俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

10 / 98
UAが20000を越えてお気に入り登録が400を越えて戦々恐々の輝夜です。

コメント&評価もありがとうございます。
誤字脱字の報告ありがとうございます(本当にもうしわけねぇ…。)

今回は八幡に堕とされる女子生徒が多いかもしれません(ダレダロウナー)
いったい誰でしょうか?

今回も八幡のキャラがぶれているかも知れません。それでも良いという方はご覧ください。
どうぞ!


ここかぁ…騒ぎの現場は

魔法を扱う、という点以外は普通の高等学校と変わらない魔法科高校にもクラブ活動が存在している。

 

ただ、魔法と密接な関わりを持つ部活もあり、魔法科高校ならではだ。

 

夏頃に開催される全国の魔法科高校の総体、つまり『九校戦』と呼ばれる大会で優勝するために魔法クラブは新入生の人材獲得に躍起になるのだ。

…どこも予算は欲しいだろうからな。

 

かくして、入学式から3日目であるが熾烈な各クラブの新入部員獲得の戦いが始まる。

新人を獲得するために戦わなければ予算が増えない(生き残れない)

 

ここかぁ…騒ぎの場所は…?違反者ぁ…鬼ごっこが好きなのか?

 

ここは生徒会室だけれども。

 

「…というわけでこの時期は各部のトラブルが発生するんだ」

 

「勧誘が激しすぎて授業に支障をきたすこともあるから、学校も一定期間、つまり1週間という期間を設けて新入部員の勧誘が始まるの」

 

生徒会室に居るのは姉さん、渡辺先輩、俺、達也、深雪の五人のみだった。5人とも其々弁当を持参し食事を取りながら話をしていた。

 

「この時期になると学校が無法地帯になってしまってな。この期間中はデモンストレーションをするためにCADの所持と使用が許される…其々が躍起になって新入部員を獲得するものだからな。過剰な使用は罰則の対象になるんだがフリーパスの暗黙の了解になっているんだ」

 

「学校側としても、九校戦の成績を上げて貰いたいから、新入生の入部率を上げるためにね?」

 

「そう言うことだから、風紀委員は一週間フル回転で仕事だ。今回は即戦力が3名もいる…一人は問題児かも知れんがな…いや欠員が埋まってよかったよかった」

 

渡辺先輩が安堵しているようだが3名?つまり俺もってことですか?

 

「働きたくない…」

 

「お前な…」

 

ぼそり、と呟くのを達也と姉さん達が拾って呆れた顔をしている。俺はまだ専業主夫の夢を諦めた訳じゃない。

 

「なに言ってるのよ八くん。お姉ちゃん期待してるからね!」

 

「そんな覇気のないことでどうするのです!八幡さん。深雪も頑張りますので一緒に頑張りましょう?」

 

「両手に花だな、八幡くん。男として頑張ってみたらどうだ?」

 

渡辺先輩が俺を見て言ってくる。

俺のやる気が無さそうなのを見ていると、俺の両隣の席に居る姉さんと深雪がさらにズイッと近づいてきた。

あのホントちかいんすけど…姉さんや深雪みたいな美少女に「頑張って!」と言われたら奮起するしかないよなぁ…

 

「そこまで言われたからには、やりますよ…」

 

「本当に八くんは面倒くさがり屋なんだから…」

 

姉さんは頭を抱えて「あいたたた…」とわざとらしくアクションを取っている。

深雪も一緒に頑張りましょうと言っていたが姉さん達とお留守番だ。まぁ順当だろう。もし仮に深雪が魔法の流れ弾に当たってしまったら一大事だ。

姉さんからお留守番と聞いたときには俺の方を少し見て肩をおとしてしょんぼりしていた。深雪はそんなに取り締まりたいのだろうか?だったら俺と変わって欲しいが深雪は後方で待機してて欲しい。荒事なら俺の得意分野だからな。

 

 

 

 

「何故お前達がここにいる!」

 

達也と俺が風紀委員会本部に入室して向かえた第一声がそれかよ。

 

「お前、あの時俺が言ったこと理解してなかったのか?てかここで言うことかよ非常識だな、森なんたら」

 

俺が呆れながら言うとその態度が森なんたらの感情を逆撫でたのか

 

「な、なにぃ!?」

 

今にも俺に掴みかかろうとする勢いだが。

 

「やかましいぞ!森崎!また問題を起こす気か!」

 

「す、すみません!」

 

渡辺先輩に一喝されて森なんたらは慌てて口を紡ぎ、直立不動になる。

 

「全員揃ったな?」

 

その後上級生が入ってきて室内には9名が揃い渡辺先輩が立ち上がる。森なんたら?ちゃんと座ってたよ?

 

「そのままで聞いてくれ。諸君今年もバカ騒ぎの一週間がやってきた。風紀委員会にとってはここが新年度最初の山場だ、今年は処分者を出さずに済むように気を引き締めて当たって貰いたい。いいか、風紀委員が率先して問題を起こそうとするなよ?」

 

渡辺先輩が誰に向けたわけではないが、森なんとかがビクリとなっていたが、俺と達也は

「巻き込まれないようにしよう…」と心に決めた。

 

「今年は幸い卒業生分の補填が間に合った。紹介しよう、立ってくれ」

 

事前の打ち合わせがなかったが示し合わせたように3人が立ち上がった。森なんたらは緊張しているのか熱意のある直立不動、達也は本当に緊張していないのだろう自然体で休めの姿勢で俺は普通に立ち上がった。

ふと座席の方に目を向けると辰巳先輩と沢木先輩がこちらを見て笑みを浮かべており達也も目礼していた。

 

「1-Aの七草八幡、森崎駿と1-Eの司波達也だ」

 

1-Eというクラスを聞いた瞬間室内がざわつくが渡辺先輩が視線を向けるとおとなしくなった。

先輩の一人が達也に向けて言ったのだろう

 

「使えるんですか?」

 

その質問をされた渡辺先輩は質問をしてきた先輩をうんざりした表情で見て

 

「ああ、心配するな。3人とも使える人材だ。司波の腕前はこの目で見ているし、森崎のデバイス操作もなかなかのモノだ。七草は言わずもがなだ」

 

先輩達が俺を一斉に見る。こわっ、貴様見ているな!まぁ『七草家』というフィルターを通して見ているんだけれでも。

 

「よろしい、巡回については先日会議したとおりだ。早速行動に移ってくれ。各自レコーダーを忘れるな?七草、司波、森崎は残って私から説明する…それでは出勤!」

 

教室内に残った渡辺先輩、俺、達也、森なんたら、沢木先輩、辰巳先輩の6人が残り辰巳・沢木先輩は俺と達也に「張り切りすぎんなよ?あと七草お前はやりすぎるな?じゃあな!」「分からないことがあれば聞いてくれたまえ。では」

と声を掛けて去っていく。その姿を見た森なんたらは忌々しそうに俺たちを見ていた。

 

「これを渡しておこう、レコーダーだ」

 

並んだ俺たちに渡辺先輩がレコーダーと黒地に赤文字が刺繍された『風紀委員』の腕章を手渡される。

俺は『風紀委員(ジャッジメント)ですの!』とやりたかったが白い目で見られることは確実なので自重した。別にテレポーテーションが使えないわけではないが。

 

「レコーダーは胸ポケットにいれておけ、ちょうどレンズが見える形になる。今後、巡回するときは常にそのレコーダーを携帯すること。違反行為を見つけたら、スイッチをいれてくれ。あまり撮影を意識しないでくれていい、風紀委員の発言がそのまま証拠に採用される。念の為、ぐらいに考えておけばよいさ」

 

「質問があります」

 

達也が渡辺先輩に質問する。

 

「許可する」

 

「CADは委員会の備品を使ってもよろしいですか?」

 

「構わん、どうせホコリを被っていたものだ。好きに使ってくれ」

 

達也が委員会のCADを借りると言っていたので俺も借りることにした。俺が特化型CAD(ペイルライダー)を抜くのが面倒というわけではない。あるものを最大活用しようというエコの精神だ。

 

「渡辺先輩、俺もいいっすか?」

 

「八幡君もか?良いぞ」

 

じゃあ、俺はこのタイプを使おうか…達也も借りるのを決めたのか先輩に確認して貰う。

 

「では…この2機をお借りします」

 

「俺もこの二つを借ります」

 

「…君たちは本当に面白いな?」

 

達也は昨日掃除していたときに密かに自分の調整データを複写しておいたブレスレット型のCADを二つ…お前最初から借りる気満々だったな?

対して俺は手甲型のCADを両手にはめて現在進行形で自分の調整データを借り受けているCADの設定データを書き換え終えた。

大体こんなもんだろう…

 

その姿を見て渡辺先輩がニヤリと笑い、森なんとかは俺たちを皮肉げに見ていた。

 

 

森なんとかが巡回に向かう際に噛みついてきたが、俺と達也が封殺したら捨て台詞を吐いて立ち去って言った。

なんで次があると思ってるんだろうなぁ…勝負の世界に次なんて無いのにな?

 

俺は達也と分かれて巡回していると早速問題に遭遇した。

人だかりが形成され遠くからでも分かる。

 

なんですぐに問題発見しちゃうんですかね…?あ、今日占いで一位だったわってそうじゃない。

一人の女子生徒がクラブ勧誘(結構強引)をされていた…どうやら非魔法クラブが多いようだ。

しょうがなく割って入ろうとすると聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「いい加減にして!…ちょっと!?どこ触っているのよ…」

 

達也と同じクラスの明るい髪色とショートカットが特徴的な美少女、千葉エリカが熱烈な歓迎を受けていた。

一部の男子生徒がどさくさに紛れてエリカの体に触ろうとしているのを見て人波に呑まれていくにつれ、あの元気なエリカの口調が弱まっていく。流石に不味いと思った俺は急いだ。

知り合いがそう言う目に遭い、若干イラつきつつ俺は人だかりに突っ込みエリカに触ろうとしていた男の手を取った。

男はこちらを見て怒り顔だったが、俺を見ると顔を青ざめさせていた。

 

多分知り合いが聞いたらビックリするぐらいの威圧感のある声で集団に警告する。

 

「強引な勧誘は捕縛の対象になるんすけど…無論女子生徒への過度の接触もです。解散してもらえます?」

 

俺が睨みを利かせると、エリカを取り囲んでいた非魔法クラブの勧誘していた者達は動きを止めた。

 

「こっちだ、いくぞ」

 

「え?八幡…きゃっ!」

 

突然現れた俺にビックリして動きが止まっていたエリカに俺は好機だと思い加速術式を発動させ中心にいたエリカの手を取ってお姫様だっこで抱き上げこの場から連れ去った。

…サバサバしているけれども見た目は正統派で可愛いところもあるな。やっぱエリカは美少女だわ。

 

 

校舎裏まで抱き抱えたままのエリカの惨状を俺はガッツリ見てしまった。現在エリカが大変なことになっていた。

 

服は乱れ髪はボサボサ、おまけに制服のネクタイがエリカの片手に握られ胸元がはだけ、決して大きいと言う訳では無いが鍛えられ無駄がない形の美しい胸の谷間が見えてしまっていた。さらに下着の色も。まるで事後のように。

俺の視線に気がついたエリカは顔を真っ赤にして

 

「見るなっ!て、てか降ろしなさいよっ!」

 

「わ、悪い!」

 

俺はエリカを降ろして即座に後ろを向いた。あの瞬間に後ろを向かなかったらエリカにひっぱたかれていただろうな…と思案していると後ろから声が掛かる。

 

「み、見た…?」

 

俺はここでエリカに対して言うべき答えを探していた。

「見てないな」なんて言うものならエリカの攻撃が飛んでくるし「見た」と言ったら攻撃が飛んでくるだろう…あれ?俺詰んでない?ダメじゃん、詰んだ詰んだ~、ごちうさかな?なんてボケてる場合じゃねぇ。

こういうときは脳に思い浮かんだ言葉をぶつけてやるんだ。そうしよう、そうしかない。

 

俺は制服の乱れを整えたエリカに向き直り答える。

 

「えーっと…ごちそうさま?」

 

「ばかぁ!」

 

さっきよりも顔を紅潮させて拳を入れようとするエリカ。

俺は寸でのところで避ける。

 

「あっぶねぇ!!ちょ、落ち着けって!今のはエリカってやっぱり美少女で可愛いんだって再確認しただけで」

 

「…っ!!!余計にタチがわるいのよっ!な、なによ…び、美少女で可愛いだなんて…」

 

褒めたが小泉澄達ダメだったよ…お兄ちゃんの冒険はここで終わりらしい。殴られる覚悟をしていたがしかし、いつまで経っても拳のひとつも飛んでこない。

 

肝心のエリカは顔を真っ赤にして俯いたままだった。そしていきなり顔を上げて近付いてきた。目と鼻の先に。

 

「巡回がある程度終わったら剣道場に来て!絶対よ!いい!?…それで今回の事はチャラにしてあげる…」

 

「お、おう…後1エリア終わったら行けたら行くよ」

 

「それ来ない奴の定型文じゃないの…絶対来なさいよ。それじゃあね!…助けてくれてありがと!

(な、なによ。なんなのよ…『可愛くて美少女』だなんて…あれ素で言ってるのよね…あーもう八幡と話していると本当調子狂うわね…「可愛い」…か、ふふっ)」

 

エリカはプンプンと怒りながら立ち去り剣道場へ向かっていった。

何故か嬉しそうにしていたのは何でだったんだろうか…ヤバイ怒らせちまったな…今度ケーキでも奢ろう。

 

 

校舎裏から離れ再び巡回エリアに戻ったときに知り合いが此方を見て駆け寄ってきた。

 

「八幡」

 

「八幡さん」

 

「おお、雫とほのかか。見部中か?」

 

「そう、バイアスロン部が気になった」

 

「私も雫と同じ部活を見部しようと思いまして」

 

バイアスロン部まで一応護衛という形で連れていき、その後付近で別れようとしたのだが背後から騒がしい声が聞こえ、ああ、事件が起こったんだな、と

 

「ちょ、ちょっと離してください」

 

「強引すぎる」

 

丁度その辺りを巡回していたのか渡辺先輩が騒ぎを聞き付けてやってきた。

 

「おい!強引な勧誘は風紀委員の捕縛の対象になるぞ!…ってまたあんた達か!」

 

「よう、摩利。久しぶりだな」

 

どうやら話を聞いているとこの二人は渡辺先輩と知り合いらしい。雫とほのかが勧誘を受けていたのはこの学校の元卒業生でバイアスロン部のOGとの話だ。

 

「ちょっと、呑気に挨拶している場合じゃないでしょ?この子連れていきましょう」

 

「そうね、じゃあな摩利」

 

「っておい!待て!」

 

OGは渡辺先輩の制止を振り切り雫とほのかを強引に連れ去ってしまった。

その速度は速く、既に遠くまで離れてしまっていた。

知り合いが連れ去られるのを見逃すわけにもいかず、俺はCADの起動式を二重展開し追いかけた。

 

 

「まさか摩利に出会うとは」

 

「でも逃げ切れたわね、さぁバイアスロン部に勧誘よ!」

 

「あのう…」

 

「そこに行こうと…」

 

才能ある新入生を確保したOG達はホクホク顔だったが雫とほのかがその目的の場所に向かおうとしていたのは知らなかったらしいが運が悪かった。

 

何故なら。

 

「止まってくれません?先輩達」

 

並走して止まるように指示を出してくる八幡がとなりにいたのだから。

 

「そんな止まれって言われて止まる…うぇ!?」

 

「そんな!?私たちに追い付くなんて!?ねぇ、君も入らない?」

 

こんなときにでも部活に誘ってくる辺り胆が座っているのか…俺も仕事をしなくちゃならない。

 

「…お断りします、風紀委員なんで。止まってくれないと捕縛しないといけないんすけど。止まっても捕縛しますけど」

 

「げ、風紀委員か。ならなおさら捕まるわけに行かんね!」

 

「飛ばすわよ!」

 

OGが速度をあげようとするがそうは行かない。自己加速術式をさらに重ね掛けし先輩達のまえに立ちはだかるように先回りした。

先輩達からしたら急に消えてビックリしただろうが早く前を向いた方がいいっすよ?

 

「面倒事は嫌いなんすけどね…しゃーなし」

 

俺は手甲型のCADから加重系統の魔法式を展開し叩きつける。手甲から発せられた魔法で地面を揺らした。

 

急な地震で転倒しそうになる先輩達。いくら部外者とは言え女性だから怪我をさせるわけにはいかず、更に雫とほのかがとらわれているので再び加重&収束系統の魔法式を展開、先輩達は重力の網のようなものに囚われた。捕縛用の俺が編み出した魔法で『超重力の網(グラビティ・バインド)』と名付けた。

…なんか某カードゲームを思い出した。

 

逆に雫達は無重力のように宙にふわふわと浮いている。

 

「え!?なにこれ動け…ない!!」

 

「うわわっ、揺れて…ぎゃー!捕まった!!」

 

「おー…ふわふわ浮いてる、初めて体感したかも」

 

「あれ?八幡さん?」

 

俺は二人の無事を確認するとこの事件の下手人を捕まえた。

 

「抵抗しないでくださいね。また痛い目をみたいなら別っすけど」

 

俺がそう告げると先輩達はうなだれて降参していた。

その後渡辺先輩が追い付き二人は風紀委員会本部へと連れて行かれるときに

 

「おい摩利なんなんだあの子は!」

 

「私たちに追い付くなんて…」

 

「彼はうちのエースでな、真由美の弟だ」

 

「真由美ちゃんの?そりゃ勝てないわ…」

 

「くっ、卑怯よ摩利!」

 

先輩達がコントしているところに今度また同じことを起こさないように釘を刺す。ある種の死刑宣告かも知れない。

 

「先輩達、もし仮にまた勧誘会の時に勝手に入ってきてやりたい放題やるようなら次は敷地内の不法侵入で警察に送りますからね?そのときは七草の名前を使うんで」

 

俺がそう言うと顔を青くしておとなしくなった。渡辺先輩からは「グッジョブ!」と言わんばかりの眩しい笑顔が見えそうだ。

 

俺は重力操作を解除して二人を地に降ろす。雫は着地に成功したがほのかがお尻から落ちそうだったので咄嗟に抱き抱えたため、お姫様だっこの状態になってしまった。

その状態を見た雫が俺に近付き脇腹をつねる。痛いからやめてくれ。

ほのかはと言うと顔を赤らめながら

 

「お姫様だっこ…初めてされちゃった…しかも八幡さんに///」

 

よく聞こえなかったがいつまでも抱き抱えているわけにはいかないのですぐに降ろした。

 

渡辺先輩からの事情聴取が終わると先輩達は風紀委員会本部へ連れられていった。

 

「私、この部活に入りたい」

 

「元々この部活に入ろうと思っていた矢先に先輩達に連れていかれて…」

 

「そうだったんだな…怪我の功名か…」

 

「ん…八幡、助けてくれてありがとう」

 

「八幡さん助けてくださってありがとうございます!」

 

「仕事だからな。雫とほのかがそんな目にあってたら助けるだろうし」

 

「「////」」

 

なんで二人して黙ったんだ?顔赤いし。なるほど暑いからか。

…てか雫、俺の脇腹をつまむな。絶妙に痛い。

 

こうして二人と分かれ時間もいい感じだったので巡回を切り上げ帰ろうかと思ったが先程のエリカとの約束を思い出し体育館へ向かった。

 

 

「遅い!」

 

開口一番遅れて来た事への辛辣なお言葉。エリカ?お前巡回終わったら来てくれっていってたよね?時間指定も特にしてなかったよな?

 

「しょうがねぇだろ…丁度違反行為にぶつかってたんですけどねぇ…」

 

「ふーん…日頃の行いじゃないの?」

 

目の前の美少女が辛辣なことをいってくるんですけど…救いはないんですか?そうですか…

 

された事への不満をようやく吐き出したのか下の階で行われている『剣道』を二人で見ていると女子生徒が綺麗な1本を取っていた。

俺は感心していたがとなりにいる剣に生きる系女子はお気に召さないようだ。

 

「不満そうだな」

 

「え?…そうね、試合じゃなくて殺陣だよ」

 

「いや、まぁそうだな。分かりきった試合を見せられるのは経験者的には面白くないかもな」

 

そんな話をしていると下の階が騒がしくなった。当事者は先程見事な1本を取っていた女子生徒で防具を外している。

面を取った姿はなかなかのルックスであり言い方は悪いが客寄せにはもってこいの見た目だ。

 

「剣術部の順番まで後一時間もあるはずよ、桐原くん!どうして待てないの?」

 

「心外だな壬生。あんな未熟者じゃ実力が披露が出来ないと思って協力してやろうっていうのに」

 

そう言って両者は防具を付けないまま試合を始める。

結果から見ると剣道部の壬生先輩が勝ったのだが…

 

「真剣なら、致命傷よ桐原くん。あなたの剣はあたしの骨に届いていない。素直に敗けを認めなさい」

 

「真剣なら、か…だったらお望み通り真剣で相手をしてやるよっ!!」

 

桐原先輩は振動系の魔法「高周波ブレード」を使用した。

エリカはその光景にワクワクしているが冗談じゃない。相手は生身の人間だ、大事故になる前に止めなければ行けないがそこに一人の影が飛び込んできた。

達也だった。

先輩の目の前で恐らく無系統の魔法を打って「高周波ブレード」を無効化したのだろう。先輩は達也に無効化され取り押さえられている状態だった。

二科生の達也が突如現れたことで会場は騒然となっている、不味いな…

 

「すまん、エリカ。仕事してくる」

 

「え?だって達也くんが取り押さえちゃったよ?」

 

「一科生を二科生が取り押さえたらどうなると思うよ、例え風紀委員であってもな」

 

「なるほど…私も参加していい?」

 

「ダメに決まってるだろ…くそっ…今日は厄日だな」

 

俺はエリカに告げて二階から飛び降り達也のもとへ駆けつけると突如現れた俺に驚くギャラリーがいるが達也に背後から襲いかかろうとした剣術部の先輩らしき人物をいなし気絶させる。

俺が突然現れたことに達也は驚いていた。他の人から見たら表情は変わっていないように見えるが最近分かるようになってきた。

 

やはりと言ったところで桐原先輩を取り押さえ連行しようとした達也にイチャモンを付けてきた剣術部の一科生が襲いかかるが俺も参戦し数十名を捕縛することになった。

何故か周りが盛り上がっていたが気のせいだろうか…?

 

先輩達と乱闘騒ぎの最中に視線を感じた。メガネを掛けた剣道部主将の先輩から感じたことのある視線は「嘲りと妬み」俺はこの視線に覚えがある。

 

気がつくと壬生先輩と剣道部主将はいなくなっていた。会場には俺と達也が抵抗できないほどにいなした剣術部員が辺り一面に転がっていると同時に達也が要請した担架を持った保健委員と応援の風紀委員の辰巳先輩と沢木先輩が駆け付けていた。

 

先程のあの先輩から向けられた視線…俺は何かが起こるのではないかと嫌な胸騒ぎがした。

 

 

体育館での事件が収束し部活連本部に呼ばれた俺たちは姉さん、渡辺先輩、十文字先輩に報告していた。

 

「…以上が剣道部の新勧演舞に剣術部が乱入した事件の顛末です」

 

「よく14人も相手にして無事だったわね…」

 

「いえ、その場に八幡もいましたので…」

 

「八くんちゃんと仕事していたのね…お姉ちゃん嬉しい」

 

「いや姉さん、俺その前にも学校に勝手に入ってきたOG捕まえてるからね?仕事してるからね?」

 

姉さんが達也からの報告を受けて、よよよ…とリアクションを取っているが怪我させないようにするのは骨が折れた…まぁ達也もいたから問題はなかったが…

てか、姉さんそんなに信用無い?

 

「私は八くんの事信じているに決まっているじゃない!…たまにサボっちゃうけど」

 

そんな姉弟の戯れを渡辺先輩は無視し話を続ける。

 

「当初の経緯は見ていないんだな?」

 

渡辺先輩が俺たちに問いかけ肯定する。そうしないと問題になるからな。俺と達也は口裏を合わせた。

 

「はい。桐原先輩が挑発したという剣道部の言い分も剣道部が先に手を出したという剣術部の言い分も確認していません」

 

「俺も確認したときには既に両者一触即発の状態だったんで…」

 

俺たちがそう告げると姉さんは

 

「最初、手を出さなかったのはその所為?」

 

「危険であれば介入するつもりでした。打ち身で済むなら当人同士の問題だと」

 

「桐原先輩が高周波ブレードを使用し、しかも防御術式も展開していない一般生徒だったんで迷わず突っ込んだだけなんですけどね俺は」

 

俺たちの話を聞いて議論を重ね結論が出たようで。渡辺先輩は十文字先輩に向き直る。

 

「聞いての通りだ十文字。風紀委員会は今回の事件を懲罰委員会に持ち込む気はない」

 

その答えを聞いて十文字先輩は。

 

「寛大な決定に感謝する。高周波ブレードという殺傷性の高い魔法をあんな場所で使ったのだ、怪我人が出ずとも本来ならば停学処分もやむ得ないところ、それは本人もよく分かっているだろう。今回の事を教訓とするようよく言い聞かせておく」

 

十文字先輩の回答に姉さんが反応するが風紀委員のトップの渡辺先輩も「ケンカ両成敗だ」っていってるんだからそれで全部収まるんじゃないか?

 

話し合いは終了し結果としては「今回の事件は法廷に持ち込まずに示談で解決」という形になった。

姉さんはまだ仕事が終わりそうにないので達也から「一緒に帰らないか?駅前でなにか奢るよ」といわれ一緒に部活連本部から昇降口に向かうことになった。

 

 

「おつかれ~、って珍しい…八幡がいる」

 

「お兄様…は、八幡さん///」

 

昇降口から出るとエリカ達が達也を待っていたようだ。深雪は俺を見て何故か笑みを浮かべている。

なにかしただろうか?

達也は俺を見てあきれているがてんで見当も付かない。

 

達也達と駅前に行きお茶を楽しんでいるときに今日の出来事と達也が使った特定の魔法を打ち消すキャスト・ジャミングを使ったことに皆驚いていた。もちろんオフレコだったが。

その話の途中に俺はトイレに行きたくなり達也達に断りを入れて席を離れた。

席を離れる姿を深雪は見ておりタイミングを見計らって達也に断って八幡の後を追った。

 

「今日も大変だったな…あれ深雪?」

 

用を足してトイレから出ると深雪が通路で待っていた。

ウソ、皆会計終わって帰っちゃった?急いで戻ろうとすると深雪が此方に気がついて声を掛けた。

 

「八幡さん…」

 

「皆帰っちゃったのか?おいてかれたのか…」

 

「い、いえ皆さんお店のなかにいますよ?」

 

「遠足の時にサービスエリアで置いていかれたこと思い出してちょっと辛かったわ…てかそれならなんで深雪がここに居るんだ?体調悪い?」

 

「い、いえ!いたって健康です!元気です!…その八幡さん…」

 

なんだが話が噛み合っていないような…!深雪に悪いが《瞳》で状態を確認させてもらう。

うーん。状態『緊張』か…なにかあったのか。

とりあえず深雪からの言葉を待つことにした。短い時間だったが深雪にとっては長い時間だったかもしれない。

が、意を決して話してきた。

「数年前です、八幡さん…あなたは沖縄にいましたか?」

 

「!…ああ、ばあちゃんとの修行のために沖縄にいたな。沖縄はそのとき大亜連合に侵攻されて俺も大変だったよ、逃げるのにさ」

 

深雪は祈るように、願うように俺に確認をしてきた。

 

「では…あのとき私とお母様と穂波さんを救ってくださったのは八幡さんですか…?」

 

「…他人の空似じゃないか?俺深雪にあったときに顔も思い出せなかったし、別人だ」

 

「いえ、あの時救ってくれたのは八幡さんでした。昨日の試合の際に十文字先輩に使用なされたあの拳法…そしてあの時感じた優しいサイオンの暖かさ、間違いないです。救っていただいたあの時と一緒でした」

 

深雪は泣きそうな顔で此方を見ている。くそっ、これじゃ俺が悪者みたいじゃないか。

黙る俺を見て深雪はすがるように見ている。

…もう、既に黙っているから答えは出ているようなもんだけどな。さっきも「沖縄にいた」って言っちゃってるしな、はぁ…しゃあない。

 

「…深雪のお母さんとお姉さんはその後大丈夫だった?」

 

俺のその言葉を聞いて深雪は先程の沈んだ顔がウソのように満面の笑みを浮かべた。

 

「…!やはり八幡さんだったのですね…!ずっとお礼を言いたかったのです…!八幡さん。私とお母様、穂波さんを救ってくださってありがとうございます…!」

 

俺の手を取って満面の笑みを浮かべながら嬉し涙を流している。

空いている手でポケットからもう一枚の清潔なハンカチを取り出し深雪の涙を拭った。

拭うと俺の行動が可笑しかったのか柔らかな笑い声が聞こえた。

 

「ふふっ…八幡さんは紳士ですね?」

 

俺はなんだか妙にむず痒くなりそっぽを向いた。

 

「やめてくれよ…柄じゃないってことは自覚してるんで…」

 

「八幡さん」

 

「な、なんでしょうか?」

 

「連絡先を交換いたしませんか?私八幡さんともっとお話したいです」

 

深雪のめちゃくちゃ整った顔が近付いてくる、ずいっと。

 

「え、いや俺と喋っても楽しくないだろうし…」

 

「ダメですか…?」

 

またしても深雪は上目使い(涙目うるうる)で此方を見てくる。無意識でやっているのだろう…末恐ろしいぞ。

自分の武器分かってますねぇ!?深雪さん!?反則ですよそれ。禁止カードです。絶対に負けない!

 

「…お願いします」

 

駄目でした。

 

「ふふふっ、かわいい八幡さん」

 

深雪の完璧な作戦に嵌められて沖縄で深雪達を救ったのが俺だとバレて尚且つ連絡先を交換することになった。

 

その後達也達が待つ場所に戻り雑談とお茶をしてその日は解散した。深雪は終始微笑を浮かべたままだった。

 

今日、いろんな事ありすぎたなぁ…

 

 




おや?雫、ほのかの様子が…?
エリカも…?
深雪は堕ちたな…。

感想と評価お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。