオビトを見つめた。

 その視線にオビトの肩がビクッと動き、そして自嘲的に笑った。

 

「お前も俺を殺しに来たのかよ……カカシ。そうだよな。俺はお前の父ちゃんを……」

「父さんは死んじゃいない。だからお前もこんなところに逃げてないでさっさと戻って来い」

「サクモさんが……?」

「お前が言ったんだろ。父さんは木ノ葉の英雄だ。あのぐらい、父さんならどうってことない」

「嘘だろ。あんな状態でまさか……いや、そうだとしてもカカシ。俺が憎いだろ。俺は仲間を守るどころか傷つけたクズだからな」

「……俺は今でもお前は英雄だと思っている」

 

 カカシの言葉にオビトが息を飲んだ。

 

「オビト、お前はまだクズになっちゃいない。だから戻って来い」

 

 眉を下げるオビトにカカシは続けた。

 

「リンも向こうでお前を待ってる。お前が怪我していたら連れて行くって約束したんだ」

「リンが…………」

 

 オビトはカカシのこともリンのことも「偽物」だと否定できなかった。

 歪むその表情に見えるのは未練と後悔。

 その顔つきが以前のオビトと同じだと気づいたミナトは笑みを浮かべた。

 

――ナイスタイミングだよ、カカシ!

 

 ミナトはカカシとトビラの背に触れ、オビトのそばに飛雷神で移動した。

 オビトも逃げようとはせず、佇んだまま。

 カカシはそんな彼に言葉をかけた。

 

「みんな必死で戦ってる。仲間を守るために俺の父さんも三代目も自来也さま達も。だからお前もその一人になれ。落ち込むのはその後だ」

 

 しゃがんでいたカカシはどうにか立ち上がろうとし、そんな彼にオビトは咄嗟に手を差し出した。

 カカシはその手を支えに立ちながらいつものようにガミガミ始めた。

 

「そもそもお前ね、いつもの遅刻癖と言い訳をこんなところで発揮してるんじゃないよ。向こうは大変なんだぞ。さっさとマダラをどうにかしろ」

「うっせー……分かってんだよ、バカカシ。今からここを出る。俺に触れてくれ」

 

 ミナトがオビトの肩にポンと手を置いた。

 だが、ためらうトビラの手が止まっている。

 オビトはそちらを見つめ、小さく呟いた。

 

「正直なところ、俺は今もアンタを許せていないし許せるとは思えない」

「それが妥当だ。俺にとっては里が要で里が全て。お前の懸念も間違いとは言い切れない」

「…………それにしてもお前、性格悪いよな。マダラの子孫の俺をよりによって初代火影に似てるって言ったんだからな」

 

 唐突な話にトビラは目を丸くしながらも答えた。

 

「確かに子供のころに言った覚えはある。だが、俺は嫌味のつもりじゃなくて本気で言ったつもりだ」

「じゃあ、めちゃくちゃ変わり者だ」

 

 オビトはカカシに触れていない方の手でトビラに触れ、そして神威を発動した。

 

 

 

 空間が歪み、現れたオビトたちの姿を見てマダラは悟った。

 

――オビトを堕とすには闇が足りなかったか。仕方ない、アイツを殺し呪印札の縛りを解放させよう。

 

 一方。ほぼ一人でマダラの相手をし続けていた自来也のチャクラはすでに限界だった。

 両肩に乗るフカサクとシマが練る仙術チャクラがいなければとっくに倒されていただろう。

 そんな状態だったため、無尽蔵のチャクラとスタミナのマダラに不意を突かれたのも仕方がなかった。

 

「オビトがダメなら次の手駒を使えばいい」

 

 神威での移動はミナトたちにとっても慣れないもので迫るマダラに咄嗟に反応できなかった。

 マダラの拳がオビトの体に向かう。

 しかし。

 

「オビト?! ……すり抜けたのか?」

 

 ミナトがオビトよりも先に気づいた。

 マダラの拳がすり抜け、オビトに当たっていない。

 

「なんにせよここで終わりにする!」

 

 ミナトはマダラに触れ、マーキング付きクナイを投げ、飛雷神を使った。

 残されたカカシは呆然とオビトを見た。

 

「お前、今のなに?」

「いや、俺もよく分かんねーけど……なんか当たんなかったな」

「はあ? お前の身体でしょうが! 柱間細胞って身体もすり抜けるの?」

「いや、おそらく万華鏡写輪眼の瞳術の一つだ。身体の一部がさっきまでいた空間に飛んでいるのだろう」

 

 トビラの解説にオビトが「へー」と声を漏らした。

 

「俺の万華鏡写輪眼に詳しいな」

「お前が自分の身体のくせに無知すぎるだけなんじゃないの」

「んだと……」

 

 カカシのチクっとした言葉にオビトは反射的に言い返そうとし、ふと視界に入った治療中のサクモ達に言葉を無くした。

 

「反省は後だって言ったでしょ」

「……ああ」

 

 ぐいっと零れる涙をひと拭いし、オビトは印を結び始めた。

 ちょうどその時。

 

――火遁・灰塵隠れの術

 

 ミナトと対峙していたマダラはサクモにも使った印なしで使える術で高熱の炎を吐きだし、周囲の灰や塵を巻き上げた。

 すぐに逃れたミナトだが、位置取りが良くなかった。

 

「オビト、もう一度絶望を教えてやる!」

 

――火遁・龍焔放歌の術

 

 龍の形をした二つの炎がまっすぐに向かう先、一つは綱手、もう一つはトビラだった。

 ミナトがいる場所とはどちらも真逆。

 

「呪印札で攻撃が制限されている砂利共はいるが、あくまで直接攻撃をしなければいい。着弾した炎に巻き込まれることまでは制限できん」

 

 綱手やトビラがいる場所は自来也達からやや遠く、今から水遁を出したのでは間に合わない。

 クナイを投げてから飛ぶミナトの飛雷神でも間に合わない。

 だけど、焦点を合わせて移動するオビトの神威だけが間に合った。

 

「オビト!」

 

 咄嗟にカカシとトビラを遠くに押しのけたオビトは自分に迫る炎の龍には目もくれず、綱手たちに向かう炎を見つめた。

 時空間に飛ばされた龍の炎は一つ。

 神威を使っている間、オビトの身体はすり抜けできない。

 そのため、もう一つの炎の龍が逃げ切れないオビトの半身を食らった。

 

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