ホムラはマダラと戦う三代目を観察し、焦っていた。
――ヒルゼンが全力を出すためにもこうするほかなかったが、もしクシナの封印術が間に合わなかったら……そもそもまた九尾が暴走する可能性も高いのに……
彼の視界の隅ではトリフが荒く息を吐いている。
完成体スサノオの攻撃を防ぐほどの大きさに倍化したことがかなりのダメージとなっていた。
――ワシとてこれほどの結界をいつまで保てるか……
この時ホムラ達は55歳を超えたころ。
どうしても老いには逆らえない。
だが、そんな彼の弱気を感じ取ったのか、自来也が発破をかけて来た。
「おいおい、ホムラのおっちゃん! ワシに説教ばっかりしてきたアンタがまさかバてたなんて言うんじゃねーだろうなぁ!」
彼の肩にいた蝦蟇の夫婦は口寄せの限界もあり去っている。
すでに自来也本人もかなり限界のはずなのだが強気の口調。
ホムラもそれに乗せられつい言い返した。
「茶化すんじゃない自来也! そもそもお前らがもっとしっかりしとりゃワシもヒルゼンもとっくに隠居できたというのに!」
「あら、さりげなく私と綱手も説教されているのかしら」
「はぁ? こんな時に説教なんざしている場合じゃないだろうが!」
大蛇丸の声を聞いた綱手に怒鳴られ、ホムラはしかめ面で注意した。
「言い返す暇があったら手を動かすのだぞ、綱手!」
「言われなくとも分かってる! いつもの説教のつもりなら黙ってろ!」
「仕方ないわよ、年寄りってのはどこかれ構わず説教したがるもんなんだから」
「ホムラのおっちゃんもコハル先生も三代目のジジイもいつまでもワシらをガキ扱いしおるからのぉ」
わいわい好き勝手に言い出す自来也たち。
ホムラの眉間にしわが寄った。
――ヒルゼンめ……弟子の教育は徹底しろとあれほど言ったのにこやつら三忍ときたら大人になってもこれだ……
後継者として期待していた自来也は里を出て放浪ばかり、才能を期待していた大蛇丸は三代目退任の原因となり、火影としての素質を期待していた綱手は大戦の途中で離脱し、と里の上役として三忍に言いたいことは山のようにある。
そうでなくとも、幼いころから知っている彼らにはつい口うるさくなってしまう。
――ったく、あのマダラが間近にいるこの状況でよくもこんなに騒げるものだな……
かつてマダラが里を襲撃してきたのはホムラが幼いころ。
その時の恐怖と、そんな奴から里を守り切った初代火影への畏怖と尊敬は今でも忘れていない。
幼いころの記憶にマダラがトラウマとして刻まれたホムラからすれば、チャクラ無限のマダラなんて絶望的だ。
それでも、
「初代様、二代目様から受け継いだ里をここで終わらせるわけにはいかん」
ホムラとてこれまで3度の大戦で戦い、里を守ってきた矜持がある。
幼かった自来也たちが今や弟子を引き連れこうして戦っているのだ。
弱音なんて吐いていられない。
ホムラはチラリと自来也の弟子のミナトに目をやり、大蛇丸の班員だったトビラとカカシにも目を向け、綱手と共に医療忍術を使っているシズネたち、そしてミトから継いだ九尾を抑えながらチャクラを練るクシナを見る。
――これほどまでに育った次の世代がいるのだ。我らで守らねばならん。あの時、囮になった二代目様のように次は我らがその番。
気合を入れなおすホムラと同じことをトリフも考えたようだ。
「うちはトビラ。三代目が倒れたらすぐさま俺をこの結界から飛雷神で出せ。俺が時間稼ぎをする」
「さっきの倍化の術でかなり消耗しているだろう」
「とにかく結界を保ち、クシナの準備までマダラを抑えることが重要だ。今は三代目がマダラの気を引く囮をしているが、次は上忍班長の俺の役目。まあ、ヒルゼンはまだやられるつもりは無いみたいだがな」
トリフの視線の先には今もなおマダラと戦い続ける三代目がいる。
全身全霊をかけたその戦い方にマダラは身を震わせ喜んだ。
「惜しいな。塵芥でなければ血沸き肉躍る戦いを楽しめたものを……」
「そのお身体に飽きたのであればそろそろお眠りいただきたいのですがな」
「眠るのは俺じゃない。お前らだ」
本体だけでなく分身のマダラも嬉しそうに戦う。
――とにかくクシナの術まで時間を稼ぐ。なんとしてでも。
幸いにも三代目の分身はどれも消えてはなく、それぞれに戦えている。
だが、マダラとしてはまだ満足できていないようだ。
「そういえばお前にはアレを見せていなかったな」
そう言ってマダラは分身の一体を盾にし、その隙に本体は瓢箪型の大きな団扇、そして死神が持っていそうな大きな鎌を口寄せした。
そのせいでマダラの分身が一つ消えたが、三代目は素直に喜べなかった。
――あの団扇はもしやうちは一族に伝わるという伝説の……!
三代目の分身がマダラに向かって火遁を吐いた。
すると。
「うちは返し」
団扇を翻し、術がそのまま三代目の分身に跳ね返される。
三代目も分身が一体消えてしまったが、これで確信した。
如意の姿の猿魔も気づいたようだ。
「あれは霊木から削り出された神器だな。どんな術も弾く。マダラめ、まだあんなものを隠し持っていたか」
「これでますます術は使いづらくなったの」
「気を付けろよ。テメーの術でテメーがくたばっちゃ洒落にならん」
「分かっておる!」
三代目が振りかぶった如意をマダラは団扇の持ち手部分で受け止め、もう片手に持つ鎌で斬りかかった。
いくら斬りつけられても塵になるだけのマダラとは違い、三代目は致命傷になりかねない。
咄嗟に身をよじり、距離を取る。
そこへマダラが火遁を叩きこむが、うちは返しで術を返される可能性を考えると、さっきまでのように火遁での相殺はできない。
――土遁・土流壁!
仕方なく、三代目は土遁で壁を作った。
「三代目、右だ!」
そのせいでできた死角から現れたマダラが鎌で狙ってくる。
が、如意から伸びた猿魔の腕がギリギリのタイミングで鎌を止めた。
戦況が変化したことに気づいたトリフがいつでも飛雷神で出られるようにトビラへ手を伸ばす。
その時。
――天照!
マダラの本体が突如、黒炎に包まれた。
「サル、離れろ!」
思わずトビラが結界の中から叫ぶ。
すでに三代目はマダラの黒炎に巻き込まれないように離れていた。
そのついでに、近くにいたマダラの分身を己の分身との二人がかりで一体倒し、マダラ本体が止まっているうちに次へ取り掛かっていく。
マダラは分身が倒されていくことも気にせず、天照の出どころに目をやった。
「なるほど……万華鏡写輪眼の開眼者がまだいたのか」
「やはり、うちはマダラか……」
うちはフガクが目から血を流しながら、その万華鏡写輪眼でマダラを睨みつけていた。
ボツシーン
マダラが分身出して三代目と戦ってるとき。
「一つ質問する。この分身たち、スサノオを使うのと使わない、どちらがいい?」
「一度引っ込めたものをもう一度出すのは主義に反するのでは?」
「それは完成体スサノオの話だ。よし、殴るばかりもつまらん。答えは使う、だ」
ボツ理由:あまりにも自由なマダラに作者が書いててキツくなってきたから