俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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最新話です。今回は遂にあのお方達が登場。
タイトルから察していただけると思いますがあの二方が出ます。

夏休み編での一話目での話数にコメント有り難うございます。
なかなかにお褒めの言葉を承り作者のモチベーションがガン上がりです。

コメント&高評価有り難うございます。

今月中にもう1本投稿したいですが…どうでしょうかね?

今回の話数で少し際どい表現があるので苦手な方はご注意を!

それではどうぞ!


そうだ、司波家に行こう。

雫の別荘に行ってから2日後のこと。

 

「八幡さん!我が家へいらしてくださいませんか?」

 

「はい?」

 

自室でCADの調整をしている最中にビデオ通話を深雪がしてきたのだ。

 

「唐突にどうしたんだ…。」

 

「ご迷惑でしたでしょうか…?」

 

「いやそう言う訳じゃないんだが…ええっと、どうしてそんな流れになったんだ?」

 

「あ、ごめんなさい理由も告げずに。」

 

「ああ、いや大丈夫なんだけど…それでどうして俺は深雪の家に誘われたんだ?」

 

深雪が事情を話しやすいようにこちらから話題を振る。

 

「実はお母様が八幡さんにお会いしてお礼を申し上げたいのと…」

 

「のと?」

 

「わたし自身…八幡さんにお会いしたいので…」

 

画面越しに深雪が頬を紅らめて控えめに八幡をみている。

その姿に八幡は先日ほのかに言われた事を思い出した。

 

『八幡に『関心』を持っている人はこんなにいるんですよ?』

 

あの時俺の過去を聞いたであろう後に、別荘の入口付近で待つ人物の中に俺を侮蔑の笑みではなく本当の『関心』の笑みを浮かべた深雪が居たことを。

それと今、画面越しの深雪の表情と同じモノであったことを感じ取った。

だが、同時にそれを素直には受け取れず否定するもう一人の俺がいることも。

 

「…っ分かった。それで何時行けばいい?」

 

「…!はい八幡さんこちらで待ち合わせを…。」

 

こうして翌日の昼過ぎに駅前に待ち合わせることになった。

テレビ通話が終了し、クローゼットに目をやり明日着ていく物を選択した。

…流石に昔のように『I♡千葉』と書いているようなプリントされたTシャツを着ていくのは無いだろう。

そこは小町とかに矯正させられたからな…。

無難にサマージャケットとジーパンでいいか…。あ、向こうの家にお土産も買わないとな…東○バナナでいいかな。

 

明日の準備を行って寝坊をしないようにCADの調整も程ほどに寝床に着いた。

 

 

次の日寝坊もすること無く予定通りに起床した俺は集合時間になるまでは時間があったので駅前にある土産ショップに向かい深雪の家に持っていくお菓子を見繕っていた。

 

「○京バナナ…お、あったあった。…ってこれはマッ缶味の東京○ナナだと…?十個ほど買っておこう…。」

 

そんなこんなで土産ショップで買い物に熱中していたら集合時間15分前になっていたのに気がつき急ぎ集合場所へ向かうとそこには美少女が佇んでいた。

 

「…。」

 

白の膝丈程のワンピースに七分丈の薄手のカーディガンを羽織り頭には小さめの鍔の大きい麦わら帽子をかぶっている。

立っているだけで絵になる、まるで物語のヒロインのようであった。

 

「…///」

 

「……///」

 

「見ろよ、すっげぇ美人…。」

 

道行く通行人が深雪を見て振り返り、なかには頬を赤らめる高校生もいたが流石に周囲の目を集めすぎているので俺は急ぎ駆け寄った。

 

◆ ◆ ◆

 

「深雪」

 

「八幡さん!」

 

俺が駆け寄ると深雪は表情をぱあっ、と明るくしている。

 

「悪い、待たせちまったな。」

 

「いいえ。わたしも先程到着したので。」

 

《瞳》で深雪を見やると本当に俺と僅差でこちらに到着したようで嘘はついていないことが分かったが俺が後に来ていることには変わりはないので罪滅ぼしではないが深雪の服装を褒めることにした。

 

「深雪の今日の服装可愛らしくていいな。すげー似合ってるよ。」

 

「ふふっ、ありがとうございます八幡さん。それでは参りましょうか?」

 

「ああ、…た…?」

 

「頼む」と告げようとし、俺は深雪と共に目的地へ歩を進めようとした瞬間に背後からの視線を受けた。

 

「…」

 

「八幡さん?どうされました?」

 

「…いや、何でもない。しっかし暑いよな。俺が茹で蛸になっちまうから深雪、ご自宅に案内してもらえます?」

 

「はい!ではこちらです八幡さん。」

 

深雪と共に歩きだし俺は背後を一瞥し《瞳》で確認すると魔法を行使しているのか背の低いゴスロリ衣装と女の子?でこちらは普通の衣装を着た、恐らく双子の姉妹が此方を視認しているのが確認できた。

 

(一体何者…こんな街中で目立つ衣装を着用して周りの市民に気がつかれない程の隠密性を誇る魔法を行使できる魔法師…視線は深雪ではなく二人とも俺を見ている…狙いは俺…か。)

 

歩きながら思案していると深雪から声を掛けられる。

 

「お母様は八幡さんにお会いしたがっていましたので招待を受けてくださって有り難うございます。」

 

ニッコリと微笑み此方へ振り返る深雪を確認した八幡は監視者のことは一度頭の片隅に追いやって返答する。

 

「宜しく頼むな。」

 

背後に監視者の視線を受けつつ何も知らず自宅に招待できることで浮かれている深雪と頭痛を覚える八幡は一路司波家へと向かった。

 

◆ ◆ ◆

 

八幡が司波家に訪れる前日。

 

「ごきげんよう、貢さん。」

 

「これは真夜様。本日はどうなされました?」

 

黒羽家家長、黒羽貢のもとへ1本の通信が入った。

その通信の先の主は魔法師の世界で知らぬ者はいないとされる十師族で《触れてはならない者達(アンタッチャブル)》の異名を持つ『四葉家』現当主、四葉真夜からであった。

 

貢は四葉における諜報と工作を担当する分家筆頭の家柄であり、彼女がそんな《黒羽家》へ連絡をとったのは理由があった。

話もそこそこに真夜は本題を切り出す。

 

「四葉家当主として命じます。亜夜子さんと文弥さんで『七草八幡』を抹殺しなさい。二人の実力でしたら十分でしょう。」

 

その命令に貢は了承した。

 

「畏まりました。娘達には任務の準備をするよう伝えます。」

 

「ええ、お願いしますね。…全く此方からのお願いを聞き入れてくれない姉さんと達也さんにも困ったものだわ…七草のしかも養子が深雪さんに接触している事実が不快だと言うのに…。あらごめんなさい任務の詳細をお渡ししていませんでしたわね…こちらですわ。」

 

そう言って貢の元に任務の詳細データが届く。

その内容に貢は眉をひそめた。

 

「これは…前日に深雪嬢とターゲットが通話をしているようですな…。しかも明日司波家に訪問ですと?」

 

「ええ、どうやら深雪さんと待ち合わせをしているようで…。どうやら深雪さんは七草の養子に好意を持っているようでしてねぇ…深雪さんには四葉の後継者候補の自覚が足りていないらしいですわ…これも全部姉さんのせいです。」

 

「…」

 

貢はただ黙って聞いているしかない。

表面上は穏やかで淑女然とした体裁を真夜は整えてはいるが憤りを見せており恐怖でしかなかった。

 

「ふふっ。あらごめんなさい貢さん。ついつい愚痴ってしまいましたわ貢さん。それでは」

 

「畏まりました。」

 

「ええ、良い報告を期待していますわ。」

 

そう言って通信をきり貢の前の画面が黒くなる。

通信が完全に終了したことを確認して貢は息を吐き出した。

 

部屋に備え付けられた通信設備のスイッチをいれて部下を呼び出し娘と息子を執務室へ来る様に指示した。

 

「亜夜子と文弥をここに。」

 

四葉分家の黒羽家の中でも随一の実力を持つ二人で真夜は十分対処は可能であると踏んでいたがそれは大きな間違いであったことを後々知ることとなる。

 

 

『!?まさか…気付かれたのかしら…《ヤミ》』

 

『まさか!《ヨル姉さん》の『極致拡散』が見破られるわけがないよ。』

 

駅前のターミナルの看板の近くで二人の少女?がターゲットを確認する。

少女達が視認しているのは八幡であった。

少女達の格好は夏場に着用するものではなく所謂ゴシックロリータと呼ばれる黒くてフリフリした格好でショートカットの少女?は長袖のワイシャツにサマーベスト、チェックスカートとストッキングの格好をしているが如何せん隣にいる少女の格好が目立ち過ぎていたのだが通行人には彼女達の姿は見えていなかった。

両名共に美少女であることに変わり無かった。

 

看板付近で亜夜子が八幡に視線を向けると直ぐ様こちらに一瞥して視線を向けてきていたのだった。

まるで見透かされているように。

 

自身の魔法が破られていないという第三者からの証言を得て多少の安堵感は得られたのだろう、話をしながらターゲットを追尾し始める。

 

次第に群衆から離れていき閑静な住宅街へと足を踏み入れる。

 

「まさかご当主からの任務が『七草の長男の抹殺』とは思わなかったわ…近くに深雪さんがいるのが驚きなのだけど。」

 

「そうだね、聞いた話じゃ深雪姉様は七草の養子と楽しそうに話していたらしいし…ご当主様カンカンだっただろうね…。」

 

「しかし、深雪さんが一緒だと私たちが攻撃したことがバレてしまうから何処かのタイミングで分断させる必要があるわ…って七草の養子大胆だわ…。」

 

「《ヨル》どういう…ってうわわっ!!」

 

視線の先にはターゲットと深雪が抱き合うようになっていた。

 

「きゃっ!?」

 

「あぶねっ!」

 

「ミャ~」

 

深雪が短い悲鳴をあげる。

正確には目の前には突如出てきた子猫に驚き体勢を崩した深雪を支えるために抱き抱える八幡の姿があったからだ。

 

その光景を電柱の影から見ていたヨルとヤミは…というかヤミが顔を赤くしていた。

遠くからターゲットと深雪の会話に聞き耳を立てる。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい…ビックリしましたけど大丈夫です…その…八幡さん…。」

 

「?どうした。」

 

「その…支えてくださったのは大変ありがたいのですが…離していただけますか…?」

 

「?…っ!!ご、ごめん!!」

 

深雪に言われ八幡が気がついた。

とっさに驚いた深雪を怪我をさせないように抱き抱えたのだが体勢が不味かった。

深雪の腰を抱くように腕を回し右手が恋人繋ぎのような格好になっており非常に顔も近い。

この場面を見られたら誤解を受けても仕方がないだろう。

 

急ぎ深雪から離れるが「あっ…」と呟き残念そうな表情を浮かべる深雪に八幡は気がつかなかった。

 

「それにしても…珍しいな。野良か?」

 

「首輪を着けていない様ですが、生まれたばかりなのでしょうか…。ふふっ…くすくったい」

 

「ナァ~」

 

しゃがみこむと深雪と俺の足元にすり寄って擦り付け深雪が差し出した指をペロペロと舐めていた。

子猫と戯れる深雪は非常に絵になっていたが俺は一応《瞳》で猫の状態を確認し病気を持っていないことや弱っていないかを確認し安堵した。

その子猫は白色であった。

嘗てあの家で暮らしていたときに小町に非常になついていた「カマクラ」を思い出した。

…俺には全然なついてなかったがな。

 

俺も何気なしに手を子猫の眼前に差し出すとこちらに気がついたのか深雪から離れ俺の差し出した指をペロペロと舐めていたことに俺は無意識だったのだろう。

その表情に深雪が微笑みを向けていた。

 

「この子猫どうしましょう…そのままにするのは心苦しいのですが…。」

 

「だよなぁ…深雪の家は飼えないのか?」

 

「お母様が猫が苦手なので…。」

 

「深雪自体は大丈夫なのか?」

 

「ええ。猫は小さい頃以降触れたことはなかったですが好きですよ?ですが…生き物を飼う、と言うのは少々覚悟がいりますので…飼われていた経験が?」

 

「まぁな…俺も比企谷の家にいた時に小町が親に頼んで猫飼ってたからな…。」

 

「そうだったんですね。」

 

「それならダメだよなぁ…しょうがない。ちょっと待っててくれ。」

 

そう言って俺は端末を取りだし実家へ連絡する。

 

「…あ、名倉さん。少し頼みたいことが…。」

 

名倉さんに事情を説明すると数分後に実家の車が到着し子猫を保護し回収していった。

その際に深雪が名残惜しそうにしており「八幡さんのご自宅へ遊びにいっても宜しいでしょうか?」と言われたので二つ返事で返答すると嬉しそうにしていた。

まぁ猫と遊びたいのは分かる。

 

しかし、本当の理由は深雪はこれを好機と思い猫をダシに八幡の実家へ訪問すると言う口実を手に入れるという高等テクニックを刹那の瞬間に閃き実行していたのであった。

深雪は末恐ろしい娘であった。

 

猫の件も終わり再び歩きだした二人の姿を電柱の影から追跡している亜夜子と文弥は真夜から渡された任務書を確認するがターゲットの性格が異なっていたことに疑問を覚えていた文弥に亜夜子は呆れていた。

 

「本当に極悪非道の人なのかな…全然そんなの感じないけど。」

 

「バカねヤミ…そんなことは些細なことで例えそれが真実でなくとも私たちは任務を全うする…それが《黒羽》の役目であることを忘れたの?」

 

「でも、深雪姉さんあの人と話してる姿…楽しそうだよ?」

 

「だとしてもよ。これはお仕事なのだから。」

 

「仕方がないか…。そろそろ仕掛けよう姉さん。」

 

「七草の養子の実力がどんなものなのか気になるところだし、楽しみね。」

 

ヤミは口では任務に対して否定的ではあるがそれが与えられた《任務》であるならば実行する程度には自分の役割を理解していたしヨルも親戚である深雪の悲しげな表情を見るのは好ましくはなかったが仕事だった。

それに七草の現当主が直々に養子に迎え入れたと言う話しに対して実力がどのようなものなのか興味を抱いていた。

 

ターゲットの動きを注視しているとついに司波家へ到着してしまう…そんなときに八幡が深雪から離れ「忘れ物を取りに戻る」と言ってその場から離れたのを確認し任務を開始したのだった。

 

「行くわよヤミちゃん?」

 

「ヤミちゃん呼びしないでよヨル…!」

 

 

深雪宅へそろそろか、などと思いながら背後の気配を《瞳》で確認するがまだ着いてきている様子であったので内心ため息をつけながらそろそろ対処をしなくてはと俺は思っていた。

 

「(…そろそろ深雪の家に着いちまう…後ろにいる奴らをどうにかしないとな…巻くか?いやそれだと深雪に余計な分不安を持たせちまう…分かれた後に倒して目的を聞き出すか。)深雪?」

 

俺に呼び掛けられて隣で一緒に歩いていた深雪が俺の方を見る。

 

「はい?どうかしたんですか八幡さん。」

 

「さっきの公園に忘れ物をしちまったみたいでな…取りに戻るわ。」

 

「あ、でしたわたしも…。」

 

「いや、深雪をこんな暑い中また歩かせるわけには行かないからな。距離も近いし深雪は家で休んでいてくれ。」

 

「でも…。」

 

「大丈夫だって、深雪の家ってあそこだろ?すぐ戻るよ。」

 

「分かりました…では冷たい飲み物をご用意してお待ちしておきますので…。お待ちしております。」

 

「ああ。すぐに戻るよ。」

 

そう言って俺は踵を返し先ほどの公園へと足を向ける。

…さてターゲットは一人になったわけだがどう出る?

俺は監視者に自分の考えを知られぬように自然体で公園まで戻った。

 

八幡が後ろからの監視者を撃退するために戻ったことなど当然知るよしも無かった。

一人になった深雪は自宅へ到着し玄関のドアを開けようとすると兄が出迎えた。

 

「ただいま戻りました、お兄様。」

 

「お帰り深雪…おや、八幡は?」

 

「先程までわたしと一緒に向かわれていたのですが公園に忘れ物をした、とのことでお戻りになりましたがすぐにいらっしゃると思いますよ?あちらに…」

 

深雪が手で指し示すと確かに達也の視界に八幡が公園に向かっているのが見えたのだが同時に、そこには居ないはずの達也の知り合いが居たことに疑問を覚えた。

しかしその疑問は直ぐ様、達也の中で危険を知らせていた。

 

「ああ、(どうして亜夜子と文弥が家の近くまできているんだ…?今日は此方に来ることを連絡していなかったはずだが…?どうして亜夜子は《極致拡散》を使っている…。まさか…!叔母上の指示で八幡を…!)見えているよ。…深雪すまないが少し外出してコンビニで八幡の飲み物を買ってくる。」

 

「え?ご用意していますけれど…。」

 

「行ってくる。母様達と一緒に戸締まりを頼む。」

 

「お、お兄様!?」

 

そう言ってコンビニへ向かう振りをして八幡の後を追いかけた。

 

「どうされたのでしょうか…でも、お茶のご準備をしておかないといけないですね…。」

 

達也は八幡を追いかけたのは心配していたからだ。

 

だが、それは『八幡を心配して』ではなく任務にきている『亜夜子と文弥』を心配してだ。

それに彼女達が敗北することになれば必然的に自分達が四葉と繋がっていることが露呈してしまうことだ。

 

知られれば自分はともかく深雪が八幡との関係が悪化すること危惧した達也の行動であった。

…しかし、八幡が達也達、司波兄弟が四葉に本家に連なるものだとしても「だから?」と言うだけなのだがその事についてはまだ達也達は知らない。

 

 

移動をしながら《瞳》の力を発動し現在位置を確認しステータスを判明させた。

 

(女の子と女…?いや違うな、一人は男か…なんで女装してんだ?そう言う趣味かもしれないから触れないでおくか…女の子が事象改変の魔法で男の方が精神干渉魔法か…しかし双子のオーラが達也達と似ている、どう言うことだ?)

 

《賢者の瞳》で明らかにしたが特性的には女が補助で男の方が戦闘…どうやらツーマンセルで俺を仕留めようとしているのは分かったが何故俺が狙われているのかが分からない。

 

公園に到着した俺は直ぐ様振り返り公園の入口に対して《グラビティ・バレット》を叩き込むと双子が何もない所から突如現れた。

 

攻撃を受けたフリフリなゴスロリドレスを着た少女が口を開く。

 

「いつから気がついていたんですの?」

 

「駅前からだが?見事な気配遮断だったがもう少し視線以外の感情を消した方が良いエージェントになれると思うぞ「魔女」さんよ?それに隣にいるやつももう少し感情を抑えた方がいいな、「坊や」?」

 

「!?こいつ…どうしてボク…じゃなかった、どうして私たちの事を!?」

 

「答える義理はないぞ。てか、何者なんだ?まぁ、聞いたところで答えてはくれないんだろうが…。」

 

「申し訳御座いませんが私たちの存在は明かすことが出来ませんが…死んでくださいます?行くわよヤミ?」

 

「もちろんだよヨル!」

 

「…ちっ!やっぱりそうなるよな?」

 

ヨルと呼ばれた少女がヤミと呼ばれた女装少年に告げると戦闘態勢に入り先程まで入口に居た少年が眼前にまで接近していたことに。

 

「…!!」

 

俺はとっさに反応し加重魔法を用いて背後に下がるがその瞬間には俺の背後に回っており少年の魔法式の構築は既に終了していたが、しかし発動までの速度は俺の方が早かった。

 

「(早い…!だが!)」

 

CADを用いず右手をかざして少年の魔法式を吹き飛ばす。

その光景に驚きはしていたが迅速に次の行動に入っていた。

 

「どうやら俺の魔法も織り込み済みって訳か…。」

 

「それは秘密ですわ。…ヤミ!」

 

「ああ!!」

 

攻撃を仕掛けてくる男の方に意識を割けば今度は女からの挟撃を受ける俺はまさに防戦一方のような展開となっており見るものが居れば一方的に俺が押されているような雰囲気であるがそうではない。

『こいつらからどうやって情報を引き出すか?』ということで頭が一杯なだけだ。

 

「厄介だな…!」

 

「ボクたちから逃げきれると思わないことだね?」

 

「おいおい、一人称は「私」じゃなかったか?」

 

「…!!」

 

殺してしまった場合はまさに『死人にくちなし』という風になってしまうし、今はまだ日中で人の目もある住宅地に隣接する公園だ。下手に俺の《虚無》を使うわけにも行かないわけだ。

それに下手な手加減をすることになれば逃げられてしまう恐れがあるので死なない程度に痛め付ける必要がある。

…後処理が面倒だからな。

 

実際に魔法を《術式解体》で無効化しているが、ヨル呼ばれた男の魔法は普通に食らいたくない。

 

《ダイレクト・ペイン》…精神干渉で直接のダメージを受けるのは正直痛そうだ。

 

攻撃を回避しているが気がつけば男がすぐ後ろに回り込んでいるのが厄介だ。

恐らくはヨルと呼ばれる少女が先程《瞳》で確認した魔法《疑似瞬間移動》で男の座標を俺のすぐ近くで発動できるのは強みだな。しかも連続発動出来る、ときている。

それに普通に遠距離からの攻撃を仕掛けてきているのも中々にめんどくさい。対処が。

発動する魔法は全て汎用型のCADをシングルアクションの《術式解体》で無効にしていく。

 

並みのテロリストや普通の魔法師であれば数秒も経たずと敗北するだろうがそれだけでは足りない。

俺を殺すには。

 

数十以上という攻防を繰り広げ俺は涼しい顔をしていたがヨルとヤミは疲弊していた。

 

「あれだけの攻撃を受けてどうしてケロッとしているんです…?」

 

「ボクたちの攻撃が当たらない…!」

 

「なんだ?もうお手上げか?暗殺者にしてはずいぶんなんだな…?じゃあそろそろ終わりにするか…。」

 

そう言ってホルスターから抜刀術よろしく《ガルム》を抜き放ち詠唱破棄して《崩壊》を発動し男の方の四肢へ叩き込み動けなくした。

 

流石に相棒がやられたと言って名前を呼ぶ程度で直ぐ様行動に移すようだが遅かった。

別の者に意識を割くことが戦いでどれだけ危険なことか。

 

「ぐああっっ…!!!」

 

四肢を焼かれる痛みで人体の構造的にヤミは意識を墜とさざるえなかった。

 

「ヤミ!なっ…!?」

 

「お前達には聞きたいことがあるから殺しはしねぇよ。」

 

ヤミがいつのまにか八幡が発動していた魔法にやられていたことに驚愕していたが直ぐ様態勢を整えようと疑似瞬間移動を発動させようとしたが遅かった。

 

何故ならば眼前には右手にCAD、左手は独特な構えをしたターゲットが既に居たのだから。

 

「かはっ…(任務書のターゲットの実力が実際と違う…これじゃまるで達也さんのような…。)」

 

消え行く意識のなかで自分が知る魔法師を思い出していた。

八幡が《次元解放》で空間跳躍と同時に魔法が発動しヨルの四肢は赤い閃光に撃ち抜かれ添えられた左手の白いオーラの爆発によって内臓が破壊されあまりの激痛に意識が墜ちた。

 

地面にドサり、とバウンドし墜落したヨルは口から吐血して四肢から出血、血溜まりを作り黒いゴスロリをどす黒く染めていった。

その光景は美しくもグロテスクな光景だった。

 

戦闘が終了し、公園には夏のセミの声が鳴り響いていた。

 

俺は構えを解除して息を吐く。

 

「流石に《崩壊》と《破戒乃型》はやり過ぎか?まぁ死んではいないしこいつらの正体を知ることは出来るだろ。流石に傷をそのままにしておくのは不味いな…」

 

倒れ意識を失い出血している双子をそのままにしておくのは不味いと思い、念のために元々掛けてあった認識阻害を公園全体に再び認識阻害の魔法をかけてから双子を《物質構成》で傷を癒していく。

 

なんで俺は襲撃してきた奴らに《物質構成》を使ってるんだ?殺されても文句は言えないはずなんだが…。

後始末の事を考えて「面倒くさい」と考える当たりそこも俺の異常性が出ているのかも知れないがまぁそれは置いておくとしよう。

 

一番に負傷度合いが酷かったのはヨルと呼ばれていた少女で内臓が《破戒・白虎乃型》のせいで破裂していたり地面にバウンドしたせいで顔や腕など色々なところに傷がついてしまったを見てしまい何となくだが罪悪感を覚え治療をしておいた…よく見ると人形みたいに綺麗な子だな。

 

どうして俺を襲いかかってきたのかが分からないが…うん、これで大丈夫だな。

 

治療が完了し元通りになった双子の姉弟?を《キャッチリング》で拘束し公園内の日陰に移動させる。

 

「…」

 

「…」

 

「さて、お前達がなんの理由で俺を襲ったのか聞かせて貰おうか…。っ!」

 

俺はヨルに手を翳し《消失》で記憶を探ろうとした瞬間に背後からの魔法が飛んできた為に重力展開を行い攻撃を無効にした。

 

「……!」

 

背後を振り返ると黒服が数人此方に魔法を目掛け攻撃を仕掛けてきた。

恐らくこの双子の協力者だろう。

 

数人が此方に攻撃を仕掛けてくるが俺に決定打を与えられずにいる。

こいつらの目的が俺でないことは解りきっていた。

 

「なっ!」

 

一人の黒服が俺の隙をついて双子に近づくが加重魔法によって弾かれる。

どうやらこの双子を回収したかったのだろうがそうは行かない。

こいつらには聞きたいことがあるからだ。

 

黒服達を無力化するために起動式を展開するがその瞬間、起動式が打ち砕かれ認識阻害の起動式が組み込まれてた煙幕が展開された。

 

「なにっ!?」

 

思わず腕で視界を覆ってしまう。

 

「ちっ…厄介だな…。」

 

腕を下ろし俺は《瞳》の力を作動させ瞳を金色に輝かせる。

どうやら敵の方が上手だったらしく拘束していた双子を連れ去って離脱していたようで煙幕が晴れる頃には黒服も双子も居なくなってしまっていた。

 

その光景に俺は悪態をつく。

 

「ちっ…逃げられたか…。しっかしいったい何者だったんだ?」

 

俺の呟きに答えてくれるものはおらず、ただ透き通る夏の暑い日差しが俺を焼くだけだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「まさか…文弥と亜夜子がやられるとは。容赦の無い一撃…あれは一体?」

 

八幡に追い付いた達也がみた光景は驚きのものであった。

《黒羽》の次期当主である文弥と四葉当主候補である亜夜子が八幡になす術もなく地に伏していたことだ。

もちろん親戚である二人の心配をしていたのだがそれよりも八幡が亜夜子達の四肢を撃ち抜いた魔法について興味を覚えていたのは無意識だったのだろう。

 

拘束し恐らく拷問をして情報を抜き出そうとしている。

彼女達の情報が抜き出されることはつまり四葉の情報を聞き出されることになるので必然的に達也達の情報が八幡に知られることになるのは非常に不味かった。

 

それを阻止するために達也は動き出そうとするが別の集団が八幡に襲いかかる。

 

(あれは黒羽のエージェントか?だが彼らでは八幡には勝てない…やはりな。)

 

達也の想像通り多勢に無勢のはずなのだが八幡は涼しい表情もとい興味を無くした顔で黒服達を見ているのは後処理が面倒だと思っているからだろう。

 

黒服が隙をついて亜夜子達に近づくがそれは想定内だったらしく吹き飛ばされる。

黒服達をまとめて吹き飛ばすつもりで起動式を構築しているのをみた達也は「不味い」と思い『術式霧散』で書き消した。

 

術式を消された瞬間に黒服が認識阻害が編まれた煙幕で視界を覆い、その隙に亜夜子達を迅速に回収していったのを達也は確認していた。

 

煙幕が八幡によって掻き消され落胆している様子を確認した達也は無事に逃げきれた亜夜子達に対しホッとしていたが同時に叔母に問いたださなければならないと決意し一足先に自宅へと戻ったのだった。

 

 

「う、ううん…一体私は…」

 

「うう…こ、ここは…。」

 

「お嬢様方!お目覚めになられやしたか!?おい!水を持ってこい!」

 

目が覚めると亜夜子は黒羽家の任務用の自家用車にのせられていることに気がつき、隣には弟の文弥が寝かされていることに気がついた。

 

「お嬢様、ご無事で。」

 

まだ覚醒していない意識が漸く起こされたことで自分の状況を理解した。

 

「ええ。大丈夫よ…私は負けたのね…。」

 

「…」

 

黒服達は何も答えないのが何よりの答えだろう。

亜夜子は俯くが目に入った自分の白い綺麗な腕を見てハッとした。

それと同時に先ほどターゲットから腹部に衝撃を受けたことを思い出し亜夜子は腹部を触るが痛みがない。

 

「お嬢様?」

 

「痛みと傷がない…?一体どういう事なの…まさか精神干渉系の使い手だったというの?」

 

実際には八幡が《物質構成》で全て元通りにしているだけなのだが、あの時の痛みを知っているだけに隣に今も気を失って(寝ているだけだが)いる文弥と同じ精神干渉系の魔法師だと勘違いしていた。

 

「無様を報告するのは気が重いけれどご当主へ報告をしなくては…。」

 

そう言って寝ている文弥を起こし四葉本家と貢へ報告をするため回線を開いた。

久々の敗北に亜夜子は思わず握る拳に力が入った。

 

 

襲撃者から逃げられた俺はやることも無くなってしまったので本来の目的地である司波家への道へ戻ってきていた。

 

(逃げられちまったがまぁ使う魔法で絞りこみはできそうか…。)

 

そんな感想を思いつつ司波家のゲート前へ到着し端末を取りだし深雪のアドレスを呼び出しコールする。

 

呼び出しが二回ほど鳴らして到着したことを伝えるとゲートが開き敷地内へ入り深雪が玄関のドアを開けてくれて出迎えてくれた。

 

が、出てきたのは深雪ではなく次の瞬間俺の視界が真っ黒になった。

衝撃が走るが痛い、ではなく柔らかいモノが当たっていた。

 

「いらっしゃ~い、八幡くん!待ってたわ~。あ、忘れ物は大丈夫?」

 

「ぶぼぼぼっ…!!(ちょっ、離れてもらえますか!!)」

 

「あん♪ごめんなさい。八幡くんに会いたくてつい。」

 

「ぶはっ…ん?」

 

俺の眼前に現れたのは恐らく深雪の姉だろう

だが姉というにはその妖艶さと色気がありすぎでそれに深雪と比べると先ほど当てられた柔らかいものが服越しではっきりと分かるほど立派なモノがそこにはあった。

 

だが達也と深雪の上に姉は居ただろうか…?

 

女性の顔をジロジロと見るのは失礼と思った俺は今回招かれた件について挨拶をした。

 

「初めまして、司波さんからお話はお聞きしてると思いますが同級生の七草八幡です。本日はご招待いただきありがとうござ…?」

 

俺が挨拶をして頭をあげると姉?の背後からバタバタと深雪が珍しく慌てた形相で駆け寄ってきているのが見えてこちらに近づいているときに衝撃な一言を言い放った。

 

「お母様!私より先に八幡さんに会いに行かないで下さい!わたしがお迎えしようと思いましたのに!」

 

お母さん?MOTHER?ホワイ?この目の前にいる深雪より大人びた少女のような女性が?

 

今一度その「お母さん」と呼ばれた人物を見るとお淑やかな笑みを浮かべ「イタズラ成功!」と言わんばかりで俺を見ていた。

 

は?マジかよ。若いってレベルじゃねぇぞ。

 

深雪の怒りなど何のその、あくまで自分のペースであしらっていた。

 

「深雪はさっきまで八幡さんのお電話を戴いた後に鏡に向かって髪型を直していらっしゃったからお待ちになっている八幡さんに失礼じゃない。」

 

「お、お母様!」

 

深雪のそれを指摘するとそれが恥ずかしいのか顔を紅くして狼狽えていた。

こんな深雪の姿を見るのは初めてなので新鮮に思えた。

 

「ふふふ…。あらごめんなさいね、八幡さん。さぁどうぞお入りになって?」

 

「八幡さん、どうぞ此方へ…。」

 

「お、おう…。」

 

言われるがままに妖艶な美女と美少女に手を引かれ司波家へと案内されたのだった。

 

 

司波家のリビングに案内されてソファーに座らせられる前に持ってきていたお土産を深雪へと手渡す。

 

「あ、深雪これみんなで食べてくれ。」

 

「ありがとうございます八幡さん。お兄様!」

 

深雪が「お兄様」と呼ぶと自室から出てきたであろう達也が目に入った。

深雪に手渡したお土産を受けとり俺へ「わざわざすまないな」と言って奥の部屋へ恐らく仏間へとお供えをするのだろう。

…てか仏間なんてあったのか。

 

と、まぁ渡すものを渡したので深雪と深雪のお母さんに促されて柔らかそうなソファーへ腰を掛けると深雪が俺のとなりへと腰を下ろす。

やけに近いのは何故なのだろうか…?

 

席に着いた所でテーブルによく冷えたマッ缶が置かれた。

おいおい、よく分かってるじゃないか!!

 

だが手をつける前にやることがあったので姿勢を正し対面に座るお二方を見ると深雪のお母さんとお付きの人なのだろうか優しそうな女性が微笑んだ。

 

「改めまして、私は達也と深雪の母親の司波深夜よ。よろしくね八幡くん。」

 

「私は司波家の家政婦、桜井穂波よ。宜しくね、八幡さん。」

 

「七草八幡です。本日はお招きいただきありがとうございます。深雪のお母さん、穂波さん。」

 

丁寧な挨拶をして顔をあげると深雪のお母さんが不満げな表情を浮かべており隣の穂波さんは「あはは…」と苦笑いをしている。

 

次の深雪のお母さんの発言に俺以外の全員が驚愕していた。

 

「そんな八幡くん、お母さんだなんて他人行儀な…『深夜』って呼んで♪」

 

それはもうまるで少女のような愛らしい…というか本当に深雪の一校の制服を着てても違和感がないんじゃ?的で隣にいる桜井さんと比較するとそれよりも年下に見えるのは何故なのだろうか…あれか?アンチエイジング的な奴か。

深雪が15歳位だとすると最低でも30後半の年齢じゃないとおかしいよな?

俺はこの世の不思議を味わったがかわいい人だなという印象を受けた。

 

だが、それとして他人の親御さんを名前で呼ぶのはハードルが高い。

俺も同じく達也と桜井さんは苦笑いをして深雪は同級生の前でキャピキャピしている母親に対して恥ずかしいのだろう、赤面していた。

 

「お母様!何を言ってるんですか!」

 

「母様…。」

 

「深夜様…。」

 

「いや、流石に深雪のお母さんを名前で呼ぶのはちょっと…」

 

「え~?ダメ?」

 

いやそんな首を傾げて可愛らしい表情で言われても…てか何故俺の手を握ってるんですかね…。

 

「いや、深雪のお母さんでいいような…。」

 

「え、『お義母さん』でいいってこと?」

 

「字が違うんだよなぁ…。」

 

おい、変換バグってんぞ深雪のお義母さん。

あと流石に距離感おかしい、娘の同級生の両手優しく握って自分の下の名前呼ばせるとかどうなってんだよ…。

同級生でしたっけ?フィジカルの高さは本当に学生と言っても差し支えがなかった。

 

司波深夜十七歳です!おいおい。

 

そんなアホなことを考えているが、未だに攻防が続いており深雪が俺とお母さんを引き剥がそうとするが有無を言わさないプレッシャーに深雪は頬を膨らませている。

 

いや、達也助けてや…。

 

「深夜って呼んで♪」

 

「深雪のお義母さん…」

 

「深夜。」

 

「お義母さん…」

 

「深夜。」

 

「お、」

 

「深夜。」

 

ずっとリピートしてくるんですけどお前のとこのお母さん…しかもすっげぇ圧…。

これ以降はマジで蒟蒻問答だと思った俺は諦めて深雪のお母さんの名前を呼ぶことにした。

…俺ってこういう押しに弱い気がする。特に美人の押しには。

しかし、こういうのに限って特に害がないというのが奇跡だろう。

 

「深夜さん…。」

 

俺は渋々…というわけではないが微妙な表情を浮かべて名前を呼ぶと深夜さんは声色を明るくし笑みを浮かべ俺の手を再び握ってきた。

 

「は~い!宜しくね八幡くん!」

 

少女のような笑顔に俺は苦笑するしかなかった。

 

その後、保護者二名からの質問攻めにあい所々に深雪の話題が出てくるのでそれとなく答えていると隣にいる深雪が赤面し達也は微妙な表情を浮かべているのは謎だった。

 

深雪のお母さんが火種を投下する。

 

「八幡くん、深雪ったら家ではあなたの事ばかり話すのよ?」

 

「お、お母様!」

 

「ははは…」

 

俺はただ苦笑いするしかなかった。

てか深雪が俺の事話してるのって何よ?悪口言われてます?

 

程なくして会話が一段落着いたのかお二人は真面目な表情になり俺が呼ばれた本当の理由が告げられた。

 

「今日八幡くんを家にお呼びしたのは数年前の『沖縄侵攻』の折に私と穂波、深雪の命を救ってくださったお礼を伝えたかったの…ありがとう七草八幡くん。この恩は決して忘れないわ。」

 

「お嬢様と深夜様を守る立場にあった私も、救っていただきありがとうございます。七草八幡様。」

 

深夜と穂波が頭を下げようとしてくるので俺は慌てて阻止する。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!…俺は偶々その場面に遭遇しただけなんでそんな、俺はそのお礼を受け取れないです。」

 

「それであったとしても貴方は私たち司波家の恩人なの。受け取ってもらえないかしら?」

 

「それでも俺はその場に居合わせただけなんで…。」

 

俺は深夜さんからの感謝を受け取ることは出来なかった。

あの時期の俺はめちゃくちゃに感情が振れてたのでとりあえずソコにいた銃を向けていた連中に怒りの矛先をぶつけていただけで感謝される謂れはないのだ。

つまりは八つ当たりなのだ。

 

なかなか感謝を受け取らない俺に対して困ったような笑みを浮かべる深夜さんに対して罪悪感が生まれはしたが気のせいだろうと思いたい。

 

深夜さんが口を開く。

 

「娘からは聞いていたけど…うーん困ったわね…それならこの感謝は報酬ということにしてくれないかしら?」

 

「『報酬』ですか?」

 

「ボランティアでは対価を貰うために行っているんじゃないでしょ?他者から『感謝』という報酬は貰うでしょ?それと同じで貴方は私達を『窮地から救った』というボランティアをしてくれたことに対して感謝という『報酬』を払っているだけなのよ。どう?受け取ってくれるかしら?」

 

なるほどそうきたのかと思ってしまった。

ものは考えようだと思ってしまったが俺もその考えが心にストンと落ちてきて納得した。

俺は観念して深夜さんの感謝…もとい『報酬』を握ることにした。

 

「分かりました、その『報酬』」をお受け取りします。ですけどあれは本当に偶然だったので気にしないで下さい。」

 

「ふふっ、それでいいわ。」

 

敵わねぇな、と思いつつ目の前にあるマッ缶を煽った。

 

「あら、もうこんな時間なのね…穂波、食事の用意をお願いできる?」

 

「はい、かしこまりました。深雪さんも手伝ってくれる?あ、八幡くんも食べていくよね?というか泊まっていきなさい。」

 

「え、もうそんな時間ですか?ってちょっと待ってください泊まるのは…。」

 

時計を確認すると外の景色は茜色に染まっていた。

流石にご馳走になるわけにもいかないし、妹達も家で待っているので断ることにした…てか待て、泊まって行けって。

 

「いや、流石にそこまでは…(ガシッ)ん?」

 

断ろうと立ち上がると腕を掴まれそちらの方に視線を向けるとそちらには悲しげな表情を浮かべ俺を上目使いで見ていた。

 

「八幡さん…(ウルウル…)」

 

「うっ…(マジでその表情ズルすぎるんですけど…?)」

 

深雪の整いすぎた表情から放たれる必殺上目使い半泣きはこれを受けて堕ちない男はいないであろうというほどの破壊力を秘めていた。

 

それ禁止カードだっていったでしょうが…!

ふと、視線を感じそちらの方向に視線を向けると深夜さんがニコニコと此方を見ていた。

めっちゃいい表情してますねぇ!!

 

「分かった…せめて実家に連絡させてくれ…。泊まるのは無理だとは思うけど。」

 

夕食だけは戴いていくが泊まるのは流石にヤバイと思い抵抗を見せるがその決死の反抗作戦は達也によって打ち砕かれた。

 

「その件だが八幡、小町さんに連絡をしたら『泊まってきていいよ~』と言っていたぞ。」

 

小町ちゃん?いつから君は俺の母さんになったの?てか、達也お前いつの間に連絡先交換してやがった。その件について詳しく聞く必要があるので俺はそれが解決するまで帰りません。

 

泊まることが確定した事を聞いた深雪は何故か笑みを浮かべていた。

 

「はい!腕によりを掛けてご準備致しますね!!」

 

「わーったよ…。」

 

こうして俺は司波家にお泊まりすることになった。

 

◆ ◆ ◆

 

「どうしました?亜夜子さん、文弥さん。あら…顔色が優れないわね?どうしたのかしら。」

 

時間は少し遡り任務の失敗を先に父の貢へ報告すると「信じられん…」と呟き直ぐ様に真夜へ回線を繋いだ。

その口調は普段通りの淑女然とした態度だった。

 

「真夜様、申し訳ございません。七草八幡の抹殺に失敗致しました。」

 

「…申し訳ございません。」

 

「…。」

 

モニターの前で頭を深々と下げる亜夜子と文弥だったがその心は悔しさと恐怖心で支配されていた。

真夜が言葉を発するまでの時間が数秒が数時間に感じられた。

 

「そう…お二人が失敗するとは想定外でしたわ。お二人とも怪我は無いですか?」

 

身を案じる言葉は取り繕った言葉ではなく本当に案じているからこその言葉であった。

その言葉を皮切りに亜夜子は結果を報告する。

 

「はい。私と弟に怪我はありません。接敵した際に私と弟がターゲットより重症を負わされたのですが…」

 

「ですが?というと。」

 

「部下から回収されて気がついた時に、攻撃を受けた場所が綺麗に修復されていたのです。弟は四肢を撃ち抜かれ、私は四肢と腹部へダメージを受けたのですがそれが綺麗に無くなっていたのです。元から攻撃など受けていなかったかのように。まさかターゲットは精神干渉系統の使い手だったのでしょうか…?」

 

亜夜子が疑問を口にするとモニターの前の真夜が考える素振りを見せていた。

 

「(敵に幻を見せる魔法…?しかも実際に痛みを与える…文弥さんのような『ダイレクトペイン』のような魔法よりも強力なモノね…。七草八幡、想像よりも厄介な相手になりそうね。分家のなかでも屈指の実力者である黒羽姉弟を退けるとは…)そう、分かったわ。お二人には「七草八幡の殺害」に関しては一旦保留とします。いいですね?」

 

「はい真夜様。申し訳御座いません。」

 

「ご当主様、申し訳御座いませんでした…!」

 

亜夜子と文弥はモニター前の真夜に深々と頭を下げるとその光景にクスり、と微笑みを浮かべているのは二人には見えなかった。

 

「いいのよ亜夜子さん、文弥さん。これは私の落ち度ですから気にしないで頂戴。」

 

「はい、失礼します。」

 

そう言って親戚の伯母と子供が気安い会話をするかの如く通信は終了した。

 

「…。」

 

通信が切られ黒く染まった液晶に亜夜子の俯いた姿が映り込んだ。

 

「姉さん…。」

 

下ろした拳に力が入り震えている。

その姿を確認した文弥は亜夜子に声を掛ける。

 

「次こそは七草八幡に勝利して見せるわ…!見ていなさい…!」

 

黒羽の長女は七草の長男に対して決意を抱き、泥をつけてくれた八幡に自分より強い同年代の魔法師がいることに歓喜を覚え自らを高めるために鍛練を決意するのであった。

それに巻き込まれることを弟の文弥は未だ知らない。

 

◆ ◆ ◆

 

一方でライバル視されているとも知らず押しの強い同級生の母親と同級生に懇願されて夕食を取っていたときに深夜さんが深雪になにか耳打ちし顔が真っ赤になっていたのはなんだったのだろうか?夏風邪なら早めに寝た方がいいぞ深雪、長引くと辛いからな。

それと、ご馳走になった後に達也と深雪と一緒にCADや魔法の事について話していると桜井さんから「お風呂沸いたからどうぞ」といわれ客なのに家主よりも先に入っているんだろう…。

 

「どうして俺は司波家の風呂に入っているんだ…」

 

一般的な住宅のよりも広い…さすがに実家よりもでかいと言うわけではないが肩まで浸かって足を伸ばせる位に浴槽がでかかったです(小並)

 

「…そろそろ上がるか。後が閊えているだろうし…あ、俺が入った後の湯船深雪嫌がりそうだな…浄水魔法で綺麗にしておくか。…後に入ったら入ったで変態扱いされねぇかこれ?」

 

湯船に浸かりボーッとしていたら数十分経過していたのでそろそろ上がりもう一度シャワーで身体を洗い流そうとした瞬間に浴室の扉が開いたのだった。

 

「お、お邪魔します…」

 

「は…?」

 

浴室の扉の前には競泳水着の上にバスタオルを巻き付け後ろ髪をまとめて所謂ポニーテールにした深雪がいたのだから。

 

「どっかの店みたいだな…。」

 

俺は思わず深雪に声を掛けてしまう。

 

「え?は、はい!」

 

「なんで深雪がここにいるんだ…?」

 

「お、お背中をお流ししましょうかと思いまして…」

 

そう言って身体を洗うタオルを持った深雪が近づいてくるが顔を紅くしてどう見ても羞恥に染まっているようにか見えないのだが。

 

「背中流すって…風呂に入ってから既に数十分経ってるんだけど…ってそう言う問題じゃないんだよ。深雪、そもそも年頃の女の子が男子の前でそんな格好をするのはどうかと思うぞ?好きでもない男の前でそんな格好をするなんて尚更だが…痴女かよ。」

 

何時ものように無意識に、目の前にいる深雪に対して攻撃的な口調で突き放す。

八幡は内心「しまった…!」と言う心情になり顔を背ける。目の前にいる深雪は少し困ったように微笑み、悲しそうな表情を浮かべ入り口に立った深雪は近づいて八幡に対しての想いをこの場で告げてきた。

 

「そんなこと…そんなこと有りません。わたしは八幡さんの事をお慕いしています。」

 

「…」

 

「八幡さんが今までされてきたことを全部小町ちゃんから聞きました…けれどもわたしは八幡さんの事が好きです。数年前、命を救ってくださったときからずっと。」

 

その想いに面食らったが八幡は答えられない、答えるわけにはいかない。

結果として彼女を傷つけることになるのだから。

それに反して拒絶するような言葉を放つ。

 

「…きっとそれは勘違いだ。そもそも深雪達を助けたのは俺の気まぐれで気分がむしゃくしゃしてなきゃきっと見捨てていたし、深雪が俺に抱く感情は恋慕じゃない。危機的状況で救われたことによる吊り橋効果。きっとそれは一時的な気の迷いでしかない。そうに決まっている。その場のノリで告白すると後で後悔するぞ?」

 

嘲笑うかのように深雪に言い放った後で罪悪感を覚えて背を向けた。その行動にまるで小さな子供を慈しむような優しい表情を浮かべて近づいてきた。

その様子に八幡は怪訝な表情を浮かべるがその答えは意外な行動で知ることになった。

 

「なに…してるんだよ…。」

 

「大丈夫ですよ…八幡さんを責める人はいないです。慕う人の方が多いですから…だから大丈夫です。」

 

浴室の鏡に映る姿は腰にタオルを巻いた八幡に背後から背中に抱き着いた深雪の姿が映っておりその光景に八幡は驚くしかなかったが深雪は冷静であった。

 

「おい、離れろって…!」

 

「離れません。」

 

「なっ!?」

 

まさかの否定に八幡は驚くがそんなこと知らぬと言わんばかりに八幡に話しかける。

 

「わたしもその一人ですから…それに本当に八幡さんに嫌悪感を抱いているならこんな格好や抱き着いたりしてませんよ?」

 

「…っ」

 

考えれば考えるだけドツボに嵌まっていく。あぁ、なんて面倒くさい性分なのだと。

八幡はなにも答えられなくなってしまい黙り込むしかなかった。

 

「今はわたしや皆からの好意を信じられないかもしれませんけど、きっと大丈夫です。私たちで八幡さんが信じてくれるように頑張れば良いだけの事ですからね?」

 

「わかったよ、俺の敗けだ…でも、そんな日は訪れないと思うけどな?」

 

「いいえ、必ず八幡さんのその捻くれ体質を何とかしてみせますから。」

 

それはもう素敵な笑顔で全否定されてしまい八幡はもう諦めるしかなかった。

 

「くっ…もう、好きにしてくれ…」

 

「はい!それでは…八幡さん座ってくださいますか?お背中流します。」

 

「なぁ、深雪さん?今思ったんだけど恥ずかしくないかその格好…と言うか離れてくれないか…その当たってるんだけど…。」

 

そう八幡が言うと深雪は顔を茹で蛸のように紅く染めて呟いた。

 

「それは言わないでください…///」

 

「恥ずかしがるぐらいならしなきゃいいのに…。」

 

「な に か 言 い ま し た ?」

 

「なんでもないです…。」

 

素敵な笑顔で俺を脅す…もとい聞き返してきた深雪に対して俺は命じられるがままに浴室の椅子に座り深雪に背中を洗われる事になりなんだか恥ずかしくなったのは八幡だけでなくそれは深雪も同じであった。

 

(わ、わたし…八幡さんに大胆なことをしているのでは…?いいえ八幡さんの捻くれを治すにはこのくらいの荒治療でないと完治しないですから!)

 

(いや、めっちゃ恥ずかしいんだけど…?冷静に考えたらスクール水着にバスタオルって…!!?)

 

鏡に映る背後にいる深雪の姿を再確認するとバスタオルが外れ紺色のスクール水着だけになり(ご丁寧に名前が『みゆき』と書いてあり文字が崩れていた。深雪の『アレ』のお陰で。)バスタオルがなくなっていた。

恐らく巻いていた未使用のバスタオルを洗体のために使用しているのだろう。

 

(マジでそっち系の店じゃん…深雪さん?!)

 

無言のまま浴室内には八幡の背中を深雪がタオルでゴシゴシと擦る音だけが響いていた。

 

「…///」

 

「…///」

 

二人と恥ずかしい想いを抱えながら八幡は洗体を受けて、深雪は背中を流していた。

しかし、次の行動が問題であった。

 

「で、では前をお流ししますね…?」

 

その発言に八幡は全力で拒否した。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ深雪!それは不味いから!」

 

「大丈夫ですから!」

 

何が大丈夫だと言うのか。小一時間ほど話し合いたかったがそんな議論はしている暇などないと八幡貞操の危機であった。

 

「大丈夫じゃねーよ!男子高校生の性欲甘く見んなよ!…ちょ、ほんとに勘弁して!!」

 

無論抵抗されたら負けず嫌いの深雪も抵抗するわけで。

 

「お流ししますので抵抗しないでください八幡さん!」

 

「そういう問題じゃねーんだよ!っうわっ!!」

 

「きゃっ!」

 

「あぶねっ!…ぐえっ!」

 

背中を洗体している時に飛び散った泡に足を取られてガッシャーン、と浴室内で二人は倒れ込んでしまった。

不幸中の幸いだったのが八幡が床に倒れその上に深雪が倒れ込む形になったがまさかの形で八幡はあの魔法を使わざる得なかった。

 

《瞳》が金色に輝く。

 

《物質構成》が発動した。

 

(ログイン開始…物質記憶表(マテリアル・タイムレコード)起動…平行同位体検索…検索完了…名称検索確定、『七草八幡』現在頭部に重大なダメージ…出血を確認…健常な平行同位体と同期開始…完了までコンマ0,1…修復開始…修復完了、物質記憶表(マテリアル・タイムレコード)からのログアウトを確認。)…だいじょ…ぶ…か!?」

 

思わず《物質構成》を使用する羽目になってしまった八幡の意識が覚醒した。

深雪が怪我をしていないか確認すると衝撃の光景が広がっていた。

 

「…………////」

 

八幡が仰向けに倒れ、眼前に深雪の紅くした整った顔があった。

 

「……!」

 

もにゅん。

 

「ひゃん///!?」

 

指先が柔らかいものを握り込んで深雪の甘い声が脳内に響いた。

顔が近いだけなら何度かあったがそれよりも不味いことがあった。

転倒を支えるために深雪の身体に触れていたのだが触れていた場所が不味かった。

八幡の右手、つまり支えている右手で深雪の胸を揉みしだいていたことだった。

 

「す、すまん!」

 

「は、ちまんさん…!あん////」

 

支えている手を放すことが出来ず揉んでしまったことで深雪が倒れ込み非常に不味い体勢になってしまった。

 

「み、深雪!離れてくれ!」

 

「ち、力が抜けてしまって…んっ///!」

 

倒れ込みお互いに動けず泡で滑ってしまい深雪の下腹部に八幡の膝が入ってしまっていて非常に危険な状況だった(絵面的に)動けばドツボに嵌まると言う状態だった。

 

(ヤバイほんとにヤバイ…このままだと俺の《ペイルライダー》がヤバイ!)

 

「は、八幡さん…///」

 

(耐えろ俺…!ここで耐えないとなにかが壊れる気がする…!!)

 

「み、深雪…///」

 

八幡と深雪の視線がぶつかりお互いの心音が聞こえそうになる程だった。

八幡が鋼の意思で抵抗しこの場所から抜け出そうとするとそこに天からの助けが差し伸べられた。

 

浴室の扉が開かれるとそこには達也の姿が。

 

「八幡、随分と入浴時間が長…い、が…。」

 

広い浴室内にピチョーン、と水滴が木霊する。

 

「た、達也…ちがっ、これは!」

 

「お、お兄様!これは!」

 

「…すまん、邪魔したな。」

 

「って勘違いだっつーの!おーい達也さん!?」

 

「お兄様!?」

 

司波家の浴室から悲鳴に近い絶叫が聞こえ達也は今日の事を何も見なかったことにして自室に戻っていった。

 

「未来の婿君は随分と意思が固いのねぇ…。まぁ深雪があんなに積極的だったとは思わなかったわ…」

 

「嗾けたのは深夜様では?」

 

「あら~?そうだったかしら?」

 

「うわー、白々しいですね~。」

 

脱衣所の扉の前に深夜と穂波が聞き耳を立てていた。

 

「これは脈ありかしらね?」

 

「どうでしょうか…?」

 

会話をしていると脱衣所で交互に着替え恥ずかしそうに気まずそうにしておりその光景を扉の隙間から楽しそうに深夜は楽しそうにみていた。

 

浴槽から出た二人は数度言葉を交わして深雪は自室に入り、八幡は達也の部屋で寝床にすることになったのだが誤解を解くのが大変だった。

 

時刻は深夜に鳴りそろそろ眠る時間になった。

 

 

達也の自室にて。

 

「八幡。」

 

明かりの落ちた部屋でベットに寝る達也が敷布団に転がる八幡に声を掛ける。

 

「…なんだよ。」

 

浴室での出来事を弁明し今日一の疲労を感じた俺は眠りにつきたかったが深雪の兄である達也から質問を受けていた。それもガチトーンで。

 

「深雪を泣かせる真似だけはしないでくれよ?そうなった場合は…」

 

「え、ちょ怖いんだけど…。」

 

「…冗談だ」

 

「そのトーンは冗談じゃねーだろ…。」

 

「お前は深雪の事をどう思っているんだ?」

 

「どう…って。」

 

達也から真面目な…と言うかこいつは何時も真面目な表情か。

深雪についての心象?について聞かれた。

 

「いい子だとは…思ってる。俺みたいなやつに積極的に関わろうとしてるのが可笑しなぐらいには。」

 

「…。」

 

達也は黙って聞いている。

 

「…だけど深雪が俺の事を『好き』って言ったのが理解できない。」

 

「それは…」

 

「わーってるよ…その感情は俺の心の、精神の問題なんだよ。だが…そう簡単に変えられるもんじゃない。」

 

「八幡…。」

 

辛気くさくなってきたのは俺らしいとは思うが唯一の親友のそんな表情はみたくないのでらしくもない冗談を言ってみた。

 

「深雪やほのかみたいな美少女に「好き」って言われるのなんて人生やり直しても起こり得ない役満だな。いやぁ遂にモテ期が到来しちまったか…怖いな。」

 

「ふっ…似合わない台詞だな。」

 

「…うるせぇよ。はぁ…疲れたな。んじゃおやすみ達也。」

 

「ああ、おやすみ。」

 

就寝の言葉を交わして俺は直ぐ様眠りへの旅へ誘われたのだった。

 

(お前が他人を信じられるように俺も最善を尽くすさ。…それが深雪の幸せに繋がるのなら尚更な。それに四葉が八幡を狙っているのは真夜叔母様だろうが…今はまだ八幡に知られるには早すぎるんだ。)

 

隣で眠る親友に対してまた親愛なる妹に対して達也は決意した。

 

一方でベットに横たわり先程の浴室の事を思いだし悶絶している深雪の姿があった。

 

(わ、わたしは何て大胆なことをしてしまったの?!お母様の提案があったとは言えあ、あんな大胆なことを実行してしまうなんて…は、恥ずかしい///)

 

ゴロゴロ、と転がるのをやめて隣にある大きめのクッションを抱き締めて想いを馳せる。

 

(八幡さん…貴方は幸せにならないといけません。わたしが幸せにしてみせます!…今日のお風呂での出来事で八幡さんのお顔が紅くなっていらっしゃったから意識はしてくださっているのよね…?)

 

深雪は浴室での八幡が触れていた部分を思いだし身体が火照ってきてしまいその部分に触れそうになるが再び冷静さを取り戻り悶絶してしまった。

 

「わ、わたしは淑女あるまじき事を…恥ずかしい…。はぁ…もう、今日は寝ましょう…。」

 

端末を開き、その液晶には九校戦前に八幡とツーショットで撮った画像データが表示されていた。

愛おしそうに、その画像をなぞり呟いた。

 

「お休みなさい、八幡さん…。」

 

こうして八幡の司波家でお泊まりは様々なハプニングがあったが無事に終了したのだった。

 




亜夜子と文弥のキャラこれでよかったのか微妙です。(お嬢様口調で話してたし衣装もそんな感じだったので間違ってたら御免なさい。)

深夜さんのテンションは完璧に中の人の雰囲気に引っ張られお茶目なお姉さんと言う風な感じになってしまいましたがこれはこれでよかったと思いました。
感想などあれば是非。

深雪の好意は伝えましたが八幡にはやはり…と言った感じですが彼も全部が全部否定的と言うわけではなく感じられる部分はあります。
結果として自分で「自意識過剰だろ」と言う結果になってしまうだけで…。

八幡自体も彼女達の事は嫌いではないです。
なぜ好かれているのかが理解できていない状態ですが。

ご視聴いただき有り難うございます。
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