俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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来訪者編開幕。
さわり部分だけになります。


『来訪者編~招かれざる者と七草、そして一番星』
恒星の来訪者


朝鮮半島で起きた『灼熱と漆黒のハロウィン』は世界に衝撃を与えた。

 

それはUSNA(北アメリカ大陸合衆国)も例外ではなかった。

未確認の国家非公認戦略級魔法師が現れた、と言うことは寝耳に水であり今まさにそれは喉元に核兵器が突きつけられている状況であった。

 

それを座視するわけにはいかないと魔法先進国、世界のリーダーとしてUSNAは日本で確認された戦略魔法師のコードネーム『グレートボム』と『ダークマター』として呼称。

捜索のためとある人物を日本へ送り潜入捜査をさせることに決定したのだった…。

 

しかし、USNAの戦略級魔法師捜索はとある研究の問題点を解決できるのではと言う理由も含まれていた。

USNAではマイクロブラックホールの実験がリスクが読みきれずにゴーサインが降りないそんな中で極東…言わば日本で起こった事件。

 

朝鮮半島の軍事都市と艦隊を消し飛ばした灼熱…ではなくもうひとつ発動していたとされる”人工的なブラックホール”がUSNAの首脳部は焦りを見せていた。

”世界に認知されていない魔法師が我々が研究しているマイクロブラックホール生成を容易く行いそれを既に戦略魔法レベルで実用している”という帰結した。

 

一体どういった原理で発動している魔法なのか分からないままなら発動された瞬間に文字通り”瞬殺”されてしまうことは想像に固くない。

それに今ゴーサインを出していないマイクロブラックホール実験を行うことでその魔法の発動プロセスを知ることが出来るのではないかと儚い理論を振りかざすほどに今USNAは追い詰められていた。

魔法師部隊『スターズ』。その先代のシリウスが新ソ連との戦いで死亡し其にともない魔法師も多く失っている立場としては藁にもすがる想いなのだろうがその行動は余りにも浅はかすぎた。

 

世界に、八幡と達也(二人の主人公)に対して払いきれない程の代償をその身を持って支払うことになろうとは思いもしなかったのだ。

 

◆ ◆ ◆

 

『灼熱と漆黒のハロウィン』…と呼ばれる事件からから1ヶ月ほどが経過していた。

時期は恋人たちがキャッキャウフフするファッキンクリスマス…つまりは12月で何気ない日常を謳歌していた俺たちは学生特有の”ある出来事”苦しめられていた…と言うか一部だけど。

テーブルの一角ではレオとエリカが『KIMATU・TEST』…こう書くとかっこいいな、じゃなかった『期末テスト』の魔の手に追い詰められ騒いでいた。

 

俺を上座として時計回りに深雪、達也、ほのか、エリカ、レオ、美月、幹比古、雫と言った順番…と言うかいつもつるんでいる…まぁいつものメンバーが一同に会している。

場所はいつもの喫茶店ではなく雫の実家にお邪魔して勉強会なるものを開催していた。

と言うよりもここにいる連中は全員が成績優秀者であり成績順も前から数えた方が早いぐらいだからな…この勉強会をやる必要があるのかと言われればないと思うがそこは雰囲気で察しろと達也の無言の視線が怖かったことだけをここに記しておこうと思う。

それはそれとして深雪と雫に「来てくれるよね?」という上目使いと袖引っ張りは禁止カード、殿堂入りの温泉行きだと伝えたはずなのだが聞き入れられなかったようだ。

運営が仕事をしていない件について小一時間環境をジャッジする運営に話したいんだが…ダークタワーが…というよりも剛腕神殿が面倒…ってこれは別の話だったな。

言いたいのはBP上げてバトル…ってこれも違ったな失敬。

つまりはいつもの放課後駄弁っているのと変わらなかったが雫とほのか会話の一言に俺は思わず立ち上がってしまいそうなほど驚いていた。

 

「え?ごめん雫もう一回言ってくれない?」

 

「うん。実はアメリカに留学することになった。」

 

「聞いてないよ!」

 

ごめん雫さん、俺も聞いてないです。

 

「ごめん二人とも。口止めされたから…。」

 

「どうして留学なんて出来たの?」

 

心から申し訳なさそうにする雫の姿にその話を聞いた全員はそれ以上追求することは出来なかった。

雫としても早々に打ち明けたかったようだがこれも事情なのだろうと察し追求することはなかったがいつも一緒にいるほのかが心配そうな表情を浮かべている。

それもそうだ魔法師の海外渡航は日本政府によってよっぽどのことがない限りグレーゾーンで禁止されている。

それも渡航場所はUSNA、表面上は同盟国ではあるが潜在的な敵性国家であることを忘れてはいけないだろう。

普通に心配である。

その事が表情に出ていたのだろう雫に上目遣いで首を傾げて此方を見てきた。

それも禁止カードだからな雫さん?

 

「交換留学だから…って理由だったかな。」

 

「交換留学でどうしてOKが出たんでしょうか…?」

 

美月の質問に一緒になって首を傾げる雫に追求するのは意味はなさそうだと判断した俺は雫に渡航期間について質問した。

 

「期間は?何時までなんだ?」

 

「年が明けてすぐだよ。三ヶ月程度。」

 

「三ヶ月かぁ…びっくりさせないでよ~雫。」

 

雫の答えを聞いてほのかはほっと胸を撫で下ろすがその回答を聞いた俺と達也は同じことを思っただろう。

 

(三ヶ月…長くねぇ?)(三ヶ月か…長いな。)

 

しかしそんなことはどうでもよく目の前の女子が異国に一人三ヶ月いってしまうということを聞いて準備をせざるを得なかった。

 

「それじゃ…クリスマス会も兼ねて雫の送別会をするとしよう。」

 

達也は当面のやるべきことを提案して俺はというと。

 

「雫に渡すもんがあるから楽しみにしててくれ。…無論深雪達にもだけど。」

 

雫、と言いきらなくてよかったと俺はこのときばかりは神の存在を信じることにしたのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

期末試験が終わり(案の定俺と深雪、雫、ほのかが実技を総舐めにして筆記は俺と達也がタイ、深雪、幹比古、雫、ほのか…とお馴染みの顔ぶれがならびレオ達も上位独占だった。実技はダメだったが。)

時節は十二月二十四日。

血のバレンタイン…ではなくファッキンクリスマス…でもなく日本特有のごっちゃ混ぜ宗教に乗っ取った異国の文化であるクリスマスイブ開催の日を日本も迎えていた。

街のなかはクリスマスムード一色で道行きすれ違う男女はカップル…という非リア充には辛いバレンタインと同じぐらいに辛い1日ではあるが企業側からしてみれば書き入れ時であることは間違いないので世相に全力で歯向かいたい俺であったがせっかくいつものメンバーで集まり楽しみにしている雰囲気を壊すほどあの時ほど尖っては居ない筈…であると信じたい。

しかし、送別会の筈なのになぜクリスマスに行うのか、と達也に聞きたかったが『お約束』といわれてしまえばその通りだ。

 

「八幡どうした?」

 

となりにいる達也が俺の顔色を見て質問してきた。そんなに変な表情だっただろうか?

…冬は余りいい思い出がないがここで言っても仕方がない。

 

「いや…ちょっと一年前を思い出してただけだ」

 

「一年前?」

 

その話題に雫が食いついてしまった。

俺は「しまった…」と内心で思うが既に遅く全員の関心が此方に向いてしまっていた為回避することは出来なかった。

俺は観念し説明する。

 

「…丁度一年前だ。俺が小町と一緒に七草の家に拾われたのは。すげぇクリスマスプレゼントって思ったけど。」

 

俺が言わなくてもいいことを説明すると全員が「あっ…」という表情になった。

…ここに小町がいたら間違いなく脛に『白虎乃型・烈脚』を食らっていたことは想像に固くない。

気分を沈ませてしまったことに罪悪感を浮かべている俺に雫が駆け寄り抱きついてきた。

 

「今日はわたしの送別会だけど…八幡の記憶に残る楽しいクリスマスにしよう?」

 

そういわれ俺は自分の浅はかな言動に殺したくなったが今は雫にそういわれたのが素直に心に入ってきて嬉しかった。

 

「…そうだな。雫の記憶にも残るクリスマス会にするか。」

 

「うん。」

 

雫の一言で全員が頷いて達也が飲み物を持ったグラスを全員に行き渡らせて「乾杯」の合図でクリスマス会は朗らかに開催された。

 

送別会…といっても今生の分かれというわけでもないので”寂しい”よりも”興味”の側面の方が勝ってしまうのは人間の性というわけで俺はクリスマス料理に舌鼓を打ちつつとなりに何故かいる雫の会話を聞いていた。

 

「ねっ、留学の行き先はどこなの?」

 

「バークレー。」

 

「あら…ボストンじゃないのね。」

 

「うん、東海岸は雰囲気が良くないらしくて。」

 

深雪の問い掛けに雫の返答は穏やかでないものを感じた。

 

「ああ。向こうだと『人間主義者』が騒いでいるんだっけ…どこも大変だ。」

 

それに同調するように幹比古が頷く。

 

「魔女狩りの次は『魔法師狩り』ってか?歴史は繰り返す、って言うけど馬鹿げた話だ。」

 

人間のエゴで産み出された魔法師を運用していたのは人間の筈なのにその優秀さを恐れた非魔法師達はそれを否定しようとするのはまさに”矛盾”といえるだろうが今はそのくらい話を持ち出す必要もないだろうと俺は強引に話を方向転換することにした。

 

「そういや雫。お前の替わりに来る奴の事ってなにか知ってる?」

 

それを聞くと雫の機嫌が悪くなった。

…俺なんか悪いこと聞いたっけ?

 

「…同い年の”女の子”らしいよ?」

 

「あの、雫さんどうして機嫌が悪くなっているんですかね?」

 

「自分の胸に聞いてみるといいよ」

 

そういうとプイッとそっぽを向かれてしまった。

解せぬ。

助けを求めようにも女性陣はどうも雫の味方らしいなこれ。

達也は深雪陣営なので当然ながら助けは求めることは出来ないので自分でどうにかしろとのことらしい。

俺は内心でため息をつきながら床においていた結構な大きな袋から指輪ケースほどの化粧箱を取り出した。

 

「雫。」

 

「なに…ってこれは?」

 

「三ヶ月もいなくなっちまうから急いで用意した。クリスマスプレゼントと被っち舞うけど許してくれ。」

 

飲み物が入ったグラスをテーブルにおいて白い化粧箱を空けるそこにはさっきまでの不機嫌な表情はどこへやら、嬉しそうに、恥ずかしそうにしている雫の姿があった。

 

「雫…ってまぁ…」

 

「雫どうしたの…ってやるわね八幡。」

 

「雫…っ!いいなぁ…。」

 

「わぁ…素敵ですね雫さん!」

 

女性陣全員が覗き込み感心や羨ましがったりしており男性陣も覗き込んでいた。

やめてくんない?すっげぇ恥ずかしいんだけど?

 

「これ、いいの?」

 

雫が化粧箱と俺の顔を右往左往しながら受け取りの有無を聞いてきたがそんな対したものじゃないのでそんな態度を取られても逆に困るんですけどね?

 

「…まぁ”お守り”みたいなもんだと思ってくれ。要らなきゃ捨ててもいいぞ?」

 

「ううん…。絶対に大切にするね八幡。」

 

にこりと微笑み掛ける表情の機微が薄い美少女にそういわれて俺は硬直せざるを得なかった。

ちなみに俺が渡したのは耳に穴を空けないタイプの小さな青い宝石がついたティアドロップ型のイヤーリングだった。

まぁ少し細工をしてるんで本当にお守りの意味があるんだが…ここでは言わんでおこう。

流石に雫にだけプレゼントを用意していないというのは余りにも仮に、万が一にでも俺に微少な好感度を持っている少女達に失礼なので常識の範囲内でプレゼントを用意した。

深雪には雪の結晶をモチーフにした普段使い出来るブローチ、ほのかには美しい細工が施された宝石がついている髪留め、エリカには艶やかな赤漆塗りの櫛をプレゼントとして渡した。

全員が喜んでくれたのはプレゼントのセンスが良かったのだろう。

これで俺の好感度が下がることはない…と信じたい。(八幡はそう思っているだけで実際は好感度爆上がりである。)

 

無論男衆にもプレゼントを用意していた。八幡ったら優しいのね…嫌いじゃないわ!

というのは冗談で達也には《ナハト》のCADとトレーニングウェア、レオには普段使い出来るレベルⅣのボディーアーマーと以前に渡していた『レグル・スパーク』に連動する補助CADのアミュレット一式。幹比古にはマフラーと手袋(奇しくも美月とペアのデザイン)。それを見て驚いていたがそんなに高額なものじゃなかったが…最後になって男衆に入れるのは申し訳ないが美月は霊視過敏症を抑える別デザインの眼鏡とこの時期は寒くなるからいいところのメーカーのマフラーをプレゼントさせて貰った。(奇しくも幹比古とペアのデザイン。)

特に幹比古と美月は互いに顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。

…さっさと付き合えよお前ら(ギリギリギリ…!)

 

と野郎連中のプレゼントは(幹比古を除く)中学生男子が喜びそうなものを送ったが正解だったらしい。

エリカに「意外だ…」といわれたが全くもって心外であることをここに記しておく。

 

そんなこんなで高校生が夜出歩く時間帯の終わりが近づき解散することとなる。

俺を除いて八人はキャビネットに乗って帰りそれを見送ったあとに一人《グレイプニル》に跨がり七草本邸へと帰宅することにした。

まぁ帰ったら七草の家でまたクリスマス会を行うことになるんだけどな?

 

◆ ◆ ◆

 

自宅についた達也と深雪…司波兄弟は穂波と深夜に出迎えられて喫茶店で食べたケーキとは別のものとコーヒーを味わいながら今日起こったことを説明していた。

穂波は司波兄弟を自分の弟妹のようににこにこと聞きながら深夜の「わたしもいきたかった~!」という反応に三人揃って苦笑と呆れが浮かんでいた。

 

話は進み雫が留学する、という話になり深夜達の雰囲気は先程よりも固くなった、気がしていた。

 

「そうなのね…やはり真夜の読み、というより情報は正しかったということになるわね穂波。」

 

「ええ。どうも達也くんに”十月のあれの件”で探りを入れに来ているようですね。」

 

「叔母上によりますと俺は”容疑者”らしいですからね。」

 

困ったように発言する達也に深夜は困ったように頬に手をついた。

 

「それに達也に発動した魔法に干渉させるほどの魔法力を持った”未確認の戦略級魔法師”を探してちょうだい…だなんてしかもその容疑者候補リスト一覧に八幡くんをいれるだなんて!しかも一番上よ?上!…穂波、これあの子の私情が入ってるわよね?」

 

「深夜さま…それはわたしの口からはなんとも。」

 

話を振られた穂波も苦笑いするしかなかった。

その発言を聞いて深雪の表情は暗く沈んだ。

現に達也の所属する独立魔装大隊も現に『灼熱と漆黒のハロウィン』時に現れ未知の戦略級魔法を発揮しコードネーム『黒衣の執行者(エクスキューショナー)』の本格的な捜査を国防軍総出であの時から行っている状態なのだが姿も、その魔法も見つかっていないという状況なのだ。

 

後者は元々七草と四葉の仲は宜しくない。筈だったが八幡が来てからというもの師族会議の場で二人が口論になることがなくなった…というわけではないが七草家当主弘一が四葉当主真夜を余り相手にというよりも向こうが大人な対応をしてきているようにすら感じることがあるらしいと妹の真夜の側仕である葉山からその事を聞いていた深夜は頭を抱えた。

 

達也は話題を変えた。

 

「留学生が来るならともかく叔母上の忠告を合わせて考えれば偶然と考えるのは余りにも能天気過ぎるでしょうね。」

 

その返答に深雪が反応する。

 

「そうなるとUSNA…スターズが送り込まれると?」

 

「ああ。だが俺は今少佐達との接触を禁じられて…ってここでする話ではなかったな。」

 

達也は「まずった…」と思ったが目の前には「わたし怒ってます!」とプルプルする深夜の姿があった。

 

「当然です達也!わたしの可愛い息子を戦場に立たせるだなんて!風間少佐の非常識具合に抗議する必要がありますからね!」

 

「ですが母上…あれは…」

 

「『ですが』も『だって』もありません!…大事な一人息子が死地に行くなんて…心配したんですから…。」

 

立ち上がり達也の側に向かう深夜は思わず年頃の思春期の少年だということを忘れて小学生低学年の男の子にするような母親のハグで達也を抱き締めていた。

母の目尻に涙が溜まっているのを達也は見逃さず仕方ないとなりなすがままになっていた。

その光景を穂波と自分の妹に見られるのは男子高校生的にHPが削られる想いをしていた。

自分は大切にされていると再認識するには十分すぎるハグであった。

 

リビングでの話し合いで達也はUSNAから容疑者に、八幡は日本とUSNAから容疑者として扱われていることに若干の不憫さを感じ今度あったときに伝えてやろうと思ったが四葉からの命じられているので教えられないことと八幡が謎の戦略級魔法師でないことを祈った。

 

◆ 

 

毎年恒例の大晦日で芸人達が笑ってはいけない状況で「ででーん!」のあのBGMを鳴らしながらケツをしばかれる番組を途中まで見ていたがリビングで寝落ちしてしまっていた。

朝起きたらソファー左右に座っていた泉美と香澄が俺に寄り添うように寝ていたので「おいおい…」と思ったがまぁ正月だしな。

年が明けて西暦2096年の元旦を、俺は七草本邸で迎えちゃんとした正装…袴姿で何処かの若頭かくやという見た目で姉と妹達も艶やかな振り袖姿で七草本邸に訪れた分家やお偉い人たちの相手をすることになり軍資金もたんまり貰った。

正直貰う必要は無かったが有り難く受け取っておいた。

達也達と新年の挨拶をしておこうかと思ったが実家周りの挨拶に忙殺されて合流するのは難しいと深雪経由でメールを送ると「一緒に行って振り袖姿見せたかったです」的な物が送られてきて写真が添付されていた。

そこには艶やかな振り袖姿になっていた深雪とほのかの画像が送られてきた。

 

「こいつは凄いな…」

 

「八くん?一体何を見てるのって…。」

 

「ん?ああ姉さん。深雪から写真が、」

 

「むぅ…。」

 

「…ってどうしたよそんなつまんなそうな顔して。」

 

俺が深雪から写真が送られてきた、という話をしたら途端につまらなそうな表情を浮かべ手に持った端末の写真を見ると渋い顔をしていた。

 

「なんでもないわ?…それより八くんお姉ちゃんはまだ聞いてないんだけど?」

 

「は?何を聞いてないって…」

 

姉さんは俺の目の前に移動し振り袖の袖口をもってフリフリして一回転していた。

急に踊りたくなったのだろうか…いでっ。

そんなことを思っていたら思考を読み取られたのか振り袖の余ってる部分で叩いてきた。

妙に痛い。

 

「は~ち~くん?」

 

「姉さん近いんだけど…?!」

 

ずいっと顔を近づけてくる姉さん。

化粧の乗りがいいのか薄い化粧を施すだけで普段より幼い?雰囲気は少し大人っぽく感じて少しドキッとした。

それにめちゃくちゃいい匂いがしてクラクラしてしまいそうだった。

このままでは事故が起こりそう(まぁそんなことはあり得ないけど)。

ふと、ここで俺は姉さんの奇妙な行動の意味を理解した。

そういうことな。

俺は頭に浮かんだ台詞を吐き出した。

 

「すっげぇ似合ってるよ。」

 

…恥ずかしながらこの感想しか出てこない。

これ以上の言葉が見つからないからだ。

おべっかでも謙遜でもなく本当に「似合っている」としかでなかった。

そのくらいに今の姉さんの姿は美しかった。

 

「そ、そう…なんだ…あ、ありがとう///」

 

ん?どうも俺が想像したリアクションから掛け離れた反応だった。

「うーん、70点!」ぐらいのコメントに点数を付けられるものだと思っていたが顔を紅くして袖口で顔を隠してもじもじしてしまっていて…体も少しくねくね動いていた。

 

「(うぅ…!八くんに真面目な表情で褒められちゃった…きゃ~!!ってこんなことしてたら気味がられちゃう…っ!)きゃっ!」

 

一体どうしたというのか検討もつかなかった…がそんなことをしてくねくねしていた姉さんはバランスを崩した。

 

「あぶねっ!」

 

俺は咄嗟に姉さんを受け止める…ことは普段の衣服なら出来たが今の俺は袴姿。

正直動きづらいこの上ないし姉さんは振り袖姿で可動域が少なくなっている。

詰まる所…。

 

大きな音を立ててソファーへ倒れ込んだ(倒れ込む姉を弟が受け止める構図)

 

「いででっ…姉さんだい、」

 

丈夫か?と俺が言って受け止め倒れ込んだ姉さんを起き上がらせようと腰と手に触れた…筈だった。

ふにょん。

 

「ひゃん!」

 

ん?俺は一体どこを触ったのでしょうか?いやいや…まさか…。

ふにょん、もにゅん。

 

「は、八くん!」

 

あ、間違いねぇ。この手に感じる布越しの柔らかい感触…それは…

 

「ひうっ!やぁ…だめぇ…そんなに…揉まないで…」

 

「うぉぉぉおっ!?」

 

甘い声が耳元で聞こえ全てを察した。

大慌てで俺はソファーから飛び離れるとそこには女の子座りをして胸の部分を隠すように肩を抱いて胸を隠しながらこっちを恥ずかしそうにしている姉さんの姿がそこにあった。

 

「ご、ごめん!!姉さん!いや、そのわざとじゃなくて!」

 

俺も俺で真っ赤になって姉さんの柔らかい”あの部分”の感触が残ってる手を思わず凝視してしまい姉さんからのジト目が俺を射貫きはっ、となって弁明した。

俺の弁明を聞いて姉さんは考える素振りを見せ俺にとんでもないことを聞いてきた。

 

「う、うん…八くんがわざとやったんじゃないのは分かるんだけどね…その…どうだった?(わ、わたしは何を聞いているのかしら…!?)」

 

この姉は一体何を言っているのだろう…?

だがここではぐらかしたり的はずれなことを言ったらとんでもないことになりそうだと俺の直感がそう告げていた。

 

「えーとその…柔らかかった…です。(俺は姉さんに何をいってるんだ…!?)」

 

何を言っているんだろうか俺は。姉さん相手に。

その答えを聞いた姉さんも可笑しな事になっていた。

 

「そ、そうなんだ///…その…もっと…触ってみる?(わ、わたしったら何て大体な事を…!う、うんでも八くんはすーっこし鈍感が過ぎるからこのくらい責めないとダメ…よね?)」

 

そう言って姉さんは俺の手を再び取ってソファーへ座らせてくる。

 

「ちょ、姉さん!?ちょっと落ち着こうか?」

 

「そ、そうね…。」

 

「…」「…」

 

その後妹達が来るまで互いに顔を紅くして黙ってしまいふとしたタイミングで視線を会わせると逸らす…ということが何度か発生していた。

 

互いに口火を切ろうとしたその瞬間にタイミングが良いのか悪いのかとある人物が乱入してきた。

 

「お兄ちゃんにお姉ちゃんー?写真を…って…あー………。」

 

「おい…小町勘違いするなよ?」

 

「何の話?…ふぅ~ん…そっかお姉ちゃん…」

 

「ち、違うからね小町ちゃん?」

 

俺たち姉弟の雰囲気を察したのか小町は悪い表情になって飛んでもないことをブッ込んできた。

 

「お正月だからって家族が居るところで”姫初め”しないでね?」

 

「しねぇーよ!!!???」

 

「こ、こまっ、小町ちゃん!??」

 

小町を追いかけ回すために《麒麟乃型》で追いかけ回す羽目になった。…てか小町の方が巧いのよねその型。

写真を撮ることになり楽しそうにしている妹達と妙にぎこちない感じになっている兄と姉の五人が写った写真は家族共有されていつの間にか小町が俺の端末から深雪の端末に送られていてまた一波乱あるのは別のお話。

 

 

冬休みはほとんど…というよりも全然知り合い達と会うこと無く色々あった冬休みが終了し今日から三学期が始まる。

(その色々には雫の見送りにいってその場で感動の映画のような場面になり俺たち男子が途方にくれてしまう、という出来事があったが…。)

いい思い出になる、そう信じたかった。(黒歴史にならないといいなぁ…)

さて今日から我らA組に雫が交換留学ということでUSNAから交換留学生がやってくるとの事だが出来ればあまり関わりたくない、というのが心情だろうが俺が『七草家』である以上関わりはあるんだろうなぁ…と半ば諦めた。

USNAがこのタイミングで交換留学生を許可するのは十中八九『灼熱と漆黒のハロウィンを引き起こした国家非公認戦略級魔法師を捜索』これに限るだろう。

…てか灼熱と漆黒って。何て痛いネーミングセンスなのだろうか。海の向こうにも厨二病というものは存在するらしい。

対象になってるのは達也…なんだろうが俺も捜査の対象に入っている気がする。

直前で俺が『人喰い虎』…呂剛虎を倒してしまったことと俺が十師族の子供だからだろうな…。

 

目立ちたくねぇ…この一言に尽きる。

だがそれも叶いそうにないなと項垂れた。

父さんから留学生に関する話は俺に伝わっていない。

恐らく『日本の魔法師と交換でUSNAの魔法師が第一高校に留学する』という話は来ているだろう。

相手の動きと目的を知りたいから教えていないのかそれとも知らないから俺にまでその情報が来ないのかは分からないが確実に何かを知ってはいそうではある。

 

本当なら俺の魔法を告げるべきなんだろうけど明らかな厄ネタでしかないからなあれ。

当分は”あの魔法”の使用を控えようと思った。状況がそれを許してくれれば、の話だけどな。

 

始業式最初の授業がフルタイムのカリキュラムなのはここが魔法科高校だからだろうけど正直辛い。眠たい、帰りたいの三拍子が揃っている。エクシーズ召喚できそう。

HRが始まる前まで俺は机にうつ伏せになっていたが後ろからちょんちょん、と肩を叩かれ声を掛けられた。

 

「八幡さんっ、授業始まっちゃいます。」

 

「後5分…。」

 

定型文をほのかに告げると死ぬより恐ろしい事を告げてきた。

 

「八幡さん?起きてくださらないと小町ちゃんに連絡がいく、」

 

「はい起きました。小町ちゃんに連絡はやめてください。」

 

《クイックドロウ》もとやかくのスピードで姿勢と服を整えた俺を見ていたのは深雪とほのかだけでなく金髪碧眼の美少女が此方を興味深そうに見ていた。

”興味”…というのは不適切かもしれない。”偵察”…調査的な意味合いでだ。

 

見慣れない少女が目の前に現れたので近くに居る深雪に問いかける。

 

「深雪、この子はどなたさん?」

 

「アメリカからの交換留学生のアンジェリーナ・クドウ・シールズさんですよ。」

 

深雪からの紹介を受けてリーナが金髪を軽やかに揺らして自己紹介をする。

 

「アンジェリーナ・クドウ・シールズよ。リーナと呼んでくださいね?」

 

そういって目を細め華やかな笑みを浮かべた。

瞳は蒼窮色…スカイブルーでありまるで宝石のようだ。

長い黄金色の髪はツインテールで纏められていてほどけば姉さん、いや姉さん以上の長さになろうかと。

高校一年生の割には大人びていてコケティッシュな髪型はシャープな美貌を柔らかく”見せている”ように感じ笑みを浮かべてはいるが”どこか疲れているように見えて”俺は「こいつも苦労してるんだな…」と思ってしまった。

それにシールズを見る視線が多いのは気のせいではなくとなりに深雪という美少女と一緒にいるからだろう。

シールズも深雪も美少女だからな。視線を集めてしまうのは仕方がないとそう思った。

親しみやすいのは本心かそれともキャラを作っているのか微妙に分からなかったので俺は自己紹介をした。

 

「七草八幡だ。名前でも名字でも好きな方で呼んでくれて構わない。」

 

「そうなのね。それなら『ハチマン』と呼ばせて貰うわ。」

 

やはりお前も名前呼び名のか…初対面の人間に呼ばせるの流行ってるのか?

 

「それなら俺も…『リーナ』と呼ば…呼んで良いのか?」

 

「ふふっ、どうして疑問系なの?不思議なのねハチマンって…宜しくねハチマン。」

 

「ところでリーナ。話は変わるがお前甘いものは好きか?」

 

「え、ええ好きだけれど…どうしたの?」

 

「お前に良い飲み物を紹介するよ。お近づきの記念にな。」

 

「???」

 

困惑する転校生に俺はマイフェイバリットドリンクを紹介して親密になろうと思ったが深雪とほのかに「ダメですよ?」と表情で制されてしまった。

解せぬ。あれはエリクサーと同じものだというのに…俺は布教を諦めないぞ。

 

目の前にいる少女は俺が異世界で出会った金髪の美少女のように何か隠し事をしているような気がして少し気になってしまった。

こうして達也より一足先に俺は”来訪者”と遭遇し一波乱の幕が上がり始めたのだった。




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