これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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作中に出て来る「コスケ」とは
アニメオリジナル「ナルトと老兵」に出てくる
渋くてカッコいいベテラン忍者のことです。
知らない方は
「まるほしコスケ」で検索してみてください。


卑劣様、自分が設立したアカデミーに入学する

 アカデミー入学式の日。

 

「トビラ! オビトはどうしたの?」

「アイツ、また遅刻?」

「いつもの人助けだ。今日は書類さえもらえば入学できる。間に合わなくても構わないだろう」

「でもせっかくの入学式なのに……」

「俺とて止めたが、兄さんが選んだことだ」

「ったく。アイツはほんとしょうがないんだから」

 

 心配するリンに呆れるカカシ。

 奔放な兄のフォローは慣れているし、理由が理由なのでトビラは厳しくは言えなかった。

 結局、オビトが到着したのは入学式が終わってからだった。

 

「兄さん、遅い」

「わ、悪い悪い……。もう、終わっちまったよな」

「もう、オビト! とっくに終わっちゃったよ!」

「お前もアカデミー生になるってことは忍候補なんだからルールを守れ!」

「仕方ねえだろう! おばあちゃんがでっけー荷物持って病院に行こうとしててよ……」

「兄さん、書類はもらっておいた。これで入学はできる」

「お! サンキュートビラ!」

「トビラ、お前コイツに甘すぎない?」

 

 カカシが半目でトビラを見た。

 

「確かに兄さんの優しさは付けこまれる優しさだ。けれど、これは治せない性分だ。今日は片方が来ればいいから許しただけのこと」

「それが甘いんだって。コイツ、このままだと遅刻癖治らないよ」

「まあまあ、これで無事、4人とも入学できたんだから!」

 

 リンが明るく言うのでこの話し合いはここで終了した。

 

 アカデミー生活が始まった。

 

――兄者の理想を元に俺が設立した忍者養成施設……いや、アカデミーを子供の身空で体験できるというのは中々に面白い。サルたちを育てたころはまだ前身だったから、教え方もだいぶ変わっているだろう。

 

 トビラとしての生活を満喫している彼はウキウキしながら授業を受けた。

 

――昔よりも情操面での教育が充実しておる。忍世界には馴染みないものもあるな。恐らく、大名たちの教育方法も取り入れているのだろう。

 

 特に彼が驚いたのは医療忍術について学んだ時だ。

 

――フォーマンセルに医療忍者を同行させる隊列か……綱め、やるではないか。兄者に賭け事を習ってのめり込んだ時はどうしようかと思ったが……

 

 活躍する若い世代にトビラはさらにウキウキするのだった。

 授業を受ける合間に居眠りするオビトの頭を小突いてやった。

 

「兄さん。睡眠時間は足りているだろう。授業中に寝るな。何のためのアカデミーだ」

「いやぁ、昔のことなんてつまらねぇ内容だからつい……」

 

 木の葉隠れの歴史について学ぶ授業の後、トビラは兄を叱った。

 

「ったく。昔と言うほど前のことではないだろうが。火影になるなら己の里の歴史くらい熟知しておけ」

 

――所々、情報操作も兼ねた誤りはあったがな。

 

「里の設立なんて爺ちゃん世代がやったことだろ! それ、すっげー昔じゃん!」

「誰がジジイだ!」

「お前のことは言ってねーよ!」

 

 反射で返したトビラにオビトは戸惑いつつも言い返す。

 

「オビト、トビラ! 次は忍組手の授業だよ! 早く行こ!」

 

 リンが呼びかけ、双子は立ち上がった。

 さりげなくカカシもリンの後ろにいて一緒に校庭へ出た。

 

――懐かしいな。この広場でよくサルとダンゾウが争ったものだ。

 

「組手の前はお互いに対立の印を示し、組手の終わりにはそれを重ねた和解の印をする。そうすることでお互いが仲間である意志を示すんだ」

 

――ああ。そういえば、負けを認めないダンゾウがいつまでもサルに攻撃を加えようとしたからそんなルールを作ったな。そうでもせんと、争いを次の授業まで持ち越しかねんから区切りが必要だったのだっけ。

 

 己が作ったルールが伝統となっていることを感慨深く思っているうちに教員の説明は終わった。

 

「それじゃあみんなにもやってもらおうかな。そうだなぁ……はたけカカシと……」

「カカシっ? 先生! 俺! 俺がやる!」

「ん? 君は確か……うちはオビトだな。よし、それじゃあ、二人は前に出て」

「二人とも頑張って!」

「おう! リン、トビラ! 見ててくれよ! 今度こそカカシをボッコボコにするんだ!」

「ったく。その自信はどっから出てくるわけ」

 

 呆れた口調のものの、カカシからみなぎる闘志。

 対立の印を構えた二人、

 

「忍組手、はじめ!」

 

 教員の合図で一気に近づき、交わる拳。

 トビラにとっては見慣れた光景だが、アカデミー入学したばかりの幼子たちが見せる組手に同期生は勿論、教員も驚愕した。

 

――うむ。兄さんもカカシも動きが良くなっている。カカシの方はまたサクモに修行をつけてもらったのか。フェイントの入れ方が前よりも巧妙になっている。俺のフェイントに慣れているから兄さんは避けられてはいるが反撃はできていないな。

 

「すごーい! 頑張れー!」

「ねえ、あの二人かっこよくない?」

「どっち派?」

「私カカシ君! マスクがかっこいい!」

「私はオビト君かなぁ……だってあのエリートうちは一族だし」

 

 自分たちでは到底できない動きをする彼らに女子たちは色めきあった。

 カカシは気にせず組手を続けていたが、己のことを言われていると気づいたオビトが意識をそちらへ向けてしまった。

 

――まったく。ここが戦場なら死んでいるぞ、兄さん。

 

 当然カカシはその隙を見逃すわけもなく、ド派手に一発KOをぶちかました。

 

「やっぱりカカシ君の方がかっこいい~」

「私も~」

 

 オビトのモテ期は稀代様の火影期間よりも短いのだった。

 

「ちっくしょー! まだまだ!」

「こらオビト! お前らは終わりだ! 和解の印を結べ!」

 

 悔しがりながらも先生に言われた通り、印を結ぶオビト、そしてカカシ。

 派手に勝ったカカシへ子供たちがキャーキャーと集う。

 

「コラ、お前ら! 落ち着きなさい! 次の組手は……そうだな。うちはトビラと猿飛アスマ! 前に出なさい」

 

――猿飛……こやつ、サルのせがれか。面影があるし、どことなくチャクラも似ている。

 

 教え子の息子の顔を見る機会が巡ってくる、これに喜ばない者がいようか。

 だがトビラの表情はオビトほど豊かではない。

 アスマの目には睨んでいるように感じた。

 

「トビラー! 頑張れよ!」

「お前、アイツとは双子なんだってな。その割には似てねーな」

「ああ。良く言われる。だが顔の造形は同じだろう」

「初対面の俺でも見分けがつくぜ」

 

 ダルそうにしたアスマが対立の印を見せたのでトビラもそれに倣い、忍組手の始まりだ。

 さすが現火影の息子と言うべきか、基本はすでにできている。

 年の割に大柄な体格を活かしたパンチも重い。

 

――有望な若葉が揃っているな、サル。

 

 アスマの攻撃をいなして実力を測るトビラだが、子供から見ると防戦一方に見える。

 

「すっげー! さすが火影様の子供だな。うちはの奴、攻撃できてねーぜ」

「さっきの奴はもっと攻撃できていたし、弟の方は大したことねーな」

「なんだとお前! トビラも俺も強いんだ! ふざけんな!」

「うわ!」

「こらオビト! 忍組手の最中だ! 大人しくしろ!」

 

 外野では弟への野次にオビトが怒っていたが、怒っているのは彼だけではなかった。

 

――火影の息子と言われて調子を崩したな。親子仲はそれほど良くなさそうだ。

 

 アスマの攻撃が乱暴になったが、トビラに当たることはない。

 皆の注目がオビトに集まったのに合わせ、トビラはアスマの足元を崩し、押し倒した。

 以前、カカシとの組手を終わらせる際にも行った眼前への突きの寸止め。

 

「や、やめ! それじゃあ和解の印を」

 

 オビトたちに意識を向けていたため、先生の合図は遅れたもののトビラたちの組手は終了した。

 いつの間にトビラの方が勝っていたのか分からなかった子供たちは首を傾げながらも、すぐ次の者たちの組手が始まったことでそれ以上疑問に思うことはなかった。

 

「トビラ! やっぱ勝ったんだな! さすが俺のおと」

「兄さん。くだらない野次にいちいち反応するな」

「うっ……で、でもトビラがバカにされたから!」

「あんなもの気にするようなものでもない。子供のたわ言だろうが。少しは落ち着け」

「家族をバカにされて怒るのは当然でしょ」

 

 組手を眺めつつオビトをなだめていたら、カカシが参戦した。

 しかもオビト側で。

 珍しいこともあるものだ、とトビラが口をつぐんだうちに組手がリンの番になり、言い合いもそこで終わった。

 

「トビラ、帰ろうぜ」

 

 授業が終わり、兄と共にアカデミーを出たトビラは校庭を走る少年に目を向けた。

 

「アイツは確か……」

「俺らと同じクラスの……名前なんだっけ」

「マイト・ガイだな。ほう、授業終わりもこうして修練しているのか。大したものだ」

 

 アカデミーに入学したからと言ってもみなまだ子供だ。

 走るガイを横目に遊んでいる者も多い。

 トビラたちの視線に気づいたのか、ガイがこちらを見てナイスガイポーズをとった。

 

「応援ありがとう!」

 

 急なことにビクッとした双子は顔を見合わせた。

 

「お、俺らは応援したのか?」

「なんか変わった奴だな。まあいいや。トビラ、俺らも演習場で組手やろうぜ! 今日はカカシの野郎になんか負けてらんねーからな!」

 

 オビトの興味はもうガイから逸れ、走り出した。

 トビラも後を追う前にもう一度ガイを見た。

 すでにボロボロな手足を振り、懸命に走る少年。

通りがかった他の生徒がバカにし、それに対しても「応援ありがとう!」とナイスガイポーズ。

 

――あやつ……強くなるな。

 

「木の葉の未来は豊かに芽吹いているようだな」

「どうしたー? トビラ?」

「いや」

 

 追いかけてこないトビラを振り返ったオビトに首を振り、弟も駆けだした。

 

 

 

 

 

 祖母の代わりに切らした醤油を買いに出たトビラが道を曲がると、ちょうど中忍たちが話しながら歩いていた。

 

「あの親子もよくやるよなぁ」

「ほんと、万年下忍がよくやるぜ」

「忍者ごっこしてりゃいいんだから気楽でいいよなぁ」

「俺ならあんな年で下忍なんて恥ずかしいぜ」

「あの年でも下忍でいるなんて役立たずってことなんだからさっさと辞めろっての」

 

 トビラは眉をひそめた。

 

「貴様ら、忍の何たるかを知らんのか」

「ああ?」

「なんだよ、チビ!」

「お前もあの万年下忍の息子か?」

 

 中忍二人が振り返り、トビラを見下ろした。

 

「貴様らの言う万年下忍が誰を指すかは知らんが、下忍が役立たずという認識を改めろ」

「下忍ですらねーガキが何言ってんだよ!」

「はぁ……」

 

 話が通じないとばかりにため息を吐いたトビラに大人が拳を振り上げた。

 

「その下忍ですらない子供に拳一つ当てられないのによく言えたものだ」

 

 苦も無く中忍たちの拳を避けたトビラは軽い仕草で二人の急所を仕留めた。

 うずくまる大人二人を見下ろすその表情は幼子とは思えない。

 

「なぜ下忍、中忍、上忍の区別があると思っている。ランクにあった任務を割り当てることで忍の死亡率を下げるためだ。単なる区別であって、貴様らのように他人をバカにするためではない。何歳であろうと任務をこなしている以上、下忍も木ノ葉の忍びであることに変わりはない」

 

 幼子は腕を組んだ。

 

「もしも年齢ごとになるべきランクが決まっているのだとしたら……貴様らが上忍になっていないのはおかしいな」

 

 大人二人はうっと言葉を詰まらせた。

 

「里のためにできることは人によって違う。火影が忍として認めた以上、いなくて良い忍などいない。覚えておけ」

 

 トビラは踵を返し、中忍二人はしばらく動くことができなかった。

 

「俺に何か用か」

 

 さっさと醤油を買いたいトビラだが、後をついてあるく気配に振り返った。

 緑色のスーツを纏った少年がそこにいた。

 

「マイト・ガイか。どうした」

「ボクを知っているの?」

「アカデミーで同じ授業を受けていただろう」

「え? そうだったか?」

「…………うちはトビラだ。それより用件は」

 

 ガイはパクパクと口を動かし、何を言おうか考え、結局笑顔になってナイスガイポーズをした。

 

「俺と父さんの応援、ありがとう!」

「どういう意味だ」

 

 疑問のままトビラが尋ねたが、

 

「ガイ! こんなところにいたのか! さあ、青春はまだまだこれからだ! 行くぞ!」

「うん! 父さん!」

 

 新たに現れたガイにそっくりな全身緑タイツの中年が呼びかけたので、ガイは説明することなく立ち去った。

 残されたトビラは腕を組んだまま、数十秒、動きを止めたが一つため息を吐いた。

 

「さっさと醤油を買いに行くか」

 

 

 万年下忍、という言葉を聞いたからだろうか。

 醤油を手に入れたトビラは懐かしい気配を見つけた。

 

「コスケか」

 

 それは己の代からの万年下忍のコスケ。

 若いころに功を焦って仲間を殺した贖罪から下忍であり続けることを誓った男だが、今はもう老年に差し掛かっている。

 

 懐かしんだのはほんの数秒、気づかれることなく通り過ぎようとしたがコスケはトビラを振り返った。

 そして穏やかな表情のまま軽く会釈し、すぐに歩き去った。

 

――バレていないよな。ヒヤヒヤさせおって。

 

 もうこれ以上の遭遇はごめんだ。

 そう思ったトビラは家へと駆けこむのだった。

 

 

 

 

 

 夕焼けも当たらない暗い場所に男は立っていた。

 

「そうか。うちはの双子、どちらも現時点で才能が見受けられるか」

「兄の方はそこまでではありませんが、特に弟のトビラの方。あれはすでに上忍クラス。かなりの手練れかと」

「うちはトビラ……危険因子であることに違いはないが……このまま監視を続けるか、いっそ根に吸収するか……悩ましいところだな」

 

 木の葉の根が幼子に伸びようとしていた。

 

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