「なるほど。自来也が面倒を見た子供たちの中に輪廻眼を持つ者がいて、その目はマダラが埋め込んだ可能性が高いということか」
火影室にて自来也とフガクが揃って頷く。
部屋には三代目含め彼ら3人のみ。
「輪廻眼とは伝説の存在かと思っていたがまさか写輪眼が行きつく先だとは……」
「うちは一族の者でそれを知るのは私だけでしょう。特別な目を持つ者だけにしか読めないうちはの石碑に書かれていました」
「特別な目……万華鏡写輪眼か」
「ええ。ですが私でも読めない部分はまだあったので……おそらく永遠の万華鏡写輪眼でないと読めない部分もあるはずです」
「なんと。フガク、それは一族の大切な秘密なのであろう。ワシらに教えて良かったのか?」
「確かに一族の誇りは守るべきですが……里あっての一族です。火影様ならば悪用もしないと信じています」
「もちろんじゃ。さて自来也、その子供らは雨隠れにいるのだったな?」
自来也は真剣な面持ちで言った。
「ああ。俺が面倒を見たのは3人。輪廻眼を持つ子供の名前は長門。年は今のオビトたちより少し上ぐらいだろう」
「お主の放浪癖がこんなところで繋がるとはな」
「三代目、俺に行かせてくれ。俺ならば雨隠れの長門たちと話を通せる」
「うむ。かつての教え子であれば敵対せずに話ができるであろう」
三代目が頷いたとき、扉が開いた。
「雨隠れの者が教え子だと? どういうことだ」
「ダンゾウ。それにトビラまで」
ズカズカと入り込む二人、主にダンゾウに向けてフガクが顔をしかめた。
「火影様と重要な話をしているところなのですが」
「こちらの方が重要だ」
言い返したダンゾウはそのまま自来也を睨みつけた。
「雨隠れの長門とは暁の忍だな。それがなぜお前の教え子なんだ」
「親もいない子供らに生きていくだけの術を教えただけだ。それより暁とはなんだ?」
「教え子がいる組織のことも知らずによく話が通せるなんて言えたものだな」
嫌味を言うダンゾウの代わりにトビラが答えた。
「雨隠れで急激に拡大している組織らしい。平和を訴え、戦争を止めることを目的としているようだ」
「長門たちがそんな組織を……そうか、平和を」
オビトが見つかってから里にいた自来也には届いていない情報だった。
だが、その顔は嬉しそう。
「やはり予言の子は長門なのだな。なおさら、ワシが行かねばならんな。雨隠れならサンショウウオの半蔵がまとめている。半蔵は和をもって忍世界を平和に導かんと志す者であったはずだ。長門たちとも話が合うんじゃないか?」
「何を腑抜けたことを言っている。その暁という組織、その半蔵の主権すら脅かそうとしている。もしも暁が雨隠れを奪えば、混乱は避けられん。現に、半蔵から暁を潰す支援要請が来ている」
ダンゾウの言葉に三代目が目を丸くした。
「あの半蔵から? 本当なのか? ダンゾウよ」
「すぐに暗部を手配し、暁は潰すべきだ。雨隠れをまとめられるのは半蔵だけ。そんな得体の知れない若造どもでは国が荒れるだけだ」
「何を言っとるんだ! 長門を殺すつもりか?! あの子はこの忍の世に変革をなす者だぞ!」
「バカげたことを。お前こそ他国の子供に忍術を教えていたなんて何を考えている? いくら三代目が甘かろうが正気の沙汰ではない!」
「少しは落ち着いたらどうだ」
殺気立つ自来也とダンゾウの間をトビラが取り持ち、三代目に尋ねた。
「どうやら自来也は暁の長門とやらに詳しいようだな。けど、なぜフガクもここに?」
「その長門にマダラが関わっている可能性が高いからだ」
「マダラが? …………あやつの両目の行方がその長門とやらに?」
「その可能性が高い」
輪廻眼のことまでにはたどり着かずとも、大体のことを察したトビラはダンゾウに言った。
「そうなるといくらこちらが暗部を送ったとしても無駄足だ。その長門とやら、相当に強いだろう。対話が通じるなら試す価値はある。自来也、お前の知るその長門とやらは好戦的な人物ではないのだな?」
「ああ。ワシの知る長門は仲間思いの優しい子だ。そばにいる弥彦と小南も同様にな。今も平和を目指すのならその心持ちは変わっていないはずだ」
自来也は三代目に改めて宣言した。
「すぐにでも俺は雨隠れに行く。でないと、教え子たちを殺されかねん」
彼の睨む先にはダンゾウが。
自来也に賛同できないようだ。
「暁に協力して半蔵を倒し、それが果たして木ノ葉の利となると本気で思っているのか」
「半蔵と長門たちの理念はどちらも平和のはずだ。殺し合わずとも、互いに分かり合える。誤解があるようならワシが間を取り持つ」
言い切った自来也に三代目も同調した。
「うむ。木ノ葉の三忍を名付けたのは半蔵じゃ。自来也であれば半蔵とも話がつけやすいであろう」
トビラがすかさず言った。
「対話の道を選ぶならば急いだほうがいい。半蔵は暁を潰すための戦力を整えているところらしいからな。そうだろう、ダンゾウ」
「……木ノ葉の暗部が到着するのを待っているはずだ。こちらとしては雨隠れに恩を売るつもりだったのだが」
三代目が眉をひそめた。
「ワシは聞いとらんぞ、ダンゾウ」
「表立ってやったら他の四大国が黙っていない。小国への内政干渉なのだからな。自来也の派遣もお前がやったと分かればまた戦争が始まるぞ」
脅すダンゾウに自来也が言った。
「心配なさんな。ワシぁ元々、里の風来坊。誰にも言わず、教え子に会いに忍び込んだってことにすりゃあいい。もし失敗したらその時は……」
自来也は最後まで言わずに火影室を出ようとした。
そんな彼を三代目が呼び止める。
「自来也、表だって増援はできずとも、こちらからも暗部を派遣する。暁を潰すためではない。対話の手助けをするためじゃ」
「やめとけジジイ。木ノ葉が裏切ったと半蔵が受けとればその後が余計に面倒だ。こういうのは隠密行動に限るの」
「ならば話し合いができぬようであればすぐに戻れ。お主はまださっきの戦いの疲れがとれておらぬであろう」
「おいおい、アンタたち年寄りと一緒にしなさんな。今から仮眠をとりゃあ十分、今晩の出発には間に合うさ」
出ていく自来也の背を三代目が心配そうに眺める。
そんな中、フガクがトビラに耳打ちした。
「早急に見せたいものがある。オビトを連れ出し、一族の神社へ来なさい。ダンゾウや他の者たちには気取られぬように」
トビラは言われたとおりにオビトをうまいこと病室から連れ出し、フガクと3人でうちはの石碑の前に立った。