レアスキル。
リリィ一人につき一つだけ覚醒するその能力は、非常に多岐に渡ります。
いくつもの世界線を覗き見る事で、どうしたら望む結果を得られるか知ることのできる『ファンタズム』。
戦場を上から、まるでチェスのように俯瞰視して把握・理解できる『鷹の目』。
マギの力を暴走させたバーサーク状態となり、圧倒的な力でヒュージを圧し切る『ルナティックトランサー』。
暗所でも彼我との距離をセンチ単位で把握できる超視力『天の秤目』。
一定範囲のヒュージの力を削ぐ上に自分と仲間の防御能力を高める『ヘリオスフィア』。
触れた相手に精神安定とポテンシャルの一時上限解放をもたらす『ブレイブ』。
抵抗ベクトルを逆転換させ超スピードで動く事が可能となる『縮地』。
俯瞰視、範囲内の味方CHARMのスペック向上、ノインヴェルト戦術におけるマギスフィア保護やパスコーステレパスとレギオンでの戦闘に必須な能力の詰まった『レジスタ』。
他のレアスキルや魔法の効果範囲を広げる『テスタメント』。
敵味方の行動ベクトルを把握する『この世の理』。
縮地とこの世の理の複合で、高機動戦闘を可能にする『ゼノンパラドキサ』。
本来一振りしか扱えないCHARMの二刀流を可能とする『円環の御手』。
自分の両手に収まる範囲なら怪我でもCHARMでも時を巻き戻して治す事のできる『Z(ゼット/ラストレター)』。
敵味方問わず気配を遮断・操作できる『ユーバーザイン』。
数秒間だけ扱えるマギの量が無限大となる『フェイズトランセンデンス』。
そして───
放課後。
日も沈みかけ、今日の勧誘は切り上げようと、私は一柳さんと共に借りた折りたたみ式の椅子やテーブルを片付け終えたところでした。
「そういえば、真乃さんのレアスキルって何ですか?」
「………………私の、レアスキル?」
いつものような明るい笑顔で唐突に問われた私は、期待を感じるような視線に後ろめたさを感じながら、答えを絞り出します。
「……ごめん、実はまだないんだ。レアスキル」
「えぇ!? そうだったんですか!?」
私の答えがよっぽど意外だったのか、一柳さんは大きな驚きの声をあげました。……まぁ、補欠合格でも二水ちゃんが『鷹の目』を持ってるんだし、補欠合格生だからってレアスキルを持ってないとは限らないでしょうしね。むしろ補欠合格の制度を考えると、持っている人の方が多いのかもしれません。もしかしたらそれで聞いてきたのかな……。
「……あ、その、ごめん。もう少し早く言うべきだったよね、これ」
「大丈夫です。実は、私もレアスキル持ってなくて」
「一柳さんも?」
「えへへ、お恥ずかしながら……」
一柳さんは申し訳無さそうに後頭部を掻きます。
「でも、それなら夢結様のルナティックトランサーを止めたのはどうやって? ブレイブじゃなかったの?」
「ぶ、ぶれいぶ?は分からないですけれど……。あの時、CHARMがぶつかりあったら、なんだかお姉さまの心に触れたような気がしたんです。それなら、って思って……」
「CHARMを交わして、心に……」
あの時……CHARMの墓標を纏っていたあのヒュージとの戦いの時、実戦経験のない私は二水ちゃんと共に遠巻きで見ていました。なのでその時はそれこそブレイブのレアスキルなのだと推測を立てていましたが、これは……マギやCHARMの新しい使い方? それともブレイブと似て非なる新種のレアスキル、なのでしょうか……。
素人のなんてことはない考えを頭中で巡らせていると、一柳さんは言葉を続けました。
「私も、無我夢中でよく分からなかったんですけど……ちょっと不思議すぎて、信じられないですよね」
「いや、信じるし、分かるよ。お父さんが言ってた、『真の武術家同士は拳を交わすだけで分かりあえる』って。それと似たようなモノだと思えば不思議じゃないよ」
「ぶ、武術家とリリィじゃ全然違うような気がしますけど……」
「……戦うって一点だけは同じじゃない、かなぁ」
漠然とした共通点を論拠に苦しい言い訳をしますが、一柳さんはどうも納得いかなそうに苦笑いを浮かべたままでした。……私としては、魂を乗せる域まで至った武術家の拳と、リリィのマギを力にするCHARMに、あまり違いはないんじゃないかと思うんですけども。
なんだか恥ずかしくなってしまって、私は誤魔化すように咳払いをして話題を戻そうとします。
「……けど、もしかしたら一柳さんは『カリスマ』なのかもしれないね」
本当は、あんまりこんな事言っちゃダメなんだけども。
そう後ろに付け加えて、私は呟くように言葉を投げかけました。
「カリスマ、って……?」
「レアスキルの一つだよ。負のマギを反転させて自分と味方に分け与える、士気向上のスキル。同じくヒュージのマギを削る『ヘリオスフィア』と似ているって話もあるけど、他のスキルと比べてほとんど解明されてない未知のスキルなんだ」
「そんなレアスキルを、私がですか……?」
「まぁ、あくまでも私が勝手にそう思ってるだけなんだけどね」
一応他のレアスキルに覚醒した時とかの保険も兼ねて、私は予想という前提を念押しさせて言葉を続けます。
「けど『ルナティックトランサー』の性質上、負のマギを反転させる『カリスマ』でも暴走状態を鎮められるのは道理だと思うしね。それに……」
「それに?」
「……一柳さんには、誰にでも寄り添える優しさを持ってる。それと、こうと決めたらって意思の強さも。もし『カリスマ』なら、きっとそんな心が
───レアスキルは、リリィの生き様を写すようなものが多いという話を聞いたことがあります。
だとするならば。一柳さんの大きくて温かい優しさは、純粋無垢なまさしく
いきなりこんな事言って迷惑じゃないかな、と一柳さんの顔を見ると、鳩が豆鉄砲を食らったようにぽかんとした表情でただ私の顔を見ていました。直接声をかけると返事を催促するようで、私も黙って見つめていると、ようやく気がついたのか少し恥ずかしそうに口を開きました。
「……あ。ご、ごめんなさい。真乃さんにそんな事言われるなんて、思ってもみなくって」
「わ、私こそいきなりヘンな事言ってごめんね? こういうのはやっぱり、夢結様とか楓さんとか───」
「そんな、嬉しいです! ただ、ちょっとびっくりしたというか、真乃さんからそう見えてたんだなって思うと……心が、あったかくなって」
恥ずかしさが残っていたのか、一柳さんの言葉はたどたどしく、そして少しずつ小さくなっていくような風でした。
……しばらくの沈黙の後、一柳さんはなんだか姿勢を正して独り言のように語りかけてきました。
「私、もしかしたら真乃さんも『カリスマ』なんじゃないかなって思うんです」
「……どうして?」
「うまくは言えないんですけど……二水ちゃんやクラス委員の方のお手伝いしてる所をよく見ますし、それに……」
「それに?」
「入学式の時に言った『準備をしてくださった他の上級生の方々にも失礼』って言葉、今でも覚えてるんです。だからずっと、そういう見えない人の事も考えてる優しい人なんだなって思って、それで……」
……見えない人の事も考えてる? 私が?
「買い被り過ぎだよ。あの時は止める為にパッと出ただけ」
「それでも、素敵だなって───」
────────────────────ッ。
「……ごめん、本借りてたの思い出した。返しにいかないと」
「あ、ごめんなさい。長々と話しちゃって……」
私は一柳さんに背を向けて、足早に立ち去りました。
「ご、ごきげんよう~!」
───私もカリスマかもしれない、か。
ごめん一柳さん。
私、あなたに二つ嘘を吐いた。
本なんて、借りてすらない。
レアスキルも、とっくの昔に……それこそあの時に、覚醒してるんだと思う。
でもきっと、"これ"はカリスマなんかじゃない。
一柳さんみたいに、綺麗なモノなんかじゃない……
◆垣間見える闇……?
ぶっちゃけ察しがいい方ならこの回で真乃ちゃんのレアスキルを当てられると思います。露骨なので。
正解は第7話で。
以下言い訳フェイズ
○梨璃すゎん、真乃ちゃんへの感情それなりに持ってない?問題
全く梨璃ちゃんサイドの描写していなかったので正直どうなの?と自分でも思いますが、BOUQUET本編での梨璃ちゃんの行動を見るに、梨璃ちゃんが動くより先に言葉だけであの場を収めた真乃ちゃんを見たら『優しくて(よく分からないけどとにかく)凄そうな人』になるのはまぁ、あるかな……と思っています。しかもメッキ剥がれるまでがそれなりにあるので。
"鷹菜詩真乃の物語"に縛られすぎた結果、描写をしてこなかったツケという認識はあります。許しは請わぬ。
○レアスキルの予想はあんまりよくない問題
公式の情報から得た自分の独自解釈です。
楪様の設定などを鑑みるに、未覚醒者のレアスキルの傾向はある程度絞れる?ようですが実際は覚醒するまで分からない為、結構デリケートな問題なのではと感じたからです。レアスキルはリリィの生き様が反映されるため、レアスキル未覚醒者へのレアスキル予想などはリリィによってはその生き様がブレる=覚醒するスキルが変わる、覚醒が遅くなるのではないか……と思うのですが、もし公式の『#教えて二水ちゃん』等で本作と食い違うような記述があったら申し訳ありません。ワタシ アサルトリリィ ワカラナイ。ユリモ ワカラナイ……。
逆に言えばあの世界、なんかライトなリリィ関係の雑誌でレアスキル診断みたいなのありそうですし一般女子高校生がそれ見てワイワイしてそう。