これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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夜明けへ導く者たち

 半蔵たちが撤退し、弥彦はさっそくオビトのさっきの発言について問い詰めた。

 

「おい! 毎日ここに来るなんて本気か?! 待ち伏せできるのはお前だけじゃなく、半蔵も同じだ。まさか死にに行くつもりか?」

「じゃあこのまま決裂していいのか? 俺たちは半蔵とお前ら暁の間を取り持つために来たんだ。まずは半蔵とも話をしねーと始まらないだろ」

「……俺だってそれをしようとしてこのザマだったんだ」

 

 悔しそうに顔をゆがめる弥彦。

 自来也が間に入った。

 

「まあお前さんら。なかなかに危ないところではあったが、まずは皆の無事を喜ぼうじゃないか」

 

 彼の言葉に小南が弥彦に詰め寄った。

 

「弥彦! 私はいいから二人で逃げてって言ったのに!」

「あの時はそれが一番だと思ったんだ。それより小南、怪我はないな?」

「ええ。そこの彼が助けてくれたおかげでね。そういえばお腹の傷の手当てをした方がいいわ」

 

 小南がオビトを見たが、当人はケロッとした顔で腹に張り付いてた紙を剥がした。

 

「さっきの傷ならもう治ってるから平気だぜ。切られたのも柱間細胞のところだからな」

「というかお前、その胸の傷も手当てしなくていいのか?」

「ああ。こっちも平気。そこまで深い穴じゃねーし、もっとひどい怪我を治してもらったばっかりだからな」

「一体どういう身体してんだお前は」

 

 驚きのあまり呆れる弥彦にオビトがビシッと指さした。

 

「おいおい! いつまでお前って呼ぶんじゃねーよ! 俺はうちはオビト! んでお前が弥彦だろ! 自来也のおっさんから話は聞いてるぜ! よろしくな!」

「うちはってあの写輪眼の一族のうちはか? じゃあさっきの不思議な術も写輪眼の力か」

「初めて見たけれど長門みたいに強力な力ね……長門? どうしたの?」

 

 小南が声をかけるも、長門は蒼白な顔をしたまま。

 弥彦がその顔を覗き込んだ。

 

「おい長門! どうした? まさかお前、どこか怪我をしたのか?」

「もしもあの時、オビトが来なかったら俺は弥彦を殺していた……そんなことになったら今ごろ……」

「おい泣くなよ! 助けてくれたオビトに雨隠れの男が泣き虫だって思われちまうだろうが! 自来也先生も言ってくれただろう。危ないところだったが俺らはみんな無事だ」

 

 弥彦は元気づけるように明るく言い、長門の背を叩く。

 小南は先に冷静さを取り戻し、進言した。

 

「とにかく一旦、アジトへ戻った方がいいわ。自来也先生たちも新たな拠点に案内しましょう」

「そうだな。先生、どうしてここに来たのかも含めて戻ったら教えてもらえるか?」

「ああ、もちろん」

 

 そうして自来也たちを引き連れ戻った弥彦たちを暁の面々は明るい顔で出迎えた。

 

「リーダー! その感じだと半蔵と木ノ葉の会合は成功だったんだな!」

「いや、半蔵には裏切られた。元々、俺らとも他の国とも平和交渉をする気なんて無かったようだ」

 

 弥彦の言葉にざわつくメンバーたち。

 

「けど、木ノ葉から俺たち3人の師である自来也先生、そしてうちはオビト、この二人が来てくれた。少し話をさせてくれ。それによって今後の暁の動きも決めていきたい」

 

 暁のメンバーたちとは離れ、弥彦たち3人だけで使える部屋に通された自来也とオビト。

 師との再会を喜んだのもつかの間、弥彦はすっかり長としての顔つきになっている。

 

「半蔵が言っていたな。木ノ葉が裏切った、と。つまり木ノ葉も俺たち暁を潰すつもりなのか?」

「半蔵から木ノ葉へ増援要請があったのは事実だ。が、それ以上に優先するものが見つかっちまったからワシはここへ来た。長門、お前の輪廻眼についてだ」

 

 自来也がそう言うと、すぐさま弥彦と小南が長門をかばうように前に出た。

 

「まさか長門の目を奪おうなんて考えちゃいないよな、自来也先生!」

「もしそうならたとえ先生と言えど、私たちは黙っちゃいない」

 

 さっき裏切りに遭ったばかりなのもあり、弥彦たちはピリピリしている。

 そんな彼らにオビトは更なる燃料を投下した。

 

「確かに俺は輪廻眼を回収しろって言われて自来也のおっさんを追いかけここに来た。命令して来た爺さんは長門が死ぬって思っていたんだろうな」

 

 弥彦たちの顔に緊張が走る。

 

「けど、俺は長門の目を奪う気も殺す気もない。ただ、その目の真実について伝える義務が俺にはある」

「俺の目の真実……?」

「ああ。その輪廻眼は元々、うちはマダラが開眼したものだ。そしてマダラは長門、お前にその目を託した」

「うちはマダラ……?!」

「うちはマダラだと? マダラってあのマダラか? それならとっくに死んでいるはずだ。今頃マダラの名前を出すなんてよっぽどのバカか俺らを茶化しているのか……」

 

 弥彦が呆れながら言葉を続けるも、オビトも自来也もいたって真剣な表情をしていることに気づいた。

 

「マジかよ。自来也先生もマダラがやったと思ってんのか?」

「ああ。うちはマダラはつい最近まで生きていたんだ。そして写輪眼の行きつく先は輪廻眼だということも判明した。その目はきっとマダラが長門にはめ込んだんだろう。お前も気づかないうちにな」

「けど自来也先生。うちはマダラってのは確か木ノ葉を襲って初代火影に倒された伝説の忍だろ。生きているとして、どうして雨隠れの長門に目を託すんだ。まさか長門に木ノ葉を襲わせるつもりなのか?」

「それも計画の一つなのかもしれないな。マダラは長門も第二のうちはマダラにするつもりだったんだろう。俺みたいにな」

 

 オビトは長門に語り掛けた。

 

「なあ長門。もしもさっき本当に弥彦を失ったらお前、どうなっていた?」

「おい、長門に変なことを聞くな!」

「お前はきっとすべてを信じられなくなってこの世界を憎しみ、絶望したはずだ。お前にとっての光を失うんだからな」

「オビト、テメエいい加減にしろ!」

 

 弥彦が掴みかかってもオビトは抵抗しなかった。

 長門の輪廻眼が揺らぎ、そしてオビトに向く。

 

「まさかそれがマダラの狙いなのか? 絶望した俺にこの世界を破滅させたかったのか?」

「さあな。そこまでは分からない。けど、俺は実際マダラになりかけた。引き戻してくれる仲間がいたおかげで本当に大切なものを失わずに済んだけどな」

 

 オビトを掴む弥彦の力が緩んだ。

 

「ただ、俺は長門と違って取り返しのつかないことをしちまった。だからこそ、マダラがやろうとしていたことを止めてーんだ。マダラとは違う形でこの世界を平和にするために」

「だから長門を……俺らを助けてくれたのか?」

 

 胸ぐらから手を離し尋ねる弥彦にオビトは頷いた。

 

「ったく、それならそうと先に言ってくれよ。悪かったな、恩人のアンタに手荒な真似しちまって」

 

 弥彦はオビトに謝り、振り返った。

 長門は考え込んだ様子で、ぼそりと言った。

 

「少し、一人にさせてくれ」

「長門?」

「おい長門!」

 

 そして長門は外に出て行った。

 追いかけようとする弥彦たちを自来也が止めた。

 

「ここはワシに任せてはくれんかの。久しぶりにじっくり話したい」

 

 弥彦と小南は心配そうに長門を追う自来也の背を見送った。

 が、ここは師に任せた方が良いと思うことにし、オビトに向き合った。

 

「お前は長門をどうするつもりだ? このまま木ノ葉に連れ帰るのか?」

「いいや。長門は暁のメンバーなんだから連れ帰りなんかしねーよ。お前ら、このまま雨の国に留まるつもりなんだろ?」

「半蔵との関係がああなった以上、難しいかもしれないがな」

 

 ため息を吐く弥彦に小南は言った。

 

「弥彦、そろそろ他のメンバーたちが心配し始めるころだわ。私はそっちに行く」

「ああ。分かった。けど、長門の目のことはまだみんなには言わないでくれ。……なあオビト。俺らも少し外の景色を見て話そう」

 

 弥彦が連れて行ったのはアジトの屋上。

 雨が降り続ける曇り空が良く見える場所だった。

 

「この国はずっと泣いている。痛みに耐え続けている。俺はそんな国を変えたいと思った」

 

 弥彦は雨に濡れるのも構わず空を見上げる。

 その横にオビトも立ち、同じ空を見上げた。

 

「暴力ではなく対話によって争いを無くし、平和を目指す。それが暁の理念だったか?」

「ああ。相手の痛みを知り、同じように涙を流せて初めて本当の世界に近づける。俺はそう信じている」

「……痛みを分かち合うことで互いのことも理解し合えるってことか?」

「そうだ。決して同じ目に遭わせて復讐しようって意味じゃない」

 

 弥彦の言葉にオビトはカカシを思い出した。

 

――オビト、写輪眼を通して流れ込んできたんだ。お前の痛みが。

 

 そう言って苦しそうに顔をゆがめ、手を差し伸べてくれた相棒を。

 だからこそオビトは弥彦の言葉に共感した。

 

「アンタの言いたいこと、分かる気がするよ。俺も痛みを分かち合ってくれる奴がいたおかげで今こうしてここにいられるからな」

「そうか。どんな奴なんだ? そいつは」

「カカシって言うんだけどそりゃあもう、ネチネチうるさくって嫌味な奴だぜ。ガキの頃から何でも卒なくこなして俺に説教ばかりでさ」

「おいおい、お前ら仲いいんじゃねーのか?」

 

 弥彦は言いつつも笑っている。

 オビトも表情を緩めた。

 

「俺とカカシは喧嘩ばかりだからさ、いつもリンって子が俺たちの架け橋になってくれてるんだ」

「架け橋か……なあ。俺は長門が平和への架け橋になる男だって信じて来た。あの輪廻眼でこの憎しみばかりの世界を変えてくれると……」

 

 弥彦は雨の中で拳を作り、オビトに向けた。

 

「そして今でもそう信じている。俺の役目は長門を支える柱になることだ。なあオビト。俺は仲間を守りたい。この世界も変えたい。だから協力してくれないか?」

 

 オビトもニッと笑って拳を突き合わせた。

 

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