俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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そろそろ『横浜騒乱編』も終わりが見えてきたな…。


青龍乃型

歩兵&装甲車、直立戦車の部隊を退けた八幡達は小休止して推理をしていた。

外に倒れている死体は八幡が『灼熱地獄(インフェルノ)』で焼却しておりその光景に深雪達は八幡に対して微妙な表情を浮かべていたが見ない振りをしていた。

破壊した装甲車にもたれ掛かり休憩をしていた。

幹比古は八幡に先程自分達が対峙していた直立戦車の動きについて質問していた。

それに対して八幡は正確な答えを用意していた。

 

「先程投入されていたのは大亜連合の正式採用型の直立戦車だ。流石に所属を示すエンブレムは偽造…偽情報(ディスインフォメーション)。幹比古が戦った戦車が人間的な動きをしていたのは《ソーサリーブースター》を搭載していたからだろうな。」

 

「「「「ソーサリーブースター?」」」」

 

幹比古達が聞きなれない疑問を揃えて口に出す。

八幡は自分の頭をこつこつと指でつついての説明に不快感を覚えた。

 

「外付けの強化パーツ…所謂”魔法師の大脳”が納められた端末だよ。」

 

「趣味悪…。」

 

「胸くそ悪いぜ…。」

 

「なんと卑劣な…!」

 

「何てことだ…!」

 

「まぁその性質上全部が全部の機体に取り付けられていたみたいではないが其が機体と装甲車にあったんだろうな。まぁ趣味の悪い装置であることには変わりないが。」

 

「大亜連合が横浜を攻めに来ていたのは魔法技術の奪取と”装置の材料”もあるってこと?」

 

エリカが八幡に問いかけると「恐らくな」という返答が返ってきて明らかな嫌悪感を浮かべていた。

 

「それに大亜連合…大陸式の術式を使っているみたいだし。美月の力が必要かもしれないな。」

 

その事を告げると幹比古が真由美達と一緒にいる美月へ連絡をして手伝って欲しいと伝えると二つ返事で了承した。

…そこで美月と幹比古の関係をからかったり笑ったり怒ったりして緩い空気が流れていた。

 

 

侵攻軍…正確には大亜連合の総指令は刻々と状況が悪くなることに険しくなる表情を隠すことが出来なかった。

軍隊の展開が初期作戦の構想よりも早すぎたのだ。

そして民兵の抵抗は予想以上の抵抗を見せていて既に現地潜伏兵は6割が通信途絶している状況だ。

 

「無人偵察機、通信途絶。」

 

下士官から伝えられた悪い情報に情報に思わず舌打ちをしたくなるがここでわざわざ艦内の空気を悪くする必要はない、と妙なところで真面目な指揮官は最後の無人偵察機がやられても悪態はつかないように必死に押さえ込んだ。

既に潜伏しているひげ面の指揮官にイライラしつつ北上する部隊へ転進を命じた。

それは内陸方面、脱出用のヘリを待つ駅前広場の方面であった。

 

 

美月が駅前からグレイプニルに護衛されながら八幡達と合流している最中も花音達が交戦していた。

合流と同時に八幡達も交戦していた。

と、言ってもほぼワンサイドゲームであったが。

八幡達に向かって機銃とグレネードが一斉射撃されるが加重魔法により制御された重力波により全て叩き落とされた。

 

「爆ぜろ。」

 

八幡は放出系統魔法『雷電波動(ライトニング・ウェーブ)』は強力な電撃を相手にぶつけるの特殊な電磁波を発生させ発動。現れた敵兵士を装甲車ごと薙ぎ払っていく。

装甲車や直立戦車に搭載されている電子機器と武装は耐えきれず破壊され爆発する。

制御を失った装甲車が直立戦車へ激突し共に横転するのを確認し装甲車から涌き出てくる前に『結合崩壊(ネクサス・コラプス)』を叩き込まれて追加の兵力達はたった一人の学生の前に残骸と化して静寂を向かえた。

破壊された装甲車から視線を外して美月に声を掛けた。

 

「美月。」

 

戦闘が終了し一段落している美月は呼ばれて振り向いた。

八幡は別動隊の花音達の状態を確認していた。

 

「千代田先輩達がどういう状況なのかわかるか?」

 

「ええっと…場所は変わってないみたいです。現在も交戦中。」

 

「ありがとうな美月。…幹比古、こっちに敵は来てるか?」

 

呪符を構え瞳を閉じている。

周囲の気配を探ってくれているようだった。

 

「うん、こっち側の作戦領域側に敵の気配を確認…!…品薄みたいで大分数が少ないみたい。でも油断しないで!」

 

「そうか」

 

完全に一息つける…と思ったがそうもいかないようだ。

 

「な、なんですかあれ…。」

 

また別の問題が発生していた。

美月が遠くの駅前の上空をメガネ越しでみていると黒い雲のようなものが集まっているのが発見した。

美月の言葉に全員がその方面を見て驚いていた。

 

「《グレイプニル》、姉さん達を守れ。」

 

八幡は冷静に真由美達の側にいるグレイプニルに手首につけた長方形のブレスレットに短く告げると幹比古が察知した通り最後の増援が現れ全員が装備を構え対峙した。

 

◆ ◆ ◆

 

七草家の使用人が操縦する大型のVTOL軍用輸送ヘリと雫の家の使用人である黒沢《夏に別荘に向かうクルーザーを操作や身の回りのお世話をしてくれた人物》が民間のダブルローラーの双発ヘリが上空に姿を見せ順番に着陸しようと高度を下げようとしている、そんな最中にそれは発生した。

突如として発生した雨雲…ではなくそれは季節外れの蝗の大群…煌蝗だった。

ヘリの出迎えに来ていた雫はポーチからCADを取り出した。

小型拳銃そっくりのナハトモデルのセカンドマシン。

これは九校戦の際に八幡からプレゼントされたものだった。

そこにインストールされている魔法はこれも八幡が作成したデュアル・キャストの《レーヴァテイン》。

空に向けて引き金を引くと蝗の群れを薙ぎ払う。

 

「数が、多い…っ!」

 

昆虫が焼け死ぬ、というのではなく燃え尽きて消えていく蝗の群れへ魔法を放つが焼け石に水で蝗で構成された暗雲はヘリへと近づこうとしていた。

回り込もうとした群れがヘリに襲いかかろうとした。

その事にほのか気がついてはいたが雫が発動中の魔法に相克することの恐れとそもそもにおいてほのかの魔法は相手を傷つけることに秀でていない。

真由美も摩利も八幡が呼び寄せたヘリに同じく群がろうとしている蝗の群れへ魔法を仕掛けている。

 

蝗の群れが雫の実家のヘリに取り付こうか、としたその時。

雫達の護衛についていた白い機身がおもむろに手に持ったCADを上空に掲げた。

 

発動した紅い閃光が網目のように広がり暗雲を大きく絡めとり破壊した。

 

「「へっ?」」

 

まるで夏の蚊を絡めとるような”ハエ叩き”が如く蝗の群れを駆逐していく。

暗雲はその猛攻に耐えきれず消滅した。

その魔法を発動した者の先を追うように見つめる雫とほのか。

 

「八幡…の『自立思考行動型CAD(バイク)』君?」さん……?」

 

何故か「君」と「さん」づけで呼んでしまうほどの存在感があった。

困惑した声を挙げる二人に《グレイプニル》は茶目っ気にピースサインして見せていた。

その行動をするCAD?に二人は「八幡はなんでもありだなぁ…」と妙に関心してしまっていた。

 

「えーと…バイク君?」

 

そう雫が話しかけると《グレイプニル》は少し考える素振りを見せて喉に当たる部分をこつこつと叩くと少し機械音声じみたモノが聞こえた。

 

『正式名称は型式ナンバー:NT-XCAD-001『グレイプニル』です。バイク君、という名前ではありませんので悪しからず。』

 

「喋った…?」「喋った!?」

 

やたらと格好のよい声のCADだったことに雫は目を点にして、ほのかは仰天していた。

 

『声帯に当たる部分に振動魔法を発動させて声に似た周波数帯を聞こえるようにしているだけです。元にしている声は津○健次郎です。』

 

「そうなんだね。」「そうなんだ…。」

 

『呼びやすい呼び名でお呼び下さい。』

 

そういわれて雫は呼び名が「バイク君」ではなんだか味気ないと思い提案した。

 

「それじゃあ…『にー君』って呼んで良い?」

 

「それならわたしは…『ニル君』って呼びます。」

 

『……悪くはないですね。』

 

微妙な変化だがゴーグル部分の緑色に光るバイザーが一瞬だが点滅し”恥ずかしがっているように”二人は見えた。

その様子に雫とほのかは目の前の八幡より少し大きい機械の身体を持つCADに愛くるしさを覚えた。

グレイプニルは不意に上空を見上げて呟いた。

 

『どうやら八幡が自分に指示を下さずとも達也殿が対処してくれたようですからね。』

 

…余談だが先ほど蝗の大群、ではなく化生体の大群が殲滅された経緯は《グレイプニル》も”八幡と同様の演算領域を持ち”格納されている疑似魔法演算領域内で発動した『結合崩壊(ネクサス・コラプス)』を放出系統の魔法で拡散し移動系統で対象の座標に固定し”ハエ叩き”の如く応用した…という結論だった。

 

『あそこですよ。』

 

「ん?……達也さん?」「へっ…?た、達也さん?」

 

グレイプニルが空を指差して雫とほのかも視線を動かすと銀色のCADを構えた黒づくめのスーツ姿の人物がもう一機のヘリへ襲撃を掛けようとしていた蝗の集団を破壊しそれを同じくして同じ服装の集団が輸送ヘリを護衛を始めていたのだった。

一方では『白い機身(八幡が作ったであろうCAD)』をバイザーの裏から興味深そうに凝視する達也がいたことに指摘できるものは居なかった。

 

◆ ◆ ◆

 

蝗の大群の魔法…化成体の発生させた術者を排除するために銀色のCADを持つ兵士…というよりも達也がすごいスピードでビルの向こうへと飛んでいった。

直ぐ様ライフルを持った集団が上空で円陣を組むように護衛しヘリは着陸した。

 

「あの人達何者なんだろうねニー君。」

 

『達也殿が所属する部隊のようです。詳細は本人のために伏せさせていただきますが。』

 

グレイプニルは配慮できる人間?だった。

空を見上げる雫とほのかは未だに飛び続けている達也と同じ部隊の魔法師はとてもハイレベルな人物達というのはそれだけでわかった。

 

「でもすごく威圧感があるねニル君」

 

ほのかの言い分ももっともだが敵に対して威圧感を出すことは戦略的には間違いではなくその反応に一般人的な感想にグレイプニルは機械ではあったが好ましい感性を持っているとそう思った。

 

『頼もしい援軍であることにはかわりないでしょう。』

 

集まった市民をヘリに搭乗がほぼ完了しているのを見ながらそう述べた。

雫と護衛に残った警部補達を乗せたヘリが飛び立ち地上からの狙撃が到達したのを見届けた独立魔装大隊の飛行歩兵隊は周囲のビルへと飛び散った。

八幡が準備していた大型の軍用ヘリが着陸し初陣で乗せきれなかった市民達を乗せ始める…だが予想よりも人数が多いためか軍用の大型輸送ヘリは市民を収容するのでいっぱいいっぱいだった。

その誘導を真由美達が誘導していたが近づいてきた《グレイプニル》に真由美達は驚いていたが先の二名と同じ『八くんならありかなぁ~…』『八幡くんならそれもあり得るか…』と納得していた。

手配した機体は二機だったがもう一機上空で待機している戦闘ヘリから真由美へ通信が繋がった。

 

『真由美お嬢様。ご無事でいらっしゃいますか。』

 

コール音に答えて通信ユニットに耳を当てると自身のボディーガードである

 

「問題ありません。名倉さんはいまどこに?」

 

『上空で待機しております戦闘ヘリに搭乗しております。お嬢様と八幡さま。それにお友達方は此方に搭乗し脱出してくれ、と旦那様より仰せつかっております。』

 

「分かりました。…ただ市民脱出の退路確保のために戦闘中なので途中で拾うことになると思います。」

 

『もちろんにございます。』

 

こうして最後の脱出者となった真由美達は無事に駅前広場から脱出することに成功した。

途中で鈴音が市民に偽装した敵兵士に人質にとられる、という一騒動が起こったがいつの間にか背後に回り込んだグレイプニルが敵兵士に重力波動を当てて無力化していた。

 

『やれやれ…女性を人質に取るとはプライドは…あ、大亜連合の兵士には存在しませんですね。』

 

歯にもの着せぬ諫言に真由美達は思わず吹き出してしまった。

 

◆ ◆ ◆

 

十師族の二名が魔法協会前を死守していた義勇兵に交ざり戦闘を繰り広げているなかもう一人の十師族の義息は掛け無しの兵力を蹂躙していた。

 

重力に雷、炎に水流…と様々な魔法を連発し周囲にスクラップ工場と死体安置所が出来たのかと錯覚を覚える残骸の山が築かれていた。

無論それは一人ではなく学友と共に戦闘を行っていたのだったが”八幡の周囲にだけつもり重なっている”ということが異常だった。

それを息一つ上げずにその惨状を作り上げた八幡に流石のエリカ達も困惑の表情を浮かべていた。

その一方でうんざりしたような表情を浮かべる八幡がいた。

八幡達を回収するヘリコプターが此方に向かってきている、という情報を聞いて周囲の敵兵を全滅させた一同はビルの角でほっと一息つく。

 

「どんだけ沸いてくんだ。夏場に出る”あいつ”らかよ…。」

 

”あいつら”という言葉にエリカが反応し肩を抱いてぞわっとしていた。

 

「ちょ、ちょっとやめてよ…。」

 

その反応に八幡は男子小学生が女子小学生にする”あれ的なこと”をし始める。

 

「俺もガキの頃しか見たこと無いが”あいつ”らは夏場になると妙につやつやして…」

 

「いやぁ!深雪ぃ!」

 

「はいはい…八幡さんもそれぐらいにしてくださいね。それにしても意外だったわ。エリカって意外にも女の子っぽかったのね。」

 

「む、虫は本当に無理っ!…ってどういうことよ深雪っ。」

 

「和やかな雰囲気にしようと思ったんだがダメでしたね…。」

 

「いや、和やかにはならないと思うよ?」

 

「たまに思うんだが八幡の語術センスがよく分からん時があるぜ…。」

 

「あはは…。」

 

他三人からツッコミを貰ってしまった。

妙につやつやしている黒光りするイニシャル”G”の姿に殺意をもって向かってくる敵兵士よりも”そいつ”に恐怖し涙目になって深雪に抱きつくその姿に八幡は「弱点発見」となったがこれ以上やると涙目のエリカに獲物で叩っ斬られそうなので「ごめん」と一言告げてエリカの頭を撫でると軽くどつかれていた。

 

「あいたた…ん、来たみたいだな。」

 

八幡がエリカといちゃつき?をしているとヘリのローター音が周囲に木霊していたので八幡が言うまでもなく全員の耳に届いていた。

距離にしてちょっと走れば戻れる場所で防衛戦を構築していたが戻るには面倒だしヘリが着陸する時間を考慮すれば迎えに来て貰った方が楽だ。

しかし何時まで経ってもヘリの姿は見えない。

八幡は上空に《瞳》を凝らすと陽炎のようなものが揺らめいているのに気がついた。

 

「光学迷彩…ほのかの光屈折魔法か。やっぱり流石だな。」

 

そんなことを思っていると八幡の端末に着信が入る。

音声ユニットを耳に装着すると気になれた姉の声が聞こえた。

 

『八くん聞こえる?悪いんだけど着地場所がなくて…って何このスクラップ工場。』

 

「敵がはしゃぎすぎてこっちに兵力を割きすぎたんだろ…って悠長に話してる暇は無いか。」

 

『ロープを下ろすからそれに掴まってくれる?』

 

「了解した姉さん…んじゃさっさと帰るか。いくぞ。」

 

「あ、ちょっと八幡!」

 

八幡が末端のタラップに足を掛けると自動でロープが巻き取られ上空へ登っていく。

他の四人も深雪を筆頭に八幡の後を急いで追うようにタラップに足を掛けて登っていった。

 

先にヘリに乗り込んだ八幡の目に入ったのはヘリに光学迷彩の術式を施しているほのかが目に入る。

移動する景色、尚且つ建物や情景をスクリーンに投影を維持するのは非常に高度な技術だ。

細かいこの調整はほのかにしか出来ないと八幡は思ったが必死に頑張っているほのかに横やりをいれるのは忍びないと思い同じヘリに乗り込んでいるグレイプニルに指示を出す。

 

(グレイプニル、ほのかの援護をしてやってくれ。)

 

(了解です。)

 

八幡が量子通信で指示を出しグレイプニルの疑似演算領域を起動させほのかの魔法演算領域に干渉させる。

維持させる魔法式をグレイプニルが代替し負担を軽減させる。

 

「あ、あれ?なんだが凄く軽くなった…?」

 

『大丈夫ですかほのかさん?』

 

「ニル君?」

 

『失礼ですが光学迷彩を維持するのが辛そうだったので干渉させて貰いました。』

 

「そ、そんなことも出来るんだね…。でもありがとう。凄く楽になったよ。」

 

『お礼ならマスターへお伝えください。そう指示したのは八幡ですので。』

 

「へ?」

 

唐突な暴露に思わずグレイプニルにプロレス技を掛けようとしたが言葉を続けた。

 

『辛そうなほのかさんを見てマスターが助け船を出したんですね。』

 

「てめっ…!」

 

その事を告げられて動きが止まりばつの悪そうな表情を浮かべている八幡に負荷がかなり楽になったほのかが笑みを浮かべながらお礼を告げた。

その光景に後から来た深雪達もその場面と言葉を聞いていたのかヘリ内部に緩やかな空気が流れていた。

 

しかし一方で回収する筈だった摩利達は未だに戦闘を続けていた。

決して彼女ら、彼らが実力で劣っていた、というわけではない。”数が多すぎた”のだ。

ほとんどの侵略兵が中華街への中心周辺に移動しているのは知っていたが直立戦車や装甲車、歩兵にはハイパワーライフルに本来持っていない筈のCCM(カウンターカウンターメジャー)が搭載されたスティンガーミサイルを装備する兵士と魔法師が混在している部隊より猛攻撃を受けていた。

降下するのも非常にヘリ側としても非常に危険な状態だった。

それを視認した真由美と八幡は援護に入る。

 

敵兵の身体に雹が降り注ぐ。

氷の粒ではなくドライアイスの弾丸が超音速で降り注ぎ防護服を貫通する。

真由美が得意とする《魔弾の射手》が発動し360度どこから撃たれるかも分からない弾幕を敵兵士は避けることは出来ずに薙ぎ倒されていく。

 

装甲車と直立戦車を相手取るのはその弟である八幡で次々とスチール合金製の機体に熱したバターのように穴が穿たれていく”確実に人が乗っている部分を正確に撃ち抜いていた”のだから。

振動系統魔法、雫も使っていた魔法《レーヴァテイン》を二丁のCADと『次元解放(ディメンジョンオーバー)

のストレージ内部に格納していた予備CAD”六丁”を遠隔で同時展開し《詠唱破棄》で同時発射した。

増幅された音の共振が死の光線となって上空から敵に降り注ぎ壊滅させた。

 

ステルス状態の上空拠点から地上からの殲滅。

完全なる不意打ち(ハイドアタック)はもはや八幡と真由美の魔法も”禁じ手”に近い制圧方法だった。

その光景を敵兵士と戦闘していた摩利は先の魔法は真由美と八幡くんだろうな、若干引きつつ内心で釈然としないといった心情だったが渡りに船だと自分に言い聞かせ飲み込むことにした。

 

『お待たせ摩利、ロープを下ろすから上がってきて。あ、ちょっと八くん!?』

 

『…!?』

 

真由美の声が聞こえた…思ったがその後ろで誰かが動く気配を感じたがひとまず後方にいた二年生に声を掛ける。

後方から五十里と花音、桐原と紗耶香が連れだって摩利の方向へ向かって歩いてくる。

しかしここは戦地。周囲の警戒を解いてしまったのは非常に不味かった。

上空には脱出用のヘリに先程敵兵を一掃した魔法を放った真由美達がいることに完全に気を抜いてしまっていた。

ゲリラ戦の真骨頂はこういう状況における”不意打ち”にある。

ヘリを待つ四名の前方から生き残っていた侵略兵が横転した車の影からのり出してライフルを向けていた。

それに気がついた摩利だったが上空からの声に遮られた。

 

「危ない!」

 

八幡の声だった。

 

その声を聞いて真っ先に動いたのは桐原でライフルから放たれた高初速弾を高周波ブレードで弾こうとするが明らかに間に合わない。

が、侵略兵は忘れていた”七草の養子”がこの戦場にいることに。

弾丸が桐原の高周波ブレードに当たる前に地面に八幡が激突し砂ぼこりと同時に地面を加重魔法で捲り上げる。

 

「おらぁっ!!」

 

弾丸が身体に到達する前に様々な路材が混ざった道路が巨大な防御壁へと変わった。

まるで”畳返し”のようだった。

 

「「「「はっ?」」」」

 

その光景に思わず間の抜けた声を出してしまうが断続的に続くライフルの銃撃音で我に返る四人は素早く近くの遮蔽物へ隠れる。

 

その事を確認して八幡はCADの引き金を引いてベクトル変更魔法『対遠距離兵器用攻撃(炎線返し)』を発動し襲いかかるハイパワーライフルの弾丸を敵兵士へ打ち返す。

その光景は凄まじく敵兵士が自ら撃ち出した弾丸に五体をバラバラにされて血の池に沈む、というショッキングな光景だった。

 

「ったく…学習しねえなこいつらは。」

 

「うぁ…この…化け物めっ…!!」

 

銃弾の嵐の中で一命を取っていた兵士を見つけた八幡は相手が武装をもって此方に狙いを定めようとしているのが視界に入ったのでCADをトリガーガードに引っ掻け回しながら散歩でも出掛けるように近づく。

銃弾が直撃しなくとも周囲に当たった破片が身体に突き刺さり苦悶の表情と攻撃によって身体の一部が吹き飛んでいる兵士は逃げ出そうとするが足を失っている兵士は羽をむしり取られた蜻蛉に等しい。

近づく八幡に狙いを定めて引き金を引いてその銃弾は八幡に直撃した筈だったが”弾丸を片手で掴んで”無力化した。

兵士は拳銃を持った方の腕を赤い光刃が肩ごと切り落とされた。

 

「があああああああっ!!?」

 

鮮血がその膨大な熱量の光刃で焼き塞がれそのあまりの痛みで気絶する。

動けない兵士に八幡は足を引っ掻けて仰向けにさせる。

八幡は銃口を気絶する兵士に向けるが一瞬、ほんの刹那の時間だったが思案しCADをホルスターへ仕舞い込む。

 

「…。」

 

敵兵士がこの周辺にいないことを『賢者の瞳(ワイズマンサイト)』を発動させて確認した。

 

(この辺りの敵は全滅したか…あとは…十文字先輩と一条のところ、そして達也の所属してる部隊が戦闘中だな。警戒を解除しても大丈夫そうか?)

 

くるり、と踵を返し摩利達の所へ戻る八幡だった。

その魔法の精巧さもさることながら”現場にいた者より先に危険を見通すその洞察力と敵対するものに対する冷徹で無慈悲な行動”に摩利達上級生は下級生の少年に背筋が凍るものがあった。

 

 

戦火は収まりつつあり優位は日本側に傾いていた。

別の場所で十文字が、一条。そして達也が侵略者を駆逐しつつあった。

一方で沿岸部から脱出を図るヘリの中はついに脱出出来ると緩い空気に包まれていた。

 

ヘリの一角で八幡の左右には光学迷彩を展開しつつもグレイプニルの補助を受けて他の事に意識を向けることが出来て隣にいれて嬉しそうな表情を浮かべるほのかと表面上は此方も嬉しそうな表情を浮かべているが心配そうに見守る深雪の姿があり左右を陣取れなかったエリカと真由美は互いの友人に宥められていた。

 

左右から密着し心配する素振り、特に真由美が八幡の手のひらに自分の手を重ねているのがみえて…というよりも心から心配している二人の行動に思わず苦笑を浮かべそうになる八幡。

 

その表情の裏で拳を握りしめ血が滴っていることと唯一深雪が気がついており全員の記憶を弄り会場で発生した”ほのかの死”というショッキングな現実から意識をそらさせその事を八幡が知っており一人その葛藤と戦っているのを痛ましい目で深雪が見つめ血が滴り握る拳に優しい表情を浮かべ手を置いた。

もしあの場に八幡が居なければ桐原達は死亡していたであろう事は想像に固くなく深雪は最愛の兄へ『再成』の発動を依頼していたに違いないと自分勝手な思いと最愛の人にそのような負担を掛けてしまっていることに自らの激情を凍り付けにして抑制していた。

 

 

「隊長、我が軍が撤退を始めました。」

 

「そうか」

 

部下からの報告を受けて大亜連合軍特務部隊隊長・陳洋山は驚きも憤ったりもしていなかった。

味方が敗走する予想をしていなかったわけだが初期作戦事項の際よりも増員と装備の拡充をしていた筈だったのだが、とは内心で思っていたが作戦内容が達成できれば損害は問題ではないとそう思うタイプの人間で彼の地位は今日までの指針が示しているだろう。

 

「我々はこれより作戦第二号を実行する。」

 

彼に付き従う兵士は二十名。

決して多い数ではではないが全員がその特殊作戦軍に所属する破壊工作のプロフェッショナルで初期任務でつれてきた潜入兵とは練度が違っていた。

 

陳は一番前に座っている部下の名前を呼んだ。

二度も破れ尚且つ利き腕を奪われはしたがこの作戦を結構する上で外せない戦闘力に掛けては随一だ。

 

「呂上尉」

 

「個人的に思うところは在るかもしれんが、報復を考えるな。価値の定かではない聖遺物に拘ったのが間違いだったのだ。」

 

「分かっております。」

 

表面上は自制の効いた回答をして上官に答えたが猛虎は内心で八幡に対する憎悪と復讐心が込められていた。

そこで自分の心を見せないのはプロだからだろうか。

欠けた片腕はサイバネティックアームの人工筋肉の義手が取り付けられ彼本来の装備である三国志の武将が身に付ける鎧を装備している。

唯の鎧ではなく魔法的な鎧だ。

 

「行くぞ。目標は横浜ベイヒルズタワー…日本魔法協会関東支部だ。」

 

兵士達を乗せた民間用に偽装した大型トレーラーは敷地内へ突入したのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

ヘリの空気は安堵に包まれこのまま横浜を脱出…とは行かなかった。

突如として和やかな空気は美月が発した「あっ!」という反応と幹比古の言葉によって一変した。

 

「どうした美月。」

 

真っ先に反応したのは八幡であり反応した美月に問いかける。

 

「えっと…ベイヒルズタワーの方の辺りで、野獣のようなイメージが…」

 

美月は自発的にメガネを外して周囲を警戒してくれていたようだがそれが功を奏した。

警戒範囲の広さは八幡と幹比古、美月では後者の方が索敵範囲は広い。

 

「野獣…おい、まさかだと思うが…」

 

八幡は当たってほしくないと思いつつ幹比古へ視線を投げると呪符を懐から取り出し術を発動させる。

既に後方で小さくなっているベイヒルズタワーの方面を見ると幹比古は驚きを孕んだ声で告げた。

 

「敵襲!?」

 

「幹比古それは本当か?」

 

「ああ…間違いないよ。少数だけど恐ろしい呪力を感じる…!このままだと協会が危ない。」

 

そのタイミングで姉さん宛に十師族共同回線に緊急通信が入る。

幹比古の言った通り魔法協会は現在在中している魔法師の数は少なく制圧される恐れがある、と泣きついてきた。

真由美は十文字に連絡し「自分達が協会へ向かう」と伝えヘリコプターは一路魔法協会へ転進していた。

 

「姉さん、俺が先行する。…名倉さん後部ハッチを開けてください。グレイプニル行くぞ。」

 

『了解。』

 

「え、ちょ、ちょっと待って八くん!?」

 

座席から立って真由美の制止を無視して後部ハッチから飛び降りる八幡。

全員が向ける視線の先にそこには驚きの光景が広がっていた。

 

上空に待機してバイクに変形した《グレイプニル》に跨がり”空中をアスファルトのように切りつけ進み”魔法協会へ猛スピードで向かう八幡の姿があった。

 

その光景に桐原がぼそりと呟いた。

 

「なんでもありだなありゃ…。」

 

その言葉に全員が頷いた。

 

◆ ◆ ◆

 

陳による奇襲は、完全に日本側の意表をついたものだったといえるだろう。

現に魔法協会は混乱の極みに在った。

先頭を突き進む鎧を着用した兵士が装甲車の機銃一斉射をものともしておらずバリケードを突破し協会の守護についていた魔法師をどんどんと屠っていた。

ヘリコプターの上空からその現状をみて真由美達は一度遭遇したこともある呂剛虎だということに気がつき摩利達は魔法協会の発着場へ急いだ。

 

協会の入口付近へ近づいた呂剛虎このままロビーへの扉をぶち破ろうとしたがそうはいかなかった。

後ろに陣を組んで鱗状になっていた兵士が突如として飛来した何者かによって呂剛虎を除いて全滅した。

煙の中に浮かぶ人物に目を見開きその憎悪を明らかにした。

 

『よぉ、また動物園の檻から逃げ出したのか?《人喰い虎》さんよ。』

 

声は比較的クリアに。発せられた声に呂剛虎は聞き間違えるはずがなかった。

自分に敗北を二度も味合わせ、利き腕を喰らわれた因縁深き相手。

 

「七草八幡…!」

 

憎しみと好敵手と対峙出来たことに歓喜とも呼べる憎悪の表情を浮かべ八幡の名前を吠えた。

 

「ガチムチの男に纏わり憑かれるのは趣味じゃねぇんでな…戸塚ならまだしも。…来いよ。”呂剛虎”こっから先は…”行き止まり”だ。」

 

「ガァァァァッ!!」

 

《四獣拳・青龍乃型》を構え自己加速術式を発動した八幡と《鋼気功》を発動させた呂剛虎が激突した。

 

 

ヘリの内部で摩利達は地上でぶつかり合う八幡と呂剛虎の戦闘に目を奪われていた。

 

「なんだあれは…」

 

「なんじゃこりゃ…」

 

その反応は尤もであり呂剛虎は世界屈指の近接戦闘魔法師でありいくら八幡が強いといっても太刀打ちできない…筈なのだが互角に…いや、それ以上で渡り合っていたのだ。

それはさておいてヘリは魔法協会のヘリポートに到着した真由美達は八幡の援護とこの拠点の防衛のために行動を開始…したのだが深雪は最後の砦として協会内部で待機することになりそれ以外は八幡の援護に加わるために装備を整えることにした。

準備を整え広場へ向かうそこには八幡が呂剛虎を吹き飛ばしている光景が広がっており真由美と摩利、エリカとレオは止まってしまった。

 

摩利達が到着する少し前に八幡と呂剛虎の戦闘が繰り広げられていた。

 

「ガァァァァァァッ!!!」

 

「まるで獣だな…!」

 

その咆哮と猛攻は”獣”を想起させるに十分な気迫だった。

八幡に接近する拳底と拳はどれも一撃一殺の威力を秘めたもので八幡が使用する戦闘スタイルからして接近戦を免れることは出来ないがその一撃一撃を八幡は受け流し、相殺していた。

《四獣拳・朱雀乃型》では威力不足で今ごろは触れた瞬間に拳が破裂し命を散らしていることだろう。

そのため八幡が選んだのはサイオン消費量は大きいが互角以上で渡り合える《四獣拳・青龍乃型》を選択し拳を合わせているが目論み通りだった。

 

次第に呂剛虎の技の威力は少しずつだが弱まっているのが身体で感じ取れていたがその気迫は衰えることを知らなかった。

 

数度にわたる拳を合わせ受け流し一瞬の隙が生まれた。

 

「しっ…!!」

 

八幡の加重魔法とサイオンを練り合わせた闘気の一撃が猛虎へ叩き込まれ大きく吹き飛ばす。

 

「がぁッ…!?」

 

その隙を逃すまいと八幡は『加速時間(クロックアクセル)』を発動し体勢を整わせる前に追撃を行う。

蹴り膝に拳に拳底(連続攻撃)にと…怒濤の攻撃を繰り出し絶対に壊れる筈の無い呂剛虎の《白虎甲》にヒビが入っていた。

 

「ヌゥアッ!!!」

 

やられっぱなしではいられないと反撃のために利き腕でない方を振り下ろすが八幡は拳に纏わせた《龍顎》が喰らい尽くす。

情報強化された身体のエイドススキンを喰い破るほどのその威力に呂剛虎は目を剥く。

その瞬間を逃すほど八幡は間抜けではない。

シングルアクションで猛虎の足元に加重魔法と振動魔法を組み合わせた即席の罠を仕掛け身動きを取れなくしていた。

 

「グァッ…!!」

 

吹き飛ばし距離にして20M弱。

 

”必殺の一撃を叩き込むには十分な距離”だ、と八幡は判断した。

 

「はぁぁぁぁぁ………っ!」

 

《青龍乃型・龍激》を解除してサイオンと『星辰力(プラーナ)』を組み合わせた漆黒の機生体龍を召喚すると嘶き八幡の周囲を回るように回転し始める。

 

八幡は前方に両腕を突きだし足を開き腰を落として飛び込むように”跳躍”した。

次元解放(ディメンジョンオーバー)』のポータルを潜り脚部にその空間に存在する『重粒子』を纏わせその粒子を加重魔法で制御、足先へ集中させて破壊力を増大させ同時にポータルを潜る機生体龍は重粒子を取り込み体内に疑似生成された臓器から重粒子を吐き出してその速度を加速させる。

ゲートを潜り抜けたときには既に現行戦闘機の最高速度にまで達した黒炎を纏ったような飛び蹴りはまさに”必殺の一撃”であり眼前に迫ったその攻撃に呂剛虎は死を覚悟せざる得なかった。

 

「だぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

動けない猛獣は力の限り叫んだ。

 

「七草八幡ーッ!!!」

 

足裏が呂剛虎とその鎧に触れた瞬間に一帯に爆発音と爆炎が中心となって燃え盛り鳴り響く。

次の瞬間に寸前まで耐えきっていた鎧が破壊され重粒子の莫大なエネルギーと『次元解放(ディメンジョンオーバー)』という”次元に干渉できる術式が”容易に情報体と肉体を”根源”から破壊していく。

 

「『四獣拳青龍乃型・崩龍脚』」

それがこの技の名前である。

 

現実として”呂剛虎という人間の肉体は莫大なエネルギーに晒され”破壊され砕け散る。

 

ズドーン!!(爆発音が鳴り響いた)

 

膨大な熱量のお陰で蹴り抜いた後の地面に焼け付いた黒線が走った。

八幡は振り返らずに上半身が消し飛び死亡した《虎》に対して告げた。

 

「言ったろ”地を這う獣が天を翔ぶ龍に勝てるわけがない”って。」

 

魔法協会前には燻った黒煙が立ち上ぼり勝利の狼煙となって天に昇った。

一方で魔法協会に鬼門遁甲で忍び込んだ陳は待ち構えていた深雪に《コキュートス》を喰らってその意識を閉ざし捕まっていた。

結果として大亜連合の侵略軍の目的は未達成で終わり一方では達也達の部隊が残存兵力を根こそぎ打ち倒しついに敵は限界を向かえて侵略軍は敵前逃亡をせざるを得なかった。

戦闘が終わり摩利達に

 

「さっきの空間を跳躍した魔法はなんだ!?」

 

と詰め寄るように聞かれたが

 

「新魔法っす。移動型の」

 

と伝えると八幡に毒されているのか「そ、そうか…」と納得してくれたようだった。

次々と八幡の元に慕うもの達が集い終わり深雪と真由美は大いに喜び迎えのヘリがあるヘリポートへ向かう。

そこへ向かう道中八幡は未だに戦っているであろう達也に少しだけ気にかけた。

 

(こっちは片付いたぞ。達也。無理はするなよな…。)

 

立ち止まっていた八幡は真由美達に呼ばれその足をヘリポートへと向けたのだった。




達也回りの部分は結構カットしてます。


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