アサルトリリィ Hawk   作:ほくシン

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おまたせしました。
ホントは軽い短編のはずだったのですが文字数が膨大になったり構成が迷子になったりと、書くのに二ヶ月もかかってしまいました。吐きそう。


幕間 -助手 が 生まれた 日 ?-

 

「えっと、次の講義の教室は……」

 

 皆様、ごきげんよう。鷹菜詩真乃です。

 今私は昼休みも程々に、少し早めに次の講義へと向かう途中です。というのもこの前、図書室のあまりの量の蔵書につい心惹かれ、あわや遅れそうになった事がありまして……。ガーデンの生活に少し慣れて、気が緩んでいたのかもしれません。今日から気をつけないと。

 ───と、ふとつま先にコツンと軽い衝撃が走ります。目線を下ろしてみると、そこには一冊のメモ帳が落ちていました。

 

「これは……」

 

 手に取り少しめくってみると、リリィの誰かにまつわる情報がぎっしりと可愛らしい字体で書かれていました。ですが私はその筆跡に心当たりはなく、せめて表紙に名前でも書いてないかと閉じて確認すると、そこには『週刊リリィ新聞 取材メモ』と可愛らしいレタリング文字で大きく描かれていました。リリィ新聞って事は……二水ちゃんの? だとしたら届けに行かないと。

 そう思った所で、間が悪く予鈴が鳴ってしまいました。……今探してもきっと間に合わない。仕方がないので一旦メモ帳をポケットにしまい、放課後に忘れず届けに行こうと頭の片隅に置いておきながら、私は講義のある教室へと向かいました。

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 放課後になり、私は気持ち急ぎ足で二水ちゃんを探します。

 ……あてもなく、がむしゃらに。

 二水ちゃんが採ってる講義、私知らないからなぁ……。分かっていれば、多少は推測できるんですけれど。

 あれ、そもそも落としたって気づいてるかな? 気づいてないなら、このまま一柳さんのレギオンメンバー勧誘の方に合流して、そのまま手渡しすればいいけれども。でも気づいていたら……多分、あっちこっち探しているよね。リリィ新聞を書くのに大事なメモなんだし。

 考えを巡らせながら校舎を練り歩いていると、見覚えのある赤茶髪の方───楓・J・ヌーベルさんを見かけました。意外な事に一柳さんも二水ちゃんも傍にはいなく、一人のようです。

 

「楓さん、ごきげんよう。二人は一緒じゃないんだ」

「あら真乃さん。ええ、あいにく一人ですの。二水さんはなにやら焦ってすっとんでどこかに消え、梨璃さんは神琳さんと共にレギオンの申請に必要な各書類の書き方を確認してますわ」

「……意外。てっきり神琳さんに任せないで自分でやると思ってた」

「元々そうするつもりでしたけど! 私にも私用というモノがあるが故の致し方ない妥協というものでしてよ!!」

「そ、そっかぁ……」

 

 なんとなしの疑問に想像以上の剣幕で返され、申し訳無さも込めてそれとなく相槌をうちます。楓さんはCHARMメーカー『グランギニョル』の社長令嬢って言ってたし、私と違って色々忙しいのかな……。

 ……しまった、気圧されて危うく本題を忘れるところだった。

 

「そう言えば二水ちゃんがどこに行ったかとかって、知ってる……?」

「さぁ? 補習の線はないでしょうし、どうせ忘れ物ではありません?」

 

 楓さんは興味なさげに肩をすくめ、そのまま立ち去ってしまいました。

 けど二水ちゃん、なんとなくだけどやっぱり気づいてたんだ……。そしたらどうする? 犯人は現場に戻るじゃないけれど、拾った場所で待っているべきなのかな……いや、もし見当がつかなかった場合は? 確実に、二水ちゃんと会える方法……寮の部屋、は結構待たなきゃいけなさそうだし。お風呂の時……はそれ以上に待たなきゃじゃない? もっと早く、会えるとしたら───

 

「……あ、あそこなら」

 

 恐らく全ての条件が満たされるであろう、あの場所。

 その解にたどり着いた私は、迷いなくその場所へと足を進めました。

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 リリィ新聞編集室。

 二水ちゃんが刊行している週刊リリィ新聞はここで書かれ、時に取材の場となるもう一つの新聞部の部室。そして、週刊リリィ新聞編集部に唯一所属している二水ちゃんのもう一つのお部屋でもあります。貼り出しの手伝いで何度かお邪魔していた事もあり、場所はしっかり覚えていました。

 ここならメモ帳がなくとも別の作業を進める為に戻ってくる可能性はありますし、メモ帳を探す候補地の一つでもありますし、それほど遅くならずに渡す事ができるはず。一応、道中でたまたま見かけた二水ちゃんとリリィとか戦術の談義をしている上級生の方に、二水ちゃんを見かけたら編集室まで来るよう伝言をお願いしているので、よっぽどの事がなければ来る……ハズ。

 

「……………それにしても」

 

 たった一人でリリィの方にあれこれ取材して、書いて、週間ペースで発行して……なんなら、新聞部とは別に設立する許可を生徒会からとってるんだから、二水ちゃんは凄いなぁ。

 私は彼女が描いたメモの表紙を見ながら、改めてお友達の凄さと共に、なんとなく昔の記憶を思い出しました。

 

───────────────────

『ほら見ろよ~真乃! 名門・百合ヶ丘女学院特集だって!! っかーすごいなーあこがれちゃうなー!』

『あー、百合ヶ丘ねぇ。ノドはん、そらぁ東のアンブロさんっちゅーとこやな?』

『いやそうとも言えるけどさぁ! そりゃちげーよユエぇ!! ……ほら、真乃もいい加減起きて一緒に読もうって! どうにか京都まで行って買ってきたんだぜー?』

───────────────────

 

 ……懐かしいな。思えば二人が雑誌を持ってきたのが、百合ヶ丘を目指そうとした始まりなんだっけ。

 なんだかんだ、私は縁に恵まれているのかもしれませんね。この縁がなければ、私はあのまま───

 

「……………ん? ………さーん? ……の、……しもーし?」

 

 嗚呼。なんか、いいな。百合ヶ丘でのはじめてのお友達。昔からのお友達。うまく言葉に出来ないけど、こう、とっても温かい気持ちになるというか……

 

「真乃さんっ!?」

「はひゅい!?」

 

 誰かに大声で名前を呼ばれ、思わず素っ頓狂な声を上げてしまいます。

 気がつくと目の前にはいつの間にやら二水ちゃんがいて、心配そうにこちらを見上げていました。

 

「あの、日羽梨(ひばり)様から聞いてやってきたんですけれど……もしかして、私のメモ帳を拾ってくれてたり」

「あ、うん。これ、だよね?」

「あ! それですそれですぅ!!」

 

 いつの間にやら胸で抱いていたメモ帳を差し出すと、二水ちゃんはまるで行方不明になっていた愛犬が見つかったような感激極まった表情でメモを手に取りました。

 

「ありがとうございます真乃さん! 本当に助かりました!!」

 

 二水ちゃんはブンと勢いよくお辞儀をして、感謝の言葉を述べてきました。うん、良かった。

 それじゃ、と立ち去ろうと背を向けた私でしたが、その瞬間「あの!」と左手を捕まれ思わず歩みが止まります。

 

「……もしよければ、紅茶でもいかがですか? 日頃のお礼も兼ねて!」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

「いや~、真乃さんには助けてもらってばかりですからね~。近々どこかでお返ししなきゃな~とは思ってたんですよ」

 

 たはは、と苦笑いを浮かべながら二水ちゃんは手慣れた様子で紅茶の用意をしてくれていました。インタビューなどで使っているであろう膝高のテーブルには、二人で食べるには少し多いぐらいの色とりどりのお茶菓子が並べられています。

 

「別に、気にしなくていいのに。友達を助けるのは当たり前でしょ?」

「それでもですよ~。入学式の時から今まで、毎回貼り出し手伝ってくれてるじゃないですか。たまには私に構わず、真乃さんのやりたい事を優先してもらってもいいんですよ?」

「……そしたら今度は閉館時間までいそうで怖いんだよね、自分が」

 

 自戒と自虐の混じった独り言に「はい?」と聞き返す二水ちゃんに何でもない、と誤魔化して出された紅茶に口をつけます。緑茶とは違った香りと独特の味が口の中でじんわり広がって、気恥ずかしさも少し和らぐようでした。

 

「けど、そういう二水ちゃんも大変じゃない? 新聞のレイアウトから記事の執筆、取材に写真撮影も全部一人でやってるんでしょ?」

「んー……苦だと思った事は一度もないですね。何よりもリリィの勇姿と素顔を広めたいと思ってやってますから、その為ならばなんのそのです!」

 

 むん、と鼻を鳴らす二水ちゃんに不思議と力強さを感じると同時に、二水ちゃんの"好き"という気持ちを少し見くびっていた自分を恥じました。

 ……『何かを作る、生む事は苦しさを伴うものだ』と、どこかで聞いたような気がします。ですが二水ちゃんはそれを上回るほどリリィが好きで、情熱を以て新聞を書き上げているというのですから、その活力と行動力には感服せざるを得ません。好きは違えど、趣味に対する熱量は二水ちゃんの方がよっぽどパワフル……いえ、マッシブと言えるほどでしょう。

 

「……本当にリリィが好きなんだね、二水ちゃんは」

「はいっ! それはもう! 仮に百合ヶ丘に落ちたとしても、将来的にはワールドリリィグラフィックスの記者か戦術教導官になろうと思うぐらいには!!」

「え。それじゃあ、他のガーデンは受験してないの?」

「あはは……正直、記念受験だったんですよね。手は尽くしましたけど。でもそれで落ちたら、一般教育課程の高校で、普通のリリィオタクとして生きようって」

「……そっか」

 

 もし、私達のどちらか……あるいは両方の道が違えていたら、こうして出会うことはなかった。そう思うと少し寂しくなって、それを紛らわせる為に再び一口傾けます。……私も、"とある事"さえなければリリィを志すつもりはありませんでしたから。

 

「でも、こうして補欠合格で入学できて本当に良かったです! 数々の素敵なリリィに出会えただけでなく、こうして真乃さんとも出会えましたから!」

「……私も、二水ちゃんと出会えただけで、百合ヶ丘に来て良かったと思うよ」

 

 当たり障りのない、けど確かに本心からの言葉で私も返しました。

 

 

 

「……そういえば思ったけれど、こうやって二人きりで落ち着いて話すのって、初めてなんだね。私達」

「言われてみれば、真乃さんは橘組で別のクラスというのもあって、中々こういう機会ってありませんでしたね」

 

 なんとなしに気づいた事を呟いて……そのまま、無言の間に包まれました。

 こ、こういう時って何か喋った方が良いのかな……。地元の友達とならこういうひと時でも安らげるのですが、先程も言ったように気心がまだ少し知れてない二水ちゃんとだとどうしたものかと悩ましさが頭の中を渦巻きます。共通の話題……と言っても趣味もほとんど合わないし、講義や実習の話をするのもなんだか野暮なような気がして……

 ───でも、当然なのか。今までお手伝いとこの前のレギオンの勧誘以外、二水ちゃんとほとんど関わってきてなかったんだし。それに逆に考えてみれば、二水ちゃんの事をもう少し深く知れるいい機会なのかもしれない。聞かれたくないかもしれないし、普段インタビューとかしている二水ちゃんにちょっと意地悪かもしれないけれど、駄目なら諦めればいいんだし。

 思った以上に乾いていた喉を紅茶で潤し、私は意を決して訪ねてみることにしました。

 

「そうだ。折角だし、二水ちゃんの事たくさん聞かせて欲しいな」

「わ、私の話ですかぁ?」

 

 私の提案が意外だったのか、二水ちゃんからは素っ頓狂な声が返ってきました。嫌と言うよりは、そう来るとは思ってなかったような声色……だと感じたため、私はすかさず言葉を続けました。

 

「よくよく考えたら、私二水ちゃんの事なんにも知らないなって思って。だから、聞きたくなったんだけど……駄目、かな」

「い、いえそんな! ただ、私の事と言ってもどこから話せばいいものか……」

「そうだね、例えば……家族の事とか、百合ヶ丘に来る前の事とか?」

 

 二水ちゃんは少し逡巡した後、「でしたら」と咳払いで前置きしてから、たどたどしく言葉を綴り始めました。

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 二人で時折紅茶とお茶菓子につけながら、私は二水ちゃんの話を静かに聞き、時に訪ねたり、逆に聞かれたりしました。

 二水ちゃんのお家は、文筆家のお父さんとパン屋のお母さん、リリィオタクのお兄さんが二人、そしてCHARMに興味がある弟が一人と結構な大家族な事。二水ちゃんや弟くんがリリィオタクになったのもお兄さんの影響だという事。そしてリリィオタクとして目覚めると同時に、自分もリリィになりたいと志すようになった事。そして他愛も無い好物の話だとか、今日までの努力や研鑽の日々。

 特に百合ヶ丘の初等部セレクションであの遠藤亜羅椰さんとお話だけでなく、その時の『長所を伸ばした方がいい』というアドバイスが二水ちゃんのリリィとしての方向性を決めた切っ掛けというお話や、さらには横須賀にあるガーデン『聖メリクリウスインターナショナルスクール』の中等部の公開見学の際に当時の楓さんに出会った話は、二水ちゃんの語り口にとても熱が入っていた辺り、とても嬉しかった事が伺えて私も頬が緩むようでした。

 そして、数ヶ月前の高等部公開セレクション。そこで二水ちゃんは戦術理論で満点を獲得したのが試験官の目に留まり、見事補欠合格を勝ち取る事ができた……と二水ちゃんが語り終えた所で、ちらりと時計を見ます。長針はほぼ一周し、短針もお喋りする前の一つ先の時刻を指し示そうとしていました。二水ちゃんもそれに気づいたのか、「こんなにっ!?」と慌てて立ち上がり、深くお辞儀をします。

 

「な、長々とすみませんでした! 大したお礼もできず……」

「そんな事ないよ、とっても楽しかった」

 

 残った紅茶を飲み干して、私はぽわぽわと浮ついた胸中のまま答えます。

 ……二水ちゃんの話を聞きながら、それを小説を読む時のように想像してみて、私は不思議と満たされたような気分になっていました。普通の家ってこういう感じなんだろうなって思ったり、亜羅椰さんってその、えっちなだけじゃないんだなって少し驚いたり……とりとめのない、単なるお喋りでもこんなに楽しい気持ちになる。またちょっと、二水ちゃんと近づけた。それがなんだか、とっても嬉しくて。……それでやっぱり、もっと力になってあげたくなって。

 私は決意と共に、体ごと二水ちゃんの方向へと向きました。

 

「二水ちゃん」

「はい?」

「……私を、リリィ新聞部に入れてくれないかな」

「ふぇぇーーーっ!?」

 

 鶏の鳴き声のような、悲鳴ともとれる叫びを上げて二水ちゃんは目をぱちくりとさせた後、恐る恐ると私に訪ねました。

 

「い、いきなりどうして───」

「二水ちゃんの話を聞いてたら、なんというか、もっと力になりたいというか……こうして出会えた縁を、もっと大事にしたくなったんだ」

「そそそ、それでですかぁ!? ちょっと予想外の展開すぎて色々追いつかないんですけどっ!?」

 

 あわあわとしている二水ちゃんに、やっぱり悪いかなとは思いながらも私は自分の言葉を続けます。

 

「……動機として、おかしいとか、弱いのは分かってるんだ。でも、それでもやっぱり二水ちゃんの力になりたくて」

「わ、私としては全然OKといいますか、バッチコイですけど……でも、いいんですか? 正式に入部となると今まで以上に色々してもらわないといけなくなりますけども。それに読書の時間だって……」

「本なら、いつでも読めるから」

「……もしかしなくても、やっぱり本気だったりします?」

「嘘でこんな事言わないよ、私」

 

 キッパリ言い放つと、二水ちゃんはやはりしばらく逡巡してから……私の手にそっと自分の手を重ねました。

 

「……とりあえずはその、助手からって事でお願いします!」

「うん、分かった」

 

 のせられた小さな手の仄かな暖かさを感じながら、私は二水ちゃんの顔を見つめ、彼女の気持ちに応えていこうと密かに誓いました。

 …………………………………あれ。ちょっと待って、二水ちゃん前髪に何かついてる?

 

「二水ちゃん、ちょっと動かないで」

「はい? なんですひゅぁ!?」

 

 片手で飛び上がりそうになる二水ちゃんの頬を抑え、じっと観察します。

 ……うん、やっぱり。見間違いではなく、小さな灰色の綿埃が前髪に引っかかっていました。恐らくメモ帳を探してあっちこっち動き回っている時にどこかでつけたのでしょうか。取ってあげないと……。

 

「え、ええっと……? 真乃、さん?」

「じっとして、埃がついてる」

 

 そう言い放つと二水ちゃんは鳴き声のように「はひっ!」と漏らしたかと思えば、手で口を覆い身体を強張らせました。……亜羅椰さんみたいに"食っちまいます"なんて事はしないから、そんなに怖がらなくていいのに。まぁとにかく、少しだけ失礼させてもらって……

 

 

「失礼するわ。ここに鷹菜詩さんが来て───」

 

 

 その声に、思わず手が止まります。

 反射で声の方へ顔を向けると、訪ねて来た方と思いがけず目が合ってしまいました。あ、いつもの上級生の方……あ、そう言えば今日の特訓忘れてた。渡してすぐ向かうつもりだったんですけど───

 って、お、怒っていらっしゃる……? 何故か、顔を真っ赤にわなわなと震え出してるのですが……?

 

「た、鷹菜詩さん……あなた、何をしているの?」

「え、何って……見ての通り、ですけど……?」

「見ての、通り……?」

 

 私の返した言葉が何の因果か燃料となり、震えに強さが増していきながら一歩、また一歩と私の方へ近づいてきます。……あれ、私ヘンな事言った? え、どうして? なんで怒りのボルテージが上がってるんでしょうかっ!?

 

「……見損なったわ鷹菜詩さん。射撃が一向にできないからって不貞腐れて、こ、こんな密室でいかがわしい事を……!!」

「い、いかがわしい!?」

「言い訳無用! 来なさい鷹菜詩さん! その曲がった根性、私が叩き直して差し上げるわ!!」

「え、ええ!? 叩き直すって、ちょっ、待っ……」

 

 ───その後、勘違いしたいつもの上級生の方と模擬戦でみっちり扱かれたものの、二水ちゃんの必死の説得によりどうにか誤解が解けたのは別のお話です。

 

─────────────────────

「あら、浮かない顔ね佐倉(さくら)一依(いより)。もしかして例の下級生に愛想を尽かした?」

「……いえ、自己嫌悪よ日羽梨さん。扉の前で尋ねればよかったものを勝手に入って、勘違いでいびりとも取れるような事をした上に、ムキになって本気で仕掛けてしまって……」

「はぁ、それで? 怪我でもさせちゃったワケ?」

「……いなされたのよ。逆に」

「は?」

「おかしな話ね、私も補欠合格生なのに……完全に真乃さんを見くびっていたわ。そして補欠合格の合点もいった。存外、射撃がなくてもやっていけそうだわ……」

「……よく分かんないけど、とにかく佐倉一織が良さそうならいいんじゃないの」

「けど、それはそれとして二川さんの頬にそっと触れていたあの光景は流石にドキッと───」

「ねぇちょっとその話詳しくっ!?」




もう一本の方はそんなにかからないと思います。多分。
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