主人公の能力は貴方達からの提案〜作者VS読者の殴り愛〜 作:悲しいなぁ@silvie
貴方を旦那様と慕う怪物
もし、人生をやり直せるなら僕は命を賭けてでも縋るだろう。
もし、あの時に戻れるなら僕は全てを賭けてでも頼るだろう。
もし、彼女を助けられるなら──僕はなんだって捨てられる。
僕が産まれた時、周りの人達は笑って両親は泣いていた。
まぁ、実際に見た訳じゃないから本当かは知らないけど。
僕の左手には生まれつき大きな痣が有って、それが昔ばなしに出てくる勇者様の手にも有ったらしい。
長年魔物達の被害に苦しめられていた僕の村の人達は僕の事を本当の勇者だと祀り上げて、魔物退治をしてもらおうと思ってたらしい。
でも、普通は野犬や猪みたいな獣達にすら手を焼かされる人間がそれよりももっと強い魔物になんて勝てっこ無い。
いくら昔ばなしに出てくる勇者様と同じ痣が有るからって生まれたばかりの赤ん坊にそんな事を本気で望むなんて普通なら疲れてるんだろうと心配されるぐらいだ。
でも──僕の村は普通じゃ無かった。
丁度何十年かに一度の寒さで冬の間に畑が駄目になって、食料を備蓄してた倉庫が猪や熊に荒された年に僕が産まれた。
僕が本当に勇者なのかなんて実際にはそこまで重要じゃなくて、そんな状況でどうにか寄り掛かれる何かを見付けないとダメになってしまう…っていうのが本当のところだったんだと思う。
そんな事情で、僕は物心ついた頃には木剣を握ってた。
村には同じ年頃の子は居なくて、遊ぶなんて考えが出ないぐらいには朝から晩までずっと木剣を振り続けた。
本当は子供だって居たと思う。
ただ、僕がそっちに行かないように寄り付かないよう言われていただけで。
そして、僕が15になった年の春に僕は魔物退治に村を出た。
伊達に木剣ばっかり振ってた訳じゃなく、猪やら相手ならまず負けないぐらいには僕は強くなってた。
まぁ、だから何だって話なんだけど…
村の人達がお金を出し合って僕に贈ってくれた鉄剣は明らかに僕の背丈では持て余すサイズだったけど、それでもその時の僕はそれが誇らしくて魅せつけるように背に担いで近くの森へ向かった。
僕の村の近く─近くって言っても歩きだと丸2日は掛かるんだけど、とにかく其処には【夢幻魔鏡の森】って言われる所が有った。
なんでも、其処に入った人は魔物に食べられるだけじゃなくてその顔や声まで奪い盗られるらしい。
そして、その森には魔物達の親玉─魔王すら恐れる程の化け物が居る。
そんな事も知らなかった僕は意気揚々と森に入って行った。
……でも、そのお陰で彼女に会えたんだから悪い事ばかりじゃ無かったかな。
森に入って数分もしない内に僕は魔物に囲まれた。
重くて長い鉄剣はみっしりと草木の茂った森の中じゃマトモに振り回す事も出来なくて、僕はなんにも出来ずに突っ立ってた。
あぁ、僕は此処で死ぬんだなとかそんな風に思いながら魔物を見てた。
この時は、特に未練とかは無かった。
だって、未練を感じる程に楽しかった事なんて無かったから。
だから──彼女に助けて貰った時も、そんなに何も感じ無かった。
「君、迷子かな?此処は危ないからお姉さんが町まで送ってあげるよ」
僕を囲んでた魔物達を魔術で一掃した彼女─ヒナゲシはにっこりと笑って僕にそう言った。
聖女ヒナゲシ、僕みたいなのと違って彼女は本物の昔ばなしの住人だ。
大昔に異世界から降り立った勇者と共に魔王を倒した聖女様の生まれ変わり。
回復魔術に長けた聖女様は多くの人々を病や怪我から救って、場所によっては勇者様以上の偉人として扱われている。
ヒナゲシはそんな聖女様の生まれ変わりとして様々な魔術を修め、人々の治療から魔物退治まで幅広く人を救っていた。
勿論、かくいう僕もその一人で──彼女に救われた最後の一人でもある。
ヒナゲシに助けて貰った僕は彼女と共に町へ向かった。
聖女ヒナゲシが居るという事で大きく発展したその町は自分の村しか知らなかった僕にはとても衝撃的だった。
大きな怪我をしても死ぬ事は無く、治療院に行けば治せる。
人々は飢える事もなく大通りを歩く人の顔には活気と笑顔が有った。
まだまだ物を知らない僕だけど、きっとこの町は世界的に見てもかなり大きい方だと思う。
それくらい、魔物に脅かされる事もなく発展するなんて普通は有り得ない。
ヒナゲシに連れられて町に来た僕は森に居た理由を話した。
そこから、あれよあれよと話が進んで…僕はヒナゲシに
お人好しというか何というか…そんなヒナゲシだからこそ聖女の生まれ変わりなんて言われるんだろうけどね。
ヒナゲシと一緒に暮らした日々は──楽しかったなぁ。
初めて人と一緒にご飯を食べた。
初めて人と一緒に眠った。
初めて──人として過ごせた。
僕は、ヒナゲシに人間にして貰ったんだ。
だから、だから──僕は僕を許せない。
僕の恩人で、僕の家族で、僕の大切なヒナゲシは──僕を庇って死んでしまった。
丁度僕がヒナゲシの家に転がり込んで2年が経った頃だった。
何時もみたいにヒナゲシが魔物退治の依頼を受けて家を出ようとした時に、僕はヒナゲシに一緒に連れて行って欲しいと頼み込んだ。
何もせずに家に居るのに心苦しいと感じるぐらいには2年間で常識を学んだし、何よりヒナゲシの役に立ちたいと思うぐらいには僕はその2年間で色んなモノをヒナゲシから貰ったんだ。
僕がその事を打ち明けると、ヒナゲシは少し驚いてから笑って言った。
「じゃあ、しっかりお姉さんを守ってね──小さな
ヒナゲシが受けた依頼は【夢幻魔鏡の森】での魔物退治だった。
僕は、そりゃあ張り切ってた。
ヒナゲシに新しく用意して貰ったショートソードは良く手に馴染んでたし、出てくる魔物だって危な気無く倒せてた。
正直に言って緊張感が足りなかったんだ。
あの時の僕には緊張感が、人の命なんか容易く奪い盗られる場所に居るんだっていう危機感が足りなかった。
だから、今日はこれぐらいにして帰ろうかと言ったのがヒナゲシじゃなかったのに気付かずに振り向いてしまった。
当然の事だけど、魔物達は人間なんかよりもずっと強い。
その強さの最たるものが
例えば僕ら人間が進化の果に言語を獲得して発展したように、魔物達は進化の果に様々な能力を獲得していった。
その結果、魔物達からすれば単なる生態の一部ですら僕らからすれば反則級のチートになってしまった。
そして、振り向いた僕は大きな眼を持つ単眼の魔物の眼を見てしまったんだ。
金縛りにあった僕は声すら出せずに立ち竦んで、自分の死を悟った。
ヒナゲシにまだ何も返せてないのに、とか色々頭は動くのに身体は全然動かなかった──眼の前で僕を庇ったヒナゲシが魔物に喰い付かれた所を見ても。
「やっちゃった…逃げて、君だけは──死なないで…」
最後に僕の頭に触れたヒナゲシは僕の金縛りを魔術で治してそう言った。
僕は、ヒナゲシとなら死んでも良かったのに…
ヒナゲシは戦おうと剣を握り締めた僕を見て、泣きそうに言うんだ。
死なないで、お願いだから…って。
僕は、ヒナゲシを──たった一人の家族を見捨てて走って町まで帰った。
その後は……お前の方が詳しいんじゃないか?
僕はゆっくりと視線を上げて、眼の前女を睨む。
ヒナゲシの雪みたいに白い髪とは対称的な夜のように黒い髪
ヒナゲシの青空みたいに透き通った蒼い瞳とは対称的な血のように紅い瞳
ヒナゲシが聖女の身嗜みだと言っていた白いローブとは対称的な黒い外套
なにからなにまでヒナゲシと違うくせに──その顔は見るだけで安心する、声は嫌になるくらいに聴き慣れたヒナゲシそのものだったんだ。
「そう恐い顔をするな、旦那様」
僕が【夢幻魔鏡の森】から帰った2日後に、こいつは突然現れた。
そして、ヒナゲシの顔と声で僕に言うんだ。
「私を──愛しておくれ」
貴方はこの怪物を
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受け入れる
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受け入れない