俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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お気に入り登録1000人突破…!圧倒的感謝…!
UAも80000越えてまさかの日間ランキングに51位でまた載っていたのは驚きでした。
これも皆様のお陰でございます。
ありがとうございます。
目指せ高評価…!

コメントも頂くと作者のモチベーションが上がっていきます。何卒…!
今回は原文が多めかも知れません。
それに真由美の描写が非常に多くなっておりますのでよろしくお願いいたします。日数的には九校戦一日二日目の時間軸ですね。

1000人を突破したので八幡の設定とか載せられたらいいな~と思っております。

それではどうぞ!


九校戦開始

翌日、眠りについたことで疲れはとれていた。

達也は既に起きていたので、洗面台に向かい顔を洗い身だしなみを整えて紅縁メガネを掛ける。

 

このメガネは優秀で、俺が《瞳》の力を行使しすると外からは瞳の色が変わったことを悟られない特殊なレンズで作られているので手放すことが出来ない…もう一つの理由は俺の目が濁っているからな。

ゾンビと間違えられてしまうからな。

 

洗面台から出ると達也は端末でニュースを見ており話しかける。

 

「飯食いに行くか…」

 

「そうだな」

 

俺と達也でホテル内に併設されてる割り当てられた場所で食事をとることにした。

ホテルだけあって朝食も旨かったです。

その場にいた同じ学校のチームメイトの女子生徒から俺に「(深雪達の恋の)応援してるよ!」と謎の声を掛けられたりして頭に疑問符をつけるしかなかった…ああ、試合の事に関してか朝からありがとうな。

しかし、何故だろう。応援の前に()が付いていた気がしたのだが…

達也は俺に対してため息をついていた。

 

だからその顔やめろ…

 

 

九校戦は開幕した。

各学校が校歌を歌うと直ぐ様競技へと入る。

一日目は姉さんのスピード・シューティングが始まる。

 

「じゃあ、俺姉さんとこ行くから。また後でな」

 

俺は達也達に一言別れを告げて一校選手控え室へ向かう。

控え室に入ると姉さんがユニフォームに着替えて椅子に普段のように座り目を閉じて瞑想のような事をしており、俺が入室したことに気がつくと立ち上がり俺に近づいてきた。

…心なしか何時ものような明るい笑顔ではなく、緊張しているのか表情には不安が浮かんでいた。

 

「姉さん」

 

「あ、八くん。どうお姉ちゃんのこの衣装?似合う?」

 

姉さんの豊かな長い髪の上から耳を保護するヘッドセットは手に持っており、目を保護するゴーグルは今は着けておらず、足のラインが強く出るストレッチパンツの上にミニワンピースと見間違えそうなウエストを絞った詰め襟ジャケットというユニフォームと競技用のCADと相まって可愛さと凛々しさが同居しさながらSF映画のヒロインのような雰囲気だった。

 

感想を聞かれるので答えないという選択肢は俺の中にはない。

 

「似合ってるよ姉さん。流石はエルフィン・スナイパーって言われるだけあるじゃん」

 

「もう、そのあだ名で呼ばないで頂戴!全くもう…」

 

俺の回答に満足しなかったのか頬を膨らませそっぽを向いてしまった。わりとこういったところは幼いよな…しかし怒らせたままにするのは不味い。

 

「俺はその名前好きだけどな…かっこいいし」

 

「大人なんです~!八くんはいいかも知れないけどお姉ちゃんそろそろ高校卒業するのにその二つ名はちょっと…」

 

俺は話題を変えるために姉さんの衣装について喋った。

 

「それよか姉さんを不躾な目で見る会場の男共の目を潰して回りたい…」

 

噂だと姉さんのこの姿を見て同人誌を作っているという事を聞いたことがあるので由々しき事態だ。

 

「八くんが言うと冗談に聞こえないのよね…」

 

「俺は姉さんに対しては何時も真面目だが?」

 

「それが困るって言ってるの!もう!」

 

何時ものような漫才をしており姉さんの緊張も解れたことだろう。

 

「試合前に適度に緊張解れたでしょ?姉さん緊張してたし」

 

俺が気持ち悪くないレベルの微笑を浮かべると姉さんは顔を少し紅くして俺に近づいてきた。

 

「ねえ、八くん。お姉ちゃんにやる気が出るおまじないしてくれないかな?」

 

「「大人なんです~!」って言ってた人と同一人物とは思えないんですけどね?」

 

「ほら!いいから!お姉ちゃんからの命令よ」

 

ずいっ、と頭を差し出してきた。今日は特別サービスだ。姉さんは今年で九校戦に出れるのは最後だから悔いを残して欲しくないからな。

 

この時真由美は八幡から何時ものように只頭をワシャワシャされるだけだと思われたがそうではなかった。

特大級の応援エールであった。

 

「は、八くん…?」

 

俺は姉さんを胸に抱き止めて頭を何時ものワシャワシャするのではなくそっと撫でるようにした。

 

「大丈夫だよ姉さん。俺の自慢の姉さんだし、俺は姉さんを信じてるから。『必ず優勝できる』って」

 

しばらく無言で俺が姉さんを抱き止めたまま一定の間隔で姉さんの頭を優しい手付きで撫でていると腕の中の姉さんは落ち着いたように瞳を閉じてその感触を噛み締めていたようだ。

俺から離れると表情も先ほどの不安そうな表情から何時もの微笑みの表情に変わっていた。

やはり姉さんは笑顔を浮かべている方が似合っている。

 

「ん…八くんありがと。お姉ちゃん元気出たわ」

 

「CADの調整もバッチリだ、なんせ希代の魔工師『ファントム』が調整したし」

 

「ふふっ、八くんがそんなこと言うなんて珍しいわね」

 

「自分で言ってて恥ずかしくなってきた…」

 

「お姉ちゃんの活躍見ててね?」

 

「おう」

 

立て掛けた競技用CADとヘッドセットを手に控え室出て会場へ向かう。前方の通路から伸びる光を浴びている姿は幻想的でまさに「妖精」であった。

 

試合が開始されると姉さんの姿を見た聴衆が騒いでいるのを見て少し俺は会場のエンジニア詰め所で不快な表情を浮かべていたが見られる心配はないだろう。

選手達の事で他のエンジニアも手一杯だろうしな。

 

吐き出されるクレーを姉さんが得意とする知覚魔法《マルチスコープ》で広範囲レーダーのように補足しドライアイスの亜音速弾で撃ち抜いていく。

その構えはライフルを構えると言うよりかは弓をつがえるような形で魔法を放つ。

結果として一発も外さずクレーを100枚中100枚を撃ち抜きパーフェクト。

 

当然ではあるが第一回戦の勝者は姉さんで確定した。

 

(まぁ…姉さんの独壇場になるわな)

 

二回戦…三回戦と続き対象を全て撃ち抜きパーフェクト。

続く準決勝も同様だった。

対戦相手が可哀想になってくるレベルだなこれ…

姉さんの技量と俺のCAD調整技術が合わさればまさに鬼に金棒、ハリー・○ッターにニワト○の杖だな。

例えが古すぎたかもしれない…

 

スピードシューティング女子決勝トーナメント会場。

姉さんが出場するからかスタンドは既に満席であった。

 

…いや、マジで姉さん目当てできている奴の目玉サミングしに行きたいんだけど…

そんな物騒な事を考えていると姉さんがシューティングレンジに姿を見せた瞬間、嵐のような歓声が会場内に鳴り響いた。

観客席に《重力爆散》叩き込んでいい?ダメ…そうか。

会場に設置されたディスプレイが「お静かに願いします」の文字が出ると水を打ったように静まり返りその分熱気が高まったような気がして俺は姉さんの対戦相手が少しだが気の毒に感じてしまった。

 

姉さんは元より観客などいないような素振りで俺が開発し調整した小銃型のCADのトリガーロックをリリースし、開始の合図を待機する姿勢を見せた。

 

シグナルが開始の合図を告げた。

しかしまだ撃ち抜く対象物のクレーは射出機からは発射されておらず縦に5つ並んだライトが全て点灯することで開始される。

 

ライトが全て灯り姉さんが撃ち抜くべきクレーの赤色が粉砕されていく。

普通に見ればこの競技の性質上相手より先に撃ち抜いてしまえば相手は自殺点を気にせず撃ち抜くことが出来てしまうがそんなものは姉さんには関係ない。

何故なら相手側の白いクレーを全て避けて赤いクレーのみを下から撃ち抜いているのだから。

 

『魔弾の射手』

 

ドライアイスの弾丸を生成し、狙撃する射撃魔法。魔弾を作り出すのではなくその銃座、射手を作り出すことから『魔弾の射手』と名付けられた。

 

この魔法の利点は仮に互いに振動系魔法の撃ち合いをしている最中に自分は相手の魔法領域干渉外から狙撃することができると言う点だ。

スピード・シューティングは本来魔法の発動速度と魔法力の集中を要求される競技なのだが、姉さんの状況は安全地帯から狙撃、つまり相手からの干渉を受けずに一人芋スナしている状態になっているのだ。

 

もし仮にこれを対人戦闘に置き換えると、他人が魔法を使用し撃ち合いをしている時に突然死角からの攻撃を受けてしまうと言う凶悪な攻撃に変わる。

 

互いに振動系魔法を使っていなければ条件は同じなのだが姉さんを相手取るのは分が悪すぎた。

 

姉さんの照準スピード(精密さ)、魔法力は世界的(俺からも)に見ても卓越している水準にある。

 

うちの姉さん相手に高校生レベルでは話にならない。

姉さんは壊すべきクレーを全て破壊しパーフェクトだった。残酷だがこれが結果だ。

 

ブザーがなり結果が表示されだ瞬間、収まっていた熱気が観客席から解放され歓声が上がる。

 

本戦スピード・シューティング女子優勝者は第一高校三年七草真由美が文字通り優勝を射止めた。

 

 

 

 

一日目の競技、スピード・シューティングは想定通りと言うべきか女子部門では真由美が優勝することになった。

さらに九校戦始まって以来の歴代最速でパーフェクトハイスコアの更新を記録をし今後破られることができないほどの実績を叩き出してしまっていた。

ちなみにだが男子部門も第一高校が優勝し総合優勝への道筋を立てる。

 

「会長おめでとうございます」

 

あずさ先輩の祝福に真由美も笑顔で頷く。

 

「ありがとう。摩利も無事準決勝進出ね」

 

「ああ、まずは予定どおりだな。八幡くんも良くやってくれたよ」

 

「八幡さんも仰っていましたが「姉さんの優勝は確実だから心配してない」と」

 

九校戦一日目は無事終了し明日に備え眠り英気を養う必要があったが眠るにはまだ早すぎるため真由美の部屋へ生徒会+風紀委員長の面々が集まっていた。

 

真由美は八幡を呼ぼうとしたのだが女子だけが集まる空間と言うことで一目散に逃げ出してしまった。

 

(この時、八幡は同室の達也と幹比古とレオの4人でマリ○カートをやっており盛り上がっていた。)

 

『八幡…これは?』

 

『おう、実家の執事さんが持ってた奴なんだけどさ、「八幡様、学校行事で夜、男が集まってやることと言えば《マリ○カート》で爆走でございます。どうぞお持ちください」っていってソフトとハードを持っていけって』

 

『Sw○tchだな。しかも最終生産品か…存在してたんだな』

 

『動くのかい八幡?』

 

『俺ははじめてみたぜ、今のハードよりでかいんだな前世紀のやつって』

 

幹比古とレオは現物を見て驚いている。

 

『動くように修理してきたからな。やってみるか…俺こういう対戦ゲームやるのちょっと憧れてたんだよな…』

 

ホテルに備え付けのテレビに無線接続し本体を起動してキャラを選び遊び始めると…

 

『おい、達也!おまっ青甲羅をゴール手前で使うのは卑怯だろ…』

 

『戦略的だと言って貰おうか』

 

『あ!幹比古お前ごっつあんゴールしたな!』

 

『そういうレオこそキノコ使って直前でスパート掛けてゴールしたじゃないか』

 

『しかし…何故俺達はカーブを曲がる度に体が傾くんだ…?』

 

『なんでだろうな…?様式美だろ』

 

『そうか…』

 

意外と白熱し男子高校生的な遊びをしていた。

 

 

場面は変わり真由美達が集まる場に男子生徒がいないのは時間を考慮しての事もあるが、それとはまた別の問題があった。

 

「少しヒヤッとしたが服部もなんとか勝ち残りか」

 

摩利がやれやれといわんばかりに男子成績が思ったよりもパッとしなかったようで男子の部バトルボードでは予選で予想外の苦戦を強いられていた。

どうしてそのような結果になったのか。

どうやら選手とCAD調整がうまく行っていなかったようで現在進行形で調整を続けているのを報告用の端末で生徒会の一員である鈴音が摩利へ報告すると辛口なコメントが帰ってきて真由美も苦笑いするしかなかった。

 

話題は変わり今回の真由美が出場したスピード・シューティングは大会新記録で、今後も打ち破られなさそうな結果に話はシフトした。

 

「しかし、史上最速終了でパーフェクトフルスコアとは流石は『妖精姫(エルフィン・スナイパー)』だな真由美」

 

真由美はその呼び名で呼ばれる事を嫌っているのを周知の事実で摩利は敢えてその呼び名を口にするが真由美の反応は今までとは違っていた。

 

「もう、その名前で呼ばないでって言ったでしょ?」

 

今までなら本当に嫌そうな顔をしていたのだが今日は違っており少し顔を紅くしてその忌名をどちらかと言えば誇りをもって受け入れているような感じであったので部屋にいる全員は驚いてた。

摩利が反応する。

 

「意外だな?今の今までそのあだ名で呼ばれると露骨に嫌そうにしてたのに」

 

「ちょっとね…」

 

もじもじし始めた真由美を見た摩利は察して面白いものを見つけたと言う表情をして真由美にちょっかいを掛けた。

 

「ほほう?八幡君か?」

 

「な、なんで八くんがここで出てくるのよ」

 

唐突に八幡の名前を出されて狼狽える真由美の姿に摩利が追撃を掛ける。

 

「八幡くんに褒められて嬉しくなったな…そういえばやたらと控え室にいる時間が長かったな?どうせ八幡君に「元気の出るおまじないしなさい」って言って抱き締められて頭を撫でられたりしてたんだろ?」

 

摩利は冗談で言ったつもりだったのだが…

 

「なっ…!なんで知ってるの!?」

 

「は?」

 

「ん?」

 

「はい?」

 

「…会長?(七草会長?控え室でそのような羨ましい…こほん。淫らなことをしているとは…これは八幡さんに『お話』をしなくてはいけませんね…?)」

 

「え?…はっ!」

 

生徒会+風紀委員長の真由美を除く4名は固まってしまった。

まさか言い当てられると思わなかった真由美は墓穴を掘ってしまう。

摩利からの質問にあわてふためく真由美がいた。

 

「お、お前まさか控え室で…」

 

摩利が想像してたのは控え室で義理の姉弟とは言え淫靡な事をしていたのではないかと想像してしまい顔を赤くする摩利に対して真由美も混乱し大慌てで否定する。

 

「バ、バカ言わないでよ!摩利達が想像してるようなことはしてません!…ただ、八くんに何時も通りに…頭なでてもらってただけなんだから…それに八くんとは姉弟なんだから!」

 

普段の余裕たっぷりは何処へ…と言うような状況であり摩利は「お前なぁ…」、あずさは顔を赤くして「はわわ…」となり鈴音は「…はぁ」と溜め息をついて深雪は只怖い微笑を浮かべあずさが怖がっていた。

 

「姉弟って言っても義理だろ。お似合いなんじゃないか真由美。まぁそうなったら祝福はしてやるが…」

 

「確かに八くんみたいにやる気はないのにいざってときはスッゴクかっこ良くなるのは卑怯だけど…だから違うって!」

 

「あー、わかった。みなまで言うな」

 

「聞きなさいよ!」

 

「八幡くんと会長仲いいですね。もうカップルみたいです」

 

「本当に服部くんが可哀想になるレベルですね」

 

「八幡さん?ふふふ…」

 

あずさと鈴音、深雪はそれぞれに感想を述べていた。

反論をする真由美だったが。

 

「もう!だから八くんと私は義姉弟だってば!」

 

「と言うかこの部屋寒くないか?冷房効きすぎだろ」

 

「恐らく深雪さんの干渉力のせいだと思われますが…」

 

「さ、寒いです」

 

「司波、落ち着け」

 

「も、申し訳ございません…」

 

「いや、聞いてよ!」

 

摩利が深雪を嗜め部屋が氷漬けになるのは回避された。

真由美は言葉では否定していたがその顔は赤くなり満更でもなさそうなのがダメだった。

 

「しかし、真由美のCADを調整したのは八幡くんだったな、すさまじいな」

 

「はい、見せて貰いましたが八幡くんの調整技術は達也くんと同じく一流のクラフトマンに負けず劣らずですごかったです」

 

「しかも、今回真由美が競技で九校戦初の快挙を成し遂げてしまったからな。八幡くんが調整したCADで」

 

摩利とあずさが八幡の調整したCADについて手放しで褒めていた。

摩利が提案をし出す。

 

「それならもう明日の選手の調整を八幡くんにお願いするか?服部の調整に明日のクラウドボール担当は付きっきりだろう」

 

「無茶言わないでよ。八くん新人戦のバトルボードとスピードシューティングの娘達の調整に加えて、自分の競技の調整があるんだから」

 

真由美の言う通り八幡は現在自身とチームメンバー総勢6人分の調整を引き受けているので上級生の分まで受けてしまうと真っ黒な企業も真っ青な労働時間になってしまうのだ。

しかし、摩利達は八幡の正体が希代の魔工師「ファントム」であることを知らないのでその程度の人数であれば1日も掛からずに調整できるが知っている真由美としてはあまり八幡に負担と正体がバレをしてほしくないのでそのようなコメントをしたのだ。

それを言われた摩利は。

 

「むっ…それもそうか…。しかし、明日の真由美のCADは調整が終わっているんだろう。なんとかならないか?」

 

こまっている摩利を見た鈴音が提案した。

 

「でしたら明日、明後日もオフの司波くんをメインにしてサブで八幡くんに協力をお願いするのはどうです?」

 

鈴音の代替案に思案し真由美は難しそうな表情をして考え答えを出した。

 

「…八くんには悪いけど優勝を目指すなら仕方がないか。深雪さん、明日達也くんと八くんに伝えてくれる?」

 

「はい」

 

深雪は真由美の願いを快諾した。

思いもよらぬ兄への活躍の機会が増えたことに喜びを隠さずにはいられなかった一方。

自らが好意を寄せている八幡が義姉である真由美に対してスキンシップの度合いが姉弟間のレベルでなくもうそれはカップル同士であったことを知り、昨日浴室内でチームメイトに言われた「七草会長が一番の強敵」と言うのを思い出して深雪は警戒心を最大にする他なかった。

 

 

「お兄様、深雪です。大丈夫でしょうか?」

 

夜も更けてきた頃にゲームで遊んでいた幹比古達と解散してそろそろ寝ようとしたときに深雪が俺たちの部屋へやってきた。

 

「深雪?」

 

達也がドアに近いポジションにいたのでドアを開けると俺も同時にそちらに振り向くと寝巻きにしては可愛すぎる白のゆったりとしたワンピースを着た深雪がそこにたっており、特段珍しい服ではないのだが深雪と相まって見とれてしまっていた。

 

俺の視線に気がついていない司波兄妹は話を始めていた。

 

「実は…」

 

深雪が何故俺たちの部屋に訪れたのかを説明すると達也は呆れていた。

俺は別の意味で顔を歪めたくなったが。

 

「……なるほど。それでこんな夜遅くに来たのか」

 

「…ご迷惑でしたか?」

 

「正直今日聞きたくなかったけど、明日聞かされてた方が地獄だったからサンキューな深雪」

 

「おい、八幡」

 

「じょ、冗談だって…しかし、深雪。女の子が出歩く時間じゃないぞ」

 

「確かに八幡の言う通りだ。いくらホテルの中とはいえ女の子が出歩く時間じゃないな。色々と不審な動きがあるんだ、もしかしたら廊下に不審者が入ってくるかも知れない」

 

俺は達也のその言い分に言い過ぎじゃね?と思ったがこいつにとっては大切な妹だしな。そりゃそこまで言うわと思い深雪を見直すと満面の笑みであった。

 

「はい、申し訳ございませんでしたお兄様」

 

俺と達也は声を揃えて

 

「「満面の笑みで謝られてもなぁ…」」

 

ぼやく達也は顔を笑わせており俺は「しょうがねぇな…」と言った感じだった。

考えてみれば達也は深雪に対して甘すぎるのだ。

あ…俺も人の事言えねぇ。小町はともかくとして泉美ちゃん。香澄ちゃんは感情が高ぶってくると人前で一人称を「私」から「僕」に変えてしまうので俺が気を付けなさいと言っても「ごめんね、お兄ちゃん」としょんぼりして謝ってくるので怒るに怒れないのだ、その後頭を撫でると機嫌が良くなる。これマメな。

それと同じか…

 

俺たちの反応を見て深雪はまたしてもクスりと笑みを浮かべていた。

 

 

九校戦二日目。

 

俺と達也はエンジニア用のブルゾンを着て第一高校の天幕にいた。

達也は急遽割り当てられたメインのエンジニアとして据えられたのでそちらの方を調整しなくてはならなくなったので急遽全員分のCADのデータを頭に叩き込んでいるのを見てやっぱこいつ二科じゃねぇ…ってなった。

 

「八くん、ごめんね?急にお仕事頼んじゃって」

 

仕事をしている達也を確認しているところに様子を見にきた姉さんに声を掛けられ返答する

 

「姉さん以外から頼まれたらぜってぇやらねえけど…」

 

「ほんとありがとう八くん」

 

「まぁ、俺よりも達也の方に感謝するべきだと思うけど…」

 

俺が指差す方向には達也が仕事をしており姉さんもそれには同意していた。

 

「それには同意ね…ほんと達也くんってスゴいわね~。瞬間記憶とか完全記憶とか言うやつじゃないの?羨ましい…」

 

「姉さんそれ達也の前で言うなよ?達也としちゃそんなものより魔法力が欲しかったんだろうが…」

 

「あ、受験生を前にして許しがたい贅沢ね~」

 

ぷりぷりと可愛い顔の頬を膨らませ両手を腰にあてていた。

姉さんそれ素でやってるんだよな…

俺は本当に、マジで無意識に可愛さを褒めるように姉さんの頭を何時ものようにわしゃわしゃと髪が乱れないように撫でてしまっており姉さんと俺が試合前にいちゃいちゃしているように見えただろう。

 

その光景を見た第一高校の天幕にいたチームメンバーはこう思ったのではないだろうか。

 

『リア充爆発しろ!!』と。

 

 

競技が始まるコートへ向かい到着すると姉さんは羽織っていた膝上丈のクーラージャンパーを脱いだ。

俺は愕然としてしまった。

 

「姉さん、その格好で出るんですか?」

 

「なんで急に敬語?…そうよ?」

 

当たり前のように頷かれて俺は頭痛を覚えた。

 

「本当に、そのスコートで試合すんの?」

 

「え?おかしいかな…。似合ってない?」

 

いやむしろ逆で似合いすぎていてヤバイのだ。

テニスウェア、としか言い表せないポロシャツにスコート姿でそれはどっちかと言うとお嬢様がおテニスをする姿なんですわー!、と言う姿なんですけど。

少し体を傾けるだけでスコートの裾が跳ねてアンダースコートがチラ見えしてしまう。

俺はこういったチラリズムに造詣が深いわけではないのだが、スコートの下からチラ見えするアンダースコートはもうほとんど下着と言っても差し支えない。だからこそ、この会場にきている高校生並びに中年のおっさんたちに姉さんのアンダースコートを見せつけるわけにはいかないので全員《重力爆散》を叩き込みこの世から抹消しなくてはならないのだ…!

とりあえず姉さんは褒めておく。

 

「めっちゃ似合ってる」

 

「ありがと、八くん」

 

「でも…」

 

「でも?」

 

姉さんは不思議そうに俺を見てくる。

 

「姉さんのスコートから(ほぼ)パンツが見えて観客席が盛り上がるのはムカつくので《重力爆散》撃ち込んできて良い?」

 

「おバカ!ダメに決まってるでしょう!それにこれは下着じゃなくてアンダースコートよ!全く…八くんのエッチ!」

 

スコートを押さえ顔を赤くし抗議の表情を浮かべた姉さんに怒られてしまった。

どうやら失言だったらしい…。間違ったな。

 

その後機嫌を戻して貰い試合に望む姉さんを後ろから見守る形になるがなんの心配も抱いてはいない。

何故なら「姉さん」だからだ。

 

対戦相手はショートタイプの拳銃形態のCADを両手で保持して忙しなくボールへ動かしている。

相手選手が捉えたボールが移動魔法によって不自然な軌道を描き姉さんのコートに落ちようとするが倍のスピードを加えられて帰宅していく。

全て元の場所へと帰っていくのだ。

姉さんは胸の前で両手で拳銃型のCADを構え中央に立っている。

伏せ気味に両目に神秘的な光をたたえ祈るようにCADを捧げ持っている。

俺は相手の事など既に脳内から排除されて目の前にいる姉さんに心奪われていて目の前に映る姉さんはまるで一枚の絵画に描かれた女神のような美しさを放っていた。

 

美しさだけでなくその実力も相手の方が高度に見えるかもしれないが実際は姉さんが得点を重ねている。

圧倒的であった。

俺はただ、姉さんの姿に見惚れるしかなかった。

 

◆ 

 

第一セットが終了し真由美は外にいる八幡に視線を向ける。

八幡は真由美に穏やかな微笑を浮かべると真由美は暖かいものに包まれて自分の動悸が早くなった気がした。

真由美は注目を受けることには慣れているはずだ。

それこそ純粋な称賛を込めた視線や嫉妬、生々しい劣情を隠した視線にさらされることはあったが、先程の八幡から送られた視線は感じたことのないものであった。

父、泉美と香澄からは感じることの無かった視線だ。

 

憧れと親愛。これが八幡から受けた視線だった。

 

真由美自体八幡に対しては、「ちょっと捻くれた可愛い義弟」という想いを当初は抱いていたのだが、第一高校に入学してからは八幡に対するイメージが「普段はやる気はないがやるときはやる表情を見せるかっこいい年下の男の子」というイメージに変わっているのを本人は自覚はしていないのだろうが…

 

ハッとして今いる自分の状況を思い返す。

今からの3分間で水分補給やらをしなければならず、コートの外へ行かなければならないのだが水筒やタオルは八幡が持っておりずっとコートに立っているのは不審がられてしまうのだがあの想いを抱いてしまった真由美は非常に気まずい状態になっていた。

 

(もう!八くんのせいでめちゃくちゃになっちゃったじゃない!…ええい女は度胸!)

 

真由美は自分の足に前進を命じた。

 

 

「お疲れ姉さん」

 

「あ、ありがとう…」

 

「?どうしたの」

 

「う、うんなんでもない」

 

タオルと水分補給の水が入ったボトルを差し出した俺に対して姉さんは何故か他人行儀な感じかした。

きっと疲れているのだろう、顔も若干赤いしな。もしかして熱中症かもしれないしな、水分を補給して貰おう。

 

「はぁ…」

 

俺の顔を見て突然溜め息をつく。しかし何故か落胆しているような…相手の選手がそんなに手応えがなかったのか。

 

「お疲れさまって、まだ試合が終わってないわ。気を抜いちゃダメよ」

 

「いや、もう終わりだよ」

 

「えっ?」

 

「サイオン量の枯渇で第二セットに入ったところで直ぐに棄権するよ」

 

俺がそう告げると姉さんが向こうのチームが審判団と何か相談しているのが目に入ったようだ。

 

「魔法の連続使用によるサイオンの枯渇だな、ペースの配分を見誤ったんだろうよ。姉さんを相手にするのは力不足だった」

 

「良くわかったわね八くん」

 

「姉さんをずっと見ていればわかるよ」

 

その言葉を告げた瞬間に真由美の顔に仄かに朱が入った。

当然八幡はその事に気がつくこともなく。

 

「ほら、相手が棄権したよ」

 

審判団から相手選手の棄権が告げられ第一試合は姉さんの勝利で幕を閉じた。

 

「時間ももったいないし、テントにいって次の試合の準備をしよう。あ、姉さん体冷やすとあれだから上着」

 

「え、ええそうね(もう…さっきから八くんにペース崩されっぱなしなのだけれど…)」

 

「小町や、泉美、香澄も見てるだろうしやるんならとことん、完全勝利目指そうぜ。姉さん」

 

「ええ!八くんが調整したCADでお姉ちゃん優勝目指しちゃうわね。お姉ちゃんに任せなさい!」

 

俺は自分よりも年上の姉が自分よりも年下に見えてしまい微笑ましいと感じてしまった。

 

その後2試合目、3試合と着々と勝利を重ねていき危なげもなく姉さんは俺が調整したCADを駆使して対戦相手を寄せ付けず、全試合無失点・ストレート勝利で本戦女子クラウドボールの優勝を飾った。

 

 

姉さんと共に対戦会場から戻ると駆け寄ってくる3人の人影が現れた。

小町、泉美、香澄達は九校戦の開催日は平日で本来学校があるのだが、親族が参加して応援しに行く場合は公休扱いとなるらしい。

…俺もそれ中学時代にほしかったよ。

 

姉さんが二つある内の一つを優勝で納め、姉さんが優勝することを信じてやまない妹達は自分の事のように笑顔であった。

 

「お姉様、優勝おめでとうございます!」

 

「お姉ちゃん、優勝おめでとう!」

 

「真由美お姉ちゃん、やったね!」

 

妹達の笑顔に当てられ姉さんも笑顔だ。

 

「小町ちゃん達も応援ありがとうね。明日以降八くんの試合もあるからそっちの応援ね」

 

「まぁ、姉さんなら当然だな…。相手が可哀想になるレベルだったが…」

 

俺が告げると小町、泉美、香澄達は声を揃えて

 

「「「あー…」」」

 

と納得していた。

 

「今回はCADの反応が普段よりも良かったの。調整してくれたCADがなかったら優勝逃していたかも知れないわ、これも八くんのお陰ね。今度は八くんの番ね。姉妹で応援するから優勝するのよ!」

 

「お、おう…」

 

姉さんからの称賛に照れくさくなった俺は頬を掻いてそっぽを向くと小町、泉美、香澄達がニヤニヤして俺をからかってくる。

 

「あ、お兄様が照れていらっしゃいますわ」

 

「あ、兄ちゃん照れてるー!」

 

「お兄ちゃん良かったね。真由美お姉ちゃんから誉められて」

 

「あのなぁ…」

 

一言物申そうかと思ったが楽しそうに話しているのを見てしまい遮るのは憚られた。

 

じゃあ、まぁ家族の期待に応えるとしますかね…

 

 

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