アサルトリリィ Hawk   作:ほくシン

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初投稿です。
第6話まではほとんどいるだけのようなものなので所々カットしています。


本編
第1話『三人目(?)の補欠合格者』


 私の名前は鷹菜詩(たかなし) 真乃(まの)

 とあるリリィに憧れて、この百合ヶ丘女学院に入学した一年生です。

 と言っても、補欠合格なんですけど……。でも今日から沢山のことを学んで、いつかあの人みたいなリリィになれたらいいなって思っています。

 今日は入学式。でも校門の向こう側では誰かを中心とした人だかりができてて、少しざわついてる様子です。

 どうしたんだろう、何かトラブルでもあったのかな……? 私は同じ一年生でできているであろう人だかりからかき分け、中心へと目指しました。そこに見えたのは、薄桃の長髪に赤いアステリオンを構えるリリィと、影のように黒のひと塗りを思わせるリリィ。

 

「───入学のお祝いに、CHARM(チャーム)を交えていただきたいんです」

 

 あの桜色の髪の人は、同じ一年生の人かな……? その子に絡まれているのは……あれは、夢結(ゆゆ)様?

 あの方については、少しだけ知っています。あの方は白井(しらい)夢結(ゆゆ)様、確か私の憧れの人の"シルト"で……。あ、シルトというのは……え、説明はいい? なら省略しますけど……。

 どうしよう、なんだか決闘が始まりそうな雰囲気です……。なんで入学式なのにこんな事を……でも、私闘はマズいんじゃ。と、とにかく止めないと。入学式始まっちゃうし、夢結様も困っているはず。

 

「はぁーいそこ、お待ちになっ」

「ちょっと、やめましょうよ! ……そちらの方もCHARMを収めて」

「はぁ?」

「……そちらの方がどういうつもりで決闘を申し込んだのか分からないですけど、入学式が始まる前になんてやめてぼふっ」

「ちょっと誰ですのアナタ! 私と夢結様の大事な初対面を邪魔しないでくださいまし!?」

 

 そんな剣幕と共に、後ろからまた新しい乱入者さんが現れて私は横に追いやられそうになりました。

 そこには赤みがかった長髪の、まさしくお嬢様という言葉がよく似合う方が私を睨んでいます。こ、この人も夢結様と手合わせお願いしたい人なのかな……。もしかして今年の一年生って、皆こう……?

 いやいや。ますますよく分からないけど、何であっても私闘なんて良くない。ましてや入学式の日なのに、こんな事起こしたらいけないに決まってる。ここはしっかり注意しないと……。

 

「邪魔じゃありません。私はこの私闘を止めようと……」

「ご心配なく、それは夢結様にご挨拶なさった後にこの私がキッチリやりますから……! いいからさっさとおどきなさい、なっ!」

「だから、実力行使はよくないですよ……っ!」

 

 再び強く追いやろうとする力に抗いつつ、私はどうにかお三方の前に再び立ち直ります。

 

「……そちらの方も、あなたも落ち着いて。憧れの方が目の前にいて、いてもたってもいられない気持ちは確かに分かります。

 でも入学式初日から届け出もない私闘なんて、いくらなんでも問題になりますよ。それにホントにやって、罰を食らうのはあなただけじゃなく夢結様もです。あなたはやれて満足なのかもしれませんけど、本当に憧れていらっしゃるなら夢結様の今後に響くような事をするのは迷惑なエゴ以外の何者でもありません。

 ……なによりこんな私闘は、これから始まる入学式の準備をしてくださった他の上級生の方々にも失礼にあたるはずです。それでもやるんですか、アステリオンの方」

「……あなたに言われずとも、私としては夢結様にご挨拶だけのおつもりだったのですが。亜羅椰(あらや)さん、あなたはいかがなさって?」

「っ、届け出なりなんなりすればいいんでしょう、ったく……!」

 

 お嬢様に名前を呼ばれると、亜羅椰さんなる方は諦めてくれたのか、アステリオンを剣に変形させ構えを解いてくれました。お嬢様の方も、CHARMケースにかけた手を離しています。

 よ、良かった。乱闘に発展しなくて……。ついしゃしゃり出て無事に止められたからまだいいものの、もし乱闘騒ぎになっていたら補欠合格の私なんかに止められる可能性なんてゼロですからね。亜羅椰さんからにじみ出る"やる気"からして、実力があるなんて明白です。こっちのお嬢様も、恐らく一年生の中でも相当な実力者なのでしょう。

 

 その時、安堵を殴りつけるかのような、重苦しい鐘の音が辺りに響き渡ります。

 それで周りの喧騒が止んだかと思うと、いつの間にやら生徒会長の姿がそこにありました。

 なんでも生体標本として確保していたヒュージが研究施設を脱走したので、出れる人は捕獲に協力してほしいとか。

 夢結様が単独で赴こうとした所、ヒュージが擬態する事、夢結様には足手まといが必要と生徒会長が仰った事からか、例のお嬢様と、そのお友達が同行する事になったみたいです。

 ……え、私? どさくさに紛れてこっそり体育館に……。い、いやしょうがないんです。私補欠合格ですし、実戦経験ない人は体育館に行けって生徒会長が仰ってましたし。足手まといが必要とは言いますけど、完全にお荷物なのは求めてないでしょうから……。

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

「ど、どうしよう、迷っちゃった……」

 

 体育館での待機を言い渡されて数時間。予定からだいぶ遅れたけど入学式は今日にちゃんとやるみたいで、私達待機組は会場への移動を言い渡されました。

 ……ですが、移動中にお花を摘みに行っていたら、いつの間にか他の皆さんを見失い、私は学院の中で迷子になっていました。

 え? お友達とかできなかったのかって? まぁ……今朝の一件で悪目立ちしていたといいますか、なんといいますか……。それに私自身、人付き合いが苦手というか、受け身なタイプなので……。

 でも、これではようやく始まる入学式に遅れちゃいます。むしろ今朝の一件であんな事言っときながら、自分は出席しなかったリリィとして噂されるという恥ずかしい事態に……。

 と、思ったその時。向こうの方から誰かの声が聞こえました。

 

「ご、号外号外……! 早く貼り回らないと~……!!」

 

 あれは確か、体育館にいた……という事は同じ一年生の子ですね。その手には何やら新聞を持っていて、それを掲示板に貼ろうと背伸びをしていました。でもこれで助かりました、あの子に会場の場所を教えてもらいましょう。

 

「と……とっとっとっとぉー!?」

 

 ああっ、背伸びのしすぎで後ろにひっくり返りそうに! 私は勢いよく駆け出してその子を背中から支えるように抱きとめました。

 

「ま、間に合った……えっと、大丈夫?」

「ふぇ!? は、はい! おかげさまで!!」

 

 良かった……。後ろから頭を打ったりとか、痛いもんね。間に合って本当によかったぁ……。

 

「え、っと……鷹菜詩 真乃さん、ですよね? 同じ一年の」

「そうだけど……どうして私の名前を?」

「防衛省発行の官報はチェックしてますから! あ、私は二川(ふたがわ)二水(ふみ)って言いますっ!」

 

 そう言うと二川さんは『お近づきの印に、と言うのはなんですが』と新聞の一枚をこちらに差し出してきた。……あ、あの人の名前、楓・J(ジョアン)・ヌーベルって言うんだ。で、夢結様と同行したもう一人の子が一柳(ひとつやなぎ)梨璃(りり)さん……。

 

「ふぅん……これを貼ろうとしてて、ひっくり返っちゃったんだね」

「ええ……でも、鷹菜詩さんに助けていただいてもらって。ありがとうございます~」

 

 そう言って、再び二川さんはリリィ新聞(号外)を再び掲示板に貼り付けようと背伸びを再開した。

 ……あ、しまった。入学式の会場がどこか聞きそびれちゃった。いやでもこのタイミングで聞くのはなんか違うし……二川さんはこのまま、リリィ新聞を学院の至る所に貼る為にまた走り回ったり背伸びするんだよね。

 

「……二川さん、もしよければ手伝おうか?」

「え!? そそそんな、二水でいいですし、お手を煩わせぇ!?」

 

 再びひっくり返りそうになった二水さんを、私はどうにか抱きとめる。

 

「まだ入学したてだけど、リリィは助け合いでしょ? ……なんて。

 それに二人で貼れば、早く終わると思うし。だから、手伝わせてくれないかな?」

「あ、ありがとうございますっ! それではよろしくお願いします!!」

「うん。……あ、それと私の事も真乃でいいよ」

 

 ───こうして、私達は学院中を周り、どうにか梨璃さんが戻って入学式が始まるまでに新聞の号外を掲示し終わる事に成功しました。

 一時は迷ってどうなるかと思ったけど、二水さんと出会えて不幸中の幸いと言った所です。それに、百合ヶ丘に来て初めての友達ができて、本当は良い幸先なのかも。

 

 

 

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