ありがとうございます…!!
今回から『九校戦』編に入ります。
活動報告の方に「ヒロインは誰を追加したいですか?」を挙げておりますのでそっちもよろしければコメントいただけると幸いです。
そろそろ「俺ガイル」のキャラの影が…?
コメント&好評価お待ちしております。
八幡は目立ちたくない
4月頃に発生した『国立魔法大学附属第一高校襲撃事件』は生徒会と風紀委員会、部活連の3巨頭である
生徒会長七草真由美
風紀委員長渡辺摩利
部活連会頭十文字克人
の三名が解決したと言われているが学校内で噂になっていた。
「解決にもっとも尽力したのは七草生徒会長の弟、七草八幡だった」という噂がまことしやか、というよりも彼が解決した。というのが第一高校生徒の認識になっている。
「100人のテロリスト相手に魔法を使わずに徒手空拳で制圧した」
「逃げ遅れたあるバイアスロン部の部員を守るために果敢に戦った」
「反魔法団体に一人で挑み壊滅させた」…など嘘と真実が織り混ぜられた話が校内で広まっていた。
その噂を流しているのがその3巨頭のうちの二名。
七草生徒会長と渡辺委員長というのだから否定できない真実味を帯びてしまっているだろう。
その事件から数ヵ月が経過していたが八幡を見る目が「七草生徒会長の弟」ではなく「学校を救った英雄」的な目で見られていた。
今回の事件で元々整った見た目と特徴的な目。魔法力と身体能力にその家柄で八幡を信奉する者達でファンクラブなるものが存在しているらしいが詳細は不明であり八幡が所属しているクラスでも「八幡君ってかっこいいよね~!」「あの瞳で見つめられながら罵倒されたい」…といったお前ら大丈夫か?相手はあの八幡だぞ?状態になっている。
しかし、そんな称賛の中一部の同級生、先輩から批判、批評の声もあるのが実情ではあるが本当に極一部だ。
七草八幡はその噂にうんざりしていた。
そう、彼は目立ちたくないのだ。
この話は彼が卒業、いや卒業しても語られるだろう。
本人は不本意であろうが…
一方、十師族の七草家では「七草八幡」の評価が改められていた。当主である弘一が次期当主に据えようとしていたところ、分家からの反対があったのだが今回の事件解決の立役者並びに反魔法団体「ブランシュ」日本支部の壊滅をしたのが八幡ということが分かると、多くの分家は弘一のその行動を認める者が出始めていた。
七草家以外では四葉家では「ブランシュ」の壊滅に際し七草八幡が主だった戦果を挙げており司波兄弟からの報告が芳しくなかったこともあり更に四葉当主は八幡に対して更に警戒心を強めていた。
四葉当主は配下の分家に暗殺指令を指示しようとしていたとか…
しかし、人知れず次期当主に指名されたり四葉家に目を付けられ暗殺命令を受けていたりしていたが、当の八幡はまだなにも知らない。
◆
7月中旬。
魔法を学ぶ第一高校であっても期末テストというものは存在している。
期末テストが終了したその日、俺は何故か深雪達に連れられ生徒指導室に来ていた。
「失礼します」
指導室を出る達也に声をかける。お前何かやったんか?
「達也…なんかお前やったの?」
「八幡…それに皆どうしたんだ?ひどい言われようだな…」
といつもの面々(俺は深雪、雫、ほのか)(達也はレオ、エリカ、美月)が待ち構えていた。
指導室を通る上級生や同級生にじろじろ見られていた。
女子は言わずもがな違うタイプの可愛い、美人どころが集まり。男子は俺を除く良い男が集まり注目を集めるのは無理もないだろう。
俺の場合は変に目立ってしまっているのがあるだろうが…姉さん?なにいいふらしてんの?
思わず俺はため息をついてしまった。
そのため息にほのかが心配そうに俺に話しかけてきた。
「大丈夫ですか?八幡さん」
「…ああ、大丈夫だ。こっちの話、気にしないでくれ…てか達也、どうしたんだ?は此方の台詞だっつーの。何で指導室に呼ばれていたんだ?」
達也は苦笑いを浮かべ事の発端を発端を話してくれた。
「実は実技試験の事で訊も…もとい質問をされていてな」
「なんだそりゃ…」
「なにそれバッカじゃないの?」
レオとエリカが不機嫌になった。ワザワザ点数を下げる行為をすると思っている教師にバカバカしく思ってしまった様子だ。
深雪も達也が呼び出された理由がまたしても侮られるものだったのかと少し怒りぎみだったが達也になだめられた。
そうだ、一学年の期末テストの結果が学内のネットに掲示された。
魔法実技
一位:1-A 七草八幡 1-A 司波深雪
二位:1-A 光井ほのか
三位:1-A 北山雫
となっており、4位からようやくBクラスの人物が出てきており上位20名はA~C組の人物達が名を連ねているのだが、魔法理論となると大判狂わせが発生していた。
その結果が此方です。
魔法理論
一位:1-A 七草八幡 1-E 司波達也
三位:1-A 司波深雪
四位:1-E 吉田幹比古
理論に至っては上位二名がE組という結果に一科生はその当時大いに騒ぎになったらしいが、深雪が黙らせていた。
深雪を怒らせちゃいかんよ…
総合結果としてこうなった。
総合順位
一位:1-A 七草八幡
二位:1-A 司波深雪
三位:1-A 北山雫
四位:1-A 光井ほのか
という結果になった。非常に面倒くさいことになったなと俺は思ってしまった。
本来なら上位成績者に乗らないギリギリのラインを攻めようとしたのだが、テストの前日に姉さん達から
『いい?八くん。今回の期末テストで手を抜いちゃ駄目だからね!』
『お兄様の格好いいとこ見せてくださいね!』
『兄ちゃんが実技理論総なめにするのみたい~!』
『ほら、お姉ちゃんや泉澄達に期待されてるよ!小町も応援してるから頑張りなよ。お兄ちゃん』
といわれてしまい逃げ場がなくなってしまった。
妹に応援されて頑張らねぇ兄いる?いねぇよな!ということになり今回の結果となった。
「それで?達也の誤解は解けたのか?」
「ああ、一応な」
「一応?」
俺の質問に達也は気が乗らないような表情と口調で説明した。
「手抜きじゃないと理解はして貰えたが…転校を勧められたが」
「転校?一体なんでまた…」
俺の疑問に他のメンバーも頭に疑問符を付けてたり一言言いたいのだろうが、それを始めてしまうとややこしくなってしまうので一目配らせ静かにして貰うようにお願いすると不満そうに黙ってくれた。
「第四高校は九校のなかでも特に魔法工学に力を入れているから、俺に向いているんじゃないかって、ね。勿論断ったけど」
「まぁ、お前の成績見たら先生もそんな冗談言いたくなるかもな…知識に至っちゃ先生より詳しそうだしな達也」
俺がそれをいうと皆が俺を見てくる。いや、そう思うだろうよ。
「それを言うなよ」
「まぁ、教師がそんなことをいう時点で間違っているとは思うけどな。所詮先生も人間だ、表面上は読み取ることは出来ても神様じゃないんだ、内面を知って評価できるはずもない。それこそ精神操作系統の魔法でも使わない限りな」
「うん、八幡のいう通り。そもそもの前提が間違っている時点で教師失格だと思う」
平坦な口調で雫が俺のコメントに援護をしてくれた。結果的に俺のコメントはフォローされる形になったが。
話は進み話題は直近で行われる大イベント『九校戦』へと興味が移ることとなった。
レオが話題を切り出した。
「そういや、もうすぐ九校戦の時期じゃね?」
九校戦のにおける第一高校の準備にガッツリ関わっている深雪が困ったように説明した。
「ええ。作業車や、工具にユニフォーム。準備するものが沢山で目が回ってしまいそうです」
「深雪さん、ご自身も出場なされるのにご準備もなされるのは大変なのでは…?」
美月は本当に深雪を案じている言葉を投げ掛けそれを感じ取った美月に笑顔で返す。
「ええ、大丈夫よ美月。確かに大変だけれどもやり甲斐のある仕事だもの。投げ出したりしないわ」
「大丈夫よ美月。深雪の事だから新人戦を総なめにするに決まってるじゃない?それよか準備の方が大変そう」
エリカが冗談半分、本気半分で返す。
「油断は出来ない。今年は三高に『一条』の御曹司が入学したらしいから、でも…」
「「でも?」」
エリカと美月が雫の発言にあとに続く言葉に疑問を持つ。
雫の視線は俺に…ってなに?皆してどうしたよ?幽霊でもいたか?やだ、怖い。
「うちの一高には『七草』の御曹司がいるから…期待してる。八幡」
そういって近づき俺の袖口を握ってくる。上目使いで。
雫の行動にムッとする一部の女子から睨まれるが俺悪いことしてないよな?なんで?
達也達は「あー…」と納得している。
袖口をつかんでいた雫が離れほのかのそばに戻ると会話が再開される。
「そりゃ強敵かもね。というか雫随分詳しいわね」
エリカが疑問を口にするとその問いに答えてくれたのはいつも一緒にいるほのかであった。
「雫はモノリスコードフリークなのよ。だから九校戦は毎回見に行っているのよね?」
「…うん、まあ」
ほのかの問いに感情の乏しい雫だったがちょっぴり恥ずかしそうに頷いていた。こう言ったところが可愛らしいと感じてしまう要因なのだろうか…
「…ばか」
雫が俺を見て俺にしか聞こえない声で罵倒してきた。ひどくない?てか俺の心読まないで。
「今年は三高と競う側になると思うけど大丈夫。男子新人戦は八幡がいるから」
「そうですよ!八幡さんがいますから男子新人戦はきっと大丈夫です。三高がどんなもんですか!」
雫の言葉にほのかも乗っかりまさに怖いものなしといったところだったが非常に答えづらいのだけれども…
「わりぃ。俺、九校戦出場する気ないんだが…」
「「「「「「は?」」」」」」」
俺が話の腰を折るようなことを言ったばかりか全員が「お前なにいってんの?」的な表情を向けてくる、深雪と雫に至っては背後からなにか浮き出てきているように思える程の迫力だ。
だって面倒くさいじゃん。なんでワザワザ大衆の面々で魔法を披露しなきゃならんの?見世物じゃないんだが。そもそも全ての魔法科高校がその会場に集まるということは「あいつら」と会う可能性があるからだ。
俺はそのリスクを避けたいという思いがあって発言しているのであって…
「八幡さん?何を仰っているんですか?」
「八幡?」
深雪と雫に問い詰められる形になるが俺は負けない!
「いや、俺目立ちたくないし…」
「そんな覇気の無いことでどうするのです!仮にも今回の成績優秀者なのですよ?」
「それに八幡、この間の事件解決の立役者。逃げられないと思う」
「い、いや俺みたいなやつが出場しても九校戦の運営側も迷惑だろうし。俺妹いるからお世話を…」
「わ、私は八幡さんの活躍みたいです!」
「あたしも八幡の活躍みたいかな~」
理由の足しにもならない弁論を語る俺の逃げ場は深雪、雫、ほのか、エリカが取り囲んで塞がれた。そして達也が止めの一言を告げてきた。
「…八幡。選手の選出は七草生徒会長と生徒会が選ぶんだよな?姉である会長が身内贔無しに直近の成績や事件解決の例を見てお前を選ばないはずはないと思うんだが」
なん…だと…?
「…そうだった」
俺は身内の中に敵が居ることを思い出しがっくりと項垂れ両手を地面につく。
その光景に苦笑いするほのか達と勝ち誇ったような深雪と雫が居たそうだ。
くそっ…諦めないぞ俺は…!
俺は生徒会室に走った。
「あ、八幡さん!?」
◆
生徒会室に入室すると姉さんが作業をしていた。
姉さんに声をかけようとすると姉さんは此方に気がつきパアッ、と明るい表情になった。
「姉さん!俺は九校戦に…!」
「お願い八くん!エンジニアとしても九校戦に参加してちょうだい!エンジニアが足りないの!!」
でないぞと言おうと思ったが早速退路塞がれましたぁ!!
「ええ…?」
「ん?八くんどうしたの?」
「お兄様が言った通りだった…」
しかし、俺はまだ諦めたわけじゃ…!?
「八くん…ダメ?」
姉さんが俺の手を取って上目使いでおねだりしてくる。姉さんの得意技だ。
くっ…!姉さんのおねだりなんかに負けない…!
「わかった…頑張って出るよ」
駄目だった。しかし、一歩譲っても選手として参加するのは良いのだが…
「ほんと!お姉ちゃん嬉しい!」
姉さんが俺に抱きついて来る…ああ、柔らかいのが当たっているし、良いの匂いめっちゃする…じゃなくて。
「俺がエンジニアで参加するのは不味くない?」
「あっ…い、良いのよ!皆知らないし!」
姉さんがあわてふためくが「ばれなきゃ問題はない」って思ったろ。
学生の大会に参加するCADの調整技師にプロ呼んでどうするんだよ…
チャイムが鳴ったので俺と姉さんは一旦その話を終了させ、次の授業の準備のために生徒会室をあとにした。
◆
「…だからと言って、各クラブの選手を無視するわけに行かないし、選手を決めるだけでも一苦労なのだけれども今回は八くんが一人二役で活躍してくれるからお姉ちゃんの負担はかるくなるわ」
「俺が参加するのは確定ですか…」
「当たり前でしょ、八くん?」
「さいですか…」
姉さんの愚痴を聞きながら生徒会室で授業が終わった後昼食を取っていたのだが、案の定俺は強制的に選手とエンジニアの二足の草鞋を履くことになってしまった。
その決定事項を達也と深雪は「ほれ見たことか」と言わんばかりの勝ち誇った顔をしている。
特に達也、その顔ムカつくから止めろ。
表情に出てないけど何となくわかるぞ、エリートボッチ舐めんな。
「選手選抜が未だ決まっていないんですか?」
うーん、うーん。と唸っている姉さんを見かねた達也が声を掛ける。
「選手の方は十文字くんが手伝ってくれてなんとか決まったんだけどね…問題はエンジニアなのよ。」
「エンジニアですか…」
「なんだ、未だ決まってないのか?」
渡辺先輩の問いかけに姉さんはいつものような明るさはなく力無く頷いた。
「二年生の方だと五十里くんとあーちゃんとか優秀な人材が居るんだけど、今年の一年生や三年生はどうしても魔法師希望の子が多くてね。まだまだ頭数が足りないわ」
「五十里か…あいつはどっちかというと調整はあまり得意ではなかった筈だが…」
「現状はそんなこと言ってられる状況じゃないの…」
「私と八くん、十文字君がカバーすると言ってもね。限度があるわ」
姉さんよ、俺は確定ですか…救いは、救いは無いんですか!?
姉さんが他の選手の分も見ると言う台詞に渡辺先輩が反応していた。
「お前達は主力選手じゃないか。八幡くんもだが、他人のCADにかまけていて疎かになるようでは本末転倒だぞ」
「せめて摩利がCADを自分で調整してくれるとありがたいんだけどな~?」
「…うん、本当に深刻だな。どうにかしなければ」
疲労ゆえに姉さんの妙に据わった眼差しで渡辺先輩を見ると若干冷や汗をかき目を背けていた。
ヤンデレになった姉さんは怖いのでノーセンキューだ。
あ、やっぱり選手も確定なんすね…?
「ねえ、リンちゃん。エンジニアやってくれない?」
「無理です。私の技能では中条さん達の足を引っ張ってしまうかと」
既に何度か姉さんは市原先輩にアプローチをしていたのだろうか、失敗しているようだ。
姉さんは轟沈し泣きそうになっていた。
「うえ~ん、リンちゃんに振られちゃった~八く~ん…慰めて~」
おーよしよし、姉さんが俺にもたれ掛かるように軽く頭を預けてきた、他の人も居るというのに俺に頭を撫でられると皆から「ここにも居たかシスコン・ブラコンの姉弟が…」という生暖かい目で見られてしまった。
深雪からは冷気が出ていたは何故だったのだろうか?達也が宥めていたが。
「…八くん、良いアイディア無い?」
がばりと頭を上げたので、俺は姉さんから離れた。
姉さんは行き詰まったのか俺に意見を求めてきた。
…仕方がない、ここは姉さんと深雪に助け船を出してやるとするか。
え?さっきの復讐じゃないかって?ハハハ、ソンナハズガアルワケナイダロー、ナニヲジョウコニズンドコドーン!
おっと、荒ぶって日本語じゃない半角カナ言葉を話してしまった。
「達也とか良いんじゃないか?深雪のCADだって調整しているのは達也って話らしいし」
俺の話に中条先輩が食いついてくる。
「確かに、司波くんの調整は一流のクラフトマンにも負けずとも劣らない仕事でした」
「盲点だったわ…!」
姉さんの瞳に生気が宿った。
「そうだった…!達也くんはうちの備品のCADを調整して使っていたの忘れてた。使っているのが本人だけだからな」
達也の逃げ場がどんどん潰されていく。達也は俺を睨んでいるが目を見ないようにしていた。
でも達也、横見てみ?深雪が目を輝かせてんぞ。
しかし、達也も戦わずして負けるのは自分の主義に反するのか最後の抵抗を試みていたが。
「CADエンジニアの重要性は重々承知していますが、一年生それも二科の自分には務まらないですし、過去に事例が無いのでは?」
「なんでも最初は初めてよ」
「前例は覆すためにあるんだ」
「達也、諦めろ…最大の障害は姉さんたちじゃ無くて近くにいる人だぞ?」
達也は俺が言っていることが分からなかったようだが、その隙を突き隣にいる達也の超重要人物にアイコンタクトをすると頷き思いもしない援護射撃…もとい艦砲射撃が飛んできた。
「わたしは九校戦でもお兄様にCADを調整していただきたいのですが…ダメでしょうか…?」
達也は深雪の援護射撃に思わす氷付いてしまった。もうこれは詰みだな。
今ごろ達也は心のなかで「深雪!?」となっている筈だ。
すかさず姉さんが追撃を掛ける。
「やっぱり、いつもCADを調整している人が担当してくれれば選手としても心強いわよね!ね、深雪さん!」
「はい!その通りだと思います。兄や八幡さんがCADの調整を受け持ってくれるなら光井さんや北山さんも万全の状態で試合に望めると思います」
達也は二名のラッシュ、特に深雪の兄がやってくれると信じている汚れ無き美しい笑顔を見せられた事により詰んでしまった。
ちょっと待って、俺も逃げ場潰されてるじゃん…
俺と達也はため息をつきそうになった。
◆
放課後に俺と達也をメンバー入りさせるかどうか最終的に決定させることが決まった。
俺はともかくとして、達也をメンバー入りにさせるときは荒れるんだろうなぁ…と少し黄昏そうになったがこうなったら意地でも達也をメンバー入りさせてやろうと決意した。
友達の為かと言われれば半分はそうだと答える。何故なら俺が見た中で一番の知識と整備の腕を持っているからだ。
初めて達也のCADを見せて貰った時にそう感じたからな。
なんせ達也はあの「トーラス・シルバー」だ。
少し前に最新機種のCADの企業展示会があり俺も変装して参加していたのだが、そのとき「シルバーホーン」モデルをさわったときと同じ調整がされていたのだ。
これでも俺も一応「ファントム」の名を語って「ナハト・ロータス」を運営しているからな。
CADを見る目はある、と自負している。
しかし、学校競技のエンジニアに「トーラス・シルバー」と「ファントム」が参加するって…俺はともかくとして「シルバー様」が出るとか…ご愁傷様だろ。
残り半分は…俺が楽をしたいからである。
暇をもて余していた達也は自分のホルスターからCADを取り出して調整していたのだが、それを中条先輩が目敏く見つけ瞳を輝かせながら頬擦りする勢いで『シルバー・ホーン』もとい『トーラス・シルバー』を誉めちぎっていた。
俺もすることが無いのでホルスターから引き抜いて『ペイルライダー』のCADシリンダーカートリッジの回転ストレージを回していると案の定こちらにもニコニコ顔で近づいてきた中条先輩がやってきた。
「あっ、八幡くんも今日はペイルライダーを持ってきているんですね」
姉さんに視線を向けると「見せてあげて」と言わんばかりのお母さんのような表情を俺に向けてきた。
こうもキラキラとした表情、そして小動物的なちょろちょろ動く雰囲気を持った先輩はどちらかと言うと昔の小町を想起させてしまい、危うく頭を撫でそうになるがそこは自重した。
CADを渡してあげると「ナハト・ロータス」で販売されたCADとか種類なんかを色々と説明してくれて本当に好きなんだなと素直に関心してしまった。
姉さんが笑いそうになっているのが気になったが…
まぁ…すみません中条先輩。本人目の前にいるんですけどね。
あ、そうだ、中条先輩に渡すものがあったんだわ。
「中条先輩」
「なんですか?八幡くん」
首をかしげて俺を見る中条先輩。本当に俺よりも年上なのか疑いたくなったが以前に話していた『あるモノ』を生徒会室に持ってきて足元に置いておいたアタッシュケースを机の上に置く。
「なにかな?」と覗き込んでいる中条先輩の前で開いた。
「以前に中条先輩に言った『ペイルライダー』のショートバレルっす」
「えっ!?ホントに?ホントにホント?ありがとうございます八幡くん!!」
ガバッ。
アタッシュケースの中身を見た瞬間中条先輩のテンションがMAXになったのか喜色を浮かべて俺に抱きついて来た。先輩、いくら嬉しくてテンションが上がったと言っても年頃の女の子なんだから俺みたいな奴に抱きついちゃいかんよ…
お兄ちゃん心配です。って言ってる場合じゃねぇ。
「あの、先輩?離れてくれません?ね、姉さん?い、いや、違うって!これは…!」
その光景を見た渡辺先輩、市原先輩は
「八幡くんは本当に女誑しだな…」
「驚きです」
姉さんはというと。
「(少し目が据わっていて不機嫌になっている。)はーちーくーん?餌付けしてあーちゃんも手込めにしようとしてるのかな?お姉ちゃん…そろそろ怒っちゃうわよ?」
深雪は言わずもがな
「(干渉力が強すぎて寒い。てか霜が出来て笑顔だがめっちゃ怒っている。)八幡さん?またですか?」
達也は
「(そっとしておこう)…八幡お前」
それはお前違う作品の主人公の台詞だろうがぁ!
その後中条先輩と俺は姉さんたちからお叱りを受けましたとさ。
お叱りから解放されたあと。
「八幡くん本当にごめんなさい…CADの事になっちゃうと舞い上がってしまって…『ペイルライダー』は市場に出回っているのが本当に希少なモノなのでつい…」
お叱りが堪えたのと俺に抱きついた事への羞恥心が混ざり今にも泣きそうになっており、俺から声を掛けるのは憚られたがここは言っておいた方が良いだろうと思い意気消沈の中条先輩に妹たちを嗜めるような優しい声色で話しかけた。
「そっすね…先輩がCADが好きなのは分かりましたが女の子なんすから嬉しくても抱きついちゃダメっすよ?未だ俺だからよかったですけど、見ず知らずの男に先輩みたいに可愛い女の子が抱きついたりしたら誘拐されちゃいますよ」
「ごめんなさい…って!私を何歳だと思っているんですか!八幡くんよりも先輩ですよ!」
「いや、モノ貰って嬉しくて抱きつくような先輩は先輩としてどうかと思うんすけど…?」
「正論が痛いです…!…でも、もう大丈夫です!八幡くん以外にはしませんから!」
その失言?により中条先輩は渡辺先輩から揶揄われていた。
俺を見ている姉さんと深雪がずっと不機嫌だったのが謎なんだが…?
またしても達也が呆れたような表情で俺を見ていた。
だからその表情やめろって。
◆
「それでは、九校戦メンバー選定会議を始めます」
時間帯は変わり放課後。部活連本部にて姉さんが開始を告げ、会議が始まった。
既に内定を貰っている先輩たちに混ざり俺と達也がいる席はオブザーバー席だった。
俺への文句はない…というよりも歓迎と好感触の声が多かった。
まぁ…当然だろうな『七草家』の人間で尚且つ生徒会長からのお墨付きだ。
それに先の事件解決を尽力をしたのが俺と言うことになっているので先輩たちも俺を認めざるを得ないのだろうが。
マジで姉さんたちの手柄を横取りしているようで本当に心苦しいのだけれど…てか出たくないんで誰か否定的な意見を誰か出してくんない?と思ったが誰も声を上げやしない。
否定的な意見を出す方が自分をこの輪から仲間はずれにしてくださいと言っているようなものだ。
特に姉さんからの反感が一番でかい気がする、逆らってはいけない。
達也の方はやはりと言ったところか、「何故この場に二科生がいるのか」と。
この場で《ウィード》と言わない辺り良識は未だ残っているようだがそこからもつれていった。
達也に対しては意外にも好意的な意見が多かった。
その理由として先輩からは風紀委員としての実績がなまじ無視できないほどの実績がある達也は二科生として別格の認識だった。
それに選手の中に達也の活躍を確認している風紀委員の先輩が多数存在しているためメンバー入りに納得しているところもあったが、今此処で騒ぎ立てている人間は論点がなく感情論で騒ぎ立てている間抜けしかいないようだ。
この騒いでいる間抜け共の余りの反応を見て俺はイラつき度がMAXハザードオン!になりそうになり、どうやって黙らせようか思いながら発言しようとしたところ達也に止められてしまった。
すると不意に議長席の隣から低音ボイスが会場を静まり返らせた。
「つまり、司波の技能がどの程度のものなのか分からないからこのような無駄な議論が続いているのは理解した。なら、実際に確かめてみれば良い」
十文字会頭の正論に今まで騒いでいた先輩たちはピシャリと黙ってしまった。
それほどに十文字先輩の説得力があったのだ。
「簡単に言うが具体的には?」
「実際に調整をやらせてみれば良い」
まさにその通りであった。
「なんなら、俺が実験台になるが」
十文字先輩が立候補するが周りの先輩たちが「危険です!」と騒ぎ立てているので俺が怒気を飛ばしてやるとおとなしくなった。この程度で静まるなら騒がないでくんない?血圧あがっちゃうでしょ?
姉さんが代役を申し出るがそれは逆効果なんだわ姉さん。
俺は視線を合わせて「大丈夫」と送ると頷いてくれた。
「先輩俺が引き受けるっす」
俺が引き受けようとしたが先輩から立候補者が現れ達也は驚いていた。
「いえ、その役目俺にやらせてもらえませんか?」
桐原先輩の立候補に達也も驚いたようだったが、それよりもその男らしさが表情に出てはいなかったが嬉しそうだった。
姉さんからの指示で別のCADに現在使用しているCADをコピーして即時使用出来るように調整する、というテストの条件をだされた達也は
「余りおすすめできませんが…仕方がありません。安全第一でいきましょう」
そう言って設定データの抜き取りをオートではなく「完全マニュアル」で行っており、エンジニアスタッフ、特に中条先輩と五十里先輩は驚いていた。俺もだが。
選手の面々は何を行っているのか全く理解できていない様子で俺は苦笑した。
調整が終わり達也から桐原先輩へ手渡され使用する。
「桐原、感触はどうだ?」
「問題ありませんね。自分の物と比べても遜色ありません」
桐原先輩が達也から渡されたCADを起動させて使用すると結果を直ちに報告した。
しかし、やはりと言うべきか間抜け共は否定的な意見しか出して来なかった。生徒会長直々の推薦ということもあってハイレベルなものを期待している面もあったのだろう。
…この凄さが分からない時点で魔法師の卵としてはお粗末だな。
「わたしは司波くんのチーム入りを強く推薦します!」
そんな空気の中いつもとは違った強気の雰囲気で反対意見を述べる同級生に立ち向かったのは中条先輩だった。
凄さを力説するのだが反対意見を言われ、次第に尻すぼみになっていってしまい中条先輩が言い負かされてしまう恐れがあったので、俺が賛成意見を言ってコイツらを黙らせようと思ったところに思いもよらない援護が入る。
その人物に俺と達也は驚いた。
「桐原個人が所有するCADは競技用の物よりハイスペックな機種です。スペック違いにも拘わらず使用者に違和感無く感じさせなかった技術は評価に値すると思いますが…会長、私は司波のエンジニア入りを推薦します」
なんと服部先輩が達也のエンジニア入りを支持したのだ。俺もこのチャンスを逃すまいと追撃を仕掛ける。
「会長、俺も達也のエンジニア入りを強く推薦します…俺も今回CADを調整するエンジニアで参加するのですが、達也の安全マージンを取りつつ完全マニュアルで行うのは流石の俺でもちょい無理ですし…」
まぁ、やれなくはないが此処では黙っておく。俺は最大級の『禁じ手』を発言した。
「『七草家』専属のCADの魔工師と同じ…いやそれ以上かも知れない技術を桐原先輩が使用したCADに施していました。それはこの『七草八幡』が証明します…此処まで真面目に語りましたが1年生で参加実績がないって言ってましたけど俺が内定してますから大丈夫っすよね?先輩方?」
服部先輩という2年生、というか学内の実力者と俺という十師族『七草家』の長男が太鼓判を推すのだ、十分にインパクトがあったはずだ。
「服部、八幡の意見はもっともなものだ。司波は当校のエンジニアに相応しい結果を示してくれた。俺も司波のメンバー入りを強く支持する」
十文字先輩が意思を表明すると反対派は沈黙し勝負はついた。
結果、達也は九校戦のエンジニアとして参加することが決定したのだった。
◆
「たでーま…」
「もう、八くん。しっかりしなさい?せっかく代表に選ばれたんだから」
場所は変わり俺と姉さんは部活連での出来事が終わり帰宅していた。俺は疲弊し、姉さんはほくほく顔だ。
「いや、しっかりしろって…無理だろ」
「これから小泉澄ちゃんたちから大喜びされちゃうわよ?八くんが九校戦に出るって」
「それは百歩譲って良いんだけど…九校戦だと魔法師全員が集まる場所だ。つまりその親族が応援に来るってことだろ?「向こう」での知り合いとか来てそうなんだよなぁ…選手としても」
「あっ…ごめんなさい八くん…辛いこと思い出させちゃったね…」
姉さんが俺の発言にハッとして落ち込んでしまう。
「いや、どうせ向こうは俺を見ても似てる奴いるな、ぐらいにしか思わないって…それに」
本当にらしくないと自分でも思ってしまう発言をしていた。
「互いに気づかないのが幸せだと思うからな」
俺の表情を見て姉さんが悲しそうな顔をしていた。
此処に鏡がないので分からないが、自分でもひどいと思う顔をしていたのだろう。
リビングのドアが開く音が聞こえてくる。この表情のままでは小泉澄たちが心配してしまう。
「まぁ、メガネしてるし、背筋もピンと伸びてるからよくよく見ないと俺だってわからんって」
冗談を姉さんにかましてやるといつものような明るい笑顔に戻った。
「ぷっ…なにそれ?変な八くん」
俺と姉さんは気を取り直し、小町達(天使)からの「おかえり!」をいつもの表情で待機していた。
「お帰りなさいませ、お兄様、お姉さま」
「お帰りなさい!兄ちゃん、お姉ちゃん」
「おかえり~お兄ちゃん、真由美お姉ちゃん」
いつものような「おかえり」を貰い暗かった気分が晴れた気がした。
相も変わらず現金な人間だな…と自分を鼻で笑いたくなった。
案の定俺が九校戦と試験の成績を総なめにした結果、泉澄たちに抱きつかれ
「凄いですわお兄様!流石私たちのお兄様です!でしょ?香澄!」
「兄ちゃん凄ーい!!流石僕たちの兄ちゃんだね!ね、泉美!」
「お兄ちゃんやるじゃん!小町も妹として鼻が高いよ…でも無理はしないでね」
小町は察ししてしまったようだが俺は小町の頭を撫でて
「大丈夫だ、きっとな」
「…頑張ってね、お兄ちゃん」
「おう」
「私たち3人で絶対に応援に参りますから楽しみにしててくださいねお兄様!お姉さまも連覇がかかっていますので」
「頑張ってね兄ちゃん、お姉ちゃん!!」
「…おう、ありがとうな」
泉澄の頭を撫でてやるとえへへっ、と満面の笑みを浮かべていた。
俺と姉さんは妹たちからの激励を貰い明日の九校戦発足式に備えることにした。
明日も波乱な1日になりそうだ…
「俺ガイル」原作でも数字が付いている名字の子が居ましたね…出したい…。
部活連で達也が八幡を止めてなかったら大惨事になっていたと思う。
しれっと「七草家」の名前を使っていく八幡…。
これが「権力」…!