主人公の能力は貴方達からの提案〜作者VS読者の殴り愛〜 作:悲しいなぁ@silvie
とても有名な昔ばなしがある。
老若男女問わず──どころか、国や民族を問わず誰もが識る昔ばなし。
題名を【勇者物語】、まぁ聞いてわかる通り大昔の勇者の事についての話だ。
勇者は火の杖と片刃の剣で並居る魔物達を蹴散らした。
とか、そういう話。
正直に言ってしまうとかなり眉唾だ。
魔物ってやつはそこらの獣の何倍も強く、狡猾だ──そんなのを人間がバッタバッタと倒せるかと問われると首を傾げざるを得ない。
にも関わらず、この昔ばなしは多くの人間から信じられている。
何故か?──人間側にも魔物の
勇者が初めて使ったとされるソレは魔物達が扱う生態では無く、あくまでも人間達の知恵と技術の延長
極限を越えた鍛錬と智慧の先に、選ばれた極々一部の人間だけが到れる極地。
名を
僕を見て嗤う怪物の前で、ゆっくりと目を閉じる。
頭の先から脳味噌を絞り出すようなイメージでグッと力を込めると徐々に音が聴こえてくる。
これこそが僕の
「痛っ…」
鼻から血が流れ出る。
これはかなり負担が大きいようで使うたびに頭が割れるように痛むし、細かい血管が破れて目やら鼻から出血する。
それに構わず意識を集中していくと、雑多な声が聴こえてくる。
『少しでも疑わしいと思ったら殺せばいい簡単だ。
君は彼女の、ナイトなんだろ』
『こんにちは、名前も知らない君。いや、それはお互い様かな?
僕は君に「提案」をしにきた。』
『私の選択が絶対に正しい、とは思わないでくれ。』
同時に、耳元で喚かれるような音量で声が響く。
コレの正体だとか、なんで聴こえるだとか…そんなのはまるでわからない。
何時の間にか使えるようになっていた…最初はヒナゲシに恐る恐るに相談したっけな。
ヒナゲシは、君は本当に勇者なのかもとか無責任に笑ってたけど…コレはそんなんじゃない。
今、俺がどういう状況だとか目の前に誰が居るかとか…そんなものが何故わかる?
こいつらはきっと、眼の前の奴よりももっと恐ろしいナニカだ。
だからこそ、使ってやる。
この人のアタマの中で好き勝手に騒ぐナニカも、眼の前の化け物も…なんだって使ってやる!
「……始めに言っておく、僕はお前なんか嫌いだ
だから───愛して欲しいんなら、僕の役に立て…
それが出来ないなら、此処で死ねバケモノ!」
流れた血を袖で拭いながら化け物の顔にショートソードを突きつける。
化け物は少しの逡巡も無く──
「勿論だとも
私を役立てておくれ──旦那様」
その、鉄の切先に口付けをする。
「っ!?」
急いで引くと、化け物は意外そうに眼を見合わせる。
その唇は縦に裂け、正面からでも断面が視える程だ。
「何考えてる!怪我してるじゃないか…っ!」
「怪我…?ふむ、旦那様…これは怪我では無い
血が出ていないだろう?この貌は私の本当のそれでは無いからだ
この姿の私を刻もうが、血の一滴すら流れんよ」
化け物がそう言うと唇が逆再生のように引っ付く。
「しかし、嬉しいぞ旦那様
私を心配してくれたのだろう?」
化け物はそう言うとゆっくりと僕を抱き締めた。
温かさも、匂いも、抱き締める腕の力も…何もかもがヒナゲシと同じ、優しいハグ。
「………お前は、何者だ
なんでヒナゲシの顔をしてる、なんで此処がわかった、なんで僕を知っているんだ」
抱き着く化け物を無理矢理に引き剥がして訊く。
化け物は名残惜しそうに手を握ったり開いたりするだけで何も答えない。
「…聴こえなかったのか?お前は──」
「抱っこ…」
「─………は?」
「抱っこさせてくれれば話せる気がする」
僕よりも背が高いくせに、膝を曲げて下から見上げるように化け物は言う。
…………この化け物は、今のところ敵ではない。
明らかに隙だらけだった
それに、そもそもコイツからは血の匂いがしない。
この至近距離で誤魔化すなんて不可能だ。
ほぼ間違いなく、コイツは僕とヒナゲシを襲った魔物じゃない。
………ならコイツは何なのかっていう疑問も出るけど
だから……コレは交渉の為に必要なのであって、決して僕がしたいからする訳では無い。
そう、この化け物が卑怯にも情報の対価を求めたから…それに僕が泣く泣く応じただけなのだ。
だから───
「……ゆっくりと泣きなさい
人は、悲しみを乗り越えられる程に強くは出来ていないのだから」
「うるさい…泣いてなんか……泣いてなんか無い…っ!」
だからこれは、魔物なんかにいいようにされた屈辱に泣いているのであって…いや、そもそも泣いてなんか無いけれど。
「ヒナゲシ……ヒナゲシ…っ、ヒナゲシ!
なんで…なんで僕に生きろなんて言ったんだ!僕は…僕はお前となら…っ!」
口から、想いもしない言葉が出てくる。
違う…そんな事、思ってない。
あいつは優しいから、僕を助けてくれたんだ
助けて貰った僕が…そんな事を…事を…
「僕が…僕がついて行くなんて言ったからっ!
だから……お前が僕を庇ってどうすんだよ…っ!!」
やめろ…やめてくれ…
言うな、それ以上は…何も…
「好きだったんだ!!初めて…生まれて初めて誰かを好きになったのに……ヒナゲシさえ居てくれれば、僕はどうだって良かったんだ!」
眼の前の化け物にしがみつくように泣き喚く。
あいつを置いて帰ってきてからずっと頭の中でぐるぐると回っていた想いが纏まりもしないままに口から溢れていく。
「お前が誰かを治す為に外に出るのが嫌だった!
僕が顔も知らない奴なんかより、僕と一緒に居て欲しかった!
お前が誰かの為に魔物退治をするのが嫌だった!
何処の誰かもわからない奴の為に命なんて賭けて欲しくなかった!!
もっと……もっとお前と居たかった…
朝にはおはようって言って、パンを焼いて二人で食べて
昼まで二人でゆっくり過ごして、夜には抱き合って眠りたかった…
下らない事で笑いあって、何でもない日を過ごしたかった!
なのに…なのに……なんで居なくなってんだよ……っ!!」
「………旦那様、私を彼女だと思えなどとは言わない
だが…こうやって貴方を抱き締めるくらい、気安く言っておくれ
私は旦那様に愛される為ならば、何だってしてみせよう」
そう言うと頭を優しく撫でられた。
壊れ物のように、優しく、優しく撫でられた。
「今は泣くといい
忘れろとも言わない、悲しむなとも言わない
ただ、後ろを向き続ける事だけはやめておくれ…
貴方が泣けば私は苦しい
貴方が悲しめば私のこの胸が裂かれるよりも痛む
そんな風に思う者が此処に居る
今は、そうとだけ思っておくれ」
涙に塗れた僕の頬にゆっくりと唇を合わせると、そう言った。
「………名前…」
「…ん?」
「無いのか……?」
「…エ…………ゼット
私はゼットだ、旦那様の名前を訊いても?」
「…無い……そんなもの、無かった」
「なら、エイ…というのは?」
「エー…?」
僕を抱き締めながら、優しく語りかける。
「旧い言葉で、始まりを意味する言葉だ
そして、長い時を意味する言葉でもある
こちらに微笑みかけるその顔は、ヒナゲシに似ていて…
でも、全然違った笑い方だった。
「…人に勝手に名前を付けるな
僕は、お前のペットじゃない!」
「おや…これはすまない
あまり怒らないでおくれ、旦那様」
抱き締められていた腕を乱雑に払って顔を洗いに行く。
これから……どうしようか
僕は──
貴方は──
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情報を整理する
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復讐する
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鍛える
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ゼットと親交を深める
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ゼットを殺す(エンド分岐エンドタイプ3)
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ゼットをAと呼ぶ(エンドタイプ1)