俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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皆様のお陰で評価バーが全部埋まりました…嬉しすぎる…
目指せ黄色から赤へ…(強欲)

お気に入り登録がもう少しで1000で多数のコメントもいただいており私自身のモチベーションもかなり高まっております。
本当にありがとうございます。

更新の遅さと誤字脱字報告は本当に申し訳ないです。

さて、今回は「俺ガイル」からキャラが登場します。
キャラクターの「これどうなってるの」の質問等はコメントへ…(露骨)
コメントを返答できなくて申し訳ないです…時間を見つけて返答を必ずしたいと思いますので何卒…!

コメント&好評価お待ちしております。


騒がしい夜に

姉さん達のお叱り?から漸く解放されてホテルの割り当てられた部屋に戻ってきた俺は、早速本家の名倉さんへ連絡を取った。

 

「はい、名倉にございます」

 

「名倉さん、夜分にすみません。お願いしたい事があったんすけど…」

 

「八幡様の頼みとありましたら断る理由もございません。して?頼みたいこととは?」

 

挨拶も程々にして本題を切り出した。

 

「今日、第一高校のバスが事故車を装った恐らくテロリスト達から襲撃されたんです」

 

「なんと…!八幡様とお嬢様はご無事でしたか?」

 

名倉さんも驚いてはいるようだ。

 

「俺と姉さんは大丈夫です。事故車のデータと乗っていた人物のPD…此方は詐称している可能性もありますけど、それに人物の遺伝データも採取してるんでそっちに転送します。何処の組織なのか調べてくれませんか?」

 

「畏まりました、直ちにお調べいたします。その場での迅速な対応、流石に御座います八幡様」

 

俺の事故発生の際に取った行動を褒めてくれているのだろうが大したことはしていない。

 

「いや、普通っすよ…それではお願いします名倉さん」

 

「承りました八幡様」

 

連絡を切って俺は同じ部屋割りになっている同級生が帰ってくるまで俺は眠りについていた。

 

「流石に疲れたな…ちょいと一眠り…」

 

 

パーティーが前々日に催されたのは、前日を休養に当てるためだった。

夕食後八幡が他校の女子生徒と一緒におり、いい雰囲気になっているのを発見してしまった深雪、雫、ほのか、真由美はお話(訊問)を本来は禁止されているが八幡の部屋で聞き取り調査を行っていた。八幡がかつて中学時代に「いじめから救った一色いろはの姉からお礼をいわれていただけだ」と言うことを聞かされ、雫とほのかは感動していたが深雪と真由美は一瞬悲しそうな顔をしていた。

他二人はその前後の理由を知らないのでそのような感想しか出てこないが、真由美は本人から経緯を聞いているのと深雪は九重から事情を聞いているので八幡に申し訳ないことをしてしまったなと感じていた。

 

お話から八幡を解放し、深雪は達也の部屋での用事を終えた後に八幡に先程の事を謝罪をしに部屋に向かった。室内にはいるようだがどうやら疲れきって眠ってしまっているようなので明日改めて謝罪することに決めた。

 

「女三人集まれば姦ましい」とはよく言ったもので、一年生の若い活力が眠りへ誘うのは到底無理な話だった。

時間は夜10時を指していたがお喋りが止まることは無かった、だがそれは部屋のノックで一時中断された。

 

「あっ、私が出るよ~」

 

ノックに反応し扉を開けたのはほのかであった。

 

「こんばんわ~」

 

「あれっ?エイミィ。それに他のみんなもどうしたの?」

 

「うん、あのね。此処に温泉があるの」

 

「ごめん、もう少しわかりやすく言ってくれる?」

 

弾んだ声で告げられた言葉はほのかには分かるようで分からなかった。

 

「そう言えばこのホテルの地下は人工温泉になっていたわね」

 

深雪には英美が言いたいことが分かったらしい。

 

「さっすが深雪、あったまいい!!」

 

能天気な英美に褒められて深雪は頭痛を覚えこめかみを押さえる仕草を取ったが、英美の無邪気な「ん?」と言う仕草に毒気抜かれるしかなかった。

 

「なんでもないわ。それで?温泉がどうかしたの?」

 

「うん、だからね。みんなで温泉行こうよ!」

 

「入れるの?ここ軍の施設だよ?」

 

その返答をしたのは雫であった。そう、ここは軍の施設で許可された以外の場所は立ち入りを禁止にされているはずなのだと。

しかし、英美は

 

「試しに頼んでみたら11時までならだいじょうぶだって!」

 

ちょっとアホの子が入っている英美の「だいじょうぶ!」の発言に否定された。

 

「流石、エイミィ…」

 

感心しているのか呆れているのかどっちでも取れるほのかの呟きも英美にとっては褒められていると取ったのか

 

「ふふん!言ってみるものだよね!」

 

得意気にしていた。

 

「…分かったわ、それでは温泉へ向かいましょう」

 

こうして深雪の一声で九校戦参加メンバーは地下の温泉へと向かうことになった。

 

 

地下の大浴場は第一高校の女子グループに貸しきり状態だった。

着替えて入るのは当然なのだが、ほのかは貞操の危機に晒されていた。

 

「わぁ…」

 

「な、なによ…」

 

エイミィの漏らしたため息にほのかは異性に見られているような羞恥と警戒心を感じていた。施設から渡された湯着は「ミニ丈甚平で半ズボンなし」であり大事な場所は隠せているが装備としては心もとない衣装であった。

思わずエイミィからの視線にほのかは胸元を握り合わせるように隠す。

エイミィの視線はほのかのその豊かな果実へと目を落としていた。

 

「ほのか…スタイル良ぃ~」

 

にじり寄ってくるエイミィに後退するほのかであったが直ぐ浴室の壁に行き着いてしまった。

 

「ほのか」

 

「な、なによ…」

 

「剥いてもいい?」

 

「いいわけないでしょっ!!」

 

視線をチームメイトに向けるが、ほのかとエイミィ以外は浴槽に浸かっており慈悲の無い言葉がほのかを襲う。

 

「剥かせてあげたら?」

 

「そういう問題!?」

 

相も変わらずエイミィの目は捕食者の目をしていて、本当に冗談では済まない領域へと行きかけていた。

 

「雫、助けて!」

 

たまらず、親友へと助けを求めるがその返答は無情なものであった。

 

「いいんじゃない?」

 

「なんでぇー!?」

 

雫は自分の胸元を見てほのかの胸元を一瞥しため息を吐きながら答えた。

 

「ほのか、胸、大きいから。揉まれて少し小さくなればいいよ」

 

「いやぁー!!」

 

雫が個別サウナに入っていくと浴室内にほのかの無情な叫びが響き渡った。

 

浴槽に入っていたチームメイトは「いや、揉まれたらさらに大きくなるのでは?」と思っていたらしいが口には出さなかった。それほどまでに雫がほのかのブツに嫉妬しており冷静な判断が出来なかったのだと。

 

ほのかのそのバストは豊満であった。

 

「一体なにを騒いでいるのかしら…」

 

体をもう一度洗い直し髪をアップにした深雪が浴槽に足を踏み入れると異様な色気に一斉にチームメイトの視線が注がれる。

ごくり、と喉をならすチームメンバーも居るようで異様な視線に流石の深雪も思わずたじろいでしまった。

 

「な、なに?」

 

「だ、ダメよ!深雪はノーマルなんだからね!」

 

エイミィの攻撃?から解放されたほのかによって遮られた。

注目された深雪は思わず短い甚平の裾を引っ張り押さえるように隠すと浴室内は異様で奇妙な緊張感に包まれた。

 

「うん、女の子同士だと分かってはいるんだけど…」

 

「深雪をみているとそれもどうでもよくなっていくと言うか…」

 

「も、もうなにを言っているのよ。からかうのもいい加減にして」

 

深雪が浴槽に入るとその色っぽさからチームメイト達からため息が漏れだした。

 

「深雪!私は味方だからね!」

 

隣にほのかがザブン、と入浴していなかったら深雪の貞操が危なかっただろう。ほのかが深雪に視線をぶつけるメンバーの視線を断ち切った。

 

「いい加減にしないとここにいるみんな冷水浴しなくちゃ行けない羽目になるわよ!」

 

ほのかのその一言でみんなが一斉に我に戻り、なにも知らない雫がサウナから戻ってきてチームメイト全員で入浴するが、やはり女子が集まれば恋愛話が始まるのは必然である…

 

「…でさ、ドリンクバーのバーテンさんが素敵な小父様だったのよ」

 

「中年趣味とか変わってるわねー」

 

「ナイスミドルといってほしいなぁ~…高校生なんて子供よ。頼りにならないわよ」

 

「頼りになると言えばうちの十文字先輩は?」

 

「いやぁ~十文字先輩は頼りになりすぎるでしょ、本当に高校生?って疑いたくなっちゃうけど…それにあの人、十文字家の跡取りでしょ」

 

「跡取りと言えば今日三校の一条家の跡取り息子がいたよね?」

 

「うん、見た見た。結構いい男だったもんね~」

 

「男は外見だけじゃないけどさ、外見もよければ言うこと無いよね」

 

…といった具合であった。そんな中英美が唐突に深雪に話を振った。

 

「そういや、三校の一条くんってさ、深雪に熱視線を送っていたよね?」

 

唐突に話を振られた深雪であったがそんな視線を送られていることに気がつかなかった。

 

「えっ?そうなの?」

 

「一目惚れかな?」

 

「深雪にならありえそうだね」

 

「むしろ、深雪に惚れない男がいたら可笑しい」

 

「実は前から知り合いだったりして」

 

きゃーと黄色い歓声が上がっているが当の本人はと言うと雫から質問されていた。

 

「深雪、どうなの?」

 

「真面目に答えさせてもらうけど一条くんは写真でしか見たことがないわ。それと会場の何処にいたのかも分からなかったし」

 

これだけ聞いたら三校が大分ショックを受けるのではないかと思ったが、まだ気になることがあるらしく里美スバルが質問した。

 

「じゃあ、深雪の好みの人ってどんな人?やっぱり七草くんみたいなのが好みなのかい?何時も一緒に居るしね」

 

スバルのこの質問に、深雪だけでなく雫とほのかが反応し硬直してしまったのにエイミィが気が付いた。

 

「へ?ど、どうして八幡さんが出てくるの?」

 

「おや?七草くんを呼ぶときは名字じゃなかったかい?」

 

「そ、それは…」

 

滅多に見せない動揺を深雪が、その白い肌を赤く染めてスバルの質問に反応してしまったのが運の尽きだった。

それとは別にチームメイトも深雪を見てニヤニヤし口をそろえて「あぁ~」と納得した素振りを見せていた。

 

「そうだった、うちにももう一人十師族のプリンスがいたね」

 

「本人はそう呼ばれるの嫌いそうだけど、プリンスと言うか若頭?って感じよね。七草くんかっこいいよね…なんかこう酸いも甘いも噛み締めてるような達観した感じ。いいよね~」

 

ただの面倒くさがり屋だと思うが。

 

「ぶっきらぼうで女の子の扱いに手慣れて無さそうだけど対応が紳士的な感じがする」

 

「見た目良し、性格良し、家柄良し、魔法戦闘技能も良し…非の打ち所が無いんじゃない?」

 

八幡に対するチームメンバーからの好評価に深雪、雫、ほのかは自分の事ではないのだが自分のことのように嬉しく思ってしまった。だが次の一言は八幡を慕う彼女らにとっては最大の敵であった。

 

「でもさ、七草くんって深雪に負けず劣らずシスコンだよね…お姉さんの七草会長とめちゃくちゃ仲良くない?今日の事件の時もバイクで後ろに乗せて現れたんだけど事故処理が終わって出発する際に七草くん、会長に「バスの方が楽だから姉さん乗ったら?」って言った七草くんに不機嫌そうに「バイクに乗るわ」って言って結局会場まで2人乗りで来てたよね、しかも嬉しそうに。もうあれお姉ちゃんと弟の関係じゃないよ!」

 

「もうそれはカップルだね、深雪の最大の敵は七草君の姉の七草生徒会長かぁ…」

 

「…深雪大変だね」

 

「も、もう!からかわないで頂戴!」

 

「あ、深雪が照れてる!レアな表情」

 

深雪が反論するが普段よりも勢いがないのは気のせいではないだろう。

 

「七草くん…罪な男だよ。第一高校の高嶺の華の心を射止めてしまうとは…」

 

「罪な男と言えば七草くん、三校の女子生徒に話しかけられてたよね。しかも楽しそうに」

 

「おやおや?ライバルが多いな」

 

「七草くんモテモテだね~会長に深雪、他校の生徒にも好意を寄せられてるって凄すぎ…でもお兄さんは八幡くんの事どう思ってるの?」

 

そう、深雪はブラコンであることが知られており、達也もシスコンであることが知られている。何処の馬の骨とも分からない男に妹を渡すはずがないと思われたが深雪は恥ずかしそうに興味津々なチームメンバーに告げた。

 

「…お、お兄様も「八幡であれば深雪を任せられる」と言っていたわ。は、恥ずかしいのだけれども…」

 

「「おお~」」

 

今第一高校で話題の深雪の兄が妹の想い人である八幡を認めているとは思わず驚嘆の声を挙げていた。

 

「…そういえば深雪はどうして七草くんが好きになったの?」

 

不意に英美が深雪が八幡に好意を寄せた切っ掛けを知りたくて質問する。その質問にチームメイトも興味を示しており、はぐらかすことは不可能だと感じた深雪は素直に話すことにした。

 

「…数年前にわたしと家族が事件に巻き込まれたときに救ってくださったの。お礼を言おうと思ったのだけれど直ぐに名前も名乗らず居なくなってしまって。最初はお礼を言うためにその人物を探していたのだけれど、第一高校に入学して直ぐの頃、私が原因で事件が起こりそうになったときに自分が悪役になってまた救ってくれた時にあの時救ってくださったのが八幡さんだと気がついたのよ…そこからかも知れないわね。八幡さんに好意を抱いたのは」

 

「おお…まさに「小説より奇なり」だね…!」

 

「わぁ…スッゴいロマンチック…!」

 

感動しているチームメンバーを尻目に英美がこの空間に戦略級魔法を投下した。

 

「雫とほのかも七草くんの事が好きなの?」

 

その発言をした瞬間浴室内が静まり返るが、驚愕の声が響き渡る。

 

「「「「ほわぁぁぁぁぁ!?」」」」

 

これが屋外であれば迷惑になっていたであろうレベルの大声だった。

チームメンバーへ問い詰められる雫とほのか。

その反応は二名とも異なっていたのは想像に難くない。

 

「うっそ、そんなことあるの?」

 

「ど、どうなの二人とも…?」

 

チームメンバーが息を飲み、その回答を期待する。深雪もその中の一人であった。

真っ先に回答をしたのは雫であり、緊張をしていると言うわけではなく何時ものように平淡としていた…と言うわけには行かず緊張しているようだ。

 

「…うん、私も八幡の事が好き」

 

雫のその決意に感化されたのかほのかも動揺したが覚悟を決めて告げた。

 

「私も…八幡さんが好き」

 

浴室内は深雪、雫、ほのか、3名の八幡に対する想いを聞いたメンバーの黄色い歓声で埋め尽くされていた。

しかし、不安視する声も当然あり…

 

「七草くんスッゴい…」

 

「学校内のこの三人から好意を抱かれるとは…クラスの男子が聞いたら血涙流しそうだね…」

 

「深雪達、ぎすぎすしない?大丈夫?」

 

その問いに其々答える。

 

「大丈夫よ、雫達が八幡さんを好きなのは知っているし」

 

「うん、大丈夫、知ってる」

 

「深雪達が八幡さんを好きなのは知ってたけど…」

 

チームメンバーがそれぞれに感想を言い合うが深雪達が発した言葉に雫とほのかが頷くと苦笑いするしかなかった。

 

「でも八幡さん人の好意に疎そうなのよね…」

 

「分かる」

 

「それ分かるよ…」

 

「「「あー…分かる」」」

 

瞬間3名は八幡を巡る恋のライバルとなったのであった。

八幡に対するアプローチが更に苛烈になっていくことは明白だろう。

 

 

一方その頃…

 

「はっくしっ!!…あーソファーで寝ちまった。シャワー浴びて寝るか…その前に散歩に行くか…達也遅ぇな、まだ仕事してんのか…?」

 

噂の渦中にいる人物は呑気であった。

 

 

場面は変わり第三高校に割り振られた選手の部屋では若い活気が溢れていた。こちらも寝るにはまだ早い時間なせいか、九校戦についての会議、ではなく此方も恋話をしていた。話題は愛梨が話していた人物であった。

 

「それで愛梨?先程話していた殿方は誰だったのじゃ?」

 

やや古めかしい言葉を使うが決して年上ではない。

愛梨と同じく第三高校の一年生で四十九院沓子が問い詰めており更に、

 

「愛梨が話していた人物私も気になるわ…誰だったの?」

 

此方も愛梨と同じく第三高校の一年生、十七夜栞が感情の起伏が薄いはずなのにやや威圧感のある態度で愛梨に質問していた。

 

「先程話していたのは第一高校の七草さんよ。妹の恩人でまさか九校戦の会場でお会いするとは思わなくて…」

 

「七草?あの『七草家』のか?ほほう!あの愛梨が男に話しかけるとはな。しかも楽しそうにはなしておったじゃろ。うちと別校の男達が悔し涙を流すのう!で、愛梨のお眼鏡にかなったのか?」

 

「愛梨が気にかけるとは意外ね…どうなの?」

 

「べ、別に八幡様とはただ妹のお礼とお話しを少しした程度だし…」

 

「ほーう…?『八幡様』となぁ?」

 

「うっ…」

 

「栞、その七草八幡殿とやらはどんな人物なのじゃ?」

 

栞が八幡の調べた情報を告げる。

 

「七草八幡…養子として「七草家」へ入り第一高校次席入学。4月に反魔法団体「ブランシュ」襲撃の際に第一線で活躍し武装した非魔法師の襲撃者と魔法師を約100名以上強をたった一人で全滅させ実行犯を捕縛、「ブランシュ日本支部」を壊滅させた…今回の九校戦の際に選手兼エンジニアとして参加するという第一高校初の快挙…使える魔法は、満遍なく苦手な物は特にない。発動速度は異常な速さを誇り同一系統と複数の系統の魔法の多重同時使用を得意とする。特筆する点として魔法を使用せずとも高い身体能力を誇る…噂だけれども七草家次期当主候補筆頭とあるわね」

 

「伊達に「七草家」に養子に入ったわけではないようじゃ…うちの一条といい勝負じゃな。それでどうなんじゃ愛梨?惚れたか?」

 

「そ、そんなじゃないわよ…今まであったことの無い男の子だと思うけど…」

 

沓子の質問に尻すぼみになり赤くしてもじもじし出した愛梨に全員が「あ、こいつ惚れたな」と確信した。

 

八幡の名前に反応するもう一人のクラスメイトがいた。

 

「八幡…!?ねぇ愛梨の妹の名前って「一色いろは」だよね。その七草って奴「比企谷」って名字じゃなかった!?」

 

愛梨に食いつくように聞きに来たのは同じクラスの三浦優美子だ。

何時ものように気だるげな喋りではなく切羽詰まった様子だ。

普段の態度からは想像できないほどの変わりっぷりに愛梨は少し引き気味だった。

 

「え、ええ。八幡様は家のご事情で七草家の養子になられたと言っていたから…旧姓が比企谷だったけれど…それがどうかしたの?優美子…まさか貴女が「探して謝罪したい男の子」って言うのは八幡様の事?」

 

「そっか、ヒキオ…行方不明ってなってたから…見つかって良かったし」

 

優美子は安堵の表情と少しの怒りの表情が同居していた。

 

「「謝罪」?何やら込み入った事情らしいのう…」

 

「そうみたいね」

 

沓子と栞に聞かれてその経緯を優美子は説明し出した。

 

優美子が当時総武中学であったことを話し、八幡がどのような境遇だったのかとその状態にトドメを刺してしまった優美子達の依頼の内容に愛梨の八幡から聞いた話を聞いた沓子達は。

 

「なんとも気分が悪くなる話じゃ…しかし、その七草殿は同じ部活動の仲間を守るためと依頼人の名誉を守るために身を削って依頼を達成するとは…なんともまぁ、不器用な男じゃのう。しかし、そのような結果を招いてしまった原因は優美子達のグループにもあるのではないか?」

 

沓子からの指摘に優美子はばつが悪そうにしていた。

 

「その件に関してはあーしたちが悪いと思って反省してる…ヒキオが苛められてそんな最悪な状況になってるとは思わなかったわけよ…だからあーしはヒキオに謝りたい。それがあーしの「ケジメ」だから」

 

「話を聞く限りどうしてやり返さなかったのじゃ?七草殿自体その力はあったはずじゃろう」

 

「…恐らく自分が虐めの犯人たちにやり返してしまえば八幡様の親友たちに危害が加えられる恐れがあったからでしょう。妹も八幡様の知り合いの一人よ。妹が言っていたわ「先輩は全部自分の為だ。俺の精神衛生よろしくねーし、お前らが気にすることじゃねーよ。っていってホント捻デレなんですから」」って」

 

「なるほどのう…まぁ、なんとも素直でない殿方と言うのは分かったな」

 

「そうね、愛梨が好みそうな男性ね」

 

「だ、だから違うわよ!というかなんで掘り返すのよ!」

 

沓子と栞のコメントに否定しきれていない愛梨の様子によってしんみりした空気が壊され何時ものような騒がしい雰囲気に戻る。

しかし、優美子が頭を抱えていた。

 

「しかし、ヒキオまた別の女の子落としてるし…今度は愛梨とか…はぁ…」

 

「ん?優美子よ「また」とは?」

 

優美子の「また」という発言に疑問を持った沓子は質問する。

 

「ヒキオ、中学の時も無自覚な女たらしだったし…結衣に雪ノ下さん、沙希にいろは…人の好意に無自覚で否定するのに悪意には敏感なんよね…ほんといつか刺されるし」

 

「優美子は違うの?」

 

栞に聞き返されるが

 

「あーしが?いやいやナイナイ。なんかヒキオ見てると心配になるし…」

 

「優美子はうちの学校でもそうだけど性格ほんとにお母さんみたいよね」

 

「愛梨?どーいう事だし」

 

愛梨のその的確なコメントに沓子と栞が頷いた。

ギャル的な見た目で初見で近寄りがたい印象を与えるが、その反面非常に面倒見が良く三校の生徒達からは「三校のオカン」と人知れず呼ばれているのを優美子は知らない。

 

「八幡様と会う機会があるから、その際に一緒にいきましょう優美子」

 

「七草殿にも興味があるしのう、付いていって良いか?」

 

「私も七草君に興味が出てきたわね」

 

「待ってるしヒキオ…!」

 

 

 

「お、マッ缶あるじゃん。ここ軍の施設なんだよな?…相当なマッ缶ファンがいると見えるな…ん?」

 

ホテルの自室に帰り疲れきった俺は、数刻程眠りこけていたあと、シャワーを浴びて眠りに入ろうと思ったが眠れず自販機に飲み物を買いに来ていたのだが妙な気配を感知した。

 

先ほど部屋に居た時に調べたのだが、今日の事件の際に俺自身の《瞳》の効力が強化されていることに気がつき自身のステータスを確認すると

 

『一定以上の使用が確認され強化。《見通す瞳》が進化し、《賢者の瞳》へ進化した』となっていた。俺自身もなんじゃそら?また厨二病が発動してしまったのかと否定したくなったがこれも俺の能力だ、諦めるしかない。仕方なく効力を確認してみると能力が不味かった。

 

『短い時間ではあるが未来を予知、観測することが出来る。しかし、任意での発動に関しては練度が必要』

 

つまり先ほどの事故の予測は未来を感知し、先読みすることが出来ていた…というおったまげな能力を獲得してしまった訳だ。

しかし、今後に役立ちそうなので面倒ではあるが練習するしかないと判断した。

 

そんなことを思い出すが今は空間に対し《瞳》の力を解放する。

すると茂みに隠れた拳銃や爆弾を所持した侵入者を確認できた。

 

(ちっ…今は九校戦で開けられてるにしても軍事施設だぞ。問題起こされる前に仕留めておくか…)

 

俺は悪態をついたがここで放置しておいた方が後々面倒になることは分かりきっている。CADは所持していないが体術のみで事足りるだろう。

しかし、なぜここに侵入したのかをこの下手人たちに聞かなければならない。

俺は四獣拳の一つ、無窮・無殺の型《麒麟》を選び発動した。

 

この型の特徴は相手を殺す技が無く他の型に比べると構えがなく自然体ということだ。

更に俺自身のサイオンが続く限り相手から認識阻害と地面から浮いて移動が出来るという伝説の聖獣である《麒麟》の名を冠した非殺傷の型だ。

 

《麒麟》を発動し侵入者を制圧するために接近する。

しかし既に戦端を開いている人物がいた。それは幹比古であった。

全員に札のようなものを使い対処していたが一人拳銃を持った侵入者が幹比古に照準を定めている。

 

幹比古の魔法はそれの対処をするには遅すぎた。

銃弾が発射される前に俺が近づき掌底をあてて昏倒させ、もう一人の方へ向かおうとするが突如拳銃がバラバラになり特別躊躇することはなく掌底を打ち込み無力化した。

突如として幹比古は敵対していた侵入者が自分の他に現れた人物に倒されたことに驚き、鋭く俺達に問い掛けた。

 

「誰だっ!」

 

札を此方に向けて俺ともう一人の乱入者を威嚇してくる。

そう札を構えられたらおちおち話も出来やしねぇ、まずはその札を下ろせ。おk?

 

「俺だ」

 

「あと俺な」

 

「達也に…八幡?」

 

俺達に援護に入られたのがショックなのが見ていて直ぐ分かった。

倒れている侵入者達に俺は加重収束系統《キャッチリング》を使用し拘束してそこら辺に放っておく。

達也が侵入者に目をやり幹比古に話しかける。

 

「死んじゃいない、いい腕だな」

 

「八幡の援護が無ければ、本来僕は撃たれて死んでいた」

 

「あほか」

 

「へ?」

 

「援護が無ければというのは仮定に過ぎない、お前の行動によって侵入者の捕獲に成功したんだ」

 

達也の容赦のない指摘と罵倒に幹比古は面を食らっており俺は黙ってその話を聞いていた。

 

「現実に八幡の援護があって、現実にお前の魔法が間に合った。本来?幹比古、お前は何をもって本来の姿を求めているんだ?」

 

「それは…」

 

「相手が何人いても、どんな手練れが相手でも、誰の援護も必要とせず勝利することが出来る…其処にいる規格外は無視するとして…」

 

「おい、達也」

 

俺が抗議するが達也は無視しやがったこの野郎…其処まで俺規格外じゃないと思うんですけど。

 

「あえてもう一度言おう、あいつは無視してくれ」

 

「なんで二回言ったんだよ…そうだな幹比古、なんで其処までして自分を否定しようとするんだ?さっきも達也が言っていたがお前の魔法で現実に侵入者を撃退してるじゃねーか」

 

「八幡には分からないよ、言ってもどうにもならない事なんだ」

 

「魔法の発動スピードが遅いことか?」

 

「…エリカに聞いたのかい?」

 

「いいや?俺自身…まぁ特殊な能力があってな、達也から聞いてないか?俺は異なる同系統の魔法を二重詠唱して不要な部分を詠唱破棄して即時発動できる技能があるって…だから俺には分かるんだよ幹比古、お前の魔法式は無駄が多すぎるんだよ、俺からしてみればな」

 

「…」

 

俺の発言に混乱を来しているのか無口になってしまった。

 

「まぁ、俺の発言を信じるかはお前次第だけどな。お前んちが古式魔法の名家なのは知ってるし歴代受け継がれた魔法を変えるのは抵抗があるかも知れないが一つだけアドバイスしておく」

 

普段のいい加減な俺の雰囲気が変わったことに幹比古は疑問に思い達也も此方を見ている。

やりずれぇな…まぁでもいい教訓になるだろ。

 

「躊躇う事でとばっちり受けるのは自分だけじゃなくて自分が大切してる奴も受けるってことだけは覚えておけよ?古い倣いにこだわるのもいいが新しいものにも目を向けろ、いいインスピレーションになるかも知れんし…」

 

完璧なる「お前に判断を任せる」をしてしまったがそれぐらいの分別はつくだろうしな。

 

「とりえずこいつらを警備員に突き出さなきゃならんから幹比古、警備員呼びにいくぞ。と、その前に…よし、達也、こいつら見ててくれ」

 

侵入者の一人に近づき達也達がいるのでこいつらの記憶を盗み見ることは出来ない。なので、皮膚の一部を《フラッシュエッジ》で気づかれないように切り取り保管した。その後達也にこいつらの見張りを頼み、幹比古と共に警備員を呼びに行った。

 

「ああ、分かった」

 

「う、うん分かった…って八幡待ってくれよ!」

 

俺は《麒麟》が発動しているので飛び上がり2メートル近い生け垣をなんなく飛び越えて向こう側へ足を動かさずホバー移動しながら詰め所へと向かった。

マッ缶買いに来ただけのはずなんだけどな…

 

 

「七草家の彼はずいぶんと容赦のないアドバイスだったな」

 

「少佐、聞いておられたのですか」

 

其処に達也が別名を使って所属している国防軍の上官である風間が突如現れたが驚く達也ではない。何時もと違ってぞんざいな敬礼を返す。

 

「あれが七草家の養子か…興味深いな」

 

「八幡を軍に勧誘するおつもりですか?」

 

達也は風間に問い掛けるがニヤリと笑って答礼した。

 

「他人に無関心な特尉が気に掛けるとは珍しいな?」

 

「妹の想い人で俺の親友です。アイツを軍の仕事に巻き込みたくないだけです」

 

そのような返答に面を食らった風間だったが次の瞬間笑いだした。

 

「ふははっ!まさか特尉がそんなことを言い出すとは…安心しろ。単純に七草家の次期当主筆頭の少年がどう言った人物なのか気になっただけだ、それに彼はこういった手合いには関わりたくなさそうだしな。しかし、親友か…」

 

「この者達をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

これ以上はからかわれるなと思った達也は急激な話題変更を行ったが風間は人の悪い笑みを浮かべていた。

 

「引き受けよう、ここの基地司令には話を通しておく」

 

笑顔が消え何時もの上官の顔になる。

 

「こいつらは一体何が目的なのでしょうか」

 

「分からん、話を聞いてみないことにはな。達也、とばっちりには気をつけろよ?」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

一言、二言告げて達也はその場から立ち去った。

 

 

 

「よう、遅かったな…っておいお前何処いたんだよ警備員呼びに行ったら軍の人がいて呼び損だったじゃねーか」

 

「お前達が呼びに行ってすぐに巡回の軍の人が通りかかったから引き渡してその場を離れたんだよ」

 

「だったら端末に連絡くれてもいいんじゃねーの?」

 

「…そういう考えもある」

 

おいこら、絶対に俺ら呼びに行ってたの忘れてただろ…こんにゃろ。

 

「お前絶対忘れただろ…ふぁ~寝みぃから先寝るわ。明日は姉さんの試合あるし…」

 

「七草会長と渡辺委員長の試合だったな…おやすみ八幡」

 

俺が先に布団に入ると疲れが一気に押し寄せ眠りについてしまった。

その日見た夢はよく覚えていなかったがなんだか楽しい夢だったな、と




愛梨はヒロイン確定ですね…。こういうお嬢様キャラに作者は弱い…。
ちなみにですが八幡のヒロイン枠で「俺ガイル」キャラでは一部を除いて参加はさせません。雪ノ下、由比ヶ浜は出ません。

幹比古への説教は達也ではなく八幡が行いました。
この作品では八幡も魔法の起動式を読み取れると言う設定なのでそうなりました。

八幡に対する達也の「親友宣言」はこの作品では母である深夜がこっそりと姉に内緒で達也の感情の一部を復活を行っているのでそのような感情を抱くことが出来ることになっています。
沓子と栞の口調は優等生とかを確認したのですが合ってるか微妙…
優美子口調難しすぎませんかね…?
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