これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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YouTubeの公式チャンネルで公開された「うちは一族特集」良かったよね


虹

 

 マダラが完成体スサノオで空を割ったせいで、里の上に出来ていた雲はぱっくりと割れている。

 そのせいで里は光が差す部分と曇り空でかげる部分ができていた。

 そして、晴れたまま雨が降り出し、里の者たちを濡らしていく。

 

「これはいかん! 早く帰らねば風邪を引かせてしまうな! しかし安心するがいい! 俺の青春パワーなら雨も弾く!」

「あの……俺は自分で歩けるので降ろしてください」

「遠慮はいらん! 誰かを背負って走るのも良い修行になる!」

「俺を重り代わりにするのはやめてください」

 

 避難所から出ることができたガイは、一緒にいたイタチを背負ってうちは地区へと駆けた。

 イタチは無理やり降りることも出来ず、背負われるまま。

 

――雨粒が当たるよりも駆けるスピードが早いおかげで濡れていないな……

 

 仕方なくガイの走りを分析するイタチ。

 

「あれ? イタチ? 怪我でもしたのか?!」

「む? 友達か?」

 

 シスイが声をかけて来たことでガイも足を止めた。

 ちょうど甘味屋の軒下で雨宿りにもなりそうだ。

 

「いや、俺はどこも怪我していない。この人の重りにされていただけだ」

「お守りしてもらったのか?」

「違う。重りだ」

「だからお守りだろ」

「……もういい」

 

 やっと背中から下ろしてもらえたイタチは安堵の息を吐いた。

 その様子からイタチが進んで負ぶってもらっていたわけじゃないと悟ったシスイはヒソヒソと尋ねた。

 

「そんなに嫌ならさっさと降りれば良かったのに」

「この人を甘く見るな。降ろしてももらえなかったんだ」

「イタチが?」

 

 イタチは3歳とは言え、すでに運動神経はかなり良い。

 大人の背中から飛び降りるぐらいわけないはずだ。

 それをさせてもらえなかったということは、この全身緑タイツの男はかなりの強者。

 シスイの中で上がるガイへの評価、イタチの中で上がるガイへの警戒心。

 

「お天気雨というやつだな。雲が流れればすぐに雨もやむ。このまま待つとしよう!」

 

 そう言って逆立ちを始めるガイに二人そろってビクッとした。

 木の葉の気高き碧い猛獣が考えることはシスイたちにとっても予想外。

 

「君らもやるか?」

「いえ、結構です」

 

 きっぱり断ったイタチの目が店内へと向く。

 彼らが雨宿りしている甘味処は早くも営業再開していた。

 

「イタチ。お前さっきアイス食べたばっかりだろ。ミコトさんに叱られるぞ」

「雨宿りの迷惑代を払うべきだとは思わないか」

「ったく。じゃあせめて半分こな」

 

 二人は軒下で逆立ち腕立て伏せをするガイを放って店内で甘味を満喫することにした。

 

 一方、雨の届かない場所にいるオビトは肩を震わせ、ダンゾウたちに訴えた。

 

「アンタたち上役が俺を信用できないのは分かる。俺は弟を信じ切れず、仲間を傷つけたクズだ。ここに来た時からもう覚悟はできている。俺の存在が里のためにならないのなら、どんな処罰も受ける」

 

 そう言って顔を上げたオビトは真摯にダンゾウを見つめていた。

 そのまっすぐな視線はダンゾウもたじろぐほど。

 

「だからカカシから俺の目を奪うのはやめてくれ。あいつは俺と違って里を守った英雄だ」

「いいだろう。ならばその目を」

「お前はさっきから何様だ!」

 

 オビトに気がいっていたダンゾウは掴みかかって来た綱手に反応が遅れてしまった。

 

「綱手! 何をしておるのじゃ!」

「その手を離せ!」

 

 ダンゾウの胸ぐらを掴む綱手に驚きながらも止めようとするホムラたち。

 そんな彼らにも綱手は一喝した。

 

「アンタたちもアンタたちだ! 確かにオビトは一度間違えたのかもしれない! けど、こいつの火の意志は消えちゃいなかった! 今のコイツは里の脅威じゃない! 木の葉を守る忍、うちはオビトだ! だからこそミナトもカカシもトビラもここまで動いている!」

「身内で目がくらんでいるだけだ……あらゆる可能性に対処しないと里を滅ぼす」

 

 ダンゾウは綱手に掴まれたまま言い返した。

 綱手はそんなダンゾウを突き飛ばすように手を離し、見下ろした。

 

「猿飛先生にあってアンタに無いもの……それは信じる力だ。里はもうアンタたちの時代じゃない。ミナトを次の火影として選んだのなら、その決定を尊重するんだな」

 

 尻餅をついたダンゾウに寄り添うように集まる相談役たち、そして語りかける三代目。

 

「こちらで枷をつけなくともオビトはもう大丈夫であろう。ミナトたちがついておるのだから」

 

 さらにヒルゼンは言った。

 

「のう、ダンゾウ。すまなかった。ワシはお前にちと頼りすぎた。ワシが誰よりも甘い忍びだったせいでお前に里の闇を全て背負わせてしまったのだからな」

 

 ヒルゼンはいまだ尻餅をついたままのダンゾウに手を差し出した。

 

「もう次に託す時が来たのであろう。ワシらもようやく隠居が出来そうだ」

「…………な」

 

 これ以上の屈辱はない。ダンゾウはそんな表情をしていた。

 

「ふざけるな! どこまでも俺をバカにしおって!」

 

 差し出された手を叩き、ダンゾウは一人で立ち上がった。

 そしてそのまま部屋を出て行ってしまった。

 

「ダンゾウ!」

 

 追いかけようとする三代目を相談役たちが止めた。

 

「ヒルゼン、今はダンゾウよりも里だ」

「オビトのことはミナトに任せるとして、他にも決めることは山のようにある」

「次に託すのはいいが、今の火影はお前だ」

 

 トビラへの疑念が解消され、オビトの処遇もミナトが決めることとなり、話は里の運営へと移った。

 さすがにそこまでの会議にカカシたちが参加する必要もないため、里の上役やミナトを除いた者たちはここで解散することに。

 

「オビト、君のことは後で決める。今は綱手様たちと一緒に病室に戻ってくれ。自来也先生はすみませんがクシナを……」

「ああ任せておけ。こうなったら乗り掛かった舟だ。ワシがちゃんと家まで送る」

「お願いします。クシナ、俺がそばにいてあげられなくてすまない」

「いいのよ。それよりもしっかりね、ミナト!」

「ん!」

 

 申し訳なさそうにしていたミナトだが、クシナに激励され一気に嬉しそうな顔に。

 そんなミナトに自来也は釘を刺した。

 

「そうだぞ、ミナト。ここでしっかりやれる男だってところを見せないとあっという間に綱手姫に火影の座を奪われちまうぞ」

「バカを言ってるんじゃないよ。五代目火影はもっと適任がいるだろ」

 

 綱手の目が所在なさげなオビトへ向く。

 だが、当のオビトは困惑し、泣きそうな表情をしている。

 

「なんでだよ……どうしてミナト先生も綱手のおばさんもカカシもそこまで俺に……」

 

 うつむくオビトにカカシは優しく語り掛けた。

 

「オビト……写輪眼を通して流れ込んできたんだ。お前の痛みが」

 

 カカシの写輪眼が歪む。

 

「お前が見た絶望が俺にも見えた。すべてを信じられなくなって憎むほどの絶望が。だからこそ逃げようとした気持ちも分かる」

「カカシ……」

「でもな、この目がある以上、お前一人で逃げるなんて許さないよ。神威を使って逃げたとしても、俺もそこへ行ける。俺はもうお前を暗い場所へなんか行かせたくない」

「そこまでするほどの価値は俺には…………」

「お前も俺の仲間だ。俺だって仲間を守らないクズにはもう……なりたくないんだ」

 

 カカシの言葉に俯くオビトの目から涙がぽろぽろ零れた。

 

「相変わらず泣き虫だね、お前は」

「うっせーんだよ……バカカシ…………」

「ほら、行くよ」

 

 立ち止まるオビトにカカシが手を差し出す。

 その手を素直に受け取ったオビトは歩き始めた。

 そんな彼にサクモが振り返って微笑みかけた。

 

「言いそびれていたけれどオビト君。息子を守ってくれてありがとう。君が生きていて良かったよ」

 

 オビトの目が潰れたサクモの利き腕に向く。

 その視線に気づいたのだろう。サクモは気にするなとばかりに静かに首を振った。

 そんなオビトの背を綱手がドン、と叩く。

 

「いい男になりなよ! リンたちがお前を死ぬ気で助けたんだからな。無駄にしたら許さないぞ」

「あ! そういやリンもシズネも、それとえーっと……」

「薬師ノノウです。これでも医療部隊長をしています」

「ノノウさんもありがとう! あんま覚えてねーけどなんかすげーことして俺の胸の穴塞いでくれて…………」

 

 オビトの手がふさがれた穴を押さえた。

 

「おかげでみんなのチャクラをここに感じる。あ、もちろんトビラがくれた血とチャクラも……ってあれ? トビラはどこだ?」

 

 てっきりそばにいるかと思っていた弟の姿がないことに慌てるオビト。

 大蛇丸が答えた。

 

「トビラくんならちょっと用事ができたらしいから別行動よ」

「はぁ?! こういう時って一緒に来るもんなんじゃねーの?! トビラぁ!」

 

 オビトが叫んでいる一方でトビラは建物の外にいた。

 里に振っていた天気雨もやみ、太陽が雨に濡れた建物をキラキラと輝かせる。

 

「お、見ろよイタチ。こんなデカいの珍しいな」

 

 同じころ、甘味処にいたシスイがすっかり晴れた空に気づいて指さした。

 そこには空いっぱいの虹がかかっていた。

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