試験勉強に行き詰まったので気分転換に小説投稿です。
先日三十五話に多くの感想ありがとうございます。
やっぱりみんなエリカ好きなんですねぇ…自分もエリカみたいなサバサバしてるけど実は中身ジットリ系女子は大スコ侍です。
タイトルから察してもらえば分かると思いますが…。
子は親を選べないのはこの魔法科の世界に置いて逃げられないテーマじゃないかなと思います。
感想&高評価ありがとうございます。
高評価してくれると嬉しいなぁ…(チラチラ)
それでは最新話をどうぞ。
捕縛した男ジロー・マーシャルという男から何故あの場にいたのかを問いただす。
どうやらこの男は元々日本での諜報活動を行っていたらしい。論文コンペも近いからな。
そして近頃大陸側からの密入国があったことを受けて第一高校をマークしていたらしいのだがその際にエリカ達からの攻撃を受けて撤退した矢先に嗅ぎ回っていることが『人喰い虎』…呂剛虎が所属している組織、大亜連合に目をつけられ危うくこの世から去るところだったが俺が助けに入る、という事になったのだ。
「君は一体何者なのだ…あの『人喰い虎』とまともに渡り合う戦闘スキル…。」
椅子に拘束されているジローと名乗ったおっさんは興味深そうに聞いてくるが答えてやる義理はない。
「さぁな。ただの一般魔法師だけどな。USNAの工作員さんよ。」
「君のような一般魔法師がいるかね…。」
おもむろに右手をおっさんの頭に翳してこっちは消す方の精神干渉系魔法《
喫茶店付近の裏手に着の身着のままの状態で置いて来るように部隊に指示を出した。
尋問(拷問はしていない)をしていたらいつの間にか朝になっていたので後の事は任せて俺は『ナハト』の研究室から《
着信主は実働部隊の一隊員からのようでどうやら無事に終わったようだ。
『…ん。蜂也に言われた通りに置いてきたよ。』
端末からは報告をしてくる少女の声が俺の耳に届く。
「ありがとな。今度駅前のスイーツ食べ放題のチケット送っておくからな。」
『うん、期待してる。それじゃあ。』
そういって喜色を浮かべている声色を最後に通信を終了する。
「…本格的に大亜連合が関わってるな…この件を伝えるべきか…悩ましいな。」
今回ばかりは規模が違う。チンピラや一組織であれば何とかなったが国が敵に回るかもしれない。
そうなった時にその場にいる全員を守りきれないかもしれないだろう。
ふと、俺を慕ってくれている筈であろう、いや俺の勘違いかもしれない女の子達の顔を思い浮かべたが一瞬にして「深雪達なら返り討ちに出来そう」と思った俺は悪くない。
そんなことを思っていると自室の扉が控えめに叩かれた後にドアノブが回る。
『お兄様~朝食のご準備が出来ていますよ?冷めてしまいますので…。』
泉美がどうやらいつまで経っても来ない俺を迎えに来たらしくひょっこり顔を出し入室してきた。
俺に駆け寄ってくる。
「ああ、ごめんな。それと泉美、野郎の部屋なんだから『どうぞ』って言うまでは入ってきちゃダメだぞ?」
思わず入室してきた泉美に対してこらっ!と軽く注意して頭を撫でると嬉しそうに目を細める。
「大丈夫ですわ。お兄様になら何をされても拒みません。」
年頃の女の子がそんなことを言わない。
「はいはい…年頃の女の子がそんなこと言わない。」
思わず口に出てしまった。
そんなことを泉美に告げると膨れっ面になったがかわいい。
「むぅ…!」
膨れっ面になった泉美の頬を突っつく。
ぷにっとなりたまっていた息がぷしゅーと吐き出される。
「こんなことをされても許して上げるのはお兄様だけですからね?お兄様は私のものです。」
頬を突っついた俺の指と右手をそのまま頬に当てて頬擦りしている。
まるでウサギの愛情表現のようで少しこそばゆい。
ずっと泉美のほっぺをむにむにしていたいが今日は平日だ。学校もあるためさっさと朝食を取らなければならない。
「このままだと泉美といちゃいちゃする羽目になるから朝飯食いに行こう。遅刻するぞ?」
「それでもいいのですが仕方ありませんね…いきましょうお兄様?」
泉美を連れだってリビングへ向かう。
もし大陸の連中が泉美や香澄、小町そして姉さんを傷付けようものならば…。
そのときは俺の理性が切れて敵であるもの全てを滅ぼしてしまうかも知れない。
◆
登校し授業が進み俺の護衛はほとんど形骸化しており自由とかしている俺はE組とA組の昼飯の会合で待ち合わせをしていると先に来ていたとエリカと一緒に場所取りをしていると難しい顔をしていた。
「どうしたんだよエリカ。眉間にシワが寄ってんぞ?」
UNSAの諜報員であるジロー・マーシャルに出し抜かれたと思っているエリカは昨日帰る際にずっと悔しそうな表情を浮かべていた。口には出さなかったが表情には出やすいエリカは非常に分かりやすく、態度は丸分かりだった。
俺がその後に見つけて捕縛したことを伝えるとさらに悔しがっていたがそれだけではないようだ。
俺の問いに対する回答は煮えきらないものであり半分肯定半分正解だとも取れた。
「まんまと逃げられたことに気にしてるんじゃないの…まぁその後に八幡に簡単に捕まっちゃうのはちょーっと思うところはあるけどね。」
”まんまと”、”ちょーっと”という言葉を使う辺りよっぽど悔しかったんだなと思うがそれだけではないようだ。
「あいつが言っていたことが喉に刺さった魚の小骨みたいに引っ掛かっててさ…学校のなかだから安心できないって…」
「まぁ俺が昨日言った通りだと思うが…エリカ。」
一応エリカには伝えておこうと思ってとなりに座っているエリカに近づき話しかける。
「へ?うわわっ!!///は、八幡一体どうしたのよ…?」
遮音フィールドを展開し外から声が聞こえないようにした。
目の前のエリカは顔を赤くしていた。
暑いのだろうか?一般の生徒に聞かれるわけには行かないので我慢してほしい。
「昨日お前達の目の前に現れた男を追っかけたときにその場に以外な男が現れてな。」
「…意外な男って?」
「大亜連合特殊部隊群のリーダーの呂剛虎だ。千葉家の娘なら聞いたことぐらいはあるだろ?」
「『人喰い虎』…!じゃあ八幡が言っていたのが。」
「ああ。あながち…と言うより本格的に仕掛けてくるだろうな。」
「そっか…それなら仕掛けてくるのがわかっているなら…。」
鬱憤を晴らさんとしているように楽しそうにしているエリカに俺は釘を刺しておく。
「エリカ」
「ん?どうしたの?」
「お前は確かに実力者だ。だが楽しんで厄介事に参加するのはやめろ。自分だけじゃなくて周りも不幸にするぞ、その考えは。」
「っ!?…わかってるわよ…うるさいわね。」
俺が言った台詞に苦虫を潰したような表情を浮かべているのはエリカが自覚しているからだろう。
面倒事や荒事に積極的に関わろうとしているのが感じ取れたからだ。
そんな奴が行き着き先は絶望を知るだけだろうというのが俺の経験則だ。知り合いのだが。
「本当にわかってるんかねぇ…やめてくれよ?エリカが強いのはわかるけど苦しそうな顔や泣き顔は見たくないぞ俺は。ずっと笑っていやがれ。」
「へっ!?…ば、バッカじゃないの!?…なんなのよもう…///」
そんなことを言うとエリカは間の抜けた声を出しそして怒られた。
解せぬ。
そんなこんなで会話をしているうちにいつもの面々が集まり昼食を取ることになったのだが今日は珍しくエリカが隣に陣取っていた。
◆
昼休みが終わり論文コンペに向けて達也達が校堂前の広場で機材を広げてプレゼンの練習をしているのをメンバーの護衛である桐原先輩や千代田先輩、そして俺がいた。
その実験の機材が大型ということもあり一般生徒も見学をしていてある種のお祭り騒ぎとなっていた。
今はプレゼン用の核熱融合炉のデカイ電球に光が集約している。
その実験が成功し拍手が起こるが数十秒後には潮が引くように静かになり別の器具を用意してプレゼン資料の道具を作成していく。
しかし、ただ成功だけという訳ではなく問題も当然起こっていた。
俺が千代田先輩に「ちょっとお花摘みに行ってきます」と断りをいれてその場を離れトイレから戻ってくると千代田先輩が頭を抱えていた。
「どうしたんすか?」
「ああ七草君…彼女に注意してもらえるかな…。」
「ん?…はぁ、エリカか…分かりました。すんません。」
「責任もって面倒を見てよね?」
「エリカは犬じゃないんすから…。」
視線の先にはさっき食堂で注意したことを忘れたのかと聞きたくなるような行動をしているエリカがそこにはおり相手は同じ風紀委員の三年の先輩と言い争っていた。
どうやらエリカがプレゼン機材の辺りでうろちょろしているのが気にくわないらしい。
神経質そうな先輩と対するエリカはそっぽを向いて今にも口笛を吹き出しそうな雰囲気であった。
「関本先輩どうしたんすか?」
後で渡辺先輩に聞いた話だが風紀委員には任期というものは存在せず卒業まで言い張れば風紀委員のままだ。
その関本先輩はその風紀委員に属している三年の一人だ。
こちらに気がついたのか話しかけてきた。
「七草…いや、対したことじゃないんだが風紀委員でもなければ部活連に選ばれていない人間がここにいては護衛の邪魔になると注意していたところなんだ。」
「ふーん…そうだったんすね。ですけど来年、再来年の為に下級生が実験の見学を中止する理由はないかと思いますが…それに実験の邪魔になるようでしたら護衛を依頼された我々が責任をもって止めますので”部外者達”に関しては任せてもらえませんかね?」
俺にそのことを告げられ背後にいた千代田先輩も「やるわね七草君…」と関心していたみたいだったが”部外者”扱いされた関本先輩はムッとしていたが睨み付けると黙ってしまい反論をしようとしているのだろうが二の句を告げずにエリカの腕を優しくとってこの場から引き剥がした。
「千葉は俺が責任をもって連れ帰りますので。…千代田先輩護衛頼みます。失礼します。エリカ帰るぞ。」
「あ、ちょっと八幡…。」
少し戸惑った様子を見せるが手をほどかなかったのは突然のことだったのか、それとも別の思惑が合ったのかは知らないがおとなしくしてくれている分には助かった。
問題児を連れ去ってくれたお陰で頭痛の種である二人を引き剥がした事により千代田先輩からは小さくサムズアップされた。
いや、風紀委員長なんだから自分で解決してくださいよ。
そんなことを思いつつ俺はエリカの手を取って校舎へと向かった。
◆ ◆ ◆
昼休みに諭されさっきも実験器具の見学をしているときに風紀委員の先輩に絡まれたときに無理矢理手を取って校舎へ連れていかれたけど嫌ではなかった。…乱暴に手首を握られたのではなく優しくだったからだろうか?
成り行きで一緒に下校することになったエリカは不思議な気持ちだった。
隣にいる少年を見て回想していた。
入学当初の事を思い出す。
『あっぶねぇ!!ちょ、落ち着けって!今のはエリカってやっぱり美少女で可愛いんだって再確認しただけで』
『…っ!!!余計にタチがわるいのよっ!な、なによ…び、美少女で可愛いだなんて…』
四月の新入部員勧誘週間で先輩達から思わず痴漢まがいなことをされた時に助けてくれたあとに言われた台詞は今でも印象に残っていた。
『お前は確かに実力者だ。だが楽しんで厄介事に参加するのはやめろ。自分だけじゃなくて周りも不幸にするぞその考えは。』
そのことを言われたときには思わずドキリ、としてしまった。
確かにあたしはその癖があると自認してはいる。
でもあたしの実力ならば大きなお世話よ!と言うところであったが八幡には言えなかった。
そして八月に八幡の過去を知らされたときにあたしは勝手に境遇を重ねてしまっていたのだ。
実の父親には冷遇されて血の繋がった姉には嫌がらせを受ける。
まぁ、兄貴達とは仲が良いとは言えるだろうか。
そんな部分が似ているなーと勝手にシンパシーを感じてしまっていたのだ。
校門を一緒に出てあるくあたしと八幡。
一緒に下校しているという意識はないのだが歩幅の大きい八幡があたしに歩調を合わせているのは分かった。
会話も特になく駅までは1本道。
あたしから今日の事で話しかけようと思ったけど八幡から声を掛けられた。
「エリカ」
思わず立ち止まってしまった。
立ち止まると同時に八幡も立ち止まりこちらへ振り向く。
「今から時間少しあるか?」
あたしは質問の意味が咄嗟に理解できずに戸惑ってしまうがあたしは八幡の”瞳”をメガネ越しに見てしまった。
何時ものような気の抜けた視線ではなく幾つもの死線を潜り抜けて様々なモノに染まってしまった覚悟の視線。
今のやり取りに少女漫画のような甘さも優しさも微塵もない。
今にも喉元に白刃を突き付けようかと言うような迫力が今の八幡にはあった。
「ええ。大丈夫よ。それで?どんなところへ連れていかれるのかしら?」
おちゃらけでもしなければ呑まれる、とあたしはそう確信した。
「来いよ。」
先ほどまでの視線はなくなり何時も通りの良い意味で気の抜けた雰囲気で纏いやはり歩幅を合わせて肩を並べて駅まで歩くことになった。
(あ~もう調子狂う…。)
そんなことを思いつつ駅に到着したあたしは八幡と二人でキャビネットに乗っていた。
二人で帰るのなんて初めてかもしれない。
狭い室内(車両)で二人っきりになっているというのに八幡は反対側の窓に肘を着いて物思いに更けている。
その反応にあたしは心がざわついているような気がしてならなかった。
自分で誇るわけではないが其なりに母の血が入っているから顔立ちは整っていると思うし武術もやっているから体つきもだらしなくはない。
まぁ八幡の周りにいる女の子があたしから見ても美少女ばっかりだということもあるのだろうけど…それでも密室で女の子と二人っきりなのだからなにかしら反応をしてほしいという期待もあった。
それに物思いに耽っている八幡の横顔は今まで見たことがない表情だったのも心がざわつく要因だろう。
「なんなのよもう…。」
「なんか言ったか?」
八幡がこちらに振り向きあたしを見据えている。
「な、なんでもないわ…ところで一体どこに向かっているの?」
「ああ、言ってなかったな…まぁ着いてからのお楽しみだ。」
「はぁ?」
あたしは思わず間の抜けた声をあげてしまった。
会話は途切れ沈黙が車内に満ちる。
何故か身の上話を八幡にしてしまった。
「八幡。」
「なんだ?」
「あたしね…千葉家の本当の娘じゃないんだ。」
「…」
八幡は黙ったままだが此方を見て話を聞いている。
言葉を続ける。
どうしてそんなことを話しているのか自分でも分からなかったが八幡になら話してもいいだろうと思っていたのかも知れない。
「あたしは愛人の子なんだ。くそ親父が浮気で作った子供なの。」
語ることを止められなかった。
「エリカには兄弟がいたよな?」
八幡が聞いてきた。肯定した。
「うん、兄たちは本妻の子供…姉もいるけどね。」
あたしは姉の事は忌々しく吐き捨てるように説明した。
「あたしはあたしのお母さんが死ぬまで『千葉』の姓を語ることを許されなかったの。あたしが第一高校に入る一年前かな…お母さんが亡くなったのは。」
「エリカは父親の事は嫌いか?」
「大っ嫌いよ…あんな男。」
その事を告げると八幡は微笑を浮かべていた。
「お前と俺は似てる気がするかもな…境遇とかが。」
「それは言えてるかも?だからこんなことを八幡に言っちゃってるわけだし。」
「子は親を選べないからな…まぁ俺とエリカは兄妹に恵まれてるだけ未だましかもな。」
「あたしたち意外と相性良いのかもね?」
おちゃらけた雰囲気を出していたが不意に八幡の雰囲気が変わった。
「…エリカ。」
「何よ?」
「人を殺したことはあるか?」
「…。」
答えてくれ、と言わんばかりの無言の催促だった。
「…まだないわ。それでも専用のホウキがあれば相手を確実に殺せる技がある。」
「…。」
そのことに八幡は黙ったままだ。
その話を聞いてなんとも言えない表情を浮かべている。
「そんなことを聞いてどうしたの?八幡はあるの?」
逆にこっちが質問をすると意を決したように答えてくれた。
煮えきらなかった回答だったが。
「エリカは自分の手が汚れる覚悟はあるか?今度の敵は、学校を四月に襲った連中とは比にならない。マジモンの戦争になるだろうよ。だからこそ俺はお前達に関わってほしくないと思っている。」
その先を言わせないと、あたしは遮った。
八幡の瞳を見ながら答える。
「あたしはお母さんの娘で千葉家の人間よ。覚悟はあるわ。」
その場かぎりの言葉ではなく本心からの言葉を告げた瞬間八幡の雰囲気が変わった気がした。
「そうだろうな…だけど問題事に突っ込むその質はエリカ自体を危険に巻き込んじまう。…それにその手を血に染めるってことは未来永劫拭えない染みに変わりない。」
重みのあるその言葉に思わず理由を問いただしたくなったがそうは行かなかった。
ちょうどキャビネットがとある豪邸へと停車したからだ。
ドアを開けて八幡が外へ出るとそこは都心に程近い市街地の一角だった。
「ここって…。」
「着いたぜ。ようこそ”
先に下りた八幡から手を貸されるように差し出された手を取ってキャビネットから降車するとあたしの目の前にはウチとは比較できないほどの豪邸がそびえていた。
「へ?」
「エリカ、今からお前のその実力を俺に見せてくれ。今度の戦いは必ず流血がある。そんな気持ちなら俺はお前を連れていくわけには行かない。俺はそれを容赦なく叩き折る。お前の得意なフィールドでな。」
「…!上等よ。」
◆ ◆ ◆
翌日、魔法科高校の1-Aと1-Eの教室に七草八幡と千葉エリカの姿はなかった。
昼食時、食堂に入ってきた深雪達だったがすれ違う生徒がぎょっとしていたのは気のせいではないだろう。
何時も隣にいるはずの少年が居ないことがその不機嫌さを助長している原因だろう。
見られていることなど気にもせずに深雪達は真っ直ぐ迷い無く、達也達のテーブルへ向かった。
「お兄様、お待たせしました…はぁ…。」
こちらへ向かってくる深雪だったがその表情は明るくない。
思わず苦笑いを浮かべてしまう達也だった。
席取りをしていた達也はレオ、幹比古と美月が食事が乗ったトレーを持ってきたので入れ替わりで食事を取りに行く。
元気のない深雪に声を掛けて食事を取りに行く。
達也、深雪、ほのか、雫の四名は配膳台へと向かう。
達也に突き刺さる視線は深雪の尊敬の視線とは異なり羨望と嫉妬の視線だった。
◆
達也達四人を出迎えたのはレオと幹比古と美月の三名だけだった。
「あれ?エリカは履修中なんですか?」
「それを言ったら八幡もいないみたいだけど…」
ほのかがなにげなしにこの場に居ないエリカについてEクラスの達也達へ質問をしていたのだが同時に幹比古もこの場に居ない中心人物の所在を同じクラスのほのかに聞いていた。
タイミングが被り若干の気まずさはあったものの達也がエリカについて、深雪が八幡について説明してくれた。
「ああ、エリカなら今日は恐らく休みだ。」
「吉田くん、八幡さんなら今日はご実家の用事が有るとかで休みだそうです。」
「エリカと八幡が?」
「ああ。」
達也が頷いた後に燃料を投下してしまった。
「そういえば昨日実験器具の作成途中にちょっかいを掛けてきたエリカを先輩から遠ざけるために手を引いて帰っていたな…。」
ガタッ、と椅子から立ち上がったのは深雪を初めとして雫、ほのか。
その表情は思わず達也も真顔になってしまう程の迫力だった。
「深雪。」
「はっ…!申し訳ございませんお兄様…。」
「心配なのは分かるが八幡がそんなことをする人間ではないのは分かっているだろう?それにエリカも昨日は調子が良かったが今日の朝に体調を崩したのかもしれないしな。」
「そ、そうですよね…」
心配そうにしている深雪の姿に新鮮味を覚えつつ達也は自分の妹にこんなに心配にさせている八幡に対して今度会ったら脛を蹴ってやろう、と人知れず決意していた。
◆ ◆ ◆
七草家には離れがあり魔法による材質強化がされた武道場が新たに設置されていた。
これは八幡が『アスタリスク』と呼ばれた学戦都市にいった際に習得した剣術を修練するためと小町と『四獣拳』の組手を行うために自分のポケットマネーを投じて作られた場所だった。
この場所を使うのは八幡とその妹である小町だけが使用しているのだが今日に限ってはそうではなかった。
「エリカこれ使え。」
ひょいとエリカに投げつけ八幡は怒られた。
「刀を投げるバカがどこにいるのよ!」
「ここにいるじゃねーかよ。あと抜き身じゃないから大丈夫だ。」
「もうっ…ってスッゴいなにこの業物…?」
エリカは八幡に手渡された鞘から刀を引き抜くと美しい刃紋が浮かぶ白刃が現れた。
「構えろエリカ。」
「…!」
「お前の得意なフィールドでお前の実力を見せてくれ。」
「後悔しないでよね…!」
エリカは声を掛けられて八幡を見ると直ぐ様に刀を構えた。
八幡の構えは正眼の構えではなく刀を握り顔の真横で肩の位置と同じと言うどちらかと言えば幹竹割りではなく突きを初手に放つことが出来る構えだった。
それを受けてエリカも得物を持って構えた。
静寂が支配するがその均衡を破ったのは八幡だった。
その空間で一組の男女、八幡とエリカが胴着姿で互いの実力を図るために相対していた。
道場内に白刃といぶし銀の刃が煌めき剣激音が道場内で響き渡る。
エリカは目の前にいる八幡の太刀筋に何時ものような気だるげさは感じられなかった。
(なんなの…!?本当に八幡素人なの?この剣筋は素人じゃないわよ!)
殺したくないから手加減をして確実に相手を行動不能にする技巧の剣、そんな印象を与えられた。
本当の実力者だからこそ出来る技巧だろう。
大振りな太刀筋ではあるがそれすらも緻密な隙を見せない連続攻撃のいぶし銀の刃がエリカの持つ得物とぶつかり合う。
まるで折り紙で鶴を折るように正確な手順でエリカに反撃の手を許さない連続攻撃を与える。
エリカも自己加速術式を使い辛うじて追い付いている状態だ。
(まさか剣の型を寸分狂わずに繋いでいるって言うの?)
そこに気がつくのは実力者であるエリカなのだからだろう。千葉流剣術を納める印可、剣の腕ならば八幡は知らないが摩利よりも上なのだ。
しかし対する八幡は刀藤流剣術、この世界には存在しない剣術。
宗家の娘より手解きされその父親を打ち倒し奥伝まで習得した皆伝だ。
場数であればエリカよりも上だろう。ずっと戦い続けていたのだから。
数百と言う打ち合いに八幡が自分にレベルを合わせていることを感じとり剣士としてのプライドが傷つけられた気がした。
あたしの剣がバカにされていると。
自分に残された唯一の取り柄を。
恐らく本気を出せば既に二桁は死んでいるかもしれない剣戟の応酬にエリカは苛立っていた。
冷静さを取りこぼしていく。
しかしながらがむしゃらではなく烈火の如く、といった方が良いほど苛烈だった。
対する八幡の剣は冷静に正確無比に防いでいる。
「舐めているの!?」
「舐めちゃいない。殺さないように手加減するのが大変なんだよ。特にエリカみたいなか弱い女の子にはな。だからこそ今度の戦いにはつれていけない。」
「ふざけないで!あたしは弱くなんてない!」
八幡からの煽りに冷静な判断が出来なくなっているエリカはキレた。
エリカはまるで元々自分用にあるかのごとく完璧に調整されたホウキで目の前にいる八幡を殺す勢いで必殺の一撃を放つ。
「剣士が冷静さを失ったら終わりだぞ…。」
八幡に掻き乱され普段のように冷静さを失ったエリカはがむしゃらに攻撃を仕掛ける。これが並みの兵士や剣士であれば既に斬り殺されているだろう。
エリカのサイオンが爆発する。恐らく”秘剣”と呼ばれる千葉家の剣術なのだろう。
山を斬り津波を切り裂くその一撃を八幡は正眼に構えた神速の連剣によって叩き落とされた。
「”連鶴”」
刀身に八幡の莫大なサイオンが集約される。
淀みない連続攻撃で
「うぐっ…!!」
エリカは得物を手落とし、鮮血が飛び散り道場の床を汚していく。
正確な攻撃に腱が断ち斬られ鮮血で汚れた地面に仰向けになるようにエリカは倒れ込んだ。
白い胴着が血で汚れた。
エリカは痛みと悔しさで感情がぐちゃぐちゃになっていた。
自分が積み重ねてきた剣士としてのプライドを打ち砕かれたからだ。
(敗けたの…あたし。)
遠くなる意識のなかで不意に体を抱き抱えられる感触を覚えた。
声が聞こえる。
「悪いなエリカ。でもこうしなきゃお前の考えは変わらんだろ。」
「…だからって手足の腱を断つのはやり…過ぎよ…それで、あたしはお目にかなった?」
そういってエリカの意識は落ちた。
しかし落ちる寸前に抱き抱えている八幡の声が届いた。
「ああ、しっかりと届いたよ。お前の覚悟もな」
抱き抱えている八幡の利き手からは夥しい血が流れていた。
◆
「うん…。」
エリカの目が覚める。
寝起きの覚醒していない頭で辺りを見渡すとそこは飾り気はなかったが清潔感のあり高級ホテルのようだった。
「あたし…そうか八幡と勝負して…敗けたんだった。」
エリカは八幡と打ち合った事を思い出した。
必殺の剣を八幡によって打ち砕かれたことを。
「あ~あ千葉の剣が敗けちゃった…だけど…」
エリカは八幡が使う剣術が見たことのない剣術だったことに疑問を持った。
「八幡が使っていたあの剣術はなんだったんだろう…見たことのない古流剣術だったけど…。凄く綺麗だった。」
その剣術について聞いてみようと思いベットから起き上がると今の自分の服装に驚愕してしまった。
「な!なによ、この格好////」
起き上がったエリカの姿は胴着ではなく何故かベビードールを着用していた。
明るい色のかなり過激なデザインをだ。透けていて大事な部分は必要最低限な布でしか保護されていない。
「な、なんでこんなの着てるのよあたし…?…手首の傷がない?」
ふと自分の手首を見てみるとあのときに斬られた筈の手の腱がそのままだった。
ベットのとなりに何故か立て掛けてあった木刀を握る。
何時ものように握れており痛みもない。
何事もなかったこのような状態になっていた。
「足もなんともない…。夢だった?」
ベットから起き上がる。
当然のように痛みもなく普通に動けていた。
しかし、あのとき斬られたときの痛みは覚えている。
頭に残る不思議な感覚に頭を抱えていると部屋のドアをノックされた。
「ひんっ!」
エリカは思わず変な声が出た。
『?俺だ。入っても大丈夫か?今変な声がしたけど…』
ノックの主は八幡だったようだが今の姿を見られるわけにはいかないので慌ててベットに戻りシーツを被るようにして頭だけを出すようにして部屋へ招き入れる。
『ちょ、ちょっと待って!!…うん大丈夫!』
「入るぞ?」
部屋に入ってきた八幡の姿は胴着ではなく制服に着替えていた。
「?なんでシーツを被ってるんだ…具合は?」
「へ、平気よ。の、ノックしないさいよね!」
「いや、しただろ…。まぁそのくらい騒げるなら大丈夫か。」
「ん?いい匂い…あ。」
八幡の方からいい匂いが漂っている。
「ああ、丸1日眠っていたからな…腹が減ってるだろうと思って朝飯作ってきたんだが食うか?」
ぐぅ~。
「あ…///」
エリカが戴こうかな、と言うと思ったが言葉よりも行動で示した(腹の音)為思わずエリカは恥ずかしさからシーツに顔を埋めてしまった。
「サイドテーブルに置いておくから…」
「うん、ありがと…!?ま、待って!」
「ん?」
エリカはシーツを取ろうとしたが今の格好を思い出し慌てて踏み留まった。
「は、八幡が食べさせてよ…。」
突然の食べさせろ、に八幡は怪訝な顔を浮かべる。
「いや、もう元気なんだから自分で食べろよ…。」
「…」
「わーったよ…。」
しおらしいエリカの態度に思わず頭を掻きそうになるが押し問答になると感じ素直に八幡はエリカのベットに座りサイドテーブルに食事を置く。
日本らしい主食に米、主菜に鮭の塩焼き、副菜にほうれん草のおひたし、汁物にワカメと葱の味噌汁のベーシックな食事だ。
切り身を女の子が食べきれる大きさに切り分けこぼさないように空いている手を皿にしてエリカの口へ持っていく。
「ほい。」
「うん…あーん…美味しい。」
「そりゃ良かった。」
お行儀良くモグモグと咀嚼する様に八幡は思わず庇護欲を掻き立てられたがエリカは同級生であることを思い出し食事を続ける。
余程お腹が空いていたのだろう。綺麗に食べ終わった。
「…ごちそう様でした。」
「お粗末様。」
サイドテーブルに空になった食器を重ねてHARに流しに持っていくように指示してエリカのいるベットの横に腰を掻ける。
「ごめんなエリカ。」
「え?」
突然の謝罪にエリカは頭に疑問符を浮かべた。
「悪かった…お前を弱い、何て言っちまってさ。ごめん。」
「…いいのよ。技を磨いても心は強くはなれないから。」
「いや、エリカは強い。」
「え?」
まっすぐに八幡はエリカを見据える。
「あの一撃は俺に届いていた。ほれ。」
そこには包帯が巻かれている八幡の腕があった。
「そっか…届いてたんだ…。」
「ああ。」
「それで?お目にはかなった?」
「流石、としか言いようがないけどな。」
八幡は後ろを振り向きエリカに告げた。
「エリカはもっと他人を頼っていい。まぁ、お前が言うな。って思うかもしれないけど血の繋がっている家族より”心”で繋がっている赤の他人の方が素直に生きられるだろ。」
「ソースは八幡?なにそれ。…でも説得力はあるわね。」
クスリと笑うエリカにおどけて八幡は告げた。
「実体験だからな。…妹達や姉さん、達也達に深雪、それにエリカも既に俺の護るべきリストに入ってるんだ。心配はないって言うのは嘘になる。もし仮に目の前で誰か一人でも傷つけられることになれば俺は自分自身を許せなくなって暴れるだろうな?だからこそ面倒事に突っ込むエリカの心を折りたかったんだが無理だな…。」
「八幡…。」
クルリとエリカへ向き直る。
その本気の決意にエリカの心は揺り動かされた。
「俺が俺で居るために、戦うエリカを護らせてくれ。そしてエリカが俺を護ってくれ。」
「!?…そ、それってズルじゃない八幡…!!////」
「?大声上げてどうした?利害は一致してるんだから無問題だろ。」
「そういう問題じゃないわよ!…あ。」
勢いで思わずベットから立ち上がってしまったがエリカは今自分がどんな格好なのかを思い出した。
「きゃあああああああっ!!?」
叫びが客間に響き八幡は思わず肩を抱いて踞り涙目を浮かべ此方をにらむエリカの姿をまじまじと見てしまっていた。
ハッと我に返り目を腕で隠す。
「え、エリカ!何て格好してんだお前!?」
「し、知らないわよ!あ、あんたが着せたんじゃ…。」
「俺じゃねーよ!倒れた後にうちの家政婦さんに任せた…ってまさか家政婦さんか…?」
再び腕で隠した視界を開いてエリカの格好を確認する。
普段の快活な彼女からは想像できない色気に目を奪われてしまう。
エリカのスレンダーながら出るとこは出ていて良く締まった括れに扇情的で大事なところは最小限の防御されていないその格好は思春期男子にとっては毒にも等しい甘い密であった。
「み、みるなバカァ!!」
◆
制服に着替えるために八幡を追い出したエリカは未だ頬の熱が引けきっていない。
「何なのよもう…。」
着ているベビードールを脱いでクリーニングされた下着を着けベットに腰掛けストッキングを着用する。
「あたしも深雪達と同じかぁ…。」
シースルーのワンピースを着用し背後のファスナーを閉める。
「八幡の事…好きになっちゃった…。」
上着を羽織り腕を通し鏡の前に立ち下ろしていた伸びているセミロングの明るい髪を束ねてポニーテールにする。
何時もの”千葉エリカ”になった、筈だった。
「はぁ…。あんなこと言われたら好きになっちゃうじゃない。」
鏡に映るエリカの姿は何時ものような明るい雰囲気ではなく想い焦がれる乙女の姿が映っていた。
八幡に言われたことを思い出す。
『俺が俺で居るために、戦うエリカを護らせてくれ。そしてエリカが俺を護ってくれ。』と。
「…まぁ八幡ならその意味は『俺自身の精神の安寧のためだ』って言うんでしょうけど…はぁ。」
思わずため息を着いてしまう。
意図はない。まさしく言葉通り。
そう言うことを言うやつなのだとこの数ヵ月で分かっているからだ。
「まぁ、あたしもその一人になっちゃったんだけどね…今までなら外からみてれば良いだけだったのに…深雪達の事を笑えないわ。」
一昨日までいちゃついている八幡達をからかうので良かったのに今度はからかわれる側になるのかと少し憂鬱になったが一番の問題は…。
「これ深雪達に気づかれないかなぁ…。」
今、エリカが置かれている状況が不味かった。
→先日に達也の前で八幡から手を引かれて下校→次の日一緒に学校をズル休み→エリカが気を失って1日経過で一緒に登校の準備をしている→今ここ。
「いや、絶対気づかれるでしょこれ…どうしよ…。」
思わずため息を着いた。
「あーもう!何かムカつくから八幡に全部なげちゃお!」
全て責任は八幡に投げてしまおうとそう決意し宛がわれた客間の扉を開いた。
扉の先に既に着替えて壁にもたれ掛かりエリカを待つ八幡の姿があった。
無性に触れ合いたくなった。
「はーちまんっ!」
「…なんで俺の腕を絡めるのよエリカ?」
「え~?あたしをキズモノしたんだから責任とってよね?」
「人聞きの悪いこと言わないでもらえる?おまえ絶対それを公衆の面前で言うなよ?」
「さぁ~どうでしょう?それは八幡の行動次第かな~」
「こいつ…。」
「…あたしが八幡の枷になったげる。」
「?なんだいきなり。」
唐突な宣言に首をかしげる八幡にエリカは追い討ちを掛けた。
真面目な表情になるエリカ。
「好きだよ、八幡。」
「…は?」
「あたしたちが八幡を護ったげるから八幡があたしを護ってね。そしてあたしをその気にさせたんだから責任とってよね?」
眩しい笑みに八幡は自分を慕う同じ感情をぶつけられて困惑するしかなかった。
その理由が八幡には分からなかった。
「お、おう…」
「はい!これで言質取ったわよ?じゃ学校に行きましょうか?」
となりには普段とは違う”千葉エリカ”がそこに居たのだった。
腕を絡めて取って八幡をつれていく。
「どうしてこうなった…?」
八幡は頭に疑問符を浮かべるしかなかった。
導入まで雑だったかもしれないですけど許して…。
家族に対してエリカは父親と姉にしか悪感情を向けていなかったのでこの流れでいいかなと…。
解釈違いではないと思う…かな?
八幡とエリカのラブコメが始まったのでレオくんの強化イベントが消えました。(仕方ないね♂)
レオは個別で八幡が強化アップアイテムを上げるので大丈夫です。
八幡が護らなきゃいけない人間がどんどん増えていく…。
取り零せずに幸せに出来るかな?
八幡がエリカに聞いた「誰かを殺したことは有るか?」ですがこれは後程…。
まぁありきたりな設定にならないことを祈っていてください。
一応ここで原作に置ける『横浜騒乱編』上巻の半分ぐらいですね。
まだまだ先が長い…。
オリジナリティを出していけたらいいなと思う今日この頃です。
お読みいただいてありがとうございます。