何だかんだでちょくちょく日間ランキングに乗ってるのを見ると皆さんこの駄文を見てくださっているんだなと感動しました。
評価とコメントいただけるように頑張ります…。
相も変わらずの誤字脱字報告申し訳ない。
九校戦…まだ終わりませんね(笑)
本当に長い…。書いてて楽しいですけど読者様的にはどうなんですかね?
そしてまたも独自理論が展開しますので苦手な人はご注意をば。
それでは八幡無双開始どうぞ!
『クラウド・ボール』は全試合が終了し『アイス・ピラーズ・ブレイク』は男女共に一回戦が終了した。
そして夕食の際はその高校の一同が会し、本日の健闘と結果を報告し合う時間であった。
無論本日のチームメンバー話題の中心は男女ピラーズでやってしまったというか俺と深雪達な訳で…
今晩の食卓?は見事に明暗がわかれてしまっていた。
その理由は語るまでもなくだが男子の方だ。
その女子の集まったテーブルに俺と達也が紅一点?で居た…というか連れ込まれた。
「すごかったわよねぇ深雪の『アレ』」
「
「ありがとう」
「あれも達也さんのお陰なの?」
達也のお陰…そう言われた深雪は嬉しくなり頬を赤らめながら答えた。
「ええ勿論お兄様なくしては出来なかった魔法よ」
「ええ~!やっぱりそうなんだ、すごい!」
「そう言えばほのかの奇襲作戦と雫の作戦も七草君の提案なんでしょ?」
「えへへ~。そうなんだ~」
「うん、そうだよ」
「いいなぁ~」
「エイミィも結構決まってたよ!一回戦目ははらはらしたけど」
「乗馬服にガンアクション、カッコ良かったよ」
「雫もカッコよかった~!振り袖素敵だったし、相手に手も足も出させずに追い詰めていく戦いぶり。クールだったよ~!」
クラウドの結果は準優勝と六位入賞と「まぁまぁな結果」に終わったが男女のアイスピラーズは俺ともう二人いたものの三校の一条に当たり敗退、もう一人も敗退した。それに比べると女子の戦果は深雪、雫、明智さんと3人が初戦を突破したという好成績にお祭り騒ぎとなっていた。
女子達がはしゃぐ姿を食事を取りながら、男子のテーブルから追い出された俺と達也は見守っていた。
因にだが何故俺たちが女子のいるテーブル付近で食事を取っているのかと言うと、結果が振るわない一科の男子チーム(一部)から女子の試合で結果を出している達也を疎む生徒に追い出されてしまい、仕方なく俺は達也と一緒に居るというだけの話だ。
「七草君!雫のあれって「共振破壊」のバリエーションなんでしょ?」
唐突に話しかけてきた女子が居た。
正直顔も覚えていなければ「居たっけ…?」となるような関わりの薄い女子だったが、普段の対応をしてしまえばこの朗らかな雰囲気はぶち壊しになってしまうので驚かせないように普通に反応した。
「ああ、雫がうまく使いこなしてくれてほっとしたよ」
素っ気ない返答であったが十分なものだったらしく次々と女子生徒に質問を投げ掛けられる。
「やっぱり起動式は七草君がアレンジしたの?」
「雫がスピード・シューティングで使用した魔法もオリジナルなんでしょ?」
「ほのかの魔法もオリジナルって聞いたよ!」
矢継ぎ早に質問されて返す暇もな…って俺は聖徳太子じゃないんだから順番に聞いてくれます?
「それより七草君のピラーズで見せた魔法、本当にすごかった!」
一人の女子生徒がそう言うと全員が頷き特に深雪、雫、ほのかが力強く頷いている。
「そそ!深雪の
「調整も出来て魔法もすごいなんて凄すぎ…あの魔法「インデックス」に登録されてもおかしくないレベルだったよ」
「それにあの衣装カッコ良かった!なんか殺し屋みたいでドキドキしちゃった…///」
「流石は第一高校の『
一人の女子生徒が言った奇妙な言葉に引っ掛かり聞き返してしまう。
「ちょっと待ってくれ…なんだそのあだ名」
「え?七草君知らないの?さっきのピラーズの試合で観客席の誰が言ったのか知らないけど、七草君の調整技術と魔法師としての実力に黒いスーツを着用した姿から連想して『
おい誰だよそんなこっぱずかしいあだ名を付けやがったやつは…ブラック・○ジシャンかよ…。
そいつ絶対厨二病患ってるぞ病院いけ。
しかし、チームの女子達は盛り上がっておりなんとも言えない気分になったが称賛されていることを考えると居たたまれない気分になり別段特別な事をしたわけではないのだが…と思ってしまう。
しかしあまり卑屈な言葉を使えば角が立ってしまう…。
言葉を使わないといけないな。ってか俺はいつから人の顔色を伺うような性分になってしまったのか?
てか待って?殺し屋って言ったか?
「その二つ名は無視するとして…まぁ、俺はあくまでも裏方だから俺が担当した選手は調整がうまく嵌まっただけだと俺は思うし、俺の試合の際は元々魔法理論で再現できるかもってやつを実際に試しただけだから大したことはしてない…と思うんだが」
俺がそう言うと一年女子は朗らかに笑い「謙遜すぎ!」とか「実際に結果だしてるし凄すぎだって!」と称賛の言葉を貰いなんだかむず痒くなってしまった。
俺が誉められる光景を達也は「仕方がないな…」と微笑を浮かべ、深雪達は何故だか後方腕組でうんうんと頷いていた。
その反応は一体なんなんだい?深雪さん達や。
「一年女子のテーブルは良い雰囲気ね」
「そりゃほぼ上位独占だからな。特に達也くんと八幡くんが担当しているところはな」
別のテーブルに居た真由美と摩利は一年女子のはしゃぎ様を見てコメントしていた。
「あの二人が居れば本当に安泰だわ~。そう言えば一年男子は達也くんに見て貰うのに抵抗があるんだっけ?」
「そう、それで女子の担当になったのが功をそうしたんだがその代わり…」
再び一年女子のテーブルに戻る。
「最初は男の子の調整なんて…と思ったけど今はほんと男子に感謝してる」
悪意は無いんだろうが、無邪気な笑みを浮かべるチームメンバーの発言に笑い事では済まない人物もいるわけだ。
ガタッ、と荒々しい音を立てて一人の男子生徒が立ち上がった。
「不愉快だ!俺は帰る!」
「おい、森崎」
制止の声を振り向きもせず食べ終わった食器を配膳口へ向かい食堂をあとにした姿を見て俺は言葉にすら出さなかったが呆れていた。
森崎はスピードシューティングに出ており流石に普段から達也に噛みついていてそれなりの実力はあったらしいが二位だった様で持て囃されている俺と達也が気にくわないのだろう。
そう言うやつは何処にでもいる。
出ていく様子を女子達も「気にさわったのかなぁ…」とコメントしていた。
「七草君、達也くん!みんながお礼を言いたいって!」
明智さんが俺と達也に声を掛けてチームメンバーが一斉に俺らのところまで来て感謝の言葉を掛けていた。
いや、だから達也ならまだしも俺は何にもしてないからね?
競技をやったのは君たちで…って聞いてないか。
そんなことを思いつつ食事の時間は過ぎていった。
◆
(八幡様…)
三校の利用時間となり先に会場へ向かおうとしていた愛梨。
しかし先ほどの試合の影響で愛梨自身頭のことが八幡で一杯になっていた。
「おーい愛梨?」
「ダメだ。さっきのヒキオの試合で完全に心奪われちゃってるし」
「うーん。重症じゃな」
「へ?な、なにかしら」
「お主先ほどからボーッとしておったぞ。いくら八幡殿に恋慕を抱いておっても歩きながらは危ないぞ」
そう言われた瞬間四十九院はめちゃくちゃ否定するんじゃろうなと思っていたが帰ってきたリアクションは全く正反対であった。
「え、ええ。ごめんなさい…」
捲し立てるように否定したのではなくおしとやかだったのだ。
そのいつもと違う光景に三浦達が反応する。
「愛梨めっちゃしおらしくなってる…え、可愛すぎんだけど。愛梨ぎゅっとして良い?」
「完全に乙女の顔になってるわね」
「ダメじゃなこれは…」
呆れる二人と母性が爆発した一人がいた。
第三高校の食事の時間には少し早かったが到着すると食事会場から第一高校の面々が現れるとそこには今第三高校女子の間で話題となっている人物が出てきたのだ。
それは優美子がここにいるということを知ったときからずっと謝りたかった人物が様々な美少女に囲まれていることに若干のイラつきを覚えながらその人物にしかわからないあだ名で結構なでかい声で呼びつけた。
「ヒキオ!」
唐突に発したあだ名に双校が「ヒキオ…?」という反応をしたが優美子はお構い無しだった。
向こうを向いていた少年がピクリと反応しこちらに顔を向けると怪訝な反応を見せ「誰お前…?」と思っているのだろうがそんなことは構いもせず優美子はズンズンと近づくと八幡の手を取って観葉植物やベンチのある休憩スペースへ連れ込んだ。
「ちょっと来るし!」
「お、おい!なんだよ一体!?」
その咄嗟の行動に双校の女子達が黄色い悲鳴をあげていた。
「え、なになに!?」
「告白かな!?」
彼を慕う一校の女子は一瞬ムッとしてその後を八幡を慕う第一高校の三名と優美子を追うために他の三校女子に断りを入れて追いかけたのであった。
金髪のギャルっぽい少女に手を掴まれて休憩スペースに連れ込まれた俺は咄嗟のことに反応できずにいた。
目の前にいる少女が何故昔、一人の少女から言われていたあだ名である「ヒキオ」と呼んでいたのか気になった。
引きこもりではないのだがそのあだ名で呼ぶのはたしか一人だけだったはずだ…
取り敢えず目の前で俺を見つめる少女に言葉を返そう。
てかなんで観葉植物の物陰に隠れてんの、深雪さん達よ。助けてくれ。
「えーと…何処かであったっけか?」
俺は目の前の金髪ギャル…長いな(仮)ギャル子さんとしよう。
ギャル子さんに俺の疑問を投げ掛けるとめちゃくちゃ不機嫌になっていた。
「はぁ…ヒキオ、あーしの事忘れた?まぁ、あんたがいじめられる原因を作った一因担ったし忘れたいのも無理ないか…」
ギャル子さんがその事を言った瞬間俺は思い出した。
総武中学での思い出したくない忌々しい記憶で俺が更にいじめられる原因の一因となった「嘘告白事件」で、俺に告白を成功させないでほしいと依頼してきたメンバーのリーダーである金髪の縦ロールのやたら面倒見が良かった少女、「三浦優美子」本人であることを。
「おまえ…三浦か」
目の前の三浦の表情は俺が思い出したのか安堵の表情を浮かべていた。
「やっと思い出したし」
「…なんで三浦が三校にいるんだ?」
「総武を卒業する前に実家から戻ってこいって言われて三校のある本家に帰ってきたわけ。うちはほら「三浦」だからさ。ヒキオがいなくなって総武中はいじめ問題明らかになって大変なことになってたから…」
「…」
三浦の話によると俺があの「比企谷」の実家から妹とともに絶縁された後、戸部達が責任を感じたのか俺のいじめの証拠を教育委員会に提出し、いじめに荷担していた魔法特進科の生徒を退学処分や推薦を全て取り消され総武中学校のブランドは地に落ちて三浦や一色は転校して難を逃れたようだった。
雪乃、結衣達が俺のせいで迫害を受けていないことを三浦から聞いて俺はほっとしていた。
「あんたがいじめられた原因があーしにもあるからずっと謝りたかった…。謝罪して許される訳じゃないけど…」
三浦が俺に向けて後悔の念と深いお辞儀を見せて謝罪してきた。
「本当に御免なさいヒキオ…あーし達が依頼を持ち込まなきゃいじめがひどくなかったかもしれないのに…本当に御免なさい」
正直俺はこの謝罪をどう受け取って良いか分からなかった。
あのときの忌々しい記憶は既に過去のものでどうでも良くなっているからだ。
だがあの三浦が自身のせいでないのに頭を俺に下げていることに若干の罪悪感と苛立ちを覚えたので声を掛ける。
「…気にしちゃいねぇよ。俺があんとき変なことをしなきゃここまでこじれる事なんてなかっただけだ。それにこれだけが原因じゃなくて、一色の生徒会長の件もあったからな…。
そもそも俺が数字落ちの家系だったことも輪を掛けて悪化の理由の一つだっただけだし三浦は悪くねぇだろそもそも。
元はと言えば戸部と海老名さんがくっついてくれてりゃ問題はなかったんだ。
だから…気にするな。中学の事はここで終わりだ」
棘のない言葉で頭を下げている三浦に頭を上げさせた。
俺の言葉を聞いた三浦は安堵したのか先程の緊迫した面持ちから解放されてホッとした表情になっていた。
「ありがとうヒキオ…。これで雪ノ下さん達に…」
「三浦。雪ノ下達に俺の事は言わないでくれ」
「は?どうして!雪ノ下さんも結衣もヒキオにあいたがってるのに」
訳がわからないと言った表情をしている。
三浦的には雪ノ下達に俺が見つかった事と謝罪を受け入れたことを報告したいのだろうが俺はもう関わりたくないのだ。
悪い意味ではない。
俺は今「七草家」の人間で雪乃や結衣は元々非魔法師の人間だ。
十師族の人間は反魔法団体に狙われやすく、そもそも俺がブランシュ日本支部を壊滅させた張本人であるのでそんな人間が非魔法師の人間に関わることを知られたら悪どいことを考える連中から人質に取られてしまう可能性があると俺は考えた。だったら俺を別人にして貰っていた方が都合が良いだろうとの考えだ。
その考えを三浦に伝えると悲しそうな表情をして抗議をしたが、俺が折れなかったので三浦も渋々納得してたようで
「わかった…。あーしからはなにも言わないことにする」
「悪ぃな」
「それだとあーしが悪者みたいじゃん…。でも雪ノ下さんと結衣はヒキオの事めっちゃ心配してたことは覚えておいてよ」
「わーったよ…」
「それじゃ…あ、ヒキオ!」
「あ?まだあんのかよ」
三校の連中のところへ戻ろうとした瞬間こちらに振り返り意味の分からんことを言ってきた。
「愛梨、泣かせたらゆるさないかんね!」
「は?」
「ちょっと優美子!?」
優美子が言った「愛梨を泣かすな」という言葉が出てきたのだろうか…。
顔を紅くしてぷりぷり怒る愛梨が観葉植物の物陰から優美子と入れ違いで俺の前にやってきた。
え、なに俺が殴られるパターンですかこれ?
「は、八幡様、先程の優美子の言ったことは気になさらずに!」
「お、おう」
そういってズイッと眼前まで近づいて来た。
いやめっちゃいい匂いするしめちゃくちゃ近いんですけど…!
「こほん…それと、ピラーズの一回戦突破おめでとうございます…」
「あ、ありがとな…あ、悪いな愛梨一回戦目から見に行けなくて。新人戦クラウドの優勝おめでとう。
愛梨の実力なら優勝できるって信じてたけどな」
俺の表情をみた愛梨の表情が紅くなりぼうっとした表情を浮かべていた。
熱でもあるのだろうか。
「あ、ありがとうございます。それより後ろにいらっしゃる司波さんが此方を穴が空くぐらい見ているのですが…」
深雪が穴が空くぐらい…?ってヤバイ!!
「八幡さん?どう言うことですか?午前中お姿が見えないと思ったら相手校の応援をしていたんですね?」
にっこりと氷の微笑を浮かべ干渉力が強すぎて俺と観葉植物に霜がついてしまう。
深雪さんや観葉植物は10度以下になっちゃうと良くないからやめようね…って俺も霜焼けになっちゃうんですが。
「(やはり司波さんも八幡様のことが…相手は強敵ですが負けませんわ!頑張るのよ愛梨!)凄まじい干渉力ですわね…初めまして司波深雪さん。私は第三高校一年、一色愛梨です」
愛梨は冷気を出す深雪に物怖じせずに凍りついた八幡を解凍しつつ深雪へ挨拶をする。
「先程のピラーズの試合拝見しました。凄まじい魔法力…、この場でお会いできて良かった」
八幡を自分の気の昂りで凍らせてしまったことを愛梨のお陰で気がつき内心反省しながら愛梨の言葉を聞いていた。
俺は愛梨の発言を聞いて意外だなと感じた。
「あなたは私たちの世代の魔法師でトップクラスの実力を誇りますわ…だからこそ私は全力を尽くし貴女との勝負(八幡さんの事と試合)に勝利して見せますわ」
愛梨が一瞬俺を見て深雪へのライバル宣言をした。
それを物陰に隠れていた雫とほのかは
(凄い緊張感…?って絶対一色さんも八幡さんのこと狙ってるって!うう…八幡さんまた女の子落としてる…)
(ふーん。深雪にライバル宣言…というか一色さんも八幡のこと好きだよね?全く八幡ってばまた女の子に…。これはギルティ)
深雪は愛梨の言葉の意味を理解したのか頷き愛梨に手を差し伸べる深雪。
「ええ、そうですね。もちろん私も貴女に負ける気はありませんのでお互いに(八幡さんの事と試合)全力を尽くして戦いましょう」
その返答に闘争心が燃え上がる愛梨。
(流石には動じないわよね…。私は貴女を試合で圧倒し八幡様の心を射止めて見せる!それでこそ私が倒すべき好敵手よ!)
深雪の差し伸べた手を握り返す愛梨。
若干握る手が強まったのは気のせいではないだろう。
「いい戦いをしましょう!」
「ええ」
互いに薄い微笑を称えているが何故だろう俺の背筋が寒気を覚えるのは…
「それでは司波さん、私達は食事へ…」
「ええではまた」
「八幡様…ではまた」
深雪へは薄い微笑だったが俺には満面の笑みで俺に挨拶を交わして夕食会場へと三校のメンバー共に向かっていった、四十九院がこっちをみてにやにやしていたのが気になったが。
「八幡さん?お話いたしましょう?」
俺はそんなことを気にする間もなく深雪達からのお説教を受けることになった。
◆
同時刻、横浜中華街。
とある中華料理店の一室で男達が会談をしていた。
「新人戦は第三高校が優位ではなかったのか?」
ここでの会話は日本語ではなく英語で行われている。
「せっかく渡辺選手を棄権に追い込んだのに、結局このままでは第一高校が優勝してしまうぞ」
明らかに日本人ではなく外国人だ。
「本命が優勝したのでは我々胴元の一人負けだぞ」
「今回のカジノは大口の客を集めたからな…。支払いの配当は決して安くはない。今期のビジネスで大きな穴を空ける事になるだろう。そうなれば…」
男達が深刻そうに顔を見合わせる。
「…ここにいる全員が本部の粛清対象になるだろう。下手をすればボスが直々に手を下してくるかも知れない」
重い沈黙が続く。
「死ぬだけならまだ良いが…」
ぼそりと一人の男が呟いた言葉に全員が恐怖した。
◆
九校戦六日目の新人戦三日目。
今日は男女の開始タイミングが逆になる。
先に女子ピラーズを行い男子が後で競技を行うのだ。
男子の第一試合は俺から始まるので雫達の試合を見られないのは残念だが、終わり次第すぐさま向かおうと決意した。
俺の今日やるべき仕事は雫のCADの調整とバイタルチェックを行って、俺は俺で試合を行わなければならないので今日もやることが一杯である。
うーん働くのってたのし!くはあるわけねぇよ…?
やだ八幡社畜街道まっしぐらだわ。
嘆いていても仕方がないので着替え朝食を取ったのちピラーズの控え室に向かうとしよう。
深雪達からお説教を受けたせいで未だに足が痛いのだ。
正座させられたからな。
今日も穏やかに1日が過ぎるかと思ったがそんなことはなかったです。
ピラーズ・ブレイクの会場へ達也と俺は向かっていたが、控え室の前に二人の男子高校生が立っていた。
一人はイケメンでもう一人もイケメン…なんだ?俺への当て付けなのだろうか?そうに違いないほぼそうだ(過激派)。一人の方は達也と俺と身長は殆ど変わらないがルックスは向こうが上だった。
もう一人はというと身長は低いが此方も整った顔立ちで貧相な体つきはしていなかった。
向こうも此方に気が付いたのか俺たちの方へ歩いてきた。
街とかで歩いてくるときに向こう側から人が歩いてくるのって緊張感を覚えるのは俺だけだろうか…。
「第三高校一年、一条将輝だ」
俺たちと身長の変わらない男子生徒が口を開いた。
初対面の人間を相手にするには横柄な態度だなと思ったがこういうやつは皆から持ち上げられ…というか素質のある人間なんだろうなと思った。
リーダーシップを取る、リーダーとして振る舞うことが嫌みにならないのも自然な奴だなと、そしてその情熱に溢れた瞳は俺を敵視していた。
「同じく第三高校一年の吉祥寺真紅郎です」
小柄な方は丁寧な口調だが挑発的な眼差しで俺と達也を見て古風な名前を名乗った。
古畑○三郎みたいな名前してんなお前…
名乗られたからには名乗るのが礼儀だが俺は正直面倒くさいと思った。
しかし達也が反応する。
「第一高校一年、司波達也だ」
「第一高校一年、七草八幡だ。で?何の用だ?一条の「プリンス」もそっちの「カーディナル」も試合前で暇じゃないだろ?」
悪意はない。
しかし此方に好意的ではないのは丸分かりであえて言うなら剥き出しの闘争を此方にぶつけてきてるのが分かったため、尚更俺の心はうんざりしていた。
絡まないで欲しいので俺は敢えて間違った二つ名で呼び、突き放すため刺々しい口調をぶつけたのだが…
「せめて「クリムゾン」はつけてくれよ七草。んん…俺だけじゃなくてジョージの事まで知っているとは話が早いな」
自分で言うのは流石に恥ずかしいのかばつの悪い表情をしていたがそんなもん知らん。
そんな二つ名をつけられるのが悪いんだ。材木屋じゃあるまいし…
「しば・たつや…聞いたことの無い名前です。ですがもう忘れることはありません、恐らく司波君と『
「お前もそのあだ名で呼ぶのか…」
俺がそのあだ名にうんざりしているところを無視し達也が反応する。
「若干十三歳にして基本コードのひとつを発見した天才少年に『天才』と評されるとは恐縮だが…確かに非常識だな」
たまに思うんだが達也って言い方きついよな。
え?お前もだって?そんなまさか。
俺らが控え室の外で会話をしていたのを聞き付けたのか深雪と雫が顔を出して来た。
「お兄様?」
「八幡?」
深雪が顔を出した瞬間一条の顔つきが憧れの人物を見るような表情へと変わったので俺は「あ、こいつ一目惚れしたな」と感じたのを達也も思ったのか
「深雪、先に準備しておいで」
「雫も先に準備しといてくれ」
「分かりました」
「分かった」
一緒に顔を出した雫を無視するわけにはいかないので達也と同じ言葉を雫に掛けた。
深雪ははじめから一条が部屋の外になど居なかったかのように自然で完璧な無視で雫はというとガン無視を決め込んで敵意を現して控え室へ戻っていった。
そろそろ帰ってくんねぇかな…
終わらせるために俺が惚けている一条へ声を掛ける。
「『プリンス』さんよ。そっちもそろそろ試合じゃねーのか?いいのかよ、ここで油売ってて」
俺のイヤミ全開の発言に苦笑している一条の姿をとらえた。
しかし直ぐ様気を取り直し此方を見据える。
「ああ。俺もお前も時間がある訳じゃないが俺がここに来たのは七草、お前に言っておこうかと思ってな」
「あ?」
「七草。同じ十師族として『決勝戦』で会おう」
一条はその瞳に自分が勝利して見せるという確固たる意思を湛え此方を見ている。
雫のように『準決勝』で会おう、と言った言葉ではなく俺が必ず準決勝を勝ち抜き互いに最終戦で戦おうと言った発言だ。
俺はきっと無意識で人の悪い笑みを一条に向けて意趣返しの言葉を投げつける。
「…ああ。『決勝戦』で待ってるぜ一条」
そう俺が返すと俺の意図を汲み取ったのか挑戦的な笑みを浮かべていた。
…やっぱこいつイケメンでムカつくな。
俺と一条の会話が終了するのを見計らって吉祥寺が話しかけてくる。
「…僕たちは明日モノリスコードに出場します」
「なんだ?もう明日の試合の話か?気が急いてるんだな吉祥寺。今日のピラーズはお前のところの一条が勝つとでも言いたげだな?」
普通の返答をしたと思ったが威圧感があったらしく吉祥寺が言葉に詰まっていたが知らん。
確かに吉祥寺は男子新人戦スピードシューティングで優勝し、一条は十師族で今回の大会優勝候補筆頭だ。
吉祥寺が突然モノリスの事を話してきたがモノリスにエントリーしてくるのは当然と言えば当然だった。
こちらはメンバーの中に森崎が居るんだよなぁ…かわってくんねぇかな、達也とあともう一人は…レオか幹比古だな。うんそれが良い。
「ええ、ピラーズは将輝が勝つと信じていますからね。だからですよ」
吉祥寺は自信満々に信頼して一条が勝利すると相手校の俺と達也の前で喧嘩上等と言わんばわかりの宣言をしたのだ。
「君はどうなんでしょうか?」
そういって吉祥寺は達也を見てその言葉を掛けた。
その言葉には様々な意味を込められていたが、達也はそろそろ時間が惜しいと思い簡潔に述べた。
「俺も八幡が勝つと信じてる。それと俺はモノリスには出場しない」
「そうですか…。僕らの『一条』と君達の『七草』どちらが勝利するか楽しみです。出来れば選手の君とも勝負してみたかったですが…まぁ、無論両方の試合で勝つのは僕たちですが」
明らかな喧嘩を吹っ掛けてきているので八幡は吹き出しそうになっていたが達也はこの二人が喧嘩を吹っ掛けてきているのを思い出し内心苦笑していた。
「時間を取らせたな司波、七草。次の機会に」
そう告げて一条と吉祥寺は八幡と達也の横を通りすぎていった。
◆
「お兄様、結局彼らは何をしにいらっしゃったのでしょうか?」
「八幡。彼らは何しに来てたの?」
「わりぃ、着替えるから詳細は達也に聞いてくれ」
ノックして控え室に入り俺は急いで更衣室でピラーズの衣装へ着替える。
あいつらが話しかけてくるもんだから着替えの時間無くなりそうなんだが?あ、一条は制服で出るからそのままで良いのか…うーんギルティ。あいつは決勝で必ず仕留める。
俺はそそくさと更衣室へ向かった。
その間に着替えが終わった深雪と雫がいて達也へ質問してきた。
「偵察…と意思表明かな。八幡にだが…。あまり意味はないと思うが」
達也は先程のやり取りを当たり障りの無い言葉を選んだ。
試合前に余計な情報をいれたくなかった達也だったが達也の返答に深雪と雫は顔を見合わせてクスッと意味ありげな笑みを浮かべた。
「宣戦布告だと思いますよお兄様」
「うん。八幡だけじゃなく達也さんにもだと思うけど」
妹と雫が何を言いたいのかさっぱり分からず頭に疑問符を浮かばざるを得なかった。
「信じていらっしゃいませんね?」
深雪の拗ねた眼差しを向けられても納得が出来ない。
「いや、だってな…八幡ならまだしも俺は選手ですらないし彼らはこの九校戦という枠を越えて既に魔法師の世界で評価され確立している。あの二人が敵視するとは思えないんだが」
その言葉に深雪と雫が深くため息を付いていた。
「…お兄様?どれだけ他校の生徒がお兄様の技術と戦術に対抗意識を燃やしておられるのかもう少し客観的にとらえるのがよろしいかと?」
「深雪の言う通り達也さんはくどいぐらいの自信を持ったほうが良いよ?達也さんは八幡と同じく注目され意識されているのを認識したほうがいいよ」
二人から呆れるような諫言が飛んできたが当の本人である達也は未だに納得できていない。
「しかしだな…仮にだ、八幡と同じく技術で実績を出していたとしても俺は八幡のように試合にでているわけでもないし…」
その発言に深雪と雫が待ったを掛けるように達也にこの場に八幡がいたら悶絶するであろう言葉を聞いて達也は目を白黒させていた。
「はぁ…お兄様の謙虚さも度を過ぎてしまえば嫌みに聞こえてしまいますよ?…八幡さんには言うな、と釘を刺されていましたが仕方がありません。
八幡さんは「達也ほど魔法の知識と実力を兼ね備えている奴を知らない」とお兄様の実力を認めていらっしゃるんですよ?」
「うん。八幡が達也さんこと「唯一信頼できる親友」って言ってたのを聞いたから間違いないと思う。それに達也さん八幡は『七草』の人でしょ?つまりは十師族に認められてることだと思うな」
八幡が達也に対しそんなことを思っているとは露知らず親友である人物に対し少しむず痒くなったと同時になんとも言えないしかし決して悪い気分ではなかった達也であった。
◆
着替えが終わり更衣室から出ると深雪達が此方を笑みで見て達也はというと此方をなんとも言えない表情で見ていた。
なんだよ…この衣装が似合わねぇのは知ってるよ…
何かを話しているのは聞こえたが内容はよく分からなかったがまぁいいか。
「最終調整をしちゃおうぜ達也」
「ああ」
「ええ」
「うん」
達也が頷き深雪と雫の方に視線を向けると二人も頷いた。
俺は男子ピラーズのために自身と女子ピラーズに出る雫の調整を、達也は深雪の為に調整を開始した。
◆ ◆ ◆
深雪が猛烈な氷炎を操り三度相手の陣地を蹂躙しその神秘的な見た目で観客を魅了し、雫が二つの魔法を使用して相手選手の戦意を削ぎながら戦い、英美が普段の生活で意図せず抑えていた力を発揮し想像するのは常に最強の自分の姿で三校選手を突破して女子新人戦ピラーズ・ブレイクは一位から三位まで総なめにしていた。
その一方で男子ピラーズ・ブレイクの方はというと…
『女子新人戦ピラーズ・ブレイクは九校戦史上類を見ないハイレベルな試合内容でした!
なんと、一位から三位までの出場校が全て第一高校というとてつもない結果となってしまいました!
この結果を誰が予想できたでしょう!しかし、此方も目を離すと後悔すること間違いなしの一戦!
対戦カードはこちら!』
そういって巨大モニターに映る二名の男子生徒の表情写真。
『今大会の優勝筆頭候補第三高校一年『一条将輝』選手!得意魔法『爆裂』で相手選手の氷柱を砕いてきた別名『クリムゾン・プリンス』!その圧倒的な魔法力で今大会1本も一条選手の氷柱は砕かれておりません!今度の一戦でもパーフェクトゲームなるか!?』
アナウンサーの煽りに会場が熱気に包まれる。
一方会議室では真由美達が八幡の決勝戦の様子を見ていた。
「すごい歓声ですわね…」
「泉美当然でしょ。兄ちゃんと一条の息子の試合だよ?盛り上がらないほうがおかしいって」
「まぁ、どれだけ一条さんが強かろうがお兄様の勝利は揺るぎ無いですわね。ね、お姉さま」
「うーん。いくら八くんが強くても一条家の《秘技》とこの競技はすこぶる相性がいいからね…苦戦は間逃れないかもしれないわよ?」
「それは何でなの真由美お姉ちゃん?」
小町が真由美に質問をすると回答してくれた。
「八くんの《アブソリュート・ゼロ》は対象物の熱量を奪い取って、つまりマイナスエネルギー、冷気に変換して其をプラスエネルギー、つまり熱量へ変換して対象物へ投射する魔法なのだけれど、負を正へ変換するのは非常に難しくて今までの相手だと八くんから見たら相手の魔法の展開速度がかなり遅いのも相まって通用していたけど相手はうちと同じく十師族の家の子よ。小手先の技術では倒せない、倒されちゃいけないのよ」
「そっか……でもお兄ちゃんはしっかりと『奥の手』用意してると思うよ?だってお兄ちゃんだし」
真由美から説明されて本来であれば不安になるかと思いきや、あっけらかんとした小町に一瞬毒気抜かれる真由美達だったが笑いが溢れた。
「そうですわね。小町の言うとおりお兄様ですもの。切り札は切っても『奥の手』は隠しておりますわ」
「兄ちゃんが素直に自分の手の内を明かすとは思えないもんね」
「小町ちゃんの言う通り、八くんの事だからとんでもない秘策を持ってるかもね」
姉妹達の会話が続くなかアナウンスが八幡の事を説明し始める。
『そして今大会で初めてにして圧倒的な存在感と実力を発揮した今大会のダークホース!第一高校一年『七草八幡』選手!まさかの一回戦目と二回戦目の魔法を切り替えて使用し我々の度肝を抜いたその魔法力とCADの調整技術については右に出るものはいないのか!?今大会で付いた二つ名『エレメンタル・ブラック』の名に恥じない実力です!一条選手と同じく相手選手からの魔法で氷柱が1本も崩されておりません!』
「お姉さまと同じく二つ名付きましたわねお兄様…」
「兄ちゃんの二つ名もお姉ちゃんみたいでめちゃくちゃかっこいいよね!『
「ううん?なんでもないわ香澄ちゃん(香澄ちゃんはそういうの好きな子だったのね…)」
(お兄ちゃん材木屋さんの事思い出してるんだろうな…)
「あ、お兄様が出てきましたよ!」
『両者入場です!』
地面から櫓が競り上がり選手の存在を確認した観客席は各自応援している選手の名前を呼ぶ。
割合でみると一条の方が多いかもしれないが七草と呼ぶ声も非常に多い。
黒と赤。
八幡と将輝。
『七草』と『一条』
両者が互いの存在を確認しホルスターから互いの拳銃型のCADを引き抜く。
お互いの手に獲物が握られ観客席が静まり返る。
また別の場所で烈が大会関係者席にてその一戦を興味深そうに見ていた。
「ほう…やはり八幡くんが一条の倅と戦うか。
私の《パレード》を見抜いたときは驚いたがその実力はたまたまではなかったようだな。
先の試合で見せた《アブソリュート・ゼロ》も目を見張るものがある。
しかし八幡君は不思議な少年だ…血が繋がっていないはずであるが弘一のような策を巡らせるのが得意であり彼が纏う気配…まるで四葉の人間のようだ…しかし彼は『八幡家』の血筋…
この試合『一条』と『七草』のある種の代理戦争のようなものだ…どちらに転んでも事が動くだろう…
ふっ…一度八幡君とは茶でも飲んで話してみたいのう」
八幡は七草の養子で血は繋がっていないがその実力は『万能』呼ばれる七草家に負けず劣らずの実力を示してしまっている。
その実力は義姉である真由美すら越えているかもしれない。
弘一の周りの人間が次期七草当主据えることを考えることに納得できる判断材料になるだろう。
この一戦で弘一が望む結果になるやもしれんな…と烈は思った。
会場にいる八幡と将輝の姿を見据える烈は興味津々と言った様子であった。
アナウンスが入る。
『第一高校七草八幡選手 対 第三高校一条将輝選手 男子新人戦アイス・ピラーズ・ブレイク最終戦の火蓋が気って落とされました!』
フィールドの両サイドのポールが赤く点灯し両者共に微動だにしない。
ライトが黄色に変わり開始を告げる青へ変わった瞬間両者のCADが持つ手が同時に相手陣地の氷柱へ向けられる。
瞬間
凄まじい衝撃が会場内を襲う。
発動タイミングは八幡のほうが早かった。
一条が悪態をつく。
(くっ…ジョージが解析した通り早すぎる!七草…なんてやつだ!)
八幡は一条の速度に感心していた。
(やっぱり今までのやつとは違うな一条…。これは『もう一丁』必要か?)
将輝が一条家の秘技である《爆裂》を使用し八幡の陣地にある氷柱内部の水分を狙い気化させ爆発させ倒壊させようとする。八幡も《アブソリュート・ゼロ》を発動させ氷柱の温度を奪い去るが、それでも水分全てと完全には出来ず、八幡側の氷柱にヒビが入っていた。
逆に一条の陣地の氷柱は八幡の《アブソリュート・ゼロ》によって逆に補強される形になり1本もヒビが入っておらず八幡が奪いさった冷気を熱に変換するたったホンの数秒で決着が付いてしまいそうだった。
『開始と同時に両者が得意とする魔法の応酬です!
発動タイミングほぼ一緒だったが七草選手のほうが一歩早い!しかし一条選手の『爆裂』が八幡選手の陣地の氷柱にヒビが入ってしまっている!』
急かすようなアナウンスに観客席がざわつく。
本来であれば選手は動揺したり焦ったりするものだが八幡は微動だ似せずただ《アブソリュート・ゼロ》の熱変換をサングラスを掛けた瞳で見据え待っている。
微動だにしない八幡を見た将輝は確信して勝負を仕掛けた。
(この勝負…もらった!)
『爆裂』の出力が上がり更に八幡の氷柱のヒビが広がる。
が、しかし。
(さて…そろそろいいか)
八幡が熱変換を終えた八幡の魔法《アブソリュート・ゼロ》の火球が将輝の陣地の氷柱へ殺到し蒸発させたが1本が辛うじて残ってしまった。
(ちっ…干渉して逸れたか…)
しかし既に八幡の氷柱も何本か粉砕されており残す本数は1本。
将輝は既に別の氷柱へ対象を変えており八幡の残り1本を粉砕するために《爆裂》を行使する。
八幡も一条の陣地に残る最後の氷柱を焼き払うため《アブソリュート・ゼロ》の火球が襲う。
その光景に観客席と会議室の一部が息を飲んだ。
両者最後の1本が砕かれる…となった時。
八幡はもう片方の手で素早くホルスターからもう一丁の《CAD》を引き抜き自陣の氷柱へ魔法を発動させた。
互いの魔法が炸裂し会場が煙で覆われる。
『お互いの魔法が炸裂し会場は深い煙に覆い隠されてしまいました!果たして結果は!?
おおっと!霧が晴れてきました…』
先に霧が晴れ始めたのは将輝の方で根本が残った最後の氷柱が姿が表した。
(俺の勝ちだ…七草)
勝利を確信し構えていたCADを下ろす。
対して八幡は構えを解いていなかった『二丁』のCADを構えたままで互いの陣地の霧が同時に晴れる。
そこに残っていた氷柱の状態に将輝と観客席は驚愕の表情を浮かべていた。
八幡の陣地にある氷柱が
『設置されたままの綺麗な状態で1本』たっていたのだから。
「なっ…!?」
勝利を確信し構えていたCADを下ろしていた将輝に八幡の魔法を止める術はなかった。
(油断大敵だぞ一条。相手が『奥の手』を切っていないのなら気を抜くべきじゃないな?)
「終わりだ」
根本だけになっている将輝の氷柱を先程引き抜いたCADで《詠唱破棄》で発動させた《重力爆散》で粉々に打ち砕いた。
終了のブザーが鳴り響く。
『試合終了!なんと言うハイレベルな試合…本当に高校生同士の試合だったのでしょうか!?男子新人戦アイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦の勝者は第一高校七草八幡選手の勝利です!』
アナウンサーが勝利者の名前を告げると観客席から大歓声が上がった。
八幡は引き抜いた二丁のCADをホルスターへ差し込むと右手を軽くあげると歓声が更に大きくなった。
◆
「奥の手は最後までってね…」
隠していた(ちゃんと運営には通してある)CADのストレージに格納されていたのは対三高の生徒用の魔法でたぶん俺にしか使えない防護魔法だ。
無系統防護魔法『
俺の莫大なサイオンを対象物を指定して術式解体の鎧を纏わせる防護魔法で平たく言えば戦車に装備されていたりする相手の攻撃を爆発させることで威力を相殺させる
めちゃくちゃ便利かと思うがそうではなくこの魔法自体燃費が凄まじく悪い。
凡そ《グラムデモリッション》数十発分に相当し、発動させるタイミングを誤るとただサイオンの無駄遣いになるという汎用もへったくれもない魔法なのだ。
一種の《キャスト・ジャミング》に該当するだろう…が先述した通り化け物じみたサイオン量がなければ発動することすら出来ない。
(まぁ、うまくいって良かったわ)
櫓がおりて表彰台へ向かうと一条がこちらに向かって歩いてくる。
「流石だな七草。氷柱に仕掛けた魔法は一体なんだったんだ?」
「企業秘密だ」
俺がそっけなく答えると一条は残念そうな顔をしたが教えてやる義理はない。
「モノリスでは勝たせてもらう」
「勝つのは俺だ」
そういって言葉を切り表彰台に登らされ俺が男子ピラーズで一位を取り終了した。
◆ ◆ ◆
午前の試合が終了し、第一高校の天幕はお祭り騒ぎとなっていた。
女子新人戦ピラーズ・ブレイクは一位から三位まで第一高校が独占、先に試合が終了した男子新人戦ピラーズ・ブレイクも八幡が大会優勝筆頭候補の「一条」を破り優勝した為だ。
そんな中、女子ピラーズ・ブレイクの三選手である深雪・雫・英美と調整担当である達也と試合が先程終わった俺が本部ではなくホテルのミーティングルームへと招集されていた。
「八幡さん優勝おめでとうございます!」
「八幡ならきっと一条の御曹司を倒せるって信じてた」
「流石だな八幡。お前なら一条に勝利するって思っていたぞ」
俺の姿を見かけるなり称賛の声を掛ける深雪達が駆け寄ってきた。
深雪と雫は俺に抱きつかんばかりに接近してきたので手で制して止まってもらった。
距離感バグってるからな、君たち?
「こらこら深雪さん達?八くんの健闘を称えるのはいいけどいちゃいちゃしないでね?時間に余裕がある訳じゃないから手短に用件を言わせてもらうわね」
呼び出したのは姉さんだった。ホテルのミーティングルームにはただ一人。
抱きつきそうな勢いの深雪達を強めの言葉で牽制していた。
不満そうな深雪達と姉さんの間で火花が散っているような幻覚が見えたが気のせいだろう。
「今大会で決勝リーグを独占するのは当校始まって以来の快挙です。司波さん、北山さん、明智さん本当に良くやってくれました」
三者三様の動作がみられたが三人はお辞儀をして姉さんの賛辞に答えていた。
「大会委員会から当校へ提案がありました。決勝リーグの順位に関わらず付与されるポイントは同じになりますから決勝を行わず、三人を同率優勝にしてはどうか、と」
三人が顔を見合わせて、達也は皮肉げに口を歪ませ俺は「そう来たか…」と呟いた。
建前では同時優勝させたいようだが本音は大会運営本部が楽をしたいのが丸見えだからだ。
「あの…」
先程の試合でサイオンが枯渇し病人の様になっている雫に支えられている英美が手を挙げて姉さんに話しかける。
「私は言われる前から…棄権しようかと思ってました…」
「それはそうよね。じゃあみんなも提案を受け入れるってことで…」
「待ってください!」
姉さんが「いいわよね?」と言い掛けたところに待ったが入った。
「雫?」
「北山さん?」
待ったを掛けたのは雫だった。
「私は…」
口を開いた雫から明確なる意思表示がなされた。
「深雪と戦いたいと思います」
強い意思が込められた瞳で真由美をみて、隣にいた俺の瞳をまっすぐに見返した。
「深雪と本気で戦うことが出来る機会なんてこの先何回あるか…、私はこのチャンスを逃したくないです」
「北山さんはそう言っているけど深雪さんはどう?」
問いかけられた質問に深雪は一瞬考える素振りを見せてたが答えは決まっていたようだった。
「雫が私と戦いたいと思ってくれているなら私はそれを断る理由はありません」
深雪の発言にほっとする雫。
「分かりました。では明智さんは棄権するとして、司波さんと北山さんで決勝戦を行うことになると大会運営にそう報告しておきます。試合は午後イチで行われることになりますので今から準備を進めておいたほうがいいですね」
姉さんの言葉に反応して一礼をしたのは達也でそれに続いて深雪と雫、あわてて英美がミーティングルームから退出する。
残ったのは俺と姉さんだけになった。
「やっぱり深雪さんの事だから北山さんの提案を受け入れるわよね…」
「そりゃ、深雪も雫も負けず嫌いだからな…そうなるって。しっかし女子が総なめで独占するって…今年の一年おかしいんじゃないか?」
「それを言ったら八くんもでしょ?あ、そうだ…」
とことこと近づきそう言い俺に笑顔を見せた。
「八くん優勝おめでとう!…お姉ちゃんは八くんが勝つのを信じていたからね」
嬉しそうな表情で俺の大会の結果を誉める姉さんの笑顔にチョッとドキッとした俺は少し視線をそらす。
「まぁ…姉さんや泉美や香澄に小町も見てくれてたりするからな、それに父さんも見てるだろうし、無様を見せられなかったし」
姉さんの「素直じゃないんだから…」という呟きが聞こえたが知らん振りをした。
姉さんが思い出したかのように俺に話しかける。
「それよか八くん大丈夫?試合が終わってすぐに雫さん達の調整あるけど大丈夫?」
「まぁ…ぶっちゃけると同率優勝してくれたほうが俺的には楽だったんだが…雫が深雪と戦いたがってるんだから止める権利は俺には無いわ。
俺は選手だけど調整技師だからな。雫が全力を出せるようにするだけだし。それに…」
「それに?」
姉さんが首をかしげた。
「実質俺と達也のCADの調整技術を競い会う決勝戦になるだろうし、俺は楽しみなんだよな…俺と達也の調整がどちらが上なのかって」
「八くんってそう言うところ男の子よねぇ~、もちろんお姉ちゃんは八くんと北山さんが勝つって信じているからね!」
女子のピラーズは結果的に深雪と雫の決勝…ではあるが裏では俺と達也、《ファントム》対《シルバー》の戦いが行われようとしていた。
「さぁて…俺も準備するとしますか…」
「頑張ってね」
姉さんに背を向けてミーティングルームから雫のいる控え室へ向かう。
俺は無意識に口元を釣り上げ凶悪な笑みを見せていた。
「さぁ、達也。《ファントム》と《シルバー》の戦いを始めようぜ…」
その独白を聞き取れるものはいなかった。
原作を見ると新人戦の男子勢弱くないっすかね…?
それと原作を見るとこの段階でほのかの波乗りが終わっている気がする…。
ほのかの活躍書いたほうがいいかな?
おや?会場の様子を見ていた老師が意味深な発言を…?
女子のピラーズは実質八幡対達也《ファントム》対《トーラスシルバー》の形になっちゃうよね?
三校は泣いてよいと思う。