俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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最新話です。今回から『夏休み編』になります。

何だかんだ休みがとれたので比較的早い投稿になります。

コメント&高評価ありがとうございます。
執筆での励みになります。

今回は…タイトル詐欺かも知れないですけどよろしければご覧ください。

それではどうぞ。


『夏休み編+1~八幡の過去/乙女達の恋心』
夏と言えば東○特撮かプ○キュア映画だよな?


九校戦が終了し第一高校は遅めの夏季休暇…つまりは学生達が待ち望んだ「夏休み」が始まった。

しかしながら俺は《ナハト》で新販売する新たなCADを片手間に開発しつつ今後必要になるであろう自分の『装備』を作成していた。

 

俺は夏休みに入った一週目くらいから《ナハト・ロータス》へ入り浸り新型のCADに熱を入れていた。

 

…ぶっちゃけると初日から開発を再開したかったが後述の理由でそれは阻止された。

初日は九校戦でのほのかへの罪滅ぼしでデートをすると言う何が楽しいのだろうか?罰ゲームをしていたのだが終日ほのかの表情は笑顔だったり赤面したりと忙しかった。

 

一応の罪滅ぼしでほのかヘアアクセサリーを送ったのだが喜んでいたのでこれで約束は果たされたと思いたい。

 

戻ってきた次の日には再開したかったが丁度アイスが食いたくなって《次元解放》を使用してアイスを買いにコンビニへ向かったのだが、そこで事故があって別世界に飛ばされた時になんだかよく分からないが《星武祭》とやらに巻き込まれて優勝した結果《聖遺物》のような鉱石を手に入れ《刀藤流》と呼ばれる剣術も習得してきたので結果オーライと言えるだろう。

 

戦闘の幅が増えることはいいことだからな。

 

『お義兄さんの事忘れませんから…!私の事を忘れないで下さいね…?』

 

別れの際に懐かれた女の子に泣きつかれたときはどうしようかと思ったが…。

 

まぁそれはさておき、向こうに三年近くいたはずなのだが此方の世界へ戻ってきたときには次の日の明け方だったので時間の流れが遅くなるという発見もあった。

 

別の世界と繋がることも発見できたのがありがたかった。

座標軸は分かっているので今度遊びに行こう。

 

「っと…出来たぜ…。」

 

《ナハト》の工作室で俺は開発を終えた《レッドリッター》の正式開発モデル《グレイプニル》のハンドルを握りアクセルを吹かす。

エンジンからのエキゾースト音が開発室に鳴り響いた。

 

正常に動作を確認したので俺は機体から離れ、腕に付けた端末に音声入力コマンドを打ち込む。

 

「『タイプシフト・グレイプニル』」

 

その瞬間大型自動二輪が変形した。

 

機械の塊である自動二輪が人形に変わりヒューマノイドタイプのキャストにトランスフォームする。

まるで人間のような滑らかで柔軟な動作を行っていた。

それこそ八幡が使用する《四獣拳・朱雀乃型》を真似た動きをしてる。

八幡の近接格闘術をプログラミングしているので誤差無しで動いている。

 

次のテストで確認するためにダミー人形を数十体を《グレイプニル》の周りに配置し戦闘テストを行う。

ランプが点灯しダミー人形が動き始めると《グレイプニル》は装備しているペイルライダー『サーペンテイン』二丁をマニピュレーターで左右の手で引き抜き、単一魔法《エアブリット》でダミー数十体を打ち倒していった。

 

何故この機体が魔法を使えるのかは先述した特殊な鉱石に由来している。

たしか…《星武祭》で手に入れた『なんとか・マナダイト』って呼ばれる特殊鉱石だったか…?

まぁ細かいことはさておくと、その石のお陰でこいつは俺のサイオンをパスすることで魔法を機械でありながら行使できているのだ。

 

こいつ1機を無尽蔵に動かすことなど造作もない。

 

ある種の《奇跡》が起きていると言っても過言ではない。

 

数分戦闘訓練を行い無傷で終了し俺が満足行く結果となった。

 

「よし…ここまでは想定内だな…。」

 

佇む《グレイプニル》に目をやってもう一つの《特殊コード》を打ち込む。

 

「『タイプエンド・グレイプニル』」

 

人形のバイクは真なる姿を表した。

 

 

「八幡様、雫さまよりお電話にございます」

 

「え、雫からですか?」

 

《ナハト・ロータス》の工作室での作業をしていたのが土曜日で、一段落し実家に戻ってきた時には既に日付が変わっており日曜になっていた。

 

シャワーを浴びてテレビをつけるとテレビ○日での伝統朝7時からのスーパーヒーロータイムが始まっており丁度女児向けの変身ヒロインモノのアニメ…つまりプリ○ュアが放送されていた。

…てか初代って今から90年前からやってんだよな…すげぇ、因みに何代目のだっけ?92代目か?

日本の総理大臣並みに歴史紡いでやがる…お前達の歴史って美しくないか?

 

因みに今、来年高校生になろうと言う泉美と香澄と一緒に番組を見ていたのだが、実は二人は元々この作品のファンだったらしい。

泉美と香澄は小さい頃配信サービスで見た作品のキュ○グレースとキュ○ベリーに憧れていたらしい。

俺は因みに初代様…ブラックとホワイトが好きだ。あの徒手空拳の戦闘スタイルは参考になる。

そういやウチの泉美ちゃんと香澄ちゃんの声ってこの2キャラの声してんだよな…気のせいか?

てか、ウチの泉美ちゃんと小町の声が稀に被るときがあるんだよなぁ…一緒に喋ると分からなくなる。

 

そんなことを考えているうちに保留の時間が延びていることに気がつき急ぎ名倉さんから俺の端末を受けとり通話する。

 

『もしもし八幡?』

 

「おう雫か?久しぶりだな。」

 

『私も居ますよ八幡さん。』

 

『わ、私も居ます!』

 

「深雪とほのかも…久々だな。」

 

『お久しぶりです、八幡さん。』

 

『はい!』

 

現在のテレビ電話は数十名での会話が可能で俺が入るまでガールズトークを楽しんでいたのだろう。

連絡をしてきた雫が本題を切り出す。

 

『うん、久しぶり。所でなんだけど…海に行かない?』

 

「はぁ?」

 

『あ、もしかして…』

 

『うん、そう。』

 

『?』

 

「?」

 

俺と深雪は雫とほのかの会話に置いてきぼりだ。

あれか?熟年夫婦とかの『なにも言わんでも分かる』とかいうあれか。「ツー」「カー」なのか。

 

『ほのかに雫…一体何の事?』

 

「全く分からん。」

 

その事についてほのかが説明をしてくれた。

 

『えっとね、小笠原に雫のお家の別荘があるの。』

 

『えっ?雫のお家ってプライベートビーチを持っているの?』

 

「すげぇな雫…お嬢様みたい…ってお嬢様だったわ。」

 

『うん…』

 

俺が話すと雫が妙に恥ずかしそうに答えていた。

最近資本家の周りで無人島に別荘をたてるのが趣味になっているらしい。

口汚いことが知性の現れだと勘違いしているマスゴミたちは「自然破壊の成金趣味」と揶揄されるがそれは全くの勘違いであることをここに記しておこう。

実際には国土の有効活用であり他国からの土地売買を食い止めているのが実情で、政府からも国土保護のためにそれが推進されているのが実情なのだ。

 

実際にうちの『七草家』も小笠原諸島の無人島のかなりでかい島を買い取り、レジャー施設兼別荘を建てていること思い出した。

 

…国内の魔法師は外国へ出航することは許されていない。

これは国の法律によって決まっているからだ。

『魔法師は国の重要資源』であるからで外国への流失を防ぐための措置なのだろう。

 

そんなことを思い出していると雫が会話を続ける。

 

『父さんが、『お友達をご招待しなさい』って。どうやら八幡に会いたいみたい。』

 

『今年は伯父様が一緒なんだ…。』

 

雫の発言に若干引きぎみになっているほのかは昨年の事を思い出しているのかもしれない。

友達と一緒に遊んでいるはずなのに親同伴はきついよな…。

 

その件については雫が補足説明をする。

 

『安心して。顔を見せるのは最初だけ。なんか、仕事が山積みみたいで数時間空けるだけで精一杯みたい。』

 

ほのかの怯える表情は一気に晴れやかな物へと変化した。

一体何が会ったのか気になったが一旦それは頭の片隅に置いておいた。

 

『それで…どう八幡?』

 

どう…とは恐らくこの別荘に行かないかという誘いなのだろう。雫達の期待の視線が画面越しに突き刺さる。

昔の俺なら難癖をつけて断るだろうが何だかんだで付き合いのあるこいつらの誘いを断るのはなんだが後味が悪かったのだ。

俺は少し考えたあとで結論を出す。

 

「わーったよ…俺が行っても良いなら行かせてもらうよ。」

 

『やった!』

 

『うん!』

 

『是非に!八幡さん。』

 

「お、おう…(俺なんかが行っていんだろうか…?あ、達也たち来るよな?)」

 

◆ ◆ ◆

 

「えーっ!?兄ちゃん雫さんたちと海に行くの!?」

 

「お兄様?私達を置いてお楽しみに行くつもりですか?」

 

「いきなり何よ…てかさっきの通信聞いてたのかよ。」

 

雫たちとの通信を終えてリビングへ戻ると少し怒りぎみの俺の天使達(姉妹)が待ち構えていた。

 

「香澄ちゃんの言うとおりですわ。夏休みに入ってからというものお兄様はお仕事場に向かわれてしまわれますし…」

 

「泉美の言うとおり!お兄ちゃんは時間があればCADいじってるし…この間の光井先輩とのデートの事も許してないんだからね!!」

 

「いや、あれはデートじゃなくて罰ゲームだからな?」

 

「本当に言ってるんですのねこのお兄様は…?」

 

「本当に言ってるよこの兄ちゃんは…。」

 

二人は本当にあきれた表情を俺に向けている。

一体俺が何をしたって言うんだよ…

 

俺がその事で「うげぇ…」となっているときに更なる援軍が現れた。特に妹たちの方だが。

 

瞬間背後から負のオーラが顕現した。

 

「へぇ…八くん光井さんとデートにいったんだ…」

 

「げっ…姉さん。」

 

背後を振り替えるとそこには姉さんがいた。

若干のハイライトが消え掛かっている姉さんを見るのはマジで怖いからやめて欲しい。

 

「八くん?私達もついていくわ。」

 

「いや誘われたのは俺…。」

 

「い・い・わ・よ・ね?」

 

「わーったよ…はぁ…」

 

「泉美、水着を見に行くよ!」

 

「はい香澄ちゃん!いきましょう!お姉様も一緒に!」

 

「ええ!行くわよ!泉美ちゃん、香澄ちゃん!」

 

こうして姉さんたちは水着を買いに出掛けてしまった。

超至近距離まで接近した姉さんに押し切られ何故だか俺の方が家族同伴の海水浴へ出掛けることになったのだった。

姉さん達がいなくなったリビングで俺は呟いた。

 

「どうしてこうなった…。」

 

因にだが小町は期末考査での筆記試験で赤点ギリギリだったので俺が先生になり家庭教師を受けることになっており…

 

『うえ~ん…筆記試験が憎いよぉ…どうしてお兄ちゃんは得意なのよ!』

 

『小町は昔っから筆記が苦手よなぁ…なんでなん?』

 

『うう…小町が聞きたいよ!』

 

と言ったような流れがあったのだ。

本当に昔から小町は筆記…というより魔法理論が苦手なのだ、あいつはどっちかと言うと「考えるより感じろ」と言った直感タイプの人間だからな…小町は俺よりも《四獣拳》の精密さならば上だからな…特に《無窮・麒麟乃型》を無傷で捕縛すると言う事なら俺より小町の方に軍配が上がるからな。

 

次の俺が作ったテストで70以上取れるなら一緒に連れていこう…流石に可哀想すぎる。

 

 

「悪い、世話になるわ。」

 

「お世話になります雫先輩!」

 

「お邪魔するわね北山さん。」

 

「うん、ようこそ。小町ちゃんに七草先輩。八幡、大丈夫だけどほのかと深雪がね…。」

 

「…」

 

「ふふふ…」

 

「あはは…」

 

「…(笑みを浮かべているが冷気を出して威嚇)」

 

「どうして香澄と泉美はほのかと深雪と仲良く出来ないんだ…。ほのか困ってるし…」

 

俺は頭を抱えた。

雫に追加の人員(姉さんと妹たち)を連れていくことになったのだが案の定バチギスしていた。

因にだが小町はテストの点がよかったので連れてくることが出来た。

俺と姉さん、小町、泉美と香澄の四名だ。

この人数をOKしてくれた雫の懐の深さに感謝した。

 

因にだが俺たちが今いる場所は空港ではなく港…というよりもクルーザーが停泊しているマリーナに来ている。

しかもよりによって千葉に来るとは…もう二度とこの場所には立ち寄らないと思っていたのにな。

 

「うちもクルーザーを所有はしてたけど北山さんのお家の船も大きいわね…。」

 

隣にいる姉さんは北山家所有の白亜のクルーザーを見上げて感想を述べている。

 

「うちクルーザーなんてあったんだな。…そういやウチってお金持ちでしたね。」

 

「八くんが知らないのは無理ないわよ。何せ乗ってたのって私が小さいときにお父さんとお母さんに乗せて貰った時以来だから…。」

 

「蓮美さんだっけか。あってみたかったな。」

 

「蓮美さんかぁ…あってみたかったな。」

 

「そうね…きっとお母さん八くんと小町ちゃんのこと気に入ると思うわ。」

 

隣でクスり、と姉さんは笑うがその表情には若干の顔に陰りが見えた。

しかし、それは一瞬にしていつもの表情に変わり微笑していた。

 

七草蓮美さん…姉さんと泉美と香澄の母親で父さんの妻に当たる人物だ。

俺が初めて七草家に招かれた時に遺影が置いてあったのだがとても優しそうな姉さんをもっと大人びた雰囲気にさせた美女の写真が飾られていた。

父さんに聞いた話だと姉さんが4歳ぐらいの時に亡くなったそうで原因は実験中の魔法行使による事故だそうだ。

泉美と香澄は物心つく前に亡くなってるので記憶がない。

それもそれで可哀想な気もするが仕方がないことだろう。

 

…そうだなもし蓮美さんが生きていたのなら挨拶をさせて貰いたかったな。

 

「そうだな…俺も蓮美さん、母さんにお礼を言いたかったよ。『俺と小町を七草家に迎え入れてくれてありがとう』って」

 

「うん。そうだねお兄ちゃん。」

 

俺が何気無しに言ったのが姉さんに聞こえたのか近づいてきた。

 

「そうね八くん」

 

姉さんの格好は白のワンピースに頭をすっぽりと覆う麦わら帽子を被っていた。

俺のパーソナルエリアに易々と踏み入れてくるが嫌だとは思わなかった。

九校戦以降なのだが何故か姉さんの距離感が近い気がするが気のせいか?

 

「あの…姉さん近いんだけど…」

 

「姉弟なんだから近くたって良いでしょ?」

 

「あのなぁ…。」

 

姉さんに近づかれるのは嫌いではないが流石に…。

俺はさらっと姉さんと距離を取りしんみりした空気を変える為話を変更する。

…そのとき姉さんが一瞬残念そうな表情をしていたが気のせいだろう。

 

「そういや、大型自動二輪と普通免許は持ってるけど一級船舶はもってないな…。」

 

「動かしてみたい?」

 

「出来るならね。」

 

「因にだが私の系列会社に船舶免許の学校があるんだがどうかね?」

 

姉さんとの会話をしているときに不意に男の声が割り込んできたのを確認して声のする方に体を向けるとそこには『船長』がいた。

 

ギリシャ帽に飾りボタンのついたジャケット、ご丁寧にアンティークパイプを加えている。

 

船長というには少し恰幅が足りない気がするがそこはご愛嬌だろう。

…船長というよりかは『水兵』と言った方が良いだろうか?

水兵って言うと俺は大昔にあったアニメのほうれん草食って腕がEXレッドキングみたいになるやつだ。

 

俺が謎の船長の登場に困惑していると船長の方から握手を求めてきていた。

 

「君が七草八幡君だね。私は北山潮、雫の父親だ。」

 

成る程この人が雫の父親だったのか。

予想よりも気さくな人物であったことに驚いたがこの程度では動じない。

俺は手を握り返し自己紹介をする。

 

「娘さんにはお世話になっています。自分が七草八幡です。ご高名はかねがね伺っております。この度は姉妹共々よろしくお願いします。」

 

かつての俺の口から「ご高名」何て台詞は出てこなかっただろうな。

 

俺が差し出した手を潮さんが俺の手を離してくれなかった。

え、俺はそういう趣味は無いんですけど…と冗談を心のなかで呟いていると潮さんの目は視たことがあるものだった。

 

相手を値踏みするような目線は雪乃の姉と同じようなものであったが、それとはまた異なり不愉快に感じさせない人の上に立つ会社の社長とはこう言うことか、と感じさせる百戦錬磨の目であった。

 

「…ふむ、ただ捻ねくれていると見せかけて二歩先を常に見つめている策略家のようだね…ただ頭が良いだけでなく実力もある小手先だけの男ではないようだ。」

 

潮さんの呟きは俺が注意深く視ていなければ聞き取れなかった程の声量であった。

もし仮にこれがみんなにも聞こえるような大音量であってもこの人からの評価であればすんなりと受け入れられるほどの説得力があったのだ。

 

なのだか…。

 

「うん、雫の目は確かなようだ。我が娘ながら、中々しっかりしているじゃないか。」

 

まさかの親バカ発言に俺はメガネがずり落ちそうになったがなんとか持ちこたえた。

これが雫の父親か、と心のなかで思った。

 

実際に言うと『北山潮』に会うのはこれが初めてではない。

『ナハト・ロータス』での俺の偽名《ファントム》では無い方の社長名義の名前で『名瀬蜂也(なぜはちや)』と言う名前で一度取引したことがあったからだ。

そのときの俺の見た目は魔法を使って偽装していたので俺とは分かっていないだろうがまさかここで会うとは…と思った。

 

「泉美、香澄、小町!しず…北山さんのお父さんに挨拶しなさい。」

 

「私も一緒にご挨拶させていただくわ八くん。」

 

「分かった。」

 

そんなことを思いつつ先方に目礼をして小町達を呼ぶ…って未だバチってるんか。

俺に呼ばれたので女同士の戦いは一時休戦となり小走りに妹達が駆け寄ってくる。

そして今の状況を察したのか一礼して自己紹介を行った。

もちろん姉さんも一緒に。

 

「七草家長女、七草真由美です。北山さんにはいつも助けられております。この度はお招き戴きありがとうございます。」

 

「初めまして、七草泉美です。本日はお招き戴きまして、ありがとうございます。」

 

「初めまして、七草香澄です。ご招待戴きまして、ありがとうございます。」

 

「初めまして!七草小町です!ご招待戴きましてありがとうございます伯父様。」

 

「ご丁寧にどうもレディ達。北山潮です。まさかこれほど美しくチャーミングな七草家のご令嬢達を迎え入れられる事は当家の船とあばら屋にとっても栄誉な事でしょう。」

 

胸に手を当ててまるで映画のような仕草を取った潮さんに姉さんと泉美は笑みを見せていた。

それに答えるべくうちの姉妹達は丁寧なお辞儀をして見せていた。

 

その後司波兄妹とエリカ達が合流し挨拶を交わした所で潮さんは仕事の時間が差し迫っていたようでそそくさと大型の高級車へと乗り込んでいった。

…乗り込んだ後に帽子を未練げに見ていたのは見なかったことにしよう。

 

◆ ◆ ◆

 

クルーザーに乗り込み達也とCADのことで話したい件があったので隣同士で相談をしていたのだが、その光景を見ていた妹達(泉美&香澄、深雪)が頬を膨らませて不満げに見ていたのだが敢えて俺は気がつかないことにした。

それは達也も同じことだったのだろう。

そろそろ近い内に達也に「お前シルバーだろ?」と言うつもりだ。

共同で新CADを作るのもありかもしれないな。

俺は外装を作るのが得意なので達也にソフトウェアを作って貰えば良いのが出来上がりそうだ。

 

そうやって新しいアイディアを出していると別荘のある島に無事到着した。

 

波は中々に荒かったが、最新の揺動システムで誰一人船酔いすること無く島に足をつけることが出来た。

 

「さて、ビーチの日陰で纏めるか…。」

 

達也とのアイディアを纏めるために空調の効いた室内に避難したかったが流石にそれをすると全員からの非難の目がやばそうだったのでビーチでやることにした。

 

荷物を置いて女性陣は着替えに時間が掛かるので俺たち男性陣はビーチパラソルとマットに遊具を持ち出し準備をして女性陣の登場を待っていた。

が、俺は徹夜明けだったのでマットとパラソルを敷いた場所で寝転んで昼寝をしてしまっていた。

 

 

「八くん?あらら」

 

先に着替え終わった真由美はビーチに来ており、手提げの小さいバックを置くためにビーチパラソルが設営された場所に近づいたのだがその場所では八幡が穏やかな寝息をたてていた。

 

「夏休みに入ってからずっと《ナハト》の工作室に籠りっきりだったものね…」

 

真由美は八幡に近づき辺りを見渡すが深雪達の姿はない。

達也達は別の場所でビーチパラソルを設営している。

 

「…」

 

「寝てるわよね…。こ、これは八くんが疲れて寝てるのが不憫だからであって他意はないわ…。」

 

誰にその説明をしているのか分からないが真由美は八幡にそろり、と近づき八幡の頭を魔法を使い浮かせ荷物を枕にしているのを外してその間に真由美は膝を折って太股を差し込み所謂『膝枕』の形を取り自分の太股に八幡の頭を乗せた。

 

(わ、私は一体何をしているのかしら///…で、でも八くんは弟だしこのくらいは大丈夫よ。うん正論ね!)

 

足に重みと温もりを感じた瞬間、真由美は急に気恥ずかしくなったが頭を振りかぶって正論を自分のなかに提示した。

 

「…」

 

「ほんとに穏やかな寝顔ね…ふふっ、可愛い。」

 

真由美はすぐ下にいる八幡の頭を撫でる。

 

「えっと…何をしてるんでしょうか姉さん?」

 

目と目が合う。

寝息を立てていた八幡を見ていた真由美だったが、その呟きで太股にのっていた八幡が目を覚ましたお陰で真由美は驚き八幡を砂の上のマットに落としてしまった。

 

「ふぇ?…キャッ!!」

 

「うおっ!!…ってぇ……何すんだよ姉さん…。」

 

ドゴッ、と割りと固い音がして頭を抱える八幡を見て真由美は謝罪した。

 

「ご、ごめんなさい八くん!」

 

「いや、大丈夫だから…っ!」

 

俺は落とされぶつけた箇所をさすりながら姉さんの水着を見て惚けてしまった。

 

眩しい、この一言に尽きる。

姉さんが着用している水着はビキニタイプで余計な飾り気がない白色なのだが姉さんのバランスの取れた体型を引き立たせる露出度の高いものだった。

麦わら帽子にハイビスカスの花飾り、上着はパーカーを着用しており元々大きめの魅力的な果実は白色と相まって余計大きく見えた。

その光景に直視することをやめることは出来なかった。

 

正直似合いすぎていてやばかった。グラビア雑誌の女優なんか目じゃないくらいに。

 

「八くん?…あっ…ふ~ん?」

 

「な、なんだよ…。」

 

不思議に思った姉さんは首をかしげていたが俺の視線に気がつき悪い表情を浮かべていた。

よく人をおちょくる時の表情だ。

 

「一体何を想像したのかなぁ~?…それよりどうかな?」

 

くるり、と回って見せた。恐らく水着の感想を聞いているんだろうか…。

 

「どうって言われてもな…。」

 

どうか、と言われたがどう答えたもんか…。

よし、ここは正直に水着の感想を答えよう。

 

「そうだな…俺の前以外でその水着を着ないでくれない?正直俺以外には誰にも見せたくない。姉さんの為に用意されてると言っても過言じゃない。姉さんが家族じゃなかったら目を奪われてナンパするまである。振られる未来しか見えないけど…って姉さんどうした?」

 

俺が姉さんの水着に対しての感想を述べるとパーカーで顔を隠して顔を赤くしていた。

一体どうしたと言うのだろうか?

 

「そ、そういうところが卑怯なのよ八くん…」

 

ゴニョゴニョとパーカーで口元が遮られてしまっているのでなにかを呟いているようだったがよく聞こえなかった。

 

「どうした姉さん?もしかして体調悪いのか?」

 

「う、ううんなんでもないわ!…褒めてくれてありがと。」

 

姉さんは照れ隠しをするように何時ものような笑みで俺を見ていた。

 

「ど、どういたしまして?…ってさっき何で俺に膝枕してたんだ?」

 

俺はその笑みに少し動揺してしまっていたが、先ほど俺の近くにいたのは何故だったのか質問すると姉さんは誤魔化していた。

 

「えーっとそれは…そう!八くんが研究で疲れて寝ちゃってると思ったから、お姉ちゃんが膝を貸してあげようと思って!」

 

「いや、荷物で枕にしてたし…。」

 

「細かいことをきにしちゃいけないのよ八くん?」

 

「細かいことか…?」

 

その回答になっとくが言っていなかったがそれは別の者の会話によって中断されてしまった。

 

「八幡~」

 

「八幡さん!」

 

遠くからエリカと深雪の声が聞こえてきた。

パラソルに隠れて姉さんの姿が見えていないので俺だけが呼ばれているのだろうが。

 

近くによって来た瞬間エリカが分かりやすい位不機嫌な表情を浮かべ深雪は俺に霜を付かせようとするぐらい冷気を俺に向けてきた。

本当にやめてほしいんだが…、俺が何をしたって言うんだ。

 

俺の肩を竦めた様子を見て姉さんは笑みを浮かべていた。

 

 

それにしても本当に、目のやり場に困ってしまうのが実情だ。

これって見るだけでお金とられるやつじゃないよな?大丈夫?そうか、ならよかった。

 

俺が秘蔵しているお宝本が霞んでしまうくらい素晴らしい光景が広がっている。

波打ち際で戯れるティーンエイジャーの水着姿がだ。

 

姉さんも言わずもがな白いビキニがついつい目で追ってしまう魔力を秘めているのでこれが解放されているビーチならば他人の目を引いてしまうだろう…俺は迷わずそいつらの目を潰しに掛かるが…。

 続いては波打ち際で目を引くのが派手な原色のワンピースを着用しているエリカ。余計な飾り気がないのでスレンダー(同年代の少女に比べれば引き締まり出るとこは出てる)なアイツのプロポーションを引き立たせている。

 隣で少しむくれながらも楽しそうに水遊びをしている深雪は、大きな花柄がプリントされたワンピースを着用している。

少女のギャップと日に日に大人の女性としての魅力を備えていくプロポーションを年相応なデザインで視覚的に薄めてくれているので生々しさは鳴りを潜め妖精的な雰囲気を醸し出している。

 意外だったのが美月で、細やかな水玉模様のセパレートを着用しており、ビキニほどではないにしろ胸元の深いカットが双方の果実の主張を強調して、いつものおとなしさからは想像できないほどの艶かしさを醸し出している。

…これ、小学生とか見たら性癖破壊されそうだな。とか思ったのは内緒だ。

ただ、エリカや深雪と違って自発的に鍛えていないということもあってか肩幅や腰幅が少し足りていないので腰回りの曲線が若干足りないのはご愛嬌だろう。

それでも十分ウエストは細いし煩悩抱えまくりな男子高校生ならきっと目で追ってしまうぐらいには魅力的だ。

 同じくセパレートでありながら、ワンショルダーにパレオを巻いたアシンメトリーなスタイルをしているのがほのかであり、この中の凹凸の大きさと言うのならばこの中では一番の大きさを誇るだろう。

顔は小動物系で守ってあげたくなるような雰囲気を纏っているのに体つきは暴力的というなんとも一粒で二度美味しい二面性を兼ね備えているだろう。

 雫は逆にフリルを多用した可愛らしい少女のようなワンピースを着用しているのだが、表情が乏しく大人びた雫が着用するとなんとも倒錯的な魅力を醸し出していた。

雫はそれこそウチの泉美と香澄のように凹凸は乏しいが括れもしっかりとあるのでこの中では一番…叡知かも知れない。

 

…うん、自分でこう言っててなんだけど普通に気持ち悪いし普通に訴えられそうなんで俺は彼女達から視線をずらした。

 

「お兄様~。」

 

「兄ちゃん!」

 

「お兄ちゃん!」

 

泉美と香澄が着替えが終わったのか俺がいるパラソルのところに来たようで水着を見せに来たようだ。

 

 泉美と香澄と小町の水着はセパレートタイプの水着を着用しており、泉美は腰回りにはパレオを巻いていて穏やかな泉美にはお似合いの格好であるだろうし、香澄はライトグリーンのセットにデニムのショートパンツを組み合わせたタイプで活発な香澄に非常によく似合っていた。

 小町はオレンジ色のセパレートタイプで泉美達に比べれば凹凸は大きく、武術を嗜んでいるので引き締まっているのでその健康的な肢体を引き立たせるには少し物足りなかったが別の水着を買いに行く時間が無かったため仕方がないだろう。

凹凸は小町が上、それより下になるのが泉美と香澄。しかし両者共に腰の括れに形のいいお尻は同年代の男であれば赤面すること請け合いだろう。

…そんな目をウチの大事な妹にぶつけようとするやつはこの世から『虚無』で消し去らなければならなくなるが…。

 

そんなことを思いつつも目の前にいる天使(妹達)の水着姿を褒めることにした。

 

「似合ってるよ泉美、香澄。上品な感じは流石泉美って感じだし、快活だけど女の子らしさがあって可愛いぞ香澄。それに小町は去年より身長がちょっと伸びたお陰で大人っぽくなったんじゃないか?」

 

「お兄様から褒められました…やりましたね香澄ちゃん!」

 

「褒められたね泉美!」

 

「妹にこれだけ言えるんだからこれを他の女の子に言えれば良いのにねお兄ちゃん…」

 

そういって俺に近づき両サイド陣取り俺の両手を体に密着して小町は背中に抱き付いてきた。

あの…暑いんですけど。

 

「うふふっ」

 

「えへへっ」

 

「熱々ですなぁ…。」

 

「何が面白いのか知らないけど…まぁ楽しそうならいいか。」

 

視線を妹達から沖合いへ向けると飛沫が上がっている。

レオと幹比古が競泳をしているようだった。

 

俺が見る限りではレオが素で楽しんでいるようなのだが幹比古はかなり自棄になっているようだった。

 

俺ははしゃぐ皆を一瞥し海の向こうへ視線を向けた。

波もなく薙いだ水面もないひとつの線のような青い水平線を見つめる。

抜けるような蒼窮に俺は思いを馳せていた。

 

…そういや俺、七草家に拾われて数ヵ月がたったのか。

事の発端は親からの絶縁を言い渡されてサイゼリヤに行こうとしたら目の前で今隣にいる泉美と香澄が誘拐される場面に遭遇し救出しに行くことになるとは思わなかった。

 

そして救出が成功し七草家に招かれて『家族』になったのだった。

 

姉さんも泉美も香澄も弘一さんも俺と小町に非常によくしてくれている。

 

…だがたまに思うのだ、「いつかまた裏切られる」のではないかと。

俺はガキの頃から肉親からの「愛情」ではなく「悪意」を与えられていただけだ。

肉親と他人から蔑まれ悪意をぶつけられていた俺はいつしか他人に興味を失ってしまった。

 

例えそれが、俺を心の底から俺を信じるものがいたとしてそれが本当の「好意」や「愛情」だったとしても、だ。

 

ー心の奥底ではそんな矛盾を孕みつつ俺は他人からの「関心」が欲しいのかもしれないー

 

なんてな、そんなアホらしい事を妄想しているとふと俺を見る視線が多数存在していた。

そちらに両腕に泉美と香澄を装着したままふとそちらに身体ごと目を遣ると…ビーチにいる全員が俺を見ていたことに声を出さなかった俺を褒めて欲しいぐらいだった。

 

「八幡表情が暗いけどどうしたの?体調悪い?」

 

腰を深く折り両手を膝に付いた状態で正面から覗き込むような体勢で俺を覗き見ていた。

どうやら俺を心配して駆け寄ってきたのだろう。

こうしてみると雫は本当に着ている水着と相まって本当に倒錯的で…ぶっちゃけるとエロい。

もちろん雫は鋭いのでこのまま凝視を続ければバレてしまうので視線をずらした。

 

「いや、少しボーッとしてただけだ。」

 

「八幡さん、せっかく海に来たのですから、泳ぎませんか?」

 

「そうですよ。パラソルの下にいるだけじゃ、勿体無いですよ。」

 

とは行っても左右には深雪とほのかが雫と同じような体勢で取り囲まれている状況は青少年の精神衛生上非常に宜しくない。

視線を左右に逃すことも出来ない。

360度美少女に囲まれている状況を後ろでエリカがニヤニヤして見てやがる。

それと一緒に達也もこちらを見ているし…しかも楽しそうに

くっそ…本当にいい性格してやがるぜ。

 

「わーったよ…泳ぐか…。」

 

「楽しまなきゃ損だよお兄ちゃん」

 

「そうですよお兄様。」

 

「行こうよ兄ちゃん!」

 

「さぁ、八くん?遊びましょ?」

 

「ああ。」

 

こうして俺は姉さん達に手を引かれて小難しいことを忘れて俺は楽しむことにした。

俺は無意識に笑みを浮かべていた。

 

◆ ◆ ◆

 

眩しくも青い空を見上げてしまい俺の《瞳》を焼きそうになったが対熱紫外線フィルターの魔法を発動させているお陰で、《瞳》は潰されていない。

先ほどまで達也と俺を標的にした打ち合いをしていたのだが流石に少女9人に対して男二人はきつかった。

戦いは数だよ兄貴…と言わんばかりであった。

 

達也は少し沖に出てレオと幹比古は遠泳になってしまったようで姿は見えない。

俺は砂浜に戻って日陰で姉さんと一緒に休んでいた。

戻ろうとしたときに深雪とエリカに不機嫌な顔を向けられたが流石の居心地の悪さを感じ取ってくれたようで追求はしてくれなかった。

今深雪達はボートで遊んでいる。

 

「お疲れ様八くん。」

 

「くっそ…達也の野郎いつの間にか離脱してやがった…流石の俺も八人はきつい…」

 

「それはご苦労様だったわね。あ、そうだ八くん。」

 

「ん?…ってなに遣ってんだよ姉さん。」

 

姉さんに呼ばれ目を向けると

 

「え?なにって海に入ってサンオイルが落ちちゃったから塗り直して欲しいのだけれど…///」

 

そこにはビキニの上を外して片腕で押さえサンオイルの入った容器を右手に持ち俺に向けてこちらを見ている姉さんの姿があった。

 

「いや魔法を使って紫外線を浮けないようにすればいいだろう…。」

 

「せ、せっかく海に来たのだからそんな野暮なことしなくてもいいじゃない///は、八くん、ぬ、塗ってくれないかな?」

 

近代においてサンオイルのような薬品は無論の事ながら今でも流通はしてはいるが現代魔法が普及した今需要は少なくなっている。

尚更姉さんは魔法において右に出るものはいないのだから紫外線をカットする魔法を行使することなど苦ではないはずなのだが…。

 

「ほ、ほら八くんお願い!」

 

そういってオイルのボトルを俺に差し出してきたので仕方なく受け取った。

 

「しょうがねぇな…。」

 

ボトルを受け取ると姉さんはうつ伏せになり完全に白いビキニが外れ完全に背中が見えてしまっている状態になっている。

 

その姿に動きが止まってしまう。

 

「…(落ち着け俺相手は姉さんだぞ…?)」

 

陶器のような白い肌に若干の汗が滴りなんとも言えない蠱惑的な雰囲気を醸し出している。

俺はサンオイルを手に取り姉さんの白い肌に宛がった。

 

「ひゃん!!は、八くん!!」

 

「ご、ごめん!…っ!!姉さん前!」

 

姉さんにサンオイルを塗ろうと触れた瞬間に姉さんからの悲鳴が聞こえた。

 

「もう!ちゃんと練って温めないと…。へっ?前?…きゃああああっ!!」

 

「ぶべらっ!」

 

そこには綺麗なピンク色が乗っかった大福が二つ…っていってぇええええええ!!!

 

姉さんの悲鳴が聞こえ俺は張り倒されてしまった。

そのまま後ろに倒れ気絶した瞬間に

 

「きゃあああ!!」

 

「っ!?」

 

「八くん!?」

 

突如として海の方から悲鳴が聞こえやっぱりか、と事故の発生に気がついた俺は気絶を無理矢理《物質構成》で負傷をキャンセルし加重と加速魔法によるホバー移動を行い裏返ったボートのすぐそばまで行くと達也も深雪の危機に気がついたのだろう忍術か何かで接近していた。

 

俺と達也は水中に潜り込むとパニック状態の泉美と香澄は深雪によって救出されており達也の方へ向かっていった。

俺は達也と深雪に妹達を任せパニック状態にあるほのかを抱えるが手足のバタつきが当たり抵抗されたが俺はそれをものともせず海上へと浮上した。

 

海面に浮上するとエリカが雫を救出しており転覆したボートに乗せていた。

どういう経緯でひっくり返ってのかは分からないけどそれは後回しにして腕に抱えたほのかをボートに乗せる選択肢を取ることにした。

 

息が吸えるようになって少しは落ち着いたかと思いきやほのかの興奮状態は落ち着いてはいなかった。

 

「は、八幡さん!!ちょっと待ってください!!」

 

「は?いやいくら真夏だからと言って転覆して水のなかにいたんだ、体力の消費はしてるんだから早くボートに乗らないと。」

 

「チョ、ちょっと待ってください!!」

 

何故だかほのかは俺のボートにあげる行動を必死になって阻止している。

 

「お願いですから!」

 

俺は必死の抵抗を受けるが強引にほのかをボートへ押し上げるとその勢いで反転し背中を先にボートで休んでいた雫に抱き止める形になった。

俺がボートに押し上げた結果ほのかの身体は俺へ正面を向く形となって、そこで俺はほのかが嫌がっていた理由を理解した、いや、してしまった。

 

元々ほのかの水着は泳ぐことを想定していない魅せるためのファッション用の水着だったのだ。

ほのかの水着は巻くれ上がっている状態であり、俺の眼前には大きい雪見だいふくが現れていた。

俺の視線に気がついたほのかは今更ながら悲鳴をあげて、両手で胸を押さえてボートの上で踞ってしまった。

うん、これは俺がわるいな…。

これから来る社会的制裁に震えた。

 

◆ ◆ ◆

 

「ヒック、ヒック、エグッ…!」

 

「ほのか、本当にすまん…わざとじゃなかったんだ…本当だ。」

 

砂浜にペタンと座り込んだほのかに俺は謝罪をするが今の状態では聞き入れられる状態ではないだろうが俺は一応の謝罪を入れた、俺へと突き刺さる視線が軽蔑ではなく同情の感想であったのはありがたいが少女、それに年頃の女の子の全裸を見てしまったのは「得した」ではなく完全に「申し訳ないことをした」と言う気持ちで俺の心は支配されてしまっていたのだった。

 

「ヒック…だから…エグッ…、待ってって…グズッ…言ったじゃないですかぁ…グズッ」

 

達也、深雪、雫、エリカ、姉さん、泉美、香澄、美月は決まり悪そうに俺たち二人を見つめてた。

正直気まずいのは俺なんだが…。

しかし、だからと言って逃げることも撤退することも俺の頭の中からは抜け落ちていた。

目の前の少女に誠心誠意の謝罪をしなければ、そう思ったのだ。

 

「いや、あのさ…八幡は助けてくれたんだし…。」

 

流石のエリカも軽口は叩けないようで困っているようだ。隣にいる姉さんも俺掛ける言葉が見つからないようで困っている。

 

「本当に申し訳ない…。」

 

某クソ映画のような博士の台詞が出てきたが誠心誠意の謝罪だ。

と言うよりもこれ以上の言葉が出てこないのだ。

 

頭を下げ続けている八幡の状態を見た雫が助け船を出してくれた。

 

『ほのか、八幡が悪くないって言うのは分かってるよね?』

 

ほのかだけに聞こえるように会話をしているのだろう。

 

『ウェアを直す時間だってあったんだから』

 

雫の声の大きさに関わらず、また一部の真実とは異なる内容にも関わらず、ほのかを落ち着かせるに効果は十分であった。

 

『当初の予定とは違ったけどこれってチャンスだよ。』

 

なんだかキナ臭い匂いがしたのは八幡の気のせいだろうか?

雫がほのかに二度三度言葉を掛けるとほのかは漸く顔をあげてくれた。

 

「八幡さん、本当に悪いと思っていますか?」

 

「嘘いつわりなく本当に思っているので警察だけは勘弁してください。」

 

再び謝罪して頭を下げる…かと思いきや八幡は地面に膝をつけて両手に地面をつき所謂『土下座』の体勢を取ると流石のほのかも慌てた。

 

「ちょっ…八幡さん!!そんなやめてください!土下座なんて…!それに警察にも言わないですから!頭をあげてください!」

 

「この程度じゃ許されないと思っている。なんでも言う事を聞くから。」

 

「え、な、なんでもですか…?」

 

「ああ。」

 

ほのかが「じゃあ…」と呟いたあとに「顔をあげてください」と言われたので顔をあげるとなにかを決意したほのかがそこにいた。

 

「…今日1日、私の言うことを聞いてください。」

 

「…ん?」

 

予想外の台詞に思わず声がでてしまったがこう言う要求はほのからしくないと感じてしまったが男に二言はない…てかこの台詞誰考えたんだよ。

なんてアホなことを考えている暇はないのでそんなことは脳内の片隅に追い周りにいる姉さんと深雪に目をやると同じ表情をうかべているのだった。

 

「それで…許してあげます。ダメですか…?」

 

「分かった…。」

 

言うことを聞いて欲しいと言っていたが悪質な要求をしてくる子では無いことは分かっているが何を要求されるのかが分からないので戦々恐々としながら頷くとほのかの表情は満面の笑みになり

 

「約束ですよ!」

 

「分かった…。」

 

俺は腹を決めるしかなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

夕食が始まる前にほのかに連れられて手漕ぎのボートに乗ったりほのかと一緒に雫宅の家政婦さん特性のフルーツジュースをカップルのように飲むことをお願いされたのだがほのかは顔を赤くしていた。

いや、それ本当にやりたいことなのかほのかよ…。

 

ほのかのお願いを聞いているウチに良い感じに暗くなり夕食の時間となった。

 

夕食はバーベキューで和気藹々とコンロを囲みテーブルとコンロを言ったり来たりしていた。

ほのかが甲斐甲斐しく八幡のお世話をしてくれているのだが八幡はそのお礼に食材を焼いてほのかの取り皿に取り分けるというお互いにお互いを世話をするという構図が出来ておりその光景を見ている真由美と深雪は若干不満げにしていたのを八幡は見ないことにしていた。

 

 

夕食が終わり、食後の休憩を終えて就寝までの時間で女子グループでカードゲームをしている最中にほのかは「ちょっとお花摘みに」と伝えお手洗いへと来ていた。

 

ほのかは鏡の前で決意する。

元々伝えたいことがあったのだが今回のアクシデントによってその計画は前倒しになったのは想定外であったが嬉しい悲鳴ではあった。

 

「よし…!」

 

淡いルージュを薄く引いて髪型を整え服装をチェックし身に付けている下着も念のためにチェックを入れる。

 

(は、派手目の物を履いたけど…きょ、今日は勝負の日だから…!『ま、万が一』って事も有るし!)

 

八幡をこっそりと誘い出すためにほのかはリビングへ戻っていった。

 

自分の足が震えていることにも気がついていなかった。

 

「八幡さんちょっと…」

 

「ああ…」

 

外へ出ていく姿を確認した小町は二人の後を申し訳ない気持ちになりながら着いていった。

 

 

俺はほのかに「ちょっと夜の散歩に出かけませんか?」と言われ今日1日はほのかの言うことを聞かなければならないので俺に拒否の選択権はないので「いいよ」と承諾し夜の砂浜へ散歩へ出かけた。

 

歩き始めるが会話は特にない。

本来ならば男から話題を切り出すべきなのだろうか?

こう言う状況になったことがないのでこう言う場面を小町に見られたらひどく説教されること請け負いだ。

「ポイント低い!」と怒られてしまいそうだが肝心の小町さまがいらっしゃらないので答えはでないだろう。

 

一応はほのかが打ち寄せる波に当たらないように俺が波側に立ち掛からないように同じ歩調でほのかと歩く。

 

砂浜の中頃まで来た辺りで背後からほのかに呼び止められた。

 

「八幡さん。」

 

穏やかな波に掻き消されそうなほどか細い声だったがほのかが振り絞ったような声が俺の耳に入ってきたので歩みを止めてほのかの方へ振り返った。

 

街頭はなく別荘の明かりも此方までに届いてはいない。

立ち止まった俺とほのかを照らすのは夜空に浮かぶ月と星明かりのみであり、表情はよく見えないがほのかは緊張をしているそんな感じがした。

 

静寂のなかに潮騒だけが響いている。

 

俺の名前を呼んだあとに紡がれる言葉が続かない。俺が視線で続きを促しても、ほのかは顔を赤くして目を逸らして俯いてしまう。

 

「あの…」

 

その言葉のあとが続かずそのやり取りが数度繰り返され、

 

「ゆっくりで良いぞ?どうした?」

 

俺は普段よりも優しめの口調で促すと決意したのか俺に伝えたい言葉を勇気を振り絞った。

 

「あの…その…私、八幡さんの事が好きです!(い、言っちゃった…!)」

 

迷いに迷ったであろうほのか絞り出した台詞はもしかしたら別荘にいる深雪達にも聞こえているのではないかという迫力があった。

しかし、そんな事に思いを巡らせる余裕はほのかにはなかった。

 

「は、八幡さんは私の事をどう思っていますか!?」

 

八幡と視線を合わせることが出来ず目蓋を閉じてしまったほのかに中々返答が返らなかった。

 

「…ご迷惑でしたか?」

 

恐る恐る目を開け、涙目で問いかけたほのかの視線には八幡は困惑の表情を浮かべているのが映った。

八幡が我に返りほのかに返答する。

 

「…なんかの冗談か?」

 

(やめろ…!)

 

八幡は必死に自分とは思っていることと異なる事を口走ろうとしていた。

八幡の顔が苦痛に歪む。

 

「この告白誰かが見てて嘲笑ってるんだろ?」

 

(やめろ…やめろ…!!俺はそんな事を思ってない!)

 

自らの意思と反した言葉しか紡げない八幡は自分を殴りたくなる

 

「ほのかがそんな事する奴だとは思わなかったぜ。」

 

「ち、違います!私は本当に…」

 

その先の言葉を呟けばもう後には引けなくなる。

 

(やめろ…やめろやめろ…やめろ!!!)

 

「消えろよ、もう顔も…っ!!…うぐっ!!」

 

明確な拒否。

 

八幡の目を見てしまったほのかは悲しいよりも先に「苦しい」という感想を覚えた。

 

何故なら

 

「…。」

 

ほのかの告白を受けて涙を流し顔面が蒼白となり、拒絶する自分の発言に後悔するような八幡の姿があったからだ。

 

「はち…」

 

「ほのかさん!」

 

「えっ!小町ちゃん?」

 

八幡に声を掛けようとしたほのかの声を遮ったのは後ろからの小町の声だった。

頭を押さえ踞る八幡に近づく小町にほのかも掛けよった。

 

「お兄ちゃん大丈夫?」

 

「ああ、大丈…夫…だ。それと…ご、めん…ほ…の…か…。」

 

ドサり、と八幡は気を失って倒れてしまう。

 

「八幡さん!」

 

大丈夫、と告げる前に八幡が意識を失って倒れてしまい地面にぶつかる前に小町が受け止める。

その場にいた二人は小町が八幡を抱えてほのかが別荘へ応援を呼んだのだった。

 

「お兄ちゃん…。」

 

八幡を背負う小町は背中で気を失っている兄が抱える闇に関して責任感を覚えてしまった。

 

◆ ◆ ◆

 

「それで小町さん。八幡は何故倒れたんだ?」

 

八幡が倒れてから数分後。

別荘へ助けを呼びに行ったほのかが達也達を連れて八幡を小町と一緒に運び込み今はベットで安静にしている。

 

リビングには今回の参加者が全員集まりほのかの隣にはエリカと雫が座っている。

 

ほのかは告白の拒絶のショックを受けていたが八幡が倒れた理由を聞けないほど衰弱はしていなかった。

 

小町の隣には深雪と真由美が座っている。

 

全員の視線が小町へと集中する。

だが、小町は凛とした姿勢を崩さなかった。

静寂がリビングを支配する。

 

その静寂を破る。

小町が語り始めた。

 

「そうですね…皆さんは小町とお兄ちゃんが七草家の養子なのは知っていますよね?」

 

みんなが頷く。

しかし、達也と深雪はその先の事情を知っているため表情は暗い。

 

「私と兄が七草の家に迎え入れられたのは…血の繋がった肉親から絶縁を言い渡されたんです。」

 

「「「!?」」」

 

「な、なんでそんなこと…」

 

「胸くそ悪い話だぜ…。」

 

「ひどい話だ…。」

 

「サイテーね…。」

 

美月が涙目に、レオと幹比古は苦虫を潰したような表情を浮かべ、エリカは心底イラついた表情をしている。

 

「そ、そんな…。」

 

「酷すぎる。」

 

ほのかと雫が反応した。

両者は共に悲しそうな表情を浮かべる。

 

「全部、私の…せいなんです。」

 

小町の膝においた握りこぶしから血が滴る。

それ程までに強い思いで握り込んでいた。

隣にいる真由美が小町の肩を抱く。

今にも泣き出しそうだったが必死に堪えていた。

 

「小町もそれなりに魔法力はありましたけど、理論は苦手だったので小さい頃試験の結果が悪いといつも父達から出来るまで叩かれるスパルタ教育でした…。それを見かねたお兄ちゃんはお父さん達に精神干渉の魔法を使って意識と記憶を小町からお兄ちゃんへ対象を差し替えたんです。小町には「愛情」を、お兄ちゃんには「無関心」になるように…。それは絶縁されるまで十数年続きました。」

 

「そんな…」

 

真由美は涙を堪えている。

 

その話を聞いた達也は自分と深雪の関係性に近いものを感じた。

 

「兄の同級生がどこから知ったのか分かりませんが元『八幡家』の家柄もあってそれをネタにしてお兄ちゃんはいじめの被害に合ってました。お兄ちゃんは魔法力も戦闘力もずば抜けていましたから…それを気にくわない師補十八家の息子に因縁をつけられてました。」

 

小町は言葉を続ける。

 

「学校では「悪意」」、家では「無関心」に去らされていたお兄ちゃんの精神は限界を向かえていたんですよ…。それにトドメを刺したが嘘告白です。」

 

「嘘告白?」

 

達也が小町に問いかける。

 

「呼び出しを受けた兄が屋上に放課後向かうと、何故か告白もしていないのに振られた挙げ句にその事をクラスのメンバーに言い触らされて皆の笑い者にされて…それはその師補十八家の生徒の策略だったんです。其処からでした、兄が他人の好意を否定する様になったのは。小学生の頃の話なんですけどね…。」

 

「そんなお兄様が…」

 

「なんで…なんで兄ちゃんがそんな目に合わなきゃなんないのさ!」

 

泉美と香澄が怒る。

 

「「「「……。」」」」

 

皆が絶句した。

 

「それから兄は他人からの『好意』に対して『裏がある、信じれば裏切られる』って思うようになったんです。」

 

小町の告げた真実は壮絶な物だった。

 

家や学校では同級生に「悪意」と「無関心」に晒され続け心と身体はボロボロになっていったことに。

 

「兄が他人に対して興味を失わないように矯正してくれたのはお婆ちゃんと奉仕部の皆さんのお陰でしたから…まぁそこでもお兄ちゃんが苛めにあっていたのに関わった人達の為に迷惑を掛けないようずっと我慢してたんです。

それでも性格はあれでも随分まともになったんですよ?中学でも兄は自分と関わった人たち全員を救ってきましたから…もう限界だったタイミングで私と兄が七草家に拾われたのは本当に幸運でした。」

 

苦笑しつつ説明すると殆どの女性陣は涙を流していた。

 

小町は女性陣を見渡し頭を下げる。

 

「お願いします…兄を…今まで他人からの「関心」と「愛情」を得られなかった…お兄ちゃんを人並み以上の「幸せ」をあげて下さい…今まで迷惑を掛けてきた小町じゃお兄ちゃんへ「関心」しかあげることが出来ない…「愛情」を満たしてあげることはできないから…お願い…します。」

 

頭を上げるとその表情には苦笑と目尻に若干の涙が溜まっていた。

それを見かねた七草姉妹が小町に抱きつく。

 

「小町ちゃん…」

 

「小町…」

 

「小町ちゃん…」

 

「小町は…大丈夫だから。」

 

そう言ってほのかの方身体を向ける小町。

 

「ほのかさん。」

 

「は、はい。」

 

「ほのかさん、お兄ちゃんを好きで居てください。あの反応が出るってことはお兄ちゃんはほのかさんを意識していると思います。」

 

「ふぇ!?こ、小町ちゃん?」

 

「心から嫌ってる人にはあんな言葉を掛けたりしません。今のお兄ちゃんは考えていることと喋っていることがアベコベになってるんです。」

 

「確かに八幡さん、酷く苦しそうな顔をしてた…。」

 

ほのかの脳裏に八幡の苦悶する表情が思い浮かぶ。

 

「本当に嫌いな人なら今ごろ魔法でも撃ってると思いますから。だから、大丈夫ですので兄を嫌いにならないで下さい…ほのかさん。」

 

「そっか…私八幡さんに嫌われて無かったんだ…よかった…。」

 

隣にいる雫がほのかの手を重ね頷いた。

 

小町がその事を告げると部屋の雰囲気が軽くなったような気を皆が感じていただろう。

空気が弛緩したのを感じた小町は若干だが普段通りの元気を取り戻した。

 

「まぁ…小町のお義姉ちゃん候補が増えるのは良いことなので是非お兄ちゃんをよろしくお願いしますね皆さん?」

 

そう言って小町はイタズラな笑みを浮かべ部屋のなかにいる深雪、雫、ほのか、エリカ、そして真由美に泉美、香澄に視線を向けると気がついた少女達は顔を赤くしていた。

 

「「「こ、小町ちゃん!」」」

 

一斉に抗議するが小町は笑っていた。

それは男性陣も決意していた。

 

「八幡は俺の親友だ。親友が傷つくのを黙ってみているほど心の狭い人間じゃない。」

 

「それじゃ、ダチとして俺は八幡を支えてやるぜ。」

 

「レオの言う通り僕たちはもう八幡の友達だ。…そんな元気のない八幡は見てられてないからね。…彼には色々と救われた…今度は僕たちが救う番さ。」

 

「達也さん、レオさん、幹比古さん…ごめんなさい。」

 

「小町さん、そこは『ありがとう』だよ」

 

「ありがとうございます、皆さん。」

 

ほのかの告白によって八幡の過去を知ることになった達也達は決意した。

 

◆ ◆ ◆

 

「うん…?此処は…俺、いつの間に寝てたんだ…?」

 

八幡が目を醒ますとそこは雫の別荘で宛がわれていた寝室だった。

 

「確か俺ほのかに呼び出され一緒に散歩してた…っ!!」

 

昨日の記憶がフラッシュバックする。

 

『あの…その…私、八幡さんの事が好きです!』

 

ほのかの精一杯の勇気を込めて放った一言を台無しにした

 

『何かの冗談か?』

 

『この告白誰かが見てて嘲笑ってるんだろ?』

 

自らの意思と反した言葉しか紡げないもう一人の自分がいるように。

 

『ほのかがそんな事する奴だとは思わなかったぜ。』

 

その言葉に涙を流す八幡を慕う少女。

 

『消えろよ、もう顔も…』

 

少女の決意を踏みにじったことを思い出し八幡はシーツへ顔を埋めた後、隣をチラリ目をやる。

時刻は早朝と言っていいほどで日が昇ったばかりであった。

 

「合わせる顔もないな…この事は皆に伝わってるんだろうし…謝罪しても無駄…帰るか。」

 

子供のような自己解決をした八幡は身支度を整えた後小町の端末へ書き置きを残し静かに寝室を出た。

 

 

砂浜へ出てデバイスを操作して加重魔法による重力制御で飛行しようとした瞬間に近くに人の気配がして振り返るとそこには今八幡が一番出会いたくない人物がそこにいた。

 

「やっぱり小町ちゃんの言う通りでした…八幡さん。」

 

「…ほのかか。」

 

ほのかはこちらを見据え近づいてくる。

八幡は後ずさってしまう。

 

今すぐにも逃げ出したかったがそれをしなかったのは八幡がほのかに対しての責任があったからだろうか。

 

数歩歩けば八幡に触れられそうな距離まで近づいたほのかは視線を逸らさずに、しかし八幡はその真っ直ぐの瞳を直視できなかった。

 

早朝の小鳥の声と穏やかな波の音だけが二人だけの空間を支配する。

ほのかが遂に発した。

 

「八幡さん。」

 

「…。」

 

八幡は答えない、いや答えられないといった方が自然か。

ほのかの次の行動に八幡は驚愕していた。

 

「ごめんなさい八幡さん!私…八幡さんの事何も知らなかった…八幡さんを傷つけてしまいました…」

 

頭を下げるほのかに八幡は苛立ちを覚えてしまった。

 

「ちょっと待ってくれ…なんでほのかが謝るんだ?…謝るのは俺の方だろうが…。」

 

ほのかに怒りをぶつけるのはお門違いなのだが八幡はその感情を押さえることは出来なかった。

 

「小町ちゃんから聞きました…八幡さんが高校に入るまでの事を…。」

 

八幡は「やっぱり聞いちまったか…」となり自分でも思っていなかったが知られたことに少しの絶望を覚えた。

 

「なんで泣いてんだよ…同情するぐらいなら軽蔑してもらって構わない。それだけの事を俺はほのかにしたんだ。」

 

「八幡さん…。」

 

「他人に『関心』を持たれたいのに関わりを断ちたいって思ってしまうし、他人からの『好意』には「必ず裏がある」って疑いの目を向けちまう面倒くさい奴なんだよ俺は…、」

 

「そんなことありません!」

 

「…っ、ほのか。」

 

普段出さないようなほのかの大きな感情に八幡は一瞬たじろいだ。

そんなことはお構い無しとほのかは八幡に感情をぶつけた。

 

「八幡さんはちょっぴり面倒くさいですけど…それでも、小町ちゃんの為に…学校での友達のために自分を犠牲にしてきた八幡さんが報われないのはおかしいです。だから…八幡さんが幸せになるように私が八幡さんを幸せにして見せるので…貴方を想っていても良いですよね?」

 

ハァハァ、と息も絶え絶えに八幡に自分の心を吐露したほのか。

しかし、そう簡単には八幡の心の闇は晴れることは出来ない。

だがほのかのその熱意の心からの言葉が少し、ほんの少しだが八幡の心に穿たれ少しだけ晴れた気がした。

 

「…俺は…ほのかにひどいこと言うかも知れないぞ。」

 

八幡は自分でも想像し得ない言葉を発していた。

相手を拒絶する強い言葉ではなく相手を傷つけないような弱い言葉に変化していたことに。

 

「…大丈夫です。」

 

ほのかは八幡を見据える。

 

「ほのかにひどいことするかも知れないぞ?」

 

「大丈夫です。」

 

「どうしてそこまでほのかは言いきれるんだ?」

 

「私は八幡さんを信じていますから。きっと他人を信じて、人を好きになってくれるようになるって。」

 

ほのかの確固たる意思に八幡は根負けした。

 

「…っ!ほのかには負けたよ。好きにしてくれ…。」

 

「はい!私は八幡さんの事をずっと想ってますから!さぁ八幡さん別荘に戻ってご飯にしましょう。皆待ってますから。」

 

「…。」

 

俺は妙に照れ臭くなり空を見上げる。

ほのかは昨日の事など忘れたかのように八幡に照れた表情で腕を取り体を密着させてくる。

柔らかい部分が八幡の腕に辺り顔を紅くしていたがそれはほのかもだった。

 

「ほ、ほのか…近いんですけど?」

 

「昨日の『言うこと聞いてもらう権利』を使いきってないんで良いですよね?」

 

「もう日付変わってるんですけど、ほのかさん?」

 

恥ずかしそうに嬉しそうに八幡の腕を絡めるほのかを振りほどく気にはなれなかった。

 

別荘に八幡達が近づいたのを確認したのか達也や真由美達が入り口の前に立ち、笑みを浮かべ待っているのを視認すると歩みを早めた。

 

「ほら、八幡さんに『関心』を持ってくれている人はこんなにいるんですよ?私もその一人ですから。」

 

「…そうだと良いけど。」

 

八幡は照れ隠しにそう言って駆け寄ってくる妹達を迎え入れるために止めていた足を皆のところへ向かうために歩を進めることにした。

 

『関心』と『愛情』を向けてくれている仲間達の元へ戻っていった。

 

八幡が思うほどその絆は脆くなく強固なもので、彼を慕う少女達は一人でないことを後々知ることになるのだった。

 

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