俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

18 / 98
そろそろUAが100000行きそうなのビックリな作者の輝夜です。

登録してくださった皆様お待たせ致しました最新話になります。
なかなか八幡無双まで行けないのはスミマセン…。

コメント&高評価お待ちしております。

余談ですが小説を書く際に魔法科のアプリゲーを見たのですがその中に香澄と泉美のウエディング姿のカードを見掛けて更に「かわいすぎんだろ…」と思った次第です。

それではどうぞ。


蠢く悪意

九校戦三日目。

大会に入る前の早朝にほのかはベットから起き出し着替え始めた。

 

(んー…走りに行こう)

 

少女はググッ、と腕を上に挙げて走り込みがしやすい衣装に着替え、同室にいる雫を起こさぬように部屋から出た。

 

(はっ…はっ…!)

 

軍の施設なので走り込みに最適なコースがある。

幸いこの時間に走っている生徒はいなく、ほのかただ一人のランニングコースと化していた。

 

走り込みの最中に自分の今大会に臨む親友達に思いを馳せていた。

 

(深雪は総合力が圧倒的だし、雫も力押しでなんとか出来る魔法力がある…。私は二人ほど実戦が得意じゃないしここ一番に弱い…二人に追い付くためにも人一倍練習しなきゃ…!)

 

ほのかは努力家であった。

そんな思いを持ちながら走り込みをしている最中、道端の自販機に併設されたベンチにて一服している少年から声を掛けられた。

 

「ん…?ほのかか?」

 

声を掛けられてはっ、としたほのかは振り返り視線をそちらに向けると自分が好意を寄せ憧れを抱く少年が缶コーヒーを持っていた。

 

「八幡さん!」

 

「ずいぶん朝早くから頑張ってるな。早起きとか偉すぎだろ」

 

「八幡さんはなんでこの時間に?」

 

「ああ…目が覚めちゃってな。二度寝しようにも寝れなかったからここに来てマッ缶をあおっていただけだよ」

 

「そうだったんですね…(はっ…!今なら八幡さんと二人っきり…。深雪も雫もいない今ならチャンスかも…!)」

 

「じゃ、俺そろそろいくから」

 

「あ、ちょっと待ってください!」

 

「ん?どうした?」

 

ほのかはせっかくのチャンス逃してなるものかといった勢いで八幡を引き留める。

怪訝に思う八幡はほのかからの言葉を待つために待ってくれている。

 

ほのかは緊張する心で八幡に告げた。

 

「あの…!ランニング後のストレッチに付き合って貰っても良いですか…?」

 

「へ?良いけど…てか俺で良いの?」

 

「はい!八幡さんが良いです!」

 

「お、おう…」

 

(八幡さんにお願いしちゃった…!ちょっと大胆だったかな…?)

 

 

背中が汚れないようにマットを敷いて八幡に足を押さえて貰いながら腹筋をするほのか。

 

「11…12…んっ、すみません…手伝ってもらって」

 

「んあ?ああ、いいよ、やること無かったしな…。にしてもほのかはえらいな。競技期間中に練習をサボらないなんてな」

 

「ちょっとでもブランクが開くと体が鈍っちゃうような感じがして…」

 

「ほのかは真面目だな。まぁ、ほのかが参加するミラージ・パットもボードも魔法力と同等に身体バランスが重要になる競技だからな…それに見たところほのかはちゃんと体が出来ているみたいだし」

 

(っ…!なんか今全部見透かされたような感じがした…。あれ?八幡さんの目の色って金色だっけ?)

 

不意にほのかはメガネがずれた八幡の目を見てしまった。

その瞳は一瞬黒目の部分が金色に変わったように感じたのだが気のせいだった。

 

「この調子でコンディション維持しようぜ…。っ!」

 

「は、はい頑張ります!」

 

かばりっ、とほのかが上体を起こすとほのかは気がついてしまった。

 

(顔が近い…!)

 

勢い余って八幡のキスしそうな勢いで顔に近づいて八幡の顔を見たほのかは八幡の整った顔と全てを見通しそうな特徴的な瞳がほのかの瞳に映る。

ほのかの動悸が高まっていく。

 

ドクン…ドクン…ドクン…!

 

(うう…どうしよう!八幡さんに私の心音聞こえちゃう…!)

 

ほのかは急ぎ目を反らしたかったが目を反らすことが出来なかった。

しかし、不意に八幡が目を反らしたことでほのかは残念がったが取り合えず危機は回避された。

なぜ八幡が目を反らしたのはいったいどうしたというのか疑問に思ったほのかは八幡に質問してしまう。

 

「八幡さん?どうしたんですか?」

 

「いや…そのほのかのあれが…」

 

「あれ?…っ!は、八幡さんのエッチ…」

 

八幡の視線がどこを向いていたのか、それは、がばりっと起き上がり揺れたほのかの胸部へ集中していたことだった。

ハーフパンツに薄手のパーカーを着用していたほのかは運動したお陰で汗をかいて体のラインがくっきり映ってしまっていた。

腹筋のために頭に載せていた両手を胸の前に交差して抗議する形になった。

 

「八幡さん…?」

 

「は、はい…」

 

「わ、私だから許してあげますけど他の女の子のは見ちゃいけないですからね?」

 

「本当に申し訳ない…」

 

本当に反省しているようで少し落ち込んでいる。

それを見て恥ずかしかったが少し嬉しくなった。

ほのかが好意を寄せる八幡はちょっぴりエッチでだけどものすごくかっこいい男の子で自分を女の子として見てくれることがわかりなんだか嬉しくなってしまった。

 

ほのかから離れて八幡は

 

「じゃ、じゃ俺そろそろいくから…あ、ほのか」

 

「は、はい」

 

「これ飲んで。水分補給はしっかりな、あと体冷やすなよ。じゃっ」

 

「あ、八幡さん!…ありがとうございます」

 

走り去った八幡から手渡されたスポーツ飲料を大事そうに持っていたほのかであった。

 

 

俺は今日CADの調整仕事がなくフリーになっているのに何故か目が覚めてしまって変な時間に起きてしまい二度寝をして惰眠を貪っていた。

先輩達には悪いと思うが、続けて二度寝させて貰おうかと思ったがそれは部屋のドアがノックされ中断された。

 

「誰だ…?」

 

俺は少し覚醒しきっていない頭で考え怪訝に思ったがこの時間なら達也達は既に大会会場へ向かっているはずだ。

何故か俺は迷うことなく部屋のドアを開けるとそこには天使達がいた。

 

「お兄様?お迎えに上がりました」

 

「兄ちゃん迎えにきたよー!」

 

「お兄ちゃん今変なこと考えなかった?」

 

泉美、香澄、小町が俺を迎えに選手控えのホテルまでやってきていたのだ。

 

「おー迎えに来て…ちょいまち。ここ選手しか入れないはずなんだが?」

 

俺は疑問に思った。確かに妹達が迎えに来てくれたことで眠気は吹き飛んだがそれは問題じゃない。

なんでここにいるんだ?

 

その俺の疑問に泉美が応えてくれた。

 

「お姉さまから「八くん今日はオフだけれども流石に摩利の試合を見ないのは流石にあれなので小町ちゃん、泉美ちゃん、香澄ちゃん。八くんを起こしてきてあげて」と言っていましたので」

 

なるほどそれが理由か…っておいホテルの警備員は何をしてるんですかね?仕事しなさいよ。

確かに小町達は可愛いから顔パスするのはわかる。

俺だってそうするだろうからな。

小町ちゃん達が怪盗団なら盗みに来たときに喜んで差し出すだろう。

 

「いや、お兄ちゃんは連日のお仕事で疲れてるから…」

 

俺が会場に行こうとするのを拒否しようとすると

 

「お兄様は私達と観戦したくないのですか…?」うるうる…!

 

「兄ちゃん、僕たちと一緒に試合みたくないの?」うるうる…!

 

「へぇ~…お兄ちゃん小町達と一緒に観戦したくないんだ…」袖ぎゅっ…!

 

なんと言う策士…!!泉美と香澄の二人が悲しそうな顔をして瞳を潤ませながら上目使いで小町が俺の袖をちょいと摘まみながら悲しそうな顔をする…。くっ…だが俺は惰眠を貪りたい…貪りたいが妹達の思いを無駄には出来ない!例えそれが罠だとしても…!

 

「…わーったよ。行くから着替えしてくるから待っててくれ」

 

駄目でした…お兄ちゃんは妹達には勝てなかったよ…

小町、泉美、香澄の3名の頭を撫でるとえへへっ、と言った笑い声が聞こえてきたのでさっきのはやはり演技だったらしい。

将来は名演技派女優になれるだろうな…

 

妹達のジェットストリームアタックにより七草家の白い悪魔は撃墜されたとさ。

 

お兄ちゃんが可愛い妹のおねだりに勝てるわけねぇだろ…

 

妹達に部屋から連れ出され左右に泉美・香澄に腕を組まれ逃げ場はなく俺の後ろには小町が陣取っていた。

会場へ向かう最中道行く人々が此方を見て感想を述べていた。

 

「おい見ろよめっちゃ可愛い子いるぜ」

 

「うわ、ほんとだ!」

 

「メガネ掛けてる男の子もかっこいいなぁ~。第一高校の生徒かなぁ?」

 

「てか、美少女3人侍らせてるとか…ハーレムかこのやろう…羨ましいぜ」

 

「彼女かよ、羨ましすぎる」

 

「ショートカットの髪型の女の子は活発そうな美少女だしセミロングの女の子は清楚な美少女だし後ろにいる女の子は妹か?面倒見が良さそうな美少女だぜ。真ん中の男はフツメンじゃなくてイケメンじゃん。爆発しろ」

 

などなど、って最後のやつうるせぇ…

小町、泉美、香澄が美少女で最高に可愛いのは異論は認めない。

泉美と香澄の両名は八幡の両腕を更に密着してヒソヒソ声で話し始めた。

 

「香澄ちゃん、彼女ですって。フフッ…」

 

「泉美、彼女だって。エヘヘ…」

 

『彼女』という言葉に反応し嬉しそうにしている泉美と香澄。

そんなヒソヒソ話を聞いた俺は複雑な気持ちになった。

 

(小町、泉美、香澄も大きくなったら彼氏とか連れてくるんだろうか…あ、想像したら連れてきた彼氏を俺が開発した新魔法でこの世から消し去るわ。

そうしよう。

でも幸せになって欲しいからな…最低条件は俺より強くて経済的に部長クラスじゃないと無理だな…。

そもそも小町達に釣り合う男が現れるかどうか…)

 

その姿を後ろから見た小町は

 

「全く…、そういうとこはホントごみぃちゃんなんだから…見せつけられるこっちの気持ちも考えてよね~」

 

その呟きは兄妹達には聞こえなかった。

 

「あの…泉美ちゃん?香澄ちゃん?そろそろ離してくんない?お兄ちゃん逃げないから」

 

「ダメですよお兄様?逃がしませんので」

 

「ダメだよ兄ちゃん?連行しまーす!」

 

八幡の願いも虚しく実妹に監視され双子の姉妹に両腕を密着ホールドされながら連行されて観戦席に向かうのだが…

八幡は酷く後悔した。何故なら…

 

「八幡さん?なかなか起きていらっしゃらないのでお迎えに上がりましたのに女の子を侍らせてデートとは良いご身分ですね?」

 

氷のような、いや実際は出ていないがそんな感じがして笑みを浮かべているが背筋が凍りそうな程の凄みを感じさせる深雪と

 

「八幡。その女の子達だれ?」

 

いつものような無表情だがしかし俺には分かる。なんで不機嫌になってるんですかね?すみませんがこの子達は俺の妹なんですが…といっても信じてくれなさそうな雫と

 

「は、八幡さんがまた別の女の子連れてきてる…しかも双子…!あれ?でももう一人の子は妹かな…?」

 

いつも思うんだがほのかって表情豊かだよな…。なにかを勘違いしているほのかと

 

「八幡?中学生に声を掛けちゃ行けないって学校で習わなかったの?」

 

めちゃくちゃ言葉に棘があるエリカ達に妹達につれられてきた俺は責められていた。何でだよ…

 

 

「違うっつーの…。義妹達だって、彼女じゃねーよ。二度寝してたところに姉さん経由で起こしに来てくれたんだよ…。ほれ、挨拶しなさい?」

 

俺がその事を説明すると左右の泉美と香澄は不機嫌になり小町は「ごみぃちゃんはさぁ…」と言った反応を返してくれた。

何でだよ事実でしょうが。

不機嫌そうに俺から離れて改め直して姿勢を正して会釈して皆に挨拶をする。

 

「皆様初めましてお兄様の妹の七草泉美と申します」

 

「お兄ちゃんの妹の七草香澄です。よろしくお願いします」

 

「七草小町です!よろしくお願いします」

 

 

泉美は何時ものようにお淑やかなに、香澄は何時もと違いよそ行きの言葉遣いに、小町は何時ものような自然体だ。

が、しかし深雪や泉美達は笑みを浮かべてはいるが俺は背筋が薄ら寒くなり思わず魔法を使いそうになったが今は夏だ。

 

深雪達は泉美と香澄達を牽制しあっていたのは何故なんだ…?

 

俺がその光景をえぇ…?みたいな感想を思っているとその姿を見た小町が何かを察したのか深いため息をついていた。

 

「はぁ…。ごめんなさい皆さん。こんなニブチンが兄で…」

 

「「「あはは…」」」

 

深雪達は顔を赤くしてなにかを誤魔化して愛想笑いをしていた。

俺のどこがニブチンだと言うのか、人の悪意にはめちゃくちゃ敏感やぞ。

 

観客席の場所取りをしていた美月とレオに感謝を述べて座る。

再び左右に泉美と香澄が俺の隣に陣取っておりほのかと雫が不機嫌そうにしていた。いや、前に座った方が良くないか?

小町は俺の知り合い達と一緒に座り、俺の学校での印象を聞いているようだ。

あの皆さん変なこと小町に吹き込まないでくださいね…?

 

「お兄様、もうすぐスタートですよ」

 

深雪が気が付き声を掛けたのは遅れてやってきたのは達也だった。

そういや先に出ていたはずの達也がいなかったのが気になり前の座席で深雪の隣に座った達也に俺も声を掛ける。

 

「達也どこに行ってたんだ?」

 

「会長に捕まってな…手伝いをさせられていた」

 

「なんか…すまん」

 

「いや、お前が謝ることじゃないだろ。それより試合が始まる」

 

達也に促され俺はスタートラインを見るとバンダナでショートボブの髪を揺らし渡辺先輩はスタート体勢に入っていた。準備を告げる一回目のブザーが鳴り観客席が静まり返る。

一拍、間が空いて二拍目のブザーが鳴り響きスタートが告げられた。

 

瞬間。

 

俺の《瞳》の能力が渡辺先輩の未来の姿を捉え七校選手のオーバースピードと水面に潜む何かにより大ケガをする結果の映像が俺の脳裏に叩き込まれた。

 

俺は気付かれないように両脇に陣取る泉美と香澄に声を掛ける。

 

「泉美、香澄。お兄ちゃんお花摘みに行って良い?」

 

「お兄様試合始まっちゃいますよ?」

 

「兄ちゃん此処に来るまでに済ませてくれば良かったのに~」

 

「いや、君たちが急かすから行けなかったんでしょうが…」

 

「早く戻って来てくださいねお兄様」

 

「おう」

 

抜け出し自己加速術式を二重展開しその場へ駆け出した。

 

なんでこういう時だけ発動すんだよ…!頼むから間に合ってくれよ…

 

「全くお兄様ったら…」

 

「全く…兄ちゃんってば…」

 

泉美と香澄は八幡の行動に呆れていた。

八幡が用を足しているときに試合が開始され進行していく。

突如として悲鳴が別の観客席から聞こえ泉美と香澄の耳に入る。

七校の選手が大きく体勢を崩していた。

 

「オーバースピード!?」

 

誰かが叫んでいた。

 

七校の選手がフェンスにぶつかるだけならばそれだけだったが目の前には加速をしようとカーブに差し掛かった摩利が居たのだ。

 

背面から迫る気配に気が付き新たなる魔法を使い七校選手を受け止めようとしたがそれは出来なかった。

不意に摩利の水面が沈み混んだのだ。

摩利はサーフィンの上級者というわけではなくその小さな変化は発動した魔法を狂わせるのには十分な成果であった。

 

大きな悲鳴が上がった。

 

七校選手のボードが摩利へ直撃し激痛で意識が飛びそうになる。

 

(かはっ…!ま、不味い…!)

 

追い討ちを掛けるよう七校選手と縺れ合うようにぶつかりフェンスへぶつかり外へ飛ばされ地面に激突しそうになる

その光景を見た誰か達が悲鳴と驚きの声をあげる。

と思いきやコース外に現れた人影が飛び込みそれを見た観客席から驚愕の声が届く。

それは泉美と香澄がよく知る人物だった。

「一体誰だ!?」

 

「一校の制服を着てるわ!」

 

「お兄様!?」

 

「兄ちゃん!?」

 

その人影…八幡は右手を翳し魔法を発動させた。

 

魔法を発動させ地面にぶつかる前に摩利と七校選手を超重力の網で掬い取る形でふわふわと宙に浮いている。

 

摩利と七校選手はとっさに目をつむり来るはずの衝撃がやってこないことに不思議がっていると観客がフェンスを飛び越え地面に激突せず宙に浮いている二名の現状を目の当たりにし呆然としていた。

 

助け出されたことで摩利は気が抜けてしまいボードが直撃したせいか意識が朦朧として飛び込んだ人影に抱き抱えられる状態で意識を失った。

 

目が覚める。

 

「摩利、気が付いた?私が誰だか分かる?」

 

「真由美、何を言っているんだ…っ!」

 

目が覚めて起き上がり言葉を発した瞬間に自分が今どの様な状態になっているのかを思い至った。

 

(そうだ…私はボードの競技の最中七校の選手と接触してコース外へ…)

 

「ここは病院か…」

 

「意識に異常はないようね…良かった」

 

「あたしはどのくらい意識を失っていたんだ?」

 

「事故から数時間…お昼を回ったところよ。あっ、まだ起きちゃダメよ」

 

摩利は真由美にベットに押し戻されてた。

強い力ではなかったのだがそれほどまでに今は身体の自由が怠さを覚えているようだ。

 

「ボードが直撃して肋骨と右腕が折れていたのよ。今は魔法で繋いでいるけれど定着するまでは…」

 

「分かっているさ、決して瞬時に治癒するわけではない。大丈夫だ、そのくらいは弁えている」

 

力を抜いてベットに身体を預け真由美に摩利は問いかけた。

 

「それで?どのくらい定着するまで時間が掛かる?」

 

「全治一週間よ」

 

「一週間!?それじゃっ」

 

「ええ、ミラージ・パットも棄権ね。仕方がないけど…」

 

「そうか…」

 

摩利はその結果を受け入れるしかなかった。

レースの結果と他試合の状況を確認して更に落ち込む摩利は思わず悪態をついてしまう。

 

「あたしだけが計算違いか…」

 

「仕方がないわ、摩利の判断は間違っていなかったの。あそこで摩利が加速を止めなければ決勝に進めていたはずよ。だけど七校の選手は大ケガをして魔法師生命を絶たれていたと思うわ。その場にいて応急処置してくれた八くんも同意見ね」

 

真由美の話を聞いて摩利は先程の事故の際に助けてくれた後輩の事を思い出した。

 

「そうだ…八幡くんがあの時重力魔法を使ってくれなければあたしは更に大怪我していたかもな…」

 

「ええ、八くんが言うには「あの状況だと受け身が取れず更に怪我が酷くなっていたかも知れないっす」って。八くん昔から…生傷が絶えなかったから応急処置が得意なのよ」

 

真由美が八幡の応急処置の件を話したが、一瞬悲しい顔をしていた。

しかし摩利には気が付くことが出来なかった。

 

「…八幡くんにお礼を言わないとな」

 

「ところで摩利。体調は大丈夫そう?」

 

「ああ…少し頭が痛むが外傷的な事だろう。意識もはっきりしているしな」

 

「病院の先生も言っていたけど脳は損傷は見られないみたいだし…聞いちゃおうかな」

 

「?」

 

首を傾げている摩利の目を先程とはうって変わり真面目な表情になり覗き込む真由美。

 

「どうしたんだ一体?」

 

「あのね、摩利あの時…」

 

 

 

 

応急処置をして姉さんに渡辺先輩を預け達也達のいる部屋へ向かいノックをすると深雪がドアを開けてくれた。

 

「あ、八幡さん」

 

「よっ」

 

「お兄様、八幡さんがいらっしゃいました」

 

室内へ入るとそこには達也の他に上級生二名の男女がいた。

 

「五十里先輩すんません。わざわざ来てもらって」

 

「いいよ気にしないで?それより渡辺先輩は大丈夫だったの?」

 

「ええ、なんとか間に合ったので打ち身程度で済んだみたいっすから。七校の生徒も同様ですね」

 

「そうかい…なら良かったよ」

 

ホッと一息ついた五十里先輩は本当に清涼剤だわ…戸塚みたいな雰囲気あるよな。

 

「ほんと、無事で良かったわ。摩利さんが怪我したと知ったときは驚いたわ…」

 

五十里先輩の隣にいた千代田先輩が反応した。

ここにいる五十里先輩と千代田先輩は聞いた話によると許嫁同士らしい。

まぁ、「百家」の家系だからな…当然っちゃ当然だけれども…リア充でしたか…

 

「ええ、トイレに行く途中に気が付いて間に合って良かったっすよ。あ、そうだ。千代田先輩優勝おめでとうございます。流石っすね」

 

「ありがと。七草くんが摩利さんを救出してくれて大事に至らなかったとはいえ大変なことに巻き込まれちゃったからね。その分あたし達が頑張らないと!」

 

意外と言うか熱血系だなこの人…俺は苦手な部類だが悪い人ではないのは分かる。

会話を終了し達也が俺に話しかけてきた。

 

「八幡、お前はあの事故の事どう見る?」

 

「そうだな…達也と同じだと思うが『第三者の介入』があったと思う」

 

「それはどうしてだ?」

 

達也が俺に質問する。

 

「トイレに向かうときにふと会場を見たときに渡辺先輩のコースの水面の動きが可笑しかったからな。

体勢を崩して七校の選手と激突するのは目に見えてた…本当は目立ちたくなかったけど」

 

「八幡は水面の挙動が見えたのか?」

 

「ああ、意外にも《眼》は良いからな。あれは水霊が仕込まれていたんだろうが…それよか俺より美月や幹比古に聞いた方が良いんじゃないか?専門家だろ」

 

俺が達也に提案するとちょうど部屋のドアがノックされ開かれた先には俺が呼んだ方が良いと提案した人物達が立っていた。

先輩達に美月と幹比古達の紹介をして呼んだ理由を述べた。

 

「二人には水中工作員の謎を解いて貰うために来て貰った。

俺と五十里先輩で話していたことだが先程の渡辺先輩の事故は第三者による妨害を受けた可能性の検証を行っていたんだが…可能性として考えられるのが八幡が意見として出した「水霊が仕込まれていた」ということだ。美月と幹比古、まずはこの動画を見てくれ」

 

「分かりました」

 

「分かったよ」

 

動画を見る前に美月はメガネを外し幹比古は熱心に先程の映像を見ている。

動画の視聴が終わり達也は幹比古に問いかける。

 

「幹比古、特定の条件にしたがって水面を陥没させるほどの魔法は精霊魔法で発動可能か?」

 

「可能…と言いたいところだけどそんな数時間では精々侵入者を驚かせる程度の猫だまし位にしかならないね。余りにも準備期間が少なすぎる。この大会は警備が厳重の筈だ。変な痕跡があればすぐバレてしまうんじゃないかい?」

 

「そうか…美月」

 

「は、はい」

 

「美月は渡辺先輩の事故の際に精霊の活性は見えたか?」

 

「い、いえ。メガネを掛けていたのでそこまでは…。ごめんなさい」

 

「いや、気にしないでくれ。これは俺が悪かった」

 

項垂れた美月に達也が謝罪すると隣にいた美月に深雪が慰めを掛けていた。

俺は幹比古の発言を受けて精霊は関係しているのだろうと確信を得ることが出来た。

しかし、それだけでは渡辺先輩が事故に巻き込まれた原因の特定には弱い。

もう一つなにかを見落としている筈だ…と不意に動画に映る七校選手の状態を確認すると引っ掛かる部分があった。

何故此処で減速を掛けていないのだ、と。

本来ならばこのコースでは減速を掛けて曲がらなければならないところで逆に加速を掛けてその本人自体驚愕の顔をしているのを見て俺は確信に至った。

 

精霊魔法だけじゃなく要因はこの会場にもあったのだ。

 

そんな様子を見てか、達也がまたしても俺に問いかける。

 

「八幡お前はどう思う」

 

「そうだな…達也も同じ感想を持っているんだと思うが敢えて答えるか。『大会運営の中に工作員が居る』としか考えられないな。確証はないけど」

 

達也以外は信じられないといった表情をしているが俺はこれが大正解だと思う。

実際、エンジニアが調整したCADを最終的にチェックするのはこの大会の運営委員に引き渡されて行われるからだ。

 

その事を伝えると失念していた深雪が「あっ…!」と声を挙げ、その事に一様に「信じられない」という表情をして絶句していた。

 

「だが、手口が分からないのが厄介だが…」

 

「それが難点なんだよなぁ…」

 

エンジニアである俺と達也は警戒を怠ることが出来なくなった。

達也が担当する深雪、俺が担当する雫とほのか達の事を思えば必ず阻止し、その下手人を捕まえなければならないと心に誓った。

 

 

三日目の成績は男女ピラーズ・ブレイクで優勝、男子ボードが3位に女子ボードが3位という成績を納めていたが、第三高校が優秀な成績を納め接戦になっており影響を与えないとされる新人戦も本選がこのような結果なので一校の大会優勝に関して大きく変動する要因になってしまう恐れが出てきた。

 

俺と達也は明日の新人戦へ備え、担当する選手のCADを調整していたのだが、達也の端末に姉さんからの呼び出しが入る。

良い時間だったので作業を中断し達也は第一高校に割り当てられたミーティングルームへ向かうべく作業室から退出した。

 

俺は先に部屋に戻り明日の新人戦に向けて寝ることにした。

 

(明日は雫のスピードシューティングだな…。CAD弄った下手人の捜索と一校大会優勝の2つのタスクをクリアせにゃならんのは辛い…。やだ、八幡社畜街道まっしぐらじゃないの。

幸い、雫に『あの魔法』を使って貰えば良いしな…)

 

翌日達也から聞かされた話で深雪が本戦のミラージ・パットに出場することが決まって俺は頭を抱えてしまった。

 

(やっべぇ…愛梨に「応援に行くわー」ってあのとき言っちまったんだよなぁ…どうっすっかな…)

 

深雪を取れば愛梨が怒るしまたその逆も然り愛梨を取れば深雪が怒る…

またしても俺のやるべき事が追加されたのが決定した。

 

勘弁してくれ…

 




雫とほのかのCAD担当がしれっと八幡になっている…めっちゃ抗議したんだろうけど二名のお願いに折れて仕方なく引き受ける姿が目に見える。

八幡もやる気はないですが引き受けた仕事は最後まできっちりとやり遂げる人間ですのできっと頑張ってくれる筈でしょう…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。