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※今回魔法理論について今回もガバガバに入っておりますご注意ください。
おや?ほのかと雫が…?
勧誘期間が終わり八幡と達也は一段落することが出来ていた。
しかし、その勧誘期間が終わったとしても学校の授業が終了しているわけではなくこのタイミングで魔法実習が本格化してくる。
実技場で達也と美月はペアになり実技を受けていた。
「達也さん、940msクリアです!」
「やれやれ…三回目でようやくクリアか」
「しかし意外でした、達也さん本当に実技が苦手なんですね」
「意外って…何度も自己申告したはずだけど」
「確かにお聞きしましたけど…謙遜だとばかり」
本当に心底不思議そうに首を傾げる美月を見て達也は苦笑するしかなかった。
彼女は本当に疑問に思って聞いているのだろうから嫌みに聞こえないのは彼女が持っている雰囲気もあるのだろう。
「俺も…人並みに出来ていたら言い方は悪いけど此処にはいないかな?」
達也は角が立たない言い方を選択し美月に告げる。
「でも…達也さんは口惜しくないんですか?あれだけの事が出来るのに実力がない、みたいな評価をされて。普通なら口惜しいと思うのに達也さんはそれをあまり感じさせないので…」
達也はなんとも答えずらい問題が来たものだ、と内心思いつつ特殊な《瞳》を持つ美月相手に下手にごまかせば達也の持つ特異性のある能力が露見してしまう可能性があったので彼女には悪いと思いつつ勘違いをして貰うことにした。
「そもそも俺は魔工師志望だからね。戦闘用に魔法を学んでいるわけじゃない。魔工師が魔法が使えないんじゃその魔法の癖だったりがわからないからな、それに…」
入学式の時に八幡に言われたことを思い出し達也は無意識に告げていた。
「入学式の前に八幡に言われたことがあってな。「この高校に入ってることが既に『優秀』ってことだ、二科生の中にも合格の判定基準が合わなくて仕方なく二科生になったやつもいるだろうし学校という狭い世界なら劣等生として扱われるかも知れんが実地、実践なら特筆してる技能があれば立場が逆転する可能性だって有るわけだ。
まぁ、社会に出たら皆等しく社畜、馬車馬のごとく使われるのが落ちだろ。しかし、魔法師になってまで働かなきゃならんのか…あぁやだやだ」って言っていたしな」
「達也さん…ふふふっ!八幡さんの物真似似すぎですよ…!」
達也は八幡の真似をしながら美月に話すと口を手で押さえて笑っていた。
そんなに似ていただろうか?と達也は思ったが、それよりも今八幡の言葉を思い出すと魔法が満足に使えないのに魔法師にさせられ必死に足掻いているだけの達也であったが、八幡の入学式に言われたちょっといい加減な発言は達也の心に乗った重石が少しだけ軽くなって笑えるようになる気がした。
ひとしきり笑った美月は笑いすぎて涙を流していた。
時刻は昼休み。しかしまだ居残って実技を受けている生徒がいた。
何故か達也と美月は巻き込まれ。
「ほら、もう一息だ」
「と、遠い…!0,1秒がこんなに遠いとは思わなかったぜ…!」
「エリカちゃん、もう一息だよ!」
「あああぁ!!美月の優しさが今は痛い!」
レオとエリカが居残りして実技を行っていた。実技場には二人の叫びがとどろく。とそこに。
「なに騒いでんだよお前ら…」
「お疲れさまです、お兄様、皆」
「八幡と深雪?それに雫にほのかも。何故此処に」
「あれ八幡さん達?どうして?」
実技場に風呂敷を持った八幡と小さいトートバックを持った深雪。そして雫とほのか達が現れた。
◆
「深雪経由で達也に頼まれたんだ。どうせ昼飯食べてないんだろ?作ってきたから食ってくれ」
俺がお重の弁当箱を掲げるとエリカとレオが喜んでいた。
「うっそ!八幡君のお弁当?やった~!達也君に聞いてたから気になってたんだ!」
「お、こいつはありがてぇ!」
俺が作ってきたお重のお弁当を見て達也が疑問を投げ掛けてきた。
「毎回思うんだが何故そんなに食いきれない量を作ってくるんだ?」
「…自分でもわからん。まぁ良いだろ、昼飯代が浮いたと思えば」
「お前の昼食は学生が食べるもんじゃないな…豪華すぎて」
その最中にも実技場の外れで深雪と雫、ほのか達は食事の準備を始めていた。時間は有限だ、俺は達也を見て促す。
「とりあえず、食事を取ろうぜ」
「そうだな」
「お兄様、八幡さん!いただきましょう?」
深雪にも催促され皆の輪のなかに向かっていく。
「「「「「「「「「いただきます!!!!!!!!」」」」」」」」
◆
食事が一段落して話題は実技の事になる。美月が切り出してきていた。
「そう言えば八幡さん。そちらも同じ課題をやっているんですよね」
「ああ、そうだけど…」
「よろしければお手本を見せていただけませんか?」
「え?」
「あ、私も見たい」
エリカが美月の提案に乗ってきた。その反応に対して他のメンツも。
「俺も見たいな」
「お、七草の実技指導楽しみだな」
「私も見たい。八幡隠してたから」
「わ、私も見たいです!」
達也、レオ、雫、ほのかの順に「見たい!」と言ってくるものだから俺は退路を塞がれてしまった。深雪に視線を向けるとにっこりと微笑みを見せるだけなので俺は諦めて測定用の機械の前に立ち測定を始める。
この機械、他人が触れまくって調整怠りまくってるからノイズがひどいんだよな…こんなので実戦を行うのであれば数回は死んでいる。
「しかし、この機械調整全然ダメだな。今すぐにでも調整したい…」
「八幡はCADを調整するのか?意外だな」
達也が俺の発言に食いついてきた。意外って…
「意外って…ああ、俺のCADは自分で調整してるし、妹達と姉さんのCADも俺が調整してんだけど。てか俺、ドンだけずぼらだと思われ…」
「思ってた」
「おい」
よし達也、お前が俺をどう思ってるかわかったぞ。
それとして深雪もガバッと食いついてきた。
あの本当に距離感バグってない?近くていい匂いする…って俺今最高にキモい事いってるな。
それに雫にほのか?キモいからって二人して俺の脇腹つままないでね?地味に痛いのよそれ。
「八幡さんが全て、ですか!?私のCADもお兄様に調整して頂いているんです!」
差し出されたCADをまじまじと見るとよく調整されているのが見て取れる。この調整はプロ顔負けの個人カスタマイズがされて…ん?なんかどっかで見たこと有る調整だな…
まさか達也…
俺が達也に疑問の顔を向けると他人からは絶対にわからないだろうが焦っているように見えた。
俺は答えを聞こうとー
「ねねっ!早く手本見せてよ八幡!」
したが達也に聞きたいことはエリカに急かされ中断されてしまった。他のメンバーも俺の速度を見たいらしい。
はあ…面倒だがやらないわけにいかない、それと達也今度そのCADについて聞くからな。
俺は美月達と同じ課題を行った。
美月が始めに確認し驚愕した。
「八幡さん。え、ウソ…に、200msです…」
美月が話した俺の結果に全員が驚いていた。
「人間の処理速度の限界なんじゃないの…!ってお願い八幡!いや八幡先生この課題をクリアする方法を教えて!」
「俺も頼む八幡!」
ズイっと俺に顔を近付けお願いしてくるエリカとレオ。
…教えろ、といってもな…あまり人におすすめできるやり方じゃないしな。そう思案していると達也も。
「俺にも教えてくれないか?」
あまり表情に出ていないが興味深々だった。俺は諦めて裏技を教えることにした。まぁ真似できる確証はないので使用者本人のスキルによるが。
「…わかったよ。あーそうだな…仮にだ、キッチンからテーブルに卵を移動させるのに何工程必要になると思う?えー美月、答えてくれ」
美月に振るとちゃんと答えてくれた。その
「えーと…四工程ですかね。加速、移動、減速、停止です」
「正解だ。俺は四つの工程を二つに分けて加速、移動を一つの魔法式に、減速、停止を一つの魔法式に纏めて二重詠唱をして起動式の不必要な展開を詠唱破棄して展開しているんだ」
「「「「「「「は?」」」」」」
俺の魔法の起動展開を伝えると全員唖然としていた。てかユニゾンしたし…だから嫌だったんだ。
面倒くさがりな俺は、魔法の修行中に同一のものをわざわざ別々で起動させるのが煩わしくなって別々だった魔法式の共通点を見つけて起動させることで短縮させる裏技を見つけたのだ。
元々起動式はアルファベット約3万文字あると言われ、それをCADで補助し起動させている。
だったら英文と同じで似たような文章があるはずだ。後に付随する言葉が違うだけならばそこを変えて似たような文章は飛ばしてしまえば良い。と
この事をばあちゃんに伝えると
「お前さんにしか出来んよその短縮法…」とあきれられた。
短く出来るものはした方がよくないか?
が、しかし、見つけたとはいったがこれは元々俺が持っているスキル《二重詠唱》と《詠唱破棄》になるわけだが…
それと詠唱破棄ってかっこいいよな強者感あるし。あれだ、自壊する鉄の女王…破道の九十、黒○みたいで。
達也が質問してくる。
「八幡、それは俺でも可能なのか?」
「さぁ?どうだろう。もっとも俺のこの同系統と系統外の二重詠唱は俺の特性だろうからな…達也は起動式が読み取れるからワンチャン行けるか…?」
「八幡、そればらして良いのか?」
本来自分が使う魔法技能は秘匿しなければ行けないのが暗黙の了解だ。
レオが聞いてくるが別に知られたところで痛くも痒くもない。
何故なら
「あー…俺にしか再現できないって言うのが難点なんだよなぁ…」
どこぞの奇妙な冒険で主人公が「不可能って言う点に目をつぶればよぉ~!」と言っていたのを思い出した。
えぇ…と反応が返ってくる。
そんなバケモン見るような目で見るなよ。
「なんだ、期待して損した~!攻略の糸口が見つかったと思ったのにぃ!」
「まぁ、加速、移動も同系統の起動式だからそんなに難しくないぞ。皆律儀に全部展開してるからな。此処を二重詠唱できるだけでも100msは早くなるはずだ。やってみろ」
エリカは大袈裟にしているがとりあえず終わっていないエリカとレオに付いて実技をやってみるように補助すると…
驚愕の結果が出た。
「え、エリカちゃん900msだよ!すごい!」
「うっそ…さっきと100msも違う…」
さっきの実技とは大違いで100msも縮まっておりエリカと美月は抱き合って喜んでいた。
もちろんレオも
「すごいなレオ、890msだぞ。」
「おっしゃー!実技終わりだぜ!あんがとな八幡!」
バシンっ!とレオの平手が俺の背中に炸裂する。痛いんですけどぉ!!
背中をさすりおれは苦笑いするしかなかった。
「八幡、規格外過ぎ」
「八幡さん…すごいです!」
「人を化け物みたいに言うのやめてくれません…?」
雫はとんでもないものを見るような目で、ほのかはまるで憧れの人物にあったかのように目を輝かせ俺を見ていた。
…大したことをしてるつもりはないんだけどな。
俺から「魔法」を取ってしまえば自分で言うのも何だが只の特徴のない死んだ魚のような一般高校生になってしまうだろう。
…俺にはこれしか特徴がないのだから。
「魔法師」という選択がなければ今頃専業主夫になっていたはずだ。
まだ諦めてないけど。
そんなことを思っていたら深雪から。
「ダメですよ八幡さん、立派な魔法師になってくださいね。それとゴニョゴニョ…(それともし専業主婦になりたいのなら私の家に嫁ぐなんて手も…)」
「深雪さん?エスパーなの?俺の考えを読まないで貰って良いですかね…?」
「わ、私も立候補していいですか!?八幡さん!!」
「ほのかみたいな可愛い子が家で毎日待っていたら頑張れるんだと思うが、告白しても振られるまである」
「ふぇ?」
ほのかが急に顔を真っ赤にして俺に倒れるように気絶してしまった。女性陣の俺を見る目が冷たい…俺が何をしたっていうんだ。
冤罪だ!それでも僕はやってない!あれ最後結局有罪になっちゃうんだよな。見てて辛いんだけど。
あと達也とレオから「またかお前…」見たいな表情で俺を見るのをやめい。
何故か嬉しそうに気絶するほのかを抱き抱える俺に深雪、雫、エリカがすごい表情で見ていたのは何故なのだろう…?
◆
此処一週間問題もなく平和だった。
達也の方も闇討ち紛いの襲撃もなく平和らしい。
しかし達也が襲撃を受けると俺が深雪のとばっちりを受けるのだ。干渉力が強すぎて俺が氷浸けになりそうになるのだ。その度に深雪が悲しそうな顔をするものだから怒るに怒れない、そんな平和な日が続いていたのだが…
『全校生徒の皆さん!』
授業が終わり深雪達と教室を出ようとした矢先にハウリングしまくった大音量の声が俺の耳に入り不快感で顔が歪む。
雫とほのかは驚きと不快感を露にし。
「な、なんですかぁ!?」
「…音うるさい。ほのか、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「み、耳が…」
『僕たちは学内の差別撤廃を目指す有志同盟です』
スピーカーから男子生徒の声が聞こえる声に教室内のまだ残っているクラスメイトが色々と騒ぎ立てている。と同時に俺の端末に着信が入る。
どうやら放送室を有志連盟とやらはジャックしてしまっているらしく、委員長から「来てくれ」とお呼びが来ていたが俺は無視して帰ろー
「ダメですよ?八幡さん?一緒に行きましょう」
う、とするがいい笑顔の深雪に手を捕まれ放送室へと連行されていった。
放送室へと向かう俺たちを不安そうな顔で見ているほのかに「大丈夫」と声を一応掛ける。
それと…あれ?俺が捕まえに行く側だよね?おかしくね?なんで俺が捕まってんの?それと深雪さん?最近俺への扱い雑になってませんこと?女ってツヲイ…そう思いながら引きずられて深雪と俺は放送室へと向かった。
◆
道中、達也に出会い放送室へ向かう。
「お兄様」
「深雪か…って八幡?…お前まさかと思うが…」
「ん、んにゃわけない…」
俺が明らかな動揺を浮かべていると溜め息をつき深雪に話しかける。
「お前も呼び出しかい?」
「はい、会長から向かうようにと」
深雪から手を離して3人で向かう際に今回の占拠事件について意見交換していた。
「まさか…これを切っ掛けに行動に入るつもりか…?」
「八幡どうした?」
「どうされました八幡さん?」
二人が突然立ち止まった俺に不思議そうに語り掛けてきた。
「…ああいや、ちょっとな…」
俺は迷っていた。この二人にこの学校を襲うかもしれない輩の事を伝えるべきなのかを。しかし達也からの一言で俺は驚くことになった。
「もしかしてこの占拠事件の背後にブランシュがいるんじゃないかと思ってるのか?」
「!?…どうしてそう思った?」
俺は驚いた、達也が何故その情報を知っているのかと。
「俺も闇討ちされた時、襲撃者が特徴的なリストバンドを身に付けていたんだ…それから調べていったら行き着いた情報があってな」
「…」
俺と達也は同じ回答をした。
「「下部組織エガリテ…そして背後にいるのはブランシュだ」か」
俺と達也はどうやら同じ考えだったらしい。
達也は深雪のため、俺は姉さんのためにこの学校を襲うであろう襲撃者の存在を互いに許すことはない。
俺たちはそれ以降特に話すこともなく、達也は表情にこそ出ていないが深雪を守るという確固たる意思を感じた。俺は敵対者に対して慈悲を与えてやる必要はないと感じている。
黙って放送室へ向かう。お互いに大事なものを守ろうと、戦えることだけは分かりその意思は言葉にしなかった。
二人並んで歩く兄と八幡を背後から頼もしそうに、そして悲しそうな表情をしている深雪の姿があった。
◆
二人で並び、その後ろから一人の3名で放送室へ到着すると既に姉さんに渡辺先輩、十文字先輩が既に着いていた。
「遅いぞ」
「すんません」
「彼らは今放送室を占拠し立てこもっている」
「これ以上、彼らを暴発させないように慎重に対応するべきです」
「多少強引でも短時間で解決を図った方がよいだろう」
どうやら聞いた話では。
先程の放送は流れていないようでどうやら電源をカットしたらしい。放送室のマスターキーも奪って立てこもっているのは計画的な犯行だろう。
しかし、渡辺先輩と市原先輩の両者でどのような対応をするのかで揉めていた。現場でする対応としては劣悪すぎる。
「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ!」と某湾岸署の刑事ドラマの台詞を思い出した。このままでは埒が空かないので
「十文字先輩はどう思います?」
俺の質問に十文字先輩は「意外だな…」といった表情を向けてきていた。
正直、渡辺先輩は強硬派過ぎるし市原先輩は穏健派過ぎて両極端だ。うだうだやられるよりも一人の意見を押し通した方がやりやすい場合があるからだ。
だから俺は先輩達の会話をぶった斬って十文字先輩に聞いた。
それに今の俺は仮にも十師族の一員だ。このくらい強引でも問題ない。
十文字先輩が少し考えてから口を開いた。
「俺は彼らの要求する交渉に応じてもよいと考えている。元より言いがかりに過ぎないのだ、此処でしっかりと反論しておくことが後顧の憂いを断つことに繋がる」
「そうしましたら、此処は待機ですか?」
「学内の設備を破壊してまでも解決するような犯罪性はないと思われる、先程学内のシステムに問い合わせてみたが扉は開けられないようだ」
その答えに、まぁそうだろうなと、十文字先輩ならそうすると思った。
俺は後ろに下がり達也に目線を向けると軽く頷き胸ポケットから端末をとりだしコールし始めた…ん?
電話に出たのは壬生先輩で達也と会話をしている。
…お前何時の間に先輩と連絡先交換してたんだ…?達也に驚きの視線と深雪がなにか言いたそうな視線をぶつけていたが深雪の側に行きアイコンタクトで「後にしてくれない?」と伝えるとコクリ、と頷き凍傷になるのは回避された。
達也が
「十文字会頭は交渉に応じるとおっしゃっております。生徒会長も同様です」
達也は俺の顔を見て頷く。
「と、いうことで会場やら日程やらの打ち合わせがしたいのですぐに出てきて貰えますか?…ええ、今すぐです。『先輩の自由は保証はいたします』ので…警察じゃないので牢屋に入れたりはしませんよ…では」
俺は直ぐ様移動しCADをホルスターから引き抜いた。
《超重力の網》を放送室内の人員把握のために《瞳》の力を使用し《壬生先輩》を除く数名に掛けるようにドアの取っ手に手を伸ばし開ける準備をする。
扉のロックが開かれた瞬間俺はCADのトリガーを引き絞って魔法を発動した。
◆
当然と言うべきか、壬生先輩は「話が違うじゃない!」と騒いでいたが、元々放送室の占拠と鍵の不正使用の件で停学でもおかしくなかったのだ。生活指導担当は「生徒会に一任する」として会長である姉さんの寛大な心でお咎め無しの裁定が下された。
壬生先輩はめちゃくちゃ姉さんに噛みついていたがあれは異常だった。
…やはり精神操作系の魔法を受けている可能性が高い。
家を出る前に姉さんから聞かされた話だが、今日の放課後に討論会が行われるという話になったらしい。
ずいぶんと性急だな、と思ったが。
俺はこのタイミングで仕掛けてくるな、と思った。
教室に入り雫とほのかが俺を見つけて駆け寄ってきた。雫はそれほど表情は変わっていなかったが昨日の出来事を心配してくれていたようだった。ほのかはその逆で表情に出ており一目で「私はあなたの事を心配していました」と表情に出ているようだった。
「八幡。大丈夫だった?」
「八幡さん…大丈夫だったんですか?」
「大丈夫だって言ったろ。心配性だなほのかは」
「でも…」
このまま話していると埒が空かない。俺は早速本題を切り出した。
「ほのか達は今日部活があるのか?」
「え…?あ、はいありますけど…」
何てこった…!よりによって襲撃の恐れがあるタイミングで他の部は休部なのにバイアスロン部がやっているとは…ここで「今日は危ないから帰ってくれ」とは言えないしな…要らぬ緊張感を持たせてしまう。
「なにかありました?」
ほのかが首を傾げ聞いてくる。俺はなるべく平静を装った。
仕方ねぇか…「あの」魔法を使うしかない。
俺はポケットに入れていた試作品の「あるものを」ほのか達に手渡した。
「これって…『お守り』…?」
「ああ、ほのか達部活頑張ってるみたいだし、なにか渡せねーかなって思って」
「わぁ…ありがとうございます…?…!?…///」
俺がピンクのお守りを渡した途端、急にほのかが顔を赤くしてそれに続いて雫も赤くなって固まってしまった。
「あんたなんかのプレゼントなんか要らないわよ!」と怒らせてしまったか?しかし念のために持っていて欲しいのだが…
しかし、それは意外な結果で裏切られることになる。
雫が珍しく恥ずかしそうに
「ん?…八幡それ「安産祈願」って書いてる///」
あ、しまった。よりにもよってそっちのデザイン渡しちまった…!
案の定ほのかは
「あ、ああああ安産祈願…!???ほあわわわわわ…!?で、でも八幡さんとの…!?」パタッ
真っ赤になってキャパオーバーになってしまい再び俺が抱き抱える状態になってしまった。
うーん、これは俺が悪い。
「これは…八幡が悪い…///」
はい。その通りです…雫に言われ頷くしかなかった。
ぷくーっ、と頬を膨らませ何時もの如く脇腹をつねられてしまった。うん、セクハラで訴えられなかっただけマシとしよう。
二人と分かれ討論会が始まる講堂へと足を向けた…訳ではなく講堂前の通りに俺は向かった。
◆
講堂では今ごろ姉さんと壬生先輩が弁論をぶつけ合っているだろうがはっきり言って勝負にすらならないだろう。
そもそも、「魔法」が使え此処に入学していることこそが「優秀」の証なのだから。
差別意識は自らのなかにあると言っていいだろう。
壬生先輩が差別と宣う一つに非魔法クラブと魔法クラブの部費の違いがあるのは当たり前だ。
何故か?
それはこの学校は「魔法」を使う事を前提として活動しているのだから。
魔法を使わない部活に優先的に支払うのだろうか?
否、支払う筈もない。「魔法を使用した技能にのみ優先的に割り振られる」からだ。
魔法を学ぶ学校で魔法を使わない、矛盾している。
魔法を使わない「剣道」がやりたいのならば、それこそ私塾にいくか此処をやめて公立高校に進学した方が自分の腕前を貶められることもない。
しかし、そんな彼女達の「この現状をどうにかしたい」という真摯な思いすらも利用する野郎に俺は若干のイラつきを覚えていたのは確かだった。
そんな持論を俺は考えながらベンチに座っていると武装した数十名の乱入者と車両が現れたが俺はCADを引き抜き起動式を展開、車ごと吹っ飛ばした。
近くにいた乱入者はうろたえる。
「な、なんだ!」
「わ、分かりません!」
「おい、おっさん達」
俺のさして大きくもない声が妙に響き、乱入者どもがこちらに一斉に重火器を向けたがたった一人しかいない俺を見て、この部隊のリーダー格の人間だろうか?が笑い始めた。
「たった一人でこの人数を相手にする気か?間抜けだな」
「間抜け?今から襲う相手の情報も知らないで襲撃か?御目出度い連中だな」
「…っ、やれ!!」
弾丸が俺に飛来するが遅い。
自己加速術式を発動し即座に集団の後ろ側へ回り込む。
相手にとって見れば瞬間移動したように思えただろうがそんな隙は与えない。
移動と同時に《重力爆散》を連続で発動し、1個中隊規模の人員と兵装を無効化した。
突如、部下と兵器が全て無効化されたリーダー格のおっさんは訳が分からない顔をしていたが、気を失ってしまった。
同時に姉さんと深雪が居る講堂の方でガラスの割れる音が聞こえた。
恐らく襲撃があったらしいが、そっちは達也や渡辺先輩がいるので安心だろう。
俺は姉さんから学校に侵入してきた連中の掃討を頼まれているので他に侵入者がいないかさっきのおっさんを縛り上げ向かおう…と思ったのだが
向こうの林、運動場で爆発音が聞こえた。
奇しくもその方向は雫とほのか、バイアスロン部が活動している場所だった。
俺は思わず悪態をついてしまった。
「なんで悪い予想は当たっちゃうかな…渡した側からこれかよ!?」
俺は起動式を展開し一度限りの《空間跳躍》を行いほのか達のもとへ向かった。
今回の事を見越して用意していたのは正解だったかも知れないな。
間に合ってくれよ…!!
◆
部活動の準備をしていた雫とほのかは更衣室で着替えをしていた。
その着替えの最中の話題はもちろんーーー
「ほのか、八幡の事好き?」
「ふぇ?…えええ!?い、いきなりなに雫」
雫による唐突な質問にいつものように慌ただしくなるほのか。
その顔はリンゴのように真っ赤になっていた。
「だって学校にいるときも家にいるときも八幡の話をするじゃない」
ほのかは今まで気がついていなかった。
雫に指摘されてはじめて自分が夢中で『八幡について』語っていることに。
そして今気がついた。
「…はじめは八幡さんを入試の際の魔法実技試験で見たときにすごく『綺麗』だったの」
「綺麗?魔法式が?」
「うん、本当に綺麗な色だったの。魔法を放ったとき色鮮やかで、私はプシオンを感じることは出来ないけどね。八幡さんの放つ魔法を視て感じて、この人は暖かい人なんだって。初めて会った時は十師族の家の人で怖い人かなって思ったけど、皆で過ごす内にちょっぴりエッチで、だけどものすごくかっこよくて…私の家系の問題もあると思うけど…きっと八幡さんのことが好きなんだと思うの」
ほのかは光のエレメンツの末裔であるからか強い依存性があるがゆえに八幡のように優れた魔法師に対して惹かれ、強烈な恋愛感情と従属願望が生まれる。
しかし、それも理由かも知れないが彼女が惹かれるのは八幡の性格とその強さにあるのだろう。
その答えを聞いた雫もほのかに胸の内を明かす。
「…私も、八幡の事が好き。
生まれて初めて成績が抜かされたの。
凄く悔しかった。
それから八幡を追い抜いてやろうと思ったけど抜けなくて。私も気がつかない内に八幡を目で追って関わろうとしてたの。
恋心に変わったのは部活の入学の時かも、先輩達から助けてくれたときに八幡が言ってた。「雫とほのかがそんな目にあってたら助けるだろうし」って…八幡は私をちゃんと視てくれているんだって感じて…其処からかも」
言い終わるとあまり表情を変えない雫が赤面しておりほのかは思わず抱き締めてしまった。可愛すぎて。
「雫…もう、かわいすぎるよぉ!」
「ほのか…苦しい」
「あ、ごめんね雫。そっか雫も八幡さんを…お揃いだね」
雫は普段通りの表情になり、ほのかに宣戦布告する。
「例えほのかが相手でも…負けないよ」
「私も雫が相手でも負けないよ!」
そう二人で言い合っていて、おかしく思えたのか二人で笑いあった。
少し話し込んでしまったようで着替えるのが遅くなった二人は練習着に着替え練習場所へ向かおうとするのだが…
「皆!今日の練習は中止よ!」
部長が声を張り上げて告げていた。何事かと部長へ駆け寄る雫とほのか。
それは普段では聞かない状況だった。
「学校にテロリストが入ってきたのよ!何処から来るか分からないから部室棟へ避難するのよ」
「え…?」
部長のその発言を聞いて青ざめるほのかだったが次の瞬間。
爆音が鳴り炎が上がる。
ロケットランチャーの弾が地面に着弾し大爆発を起こし爆音が練習場へ響いた。
部長は急ぎ部員を避難させるために声を掛けてその場を移動するが、ほのかと雫は腰が抜けてその場にとどまってしまったのだった。
その直後武装したテロリストが数名、目の前に現れる。
「こっちにも生徒がいたとはな…」
「へへっ、さっきの爆発でビビって腰をぬかしてやがるぜ。おい!妙な真似をするなよ?動いたら殺す」
ほのか達を確認したテロリスト達は嘲笑うようにナイフと銃を取り出しちらつかせる。
しかしほのか達も魔法師、行動しようとしたのが失敗だった。
魔法式を展開しようとしたが二人は強烈なめまいに襲われる、よく視るとテロリストの一人が指輪のようなものを共振させているようで、魔法を展開することが出来なくなり
その場から動けなくなってしまう。
(まさか…アンティナイト!?そんな!!)
「バカな女だ…死ねバケモノ!!」
「ほのかっ!!」
「雫っ!!」
距離を縮めナイフを振り下ろしてくるテロリスト。ほのかと雫はとっさに『八幡から貰ったお守り』を握り目蓋をつぶって抱き合った。
(八幡(八幡さん、助けてっ!!)
瞬間。旋風が少女達の前に舞い降りてテロリストのナイフが振り下ろ…されることはなかった。
来る筈の痛みはいくら待ってもやってこずに衝撃もなかった。雫とほのかはゆっくりと目蓋を開ける。ー其処にはー
襲いかかるテロリスト二名のナイフを持った手首をへし折り動きを止めて宙に浮かして投げ飛ばし二人重ねて回し蹴りで後方にいるテロリストの集団の所まで蹴り飛ばす少年の姿があった。
突如として現れた魔法師の少年に驚愕するテロリスト達であったが、今のほのか達にとってはヒーローそのものだった。
その少年の名前は。
「八幡!!」「八幡さん!!」
首をほのか達に少し向けた。
そうすると八幡の登場に二人は安堵していた。
「間に合ってよかったわ…お守り、早速効果があったとは…」
何故離れた場所にいた八幡がほのか達のところにまで瞬時に来れたのか。
答えは部活前に渡していた『お守り』で、そのお守りには使い捨てだが持ち主のサイオンがこのお守りに流れ込むと座標を発信して八幡が作り出した《空間跳躍》が使用できる。と言ったカラクリだ。
「『お守り』ってこれですか?八幡さん…」
「まぁ、あとで説明するわ、待っててくれ」
「うん、待ってる」
「はいっ!!」
フランクにほのか達と会話をしていたが会話を遮るようにテロリストが銃撃をしてくる。
が、しかし八幡が手を翳し即座に魔法障壁を作り出し無効にする。
反対側の手でホルスターからCADを取り出してなにも言わず睨み付ける。
「……」
普段見せないような鋭い眼光でテロリスト達を射貫き動けなくなっていた。
「八幡さん…」
「八幡…」
テロリストの中には八幡の殺気に慄いて銃撃をやめてしまうものまでいた。
八幡は鼻で笑ってしまった。
この程度の殺気でビビるようならお前らはテロリストに向いていないと。
「お掃除開始だ」
お構いなしにと八幡は引き金を引き絞りテロリストに重力弾を叩きつけた。
テロリスト君の明日はどっちだ…!