俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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ヤバイ…気がついたら2万文字…。

毒にも薬にもならない駄文、よろしければご覧ください。
それと少し甘々成分多めで少しセクシーです。


気になる間柄

翌日…パラサイトを七人で取り囲んだのにも関わらず逃がしてしまった苦戦を強いられた次の日に自分のクラスに登校するとリーナの姿が見えなかった。

 

(軍本部の審問会の最中か…恐らくは一般生徒の前でパラサイトと遭遇、戦闘して取り逃がした事についての審問だろうか。まぁ軍の機密任務を”ダークマター”の術者と思われる第一容疑者の俺と接触時に知られたことが問題なんだろうが…)

 

ここにいないリーナは日本に設置されているUSNAの大使館で審問会が開かれていてどんなことを問い詰められてるのかは分からないが制服の官僚連中はリーナにセクハラじみたコメントをして青筋を立てているイメージを幻視したが頭を振った。

 

ちなみに昨日起きたパラサイト襲撃事件でマクシミリアン・デバイスの社員を誤魔化すために姉さんがひいっ!と悲鳴を上げていたのは記憶に新しい…ほんとごめん。

ミアさんも軍に関連する人物なので昨日負った傷を《物質構成》でこっそり治療しリーナと共に審問会の場へ出向いているのだろうが不明だ。

 

やはりというべきか昼食時にエリカが昨日の取り逃がした件で悔しがっていたがそれとなく慰めると元気になっていたのでこちらのケアは大丈夫だろう。

問題なのは…リーナの方かもしれない。

 

今週、俺愛梨といろは東京案内しないと行けないんだよな…そっちの方が大変か。

 

◆ ◆ ◆

 

八幡の予想通り、というべきかその通りにリーナは学校を”家の都合”と言うことで東京に有るUSNAの大使館に召集され審問会の場に立っている。

リーナは居心地の悪さと不快感が心情を支配しながら目の前にいる制服組の自分よりも一つ、二つ周りも年上の”おじさま”達から”ご質問”を受けており青筋を浮かべたくなるほどだった。

 

「…ではスターズのシリウスともあろうものが対象を取り逃してもう一つの捜査対象であるナナクサハチマン、並びにシバタツヤに《パラサイト》の情報を知られてしまったと?失態だな。」

 

その二人以外にも他のクラスメイト達は高校生相手じゃなくて相手は私に匹敵するかもしれない魔法師でした!と付け加えたくなったが必死に押さえ込んでいた。

 

しかし其を言ったところでこの”おはなし”が今すぐに切り上げられるわけでもないことをリーナは知っていたのでただただ黙って話を聞いており状況としては昨日の件ではなくミアを確保したときの事を言われて(ミアだということはバレていない。)其を起点としてねちねちした審問が続いておりあからさまに作戦の内容ではない。

 

それは確実にリーナの才能に嫉妬している実戦を知らないデスクワークが得意な官僚からの”嫌み”であった。

 

そんな実戦を知らずに後方で安心な所に引きこもっている”おじさま”達に何を言われようとも気にしないようにしようと今日のティータイムでいただくお菓子を脳内で思い浮かべて気をまぎらわそうとしていた。

 

していたのだが…。

 

官僚の一人がセクハラじみた「吸血鬼に接触をしたのなら問題ないという証拠を今ここで見せてみろ」的な発言をして流石のリーナも今日飲もうとしていた限定フレーバーのマッ缶のことなど記憶の彼方に吹っ飛んでしまうほどに目が覚め怒りを隠しきれそうになくなりやってやるわよ!この○○オヤジ共!と危うくFワードが飛び出そうになる寸前だったが思いもしない人物が審問会に乱入したのだった。

 

「其は少佐に対して余りにも失礼であり女性に対するモラルが欠如している発言だと、本官には思われます。」

 

どこの世界、どの時代においてもセクシャルハラスメント、という精神的な苦痛を与える行動は見られる。

それは魔法師の世界においても変わることがなかった。

室内にて発言を人物は明らかに女性のものでその発言をした官僚に対しては表情には現れていないものの不愉快である、と言葉に感情が乗っているのは同じ女性であるリーナが感じ取っていた。

 

その聞き覚えの有る声の方向を向くと一人の女性が立っているのに気がつき口から音がこぼれ落ちた。

 

「バランス大佐?」

 

リーナの「若いのに冷静で思慮深い」という評判をぶち壊さずに済んだのは直属の上司であるヴァージニア・バランス大佐が現れたからだ。

その存在に官僚組は借りてきた猫のように大人しくなっていた。

審問会の場に参上し議会進行役の官僚に声をかけて開口一番に

 

「どうして本官がこの場に最初から呼ばれなかったのかは別の機会にお伺いすることにしまして…。」

 

その発言に官僚達の半分が震えているのを見てリーナは爽快感を覚え隠れているての部分をガッツポーズした。

震える官僚達に一瞥してリーナへ振り向いて告げたのはある種のフォローだった。

 

「今回、シリウス少佐に与えられた任務は彼女の適正に有るものではなくその責任を少佐本人の責任と帰するのは妥当ではない、と本官は考えます。」

 

その言葉に室内がざわついていた。

いくら直属の部下であり同性のバランスが隠しもせずにリーナの味方…擁護するコメントをするのは官僚たちも思いもよらなかったようで驚きの表情を浮かべていた。

それはリーナ本人も同じであったが。

 

が、やはり飴があるなら当然”鞭”も有る。

 

「しかし、我が軍最強の魔法師部隊の隊長であるアンジー・シリウスが一介の高校生に魔法戦闘において遅れを取る、という事実は憂慮する事案です。」

 

その指摘にリーナ本人が一番悔しがり奥歯が砕けてしまうのではないか、と思うほどギリッと噛み締めていた。

 

「シリウス少佐も当然ながら雪辱の機会を望んでいることでしょう。そうだな少佐。」

 

そうバランスに問いかけられ二つ返事で返答した。

 

「無論です!」

 

それは当然であり先日の戦闘で八幡に押さえられてしまったことはリーナにとっても悔しい事実だったからだ。

リーナの言葉にバランスは少し頷いて壇上にいる一同に目をやって告げた。

その内容とは「現地におけるリーナの現行任務の続行」、「支援レベルを最高水準に引き上げ」の二点を官僚たちに突きつけた。

 

そして官僚の一人からの質問にバランスが答えるとより室内はざわついた。

 

「駐在武官の監査を名目として、本官が東京に駐在しようと思います。」

 

その言葉に室内のざわつきは消えずに次の言葉は官僚をよりざわつかせリーナは仮面に隠れ見えなかったがその下では驚く表情を浮かべていた。

 

「また、本部長より既に『ブリオネイク』の使用許可をいただいております。」

 

「大佐殿。それは本当でありますか?」

 

「本当だ。」

 

バランスは”大佐”というお堅い感じでリーナにこたえるのではなく”頼りになるお姉さん”の顔で微笑を浮かべながらリーナへ一言付け加えた。

 

「私が持ってきたからだ。」

 

◆ ◆ ◆

 

「そうか…八幡は現在パラサイトに対する対抗術式の研究中か。」

 

「左様でございます。ただ、生きている個体ではなくUSNAの潜伏諜報兵(モール)の体内に眠る《パラサイト》であるがゆえ研究は思うように進んではおらぬようです。」

 

七草弘一の執務室にて弘一は名倉に報告を受けていた。

 

「しかし…八幡に全てを任せる、とはいったもののまさかUSNA…それもスターズ隊員であるアンジェリーナ・クドウ・シールズと協力関係を持つとは…いやはや流石は八幡、と言ったところだ。それにしても”クドウ”と来たか。」

 

弘一の脳内に嘗ての師の姿が思い浮かんでまさか関係者だと。

そう告げる弘一は嬉しそうに口角を釣り上げる。

その反応に名倉が反応した。

 

「八幡さまの人となりも御座いましょうが実力でUSNAの魔法師部隊の隊員を押さえ込むのは流石ですな。しかし…。」

 

「なんだ名倉。」

 

「正式な入国手続きを踏んでいるとはいえ裏の顔はUSNAの魔法師部隊…それにかなりの腕前を持つそのようなものが八幡さまと関わりを持つのは宜しいので?」

 

名倉が思った通りの言葉を口にだすと執務室の皮張り椅子に座る弘一は満足そうだった。

怪しく笑っているように見えるのは本人のせいもあるがやましいことは一切無い。

 

「今回の件”任せる”と言ってある。…八幡も考えてリスキーなUSNAの魔法師と上手く、こちら側が優先権をもって協力を要求している辺りに…ふふふ、良いじゃないか。流石は私の息子だ。」

 

「…左様で御座いますか。」

 

しかし、良いことばかりではなく名倉が口を開く。

 

「このパラサイト事件に関しましてどうやら四葉家も動いているご様子。」

 

その事に弘一は困ったように眉をひそめた。

 

「どうにも四葉家もパラサイトの情報を何処かから入手したご様子…非常に遺憾ではありますが情報収集は向こうの方が上手のようです。」

 

「諜報第三課を動かしているのにその体たらくか…まぁ仕方があるまい。それで?どうなっている。」

 

「ええ。パラサイトの宿主を…どうやら『抹殺』する準備を整えているご様子。」

 

その話を聞いて弘一は分かりやすくため息をついた。

昨日に八幡から第一高校で遭遇したパラサイト…正確には”宿主”を行動停止にしたのにも関わらず「魔法を発動させ肉体を自爆させて自由になり逃げられた」という報告を受けていたのだ。

 

八幡からは「今現在進行中でパラサイトの非活性術式を作っているから下手に殺さないようにしないと。」と会話をしていた。

 

「…八幡の話では《パラサイト》は精神的な寄生体…つまりは情報体霊子の塊でこちらの攻撃があまり通用しない…それに元の宿主を殺してしまったら次の宿主を突き止めるのは大変ではないか……。真夜殿は一体何を考えているのだ?」

 

当たるように名倉に問いかけるが慣れたもので飄々と受け流す。

名倉の内心では「弘一様への対抗心を燃やしているのでは?」と思ったが口にはしない。

 

「まぁいい。寄生体が逃げ出したことで得られるデータも有るかもしれないから泳がせておこう。対パラサイト対抗術式が完成すれば七草の魔法師の地位…八幡の次期当主への注目度も向上するだろう…多少の損耗も必要経費だろうが無いに越したことはない。”敵対するものには大打撃を、味方には最小の損耗を”だ。こちらにお招きしている客人の護衛を強化しておいてくれ。」

 

”客人”というのは八幡が保護しているミカエラ・ホンゴウの事だった。

今彼女は現在八幡が自費で建築した別館のゲストルームにて寝泊まりをしている。

八幡が協力を依頼をしているのだが立場上彼女がUSNAの諜報工作員のため少々厄介であるのだが…。

 

「…こちらもある程度の情報を筒抜けだろう。先程お前が報告をしてくれた”抹殺リスト”とやらに彼女も入っているかもしれん。彼女は八幡の客人だから丁重にな。それと名倉。お前は八幡と真由美への協力を頼むぞ。」

 

「心得ました。」

 

名倉が弘一に命じられて頷いた。

 

◆ ◆ ◆

 

「マジかよ…。」

 

ミアさんとの協力を受けて対パラサイト対抗術式の開発に勤しんでた次の日。

父さん、姉さんや泉美と香澄と小町と一緒に朝御飯をいただいているときに絶句した。

その衝撃的なニュースは飛び込んできてその映像に俺を除く三人は怪訝な表情で見ている。

端的にいうならばUSNAがマイクロブラックホールを使った実験を安全の確保も行わないで実行したお陰で化け物が世界に解き放たれてしまった、というある種の偏向報道がされていた。

その実行をした理由としては去年の十月末に発生した「灼熱と漆黒のハロウィン」にて使われた秘密兵器に対抗するために行われたその後始末についての責任の非を問われていた。

 

隣に座っている姉さんが俺に話しかけてくる。

 

「ねぇ八くん。これって…何か変じゃない?」

 

「体のいい”魔法師排斥運動”…の扇動に使われてるような感じがするかもね。」

 

「やっぱり…わたしもそんな感じがしたわ。」

 

「分母が非魔法師の方が多いんだからメディアがどっちにつくかは明らかだろうけど…問題はそこじゃない。」

 

「と、いうと?」

 

不思議そうに首を傾げた姉さんに耳打ちした。

 

「米軍の極秘裏…それに魔法師部隊スターズを動かしてるのに関わらず情報封鎖が杜撰すぎてる。”この情報源がどこから入手できて検閲を通らずに一般メディアに放出されたのか”ってことだよ。」

 

「なるほど…そういえばそうよね。」

 

俺の脳裏にリーナの顔が思い浮かび今日朝登校で一緒になったらその件で確認をしてみようと決意した。

 

「…。」

 

俺たちが相談をしているときに父さんがこちらを見て一瞬だが微笑んだ気がしたのは…気のせいだろうか?

 

◆ ◆ ◆

 

登校てから授業が始まって昼食時俺がリーナに話しかけた。

 

「おはようさんリーナ。大丈夫か?」

 

「おはよう八幡…。ええ。しょうしょう面倒な”おじさま”たちとお話をして頭が痛いわ。」

 

座席に座り大袈裟なポーズを取るリーナは相当参っていたらしい。

 

「そりゃあ大変だったな。」

 

心から思ったことをリーナに伝えるとジト目で見られた。何かしたっけ?

どうやら俺が原因らしいが思い当たる節がない。俺何かしました?

 

「はぁ…全く…誰のせいでこんなことになってると…それで一体どうしたの?」

 

ここで…と思ったがクラスの連中が俺たちの会話に聞き耳を立てているのが気になったのでリーナを外へ連れ出し今日のニュースの事を屋上で聞いた。

 

「今日のニュース、リーナは見たか?」

 

「…ええ。見たわ。」

 

その顔は非常に不愉快、と言ったものだが。

 

「あれってどこまでが本当なんだ?」

 

「肝心なところは全部嘘っぱち!表面的な事実は押えてあるから余計に質が悪い…!情報操作の典型よ。」

 

「世論操作、か…まぁそれはどうてもいいとして…どうして機密のはずのマイクロブラックホール生成実験の被害…それも軍人がパラサイトに寄生されて事件を引き起こすなんて情報一体どこから漏れたんだ?軍だってそんな魔法師の反抗運動が起こらないように情報検閲ならびに封鎖をしていた筈だろ。誰が漏らした?内部の人間か?」

 

「あり得ないわ……あるとするならば『七賢人』。」

 

「『七賢人』?なんかの魔法師排斥グループか?」

 

俺がそう問いかけるとリーナは首を横に振った。

 

「違うわ。彼らは自らをThe Seven Sage と名乗る組織があるの。正体も目的もわかっていないわ。」

 

「正体も目的もわからない?USNAで…生まれたんだろって思ったけど七人、って言うくらいならUSNA国外に同じ目的の人間がいるのかも知れないな。」

 

俺が思った疑問を口にするとリーナが驚いた顔を浮かべていた。

 

「…そういわれれば…そうね。その考えは無かったかも。」

 

「ひとまずその連中の存在を明らかにするのはあとにしてだ…連中が漏らしたとしてなんでそんな事を?連中は人間主義者と繋がりでもあるのか?」

 

「100%…とは言い切れないけど…たぶんそれは無いわ。過去の事例からしてみても七賢人はそういった狂信やイデオロギーとは無縁よ。それに彼らは協力もしてくれたこともある。…かなり一方的な協力だったけど。」

 

「つまりは…物語を操作したくて物事を引っ掻き回す愉快犯ってことか…。」

 

「まぁ言い得て妙。ってところね。」

 

まぁ俺の大体聞きたいことは終わった…と思ったが昨日の事を聞いておきたいと思い話しかける。

 

「そういえばリーナ。」

 

「なに?」

 

「昨日は学校休んでたけどUSNAの大使館に呼ばれてたのか?」

 

「…っ!!…貴方私の私生活覗いてるの?」

 

驚いた表情を浮かべた後に俺を見る目がジト目に変わる。

リーナみたいな美少女の私生活…覗きたいか言われれば覗きたくない。

私生活がわからないこそ神秘性があるというもので…と茶化したが知り合いの生活空間に踏み込みたいと思うほど俺はリーナを知らない。

 

「お前が学校に来ないのはUSNA関連の話だろ。たまたまだよ、たまたま。」

 

「…ふーん。どうだか。貴方と話してると全部見透かされてる気分になるのよね。」

 

そういってわざとらしく体を抱くリーナ。

一部が強調されるから青少年的には勘弁してほしい。

 

「気のせいだ。それよりも授業中に疲れてたのは制服連中に作戦の進行度合いが遅いことでこってり絞られてた、と見える…がそれは置いておいて…リーナの直属の上司であるバランス大佐は来日してるのか?まぁ流石に指揮官が現場に来るとは思えないけど…。」

 

「ほんとに貴方ってエスパー?…なんだか怖くなってきたわ。」

 

その肯定の反応に思わず俺は頭を抱えてしまった。

仮にも軍人で軍要人が来日しているのをそんなに素直に暴露しなくても…と俺が逆にリーナとその立場を心配してしまった。

 

「俺が質問する前に声に出すなよ…俺だから良いけどさ。んで?俺の事は伝えたのか?」

 

そう質問すると顔を真っ赤にして怒り出した。

 

「い、言えるわけないでしょっ!?貴方と部隊に黙って協力関係にあってミアがパラサイトに寄生されてる…なんて事言えるわけないじゃないっ。」

 

「まぁそうだよな…。」

 

俺がリーナの立場であったとしても憚られる事案だからだ。

ましてや相手が捜索対象である”ダークマター”の術者の最重要対象…まぁ俺なんだけどな。

なおかつ部隊員が暴れているパラサイトの寄生先となれば銃殺刑待った無しだろう。

 

「まぁそこら辺はおいおい考えるとして一応お前に報告しておくがミアさんの助けもあって術式の組み立ては順調だ。」

 

完成した、と言えないのはサンプルが少なすぎるからだが…。

そう告げるとリーナは明るい顔を浮かべたがすぐさま難しい表情を浮かべている。

 

「そう…でもあのときミアがワタシの前に立って張った障壁…ミアは魔法能力が低すぎてあの威力の雷撃を防ぐことができる障壁を張れない筈…やはり本当にミアは…パラサイトに変質してしまったの。」

 

その言葉に少し引っ掛かった。

 

「パラサイトに寄生された人間がサイキッカーになるのを知ってたみたいな言い方だな。」

 

そういうとリーナは苦い顔を浮かべてこたえてくれた。

その事実を知った理由は非常に心苦しいものだったからだ。

 

「ええ。知ってるわ。…ワタシはもう既に四人の感染者…『吸血鬼』を自分の手で処断しているもの。」

 

「…そうだったな。すまん。」

 

リーナは怒っていたがそれは俺へ対してのものではなくこの事件を引き起こした者へ対する怒りの発露が見て取れた。

 

「…これが誰かによる企てだとするなら…ワタシはその人物を絶対に許さないわ。」

 

そういって俺にくるりと向き直りいつものリーナの表情で俺に告げた。

 

「貴方の対パラサイト対抗術式、早く完成させるためにワタシも協力するから。…だから宜しくね八幡。」

 

「…任せろ。」

 

複雑な想いが込められた笑みを浮かべた表情に俺はただただ、頷くしかできなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

ほのかは廊下で大きな声を上げてその付近にいた生徒から注目を受けていた。

 

「えーっ!?」

 

「ほのか…はしたないわよ?」

 

「う、うんごめん深雪…ほ、本当に…?」

 

1-Aの教室前、次の授業が始まる前の休憩時間中に深雪とほのかは教室の外、廊下で雑談に興じていたがその場に別クラスであるスバルもその場に居合わせており近々行われる乙女達のイベントについて相談をしていたのだが…

 

「は、八幡さんにチョコをっ」

 

「違う違う…九校戦で彼と司波くんに一年生全体に彼らにチョコを渡そう、と言う話になったんだ。一緒にどうだい…と言うか君たちは別々に渡すか。」

 

すっとんきょうな声を上げられスバルはメガネのズレを直して驚きを隠せないほのかに説明をしていた。

そして確認するようにスバルは深雪をチラ見すると当然ながら。

 

「ごめんなさい。わたしは個人的に八幡さんにお渡ししようと思っているから」

 

「深雪はそうだよね…ほのかもだよね?」

 

話を振られて頷くほのか。

 

「あ、は、はい!わ、わたしも個人的に八幡さんに渡したいのでっ」

 

そういうとスバルは「だよねー」と納得し深雪はニコニコと微笑んでいるだけだった。

が、内心でほのかは焦っていた。

 

(ど、どうしよう…!?考えてみれば八幡さんにチョコレートを送りたい女の子なんてこの第一高校には多い筈だからそんなこと考えるのは当たり前だよね…だって八幡さんは普段はちょっとだらしないのにいざってときは本当に格好いいんだもん…惚れられて当然だよぅ…!)

 

ほのかは内心で焦っていた。焦る必要は本当はないのだが。

 

(わ、わたしは…八幡さんにあのとき…告白したけど…過去に…あんなことがあったなんて知らなくて…こ、このままだとわたしの存在…忘れ去られちゃう!?)

 

その時、脳内にはほのかの存在しない記憶が流れ込む。

 

たくさんの女子に囲まれて両手では抱えきれないほどのチョコレートを貰って笑みを浮かべる八幡の姿がありその取り囲んでいる女子の中には強敵である深雪に雫、エリカに真由美、そして最近ずっと一緒にいる金髪美少女のリーナの姿があり。

 

…とほのかの頭の中は針ネズミ状態だった。

 

(だ、ダメよほのか今のままじゃ…!)

 

つい最近は噂で八幡達が構内に入ってきた不審者と交戦した、と言う噂があり定かではないが仲間はずれに勝手にされていると思い込んでいたほのか。

 

(ダメ…このままじゃ。何とかして八幡さんの役に立てるように頑張らないと…!)

 

再び脳内に八幡(妄想)の姿が思い浮かんだ。

 

『ありがとうほのか。本当にほのかの想いが伝わったよ。付き合おう。』

 

チョコを渡したタイミングで正面から抱き止められ身長の高い八幡がほのかを見下ろすように視線を下にすると同時に顔が近づいて唇をー。

 

(そ、それはいくらなんでも都合がよすぎだってっ!……はうっ!……よ、よぉし頑張るぞわたし…バレンタインを印象的な日にしなくちゃ…!)

 

そう決意したほのかはバレンタインに向けての準備をするのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

司波家では響子が訪れており達也と深雪がUSNAの外交官と日本の外交官が極秘会談をしているのを録音したのをリビングで聞いていた。

 

端末の再生ボタンを停止すると響子が顔を上げた。

 

「今の話を聞いて貰った通りだけど…ウチの外交官連中も随分と頑張っているみたい。流石に『戦略級』の重要性と特殊性はわかっているみたい。」

 

その話から政治の話になり達也は深雪にその事を教え考えさせて話を飲み込ませていた。

話は進み響子が困ったような表情を浮かべていた。

 

「それにしても達也くんとは別のあの魔法の発動者…軍でも未だにその所在は掴めていないわ…まるで幻影(ファントム)ね。」

 

言葉を濁して発言しているのは達也に対する配慮もあっただろうが響子を見て意味ありげな笑みを浮かべている達也と深雪の実母…深夜の存在があったからだ。

 

「響子さんや軍の諜報機関でも調べられないのでは実在しないのでは?」

 

「あのモニターに映った機械式強化外骨格…あれはどこの研究機関、並びに軍でもまだ開発がされていない最新式…いや未知のテクノロジーでつくられているかもしれません、と大尉がね?」

 

上司である真田がそう告げるなら、と達也も自分が発動させた『マテリアル・バースト』が撒き散らす重金属の蒸発の中をその鎧骨格に傷一つついておらずその爆心地で尚且、数百kmは離れている対馬要塞から監視されていることに気がついて手を振る、と言った明らかな挑発行為をしているのはこの近代で発達したとは言えAI…それも幽霊ではないことは確実だろうと達也は結論付けた。

 

「軍としては七草の息子が怪しい、と?」

 

次なる会話に移るために話題を変えると後ろと隣の母親と妹がガタッ、と立ち上がった様子が感じ取れたが後ろは穂波が押え深雪は達也が押えていた。

 

「…軍の諜報機関は仮定を立てて身辺調査をしてはいるみたいだけど…証拠がないからシロ…と言いたいところだけど彼が扱う加重系統の魔法は恐らく”八”の家を差し置いて当代最強の使い手であることは間違いないでしょう。だから七草の彼に疑惑の目が届いているのは…こんなことを言いたくはないけど残当、クロに近いシロと言ったところね。」

 

「……っ。」

 

憤っている深雪を嗜める達也。

 

「深雪。大丈夫だ。」

 

「も、申し訳御座いませんお兄様。」

 

八幡が国防軍がつけたコードネーム”黒衣の執行者(エクスキューショナー)”と疑いを持たれているのは新年に入った際に母親経由…と言うよりも四葉本家の真夜から教えられ尚且抹殺しろ、とそのお役目を仰せつかっているしそもそもに置いて何故か真夜が八幡に対して敵意しか持っていない。

達也はもし仮にその戦略魔法師の正体が八幡であったのなら躊躇う程度には友情を感じている。

そもそもにおいて深雪の思い人に手を掛けるのは嫌だった。

 

「それに彼に疑惑の目を向けているのは国防軍だけじゃなくて彼ら…USNA…直近であんなニュースがあったばかりでしょ?だからあんな事件を引き起こしてしまった…対抗策を見つけ出すために。”完全制御できたブラックホールを利用した戦略魔法”だなんて向こうからしたら驚異でしかないもの。」

 

知ってか知らずか苦笑いを浮かべる響子のコメントも的確なものだった。

 

報告を予ての訪問を終えた響子は玄関で見送りを司波兄弟からされたその時、帰りがけに思い出したかのようにハンドバックからチョコレートを二つ取り出した。

 

「はい、ちょっと早いけど達也くんと深雪さんに。義理チョコと友チョコよ。」

 

そういって手渡された小さな小包を受けとる二人。

 

「あ、ありがとうございます藤林さん。」

 

まさか渡されると思っていなかった深雪は驚いていたがその程度でお礼を忘れるほど仰天はしていない。

 

「義理チョコでしたか。」

 

期待を持たせない、清々しいほどの正直な加減だった。

 

「あら?義理じゃ不満だったかしら?」

 

響子は達也に対してお姉さんの余裕たっぷりの笑みを達也に向けるがその程度…と言うよりも同じ軍の部隊で上官なのだからそんな気がないことがわかっていたがからかいたくなった達也。

 

「そうですね…本命でしたら嬉しかったです。」

 

「へっ?……た、達也くん//その…あ、あまりそういうことは女性に言っちゃダメよっ」

 

真面目な、若干の微笑みを称えた達也の表情に響子は顔を赤くして少し足早に司波家から退散していった。

 

玄関に残された司波兄弟。

 

「八幡を見習ってジョークを言ってみたんだが…ダメだっただろうか?」

 

首をすくめたようなジェスチャーをする達也に深雪は微笑んでいた。

 

「お兄様…それは女性にするものではありませんよ?」

 

「…上手く行かないものだ。」

 

「ふふっ♪お兄様ったら。」

 

◆ ◆ ◆

 

バレンタインが数日前に近づいた週末。

東京某所のショッピングモール。

そのテナント内一つの女子グループがテーブル席を利用していた。

一人は煌びやかな背の中頃まである長さの金髪を持つ少女でその隣にいる明るい栗色のセミロングの少女は妹のようだ。

そしてその対面には紫掛かったボブカットの黒髪の美少女の隣に一緒に座っている少女よりも身長の低い腰まである青み掛かった髪を持つ少女が待ち人を見つけ声を上げていた。

その声に反応し金、紫、明栗色の髪を持つ少女達が反応していた。それにしても全員が美少女である。

 

「ほのか!こっちじゃこっち!ひさしぶりじゃのう!」

 

声を掛けられ駆け寄るほのかだったが座席に座る人物の中に見たことの内少女がいたことに疑問を思ったが隣にいる少女に雰囲気が似ていた。

ほのかは声を掛ける。

 

「みんなも久しぶりっ!元気そうでよかった。」

 

「おおっ、ほのかよ息災であったか?」

 

青髪の美少女…四十九院沓子がほのかにむぎゅり、と抱きつく。

 

「う、うんっ」

 

困惑するほのかに助け船を出したのは十七夜栞だった。

 

「沓子、光井さんが困っているじゃない。」

 

「おおう。すまんの久々の再会に思わず興奮してしまってたわい。」

 

「あはは…。」

 

そういって席に案内されテーブル席はぎゅうぎゅうになった。

ほのかが来たことで座席には注文したティーカップが置かれ紅茶のいい匂いがテーブル席に広がる。

 

沓子がどこで購入したのかわからないお土産品を渡され怪訝な表情を浮かべるほのかだったが受け取らない、と言う選択肢がでないいい子であった。

 

「土産話もたんまりとあるのじゃが…それだけで1日が終わってしまうのう!」

 

「全く…魔法師の海外渡航が厳しく制限されてるのにいったいどこで何をやっていたのか…。」

 

どや顔で自慢する沓子に呆れた表情を浮かべる栞。

 

「それよりも…愛梨の隣にいるその子は…?」

 

「ああ。ごめんなさい光井さん。この子はわたしの妹の一色いろはよ。」

 

やはり、と視界に入ってしまったほのかは金髪の美少女…愛梨におずおずと問いかけると全員が「あっ…」となり明栗色の美少女が自己紹介をしてくれた。

 

「初めまして光井ほのかさん。お姉ちゃんから噂はかねがね。わたしは一色いろはです。先輩がお世話になっています。先輩光井さん達ご迷惑をおかけしてませんか?」

 

”先輩”と言うのがほのかの中で誰なのか結び付かなかった。

 

「へ?先輩…?」

 

「ああ。先輩って言っても結び付かないですよね。」

 

次の言葉にほのかは驚愕した。

 

「わたしは元々総武中学にいた旧姓”比企谷”八幡さんの後輩で一色家の次女です。」

 

「えっ…一色さんが小町さんの言っていた子…?」

 

そういわれていろはは少しはにかんだ後に後悔するような苦笑いを浮かべている。

 

「お米ちゃんから聞いてますよね?あはは…そういうことです。」

 

ほのかは目の前の少女が八幡を追い詰めた人物、と言うことを聞いても心から「悪くない」と理解していたので素直に。

 

「うん。よろしくねいろはちゃん。」

 

素直に微笑んでこちらを見つめるほのかを見たいろはは面食らった表情をしていたが納得したのか微笑を浮かべ直す。

 

「…やっぱり先輩が仲良くなりそうな人でした。ほーんと先輩ってそういう人を見る眼はあるんですよね。」

 

「いろはちゃんからも昔の八幡さんのお話聞きたいから連絡先を交換しない?」

 

それに対していろはは何時ものような愛されキャラを出現させる。

 

「あ、いいですよ?それからわたしもほのか先輩、って呼んでもいいですか?」

 

「もちろんだよいろはちゃん!」

 

いろはの脳内に大好きな優しい同性の先輩の姿を重ねていた。

端末を取り出そうとしてバックに視線を向けるといろはの耳元で愛梨が囁いた。

 

「だから言ったでしょいろは。心配要らないって。」

 

「…うん。お姉ちゃんの言った通りでよかった。」

 

姉妹の会話はほのか達に聞こえず連絡先を無事に交換して会話を始めた。

事の発端として何故三校の彼女がこの場にいるのか、それは愛梨が原因だった。

愛梨が以前に八幡に「東京を案内するよ」と愛梨に告げてその日取りで東京へ向かおうと(そのときにいろはもいたので無理について行く事にした。)その話を聞いた沓子達が「なんかほのかが悩みがあるみたいじゃからお土産を渡すついでに我々も東京へ行くぞ!」と無理矢理ついてきた(栞は巻き込み)のだった。

 

そうして愛梨といろはは八幡との東京デート(この件で八幡は土曜にいろはと愛梨に拘束された)を堪能し日曜日に沓子達の目的を達成しようとほのかに連絡(いろはもほのかにあってみたかった為着いてきた。)をとっていた。

 

「そういえば…北山さんは留学できていたのよね?どうしてかしら?」

 

「うーんよくわかってないんだけど…実はUSNAから交換留学生が来ていて…。」

 

そうほのかが告げるといろは以外の三校生徒が驚いていた。

 

「なるほど。」

 

「そちらが本命じゃのう。して?出来るやつなのか?」

 

「うん。魔法実習だと深雪と互角。」

 

「司波さんと互角ですって?」

 

愛梨は自らを深雪のライバルと自負している側面があるせいか誰よりも驚いていた。

 

「いやーしかしあからさますぎじゃないかのう?自ら怪しいものですーと言っておるものじゃろそれ。」

 

「いや、でも…隠し事が出来なさそうな性格だし…スパイとはそんな感じはしないけど…。」

 

「あるいは隠し事が出来ないからもうそのまま素で出しちゃってる…そんな感じかしらね。」

 

「うーむ…そういうこともありえるかのう。」

 

「?」「?」

 

ほのかといろはは「なんで?」と言う表情を浮かべていた。

愛梨はわかっていないいろはを見つめると困った表情を浮かべ頬を掻いた。

 

「実は…師族会議からの通達で去年の横浜の一件、各国からの多数の工作員が送り込まれている、との注意喚起が来ているのよ。」

 

「じゃあまさかリーナが?」

 

「その子自身は悪い子じゃないんだろうけど…くれぐれも気を付けてね光井さん」

 

本当に身を案じてくれている愛梨の言葉にほのかは素直に感謝を述べた。

 

「うん。心配してくれてありがとうね一色さん!」

 

「っ…///と、同然よ。友達だもの。」

 

(照れたのう)(照れたわね。)(照れたねお姉ちゃん。)

 

(キッ!)

 

「???」

 

「それにしても…深雪と同格だなんて世界は広いわね。」

 

話題を変えた愛梨。

それに乗っかる女子四人。

 

「でも実戦では分からないじゃない。実際に競技場で戦ってみないと。」

 

栞が反論するとほのかが思い出した。

 

「そういえば八幡さんとリーナで魔法実技で競いあってたけどリーナ一度も勝ててなかったな…。」

 

「ほほう…?」

 

「上には上がいたわね…本人はそう言われるのを嫌いそうだけど《英雄》が」

 

「本当に先輩ってば規格外ですね…。」

 

「正直…八幡さまに勝てるヴィジョンが見えないわ…。」

 

「ワシもじゃよ。」

 

八幡に対する総評が「であったら逃げろ」なのは流石に酷いのでは?とほのかは思ったが去年の横浜騒乱の際に一騎当千の活躍をした八幡を思えば当然と言えるだろう。

そのときに八幡の形相を見ていたほのかとしては大層複雑、と言えなくもないが。

 

「ほのかはライバルにまけないようにな?家柄ももちろんじゃが九校戦と横浜の件も含めて八幡殿はファンもおおいじゃろうて。」

 

「うぐっ…!」

 

「へっ」

 

「あっ」

 

「沓子…」

 

「へっ?わ、わし何か地雷をふんだかのう?」

 

胸を押さえて落ち込むほのか。

そう彼女がここに三校生徒+妹を呼び出したのには理由があった。

 

「…実はバレンタインにお世話になった一年女子全員から八幡さんにチョコを渡そう、って企画があるらしくて…」

 

「「「……。」」」

 

三校女子はほのかの話を黙って聞いていた。

 

「このままだとわたしのチョコみんなの影に隠れて埋もれちゃうかなって…それに八幡さんは十師族のお家柄で良いチョコとか食べて舌が肥えてると思うし…」

 

「この間も何かの事件を解決してたようなんだけどわたしは蚊帳の外で…。」

 

ずんずんと暗くなっていくほのか。

 

「わたしが強かったらこんなこと、」

 

「落ち着いて光井さん。」

 

決して大きくはないが鋭い制止の声と肩を掴まれハッとなったほのかは言い掛けた言葉を中断し愛梨の顔を見た。

 

「まずは状況を整理しましょう。」

 

愛梨による的確な診断が始まった。

 

「お世話になっている人が八幡にチョコを渡すのは普通の事」、「そしてそうした時に違うものを渡すのは特別な想いをアピールするならば手作りがいい。」これらの事を指摘されハッとなったほのか。

 

「それにあなたは他多数の人と違って夏に八幡さまに告白をしているのでしょう?だったら問題ないじゃない。それだけで《あなたには特別な感情を抱いています》って。…本当は敵に塩を送るようで困るけどね?それから、『強かったら』ってあなたは言っているけど相当な実力の持ち主よ?」

 

「い、一色さん。そ、そんなことは…」

 

複雑な表情でほのかに指摘する愛梨。

すかさず沓子がフォローに入った。

 

「謙遜はよくないぞほのかよ。現に戦った儂が言うんじゃから心配ご無用じゃ!」

 

「ええ、そうよ。その上で「もっと強くなりたい」と言うのは八幡さんを戦闘面でフォローできる補助魔法を習得したい、ってことなのよね?」

 

「そ、そうなんです!そうなんですよ!」

 

捲し立て愛梨のてを握るほのかの姿は沓子達が見たことのないものだった。

 

「そ、そうね…光井さんは光魔法が得意だからその系統の魔法の分野を伸ばすとして…三校は実践的な魔法習得が可能だけど向き不向きがあるから…そうね先生や先輩、そちらは魔法大学付属なのだから魔法文献は豊富だしそちらを当たってみるのも手じゃないかしら?」

 

「光井さんならきっと八幡さまの役に立てる魔法を習得できると思うわ。功を焦っては仕損じる、という(ことわざ)があるから落ち着いていきましょう?」

 

「う、うん!」

 

「しかし…八幡殿も光系統の魔法を数多く習得していそうじゃから本人に聞いた方が早かったりしてのう。」

 

沓子が余計な一言を言って愛梨と栞にジト目で見られて「たはは…」と乾いた笑いが響いたのは想像に固くなかった。

 

相談が一段落してショッピングモール内をぶらつく少女五人。

ちょうどその件であったチョコレートが置かれている売場にて物色をしていると隣にいた愛梨にほのかが質問をした。

 

「そういえば一色さんは気になる人にチョコは渡さないの?」

 

「わたし?わたしなら既に渡したわ。八幡さまに。」

 

渡した人物の名前を聞いて思わず反応をしてしまったが既に愛梨が八幡に告白をしていたことをしっかりと失念しており目の前にいるのはライバルだったことを思い出した。

 

「えええっ!?ず、ずるい…!」

 

「…ズルも何も私といろはは普段は石川の方にいるのですから早々東京まで足を運べませんしこの2日間を利用して八幡さまとお出掛けを慣行しただけです。」

 

「そ、それってデート…!」

 

「…とは言えませんわね。…この子も着いてきてしまったので。」

 

そうして視線の向こうにはチョコレートを物色するいろはの姿がありほのかは苦笑いを浮かべるしかなかった。

次のコメントにその苦笑いは吹き飛んで驚愕することになったが。

 

「まぁ、いろはも中学生時代の後輩の時から八幡さまに好意を持っていたみたいですし…。」

 

「え、ええっ!?姉妹揃って八幡さんを?」

 

「ええ。奇妙な事ですよね。」

 

愛梨は困ったような笑みを浮かべていた。

 

当日の同じ場所にて同学年のスバルやエイミィ達と遭遇し九校戦で凌ぎを削った一堂三校と一校が介していた。

その日から愛梨に言われた通りに先生や先輩に話を聞いて自分に合った光系統を探すことになるのだが…。

それはまた別のお話。

 

◆ ◆ ◆

 

とある日。七草家の調理場は世話しなく姦しい声が響き渡っていた。

キッチンには”男人禁制!”の張り紙がなされておりそれを見た名倉と弘一は笑みを浮かべていたが八幡は頭の上に「???」を浮かべているしかなかった。

 

その”男人禁制”の裏側で行われていたその正体は…。

 

「あ、泉美そのゴムベラ取って。」

 

「はいどうぞ。あ、香澄ちゃん。そのデコレーションペンを取ってください。」

 

「あ、小町味見して上げるね。~ん、ちょっとビターすぎるかも。お兄ちゃんの好みには合わないかな。」

 

「あ、ちょっと小町ちゃん!わたくしが型に入れて固めておいてチョコを食べないでくださいっ…まぁ味の方は少しミルクチョコを加えるとして…。」

 

「あ、小町ちゃん。お姉ちゃんのチョコも味見して貰える?」

 

「はいはい~いただきます……ぶふぉ!!……ふぐっ!?」

 

「「わっ、汚いっ!」」

 

真由美が作ったチョコレートを味見する小町だったが口に放り込んだ瞬間に顔を青くして吹き出しテーブルに崩れ落ちた。

 

「小町ちゃん!?」

 

「小町!?」

 

何事かと驚く泉美と香澄。

慌てて水道から水をコップに注いで手渡すとそれを受け取った小町は一瞬で飲み干した。

 

「んぐっんぐっ…ぷはっ……お姉ちゃんこれヤバイよ!?なんかめちゃくちゃ濃い化学調味料の味がするっ!」

 

「え?…うそっ!ちゃんとお砂糖をいれた筈よ?」

 

真由美がそんな筈は…と指差す場所には確かに砂糖の入った容器が真由美の前に置いていた…が。

 

「お姉ちゃんこれ○の素だ…。」

 

「お姉さまそこにおいてあるのお砂糖じゃなくて味の○ですわっ!」

 

「な、なんでこれがここにあるのよぉ~!?」

 

そこにあったのは砂糖の容器に似た入れ物に入っていた化学調味料だった。

かなり広目の調理場のテーブルの上にはチョコ、チョコ、チョコ…それに調理器具とラッピングの道具がところせましと乱雑ではなく整理整頓されている辺りは正確がそれぞれに出ているだろう。

泉美はきっちりと、香澄は取りやすいように、小町はつくっている本人しかわからないような置き方でそれぞれどれをつくるのかを試行錯誤しているようだったが真由美に関してはもう作成するのを決めているようでおいてある道具や食材は少ない。

 

が、ここにいる全員は料理が上手、と言うわけではなくやいのやいのと言いながら姦しい黄色い声が飛び交っていた。

なぜそんなことになっているのかと言うと明日は2月14日…明日に控えた「バレンタインデー」だからだ。

八幡がここにいたのなら「そんなのは社会的に国民から企業へ金をおとして経済を回させるお菓子メーカーが国家ぐるになって共謀している」と力説するあろうがここにいる七草の姉妹達は「聞こえません!」と言わんばかりに明日への準備のために自らを道化?と偽っていた。

実際にこの七草の調理場だけでなく第一高校の生徒も(一部例外はあるが)浮わついた空気を醸し出していた。

特にその浮わついた濃度が高いのはこの七草の調理場と言えなくもない。

 

先ほども述べたが全員が料理上手、と言うわけではない。

大好きな兄(弟)のために……と。

 

小町を除く三人は同じ人を好きになっており本来ならばあり得ないのだが彼女達とその兄…八幡とは血が繋がっていないので無問題であった。

 

が、それぞれ八幡に手渡すチョコレートの種類…妹達のは普通のハートの形や小さいのが複数個別れていたりチョコクッキー、と普通の物なのだが…。

 

やたらと真由美のチョコレートだけが苦かった。

 

日付が回りそうになるぐらいまで姉妹四人で仲良く姦しく手作りの愛情を込めたチョコレート作りに勤しんでいた。

 

◆ ◆ ◆

 

「……すみませんミアさん朝までお付き合い頂いて…対パラサイト用の対抗術式の目処が立ちそうです。」

 

「ほ、本当ですか…?本当にスゴいですね八幡さんは。」

 

俺は学校に行く前に離れに立ち寄り新規作成した術式…”対パラサイト対抗術式”の起動式を組み上げエンターキーを叩いて仮組の状態でCADにインストール。

その術式を発動させると《瞳》に映るぼんやりと中に浮いていた霊子の塊を確りととらえることが出来ていた。

その霊子の固まりにCADを向けて発動すると木っ端微塵に砕け散って量子の海へ帰っていった。

 

と、言っても未完成で活性状態の《パラサイト》のデータが必須で正直言うと俺以外の魔法師が”精神体を消滅できる術式”は完成していない。もっとも、パラサイトを《瞳》で捕捉が前提で攻撃を当てても”怯ませること”しか出来ないが。

 

対霊子魔法霊子弾(スピリット・ブリット)

パラサイトがいる空間に直接作用させる効果を持つ想子ではなく霊子を機転とする攻撃方法。

これが俺が開発した魔法だ。

 

この起動式自体が汎用性の無い専用魔法…賢者の瞳(ワイズマン・サイト)…とこれを使えるのは恐らく魔眼を持つ姉さん…《マルチ・スコープ》とリンクさせて使えるぐらいか。

 

もし”向こう”からパラサイトが現れたときに攻撃を当てられるのが少なければ意味がない。

だとすれば俺が開発したこの起動式は欠陥だ。

 

攻撃を当てて消滅させられるのが恐らく《虚空霧散(ボイド・ディスパーション)》とかの他人に見られてはいけない高威力体の魔法しかないから…本当にきつい。

見られていない状態なら問題ないんだけどなぁ…。

それを言うならミアさんのように取り憑いた魔法師の精神領域からの剥離をさせる魔法が見つかっていないのでまだ

まだだ。

 

課題は山積みだと自分に言い聞かせて眠い頭を無理矢理覚醒させて怠い身体を《物質構成》で甦らせて登校することにした。

 

 

今日は2月14日。

今日はなにかと家族の様子がおかしい…と思ったがどうも今日は菓子と国家ぐるみで国民から金を巻き上げる”バレンタイン・デー”と呼ばれる非モテ男子が血涙を流す日の事だったらしい。

 

まぁ…俺にとってはあまり意味のない関係のない日、と言うことだけ伝えておこう。(誰にだよ。)

 

と学校に向かうキャビネットに何時もの事ながら姉さんと一緒に搭乗し何時もの時間に駅に到着しそこから少し歩き正門に到着すると同時にほのかに挨拶された。

随分と畏まった…と言うよりも緊張をしているようでまるでブリキのオモチャのようにぎこちない。

一体どうしたの言うのかと思いきや不意に姉さんが先に行ってしまった。

怪訝に思っているとほのかから話しかけられる。

 

「は、八幡さんっ!」

 

「ん?」

 

俺がほのかの方に身体を向けると

 

「こ、これを…うけとってくだしっ…!」

 

噛んだ。ほのかは思いっきり噛んでしまいその色白な肌をリンゴのように紅潮させて沸騰寸前なヤカンのように今すぐにでも湯気を出してしまいそうな程に。

 

突き出したままで固まったほのかの状態は引かぬ、媚びぬ、省みぬ!状態で女子高生の道に撤退はないのだぁー!状態になっているので受け取らない、という選択肢を俺は取れなかった。

特にほのかに関しては。

受け取った瞬間に奇妙な波動がほのかから発生しているような感じ取れたがひとまず置いておくとして…俺はほのかに伝えなきゃならない言葉を告げた。

 

「…ありがとうなほのか。」

 

受け取った小包装を大事に受け取るとほのかが顔を赤くして俺の顔を見る。

 

「あ、あのはちゅまんさんっ!」

 

あ、うんまた噛んだせいで顔を真っ赤にしてるほのかを見て肩に手を置いて落ち着かせた。

 

「あの、大丈夫、ちゃんとほのかの言葉を聞くから…ゆっくり、な?」

 

「わ、わたし…八幡の事大好きですっ!」

 

「……。」

 

再度の告白。

もう一度その言葉をほのかの口から聞くとは思わなくて思わずフリーズしてしまったが何故か今までとは違うような感情でほのかに返答していた。

これだけは伝えなきゃならないと、良い淀んでいた口がその感情を吐き出す。

 

「…まだ…その感情に対して俺は…えーと……どう言った良いかわかんねぇけど…その…………あり、がとな?」

 

「………っ!!!!!はいっ!」

 

その一言を告げるだけですげー時間が掛かった。

そのせいでほのかがすごく嬉しそうにしていて二つ合わせて危うく俺たちは遅刻し掛けたのだった。

 

ほのかにちゃんとしたお返し返さないとな…。

 

◆ ◆ ◆

 

(今日は…バレンタインなのよね。)

 

今日は体育の授業があり手早く体操着に着替えていた。

リーナは今日がバレンタイン当日の事もありクラスメイトから「シールズさんは誰にチョコレートをあげるの?」と質問責めにされて少々うんざりだった。

 

(一応…あの人に渡す用に市販品のチョコレートを買って持ってきてるけど…ってなんでわたしがチョコを渡すだけでこんなに迷わなきゃならないのよっ!これも日本のアクシュウ(悪習)?って奴ね!)

 

そんなことを思いつつ制服を脱ぐと引き締まった括れに欧米人特有の色白の肌に可愛らしい白と緑のストライプ上下のブラに包まれた豊満なバストとショーツを纏ったハリのあるヒップが露になり更衣室にいる女子生徒の視線が突き刺さっていたが八幡に渡すか渡さまいかで悩んでいたので気にしなかった。

 

そんなことを考えていると隣に深雪が着替えをするために近づいて声を掛けられた事でハッとした。

 

「あら、リーナ。何時もの場所は塞がってたの?」

 

「そうじゃなくて…『誰にチョコをあげるの?』って聞かれるのが少し…煩わしくてね。」

 

「みんな気にしているのよ。リーナは可愛いから。」

 

「じゃあなんでミユキはなんで質問責めに合わないのよ…って。」

 

隣を見たリーナは制服のワンピースを脱いだ場面を見てしまい言おうとした台詞が吹き飛んでしまった。

 

「うーん。そうね。わたしが好意を寄せてる人が既に割れちゃっているからかしらね。…それにしてもリーナ。スタイル良いわね。羨ましい。」

 

「…ミユキ?それはイヤミなのかしら?」

 

リーナの目に飛び込んできた深雪の姿は同性であっても目を奪われていた。

 

身に付けた純真さを現すが如くフリルの付いた少女らしい白を基調とした白のブラジャーに包まれた大きすぎず小さくもない形の良いバスト。

折れてしまいそうなしかし健康的な括れに均等のとれた肢体に形の良い触れれば沈み込んでしまいそうな柔らかなヒップが白のショーツに包み込まれている。

その全体は大人と少女の中間の奇跡のプロポーションを誇っておりナイスバディ。

 

いやそんな言葉も生ぬるいほど”良い身体”と総評できた。

 

「だって腰もお尻も丁度良く引き締まっていてとってもセクシーよ?痩せているんじゃなくてシェイプアップされてるのよねリーナは。」

 

そういってリーナの腰を無邪気にさわる深雪。

イヤらしさがない無垢な触り方はリーナも拒みにくくまた平常心を保つことは難しかった。

もっともその百合が咲いている光景を同じ更衣室にいる女子生徒が顔を真っ赤にしてあわあわ、と見ているのを気がついていない。

 

「ミ、ミユキだって凄く良い身体じゃない…」

 

そういってリーナも深雪の腰に手を触れると顔を赤くしていた。

 

「そ、それを言うならリーナだって女の子らしい体つきで嫉妬しちゃいそうだわ。」

 

そういって互いに腰から手を引いて話すとロッカーに何かが接触する音が響いてそちらに視線を向ける。

 

「はわっ…/////」

 

「「「「「「………////」」」」」」

 

リーナの視線の先にはほのかが顔を真っ赤にして腰を抜かしてロッカーにもたれ掛かっており深雪も辺りを見渡すとロッカールームにいたクラスメイトが顔を真っ赤にして視線が突き刺さっているのに気がついた。

 

「…早く着替えてしまいましょうかリーナ。」

 

「え、ええそうねミユキ。」

 

そのことにリーナは深雪は一致団結し素早く着替え始めた。

チョコを八幡に渡そうか渡すまいかの選択を一瞬忘れていた。

 

◆ ◆ ◆

 

その日は異常だった。

当日の校内巡回の当番は俺と達也であったのだが…。

 

「あ、いたいた!こっちだよスバル!」

 

「こらエイミィ!校内を走らない!」

 

まんまクラス委員のような発言をして明智を止めるのは少し芝居掛かったのが癖な里美が後ろから追いかけてくる。

 

「?」

 

「スバルにエイミィもどうしたんだ?」

 

達也が俺の代わりに疑問を問いかけてくれていたのは達也も同じだったらしく俺が想像してたことを聞いてくれた。

 

「呼び止めてしまってすまないね二人とも。では…受け取ってくれたまえ。」

 

そういって里美が差し出したエコバック×2の中に丁寧に包装された小箱が沢山詰められていた。

 

その行動に達也が突っ込んだ。

 

「…今日は随分と芝居掛かってるな里美。」

 

「何の因果か君たちに手渡す役に選ばれてしまってね。流石に僕も些か素面では恥ずかしいのだよ。」

 

ああ。だから頬が赤く染まってるのか。

しかし、里美は本当にこういうのが似合うな。男でも好きなやつは好きなタイプだろこれ。

えーと何だっけ?王子さま系美少女ってやつか、とまぁどうでも良いので無視することにする。

 

「因に聞いても良いか?一体何の代表なんだ?」

 

「君たちに世話になった一年女子…つまりは九校戦一年女子からの…お礼だよ。」

 

お礼と言われても、仕事だからやっただけでされる筋合いはないんだが…まぁ報酬と言うことで頂いておこう。

余計なことを言うと小町に怒られる。

 

「あ、一同、って言っても七草くんの方にほのかと深雪の分は入ってないからね?達也くんの方にはほのかの入ってるけど。」

 

「そうなのか?」

 

と明智が追記し達也が反応する。恥ずかしがっていないのはそういうのを気にしていない良い意味でおおらか。悪い意味で言えば大雑把なんだろう。

 

「七草くんに対して二人は直接渡したいだろうしね。」

 

「余計なことをしたらまさに”人との恋路を邪魔するやつは馬に蹴られて死んでしまえ”という奴だからね。」

 

「じゃあしっかり渡したからじゃーねー。」

 

そういって二人は足早に校舎の奥に消えていった。

 

「何なんだマジで…。」

 

俺の呟きに達也が呆れたような表情を浮かべていたのは解せねぇ…。

そして極めつけは…。

 

「八幡さん。お仕事お疲れさまです。」

 

「おう、深雪か生徒会の仕事お疲れさま。」

 

生徒会室前を通りすぎようとしたときに丁度室内から出てきた深雪に声を掛けられ立ち止まる。

妙に顔が赤いのは気のせいではない筈だ。

 

「少しお時間頂いても?」

 

「ああ。良いけど。」

 

「はい。ではこれを…お受け取り頂けますか?」

 

そういって深雪が俺に手渡してきたのか取っての付いた小袋でなかには正方形の小さなラッピングされた箱が入っていた。

 

「…あんがと。深雪」

 

「お渡しするタイミングがこの時間になってしまってごめんなさい八幡さん。」

 

「ああ。いや深雪に貰えると思ってなかったから…ビックリした。」

 

「本当でしたらほのかよりも先に手渡す予定だったのですが…まぁ仕方がないです。愛情込めてお作りしました。少しビター目に作ってありますのでチョッと甘めのお飲み物と相性が良いかと思われますので。」

 

にっこりと微笑む深雪に思わず見とれてしまっていた。

本当に深雪の微笑みって引き込まれるんだよな。

 

「…。」

 

「み、深雪さん?」

 

と微笑みを見ていた筈なのにいつの間にか俺の隣に移動していた深雪に驚いた。

深雪さんはミスディレクションでもつかえるの?と疑問符を浮かべていると俺の背筋がゾクっとした。

良い意味で。

 

「もちろん…本命のチョコレート。です♪」

 

甘く囁かれた声に背筋を震わせるしかなかった。もちろん良い意味でだが?

 

「もう少しお話をしたいですがお仕事をお邪魔をするのはわたしの本意ではありませんので。お仕事頑張ってくださいね八幡さん。」

 

「お、おう…。」

 

そういって生徒会室へ戻っていく深雪、って俺の行動パターン読んでたの…?と驚愕していると背後から聞き覚えのある声が響いた。

 

「あっ見つけた!探したのにいないってどう言うことよ!」

 

「エリカか。」

 

「なによー。その顔。あたしに会いたくなかったわけ?」

 

「いや、そういう訳じゃないんだけど…今感情の置き場をどうしようか迷ってるところだったんだ。」

 

「?…ってやっぱりね。」

 

エリカは「なに言ってんだこいつ?」という顔を浮かべていたが俺が両手にぶら下げている袋(エコバック&紙袋多数)を見てあからさまに不機嫌になっていたがため息を吐いたあとに顔を赤くして隠していた利き手を俺へ差し出すとその掌に置かれた綺麗に包装された四角い箱が鎮座していた。

 

「これは?」

 

もう条件反射的にエリカに聞き返すと恥ずかしそうにただただ手を俺へ差し出すだけで喋ってくれない。

が、俺は今両手が塞がっているのでエリカの掌に置かれた箱を取ることが出来ない。

足で取るなんてのはもっての他なので俺はエリカにお願いした。

 

「エリカさん?俺今両手が塞がってるから渡して貰えると嬉しいんだけど?」

 

「……////は、はい!…じゃあねっ!」

 

俺の制服の胸ポケットに綺麗に包装された小箱をねじ混み反対方向に走っていってしまった。

追いかけることも出来ずその場に立ち尽くしていた。

一瞬だったが状況が理解できなかったのでフリーズしていた俺の時間を再起動させ一先ず「ロッカーに預けるか…」と決意し巡回方向からの方が教室に近いのでそのまま進もうとしたときだった。

 

「本命…///だからっ、あたし特製なんだからしっかり味わってよねっ!」

 

「えっ?」

 

「本当にじゃあねっ///」

 

と背後を振り返ると顔を真っ赤にしたエリカにそう告げられ俺は再びフリーズするしかなかった。

そして再び立ち去るエリカ。…今日が命日なのかもしれないな。

 

◆ ◆ ◆

 

「重てぇ…!」

 

「それどっちの意味?”心”の想いそれとも”物理的”に重いの方?」

 

巡回を終えて下校する時刻には夕暮れであり巡回していた筈の達也は先に深雪達と帰ってしまっていた。

薄情な…と思ったが俺はその後に出会う人物達(女子生徒で尚且知り合いの先輩達)からチョコを貰ったりしたので巡回時間を大幅に遅れてしまった。

そのせいで真由美からは「先に帰っているから頑張って?」と何故か応援メールが来ていた。

そして一度ロッカーに預けていた紙袋&エコバック達を教室のロッカーを引っ張り出していると丁度リーナも下校する時間だったので二人で帰路に着くことにした。

 

「沢山貰って良かったわね…お持ちしましょうか八幡?」

 

愉快そうに、少しの皮肉を込めた台詞を八幡に投げ掛けるリーナ。

 

「いや、せっかく貰ったもんを他の女子に持たせるのは不味いし…(てかリーナいなかったら《次元解放》のポータルに突っ込めたのでは…?)」

 

内心で不味った…と思いながらキャビネットを降車する駅へ向かった。

八幡とリーナの向かい先は一緒で次のキャビネットが車で3分、という時間でリーナ以外の他の人に聞こえないように耳打ちした。

 

「リーナ。」

 

「どうしたの?」

 

「今朝方協力もあって対霊子術式…のその試作品が完成した。」

 

「…!?本当?」

 

ここでミアの名前を出さないのは傍聴されている恐れがあるからだ。

試作品、というのを聞いてリーナの表情は驚愕、良い意味でのだと思いたいが反応していた。

 

「ま、と言ってもデータがなくて攻撃して怯ませる、程度なんだけどな。」

 

「いやいや、十分凄いじゃないのまだそれまで時間経ってないわよね…?」

 

「…完全じゃないからな。喜ぶにはまだ早いし…これじゃ戦えない。」

 

「八幡…。」

 

その真剣な横顔にリーナはどきり、としていた。

自分のこの感情…八幡をどう思っているのか。

 

”シリウス”としての任務でこの日本に来たリーナははじめ同世代の少年に敗北した。

取り分け彼は優秀で七草の息子であるが少々ものぐさで取り分け捻ねくれた性格をしている。

それなのに人が困っていると手を差し伸べる…とめちゃくちゃである。

 

そして捜索対象である”ダークマター”の術者の疑いを掛けられているのにもかかわらず自分と交流を持ち協力をしてくれている…どうして、とリーナは考えるとドツボにはまっていった。

 

「?どうした。あまり俺の報告はお気に召さなかった感じか?」

 

そうリーナは八幡に声を掛けられてハッとなって見つめると怪訝な顔を浮かべている。

 

「べ、別になんでもないわっ」

 

リーナは自分が八幡の横顔を見ていたことを悟られないように急いでそっぽを向いた。

 

「…?あ、リーナ。キャビネット来たぞ?」

 

そのタイミングでキャビネットが到着し乗り込む二人だったが当然ながら会話はない。

八幡に至っては先程まで持っていたバッグを下ろして手首を回している。

その光景を見ながらリーナは自分の制服のポケットに手を突っ込んである意味”温めていた”チョコレートの包装箱が手に触れる。

 

(わ、渡すだけよ。こ、これは八幡に少なからず恩があると言うか…そう感謝のチョコなの!)

 

自分のなかで八幡に対するチョコを渡す大義名分を定め渡すか、渡さまいかで迷っているとキャビネットが停車した。

 

「あ、じゃあ俺ここで降りるから。進捗状況知らせっから。じゃあな。」

 

「あ、ま、待って八幡。」

 

八幡が手早く袋を手首や腕に装着してキャビネットから外へ出ようとしたタイミングでリーナは八幡を引き留めた。

怪訝な表情でリーナを見つめる八幡の表情にリーナの心はぐるぐるしていた。

 

「(ちょ、チョコを渡して感謝を述べる…そう述べるだけなんだから!)は、八幡っ」

 

「だからなんだよ。」

 

「は、ハッピーバレンタイン?」

 

「何故に疑問系…?お、おうサンキュー。」

 

リーナから綺麗に包装されたしかもハートの形をした箱を渡され今日1日あり得ないことが起こりまくっていた八幡は失言をしてしまう。

 

「本命?」

 

「そ、そんなわけないじゃない!ば、バッカじゃないの!?はい、じゃあね八幡っ!」

 

「えぇ…?」

 

八幡はリーナにキャビネットを追い出され降車場所で立ち竦んでいた。

 

◆ ◆ ◆

 

「お兄様♪ハッピーバレンタイン。ですわ。」

 

「兄ちゃん!はいこれ。ハッピーバレンタインだよっ!」

 

「おお。泉美と香澄から貰えるだなんてお兄ちゃん冥利に尽きるぜ…お返しちゃんとしたの渡すから楽しみにな。」

 

帰宅してもチョコレートラッシュが続いていた。

自宅の家政婦さん達に始まり今度は泉美と香澄達からのチョコレートを手に取る。

他人からチョコを貰うのは少し疑問を覚えるのに家族から貰うのは素直に嬉しい、と言うのはヤバイと思うがこればっかりは俺の心の問題なので。

 

場所は泉美の部屋に呼ばれて俺は今双子の義妹に挟まれオセロ状態になっており二人は俺とくっついてしまうんじゃないかと思うくらいに密着している。

猫のようにめちゃくちゃすりすりして甘えてくる。少々くすぐったいんだけど…。

 

「んふふ~~~♪」

 

「えへへ~~~♪」

 

なにがそんなに楽しいかは分からないが…上機嫌なのは大変結構な事だと思う。

その後は二人が飽きるまで密着して泉美と香澄の頭を撫で続けていた。

 

妹達とニャンニャン…って書くとキモいな…な事をしていると小町に出会いチョコを貰った。

まぁ比企谷の時もくれるのは小町だけだったのでこれはほぼ毎年の恒例行事、と言えるだろう。

 

その後に部屋に戻ろうとすると俺の部屋の前に姉さんが壁にもたれ掛かって待っていた。

大きめのセーターを着用し一瞬下をはいていないのでは?と錯覚を起こしたがオーバーサイズのセーターを来ていただけでちゃんとデニム生地のホットパンツを着用し随分とラフだった。

 

「姉さん?」

 

「あ、八くん。チョッと時間良い?」

 

「良いけど。」

 

「お部屋に入っても良い?」

 

「良いよ。」

 

姉さんを自室に招き入れる。

部屋は普段から片付けているので人をいれるのは問題ないが普通なら他人を入れるのには抵抗感があるが姉さんは”家族”なので問題ない。

 

姉さんを招き入れるとベッドを指で示したので頷いた。

頷くと姉さんはすたすたと俺が使用してるベッドの上に腰かける。

スプリングが動いて少し跳ねるが姉さんは膝を合わせて近くに合った小さなクッションを抱き抱えていた。

俺は自分のデスクに座ろうとしたが姉さんの無言の行動(ベッドの自分が座っている横部分をポンポン、と叩いて”ここに座って?”)と微笑みながら指し示したので俺は抗うことなく隣に着席した。

 

「はい。八くん?…ハッピーバレンタイン♪お姉ちゃん特製のチョコレートケーキよ。開けてみて。」

 

隣に座った瞬間に姉さん本人の甘い匂いとビターなチョコの匂いが鼻腔を突く。

距離も近いから尚更だ。

一度姉さんを見て確認する。

 

「食べてみても?」

 

「ええ。どうぞ…でもお姉ちゃんバレンタインのチョコなんて初めて作ったから…失敗しても許してね?」

 

差し出されたチョコレートケーキに箱に添えられていた使い捨てのフォークのビニールを破ってケーキにフォークを入れて切り出し口へ運び込んだ。

 

「…どう、かな?」

 

「うん。ビターな味で食べやすい。初めて作ったにしてはめちゃくちゃ旨いよ。」

 

味は普通に上手かった。

姉さんは料理が出来ない筈だけどお菓子は作れたんだな…と思って姉さんの指先をよくよく見てみる。

 

「………。」

 

オーバーサイズのセーターの内側に隠れていて良く見えなかったが指の至るところに絆創膏が貼られていたのを観て微笑ましいものを観る気分になった。

 

「どうしたの?」

 

俺の表情に気がついたのか怪訝な表情を浮かべる姉さんに俺はセーターに隠れた手を取った。

 

「は、八くん?」

 

「いや、ホントにありがと。…ぶっちゃけバレンタインなんてのは中学時代良い思い出なかったからさ…普通に嬉しいわ。…姉さんもこれだけ頑張ってチョコケーキ作ってくれたみたいだし。」

 

そういうと姉さんは顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。

 

「そ、そういうのは気付いてても言わないが男の子でしょ?まったくもう八くんは…。」

 

「ごめん。でもすげー嬉しい。お返しちゃんと返すから楽しみにしてて。」

 

そう告げると姉さんは俺の顔を観ている、が若干瞳が潤んでいる。

 

「お返し…分割で今貰っても良い?」

 

なんか変なこと言い出した。

 

「はい?」

 

「このチョコレートは…お姉ちゃんからの本命チョコだから…その…ね?」

 

とんでもないことをぶっ込んできた。

 

「それに対する答え、がほしいかな…?」

 

「ええと…それはつまり…?」

 

「い、言わなきゃダメ…?」

 

目を瞑り俺へ上向きに顔を向ける素振りを見せる姉さんに俺は困惑するしかない。

第一に俺は付き合っているわけでもないしそういうことをするのは不義理である、と思っているからだ。

 

が、一度決めたことを覆す、とはこの姉を観ていると思うので俺も覚悟を決めて返答する。行動でだ。

 

「……。」

 

「……んっ////」

 

姉さんの柔らかな…頬に軽く触れるように俺の唇が触れた。

ホンの一瞬だった筈なのだが真面目に数時間が経過したような体幹時間だった。

 

「………///」

 

「ね、姉さん?」

 

「頬っぺたかぁ……ふふっ。まぁ仕方がないわよね…。」

 

そういって身体を密着させて俺の肩に頭を乗せてグリグリしたりと甘えてきた素振りを見せた姉さんを振り払うことは出来ず姉さんが満足するまで肩を寄せ合ってバレンタインの余韻を感じることになった。

 

色々なことが在りすぎてマジで命日になりかねないのが本当にひどい。

夢だけど夢じゃなかったですね。

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