鎖ごとマダラに噛みついた巨大な虎がジリジリと引きずる先、それは地面に大きく開かれた巨大な巻物だ。
その傍らには右目に包帯を巻いた忍が控えていた。
「今度は志村一族の砂利……これも封印術かっ!」
マダラは虎を殴り消すため金剛封鎖の間から拳を出した。
だが、すかさずトビラが放ったクナイが拳を塵にする。
マダラは虎を蹴り飛ばすため足を振り上げた。
だが、三代目が持っていた如意棒が伸び、その足を塵にする。
「クシナ! 鎖を切り離すんだ!」
ミナトに言われ、クシナは背中から出していた鎖をマダラに絡めたまま切り離した。
「砂利どもが……!」
とうとうマダラはなすすべなく虎ごと巻物へと引きずり込まれた。
「グォォオオオ!」
マダラの封印を喜ぶ暇もなかった。
クシナが悲鳴に近い叫び声を上げ、またしても彼女の身体が九尾のチャクラの衣に包まれたからだ。
「ぐはっ!」
そばで九尾の封印を手伝っていたミナトが真っ先に吹っ飛ばされる。
「皆の者、離れるのじゃ!」
三代目がすぐさま如意を構え、トリフは医療忍者たちの盾になるような場所に立った。
「なぜこのタイミングで九尾が暴走を?! マダラの策略か?!」
「いや違う! おそらくクシナの金剛封鎖も、つまりチャクラも共に封印されたことで九尾を抑える力が弱まったのだろう」
ホムラの疑念にトビラは答え、ミナトが吹っ飛ばされた方を向いた。
自来也に受け止められたミナトにまだ意識はあり、すぐさまクシナのそばに戻った。
「四象封印をもう一度かけます!」
ミナトが近づこうとするが、彼女が発するチャクラがそれを許さない。
「グォオオオ! マダラァァア!」
ピリピリとした殺気と憎しみ。
マダラの存在で触発された九尾の憎しみが暴走している。
禍々しい赤い衣が彼女を包み、四本の尾が現れた。
九尾の発する衝撃波を受け止めながらトリフが声を張り上げた。
「九尾になる前に止めないとまずいぞ、ヒルゼン!」
「分かっておる!」
「どうしてかつてマダラが使役していた九尾の妖狐がここに?!」
クシナの中に九尾がいることを、そもそも九尾の人柱力の存在そのものを知らなかったフガクは驚いていた。
フガクだけじゃない。
クシナの中に九尾がいることを知っているのは三代目たち上役とミナト、トビラぐらいだ。
「どうして急にクシナさんが?!」
「あのチャクラはいったい……?!」
ミナト班の繋がりでクシナと顔見知りだったリンもカカシも突然のことに動揺している。
そのそばではサクモがチャクラ刀を構え、クシナの攻撃に備えていた。
「とにかく幻術をかけて大人しくするしかない!」
フガクは戸惑いながらも万華鏡写輪眼をクシナに向けた。
「やめろ!」
風遁を飛ばしてそれを止めたのは、さっきマダラを封印したばかりのダンゾウ。
まさかこの事態で里の仲間から攻撃を受けるとは思わなかったフガクはもろに食らってしまい、絶望した。
「なぜ私を攻撃する?! どういうことですか?!」
「この機に乗じて九尾を奪うつもりか?!」
「ダンゾウ! やめるのじゃ!」
三代目の注意がダンゾウたちに向いている間にクシナの尾が増え、五本になった。
「グァアアアア!」
「クシナ! しっかりするんだ!」
とてつもないチャクラ圧に近づくことも出来ない中、ミナトはクシナへ呼びかけ続けた。
そんな彼にトビラも声をかけた。
「ミナト、まずは九尾を抑える必要がある。兄さんならそれができるからそれまで時間を稼いでくれ!」
そこへ降り立つ自来也、大蛇丸、綱手。
「ジジイ共はゴタゴタしているから私らで抑えるぞ!」
「あの怒りよう、ブチギレた綱手を思い出すのぉ」
「綱手に比べりゃまだマシよ」
「おいゴラお前ら! ミナト、時間稼ぎは私らに任せろ! お前はトビラたちが抑えたタイミングで封印できるようにしろ!」
「はい!」
しばしの間、暴走するクシナをミナト達に任せたトビラはまっすぐオビトの元へ。
「兄さん! 今から俺の説明する通りに術を使ってくれ!」
「え?! よし分かった! 教えてくれ!」
突然言われ、オビトは色々とツッコミたいところはあったものの、グッと飲み込んでトビラの説明を待った。
その間もクシナの暴走は止まらず、放った衝撃だけで瓦礫が飛ぶ。
カカシとリンたち医療忍者たちの方に飛んできたものはサクモがスパスパとチャクラ刀で切り、トリフは握りつぶしていく。
だが、三忍が抑えていることもあり、クシナはその場から動くことはできずにいた。
そのおかげでトビラの説明は無事に終わった。
「いくぞ、兄さん!」
「おう! 任せとけ!」
「綱手! その首飾りを寄越せ!」
トビラはすれ違いざまに半ば強奪に近い形で綱手の首飾りを手に入れ、クシナの方に投げた。
それと同時にオビトが手を伸ばす。
――火影式耳順術・廓庵入鄽垂手!
伸ばしたオビトの手のひらに「座」という文字が浮かび上がった。
さらにクシナの周囲の地面から木が生え、彼女に絡んでいく。
そして彼女の身体にちょうど引っかかった綱手の首飾りとオビトの術が呼応した。
これは初代火影千手柱間のみが使える木遁忍術だ。
綱手が身に着けていた首飾りは初代火影柱間がチャクラを込めて作った封印石。
それがオビトにくっついている柱間細胞のチャクラと呼応することで、九尾を抑えることができたのだ。
――四象封印!
すかさずミナトが封印を施し直し、オビトが九尾を抑えていることもあり、クシナの意識が戻った。
「う……ミナト……」
「クシナ、良かった」
崩れ落ちるクシナを抱き留めたミナトを自来也たちは離れたところから見守っていた。
「ったく、ワシらもいるのにいちゃつきおって」
「あら、羨ましいのかしら」
「バカなこと言ってないでとっとと帰るぞ」
崩れ落ちたのはクシナだけでなく、無事に九尾を抑える術が発動できたオビトもだった。
「大丈夫か、兄さん」
「まーな。ちょっとクラっと来ただけだからよ」
そこへ駆け寄るリンとカカシ。
倒れたオビトを心配し、リンはさっそくもう一度医療忍術をかけようとしている。
「平気だって」
「ダメ! オビト、言ったでしょ。ちゃんと見てるって。我慢したってダメ!」
「……へへ…………」
格好つけようとしたオビトはリンの言葉に表情を緩めた。
修行で無茶をした時に同じ言葉で叱られたことを思い出したからだ。
が、すぐにその表情を暗くさせた。
「俺、マダラを……」
彼の言葉は続かなかった。
「トビラ?!」
オビトたちから一人離れたトビラが突然ダンゾウの術によって拘束されたからだ。
最近マダラの夢を見るようになっていたからようやく安眠できそうです。