アサルトリリィ Hawk   作:ほくシン

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二の太刀投稿です。
原作介入要素はありません。


第2話『目標』

 川添(かわぞえ)美鈴(みすず)様。百合ヶ丘のレギオン[アールヴヘイム]の初代メンバーであり、私の憧れのリリィ。

 ……と言っても、私の場合は一柳梨璃さんのように甲州撤退戦で助けられたとかじゃありません。そうだったら、とっても素敵だったのかもしれませんけど……。

 きっかけは、ある日聞いた噂話。

 百合ヶ丘にいる、強くて凛々しくてカッコいいリリィがいるって事。そこから少し調べて、この方のようなリリィになって皆を守りたいと思ったのが、私がリリィを志した理由でした。……そして、あわよくばお会いして手解きを受けられたら、なんて思ったりもして。

 ……でも、そんな浮ついた願いが叶わないと思い知らされたのは、入学して少し後の事でした。

 

「……まさか、甲州撤退戦の時に戦死されていただなんて」

 

 無機質な石の塊の群れ。

 その一つに書かれた『川添 美鈴』の文字を半信半疑で見つめながら、ふと言葉が漏れる。

 ……リリィになった以上、ガーデンからの卒業に至る前にヒュージとの戦闘によって戦死する事は、有り得ない話ではありません。 むしろ、よくある話です。今日もどこかでリリィはヒュージと戦い、どちらかが死ぬ。そんな当たり前の話を、私は『美鈴様だけはそんな』と、露にも思っていませんでした。……上級生の方にお話を聞いて、こうして実際に見るまでは。

 私の胸にあったはずの熱が、まるで冷たい墓石に吸い取られていくようです。……本当は信じたくありません、でもこれが事実なんだ、現実なんだと自分に言い聞かせながら、私は墓地を去りました。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「……これから、どうしよう」

 

 校舎をあてもなくうろつきながら、私はまるで凍ったような胸の内で考えます。

 私が百合ヶ丘を目指した目標は、夢は、もはやどうあっても叶わない。でも、美鈴様のシルトであった夢結様とシュッツエンゲルの契りを結ぼうとも思えませんでした。既に一柳さんがアタックしているのもありますが、やはり薄っぺらい憧れでも、私は美鈴様を慕っていたので……。

 でも、目標かぁ……。何か一つは立てないと、向上心が得られないとよく言うし、何か打ち立てないと……。

 ああでもないこうでもないと唸っていると、私の眼前に上級生の方が現れました。

 

「あら、鷹菜詩さん。こんな所にいらしたの? 探したわ」

「はぁ……。ええと、何の用でしょうか」

「入学式の日のアナタを見て心に決めていたの。……あなた、私のシルトにならないかしら?」

 

 ……ああ、またか。

 入学式のあの日、遠藤亜羅椰さんと夢結様の私闘(と楓・J・ヌーベルさん)を口先だけで止めた私は、どういうわけか上級生の方に目をつけられていたようで、この数日間で数名ほど上級生の方からシュッツエンゲルの申し出をされました。でも、当の私はというと、ノルンやシュッツエンゲルといかずとも、ただ一人美鈴様だけをお慕いするつもりだったので、上級生の方には申し訳ないですがも全て断っていたのです。……風の噂ですが、その様から私は一部の間から『孤高の調停者』と呼ばれているとかなんとか。

 

「……申し訳ありませんが、謹んで辞退いたします」

 

 でも、今は尚の事シュッツエンゲルの事など考えられません。明日からの励みすら見失った私がシルトなどと、この方にも申し訳ないと思ったからです。

 

「……やはり美鈴様、か」

「すみません。話が以上なら私はこれで……」

「あ、待ちなさい!」

 

 重い足取りで自分の部屋に戻ろうとすると、上級生の方は肩を掴んで呼び止めてきました。

 

「……まだ何か?」

「その美鈴様の事だけど、『あるレギオンが外征任務でよく似たリリィを見かけたらしいわ』」

「……え?」

 

 ――― 美鈴様が、生きている?

 思わず私は耳を疑いました。お墓があるのに、その美鈴様を外征任務で見かけた? 分からない。確かに私は、緑髪の上級生の方から『美鈴様は甲州撤退戦で亡くなった』と聞いたはずなのに。話が違う、矛盾している。でも……

 半信半疑ながらも、私の胸には消えたはずの熱が、確かに戻ってきたのを感じました。目が爛々と輝いているのが、自分でも分かる。

 外征任務。ガーデンでも折り紙付きのレギオンが担当する、ガーデンの管轄外へ援軍として戦いに赴く重要任務。それだけでなく、外征前の宣言では参加リリィやレギオンも公開される。

 ……私のやりたいことが、今ハッキリとしました。レギオンへ入り、外征への出撃と他ガーデンの外征宣言で美鈴様を探すこと。

 

 先程の重さが嘘のような軽い足取りで、私は部屋へと戻りました。

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