ずぼら酒カス女、ダンマスになる ~あたしは面倒が嫌いなんだ~   作:鬼管いすき

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10話 男って面白いよね

 2階の部屋に案内された女たちは感動で打ち震えていた。

 広いベッドに触り心地が良く柔らかい布団、さらには部屋の中に風呂まであるではないか。

 

 萌美からすれば当たり前のことでも、この世界の住人からすればとんでもないことなのである。

 

「お風呂はね、ここのボタン押すとお湯がたまるから。シャワーはこれね。ちょっとひとり見本で入ってもらおうかな。ヴェイグは出て行け」

「わーったよ。つうか俺んとこより良い風呂だなおい」

 

 ヴェイグは1畳のシャワーユニット、こちらは2畳の広さに足を伸ばせる浴槽付き。

 男なんてシャワーしか浴びないくせに何言ってんだ、と萌美は思った。偏見である。

 

 浴槽の自動ボタンを押したあとは、ドレッサーやベッドの収納などの説明をしていく。

 ドレッサーは閉じればサイドテーブルになり、開けば鏡付きの化粧台になる。

 化粧道具も各種取り揃えており、あとで女たちへと化粧のやり方を教えるつもりだ。

 女は化粧でどこまでも化けられるというのが萌美の持論であるが故。

 

 狭い部屋に大柄な女性が萌美を含めて6名もいるので、ぎゅうぎゅう詰め状態であった。

 ここにいるのは大柄な種族はドワーフにオーガ、オーク、ウェアウルフ、ウェアタイガー、ダークエルフ。

 小柄なのがゴブリンとハーフリングとドワーフである。

 

 そう、本物のドワーフがいるのである。

 背丈は萌美のヘソくらいまでしか無く、全体的に少女のような体型だが手だけは不釣合いに長く大きい。

 膂力もそれなりにあるようで、背筋が鍛えられているのが服越しにもわかる。

 萌美の似非(えせ)ドワーフとは何から何まで全く違うのだ。

 

 狭い部屋に軽快なメロディが流れる。お風呂が沸きました、というやつだ。

 

「お、沸いた沸いた。じゃあ見本で入ってもらおうかな。小柄な3人のうち誰が入る?」

「アスタ入るー!」

「ウチはいい」

「まずは見学しようかな」

「はい、じゃあゴブリンの君ね。あ、名前は?」

「アスタ!」

「じゃあアスタちゃん、服脱いでね」

「はい!」

 

 なんの躊躇もなく服を脱ぎ捨てるゴブリンの少女アスタ。

 萌美はすかさずその服をダンジョンに吸収させた。

 ほつれて穴の開いた服などもういらないのだ。

 

 女たちは消えていく服を凝視しつつも何も言わなかった。

 余計な詮索は身を滅ぼす、と思っているのであろう。

 せっかくこんなに良い場所に住めるのに、わざわざ藪から蛇を出す必要はないのだ。

 萌美に聞けばあっけらかんと「アイテムボックスってやつ」と答えてくれるだろうが、女たちに知る由はない。

 

「はい、まずはこのホースを見てね。これの先端からお湯が出ます。このレバーを上に上げればシャワー、下に下げればこっちから出ます。やってみて」

「はい! 出ました! すごい!」

「すごいね。で、温度はこっち、もう少し熱いのが良ければ赤のほうに回して、冷たいのが良いなら青い方に回すんだよ」

「ちょうどいいです!」

「じゃあそのままで」

 

 ちなみに萌美も服を脱いで全裸である。

 風呂に入るのに服を着ているのはおかしいのだ。

 決して服を着ているのがわずらわしいとか、そういう事ではないのだ。

 

「じゃあシャワーをここに引っ掛けて、アスタちゃんはこの椅子に座って」

「なんか割れてる!」

「くぐり椅子って言うんだ」

 

 頭を入れることにより、局部を口や舌で洗うことができる優れものである。

 男性が座っても良いし女性が座っても良い。

 萌美がそれを知っているのは、そういったお店で働いたからではなく、AV男優の元彼から聞いたからである。

 AV男優の元彼は日常ではエロスは求めていなかったらしく、萌美の全裸生活に仕事場を思い出してしまい、早々に別れを告げた。

 裸族は悪しき習慣であった。

 

「例えば腕をヌルヌルにさせてこう洗えるよね。あとはこのマットを敷いてローションで滑らせれば、こうやって入ってって前に顔出せるでしょ」

「おお~! 面白い!」

「ほんとにね。こんなんで興奮するんだから男って面白いよね」

 

 股間から人の顔がにゅっと出てくるのはギャグでは?

 萌美は(いぶか)しんだ。

 

「男の人を洗うときはこの赤いボトルに入ったのをこの網に出して泡立てます。それを自分の体に塗りつけて、こうやって全身で洗います。どうかな?」

「めっちゃ柔らかくて気持ち良いです!!」

「それは良かった。あ、もちろん自分の体もこれで洗ってね」

 

 元彼のソープ物の出演作を見て研究しモノにした洗体プレイであるが、元彼含め男に披露したことは1度も無かった。

 むしろ他人に対して使ったのは今回が初めてだ。

 初めての洗体プレイが同性で、しかも見た目が小学校高学年くらいとは、中々に業の深い女である。

 

「あ、体を洗う前に髪を洗えば良かった。失敗失敗」

 

 洗体プレイをしたくて仕方が無かったようだ。

 気を取り直して髪の洗い方とコンディショナーの使い方を教えていく。

 

「まずはお湯で頭を流します。こんな風に頭皮を揉み解す感じね。ガシガシやって傷付けないように」

「ふわぁ……」

 

 萌美がアスタの頭を念入りに洗っていく。

 流れるお湯の色が灰色から透明になるまで少し時間がかかった。

 長年の蓄積した汚れが落ちると、アスタのくすんだ色の金髪が明るく変化した。

 萌美は内心で、やはり金は磨けば光るな、と思っていた。

 金色は好きな色なのだ。

 

「はい、じゃあシャンプーするよ。緑のボトルをプッシュすれば泡が出てくるから、頭皮を重点的に洗うように。髪は指で挟んで優しく洗うこと」

「はい! 良い匂いする!」

「あたしの好きなバニラの香りだよ」

 

 萌美がダンジョンにお任せで作ったシャンプーやコンディショナーは、誰が使っても抜群の効果を発揮する代物である。

 なんならシャンプーだけで髪がサラサラでフワフワのツヤツヤになる優れものなのだ。

 現代の地球人からしても垂涎(すいぜん)ものの1品であった。

 

 シャンプーとコンディショナーが終わり、浴槽に放り込まれたアスタは完全にとろけきっていた。

 お湯に全身が浸かるのがこんなに気持ちが良いものなのか、と内心で思っていることだろう。

 なにせ人生で初めてのことなのだ。感動も一入(ひとしお)である。

 

「はい、アスタちゃんお湯から出て。最後の仕上げするよ」

「ふぁーい」

 

 とろけて幸せそうな顔をしていたゴブリン少女が渋々といった様子で浴槽から出てくる。

 萌美が用意していたバスローブをアスタに着させると、みるみる大きさが変わりピッタリのサイズとなった。

 驚く女たちに「ドワーフに伝わる秘術だから」と言った似非(えせ)ドワーフの萌美。

 本物のドワーフの少女は耳を疑ったことだろう。そんな技知らない、と。

 

 アスタをソファに座らせてから、ダンジョンが調整して生成したスペシャルな化粧水や乳液でスキンケアをしっかりとし、コードレスのドライヤーを使い髪を乾かす。

 風呂もドライヤーも伸縮自在の服も、全てドワーフの秘術で解決である。

 

「はい完成。ちょっと鏡見てみな。見違えたよ」

「ふぁああ……これがアスタなの? すごい……」

「まだまだ磨けるけど今日はとりあえずこんなとこかな」

 

 エステティシャンの元彼の影響で研究しまくった萌美の施術が火を噴けば、醜女(しこめ)も美女に早変わりなのである。

 ましてや元々素材の良いこの女たちがそれを受ければ、高級娼婦として恥じない姿になることだろう。

 

「てことで、皆はこのやり方でお風呂に入ってから着替えて下に来て欲しいんだ。オーケー?」

 

 萌美の発言に、7人の女たちが異口同音に「はい!」と答えてから部屋を出て行った。

 残されたのは幸せそうに鏡を見るゴブリン少女のアスタだけであった。

 

「アスタちゃん、着替えよっか。持ってきた服あるでしょ?」

「あ、はい! 着替えます!」

 

 見た目小学生が透け透けのローライズ下着を穿く事案が発生した。

 萌美はロリ体型にはマイクロビキニも良いかもしれない、と真面目そうな顔をして考えている。

 そしてプレイ用衣装のひとつとして、ベッド下の引き出しに生成しておいた。

 考えたら即実行、それが萌美なのだ。

 

 シースルーローライズショーツ以外の下着、ブラジャーなどは用意していない。

 昼は制服のコルセットがきつめに乳を支え、夜はベビードールがふんわりと包み支えてくれるのだ。

 クーパー靭帯を維持するためのあれこれはばっちりである。

 なんなら既に切れているクーパー靭帯を治すエステも、ドワーフなら施術可能なのだ。

 

 そしてなにより制服のシャツをツンと押し上げる小さなポッチは、エロスを感じるものだ。

 これを酒場で給仕しながら見せ付けてやれば、男が娼婦を買うのは必然と言えよう。

 萌美のピンク色の脳細胞が導き出した答えなので、きっと間違いは無いはずであった。

 チラリズムのエロスは万国共通であると信じきっている萌美であるが、おおむね正しい。

 

「おー、制服似合ってるよ。サイズもピッタリだ」

「縮みました!」

 

 萌美の望みを叶えるべくダンジョンが頑張った結果である。

 ダボダボの服がシュッと縮むさまは、まるでバックトゥーザフューチャーの未来の服だった。

 

「じゃあアスタちゃん、皆の部屋を回ってさっきのやり方を教えてあげてね。わからないところとかあるかもだし」

「はい!」

 

 手を上に上げてニコニコと元気良く返事する姿は、もはや小学校低学年生の姿であった。

 こんな子が性交可能なのか、異世界って凄い。そう萌美は感心していた。

 

 1階の酒場に戻り、適当な酒をグラスに注いでチビチビと飲む萌美。

 厨房でグラスを磨いていたヴェイグは、酒を飲む萌美を呆れながら見ている。

 

「よう、オーナー。女どもにも料理教えても良いか?」

「ん? 構わんよ」

「そうか、ありがてえ。実はこれからは夜だけじゃなくて昼も営業しようかって思ってよ。どうだ?」

「良いんでない? 人が集まればそれで良いよあたしは」

 

 ヴェイグには、この美味い飯と美味い酒を多くの人に知ってほしいという思いがあった。

 ピザやパスタは感動できる美味さだったのだ。

 料理人としての矜持(きょうじ)が、萌美のもたらした数々の料理に刺激されたようだ。

 

「あ、じゃあ今日はハンバーグとアヒージョとポテトフライの作り方を教えよう」

「待ってたぜ!」

「といってもハンバーグ以外は煮るだけ揚げるだけの簡単料理だけどね」

「良いんだよそれでも。俺に取っちゃ知らない料理を知るっつうことは値千金にも匹敵すんだよ」

「お、おう。気合入ってんね」

 

 ヴェイグの熱意に萌美のやる気にも少しだけ火が付いたのか、「じゃあ海鮮フライとかとんかつも増やすか」と呟いてしまった。

 それをヴェイグが耳ざとく拾い「おい、なんだそりゃ! 早く教えてくれよ!」と迫られてうんざりとする萌美だった。

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