俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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九校戦第一話にめっちゃコメント来ててビックリしました…。
前話のあとがきに「数字の付いた名字の子出したい」と書きましたが自分の力量的に「俺ガイル」からキャラを出しすぎると捌ききれなくなってしまうのでこの作品では二名程度しか十師族関連では出せないので申し訳ないです。
(読み方的に数字に出来る登場人物は申し訳ないですが見送りです。)
UAが60000&お気に入り800突破ありがとうございます。
コメント好評価誤字脱字報告もありがとうございます。

活動報告でもあった「ヒロイン追加は誰がいい?」で多かったあの娘が漸く出ます。
八幡のヒロイン枠が追加されていく…。
性格ちがくね?といった所があるかも知れませんのでご注意を。


九校戦発足式

九校戦発足式当日。

 

俺は登校し教室に入るなり深雪から

 

「生徒会長から申し付けられましたので、八幡さんを見張っていてくださいと。サボらないで発足式に参加してくださいね、八幡さん?」

 

と死け…ではなくお知らせが届き、俺は参加する以外の道が無くなってしまった。

というよりも深雪さん?いつの間に姉さんと連絡先を交換していたの?

 

「昨日会長より「八くんを見張っていてね、どっかに逃げちゃうかもしれないから。連絡先を教えますので逃げようとしたら報告お願いできますか?」と頼まれましたので」

 

姉さんの物真似をする深雪。

 

ちょっとまって深雪、姉さんの真似上手すぎない?

思わずそんなことを思っていると深雪のその説明を聞いた雫とほのかもやって来て詰め寄るように。

 

「八幡ダメだよ?逃げないように私も見張ってるから」

 

「八幡さんダメですよ?私も雫と一緒に見張ってます!」

 

「勘弁して…」

 

俺はある意味美少女3人の熱い視線を受けながら、というかこの話を聞いた奴から血涙を流しそうなくらい羨ましがられる展開に巻き込まれているのだが考えてほしい。

ずっとこの視線を背中越しと横から受けている俺の心の辛さを。

え?自慢かこの野郎って?体感してみろめっちゃ辛いから。

朝から授業を受けて昼は屋上へ行って一人で食事を取ろうとしたところ、3人から「「「ダメ」です」ですよ」と進路を妨害され深雪達に屋上へ連れていかれ、何故か雫とほのかがぴったりとくっついて来て全員でそれぞれ持ち寄った弁当を各自でつついていた。

てか雫さん?ほのかさん?離れてくれない?めっちゃ食いづらいんですけど…

何故か二人の顔が赤い。

暑いなら離れてくれないかね。雫とほのか、頬膨らませながら俺の横腹をつままないでくれ。痛い。

それと深雪さん?雫達を俺に触れさせたくないからってお茶を凍らせるのはやめてくれませんかね。

お茶がキンキンに冷えてやが…!ちゃダメなのよ飲めなくなっちゃうでしょうが。

 

なんでか怒り気味の深雪を宥めるのが大変でした、お兄様助けてくれ…

 

そして放課後。

深雪は発足式の準備があるので俺たちと分かれ、俺は美少女2人組に連行されて姉さんから知らされた場所、つまり講堂へ行くとそこで漸く二人から解放された。

 

そこには既にメンバーが多数居り、遅刻はしていないのだが何故か急がなければならない衝動に駆られてしまった。

 

舞台の裏手に回るとそこには達也と深雪がスタンバっており、俺は達也の着用してるメンバーの薄手のブルゾンを見て

 

「違和感が無さすぎる…」

 

「?どうしたんだ八幡」

 

「八幡さんどうされましたか?」

 

満足げな笑みを浮かべている深雪と達也がこちらの発言に気がついたのか応答した。

俺も達也の制服について感想を述べた。

 

「いや、達也すげー似合ってんな、それ」

 

俺は自分の左胸を指差し達也のブルゾンの左胸に刺繍されている部分を指し示し率直な感想を述べる。

すると達也は表情には出ていないが気恥ずかしそうにしていた。

達也が答える前に深雪が俺に近づき達也の心情…というより深雪の今の心情を話してくれていた。

 

「漸くお兄様が本来あるはずの校章をお付けになられて…深雪は嬉しいです」

 

俺に説明した後うっとりとした表情でエンジニアが着用するブルゾンを着ている達也を深雪はみていた。

それには俺も賛同した。

 

「そうだな、ある種ようやっと認められたというべきか…」

 

俺の発言に達也は苦笑していた。

 

「認められたって…まだ調整もやっていないのに評価されるは可笑しくないか?」

 

「お前の事だからすぐに結果を出すだろ…まぁ、反発があるかもしれないが俺が黙らせる」

 

「それはいい意味での黙らせるか?」

 

「…どっちだろうな?」

 

「おい…!」

 

そのやり取りを聞いていた深雪はにこにことしていた。

不意に深雪が手に持っているものは達也も着用しているエンジニア用のブルゾンではなく選手用のユニフォームを持っていた。

 

「八幡さんもこちらを」

 

深雪がその制服を広げ着用するように促され俺は上着を脱いで着用するがうまく着ることが出来ずに深雪に笑われてしまった。

 

「笑わないでくれよ…」

 

「ふふっ、ごめんなさい八幡さん。屈んで貰えますか?」

 

「お、おう…」

 

俺は屈み腕を通して着用するとすかさず深雪が正面に立って襟元を整えてくれた。

まるで旦那に妻がネクタイ締めるように…ってイカンイカン。

深雪も俺と同じような事を思ったのだろうか、二人して顔が少し赤くなっており顔を一瞬だったが見合わせていた俺達に達也の咳払いで急ぎ二人して顔をそっぽ向けた。

 

「深雪、他の人の目もあるからほどほどにな」

 

「な、なに言ってるんだよたちゅや」

 

「そ、そうですお兄様」

 

「八幡、噛んでるぞ…」

 

深雪のお陰で綺麗に着こなすことが出来たユニフォームを着用した俺と達也をみた深雪は満足げに笑みを浮かべており、当の本人達はそれをみて苦笑しか出来なかった…

 

 

 

発足式という名のお披露目会が始まった。

進行役は姉さんで一人一人の紹介を行っていたのだが、これがなんとも言えないステージ側と客席側からの視線に俺と達也は居心地の悪さを感じていた。

 

姉さんの紹介が一人一人終わると襟元にIDチップを仕込んだ徽章をユニフォームにつけるのだが、その役目は進行役の深雪が担っていた。

深雪は嫌な顔ひとつせず一人一人に徽章を付けていく。

その際に同級生のほとんどが顔を赤くして崩れそうな表情を食い縛って耐えていた。

深雪の凄いところは同じく選手の女子生徒にそれを行っても嫌な顔、というよりも頬を赤らめていたり、照れているような様子が見られていて、先輩達が微笑ましいものを見るように見ていた。

 

まぁ、深雪みたいにな超絶美少女に至近距離でそんなことされたら緊張するわな。

俺のそんな気持ちを読み取ったのか、となりにいた同じエンジニアチームの五十里先輩が声を掛けてきた。

 

「何だか緊張するね」

 

「そうっすね。視線にさらされるのは精神衛生上よくないっす」

 

「でも、試合になったらたくさんの視線に晒されるから此処で慣れておこうよ」

 

「了解っす」

 

緊張をほぐすためだろうか、わざわざ声を掛けてきた所をみると先輩も緊張していたのかもしれない。

気がつくと先ほどの取り付けていた人達とは反応が違うのは当たり前だが、嬉しそうな顔で達也の徽章を取り付けていた。

取り付け終わり、最後に残った俺が名前を姉さんから呼ばれる。

 

「1-A 七草八幡君」

 

俺の気のせいだろうか、先程よりも声色が明るかったようだが。

まぁ、最後の人員紹介だしな。50名も紹介したらつかれちゃうよな。

後で姉さんをわしゃわしゃするか…ただ撫でたいだけじゃないぞ。

 

深雪が俺の前に立って襟元に徽章を取り付ける為に近づいた。

不意に俺は深雪の目をみてしまい深雪にしか聞こえない声で呟いたようだ。

 

「綺麗だな…」

 

すると先程まで微笑を浮かべていた深雪も少し顔が赤に染まり、互いに見合わせると顔が赤くなっていた。

 

「は、八幡さん…」

 

ハッとなる深雪となんとも言えない顔になっている俺は顔を見合わせて若干忙しなく徽章が取り付けられた。

 

「な、なんかすまん…」

 

深雪が全員の徽章を取り付け終わるとステージ向こうの生徒から拍手が巻き起こっていた。達也の際はまさかの1-Eのクラスメイト(レオ達)が音頭を取って拍手をして不満げな連中を一掃していたのは気持ちが良かった。

拍手が鳴り止むと姉さんから補足の説明が入る。

なんだろうか…と思った矢先、俺にとってその補足は要らなかったです。

 

「これを持ちまして全員に徽章の授与が終了致しましたが今回の九校戦に関して重ねてお伝えしたいことがございます。現在選手のユニフォームを着用している一年生の七草八幡君ですがエンジニアと選手を兼任致します。

これは当校始まって以来の快挙になります。

この快挙も重ねまして、参加者一同へもう一度盛大な拍手をお願いします!」

 

「ちょっ!…姉さ、」

 

講堂内に拍手が響き渡り同じく壇上の姉さん、深雪、雫とほのかに達也までもがその拍手に加わっていた。どうやら覚悟を決めるしかないようだ。

 

小町、泉美、香澄…お兄ちゃんやっぱりやるしかないようです…

 

俺が覚悟を決めている最中に九校戦の発足式は無事終了した。

 

 

発足式が終了し、競技に出るメンバーは忙しない日々が続いていた。俺と達也はCADの調整や姉さんと深雪の生徒会の仕事を手伝っていた。

 

室内にキーボードを叩く音が聞こえる。

ちょうど中条先輩と市原先輩が外出していた為、生徒会室に残っているのは俺と達也だけだ。

喉が乾いたので室内の備え付けの飲み物を探す…が、ない…

こういう時にないの多いよなぁ…

 

仕方ない、外の自販機まで行くか…

 

「達也、コーヒー買ってくるけどいるか?」

 

俺にしては珍しく他人の分まで買ってくる気遣い、八幡ったら優しいわね。

達也に声を掛けると喉が乾いていたのか

 

「ああ、頼んでいいか?…あの黄色のロング缶は買ってくるなよ?」

 

マッ缶…大分前に多く買ってきてしまい達也が気になっていたので1本渡したら「これは人を色々な意味で駄目にする飲み物だな…」と苦い顔をして飲みきっていた。

旨いのに…

 

「ちっ…達也をマッ缶の虜にさせようと思ったのに」

 

「あれを毎日飲んでいたら色々と不味い気がするぞ…?」

 

何を言う「マッ缶は長寿の元」という言葉を知らんのか達也よ。

 

「そんな言葉はない…普通のコーヒーにしてくれ」

 

「わーったよ、ブラックでいいか?」

 

「頼む」

 

コーヒーを買いに外の自販機へと向かった。

 

 

「ちょうど2本あったな、ブラック…?なんだ?『精霊魔法』か…?」

 

自販機に行きコーヒーを購入すると売り切れたちょうど2本分が今俺の手の中にある。

不意に俺の《瞳》に様々な色の飛び回る精霊達が姿を現していた。

 

「誰かが呼び出したのか…?そっちは薬学実験室か。って美月…?」

 

精霊達はどうやら薬学実験室から来ているようだが美月が普段掛けているメガネをはずしその方向へ誘われるように向かうのが見えたので俺も気になってそちらへ誘われるように向かった。

なにか嫌な予感がしたので。

 

 

「吉田くん…?」

 

「誰だっ!!」

 

「きゃっ!」

 

魔法の発動中に不意に術者に声を掛けてしまった美月は、術者の『怒り』を反映された精霊に襲いかかられようとするのを見て、ホントに俺って嫌な予感的中させちゃうんだよなぁ…と考えるのと同時に「縮地」で美月の前に躍り出て《ある技》を使用して精霊達を吹き飛ばす。

術者はその《技》をみて驚愕しているが良く見えない筈だ。俺を睨んでくるがそれよりもこの切っ掛けを作った当の本人に告げねばならない。

 

「美月、発動中の術者にいきなり声を掛ける奴がいるかよ…それと…術者のあんた、争う気はないから」

 

「…すまない。僕もそんなつもりは無かったんだ」

 

「いや、さっきのは術者に声を不用意に掛けた美月が悪ぃ」

 

「ええ!?私のせいですかぁ!?」

 

「いや、彼女は悪くないよ…それよりも七草君、君は精霊魔法が使えるのかい?」

 

「…まぁ似たようなもんだ、専門家には劣るが」

 

俺が使用したあの《魔法》について聞いてきた。こいつ結構目が良いようだが勘違いしておいて貰おう。

俺が先程の魔法について説明すると精霊魔法を使っていた男子生徒が自己紹介をしてきた。

 

「名前も名乗らないですまない。僕は吉田幹比古、美月さん達と同じクラスだ」

 

名乗られてしまったので此方も名乗らねば無作法というもの…

 

「俺は七草八幡だ。まぁ、よろしく?」

 

「なんで疑問系?達也からは話を聞いていたよ。とっても非…いや僕の理解を越えているよ」

 

「いま、非常識だろこいつって思ったろ。それいったら薬学実験室で自然霊の喚起魔法の結界張る方が非常識だろ。吉田って呼べばいいか?」

 

俺がその事について話すと苦笑いし

 

「お互いに非常識かもね、出来れば名前で呼んでくれ」

 

「おう、よろしくなミッキー」

 

不意に俺がその呼び名で名前を呼ぶと美月が吹き出して肩で息をしていた。

幹比古も唖然とした顔をしていた。ん?緊張を解そうとしたんだが不味かったか。

どうやら美月は某千葉県のあの有名マスコットキャラクターを想像したのだろうか…

美月の脳内では「ハハッ!!」と声高に話す幹比古でも連想したか。

すると幹比古が俺が呼んだ呼び名に猛反発したいようだった。

 

「ミ、ミッキー!?…意外だな、君がそんなあだ名で人を呼ぶとは。それと頼むから幹比古って呼んでくれよ?」

 

「景気の悪い顔してたから緊張を解してやろうと思ってな、とりあえずよろしく幹比古」

 

「ああ、よろしく八幡」

 

俺と幹比古は此処で初顔合わせをした。お前も名前で呼ぶのな?

 

幹比古がやろうとしていたのはやはり自然霊を使った喚起魔法の練習をしていたらしい。練習後の地面に灰が落ちていたので生真面目な美月は幹比古の後片付けを手伝っていたのだが。

 

俺が美月に話を振る。美月も特殊な《瞳》を持つ人物なので気になって声を掛けたんだが…

 

「美月はどう見えたんだ?水精の様子」

 

「え、あっ青系統の光の玉が見えただけですが…」

 

「色調の違いが見えたのかい!?」

 

「あ、は、はい。青とか藍色とか…キャッ!?」

 

幹比古は美月の手を取って引き寄せて美月の《瞳》をまじまじと見つめていた。

なんだ幹比古…お前もリア充だったのか…俺がやると通報される。いや、しないけどな。

困惑と当惑で動くことが出来ない美月を助け出してやるために咳払いをわざとらしく大きめに払い幹比古に話し掛ける。

 

「んんっ!!…合意でやるなら俺こっから出ていくけど…お前ら俺が風紀委員だってこと忘れてない?」

 

「わわっ!」

 

「きゃっ!!」

 

美月と幹比古が醸し出すこの空間に居づらくなった俺はポケットと手に持った缶コーヒーを思いだし

 

「俺そろそろ行くわ…コーヒーを達也に渡すの忘れてたし。お二人さん常識の範囲内でな」

 

「なっ…ちが、勘違いだ!」

 

「は、八幡さん!ち、違います!」

 

「大丈夫、みなまで言うな。じゃ、そういうことで」

 

「誤解なんだって!」

 

俺は幹比古の訴えを無視し「縮地」を使い生徒会室迄戻ってきた。

 

「遅かったな」

 

「ああ、買いに行く途中に青春ラブコメに巻き込まれてな…」

 

「??なんの話だ?」

 

「いや、気にすんな…リア充爆発しろ」

 

「(それを言うなら何時ものお前も人の事を言えんだろう…深雪、お前の恋は前途多難だぞ…)…物騒だな」

 

達也は思った。お前も人の事言えないだろうが、と。

 

 

8月1日。第一高校が九校戦の会場入りする日になった。

メンバーが全員集まっていたわけではないが、これ以上待っても時間の無駄になってしまうので出発時間にはまだ早いが出発することになった。外で待機していた達也は同じく外でまっていた摩利に理由を聞いていた。

 

「真由美と八幡君は実家の方で用事があるそうだ」

 

「なるほど…分かりやすい説明でしたね。しかし、会長達を置いて出発していいんですか?」

 

真由美は第一高校におけるアイドルのような存在だ。そんな人物を放置して出発するのは他のメンバーから反対意見が飛んで来そうなものだのだが…

 

「それだったら真由美から「かなり遅れてしまうから先に出発していて。それに八くんも一緒に用事に参加しないと行けないから終わったら一緒に向かうわ」と来ていてな。本人からの意向を無視するほど此処の連中もバカではないだろう」

 

「そうですね。先輩、名簿リストと照合した結果、人員は会長と八幡を除いて全員いるようです」

 

「分かった。ん…丁度時間だな。達也くんも此方のバスに乗るかい?」

 

渡辺先輩が指差したのは大会に出場する選手が乗るバスだった。達也は首を横に振る。

 

「いえ、余計な悪目立ちをするのはあまり…大人しく後ろの作業車に乗っていますよ…それに二科の俺が乗っていると選手のコンディションも悪くなるでしょうし」

 

「全く…他の連中も素直に達也くんの実力を認めれば良いものを…すまないな」

 

取り繕った言葉ではなく心より思っている言葉だったので達也は渡辺先輩はこう言ったところが好かれる要因なのだろうなと感じ、達也自身も悪い気分ではなかった。

 

「先輩が気になさることではないですよ、では」

 

 

バスが走りだし一時間がたっただろうか、バス内は適度に揺れる車内と普段の九校戦の練習の疲れが此処で出て眠りこけている生徒が多数いた。

目的地まで後数時間…といったところで一人の生徒が大声を上げた。

 

「危ない!」

 

起きていた深雪の声で眠りこけていた生徒が眼を醒まし対向車線を注視する。

本来ならば壁固なガードがあり此方を越えてこない対向車が偶然にも宙返りをして此方に突っ込もうとしているではないか。

バス内の誰かが悲鳴を漏らした。

バスは急ブレーキを踏むが対向車線から突っ込んでくる事故車は止まらない。

 

不意に深雪が隣の車線を見ると一台の大型バイクが二人乗りをして対向車へ向かっていく。

 

このままでは危険だと深雪は思ったが不意に自身の端末から着信が入る。

こんな時にいったいどなたが…と少しの苛立ちを覚えつつ端末を確認するとそこには

 

「七草八幡」の文字が記されていた。

 

急ぎ着信に出る。

 

「八幡さん!?」

 

いったいどうされたのですか!?と聞く前に八幡から深雪へのお願いをされた。

 

「深雪!みんなに魔法を使わないように指示してくれ!」

 

「は、はい!」

 

みなさん魔法を…と言うと思ったところ既に遅く各自で魔法を発動している状態であったため事故車両に対し相克を起こし妨げられてしまっていた。

しかし、一瞬にして魔法式が分解された。

恐らくは達也の《術式解体》であろう。

 

そのタイミングで隣の追越車線を進んでいたバイクがドリフトしながらバスと事故車両の前に躍り出てバイクの操縦者は足のホルスターからCADを抜いて魔法式を瞬時に展開し加重収束系統の魔法を使用し動きを止めていた。

その魔法は八幡が使用しているのを見せてくれた《超重力の網》であった。

 

 

第一高校の面々を乗せたバスが出発してすぐの事。

俺と姉さんは家の用事…というか分家さん達との定例会議に何故か参加させられた。

小町は夏風邪を引いてダウンしているので家政婦さん達から看病されている筈だ。

 

数日前に分家会議があるとの事で俺と姉さんは参加してくれと父さんに言われ正装して会議に参加したのは良いが…

定例報告会ではなく俺と此処に居ない小町を分家の人たちに紹介する会になっていて、父さんは酷く饒舌だったなと今にして思った…

父さんってこんなに饒舌になる人だっただろうか…?酒入ってないよな?

俺の活躍と会社の件、そして姉さんの事も報告…というか自慢大会みたいになって俺は非常に居たたまれなくなり姉さんに話し掛けると。

 

「お父さん、八くんのことを連れてきて分家の皆さんにお披露目したかったみたいよ?こんなお父さん見るの私を分家の皆さんにお披露目するとき以来かも。良かったね八くん」

 

「なんか…複雑だわ…」

 

「ううん、八くんと小町ちゃんはもう立派な『七草』の家の一員よ。お姉ちゃんもそう思ってるから」

 

目の前には俺と小町を誉めちぎりそうな程語る父さん。

隣には俺と小町を「家族」と呼んでくれる優しげな笑みを浮かべる姉が居て、俺はこんなに幸福を享受して良いのだろうかと本気で悩んだ。

 

分家の家長さんに会うと何故か好感触で接しられて俺は非常に困惑していた。

え、俺義理の息子だって知ってるんですよね?と問いかけると。

 

「はじめは私も八幡殿を本家に組み込む事は反対であったが既に八幡殿はCADの世界において知らぬものはいない会社を経営し、先の一高の事件の際には敵対組織を崩壊させるまでの活躍に至った。未だ八幡殿はお若い、これから人脈を形成していくことを期待せざるを得ないし、既に高校での人徳もあるとなれば否定するものもおりますまい」

 

ぶっちゃけ俺は父さんに拾われて今がある。最初は俺たち兄妹に対して分家の人たちから反対意見が強かったらしいが、俺が第一高校で解決した事件と立ち上げた「ナハト・ロータス」の業績が好調らしく、FLTには劣るが機能とマニアックな外見が特徴なCADが高値で取引されているそうで特に国防軍の偉い人に人気らしい。売り上げ的にはかなりの黒字だとか。

 

「は、はぁ…恐縮です」

 

「いやはや弘一殿もとんだ逸材を拾われてきたようだ。期待しておりますぞ八幡殿」

 

にこにこ顔で俺に話し掛ける分家の人は機嫌が良さそうだった。

 

 

俺と姉さんが分家会議から解放される頃にはもう俺はくたくたになっていた。

 

「疲れた…もう帰っていい?」

 

「駄目よ八くん、これから九校戦の会場入りしなきゃ行けないんだからね?」

 

会議から解放された足でそのまま会場へと向かわねばならないのだが…

 

「え…?車が修理中…ですか名倉さん」

 

「ええ、申し訳ございません八幡様。今急ぎで修復させているのですが…夜まで掛かる見込みでございます」

 

「ええ…マジっすか」

 

「ええ、マジにございます」

 

名倉さん、そんな茶目っ気要らないっす…

今日中に会場に入らなければならない理由があった。

俺的にはどうでもいいのかも知れないが、懇親会の挨拶に非公開だが十師族の『九島家』九島烈老師が挨拶に来るらしい。父さんからも「挨拶をする機会があればしてきなさい」と言われているので出来れば無視したかったがそうも行かず会場入りを遅らせるわけには行かなかった。姉さんもパーティーには乗り気では無いようだが。

今から出ないと遅れる可能性もあったので『あるものを』使うことにした。

 

「…仕方ないか…名倉さん、『あれ』の準備できてます?」

 

俺は七草家のガレージを見て話すと名倉さんがシャッターを解放して答えてくれた。

 

「はい、整備万端にてございます。ご準備いたしますのでしばしお待ちを」

 

そういって名倉さんは家政婦さん達に指示を出してガレージへと向かっていった。

 

「分かりました…『あれ』に乗って向かいます…姉さん着替えなくていい?」

 

その場に二人残され俺は姉さんの格好を見て話し掛けた。

 

薄手のカーディガンを羽織り、その下は両腕両肩がむき出しの白のサマードレス。

スカート丈も膝下まで。

素足にヒールの高いサンダル。

つば広の帽子をかぶっており似合っていた。

 

しかし、今から乗る乗り物には少し不似合な格好ではあるが…

 

「うーん今から着替えると遅くなっちゃうからいいわ…それよりも八くんからこの服の感想聞いてないんだけど?どうかな、似合う?」

 

くるりと回りスカートが少し翻って首をかしげ、何時ものように優しい笑顔で俺を見る表情はとても魅力的だった。まるで物語に出てくるヒロインのように。

俺は率直な感想を述べた。

 

「うん、可愛すぎて俺が死にそうだし、白いサマードレスが似合いすぎて悪い虫が寄ってきそうで義弟の俺はめちゃくちゃ心配だ。もし仮に告白したら振られるまであるな」

 

俺が感想を述べると姉さんは恥ずかしそうに、そして嬉しそうに返答したが、俺の回答の一部が不満だったらしい。

最後の一文は姉さんがごにょごにょ言ってて良く聞こえなかったが。

 

「あ、ありがとう八くん…///八くんだったら告白してくれたらお姉ちゃん受けちゃうかも…」

 

「なんか言った?」

 

「ううん!なんでもない。褒めてくれてありがと八くん」

 

何時ものような笑顔の姉さんだったが少し顔が赤くなっていた。

服装を褒めた後に直ぐ様ガレージから名倉さんが家政婦たちと共に「あるもの」を引っ張り出してきてくれた。

 

「お待たせいたしました八幡様、お嬢様」

 

名倉さんと家政婦さん達がガレージから持ってきたのは俺が「ナハト・ロータス」で開発していた試作型のCAD機能がある赤と黒のカラーリングの大型バイク『レッドリッター』だった。

 

「八幡様、お嬢様此方を」

 

二人分のヘルメットを名倉さんが手渡してくれた。俺はフルフェイス、姉さんはヘルメット&ゴーグルタイプだ。

姉さんが被っていたつば付帽子を家政婦さんに渡し被る。

 

俺の今の格好は黒のカジュアルスーツになっているのでそのまま出発することになる。

タンデムのツーシートに姉さんが跨がるのではなく横に腰かけるように両足を片方のサイドステップに足掛ける。

前にいる俺に振り落とされないように腰の辺りをきつく腕を回して姉さんが密着するような形になった。

 

「八くん、安全運転でお願いね?」

 

「当然。姉さんをキズモノにするわけに行かねーし」

 

「八幡様、お嬢様行ってらっしゃいませ」

 

「じゃあ、行ってきます」

 

「いってくるわね名倉…きゃっ!八くん!」

 

名倉さんと家政婦さん達に見送られながらバイクのアクセルを吹かし、エキゾースト音が鳴り響いた。

発進と同時に背後から姉さんの可愛らしい悲鳴が聞こえたが無視することに決めると抵抗なのか密着度と腰の締め付けが強くなった気がした。

 

「やれやれ…お嬢様と八幡様は本当の姉弟のように仲がよいですなぁ…」

 

微笑ましいものを見るように名倉は呟いた。

 

 

 

 

大型二輪が高速道路を疾走する。

俺の背後にいる姉さんは薄手の服装だが風の影響を受けないように魔法で保温と防風対策をしているので意外と快適そうだ。

姉さんに何故俺が今回の会議で呼ばれたのか疑問に思ったことを聞いてみた。

声は風に邪魔されずしっかりと聞こえている。

 

「なんで俺、会議に参加しなきゃならなかったんだ?報告するだけなら顔を出さなくても…」

 

「お父さんも思惑があったんでしょ?「これがうちの八幡です」って分家の人に知らしめたかったのよ」

 

「まぁ、分家の人に好感触だったのは驚いたけどね…」

 

「もしかしたらお父さん、八くんを『七草家次期当主』に指名したいのかもよ?」

 

「俺を?面倒くさい…冗談いわないでくれよ。仮に俺が指定されたらバックレるまであるな…それだったら次期当主は姉さんだろ?」

 

「私は次期当主って器じゃないかな。私も次期当主なら八くんになって貰いたいかも?」

 

普段と変わらぬ口調で俺に話し掛ける姉さん。

 

「仮にもし俺が当主の座に着いたら次代の跡継ぎいなくなるな、貰い手がいなくて」

 

俺が次期当主になってみろ。

猫背は改善したがこの死んだ魚のような眼の男の元に嫁に来る女性はいないはずだ。その時点で家系を継ぐものがおらず消滅してしまう。

そもそも魅力がないし…あれ?自分で言ってて悲しくなってきたぞ?

 

背後からの密着がさらに強くなる。

姉さんがなにかを呟いていたようだったが突風に掻き消され聞こえなかった。

 

「ううん、八くんはとっても魅力的よ?…八くんが次期当主なら私がお嫁さんになってもいいけど…」

 

「姉さんなにか言った?」

 

「なんでもないわ!ほら、八くん運転しっかりね!」

 

「わーってるって」

 

アクセルを吹かしエンジンが唸りを上げ加速する。

 

 

暫く走行すると前方に第一高校の作業車と選手達を乗せたバスが見て取れた。

どうやら追い付いてしまったらしい。

俺は追い抜いて先に着いておこうかと思い追い抜こうとアクセルを回そうとした瞬間、

 

俺の《瞳》が反対車線から車が飛び出し第一高校の選手達が乗るバスへ突っ込もうとする悪意を捕捉した。

 

瞬時に俺は判断し達也の端末をコールする。同時に背後にいる姉さんにしっかり掴まるように指示を出す。

 

「っ!姉さん掴まっててくれよ!!飛ばす!」

 

「え?八くんどうしたの?いきなり…」

 

「いいから!」

 

「う、うんわかった…きゃっ!!は、八くん!?」

 

着信がワンコール、ツーコール…と鳴り達也が応答する。

 

「八幡か?どうした?」

 

「達也!《術式解体》を選手達のバスへ準備をしてくれ!前方の車両に反対車線から車が来るぞ!」

 

「なに…なっ!?」

 

俺が言いきった直後、最悪の事態は現実のものになった。

 

反対車線からオフロード車が何故か偶然にも宙返りをして選手のバスへと突っ込んでいく。

俺はアクセルを吹かしながら深雪の端末へ連絡をいれる。

達也がなんとかしてくれるだろうが念のためだ。

こんな事態でも冷静に判断している俺は俺自身に笑いそうになった。

 

「深雪!みんなに魔法を使用しないよう指示してくれ!」

 

深雪の反応を待つ前に連絡を切ってアクセルを吹かし急停止したバスの横からドリフトしながら割り込み俺はショートバレルの《ペイルライダー》を引き抜き先ほどまで突っ込んで燃えていた事故車は鎮火されていたが加速が止まるわけではない。

 

「止まってくれよ…!」

 

俺は素早く《グラビティ・バインド》を起動させ勢いを殺し動きを止め…きることは出来ずこのままでは停止したバスに激突してしまう…!

と思われたが十文字先輩の《ファランクス》が発動し事故車は完全に停止した。

この状態では中の人間は仏になってしまっているだろうが、取り敢えず考えるのは後にした。

突然宙返りをしてバスに突っ込んだことに関して俺は疑問を考えずにはいられず、何故突如として俺自身の《瞳》が起こってもいなかったチョッとした未来予知が出来たのか謎だった。

 

割り込んだ車線には姉さんを後ろに乗せた運転手の俺が事故車両を見つめ佇んでいた。

 

 

事故車両が突如として2人乗りをしている大型バイクの運転手に止められ九死に一生を得たメンバー達はバス内に急ぎ乗り込んできた人物の声で我に返った。

 

「みんな大丈夫!?」

 

ヘルメットとゴーグルを脱いで薄手のカーディガンを羽織り、白のサマードレスを着た生徒会長の真由美がやってきていたのだ。

落ち着いた真由美の声で十文字と摩利は我を取り戻し振り返る。

 

「もう大丈夫よ。大惨事は免れたようで何よりだったわ。消火してくれなかったら間に合わないかと思ったけど…消火してくれたのは十文字くん?」

 

「いや、俺ではなく司波妹だ。バス内の魔法式を掻き消したのは七草か?」

 

「ううん。私じゃないわ。たぶん八くんだと思うけど…」

 

「八幡か…?今あいつは何処に」

 

いるんだ?と十文字が聞こうとすると真由美の背後からブラックのフルフェイスを被りカジュアルスーツを来た男性が現れメットを脱ぐと

 

「ここっす、無事っすか先輩達。それにバス内の魔法を吹き飛ばしたのは達也の《術式解体》っす」

 

「…っ八幡」

 

「八幡さん!」

 

「八幡さん…!」

 

雫達が反応し大惨事を防いだ当の本人が現れた。彼を慕う少女達の顔に喜色が浮かんでいたのは想像に難くないだろう。

 

窓の外には作業車から出た技術スタッフが救助活動をしていた。それを見た真由美は八幡に声を掛ける。

 

「八くん、手伝ってきてあげて」

 

「えぇ…めんどくさ…あいよ」

 

救助活動をする3年生のメンバーがいるなかで一年生の姿を確認した摩利は今年の一年生は恐ろしいなと思った。

あの魔法が無法的に飛び交っていたものを消し去ったのは後方からだろうなと。その実行者は達也くんか…

実行することすら難しかったあの現状で彼らならやりかねないと摩利はそう思ってしまった。

 

 

 

事故の後、警察の事情聴取やら交通整備の手伝いやらで時間が取られたが昼過ぎには会場に到着することが出来た。

出発する際に姉さんには窮屈な2人乗りよりもバスに乗っていた方が楽だろうと思い提案したが不機嫌な顔をされて却下され、結局後ろに姉さんを乗せて会場入りすることになった。出発する際に何時もの面々(深雪、雫、ほのか)が不満げな顔をしていた。

いや、君らもバス乗ってるんだから楽でしょうが。姉さんも何故わざわざ苦労を選ぶのよ。修行僧かな?

 

到着したロビーで姉さん達と別れ、先に着いていた荷物カートを押しながら達也、深雪と話す。

 

「では、先ほどのあれは事故では無かったと…?」

 

「ああ、不自然だったからね。事故車を先ほど調べてみたら魔法が使われている痕跡を見つけた」

 

深雪が質問すると達也が答えた。俺もその答えに追加で回答する。

 

「魔法の起動式も検知されない高度な技術だったな。使い捨てで潰すには惜しい能力だ。そんなことに使わずに国防軍で使った方が有意義だとおもうんだけどなぁ…まぁ、どこかの組織が一高を狙って自爆攻撃を仕掛けてきたのは明確だろ」

 

「卑劣な…!」

 

「元より、犯罪者やテロリストは卑劣なものだよ。それより何が狙いなのかが気になるが」

 

「…(魔法が使われ自爆特効を仕掛けるテロリスト…確かに何が狙いだ…?名倉さんに頼んでおくか。幸いさっきの男の身分証と体組織のサンプルはデータ化してあるから後で渡して調べて貰おう…もし、先ほどの連中が再び攻撃を仕掛け姉さんの連覇を止めようって言うのなら…容赦はしないがな)」

 

深雪が静かに怒りを発露させ立ち止まる、達也は深雪の背中を二度叩き再び歩を進める。

しかし、立ち止まる俺を見て深雪と達也は俺を見て不思議そうに此方を見ていた。

 

「八幡?」

 

「八幡さん?」

 

「…んあ?ああ、なんでもない」

 

 

俺もカートを押そうとしたところ見知った顔に遭遇し直ぐ様足を止めてしまった。

 

「やっほー、深雪に達也くんに八幡、元気してた?」

 

「エリカ?ってお前その格好…」

 

「ええ、エリカ一週間ぶり…って貴女、何故此処に?」

 

エリカのその姿は直視するには刺激的だった。

上はタンクトップで下はショートパンツにサンダルで魅力的なナマ足をさらし健康的なエロスを醸しだし道行く通行人からチラチラとエリカを見る生徒が見受けられた。

ちなみにだが達也は話が長くなりそうだったので先輩との打ち合わせもあるためさっさと行ってしまった。

 

妖精が夏を胸で刺激しそうなナマ足が魅力的だった。

 

「もちろん、応援によ」

 

「競技は明後日からよ?今日の懇談会は選手しか入れないわよ?」

 

「知ってる、あたし関係者だから」

 

何を根拠にそんなことを…を俺と深雪が思った矢先に更に知り合いが現れた!

現れたって言うとドラ○エみたいだな。

 

「エリカちゃんお部屋のキー…っと、深雪さん?八幡さん?」

 

そういって小走りに此方に走り寄ってくる美月がやってきた。

 

「「…派手ね」派手だな」

 

深雪と俺が挨拶ではなく感想を述べると美月も居心地が悪そうな愛想笑いを浮かべていた。

俺は美月のある一点部分とエリカの美脚をまじまじ見てしまい思わずそっぽを向かざるを得なくなりそれに気がついた深雪が俺の脇腹をつねってくる。

深雪さん、それは雫の専売特許です…!

 

視線に気がついた美月とエリカは顔を赤くして見られている部分を手で隠して抗議してくる。

 

「ううっ…眼がエッチですよ八幡さん…」

 

「スケベ八幡ね…やらしー…」

 

「おい、待て!俺が悪いのかよ!後なんか語呂良いのムカつく」

 

「八幡さん?…はぁ、全く…エリカ、美月、似合っていて可愛いのだけれどTPOに合っていないと思うのと八幡さんから熱烈な視線を受けてしまうから着替えた方がいいわ」

 

深雪さん?さらっと俺もその原因の一因にしないで…って痛ぇ!脇腹摘まむなって!

 

 

ロビーでの冤罪?が解決された後、俺は部屋で疲れて寝ていたのだが姉さんからの依頼で起こしに来るように頼まれた

深雪に起こされ行く気もなかった夕食のパーティーに参加する羽目になった。

俺が「七草家」の人間でなければ絶対に出ていない筈だが…偉い人は「役職が人を創る」とはよく言ったものだと関心してしまう、そんなものは知りたく無かったが。

俺は第一高校の制服に着替えて深雪と一緒に来ていた達也と一緒に会場に行って貰うことにした。

大丈夫だって。絶対行くから。

 

「人多すぎだろ…」

会場に到着するとそのような意見を言いたくもなる。

大会に参加する学校の数を全ていれると約四百名…和やかに、というよりも緊張感の方が眼につくのと人が多すぎて気分が悪くなる。

家柄を持ち出してマウントと取り合う未来しかみえないからな。

 

そんな心情を知ってか知らずかウエイトレスが声を掛けてくる。

 

「何かお飲み物は如何ですか?」

 

「あーじゃあ…マッ缶で…ってなにやってんだエリカ?」

 

「関係者ってそういうことか…」

 

「そういうこと。てか、此処にマックスコーヒーがあるわけ無いでしょうが」

 

「んじゃ、ジンジャーエールをくれ」

 

「はいは~い。それよりも、どう?この衣装似合う?」

 

エリカは随分と大人っぽいメイクをしており服装もこの会場で給仕をしてるコンパニオンと同じで、何時もの溌剌とした性格のエリカだが大人びた格好も凄く似合っていた。

 

「…そうだな。俺がもし七草家の当主なら真っ先にエリカを雇うぐらいには魅力的だな」

 

「あ、ありがと///…は、はいジンジャーエール!あたし仕事あるから行くね!」

 

エリカは顔を真っ赤にして急いで向こうに行ってしまった。給仕の服を着ていたが転けることもなく進む姿を見て流石武道を習っているだけあるなと思ってしまった。しかし一体どうしたと言うのか…

 

取り合えず腹が減ったので提供されているバイキングに手を付けるかと食事が置いてあるテーブルへ向かうべく歩を進めると一人の女子生徒とすれ違う。

 

第一高校ではない赤いブレザーを着用した恐らくは第三高校の女子生徒だろうか、俺は通りすぎたときに思わず二度見をしてしまい中学次代の俺に纏わりつき愛らしさと憎たらしさを兼ね備えた後輩の姿が脳裏にちらつき名前をつい呟いてしまった。

 

「いろは…?」

 

見た目が完全一致と言う訳…ではなく所々めちゃくちゃ似ててあいつの亜麻色のセミロングの髪型を想起させる女子生徒はウェーブの掛かる金髪のロングヘアーで全くの別人だったが何故かあの後輩に似ていると感じてしまった。

 

呟いた名前が聞こえてしまったのか此方を振り返ってしまった。

 

「??いろは、は私の妹ですが…!?」

 

「あ、すんません、人違いでした。それでは…」

 

不味い、と思い失礼しますと行ってその場を離脱しようとしたが俺の体が動かなくなってしまった。え?なんすか急に金縛り?参ったな。と思ったら俺が勘違いした呟きを聞いた少女が俺の手を取っているではないか。

あのすみません手、離してくれます?そんな事情は知らぬと少女は驚いた顔を浮かべ話してくる。

 

「貴方は…もしかして比企谷八幡様でいらっしゃいますか…?」

 

比企谷…久々に聞いたなその名字。

 

「あ~、えーと。俺が八幡だけど…どこかでお会いしましたっけ…?」

 

そういうと俺の手を取って嬉々とした表情で俺の手を両手で握った。

え、なんのサプライズだこれ!?

 

「やはり貴方が…!申し遅れました私は第三高校一年、一色愛梨と申します」

 

こちらも礼儀として名乗る。

 

「第一高校一年、七草八幡です…ん?やっぱり一色ってことは…」

 

「はい、一色いろはは私の妹です。在学中のいろはを助けてくださってありがとうございます…!」

 

急に頭を下げるものだから俺は急ぎ頭を上げて貰うことにした。ちょっ…!一色さん頭上げて!!このままでは俺が彼女に頭を下げさせるのを強要させているように見えてしまいます!

 

「ちょっ…!一色さん頭上げて…!何事かと思われる…!」

 

俺にそう言われた一色さんは頭を上げて周りにいた第三高校のメンバーに目配せし離れて貰っていた。

 

「助けたっていってもあれは俺が在学中に部活動の一環でやったことであって…つまり自分の為にやったことだ、お礼をいわれる筋合いはない」

 

俺がそう言うと気品有る感じに一色さんがクスリと笑うと少し真面目な表情になった。

 

「いろはが私に言ってました。「きっと先輩は「自分の為だ」って言うに決まってる」といろはが言っていたのを思い出しまして…貴方が去年の12月頃から急に姿を消してしまっていろはの元気がなくなっていたのですが、これで元気になってくれそうですわ…七草さん、お聞きしても?」

 

「…なんでしょうか?」

 

「何故12月頃に突然いろはの前、総武中から居なくなってしまったのです?そして今は何故「比企谷」ではなく「七草」の姓なのでしょうか…」

 

非常に答えづらい問答だった。まぁ…教えたところで此方に得も損もある訳じゃないし説明しても良いか。言わないと納得しなさそうだし…流石に泉美達の件は黙っておくことにして、一色さんに話すことにした。

 

俺が総武中で家の兼ね合いで様々ないじめにあっていたこと。それが原因で実家…比企谷家から絶縁され12月の寒空の下で実妹とさ迷っていたところ、たまたま七草家の姉妹を救出して家長に気に入られ、七草家に養子入りしたことを説明する…因にだが既に比企谷の家は俺たちを絶縁した親ごと消えたらしい。いったい何処に行ったのか見当も付かないがどうでもいい。一連の流れを説明すると一色さんは何故か涙を流していて俺はあわててハンカチを差し出し涙をぬぐってやると

 

「ありがとうございます八幡さま…紳士ですわね。

何故、何故…八幡様がそのような目に合わなければならないのです…他人のために戦える貴方が報われないとは…許せませんわ…!」

 

「いや、なんで一色さんが泣くんだよ…」

 

突然目の前で泣き出されたら困惑するっつーの…ほら他の生徒からなんだなんだ?みたいな目で見られるし…

 

「ぐずっ…八幡様が涙を流さないものですから代わりに私が涙を流しているだけですわ…」

 

なんかこう…いろはと同じくあざとい…いやこれは天然物だな。間違いない。まぁ、なんとも思っていない俺が異常なのかも知れないが、他人のために涙を流せる一色さんは見た目に寄らずエリート主義ではなく結構親しみやすいようだ。

 

「ありがとうな一色さん。君みたいに俺の為に泣いてくれる人初めて見たわ」

 

キモいと思われない程度の微笑を浮かべ反応すると一色さんが顔を真っ赤にしている。ヤベっ、キモかったか…

 

「い、いろはが言っていたように本当にあざといですわね八幡様!…でも本当にありがとうございました。妹をいじめから救っていただいて色々な事を教えて頂いて…」

 

いや、あざといって男に言う台詞じゃないよね?君たちみたいな美少女に使う言葉だよな?俺が渡したハンカチを持ったままペコリと綺麗なお辞儀をされたので俺も対応する。

 

「ど、どういたしまして…」

 

俺のその対応に一色さんは笑顔で。

 

「はい、八幡様。それに妹も一色ですので私も『愛梨』とお呼びください」

 

「え、いやでも一色家の令嬢を名前で呼ぶのはちょっと…」

 

「いろはは名前でお呼び頂いているのに、私は名前で呼んで頂けないのですか…?」

 

そう言って俺を一色さんは上目使い&うるうる瞳で見られるものだから抵抗できる筈も無かった。

俺は悪くない。

 

「姉妹揃ってあざとすぎるだろう…わかったよ「愛梨」…これで良いか?」

 

「はい、よろしくお願いいたしますね八幡様♪」

 

ついでに連絡先も交換することになった、何故…

 

流れで愛梨と食事をすることになりその最中に大会のお偉いさんからの話があって正直面倒くさかったが愛梨から「八幡様だめですよ?」とお小言を頂いたので食事をこっそり頂きながら聞いていた。

…多分ばれていない筈。

 

お偉いさんの話が終わり九島老師が登壇して…と言うときに会場がざわめき始めた。

ステージにいるのは金髪でパーティードレスを纏った美女がたっているのだ。

 

これには隣にいた愛梨も

 

「どうされたのでしょうか…老師の名代の方ですかね…」

 

俺は《瞳》でステージを覗き見るとその背後には九島老師が立っており、恐らく《仮装行列》を使用し意識をステージ前の若い女性に見せているのだろう。

俺は小声で頭に疑問を浮かべている愛梨に話しかける。

 

「(年老いてもその技巧は世界最巧ってよく言ったもんだな…ってなんで此方見てるんだ老師。)愛梨、よく見てみろ。あの女性の後ろに老師いるぞ」

 

「え…?」

 

俺が意識を老師に向けていると老師も俺の視線に気がついたのかニヤリと笑みを浮かべた。ほとんどの者は次の瞬間、老師が突如何もないところから現れたように見えただろう。

 

「まずは、悪ふざけに付き合わせてしまったことを謝罪する」

 

その声は齢九十を越えているものとは思えぬほど活力に溢れた声だった。

 

「今のはチョッとした余興だ。どちらかと言えば魔法よりも手品に近い、手品のタネに気がついたものはざっと6人程度であった。つまり」

 

大勢の高校生が興味津々で耳を傾けている。

 

「もし私が君たちの殺害を目論むテロリストだとすると、爆弾、毒ガスを仕掛けたとして行動できたのは五人だけ…そしてその実行犯が仕掛ける前にとどめを刺すことが出来たのはたった一人であったと言うことだ」

 

一人であったと言った瞬間、老師は俺の目を見てそう言っていた。名前を告げられていたら一斉に俺に視線が来ることを配慮しての発言だろうが要らないっす…たまたま気がついただけなんで…

 

「…もらいたい。魔法を学ぶ若人諸君、私は諸君の工夫を楽しみにしている」

 

老師が言い終わると拍手が巻き起こった。

俺も老師の言う工夫で魔法を使うのは大好きだ。色々組み合わせられるしな。

 

それに…父さんからは「本気を出して来い」と言われているので俺が得意とする複合魔法をかますとするか。

 

 

パーティーが終わりに近づいたときに愛梨に質問された。

 

「流石ですわね八幡様、まさか老師の魔法を見破るとは…それで八幡様はどの競技に参加されるのですか?」

 

「いや、大したことはして無いよ、俺は『アイス・ピラーズ・ブレイク』と『モノリス・コード』に出場予定だが…」

 

「本戦のですか?」

 

「いや、新人戦だよ」

 

「そうなりますとうちの一条と当たりますわね…」

 

「へぇ…一条家の御曹司とか…まぁ、負ける気はさらさら無いけど(姉さんのいる年度での連覇が掛かっているんだ、負けられねぇんだよな…)」

 

「それは八幡様の学校が優勝するのは揺るぎ無いと…?」

 

俺の発言に少しムッとした表情で俺に聞いてくる愛梨。

 

「ぶっちゃけ俺が一条に負けようがどうでもいい。最終的に第一高校が優勝すれば良いだけだしな。ほらあれだよ「試合に負けて勝負に勝った」ってやつ…でも俺が負けると勝てないってときは蹂躙させてもらう」

 

「ふふっ…やはり八幡様は面白い方ですわね…いろはのいっていた通りです」

 

「何て言われてるのかもう想像付いたわ…で愛梨は何に出場するんだ?」

 

「私は新人戦のクラウド・ボールと本戦のミラージ・バットですわ」

 

「ミラージ・バットだとうちのエースと当たるかもな…あいつは多分一高の先輩達でも勝てないだろうしな…」

 

「私がそちらのエースに負けると?」

 

やはりムキになるところはいろはに似ている。俺は宥めるために愛梨に話す。

 

「お、落ち着けって、いい試合になるんじゃないかなって思っただけだ」

 

「それではそちらのエースと私がどちらが強いか八幡様?しっかり見ておいてくださいね」

 

愛梨の剣幕に少しびびりながら了承する。てか離れて、めっちゃいい匂いして心臓バクバクなんだけど。

 

「わかったから近づかないでくれ…愛梨みたいな可愛い子に近づかれるとドキドキするんだよ…」

 

「か、かわっ、可愛いだなんてな、何を…!」

 

俺が感想を述べると顔を赤くしている。あ、ヤベ、このままだと張り手を食らってしまう。

 

「新人戦のクラウドボールは応援しに行くから頑張ってな、じゃっ!!」

 

「あっ…八幡様!必ず応援に来てくださいねー!」

 

愛梨の張り手とめちゃくちゃにいい匂いから逃れるためにその場を「縮地」を使用し逃げ出した。

 

入り口に到達するとそこには4人の門番が立っていた。

 

「は~ちく~ん?さっき話していた女の子はだれかな?」

 

姉さんに

 

「八幡、さっきの女の子誰?」

 

雫が何時ものような表情の読み取れ…いや大分不機嫌だな。

 

「八幡さん…さっきの女の子は誰ですか…?」

 

ほのかは何故か泣きそうな表情だし。

 

「八幡さん?説明頂けますか?」

 

深雪は微笑を浮かべているが今にも何かが凍りつきそうなイメージを具象化させそうだ。

 

俺はため息を付いた。

今日は色々あった…もう寝たい…

 




次はもう一人数字が付く娘が登場するかも…?
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