俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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最新話です。
今回の話は短いかな…。
オリキャラが出ますが本編と関わりがないので詳細の設定はあまりないです。
(お役立ちキャラだと思ってください。)

感想&評価ありがとうごさいます。

それではどうぞ!


胎動

十月二十九日。土曜日。この日の授業はどのクラスも自習状態だった。

1-Aのクラスには本来いる筈の生徒がおらず、その生徒の席付近にいる黒髪ロングの美少女が教室の温度を下げていることにも当然ながら居ないので気がつかないが近くにいる親友達が宥めていた。

その光景を見て寒さに震えるクラスメイト達はこう思ったことだろう。

 

『お前の連れだろなんとかしろよ!!』と。

 

その渦中の人物はと言うと…

 

「今日もいい天気…っと」

 

屋上には人工芝が敷き詰められおり地面に寝そべりながら近くにはお馴染みの飲料缶が置かれてサボり、もとい休憩をしていた。

 

「ふぁ~…そういや論文コンペは明日か…そうなれば俺の役目も御免。」

 

結果としてこないだの特別鑑別所での襲撃から第一高校への攻撃は鳴りを潜めていた。

大亜連合特殊部隊のエースである呂剛虎を拘束したことで攻撃の手が止まったのだろうが実行犯が捕まっただけで指示役である人間はまだ捕まっていない。

姿は割れてはいるが身柄は拘束できていない。

更に横浜の埠頭に船舶が停泊したままなので論文コンペに襲撃を仕掛けることは確率的にかなり高い。

かといって八幡が持っている”あの魔法”を使うのは流石に(はばか)られた。

 

真由美たちの安全を守るためには使用せざるを得ないが出来ることならば”奥の手”は使いたくないと言うのが本心だった。

 

しかし、目の前で真由美達が危機に晒される場合があれば後先のことを考えずに使うぐらいには達也や深雪達には入れ込んでいることに八幡自体は気がついていない。

 

「達也が仕事しないと俺はただの随員だからなぁ…開店休業状態、ヒモ男ってこんな気分…なんか悲しくなってきたな。ん?着信か。」

 

寝転んでいるところに端末が震える。

どうやら実働部隊のリーダーからの着信のようだ。

 

「俺だ。」

 

『私だ。』

 

いつもと同じように素っ気ない対応をしているがこれが普通なのだから仕方がない。

端末越しに少女が用件を切り出す。

 

『頼まれていた工作作業が完了した。あの物資量は骨が折れたがなんとかなった。』

 

「お疲れさん。取り合えず…」

 

『だが…』

 

戻ってこい、と言い掛けたが通信越しで言い淀んだ。

 

「どうした?」

 

『奴らが乗って来ていた艦艇のパソコンに作戦予定図が入っていた。』

 

「そんな重要なもん良くあったな。」

 

『まぁ、情報収集のためにわざと捕まって司令官らしき男の部屋に連れ込まれて複数名の男の相手をさせられる前に全員無力化して部屋のパソコンを調べたら奴らの目的は日本関東魔法支部の制圧、そこに保管されている魔法データの奪取、並びに魔法論文コンペティションに参加する魔法師達の拉致が目的のようだ。』

 

前述した下りを聞いて俺は顔をしかめた。

 

「…おいおい大丈夫だったのかよ。」

 

『心配してくれているのか?ふっ…無用だ。私が仮に魔法が使えなくともそのような男達に負けるわけがないのは知っているだろう?』

 

俺の表情を知ってか知らずかその様なことを言われて思わずバツが悪くなった。

 

「…まぁ無事なら言うことないけどよ。」

 

『…ありがとうな』

 

そう言うと優しく微笑まれた気がしてならなかった。

 

『…制圧した艦船と人員では両方は制圧できない。どちらか片方で両方を制圧する場合は恐らく追加の人員が予測される。』

 

「ちっ、結局戦わないと行けないわけか…。」

 

『そう言うな。実際に八幡が呂剛虎を倒してくれたお陰で奴らの計画が随分と狂ったようだしな。』

 

「随分粘着されて困ってたからな…。」

 

『モテモテじゃないか?』

 

「嬉しくねぇ…。」

 

あんなむさい男に迫られるのはごめん被る。

 

『私たちはここに残って論文コンペ当日に起こる行動を対処しようと思う。其でなんだが八幡…。』

 

「向こうでので協力者の選定は任せる。俺の名前を使っても良いぞ。」

 

『そうか…であればどうやら私たちと同じく奴らについて調べている人物が二名ほどいたのでその者達に協力を仰ごうと思う。』

 

「誰だ?」

 

端末へデータが送られて俺は目を疑った。

 

『国防陸軍101旅団独立魔装大隊所属、藤林響子少尉と警察省千葉寿和警部だ。』

 

「藤林響子…老師のお孫さんと…エリカの兄貴か…。」

 

『千葉家の長男がどうかしたのか?』

 

「…いや、何でもない。てか老師のお孫さん国防軍にいたんだな。しかも独立魔装大隊か。」

 

『噂だと戦略級魔法師がいるようだが…。』

 

独立魔装大隊、『大天狗』と呼ばれるゲリラ戦のプロである風間玄信が隊長を務める国防軍の魔法師部隊だったな。

所謂噂話程度には聞いていたが国防軍のその部隊には”戦略級魔法師”がいるとごく一部の関係者で噂になっていた。

まぁ、戦略級魔法師と言うのは立場的に大きな制約が課せられる。それこそ”物”と変わらない。

”歩く核弾頭”のようなものだからだ。

…だからこそ俺の”この魔法達”を家族や友人達に知られるわけには行かないのだ。

 

「だったら襲撃の際に力を貸してくれそうだな…協力を仰いでくれ。」

 

『了解した。八幡もこっちに来るときは気を付けてくれ。』

 

「ああ。」

 

そう言って通信を終了して人工芝へ寝転び腕を伸ばす。

 

「”あれ”を使わないことには越したことはないが…。」

 

俺の呟きは屋上に吹いた一陣の風に描き消された。そうならないことを祈るように。

 

◆ ◆ ◆

 

本来であれば達也の護衛として論文コンペの調整場所へ向かわなくてはならないのだが達也より連絡があった。

実際に達也のチームメンバーでありリーダーの市原先輩が所用により午後からの登校のため手持ちぶさたになっているのだ。

八幡はと言うと課題を出されていたがすぐに終わらせてこの教室に来ていた。

深雪達にはバレないようにするりと抜けてきた。

既にバレているのだが。

 

「昼寝でもするか…雨も降らんしな。」

 

襲撃が予測されるであろう論文コンペへの対応策を今出来る最大限の手を尽くしたのでその事を一旦忘れて昼寝をすることにしたのだったが屋上へと続く扉が開かれた。

 

「あ、見つけた!八幡こんなところにいたの?」

 

「…エリカか。」

 

「何してるの?」

 

「見りゃわかんだろ。日向ぼっこだよ。」

 

「授業は?」

 

「自活でやることも終わらせたから。」

 

「はぁ…呆れた七草の長男がそれでいいの?」

 

「いいんだよ。俺は俺だしな。」

 

近くまできたエリカは俺を呆れた表情で見ている。

 

「ふぅ~ん…ねぇ八幡。」

 

「あ?」

 

寝転ぶ八幡に顔を赤くしたエリカが近づいて隣にお行儀良く正座して座り込んだ。

 

「…何してるんですかエリカさん?」

 

「あ、あたしも天気がいいから日向ぼっこしようかな~って。」

 

「いや、ここじゃなくていいだろ。」

 

「あたしは…あんたの隣がいいの。」

 

ぼそり、と呟いた言葉が八幡の耳にこびりついた。

 

「お、おう…。」

 

「お、お邪魔します…」

 

エリカは足を崩し寝転ぶ八幡と同じ体勢になり日向ぼっこを始めた。

 

「…///」

 

「…///」

 

会話はない。

二人とも顔を赤くして日向ぼっこをしている。

 

(あたし…なんで八幡と日向ぼっこしてるんだろ…こんな光景を深雪達にみられたら大変ね…あたしスッゴくドキドキしてる…八幡もかな?)

 

エリカが気になり隣を見ると…。

 

「Zzz…」

 

エリカは切れた。

 

「なんで寝てるのよ!」

 

ドゴッ!

 

「いだっ!?な、何すんだよエリカ!」

 

「うっさいバカ!変態、八幡!あたしの気持ちを返しなさいよ!」

 

「何行ってんだお前は…てか別に名前は悪口じゃないんだが?」

 

ぽかぽか、と八幡を叩くエリカの様子は端からみればカップル同士にじゃれ合いにしか見えないだろう。

八幡を探しにきた深雪達に見つかるまでそれは続いた。

 

因にだが屋上が一瞬にして永久凍土になったとかならなかったとか。

 

◆ ◆ ◆

 

今年は会場が横浜のため第一高校は会場へ前乗りせずに当日に行く事になっていたが首都圏より遠い第三高校の面々は前泊していた。

”九校戦のように移動している際に事故に巻き込まれないとは限らない”からと言う理由だ。

代表チームの応援に来ていた愛梨達もその例に漏れていなかった。

愛梨を初めとした実力者達も論文コンペのメンバーの護衛として選ばれていた。

 

だた、愛梨は論文コンペの会場へ向かう理由は一割は義務感、二割は応援のため、残りの七割は八幡に会うためだろうとお馴染みのメンバーに言われ赤面していたのは想像に固くない。

 

「愛梨、そろそろ行くし。」

 

「あら、もうそんな時間…。」

 

自身の技能を高めるために魔法論文のデータをブルーカットの伊達メガネを掛けて見ていたが優美子に声を掛けられて外し使用していた端末の電源を落とし立ち上がった。

 

「ヒキオ…じゃなかった八幡に会うの楽しみ?」

 

「も、もうからかわないでちょうだい!」

 

愛梨はからかわれている…と思いながらもその想像を否定できないため目の前にいる友人に強く否定できずにいた。

 

「しょ、しょうがないじゃない…」

 

モジモジしながら優美子へ返答する。

 

「私が八幡さんのご自宅へ遊びに行こうとしたときに一緒に行く事になってしまうし…あの子が居るとその…」

 

「”告白しづらい”って?」

 

「う…はい。」

 

力無く項垂れる愛梨であった。

その姿をみて優美子は笑みを浮かべた。

 

「告白したもんがちだと思うけど?既に司波さん達は告白したって言うじゃん?」

 

夏休みの出来事を九校戦を経て友達になっていた愛梨達と深雪達は連絡先を交換して交流していた。

とある会話の最中でひょんなことからその事を知ることになり愛梨は出遅れたと思っていたが八幡に聞いても特段気にしているようすが見られなかったのでホッとしたが別の意味で焦ったと言う。

 

「まぁ…八幡だし。しょうがないじゃん?」

 

「いろはには悪いけど先に想いを伝えさせて貰うわ…。」

 

決意に燃える愛梨はバスへと乗り込むために歩きだす姿を見つつぼそりと呟いた。

 

「まぁ…八幡だし想いは伝わるだろうけど…八幡だし。…愛梨!待つし!」

 

優美子は後を追いかけた。

 

◆ ◆ ◆

 

「会談中に失礼する。」

 

「どなたかしら?」

 

響子と寿和のディナー中に一人の美少女が現れ声を掛けられた。

その少女は黒い露出度が高い黒いドレスで胸元が大きく空いておりその豊かな果実が実っており寿和の視線はそちらに誘導されていたがさして気にした様子もない。

なぜかその格好に不釣り合いな口元を隠す黒いマスクが付けられている。

怪訝な表情を浮かべる響子と完全に鼻の下が伸びきっている寿和の様子もお構いもなしに会話を続ける。

 

「ああ、すまない名前も名乗らずに失礼した。私は菜那崎佐織(ななさきさおり)、七草家、いや七草八幡の使いだ。」

 

「七草家分家の…?」

 

名前を告げたことで響子の佐織への関心が大きく向く。

少女はクールな表情を装っていた。

 

「(八幡の名前をだして良かった…これで『お前誰だよ』何て言われたものなら泣いちゃうぞ私は…)これを。」

 

少女は意外にも小心…いや結構な天然だった。

佐織は二人がいるテーブルの上へ一般的なデータメモリいわゆるUSBメモリーを置いた。

 

「これは?」

 

響子が佐織へと質問する。

テーブルに置かれたUSBメモリについてだろう。

 

「横浜埠頭に密入国してきている船舶に積んである兵器群の詳細、搭乗人数に進行経路が入ってる。」

 

「!?」

 

「い、一体どうやって…?」

 

響子は驚き寿和が呆然としていたが無視して会話を進める。

 

「それは企業秘密だ…恐らくだがそれが全部の戦力ではないだろう。追加の戦力も予測される。その情報を利用するかしないかはあなた達に任せる。」

 

それだけ言って踵を返し立ち去ろうとする佐織に響子が声を掛ける。

 

「これをどうして私達に?」

 

立ち止まり振り返らずに答えた。

 

「あなた達の立場ならば有用に使えるだろう?だから貴女達に渡した。それだけのことだ。失礼する。」

 

そう言って佐織はこの場から立ち去った。

 

「話題の七草家の長男の関係者ですか…」

 

「一体何者なんですかね七草の長男は」

 

「まぁただの高校生ではないでしょうね。」

 

響子の脳内に知り合いの男の子が思い浮かび最近の高校生は末恐ろしいと思ってしまった。

 

枚挙に暇がない今話題の”七草の長兄”と分家の人間の名前をだされてしまえば嫌でも信憑性が高まってしまう。

視線はテーブルの上に置かれたデータスティックに注がれるが響子がそれを手に取る。

 

「…警部さんにお願いしたいこと全部言われてしまいましたね。」

 

「と、言うことはつまり。」

 

何かを察した寿和は響子へと向き直る。

 

「明日の朝八時半に桜木町の駅へいらしていただけますか?部下さん達とCADと実弾銃も用意していただいて。」

 

「藤林さんそれは…。」

 

「彼女の情報も正しければ…私たちも動かないと本腰を入れないと行けないですね。」

 

自らの本職へと戻る前に藤林と寿和はワイングラスを傾けた。

これから起こるであろう事件に向けて今はこの時間を楽しむことにした。




菜那崎佐織…八幡が擁する実働部隊のリーダーで分家の一人娘。黒髪ロングの美少女で魔法技能と重火器の扱いに手慣れいるが少々世間知らずの面がある。体型はグラマー。という設定。

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