ダンゾウが回想に夢中になっている間にマダラのことをどう里に発表するか話が進んでいた。
「完成体スサノオは里の皆が見てしまっておる。あれをどう説明するべきか……」
「我々が対処したのも里の者たちは知っている。変に隠すのはよくない」
「かと言って、穢土転生が世に出るとせっかくまとまりつつある各国との休戦協定が無になるぞ」
「ここはマダラが生き延びていたものの、倒すことに成功したと発表するべきです。いかがでしょうか? 三代目」
コハル、ホムラ、トリフの話し合いの末にミナトが出した提案に三代目も頷いた。
「うむ。それが良い。フガク、その際にうちはの神器を皆に見せてもらえぬか。うちはマダラが持ち去った団扇が何よりの証拠になる」
「勿論です」
「その際にはお主の尽力もあってマダラを倒せたと強調しておこう。そうすればうちは一族への追及をする者もいないであろう」
ようやく回想を終わらせたダンゾウが待ったをかけた。
「もとはと言えばうちはオビトが穢土転生でマダラを呼び出したことが原因だ。うちはが引き起こした問題をうちはが治めたことにするというのはどうかと思うが。これを機に増長したらどうする」
「当然、此度のマダラ討伐に尽力した者たちの名も出す。そしてダンゾウ、今回の一番の尽力者はお主だ。封印のことは言えなくとも、お主が決め手となったことを……」
「やめろ! 俺はそんな浅はかなものを求めて言っているのではない。一族の者が引き起こした責任を持たずに功績だけを与えるやり方に問題があると言っている」
ダンゾウの言い分にオビトが怒鳴った。
「マダラを穢土転生したのは俺が勝手にやったことだ! うちは一族もフガクさんもトビラも悪くねーよ! 俺がやったことの責任は俺が自分で取る!」
「当たり前だ。しかし、お前がしでかしたことの責任は一人で済む範疇を超えている」
「責任はもちろん俺が取る。そもそも俺がこの身体のことを兄さんに説明しなかったことで起きた問題だ。いま考えなければならないのはマダラと今のうちは一族が繋がっていた疑念を生じさせないこと。フガクが討伐に関わっていたことを周知させればそれも回避できる」
淡々とトビラが言うと、ダンゾウは顔を歪ませた。
「なぜその子供にそこまで入れ込む?!」
「その子供ではない、兄さんだ。ダンゾウ、いつまでも俺を二代目火影として見るな。今の俺はうちはトビラだ」
トビラは三代目に言った。
「サル。いい加減、綱手あたりがしびれを切らしているころだ。俺への疑念を解消できたのであれば皆をここに通した方が良い」
「そうですな」
別室に待機していた綱手は開口一番に文句をつけた。
「いつまで待たせてんだ! どうせ年寄り共でダラダラ昔話でもしていたんだろう!」
「まあ、間違ってはいないわね」
拘束術と結界から解放された大蛇丸が合いの手を打つ。
三代目はオホン、と咳ばらいをし、トビラのことやオビトが使った術について説明した。
マダラがトビラのことを「扉間」と呼んでいるのを聞かれている以上、隠し通すことはできない。
そのため、マダラ封印に参加した者たちには包み隠さず話すこととなった。
これに素っ頓狂な声を上げたのはまたしても綱手。
「大叔父様だと? このガキが?」
「ちょっと綱手様!」
シズネが慌てて止めるが、綱手は訝し気にトビラを見下ろしている。
「やけに偉そうなガキだとは思ったが……信じられんな」
「だから綱手様! 相手は二代目火影様ですよ!」
「今はうちはのガキとして生きているのに今さら大叔父様として扱えるか。お前だってその方がいいだろう」
「ああ。それでいい」
祖父である柱間ならともかく、大叔父の扉間は綱手の記憶に薄い。
だからか、ダンゾウたちに比べるとあっさりとした再会となった。
それにつられ、カカシたちもそんなものか、と受け入れることができた。
三代目は話を進めた。
「先ほども話したように、穢土転生の術については他言無用とする。そしてオビトの身体のことだが……綱手。オビトの心臓にはマダラが施した呪印札がある。今のお主ならそれを除去する手術ができるはずじゃ」
「呪印札? オビト、見せてみろ」
綱手はオビトの胸に手を当て、首を傾げた。
「そんなもの無いぞ。マダラに胸をぶち抜かれた時に外れたのだろう」
「え?! じゃあ今の俺、心臓ねーの?」
「あと数センチずれていたら全部消えていたな。おじい様の細胞が無けりゃ即死だ」
「いったいどうなってんだよ柱間細胞……」
マダラの呪印札が無くなって嬉しいような、呪印札と同じぐらい不気味な細胞がくっついている気味悪さが気になるような、複雑な表情をするオビト。
だが、三代目は素直に喜んだ。
「そうか。であればオビトを縛るものはもう何もない。これなら生きて戻ったことを隠さずともよくなる」
「まさかヒルゼン、うちはオビトの生存を里に知らせるのか?」
「それはさすがにどうかと思うぞ」
「柱間細胞のことはあまりに未知数だ」
相談役のホムラ、コハル、トリフが揃って難色を示した。
が、ミナトが割って入る。
「柱間細胞のことを伏せればいいだけです。いつまでもオビトを病室に縛り付ける方が里にとっての損失です。オビトは木遁も写輪眼も使えるのですから」
「うむ、ミナトの言う通りオビトの力を眠らせるのは勿体ない。綱手よ、オビトはまた忍として動けるのだろう?」
「見ての通り、おじい様の細胞のおかげでピンピンしているさ。正直、私が看る必要もない」
ダンゾウが進み出た。
「忍としての復帰以前に、マダラ復活の処罰を与える方が先だ。はたけカカシの例により、その子供の写輪眼は別の者でも扱えることが分かっている。ならば、写輪眼は没収した上で拘束するべきだ」
「それは族長として反対する。写輪眼はうちは一族の血継限界。はたけカカシに移植されたオビトの眼はあくまで特例です」
「そうじゃぞ、ダンゾウ。この子から光を奪うなんてしてはならぬ」
フガクと三代目に反対されてもダンゾウは頑なに主張した。
「その子供に力が集中しすぎていることこそ問題だ。話によるとその写輪眼、強力な時空間忍術だというじゃないか。さらに初代火影の木遁も使え、穢土転生も扱える。どれをとっても危険でしかない」
ダンゾウはさらに続ける。
「柱間細胞の適合者ということで命までは取らずとも、力の集中は削いでおくべきだ。この子供は感情のままにマダラを蘇らせ、里を滅ぼそうとした。もう一度同じことが起きないと言い切れるか?」
ダンゾウの主張にオビト本人は否定できなかった。
すでに一度犯した過ちがあるからだ。
けれど。
「そんなこと俺がさせません」
オビトをかばうように前に立つカカシ、その片目には赤い写輪眼が光っている。
「オビトから目を奪わなくとも、俺が貰ったこの目があればオビトの写輪眼に対抗できます」
「……ならばうちはオビトが再び里に反旗を翻した時、お前が殺せると言いたいのか?」
「殺さずとも必ず止めます。仲間は俺が絶対に守ります」
「殺す決意が持てぬ者にその目は持たせられん。もしもうちはオビトの眼を奪いたくないのであれば、お前のその目をもっと信用のできる忍に……」
「いい加減にしろ! うちはの写輪眼を貴様の好きにはさせん!」
堪忍袋の緒が切れたフガクが吠え、印を構えようとした。
が、その前に。
「もういい! ミナト先生もカカシもこんな俺にそこまでしなくていい!」
オビトが悲痛に叫んだ。