アサルトリリィ Hawk   作:ほくシン

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六十耳投稿です。イレギュラー要素はそんなにありません。


第6話『初陣、十人十色(ツェーンヴェルト)!?』

 晴れてレギオンが設立し、レギオンメンバーの私達にはレギオン専用の控室があてがわれる事となりました。

 そのドアの横には木目調のルームプレートがかけられており、レギオン名が達筆な文字でこう刻まれています。

 ───『一柳隊・控室』、と。

 

「一柳……隊!?」

 

「一柳隊がどうかしまして?」

「ええ、一柳隊ですよね?」

「うん、一柳隊」

「うむ、一柳隊じゃな」

「確か一柳隊だったかと」

「私も一柳隊だと思ってた」

 

 私達が確かにネームプレートを確認している一方で、一柳さんは意外な出来事のように戸惑っていたのでした。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 想定していなかったリーダー就任に躊躇う一柳さんを肯定する私達に、足りない所はカバーするけど弛んでいたらつっつくとスパルタ気味な夢結様……といったわちゃわちゃした控室に、少しテンションの上がった二水ちゃんが話を切り出します。

 

「と、ともかくこうして! 九人揃った今ならノインヴェルト戦術だって可能なんですよ!!」

「理屈の上ではそうじゃな」

 

 ───ノインヴェルト戦術。レギオンメンバー九本のCHARMを九つの世界(Neun Welt=ノインヴェルト)に見立てたその必殺技は、特殊弾によって生成したマギスフィアを各メンバーがパスを回して成長させ、最後にヒュージにぶつけるという一撃必殺の戦術です。……ですが、パス回しの為のチームワークや、人によってマギの性質が違う事から育ったマギスフィアほどコントロールするのが難しいこともあって、強力な分とても難易度の高い戦術なのです。

 結成したばかりの私達にできるのか……となるとまだ無理なのですが。

 

「───あっ」

「どうかした、真乃?」

「……えっと、その。九人って事はもしかして、誰か一人は……」

「交代要員として控えてもらう事になるわ。負傷やCHARMの故障、マギの消耗などで一時的に欠員が出ても作戦を継続できるようにね」

 

 私の不安が良い質問と言わんばかりに、夢結様は饒舌に答えてきました。

 

「となると、私達一柳隊の場合は……控えは真乃さん、という事になっちゃいそうですね」

「まぁそうなりますわね。私を含め全員ほとんどレアスキル覚醒済みで実力者揃い。……それに対して。鷹菜詩さんは接近戦の一点だけは光るものがあるとはいえ、レアスキルは未覚醒で……ねぇ?」

「ですねぇ……」

 

 バツの悪そうにタブレットをいじる二水ちゃんに視線を投げかける楓さんが、肩をすくめてため息を一つ。

 ……正直、二人の判断には辛口評価を下された私としても頷くしかありません。レギオンメンバー勧誘の合間に一緒に訓練をしていたお二人と一柳さんは知っていますが、こう見えて私はとても射撃が苦手でして……その上楓さんも言っているようにレアスキルを持たない私なんかでは、どう考えても他の皆さんを差し置いてスタメンに起用される理由やメリットなんてありません。射撃の腕に関してはお茶を濁してくれたのは、楓さんのささやかな配慮なのでしょう。

 

「ま、まぁそう気落ちするでない。真乃がおればわしの『フェイズトランセンデンス』も気兼ねなく振るえるというものじゃ!」

「そうですよ! それにレアスキルに覚醒していないという事は、裏を返せば真乃さんの可能性は未知数!

 覚醒したスキル次第では、一柳隊の大きな戦力になれるかもしれないですよ!」

「ミリアムさん、二水ちゃん……」

 

 

 

「あれ? でもその考えで行くと、私も控えになっちゃうような……」

「梨璃さんはリーダーですので問題ないかと。旗本が控えというのは、流石に格好がつかないでしょうし」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 レギオンとしての戦い方とノインヴェルト戦術の動きをを知るために、私達一柳隊がアールヴヘイムの戦いぶりを見学させてもらう事になった時、そこで事件は起こりました。

 上陸したイカのような大型ヒュージに対し、アールヴヘイムのリーダーである天葉様はノインヴェルト戦術の開始を宣言。素早いパス回しによってマギスフィアは瞬時に完成され、亜羅椰さんのフィニッシュショットによって大型ヒュージはあえなく撃破……のはずが、突然現れた蒼いマギ障壁によって防がれてしまいます。ダメ押しするもヒュージの撃破には至らず、天葉様のCHARM『グラム』は大破。その上ノインヴェルト戦術によってメンバー全員のマギが大きく減っているのもあり、アールヴヘイムは撤退を余儀なくされてしまいました。

 

 そして、その場に残っていた私達一柳隊はというと。

 『あのヒュージ、まだ動いてます!』と先陣を切った一柳さんに乗っかり、戦闘を引き継ぐという名目でドサクサ紛れの初陣へ挑むこととなりました。

 まずは事前に決めていたフォーメーションのAZ(アタッキングゾーン)に位置する一柳さんと夢結様が、一番槍と言わんばかりと突貫。そのままの勢いでお二人の息を合わせ大型ヒュージを切り抜けました。

 大型ヒュージはその重ね一太刀によって、あっさり真っ二つ……と思いきや。まるで意図的に傷を開いたようにヒュージの躰は二つに分かれ、しかもその根本には、何故だか嫌な予感のする青い輝き───マギの輝きが。

 それを見て立ち尽くしていた夢結様を一柳さんが助けたのですが、直後触手に包まれてしまい……どうにか私達で助けたものの、包まれた光景を見て一柳さんがやられてしまったと勘違いした夢結様は、ルナティックトランサーを発動して暴走してしまいました。

 それを止めに奔った一柳さんはどうにか夢結様を落ち着かせようと、『ちょっと待ってて貰えますか』と夢結様を抱えて戦線を一時離脱。一柳さんのお願いを死守命令……とまではいかなくても、指示として受け取った私達は大型ヒュージの相手をすることに。

 そして、それまで後方で控えていた私も"結梨さん"の抜けた穴を少しでも埋めるべく、前線へと繰り出したのでした。

 

 

「ふっ……!」

 

 

 大型ヒュージが振るう蛇腹剣型の触手を、私はグングニルの刃で受け流します。

 『時間稼ぎを確実にする為に敵の力を削ぐ』という楓さんの指示の下、私達は敵ヒュージの触手の破壊に専念していました。

 

「次、三本目! 行きますわよ!!」

 

 ジョワユーズを開き援護射撃をしてくれる楓さんが、弾丸を以ってターゲットである触手を教えてくれます。それを確かに目で捉えながら、壁を大きく蹴っ───る前に、その触手が私を貫かんと鋭く迫っていました。

 

「真乃さん危ない! 正面から来てます!」

 

 『鷹の目』で敵の動きを見ていた二水ちゃんが、私に危機を教えてくれます。

 大丈夫、私も視えてる───壁を地面に見立てて転げ上がって触手を躱し、自由落下に移り、すれ違いざまに壁に刺さった触手の関節部を回転かけて───

 断ッ!と重く響く金属音。

 確かな手応えを感じながら、そのままヒュージへ向かって翔びます。向かう触手は、勢いを殺さないよう上手く受け流して……本体へ袈裟斬り。けれど流石は大型ヒュージで、体表に傷を確認できないのを見て、私は苦し紛れにヒュージを蹴ってそのまま後退します。

 

「凄い、真乃……」

「あやつ想像以上にやるのう! わしも負けてられんわー!!」

「そ、それほどでも……」

 

 雨嘉さんとミリアムさんに一連の動きを褒められて、照れ臭くなってついヒュージから目を逸らしてしまいます。

 レギオンに入る前に凄い狙撃の精度を見せてくれた雨嘉さんと、自分のCHARMを自分で作ってる上に企業のコンペに出しているミリアムさんに比べれば、私はせいぜいお父さん仕込みの剣道ができるぐらいで……。

 

「よし、いいぞ! 二水! 残りは何本だ!?」

「ヒュージの腕は残り二本です! 先端部は大松三丁目と六丁目交差点に展開中!」

 

 しまった、一息付きすぎた。そう思っていた時には、雨嘉さんと神琳さんの二人が大型ヒュージの足元を通り抜けながら射撃に斬撃にと攻撃をかけていました。私もマギと力を振り絞って、再びヒュージに向かって駆け出します。

 

「あのダインスレイフ、絶対取り戻す!」

「無論ですっ! ヒュージがCHARMを使うなんてありえませんわ!!」

 

 『縮地』で壁を駆けながら梅様が、楓さんがジョワユーズで触手を切り払います。二人の……恐らく私達全員が見据えているであろう先には、マギの光の正体であるCHARM───『ダインスレイフ』が。

 美鈴様に憧れを抱き始めて少し調べてた時、夢結様についても調べた事があるので私も知っています。確か少し昔の情報だと、使用していたCHARMはダインスレイフだったはず。いつの間にかブリューナクになってて、私も少し気になりましたが……とにかく夢結様のモノであるなら、ヒュージには返してもらわなくちゃ。

 触手を切り払い、受け流し、その巨躯に刃を突き立て……心静かに、じっくりと機を伺っていると、梅様が触手の上を駆け抜けてダインスレイフの元へ取り付くのが見えました。楓さんに続いて私も一緒に引っこ抜くべく、迎撃せんとする触手を強く打ち払い突破し……どうにか梅様の元へ。

 

「お前ら……!」

「助けに来ました!」

「ええ、急ぎましてよ!」

 

 私はダインスレイフの柄を、楓さんはシューティングモードのグリップ部分を持ち、見た目より深く刺さっているダインスレイフを引き抜こうと息を合わせます。

 ……その無防備な瞬間を逃さないヒュージではありましたが、雨嘉さんと神琳さん、ミリアムさんと鶴紗さんが援護をしてくれています。ですが神経か何かに深く根付いているのか、ダインスレイフの刃は中々ヒュージから浮きません。

 

 

 その時でした。

 「待ちなさい!」と夢結様の気高い声が。

 「待って!」と一柳さんの優しくも真っ直ぐな声が。

 二水ちゃんの背中から、お二人の姿と共に翔んできたのは。

 

 

「一柳さん、夢結様……!」

 

 

 ダインスレイフから目を離し二人を見ると、確かな絆と意志を感じられるように手を固く繋いでいました。

 その後二人はくるくる回ったと思うと、その遠心力を利用して勢いよく二手に分かれ、ヒュージの巨体に射撃をかけていきます。

 その衝撃は中心の私達の方にも───っ、手応えが変わった! 衝撃の影響かヒュージが弱ったのか、ヒュージとダインスレイフの結合は緩み、その刀身が少し、でも確かに浮き上がりました。そのまま、三人で呼吸を合わせて───

 

「「「───抜けたっ!!」」」

 

 すぐさまヒュージの上から離脱、皆が合流する建物の上にどうにか着地します。

 

 

 

 CHARMの抜けたヒュージを見れば、断面からはマギの光が眩しいぐらいに漏れ出していて、割けた躰は今度こそ弱ったぞとうなだれているのが見て取れました。

 しかし、流石にそれで完全に倒せるほどヒュージは甘くなく。CHARMがなくなってもなお足掻こうと巨体がのたうち回ります。

 まだ動いている大型ヒュージに対して、リーダーの一言により私達一柳隊はぶっつけ本番でノインヴェルト戦術を発動することとなりました。

 紆余曲折あって特殊弾が装填されてしまった二水ちゃんから始まり、梅様がCHARM同士をぶつけ合ってマギスフィアを渡す掟破りながらも確実なパス回しを敢行して、それを真似るように雨嘉さんがミリアムさんへ(奪われるようにだったけど)、ミリアムさんから鶴紗さんへ、そして鶴紗さんが神琳さんへ……。

 パスが回る度にマギスフィアはその人を思わせる色を纏い、マギの純度を高めていっているのが分かります───と見呆けていると。

 

「鷹菜詩さん、行きますよ!」

「しぇ、神琳さん!」

 

 マソレリックを振りかぶりながら神琳さんがこちらへ飛んできました。慌てる思考をどうにか追いやり、近接モードのグングニルを構えて受け止め準備に集中します。

 

「気をつけて! 思った以上に刺激的ですよ!!」

「た……しかに、すごいっ!?」

 

 ……CHARMを通してマギスフィアの、そしてそれに込められた皆のマギを感じます。

 パスを終えた神琳さんは飛び退き、私に次のパスをと目線で訴えます。……後は、夢結様と一柳さんに、

 

「はーいそこ動かないでくださいまし─────────!!!!!」

 

 楓さんだ、と思った瞬間、ジョワユーズを腰だめに構え私に突撃を……というよりも、進路と目線を見るに私の持つマギスフィアへ突撃をかける楓さんの姿がありました。いきなりの制止に思わず従ってしまった所を、強引にCHARMをぶつけられ───そのままかすめ取るように突撃の構えのまま走り去って行きました。

 

「……て、手口がひったくりのそれ!」

 

 思わず言っちゃった。パスらしいパスしてない……でも強引な所は楓さんらしいと言えば楓さんらしいのかな。やり方が大手CHARMメーカーの社長令嬢とはちょっと思えないけど。

 そんな気持ちが胸にうずまきながらパスの経過を眺めていると、突撃形態を崩さない楓さんのジョワユーズが一柳さんのグングニルを捉え、マギスフィアが受け渡され───ませんでした。

 

 

「───あっ、折れたぁ!?」

 

 

 グングニルの刀身がマギスフィアに耐えきれず折れてしまい、再び私は思わず叫んでしまいました。

 

「私の愛が強すぎましたわ!?」

「いいえ、限界よ! 通常のノインヴェルトより一人多いから仕方ないわ!」

 

 グングニルの刃をよそに上空へと昇るマギスフィアを華麗に回収し、夢結様が一柳さんの手を取ります。

 …‥あっ。そう言えば一柳さんと夢結様の抜けた穴をカバーする為に控えの私が出たのに、二人が戻ってきた後もそのまま戦線に残ってたから、確かに一人多いんだ……。つい勢いとその場の雰囲気で……。

 

 大型ヒュージの頭上には、折れたグングニルとブリューナクでマギスフィアを抱える一柳さんと夢結様───結梨さんの二人が。そして防ぐ手立てのなくなった大型ヒュージに向かって落下し、マギスフィアを叩きつけ───

 

 …………………あれ、なんか二人の世界に入ってない?

 

 皆さんもそれを察したのか全員して慌てて結梨さんの元へ駆け寄り、どうにかノインヴェルトの余波から逃げるようにその場を飛び去るのでした───。

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 脱出した先は、さっきまで大型ヒュージと戦っていた区画がよく見える山の草原。

 初めてのレギオンとしての戦いでマギを使い果たした私達は、その草原に寝転がって天に登るマギの粒子を見上げていました。安堵、達成感といった余韻に浸りながら。

 

 

 ……かつて夢結様が使っていたダインスレイフを、ヒュージから取り戻した私達一柳隊。初めてのノインヴェルトを成功、それも十人でやったのですから、駆け出しながらも、なんだか皆とならなんでも出来そうな気がしてなりません。

 そう、美鈴様を見つけることだって───

 

 

『────────────』

 

 

 ふと左に気持ちを傾けると、すぐそこにまだ見つけ出せていないはずの美鈴様が、なぜだかいるような気がしました。

 

 




第 7 話
リ バ イ バ ル
REVIVAL
Shadow mirror -×- [写しの影]

────────────────────────────────────

二水「次回からまさかのオリジナル展開っ!?」
真乃「あなた、は……!?」
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