今回のお話しはほとんど進展はありませんが作中にようやくあの後輩が現れます。
コメント&高評価ありがとうございます。
誤字脱字報告も重ねてありがとうございます。
今年中に『横浜騒乱編』終わるといいなぁ…。
それでは最新話をどうぞ。
迫る悪意の矛先
近年、オートメーションが進んでいる湾岸施設は一定の人員がいるだけでほぼ無人であった。
その為、夜間は岸への接岸は禁止されているはずのなのだが日本籍に偽装した外国船が密かに接岸し日付も変わろうかとしている深夜、大勢の邪悪な気配を漂わせていた。
『五号物揚場に接岸した小型貨物船より不法侵入者が上陸。総員直ちに五号物揚場へ急行されたし。』
短波無線に届いた指令に私服警察官は顔を見合わせること無く現場へと急行した。
しかし、その現場へ向かう二名の警察官の表情は対照的であった。
「やれやれ、やっぱりあそこか。」
「ぼやいている場合じゃないですよ!警部!」
「しかしね、稲垣くん。」
「つべこべ言わずに走る!」
「俺は君の上司なんだがね?」
「歳は自分の方が上です!」
「やれやれ…。」
年上の部下に対して適当な感じに答えながら八幡の同級生の兄である千葉寿和警部は足の回転を早めて部下である稲垣警部補と千葉警部は700Mもある現地点から三十秒ほどで到着した。
両名共に魔法師であった。
駆けつけているのが自分達だけということに気がついた寿和はぼやいた。
「やっぱり人手不足だよなぁ…。」
「魔法犯に対応できるのが魔法課の刑事だけですからね!」
「本当は、そうでもないんだけどなぁ…っと!!」
緊張感の無い会話を皮切りに寿和警部は高く跳躍した。
その手には一般的な反りの少ない直径1Mほどの飾り気の無い普通の木刀。
空中で滞空しながらサプレッサーがついたサブマシンガンを三点バーストで速射してくるテロリストの攻撃を柳のように回避し密入者の生け垣を飛び越え援護魔法を仕掛けてきている魔法師三人をただの木刀で殴り倒していた。
一方で稲垣警部補はサブマシンガンを持つ密入者相手に拳銃で打ち倒している。
素早く魔法師を片付けた寿和警部は挟撃する形で稲垣警部補と共に侵入者を援軍を待たずして制圧した。
「警部、船を抑えましょう!」
「えっ?俺が?」
「づべこべ言わない!」
コントでもしているのかと錯覚するような掛け合いにたった今密入国しているもの達と戦っているようには到底思えない雰囲気さえあった。
だが、流石に敵を逃がすようなことをしないのは仕事人としての性なのかもしれない。
「わかったわかった。じゃあ稲垣くん船を止めてくれ。」
「…自分では船を沈めることになるかも知れませんよ?」
「そのときは俺じゃなくて課長が責任を取るよ。」
「『俺が取る』とは仰らないんですね?」
その発言にガックリと肩を落としながらリボルバーにケースレス弾を再装填する手付きに迷いはない。
稲垣警部補がグリップ底部のスイッチを押すとバレルに内蔵された標準補助機構がホロスクリーンとして展開した。
そして武装一体型の特化型CAD、リボルバー型銃型デバイス『ルプス』の稲垣警部補のカスタムされたデバイスに仕込まれている魔法の起動式が展開する。
引き金を引くと同時に魔法が炸裂し貫通力と威力を向上させたメタルジャケット弾が離岸する小型船舶船尾を撃ち抜き爆発させた。
小型船舶は動力源を破壊されて惰性だけで動いている状態になっている。
「流石だねぇ稲垣くん。」
呑気な称賛を口ずさむがパチン、と金具が外れる音が聞こえた。
木刀…ではなく仕込み杖。白刃が夜闇に煌めく。
義経の壇之浦八艘飛びといわんばかりに千葉警部が小型船舶に飛び移る。
鋼鉄の船舶扉は千葉一門の秘剣「斬鉄」によって切り裂かれた。
次々と船舶内部に突き進む千葉警部は獲物1本を手に捜査を始めた。
◆
「お疲れさまです警部。」
「全く…骨折り損のくたびれ儲け、とはまさにこの事だねぇ。」
時刻は空が白み始めてきており千葉警部はまさに他人事のように呟いた。
勇んで船のなかを突き進むがもぬけの殻で、船底ハッチが開いており恐らくはそのハッチより潜水して何処かへと脱出を果たしてしまっていたようだった。
沈没中の密入船は稲垣警部補と千葉警部の攻撃のお陰で沈没の速度が早まってしまい今はもう湾内海底に沈んでしまった。
特段手がかりになるようなものはなかったが後で課長に叱責を食らうと考えると気が重くなったがそのときの自分に投げることに決めた。
「逃げた賊の行方は未だに不明ですが…。」
「まぁ、潜伏しそうな場所は分かりきってはいるが…。」
千葉警部がそう言うと別方向に視線を向ける。
危うく沈没に巻き込まれそうになった千葉警部はその一躍をになった年上の後輩に恨み目がしを向けた。
◆ ◆ ◆
時を同じくして某所。
井戸の中から全身ずぶ濡れのウエットスーツを着用した男達が一人、二人と次々と這い出してきて総勢十六名の男達が井戸の回りに集結する。
その這い出てきていた姿を一人の青年、身形を整えた若い男性が微笑を浮かべながら見ていた。
ずぶ濡れの男の一人が酸素レギュレーターをはずし素顔を見せる。
まさに「悪人」といった形相の男が青年に気がつき近づく。
青年が声を掛けた。
「皆様、着替えてお寛ぎを朝食を用意させておりますので。」
そう青年がいうとこの怪しい集団の先程レギュレーターをはずした男が答える。
「周先生、ご協力を感謝いたします。」
さして感謝など微塵も感じさせない感情が映った言葉であったが気にも留めずににこやかに笑みを浮かべるだけで十六人の男達を引き連れて建物の内部へと入っていった。
◆
魔法科高校における二大大会がある。
一つは九校戦。もう一つは近々開催される「全国高校生魔法魔法学論文コペティション」…まぁ長いから「論文コンペ」にしておこう。
全国高校生、とは言うもの実質は魔法科高校九校が対象となっており九校戦が「武」を競い合うモノだとするならば論文コンペは「知」を競い合う九校間対抗戦だろう。
なぜ俺がこんなことを説明しているのかというと…。
「八幡くんには論文コンペの警備をお願いしたいんだ。」
「はぁ…俺がですか?」
十月になると先任だった風紀委員長である渡辺先輩は引退、という形を取ってはいるが新任の千代田先輩が心配なのか、其れとも普段の癖が習慣付いているのかは知らないが風紀委員会本部に入った矢先にそんなことを告げられた。
正直金銭の発生しない仕事は乗り気がしないと態度で示すと苦笑された。
「警備、といっても会場警備のではないよ。そちらはプロを用意する。」
「そこじゃなかったら誰を?うちの論文コンペに出場する生徒っすか?」
「そうだ、チームメンバの身辺警護とプレゼン用資料と機材の見張り番だ。論文コンペには『魔法大学関係者を除き非公開』の貴重な資料が使われるからね。そのことは外部の者にも知られている。そのせいで所為で時々、コンペのメンバーが産業スパイの標的になることがあるのだよ。」
「なるほど…じゃあどっかの企業がサーバーにハッキングしてきたりとかするんですかね?」
まぁ、確かに魔法高校の論文はどこぞの企業にとっても興味深いものであるだろうし狙われるのは分かる気がするが。
「いや、そんなことはないが…産業スパイといってもチンピラが小遣い稼ぎを企む程度のレベルだからな…むしろ警戒すべきは置き引きや引ったくりだ。四年前には、会場へ向かう途中のプレゼンターが襲われて怪我をした事例もある。そこで各校ではコンペ開催の前後数週間、参加メンバーに護衛を付けるようになったんだ。」
渡辺先輩にそういわれて合点がいった。
いくら学校の行事といっても『魔法』が関わっているのならばそういう風な対応が採られても不思議ではないだろう。
渡辺先輩は重ねて説明する。
「当校でも無論、毎年護衛を付けている。護衛のメンバーは風紀委員会と部活連執行部から選ばれるが、具体的には誰が誰をガードするのかについては当人の意思が尊重される。そこでだ…」
俺を見て渡辺先輩は人の悪い笑みを浮かべて発言した。
「八幡くんには司波くんの護衛をお願いしたい。」
は?達也の護衛?要らなくない?
と、思ったことをそのまま俺は口に出した。
「え、要らなくないっすか?達也の実力なら返り討ちに出来ると思うんすけど…。」
「まぁ、そうなんだが…。」
「君を達也くんの護衛に依頼したのは他の人員が襲撃されたときの補助要因として護衛に加わって欲しいのだよ。君ほどの実力者が居てくれれば今年度も安心だからな…其れに形とは言え司波くんに護衛を付けないのは妹の方が怒りそうだからな…。」
渡辺先輩にそういわれて脳内で深雪が笑顔のまま背景が凍り漬けになっている景色を幻視して少しブルッた。
「まぁ、本決定までには時間があるので考えておいてくれたまえ。達也くんにはまだ伝えてはいないが…。」
そんなことを言われてほとんど護衛は確定したようなものだったがポーズとして「考えておきます」とだけ伝えて風紀委員会本部から退出した。
「ま~た面倒なことに巻き込まれそうだな。」
退出したあとにそんなことを呟くと《
◆ ◆ ◆
その日の夕方、自室にて《
「ん?愛梨か。」
その着信の主は『一色愛梨』が示されていた。
室内のモニターに繋ぎテレビ会話を開始する。
『ご、ごきげんようですわ八幡さま。』
少し上ずった声で俺に話しかけてくる。
「よっ、愛梨久しぶりだな。…っと言っても1ヶ月前に通話しただろ。」
『そ、それは言葉の綾ですわ…それよりもお話ししたいことがありまして…。』
そんなこんなでお互いの近況を説明する。
夏休みは何処に行ったのか、なにをしていたのかをだ。
…まぁ俺の場合『
そんなことを伝えても「頭がおかしいのでは?」と言われてしまうので此処では告げなかった。
そんなこんなで雫の別荘に行ったりだとか深雪の家にお呼ばれしたりだとか、誕生日を祝って貰ったなどを告げると画面の愛梨は目に見えて不機嫌になっていた。
『どうして八幡さまは誕生日を教えてくださらなかったのですか…?』
「いや、聞かれなかったし…ってこのやり取りどっかで聞いたな。」
何故か俺が悪いことになっており思わず頭を掻いてしまった。
『まぁ、お会いしたときに聞かなかった私の不覚ですわ…はぁ、深雪は既にお祝いをしていると言うのに…。八幡さま!』
「うぉっ!!なんだよ一体…。」
急に画面に近付くもんだから驚いてしまった俺を尻目に愛梨は告げてきた。
『こ、今度八幡さまのご自宅にお邪魔してもよろしいですか!?僭越ながらお祝いをさせて貰いたいので…。』
「いや、誕生日はもう過ぎてるし…そもそも愛梨は石川の実家にいるんだろ?わざわざ…大変だろうし気持ちだけ受け取っておくよ。」
来なくてもいいぞ?と言いかけたがそれは彼女にとってとっても失礼だろうととっさに判断した俺を誉めて欲しいが寸でのところで言い止まった。
『それでは今度、東京へお会いに…ではなく観光に参りたいと思いますのでご案内を頼めますか…?』
「…わかった。ただ俺もそんなに詳しい訳じゃないから其れでもいいなら。」
『や、約束ですわよ!?』
「いや、ちゃんと案内するから…。」
東京の名所…あんな雑踏としたところを愛梨を案内するのはどうなんだろうか…。
『やった…八幡さまとのデート…。』
「なんか言ったか?」
あまりの気迫に俺が画面から後ずさりしそうになったが踏み止まり頷く。
そうすると嬉しそうに何かを呟いていた。
『いいえ、何も!』
その笑顔は思わず俺を赤面させるには十分すぎるほど強烈な笑顔であった。
話しは戻り近々行われる論文コンペの話となった。
『…それでは八幡さまはメンバーの警護をなされるのですね?』
「ああ、正直護衛を受け持つ奴に俺は必要ないと思うんだけどな…。」
『司波さんには…確かに必要ないかもしれないですね。』
「だろ?…正直深雪が怖いからって言うのもあるんだけどな。」
『まぁ、万が一、ということも有りますし…』
ははは…と乾いた笑いを出すと愛梨は苦笑いをしてくれた。
『私も論文コンペには発表者ではなく応援で現地入りしますのでお会いできるのを楽しみしていますわ八幡さま。』
「おう、会場で待ってるよ、それと…」
ちょうど手元に暇潰しで作成していた愛梨用の武装一体型CADの事を伝えようとした矢先に愛梨のテレビ通話側から
声が聞こえた。
『愛梨~。いろはより先にお風呂に入っちゃいなさい~』
この妙に間の抜けた声は愛梨のお母さんである紅利栖さんだろう。
さすがの愛梨も無視するわけには行かないようだったので。
『お母様わかりましたわ~!あ、ごめんなさい八幡さま…先にいろはに入るように行ってきますね。あ、このままで。』
「後ででもいいんじゃないか?」
『いえ、下手するとお母様が八幡さまと会話をし始めそうなので…。少しお待ちください。』
「あ、おい」
そういって愛梨は通話をつけたまま部屋から出ていってしまった。
「行っちゃったし…しかし男子と話していてそのままにするかね…俺は男として見られていないのでは…?」
そんなことを呟きながらテレビ通話に映る愛梨の部屋を見てしまった。
お嬢様ではあるが年頃の女の子ということもありウサギのぬいぐるみがおかれていたりと部屋のカラーは明るい色調であった。
ふと、ベットのそばにおいてある写真立てに目が向かう。
そこには姉妹仲良く写る愛梨と俺をなじってきていた後輩の姿があった。
その写真は幼いときに撮ったものなのだろう背格好は今とは随分違っている。
しかし、その笑顔は変わっていないように見えた。
懐かしい、と思った矢先にその声が聞こえてきた。
『あれ?お姉ちゃんを呼びに行ったのにいないじゃん…あれしかもテレビ通話繋ぎっぱなし…もうお姉ちゃんってば……え?』
ガチャりと部屋のドアが開いた。
画面に映り込んだ人物を見て互いにフリーズしてしまった。
「…あ?」
沈黙は数秒だったかもしれないし数十分だったかもしれない。
先に口を開いたのは画面越しの少女だった。
『セン…パイ…?』
まるで幽霊でも見ているかのような表情を浮かべ確認するように問いかけてくる。
俺も気が動転していたのだろう思わず昔のように接してしまった。
「よう、一色。」
口元を押さえ顔をうつむかせながら此方の画面へと近付いてきたかと思いきや壁に備え付けられている液晶を外さんばかりに揺らしてきた。
『センパイセンパイセンパイセンパイセンパイセンパイ…!!!』
「ちょっ…やめろ一色!酔う、酔うから!」
ガクガクガクっと大きく揺れて三半規管がやられそうになったがそんな柔な鍛え方をしていないが実際不快感の方が勝ってしまうので気が動転している一色を宥める。
「落ち着け!一色!」
数回揺らされたあとに画面の向こうの後輩は肩で息をしておりガバッと顔を上げるとその瞳には涙が溜まっていた。
『一体何処にいたんですかぁ!…ひっぐ…必死に探したのに見つからなくて…えぐっ…先輩のお家にも行ったのにお米も居ないしお家も無くなってるし…雪ノ下先輩達と一緒に探したけど行方不明だって…うぇ~ん…!!』
此処まで号泣されてしまうと返す言葉も思い浮かばないのだが…返す言葉を思案していると開いているドアから突然叫びが聞こえたので急いで駆けつけた愛梨と紅利栖さんがやってきた。
『いろは!?どうしたの!…あ』
『いろはちゃん~!どうしたの?…あら?』
二人が目にしたのは通話中で画面に映る俺と目が腫れぼったくなっている一色。
一色は振り向き見たことの無い表情と雰囲気を実姉と母親にぶつけていた。
二人は恐怖し、思わず俺も恐怖を覚えた。
『オネエチャン?オカアサン?スコシオハナシシヨッカ?』
『…!(コクコクコク!!)』
『あはは…。』
俺は思わず通話を切ろうとしたがホラー映画のように一色の首が此方に向く。うわっ、こわっ!!
『センパイも一緒に『オハナシ』しましょうか?』
「お、おう…。」
こうして一色によるお説教、もといオハナシが始まった。
◆
『…でお姉ちゃんは九校戦で見つけたセンパイの事をわたしに伝え忘れていたと。』
ジト目で一色は愛梨を見ている。
その視線に耐えきれず思わずそっぽを向いてしまう愛梨。
『は、はい…。』
そしてその視線は母親である紅利栖さんへと向けられる。
『そしてお母さんもその場で先輩に会っていたと…。』
『い、いろはちゃん顔がこわいわよ~』
『顔はお母さんの遺伝なんですけど?』
『ははは…。』
明らかに表情が泳いでいた。
「まったく…それで先輩?」
今度は矛先が此方に向く。
「なんだ?」
『一体今まで何処にいたんですか?家の力を使っても見つからなかったのに…。』
「ああ…その事なんだが…。」
俺があの日、元親から絶縁された日から説明する。
偶々誘拐された七草の双子を救出しその日から俺と小町は比企谷の名字を捨てて『七草』の養子になり魔法第一高校に入学することになったことを伝えると驚いていた。
『だから探せなかったんですね…というよりも!無事だったら連絡くださいよ!心配したんですから!』
「お前らを巻き込まないようにするために端末全部処分してたからな…」
その事を告げると申し訳ない表情を浮かべ一色は「あっ…」と声を上げた。
『ごめんなさい先輩…』
「いや、気にしてくれたんだろ?ありがとうな。」
「!いや本当に心配してたんですからねセンパイそこのところ本当にわかってますか?その事が伝わったのなら何よりですけどその笑顔は本当に禁止カードですしかも会わないうちにめちゃくちゃイケメンになってるじゃないですかあ、顔のよさは元々でしたねそんなのでわたしが落ちると思ったら大間違いですよセンパイ本当にごめんなさい!」
いつも通りの長い罵倒を受けて懐かしい感傷が沸いてきた。
「ふへっ…」
『…ってなんで笑ってるんですか?気持ち悪いですよ?』
「久々にあってそういうこと言うか?」
そんなことを言ういろはであったが表情は嬉しそうだった。
俺も笑みを浮かべたのは昔の部室の風景を思い出してしまったからだろう。
『へへっ、変わらないですねセ~ンパイ♪』
『むぅ…』
『あらあら~。』
俺たちの光景を見て愛梨はなぜか悔しがり紅利栖さんが微笑ましいものを見ていた。
その後今度の東京観光に付いてくると強引に言ってきて断りようがないので仕方なく受け入れることにした。
俺の存在を雪ノ下達に伝えようとしていたのだがそれは阻止させて貰った。
かなり不満そうにしていたが納得してくれた。
会話も区切りが付いて終了した。
「ふぅ…てか愛梨、一色に俺の事を伝えてなかったのな…。」
会話を切ったあとにこの後愛梨は説教を受けているんだろうなと幻視してしまった。
あとうちの泉美と香澄が問い詰められているんだろうなと思い埋め合わせをしようと思い改修途中の
◆ ◆ ◆
翌日。
達也達とは別行動を俺はしており新たな魔法を作成する為に、図書館へと向かっていた。
図書館、といってもほとんどが電子媒体化されており逆にこの時代になると紙媒体の方が珍しい。
重要なデータはオンラインでは閲覧できないのでこうして足を運んでいるのだった。
全てが個室になっており空きブースを探して奥へ向かうと1個の個室から知り合い、というよりも家族が出てきた。
「あれ?姉さん。」
「あら、八くんどうしたの?」
「俺は新しい魔法式のヒントがないか此処に来たけど姉さんは?」
「私は勉強しに来たのよ。」
「生徒会役員なのにか?推薦じゃねーの。」
「あ、八くん知らないんだ。生徒会経験者は辞退することになっているの。まぁ不文律なんだけどね。」
「そうだったのか…。」
初耳だった。
「…っとこんなところで立ち話もなんだし中に入ろっか?」
そうやって姉さんは先ほど出てきた個室を指差してきた。
「いや、一人用では?」
「いいからいいから。(八くんと個室…少しは意識してくれるかしら…?)」
姉さんに押しきられてもとい手を引かれ俺は二人一緒に個室へと入ることになった。
◆
三人が入れば身動きが取れなくなるスペースでは今現在俺と姉さんが入りかなり手狭な状態になっている。
姉さんは女性としては小柄な方で俺は男子としては平均な体格をしてはいるがやはり一人用のスペースに入ることが間違っているので端末の前に俺が座り予備のスツールに座る姉さんと肩を寄せあって座るかたちになった。
狭い室内で美少女と二人きりというシチュエーションは健全な青少年なら興奮間違いなしだが俺と姉さんはつまりは姉弟なのでそんな感情は起こりにくい…といいたいところだが夏休みのあの一件があったのでそういうのがまったくないという訳ではない。
気にしない方向でいるのだが姉さんが隣に座っているのだがぶつかってしまう。
俺は次第に面倒くさくなったのである行動を取ることにした。
不意に、この個室には文献保護の為にと個室内での生徒同士の不純異性交遊を見張るための監視カメラが設置されている。
それに気がついた俺は今操作している学校の端末から経由してホストコンピューターに侵入しカメラの画像データを改竄する。
この状況を見られるわけには行かない。
「八くん何してるの?」
「ああちょっとね…。」
「ふーん…は、八くんちょっと失礼するね。」
「…っておいなにやってるんだよ姉さん。」
隣のスツールに座る姉さんが俺の椅子に座ってくる。
どういった状況かというと『姉さんが俺が座っているスツールに移動させ股の間、前方に座らせている』状態になっている。
当然ながら困惑、赤面している。自分でやったのに…。
姉さんとぶつかるのは姉さんが煩わしいと思ったがそこまでやれとは言っていない。
決して姉さんが俺の股の間に座りたいからではないだろう。
「は、八くん…?」
「どうしたの姉さん。」
「えーとなぜ私は八くんの椅子に座っているのかしら…。」
「いや、狭いし。こっちの方が(検索)やりやすいでしょ?てか自分で座ってきたのになぜ疑問系なのか。」
「…///(これはこれで恥ずかしい…!!)」
意味が違う気がするが赤面する姉さんを見るのが好きなのでこのままでいいだろう。
だが俺の中の姉さんを虐めたい欲が出てきてしまった。
背後から姉さんの耳元で囁く。
後ろから手を腰に回すような仕草をして所謂『あすなろ抱き』の状態になっている。
「は、八くん…?」
「こんなカメラがある前で一体何を想像したのかな姉さんは?」
姉さんの耳元で俺が今まで出したことの無いウィスパーボイスで囁くと身を振るわせモニターの明かりしかない個室内でも分かるほど赤くなっていた。
「ひゃう!…そ、それは…うう…八くんのイジワル…!」
「姉さんだからだよ…。」
身をよじって此方を見る姉さんはよく見ると目尻に少し涙が溜まっていた。
腕のなかでは姉さんの柔らかい感触が伝わる。
心音が聞こえそうなほどに接近した俺と姉さんはもう少しで唇がふれあいそうな程接近していたが姉さんの表情を見ていると罪悪感が湧き出てきてネタバラシをする。
「隣にいると姉さんが俺の腕に当たって鬱陶しいと思ったから移動して貰って助かったけど…姉さんは小さいからすっぽり収まってくれてよかったよ。てか俺に露出趣味は無いし姉弟だろ俺たち。」
おどけたような表情をすると姉さんはさらに顔を真っ赤にして俺の胸を叩く。
「うう…八くんなんか嫌い…!」
ポカポカと俺の胸を叩くがまったく痛くなかった。
そこで姉さんはハッとした。
「えっと…じゃあ八くんはカメラや人目が無かったら…例えばだけどホテルや鍵を閉めた私の部屋だったら…。」
「姉さんが『いいよ』って言うなら姉弟だけどいただくよ。『据え膳食わねば男の恥』って言うだろ。」
「あ、あう…////もう!お姉ちゃんをからかうのは禁止なんだからね…!」
脳の処理が追い付かなくなったのか顔を真っ赤にして俺の腕のなかでおとなしくなってしまった。
どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。
自分で此方に移動してきたのにこっちが怒られるのは理不尽だな。
「(しまった…からかいすぎた。まぁ、姉さんだからいいか。)」
しばらくの間姉さんの機嫌を取るために大変だった。
狭い個室で姉さんを必死に頭を撫でていた。
俺の腕のなかにいる姉さんは何処か少し嬉しそうにしていたのは何故だったのだろうか?
その答えは俺には分からなかった。