side 燐
俺は英語の遠藤先生を呼びに職員室に向かっていた。
開戦から少し経ち、今が一番しんどい時間帯だろう。
職員室手前、そんな時確か須川・・・?の放送を聞いて血相を変えて教室を後にする船越先生を見て明久に同情した。さらば、明久安らかに眠れ。
そんなこんなで遠藤先生と一緒にFクラスに戻ろうとしていると、先生に頼まれたのだろうか、Aクラスにプリントを運ぼうとしている優子さんが見えた。
「優子さん。手伝うよ。」
さすがに見て見ぬふりはできないので声をかける。
「あ、如月くん、いまFクラスは試召戦争中じゃなかった?急いでいるだろうし、大丈夫よ。」
ちなみに高橋先生も戦争に駆り出されているため、ほかのクラスは自習になることが多い。
「俺たちのせいで自習になっちゃったんだろうし、それくらいはさせてよ。」
「わかったわ。一人じゃちょっと大変だったしお願いするわ。」
「任せてよ。遠藤先生もちょっと時間かかってしまいますが、すいません。」
「ええ。大丈夫ですよ。」
Aクラスに自習のプリントを届けに渡り廊下を歩いていた時、突然後ろから声をかけられた。
「見つけたぞ、木下。こんなとこにいたのか。遠藤先生もいるじゃないか!ちょうどいい。補修送りにしてやる。遠藤先生、召喚許可を。サモン。」
優子さんのことを秀吉と勘違いしているがこの感じからすると、説明しても聞き耳を持ってくれないだろう。
相手は3人。まあなんとかなるだろう。英語でよかったと心から思った。
「優子さん。下がってて。サモン。」
「如月くん。いいのですか?」
と遠藤先生も事情も分かっているので心配してくれているが、この3人をFクラスに引き連れるほうが雄二のこともあり、被害も拡大するだろう。
「大丈夫です。お願いします。」
「如月くん・・・」優子さんも何か言いたそうな顔をしていたが気にしている余裕はなさそうだ。
「相手は一人か?Fクラス相手なら余裕だな。」
Dクラス
高橋海斗 英語R 95点
鈴木一郎 英語R 112点
佐藤寿郎 英語R 108点
よかった。200点台の人がいたら少し大変だったな。
Fクラス 如月燐 英語R 356点
「ど、どうしてそんな点数の人がFクラスにいるんだ・・・まあいい、こちらは3に人d・・・」
Dクラスの一人がしゃべっているうちに俺は一人の頭を狙い撃つ。仮にも戦争かつ人数不利なのだ。卑怯、汚いは負け犬の言葉だよ?
高橋海斗0点
「お、おい、汚いぞ、そんな点数なのにそんなやり方でいいn・・・」
全く学習能力がないな。君もFクラスのほうがお似合いなんじゃないか?
そう思いながら喋っている鈴木君の頭を撃つ。
もうここまで来たら1v1になった。顔を青ざめた佐藤君「すまなかった。ここは見逃してくれn・・・」は命乞いをするが、そのセリフを最後まで聞かずに頭を撃つ。
鈴木一郎 0点
佐藤寿郎 0点
「戦死者は補習~~~!!」
どこから現れたのか鉄人がものすごい速さで迫り来る。
英語の点数は消耗したくなかったので、点数を削らずに済んだのは相手の馬鹿さに助けられたな。
「如月くんもなかなか容赦ないことするのね・・・でも私のせいで巻き込まれちゃったのにごめんね。」
なぜか優子さんが謝る。
「全然いいよ。おかげで3人補習室に送れたし。それにしても秀吉と優子さんを間違えるなんて、優子さんのほうがこんなにもかわいいのにね。」
おっと。初陣の興奮も冷めなかったうちについつい口が滑った。
「えっ・・・あの、その・・・」
優子さんも顔を俯いてしまった。気まずい・・・
「あ、Aクラスついたね。はい。プリント。優子さんも自習頑張ってね!」
「あ、うん。ありがとね。じゃあまたね。」
と手を振ってそそくさと教室に戻っていった。
「じゃあ、行きましょうか。」
満面の笑みで遠藤先生が言う。
「はい・・・・・」恥ずかしい。穴があったら入りたいとはこのことだ。
それでも俺にはまだやることがあるので急いでFクラスに戻る。
明久side
「ここからもう大丈夫です。Fクラス本隊! 中堅部隊が守ってくれた前線をここで突破しましょう。」
「道を阻む敵Dクラスを殲滅しろ────!!」
Dクラスのピンチに姫路さんが駆けつけてくれた。
「点数が残り少ない人は戦線を離脱して補充試験を受けてください! 本隊は半分は坂本君の護衛です! まだ余裕がある人と本隊のもう半分は私と一緒にDクラスの戦力を一掃しましょう!」
「「「おおおおおおおおっ!!」」」
姫路さんの指示と共に味方の部隊がこれまでにないほどの声を上げた。
まだ出てきて間もないというのに、姫路さんは一瞬で状況を判断して的確な指示を送っていた。
きっと雄二から姫路さんが指揮を執ることで士気をあげられるという作戦も含まれているのだろう。
400点を超える姫路さんの召喚獣と時々聞こえるキュポンという音から放たれる熱線で多くの召喚獣(横溝君も犠牲となったが・・・)をなぎ倒していく。いける。これならいける。
「Fクラス近藤! Dクラス中野に勝負を申し込む!」
「こっちにもいるぜ。俺はDクラス塚原にで勝負を申し込む!」
「俺は斎藤お前だ!」
「なら俺もお供するぜ!」
『く──っ』
敵の部隊長である塚原君の周辺にたくさんのFクラスの本隊が集まる。
部隊の点数が回復したおかげで、姫路さんを筆頭に復活したFクラスの戦力は確実にDクラスの前線部隊の数を減らしていっていた。
今、確実に不利な形勢だった陣営は逆転している──!
姫路さんが来てくれてよかった・・・
「Dクラス塚原。討ち取ったりーーー!」
一際大きな声が上がった。今まで散々苦戦させられていたDクラスの前衛隊長をようやく倒せたらしい。
放課後という時間もあることで、下校中の生徒の人ごみに紛れ奇襲しやすかったというのもあり、かなり戦いやすかった。
いよいよFクラス優勢かと思われた時、新校舎の前線より向こう──Dクラスの教室の近くで代表の平賀君の声が廊下に響き渡った。
「ここまでは予定通りだよ。僕はこれでも代表なんだ。こういう情報も入るんだよ。例えば──振り分け試験で途中退席して0点になった生徒がいるとかね。作戦なしに戦争に挑むわけないのさ。Dクラス本陣! これ以上前線を進ませないよう姫路さんを取り囲め!」
Dクラス代表、平賀君が本隊を連れて新校舎に現れていた。前線の陣形を崩されてついに姿を現したのか。
平賀君の前には、前線に立っていた部隊の倍ほどの本隊が集まっていた。
その数────ざっと二十人以上──。
さすがに姫路さんといえどこの人数は多すぎる。
「そうさ。元々前線部隊は姫路さんを引きずり出すための囮。Fクラスの点数程度じゃあ多人数で包囲でもしない限り、代表を討ち取る事はできないからな。だとすればFクラスは必ず高得点者である姫路さんを切り札に出すであろうことも踏んでいたよ。」
全てを見透かしたような態度で平賀君は言う。悔しいが、確かにその通りだ。
僕達は犠牲になってでも道を切り開いて姫路さんを平賀君の下まで送り届けなればならない。
対してDクラスは姫路さんさえ戦死させるだけだ。Fクラス程度ならば基本的な点数で勝利を手に入れられる。どんなことをしたって勝てるだろう。
堅実に勝つなら、急いで王手を掛けるより、じっくりと兵隊を潰してしまえば良い。それが何より安全で確実だから。
すなわち、はじめからDクラスの標的は代表の雄二ではなく、最終兵器である姫路さんだったということだ。
「相手はざっと15人くらいですか・・・さすがに厳しいですね。」
周囲の状況を確認しながら、姫路さんは僅かに後ずさろうとしたところで、それができないと気づき足を止めた。
背後は教室の壁で、ドアから出てしまったら敵前逃亡として補修になってしまうからだ。
本隊の後ろに控えた平賀君は手を掲げ命じる。
「Dクラス本隊! 全力を持って姫路さんを討ち取れ──っ!」
『『『サモン──っ!!!』』』
平賀君の号令の下、Dクラス本隊は一斉に召喚を開始した!
「Fクラス! 死んでも瑞希を守りきるわよ! 全兵力を持って突破口を開くのよ!」
島田さんが士気をあげる。やるしかないんだ。
「了解! サモン!」
「姫路さんは殺らせねえ!」
Fクラスも召喚獣を呼び出し姫路さんを攻撃しようとした召喚獣の間に割って入る。といえこの人数だ。向こうの方が戦力で勝っている以上、姫路さんがいても不利なのは否めない。
いくらAクラスレベルの強さがあろうと、多人数を相手にしては分が悪い。
指輪も点数を消費するのでそんなに多くの数は打てない。
これではまるでさっきまで僕たちがやっていた人数差を活かしていた作戦と同じだ。
「島田さん。僕らは少しでも人数を減らしに行こう。」
幸いにも数学のフィールドがあるのでそこで美波と操作性の長けている僕で戦って姫路さんの負担を減らそう。
「わかっているわ。後ろは任せたわよ。アキ。」
「え・・・?アキ?」
「そうよ。ウチのことは美波って呼びなさい。背中を任せるのよ。それくらいいいじゃない。」
「わかったよ美波。」
「お姉さまの相手は美春ですわ~~」
「アキちゃんの相手は私ね。」
「「チェンジで。」」
僕と美波は口をそろえて言う。でもそうこうしてられないのが現実でもある。
「「「「サモン。」」」」
Dクラス 清水美春 数学 125点
VS
Fクラス 島田美波 数学 197点
Dクラス 玉野美紀 数学 116点
VS
Fクラス 吉井明久 数学 55点
さあ、勝負だ。
ほんとはここでDクラス戦閉めたかったのですが、展開的に長くなりそうだったので、次で終わりになるかと思います。
試召戦争の表現方法、難しい・・・