それは八幡とリーナがキャビネットに乗るときまでに遡る。
八幡とリーナがキャビネットを待つ駅からその状況を”視ていた”
”視ていた”と言ってもその者達はその場に張り込んで視ているわけではなく彼らの遥か上空…人間が生身では到達できない宇宙空間、低衛星軌道のにあるUSNAの監視衛星のカメラから得られた映像を今回のパラサイトならびに戦略魔法の術者捜索のための作戦指揮所で確認していた。
ターゲットである何故か大荷物を持った八幡にリーナが隣に立ち二人は特にリーナが様々な表情を浮かべ会話をしているのを確認したバランスは複雑な想いだった。
(シリウス少佐は未だ十六歳…本来ならば普通のティーンエイジャーのようにクラスメイトと活発に活動をしている年頃だろうが…彼女は幼くしてスターズの総隊長…『”世界最強の魔法師”でなければならない』、という重圧から人前で笑うのは憚られるからな…これが彼女の本来の姿かもしれない。)
『魔法師は兵器である』という理論を推奨するほどバランスは血の通っていない魔法師ではなく知り合いの娘を見る少し感傷的な感覚を味わっていた。
キャビネットを来るのを待っていたのだが次の行動を個人的な感情を含めつつ監視していたバランスは目を光らせた。
リーナとターゲットが近づいて耳打ちしているような描写があったからだ。
当然ながら低軌道にある監視衛星からは映像だけで音声を拾うことは出来ないので部下に命じて駅周辺の機器をハッキングするように指示を出してその会話を傍聴しようとしたが聞き取ることが出来なかった。
(遮音魔法を掛けているのか…?いったいどんな会話をしているのか分からないが少佐の表情を見る限り愉快な会話、ではなさそうではある…それに少佐の動作が少し不安定だな。)
街中であるのに関わらず魔法を私的利用しているハズなのだがアラートがなっていないのは東京が七草の監視地域であるからだろうかとバランスは考えていた。
それは
しばらくすると停車したキャビネットから大荷物を持った八幡だけが降りてキャビネット内に残ったリーナと何かを会話をしているらしく暫くするとリーナを乗せたキャビネットが発進しその降車場所に八幡が立ち尽くしていた。
片手に綺麗に包装された正方形のリボンを付けられた箱を持って。
その光景を視てバランスは懸念していた。
(まさか…シリウス少佐がターゲットに遅れを取ったのは彼に”特別な感情を抱いている”からか?いや、しかしシリウス少佐ともあろうもの…が、未だ彼女は幼く若い。…”そういうこと”もあり得るのかも知れないな。)
バランスはリーナが八幡に対して”特別な感情を抱いているのではないか?”と考えた。
「……。」
腕を組んで考え込み暫くしてバランスは指示を出した。
「シリウス少佐と少し話をしてくる」…と。
◆ ◆ ◆
「渡しちゃったわね…チョコレート。」
リーナはキャビネットから降車し作戦中に使用しているセーフハウス…マンションの敷地内へと踏み入れ先程までのやり取りを思い出していた。
『(ちょ、チョコを渡して感謝を述べる…そう述べるだけなんだから!)は、八幡っ』
『だからなんだよ。』
本当に”なんだよ?”という疑問の顔を浮かべる八幡。
『は、ハッピーバレンタイン?』
『何故に疑問系…?お、おうサンキュー。』
八幡は戸惑いながらもチョコを受け取ってくれて一安心したと思ったら次の言葉でワタシの心がぐちゃぐちゃに掻き回されてしまった。
『本命?』
そう言われてワタシは顔が熱くなったのを感じた。
反射的に出た言葉が正解だったかは分からないけど言うしかないと。
『そ、そんなわけないじゃない!ば、バッカじゃないの!?はい、じゃあね八幡っ!』
その返答にリーナはツン・デレのツン部分を全開にしてキャビネットを帰路へと進ませ車内に残っていたリーナは後ろを振り返ると呆然と「えぇ…?」と表情を浮かべる八幡の顔を観て少し内心「してやったり」と言うような感情が芽生えそうになったが手に持っていた恐らく…と言うよりも確実に八幡に渡すバレンタインのチョコレートを思い出してその感情は吹き飛んでなんとも言えない感情に心を支配されていたのだった。
(…って違う違う!あれは感謝の品のチョコレートで別に八幡が誰からか貰うだなんて全然気にしてないんだからっ!)
そうしてこうして自分が寝泊まりしている部屋の前に立ちホッと一息吐いた。
「ふぅ…でも、渡せて良かった。」
在る意味でリーナは異性の同級生に渡すのは今回が初めてでありある種の一代決心であったが(八幡がそのとき疲れていたので妄言を吐いただけだが…それはリーナが知る由もない。)その緊張感は吹き飛んでしまったが。
気分が軽くなったところで部屋の扉に手を掛けて室内に入り何時ものように同室の人物に自分が帰宅したことを知らせる。
「シルヴィ、只今帰りましたー。聞いてください…よ……っ!?」
がリビングに入った瞬間にリーナの目に入ったのはこの場にいない筈の人物だったからだ。
「お帰りシリウス少佐。」
「た、大佐殿っ!?」
直属の上司であるヴァージニア・バランス大佐が同室であるシルヴィアがお茶の準備をしている所に遭遇した。
◆
「ご用がおありでしたが、私の方から出頭致しましたが。」
第一高校の制服姿のままでリーナはバランスが座るダイニングテーブルを向かい合っての対面に座った。
同時にシルヴィアが手際よくいれたお茶(日本の緑茶)とお茶請けを手早く二人の前に置いてリーナの背後に休め、のポーズでその話し合いを観ていた。
リーナの問い掛けにバランスは単刀直入に切り出した。
「シリウス少佐。」
「はい。」
「今回の作戦…『灼熱と漆黒のハロウィン』の術者の最重要候補対象である七草家ハチマン=サエグサに貴君は過度なシンパシィを寄せているのではないか?と当官は懸念している。」
リーナはそう言われ心臓を掴まれたような感覚を覚えた。
が、それは内心的なもので雰囲気と表情には出さずに答えた。
「いえ。本官はそのようなことは。」
「…そうか。であるならば当官の思い過ごしかも知れないな。」
ホッと息を吐きたくなるが必死にこらえたリーナだったが次にバランスからの質問にはついぞ冷や汗が滝のように出ているのではないか、と錯覚した。
「少佐には非常に申し訳ないが本作戦に置いてターゲットの監視を行っているのは当然知っているだろうが…当官はもちろん先程、駅での少佐の行動も確認していた。」
「……っ。」
リーナは作戦中であることを忘れているわけではなかったが”失念”していた。
「それに少佐。ターゲットを何を会話していた?それも街中で私的利用の魔法を使ってをだ。」
目の前に座るバランスの視線が鋭く威圧感あるものへと変化した。
”嘘偽りは許さない”という尋問が始まった。
リーナがバランスへ”報告すべき”内容を告げた。
「数日前、潜入先に『吸血鬼』が侵入した、という事は大佐殿もご存じであるかと思いますがその際に当官は『吸血鬼』の身体から離脱したパラサイトに対する攻撃手段を持ち合わせておりませんでした。何せ相手は
「続けたまえ。」
バランスに前置きを話してリーナは正面にいる人物の顔をみると表情は変わってないが眉が少しぴくり、と動いてリーナに話の続きを促した。
「ありがとうございます。…ターゲットも東京近郊で起こった怪死事件を七草家として捜査しており当官も身分を偽り一般生徒として興味を装い接触を続けていたそのタイミングでの襲撃でした。その際にターゲットが”対パラサイトへの対抗術式”の試作品を開発、と本人より本日の帰宅タイミングにて報告を受けておりました。」
「それは興味深い話だ。してその術式は?」
戯言を…とバランスが言わなかったのは対象が多彩な魔法を開発していたことを情報として入れていたためだ。
「はっ。ターゲットも『吸血鬼』への接触と戦闘情報量が少ない為か未完成らしい、とのことでしたので詳細は不明ですが。」
報告を受けたバランスは考え込む素振りを見せる。
その間にリーナは冷や汗が止まらなかった。
本来であれば作戦行動中の事象を全て報告する義務があったが真っ黒すぎて報告など出来ない。
同室であるシルヴィアには黙って個人的に八幡と協力関係にあり此方が実行している作戦内容を知られており尚且同じ部隊員であるミカエラ・ホンゴウがパラサイトに変質してしまっている、ととても報告なぞ出来る筈がないのだ。
「そうか…。」
その一言に表情に出さないようにホッとしたリーナであったが未だ話は終わらない。
「貴官の特殊な事情も私は理解しているつもりだ。本来ならばこの国の学生のようにスクールライフを満喫している年頃であるがその立場と我が国魔法師への事情がそれを許さないことも、な。」
その言葉は他の制服連中とはことなりリーナ本人を気遣ってくれているようにも聞こえ肩の力を抜くことが出来た。
「続けての質問で悪いが貴官がターゲットとの別れの際に手渡していた物…あれは何だったのだ?」
リーナは「そう来たか…」と心の中で頭を抱えたが言い淀むと在らぬ誤解を受けることは必定だとキッパリと答える。
「あれに関しては本日が二月十四日…所謂”バレンタインデー”と呼ばれる日本で独自の進化を遂げた文化に倣って対象へ”義理チョコ”を手渡しただけです。その方が潜入捜査に置いてクラスメイトとの空気に溶け込める、と判断したからであります。」
そう告げるとバランスはそれが素であろう柔らかな表情でスッと微笑んだ。
リーナはその表情の裏に含んでいることもあることを理解していた。
「そうか…まぁいい。今の質問は忘れてくれ少佐。」
「はっ。」
その言葉に敬礼をしたリーナ。
バランスから自分が八幡に対して”好意を抱いていて”作戦実行に支障が出ているのではないか、と疑いの目を向けられていた事に今更になって気がついた。
それをバランスがどう取ったのかは本人のみが知ることではあるが。
その後に告げられた言葉に背筋を正さずにはいられなかった。
「さて、シリウス少佐。本題に入ろう。」
バランスの口調が変化し雰囲気が変わりその中に背筋が凍る威圧感をリーナは感じとり”アンジェリーナ”ではなく”スターズ総隊長アンジー・シリウス”として傾聴した。
「現時点をもって脱走者追跡・処断の任務は一時棚上げとして当初任務復帰を命じる。」
先程までの知り合いの子供を心配する親戚の叔母のような雰囲気はなくなり軍人然としたヴァージニア・バランスがそこに居りその内容にリーナは軍人としてその任務を全うしなくてはならなかった。
軍人として定められた者に対して”銃口を突き付けねばならない”。
「これより『余剰次元・質量加速変換魔法』の術者もしくは使用者の確保を最優先とし確保が不可能な場合は術者の無力化もやむを得ない」
無力化…即ちは”抹殺”である。
バランスの口よりターゲットの名前が告げられる。
その名を聞いて必死に自身の表情の変化を悟られるように口を固く結ぶと歯が軋みそうになった。
其は今、リーナが意図せずにその存在を意識している異性の名前だった。『灼熱と漆黒のハロウィン』を引き起こした”漆黒”の術者、の疑いか掛けられている自身にとっての同等の魔法師。
覚悟はしていた筈だった。
その反応は無意識に。
「ハチマン=サエグサをターゲットと仮定し第一波として明日の夜スターダストを使いターゲットに攻撃を仕掛ける。少佐、貴官は”ブリオネイク”を装備し自己の判断により都度介入せよ。」
「…
リーナの今の心情を誰も窺い知ることは出来ない。
◆ ◆ ◆
二月十四日のその日から少し遡る。
少年少女が浮かれていたその日に”魔物”は誕生していた。
そのものは”器”である肉体を失い知覚されない霊子の塊と化して第一高校の上空を漂う。
その理由としては宿主が破壊され霊子の状態である自身を少年の攻撃によってダメージを受けたからであった。
致命傷は避けたとはいえどもその損傷は決して小さいものではなく情報体として生きている”彼、彼女ら”は瀕死の危機に陥っていた。
”休める身体を探さなくては!”
人間のような生存本能を全開させて落ち着ける場所を、器を探し出す。
”何処だ、何処だ、何処だ。”
”何処に在る?”
誰にも聞こえない意思を発しながら消えそうになる”意識”を拡張する。
”ミツケタ”
”ミツケタ”
”ミツケタ”
いつものように人間に寄生する時のよう心臓部に入り込み身体のコントロールを奪い込んで”それ”に入り込み朧気な触覚を覚醒させようとするが出来ない。
”視覚が”、”味覚が”、”聴覚が”、”臭覚が”、”触覚が”、感じられないから。
まるで暗闇の中に放り込まれ意識が覚醒しているの関わらず”なにも感じとることが出来ない”のだ。
”器”に入り込んだモノは只の意識思念の塊で関知されないモノだ。
人間のように寿命もなければ発狂することもなければ出来ない。
ただただ、その器の中で”存在し続ける”モノになっていた。
しかし其は一つの、いやたった一人の人物に対するの想念によって覚醒する。
それらは純粋水晶の髪飾りを媒介とし発せられた”想い”を受信したのだった。
特に強い”髪飾り”から発せられた想いが自身が何のために生まれたのかを自覚させ”それ”のパーソナリティを確立させる。
閉ざされていた身体の感覚が全て復活する。
視界が開け、口の中に空気の味が、空調の音が、ガレージの匂いが、座っているパイプ椅子の固さを感じる。
しかし人間のようでありながら人間ではないその身体の作りだが”それ”は疑問に思うことはなかった。
この身体は想子に満ち溢れて問題ないと。
内側に向かって送信される想子信号を身体が感じとり自分自身で読み取る。
それにより身体の使い方を習得し身体を動かす。
脚を、手を、身体を捻ったりして動作を確認している”それ”は心より打ち震えた。
耳飾りより発せられた強い想いを。
『あぁ、これでようやく自分を使って貰うことが出来る』、と。
手が入れられ自然に笑うことが出来るようになったその顔に喜色が浮かんでいる。
”それ”今いる場所から機材を使っては探し始めた。
自らを捧げたい、使ってほしいという願望を叶えてくれる人物の存在を。
◆ ◆ ◆
バレンタインの次の日、第一高校には浮わついた…というよりも別の奇妙な困惑が漂っていた。
浮わついたり困惑するとか忙しいな、と思いながらそれは大半の生徒には関係なく俺たちには関わりの在る事象だった為無視することは出来ずに俺はリーナと共に事の真相を知るために在る場所へ向かった。
「すごい騒ぎね…。」
「野次馬多すぎだろ…って服部先輩達が押さえてくれてるな…リーナ?」
「な、何でもないわ。」
「?まぁさっさと行こう。」
時刻は昼休み、今日はリーナと一緒に食事を取ろうと思っていたが邪魔されたので俺の気分は悪かったが仕方があるまいと俺に言い聞かせた。
しかし、今日のリーナは時たま俺によそよそしいと言うか元気がないのは一体どうしたのだろうか?
それは兎も角として呼び出された理由…何故ならば俺達は”当事者”だったからだ。
その場所はロボ研のガレージ…というかここで問題起こりすぎじゃね?
そんなことを思いつつその建物内に入り込むと既に”関係者”とまぁ…”部外者”がその場にいた。
「八幡。」
その”関係者”の一人から声を掛けられ軽く手をあげて集まっている輪まで近づくと自然とその輪の頂点に俺と姉さんが迎え入れられた。
「お前も呼び出されたのか?あ、先輩達もお疲れさまです。」
先に到着していた五十里先輩…の隣にセットでいる千代田先輩がいるのは当然として中条先輩は恐らく生徒会長としてこの騒ぎを確認するためだと思うが。
「んで?何で揃いも揃ってここにこんなに顔見知りがいるんだ?」
「これが原因だ。」
そういって達也が指差したのはパイプ椅子に行儀よく背筋を伸ばし瞳を閉じて待機状態である3H…即ちメイドロボットの”ピクシー”だった。
「こいつがどうしたんだ?」
「この3Hが笑みを浮かべながら魔法を行使した、という通報があってな。」
「なるほどな。確かにここに在るピクシーは俺が結構暇潰しに改造したりして笑みを浮かべるようになってるぞ?…って何だ達也その”なんてことをしてくれたんだ”って顔は。」
「だからやたらと市販のピクシーより…お前そんなことしてたのか」
そう俺に告げる達也の表情は普段通り分かりづらいが呆れられているのがみて取れた。
同時に全員が姉さん含め呆れた表情を浮かべている。
「技術屋としちゃ試したくなるだろ。…とまぁお前の懸念してるのは外れだ。俺はこいつに魔法が使えるように細工もした事もなければ兆候も一度もない。」
そう俺が告げると後ろにいたほのかや美月がゾッとしたのかぷるぷる、と震えるような感覚を感じ取ったがまぁ置いておくとして五十里先輩をみると状況の説明をしてくれた。
「P94の体内から高濃度の想子が観測されたんだ。ボディを中心とした人間で言うところの心臓部分から外部に放出されたようなんだ。」
「心臓部分?そこは3Hが動くための電子頭脳と燃料の格納容器が収まってる筈ですよね?」
「しかも電子頭脳…全く出来すぎだよ。」
肩を竦めた五十里先輩。
達也は俺に疑い…とは言いすぎかもしれないが「お前やったな?」という軽めの眼差しだ。
「もう一度聞くが…お前が改造したんじゃないよな?お前が持ってる変形するCADのように。」
「変形…ああ《グレイプニル》の事ね。」
恐らく達也は俺の
あれの中核部分の鉱石は此処では絶対に入手できる品物ではないからだ。
あんなもんをポンポン作れるなら教えてほしいもんだが。
そもそもにおいて魔法を行使するならばCADのように感応石が必要な筈でそれがピクシーには搭載されていない…筈だ。
「もう一回言うが俺じゃない。完璧に作るのが俺の性格だって知ってるだろ?」
まぁ、このピクシーにはちょっと前に自己学習のAIを組み込んだりして遊んでいたのだが流石にそれは不味い、と思って外しているし?笑顔を浮かべる…と言っても人間のような笑みを浮かべることが可能なのかの実験のために人間表情筋の神経パターンをに似せた回路を取り付け肌部分も軟質樹脂では味気ないと思ったので人間の肌質に近く培養した
そしてあの時もピクシーへの指示を音声ではあったが声帯部分に《次元解放》を発動し別次元を経由して音声を聞こえるようにしてそれにピクシーに反応しているだけだった。
つまりは『対象はピクシーのみに聞こえ、反応できるようにして達也達には聞こえない音へ《次元解放》を通して変換している』と言った方が正しいか…。
あとスピーカ部分に当たる部分を超高性能の人間が発するときの音波と同じ周波数帯のマイクを搭載しているのでめちゃくちゃ綺麗に喋るようになってる。
あれ?これ俺がピクシーを人間に近づけようとしたからマジの付喪神なのでは?と恐怖を覚えたがそれはさて置いておいて。
人間らしくおとぼけた回答をしていたのは前述の自己学習AIに言葉を覚えさせていてそれに対して反応を見せていた…と言うだけだ。
まぁここにいる人たちは知る由もないけどな。
俺のコメントに今までの行動で全員が納得してくれたようで疑いの目は無くなったがますます疑問が深まるばかりであったのは想像に固くないだろう。
一方で俺は脳内にて在る考えを巡らせていた。
人間という生の”器”ではない機械の身体乗り移った”奴”ではないか、と。
パイプ椅子に姿勢をただし目蓋を閉じてまるで寝ているかのような表情を浮かべているピクシーをみながら五十里先輩はこう言った。
「それと霊子の反応も観測されたみたいでね…これに関しては内側か外側かは分からない、と言うことだけれども。」
そういうと達也が仕方がないですね、と。
「霊子の観測機器の性能は想子の観測機器に比べると据え置きの性能ですからね。」
二人の会話を聞いて俺は脳内で物事を組み立てていく。
ふと、肩を叩かれた。
「ねぇ…八幡。」
「…ああ。わりぃ、考え事をしててさ。」
「…まさか、だとは思うけど…?」
「その可能性しか無いかもな…。」
声を掛けてきたリーナも同じ考えだったようで困惑していた。
一先ず俺たちが呼ばれたのはこのピクシーの内部に在る電子頭脳の内部をチェックしてほしいとの事だったらしい。
このメンバーの中でも俺たちが呼ばれたのは訳があった。
俺たちのところに近づいてひそり、と呟いた。
「九校戦で仕掛けられた例の…『電子金蚕』のようなものが仕掛けられていないか調べてほしいんだ。君たちにしか出来ないからね」
「なるほど。」
「まぁ…言われればっすけど。…そういや何が起きてこんなに騒いでるんだっけ?」
隣にいる達也に問いかけると。
「俺も校内に流れている噂話しか知らないな…聞かされずにここに来たからな。」
「おいおい…。」
そのやり取りの後に五十里先輩をみると丁寧に説明をしてくれた。
事の発端は本日の午前七時。
まだ小鳥が囀ずっている時間帯にそれは起きた。
ピクシーがサスペンドモードを解除し自己診断プログラムを走らせていた。
それは毎日行われるもので行動事態は遠隔操作で行われており何一つ異常なく自己診断プログラムを走らせていたのを監視カメラがロボ研のガレージに問題がないかを確認をするために設置されていたが兼ねて備品であるピクシーを監視するために置かれていたがそのカメラが衝撃の光景を捉えていたという。
自己診断プログラムの作業が完了したピクシーは本来であればパイプ椅子に戻りサスペンドモードに移行する筈だった。
が、しかしそのピクシーが自己診断プログラムに使用した端末にアクセス、交信し校内のサーバーで検索を始めたのだ。
ピクシーが検索を掛けたのは第一高校の生徒名簿。
遠隔管制はピクシーが悪性なコンピューターウイルスに感染したと判断し強制停止コマンドを送信するのだがそれを受け付けず尚且無視し続けた、と言うのだ。
その後もサーバーに対するアクセスは止まらずサーバー側が強制切断したことによりピクシーの異常な行動は幕を閉じた。
…異常稼働を続けていたピクシー。
”彼女”はその間にずっと人間の少女のように微笑みを浮かべていた………。
と、まぁこれがこの騒動の内容らしい。
…うん。普通にホラーだわ。なにこの怪談話…今冬だよな?本怖?本怖なの?
怖い話は夏の時にしてほしいもんだが…。
周りを見渡すと中条先輩が青い顔してぶるる、と震えていたりほのかは顔を青くしているし俺の隣にいる達也も表情にこそ出てはいないが「不気味だな…」と言わんばかりである。
まぁ俺の場合は機械の身体を持って人間と同じくその学園で制服を着て生活してる奴をみたことがあるので「そういうのもあるかもしれない」という考え…って毒されてるなこれ。
確かにそんなものを見せられれば不気味、と思うのは当然だろう。
俺も電気的に動力をカットされているのに表情が動いていた、という点で気になっていた。
その話を聞いた上でロボ研内部に在るピクシーを整備するためのメンテナンスベッドへ移動させるために俺は前に立ち音声コマンドを入力…する前に《瞳》でピクシーの状態を確認する。
《瞳》が読み取った情報を確認すると目の前のピクシーには”憑依?”状態になっていた。
…俺が霊子に対する性能が良くない為か情報として確証を得るのが弱すぎたため活性化…つまりはピクシーを動かせばその中に眠っている原因が分かるのでは?と思った俺は音声コマンドを改めて入力する。
「ピクシー。サスペンドモードを解除。」
そう命令すると椅子に座ったピクシーは自分の呼称を登録しているために呼ばれたので立ち上がり深々と俺たちに一礼をした。
「ご用でございますか。」
ピクシーの口から発声された定型文の文言は俺が改良したためか肉声を発しているかのような滑らかな発声を出来るようになっているのは俺のせいだが表情がロボではなく人間に近づきすぎてるような感じがあった。
「メンテナンスベッドへ移動して仰向けになってメンテナンスモードへ移行しろ。」
ピクシーは俺の命令に定型文を告げ俺を見つめる。
俺も管理者の一人として勝手に登録をしているので網膜パターンが登録されているので俺の光彩を確認するために俺の顔を覗き見るのは当然なのだが…。
やたらと俺を見つめる時間が長い。
網膜パターンの確認はすぐさま終わる筈だった。
俺を見つめるピクシーの瞳に相当しセンサー各種を埋め込んでいる黄色レンズの色が紫色へ変化したがその事に気がついたのは俺だけで他は気がついていない。
しかし、次にピクシーが発した言葉は登録した、された言葉の中にはないそれは妙に静かになっているガレージにやけにその一言は響いた。
『ミ・ツ・ケ・タ。』
「…っ!?」
「「「「「「「!?!?!?!?!?!?!」」」」」」」」
その言葉に息を飲むものや短い悲鳴を挙げそうになるもの反応が響き渡るその前に俺は目の前のピクシーが俺へ抱きついてきた。そう俺は…。
”ピクシー”にハグをされてしまっていた。
俺が咄嗟に回避を選択できなかったのは俺の斜め後ろにリーナと深雪、ほのかがいたからであり俺が回避を選択してしまうとこの内の誰かがピクシーと衝突してしまう恐れがあったからだ。
かなりの咄嗟の抱きつきだったのでいくら鍛えているリーナと言えども押し倒されていた可能性が高かったからで等身大の美少女ロボットに抱きつかれたかったとかそういう考えではない、と言うことだけここに追記しておく。
一先ずこの止まった時間をどうにかしようとピクシーに音声コマンドを入力しようとした矢先、だった。
「へぇ…八くんはお人形さんとこう言うことがしたかったのね?」
「…っ!?」
背後に迫る威圧感、それは”殺気”だった。
ピクシーを抱きつけたまま背後を振り返るとこの場にいない人物…それは俺がよく知る…この場にいる全員が知っている人物であった。
ロボ研の入り口からこの騒ぎを聞き付けた姉さんが入ってくるや否やその場面に遭遇し普段の小悪魔的な表情から一変し能面のように笑みを張り付けたまま額には青筋と漫画なら《怒り》のマークが浮かび上がっているのを想像に難しくない。
俺は思った。
『これはヤバイ』、と俺の本能が警鐘を鳴らした。
「ね、姉さん?落ち着いて聞いてくれる?いや、聞いていただきたいので御座いますけれど?」
「なぁ~~~~~にぃ八く~ん?言いたいことがあるならさっさと言ってちょうだい?なお嘘ついたらお姉ちゃん八くんに”ドライ・ミーティア”打ち込んじゃうからね?」
あ、やべぇ…普段使いしてるCAD取り出して此方にちらつかせてるからマジだわあれ。
怒りすぎて言動が少し怪しくなっておりその雰囲気に中条先輩や後ろにいる深雪達ですら目を丸くしているのが視界に入った。
前日に姉さんとニャンニャン(イヤらしい意味ではなく健全に姉弟の関係の枠で肩を寄せ合って互いの体温を確かめてただけで健全なバレンタインを過ごしていた)していたのもあってか今のこの状況を乗り越えないとこのままでは家庭内の崩壊(ガチ)を意味するの客観的に冷静に簡潔に姉さんの怒りを押さえるために説明した。
「俺の方から抱きついたんじゃなくて抱きつかれたですけどねぇ…?」
「でも八くんの身体能力なら避けられないワケ無いわよね?」
「俺が避けたらその後ろにいる三人の女子高生のうち誰かがピクシーにぶつかって怪我をしてたんだよ…。」
「そうだったの…リーナさん達それは本当?」
そういって姉さんは俺の後ろにいたリーナ、ほのか、深雪に事実確認…声を掛けた。
「いえ、ワタシは八幡の斜め後ろにいたので大丈夫でした。」
「わたしも八幡さんからは離れた場所におりましたのでピクシーが飛びかかって避けたとしても距離が足りませんでしたので…大丈夫です。」
「わ、わたしも距離があったので八幡さんが避けても大丈夫、でしたっ。」
まさかの裏切り、だと…!?oh…ジーザス…神よ。この世に神は居なかったらしい。
身体を張って守ったと言うのにこの仕打ち…俺はリーナ達に裏切られたようだった。
俺がピクシーに抱きつかれた意趣返し、と言うことなのだろうが。
このまま俺はピクシー諸とも姉さんの魔法に貫かれるのか…と思った矢先に以外な人物が反応した。
怒りながら。
「な、なんてことを言うんですか深雪さんほのかさん会長もリーナさんもっ!!八幡さんは皆さんが怪我をしないように動かないでピクシーを受け止めたんですよっ!…それなのにそんな言い方…それじゃ八幡さんの昔貶めた人たちと同じじゃないですかっ。」
それは意外や意外にそんな反応を見せたのはまさかの美月。
で怒りと悲しみで肩をぷるぷると震わせておりあまりの剣幕に隣にいた幹比古が今にも目蓋から涙を流しそうな勢いの美月を嗜めていた。
まさかの夏休みの際に知られていた”思い出話”を思い出したとは思わなかった。
そしてさらに素早く追撃が入った。
「深雪、今のは八幡に対して失礼だぞ。謝りなさい。」
その声は平坦であったが”怒気”が含まれていた。
達也が深雪に対して嗜めではなく”怒り”で叱るという珍しい光景が展開されていた。
美月と達也の言葉にハッとし罪悪感で泣きそうな三名とばつの悪そうな表情を浮かべ頬を掻いているリーナはそれぞれのタイミングで俺に対して謝罪しようとした。
が。
「ちょ、ちょっと待て達也。…まぁ抱きついてきたピクシーを俺が吹き飛ばせば良かっただけだし…急に飛び付いていたのを対処出来なかった俺が悪いんだわ。」
「だがな八幡それは…。」
「俺が気にしてないって言ってんだから気にするな。ほら深雪達も気にするなって。リーナもだけど。」
三人と俺がピクシーに抱きつかれた絵面が面白くなかったから一緒になってそういった反応をしてしまったんだろう。
俺は気にしていないけど深雪達は自分の浅はかさと俺の境遇を思い出してダブルパンチでストレス値マッハの状態になっている。
リーナは当然ながら俺の過去を知らないのでなんで俺を裏切ったのかは分からないが。
まぁあれだ、その場のノリでって奴だ。良く慣れてるから問題ない。
当事者である俺は別段なんとも思っていなかったので俺が殴られるだけですむなら良いか、と考えていたのだが謝罪されてしまい場の空気がヤバく俺の過去を知らない生徒からしてみれば頭に「?」を浮かべ困惑するしかないわけで…。
昔の俺なら美月に「余計なことを喋んなよ…」と悪態を吐くであろうが今さらその程度の事を気にするわけがないのでそれよりも俺はこの空気を変える必要があった。
「んん゛っ!!」
俺がわざと大きく咳払いをすると該当の生徒がびくり、と震えた。
彼女達は俺が怒っている反応に見えたのかもしれないが一先ずいたって平坦に通常通りに告げる。
「きにしてねーから本当に…だから本当にやめてくれ。」
このままでは埒が明かないので無理矢理にでも話を進めることにした。
リーナ以外がもう一度謝罪しようしたがそれを手で制して止めさせるとなんとも言えない空間がまた形成されたが一旦無視する。
「ピクシー離れてくれ。」
「…畏まりました。」
俺に抱きついたピクシーの腕がぴくり、と震え離れるがその表情は少し拗ねているように見えた。
その際に発した言葉も人間で言う”間”があり離れた後に俺を見つめる両目…センサーが搭載されたガラス部分の筈なのに人間の《瞳》に直視されて熱を帯びているように見えた。
全てが錯覚…の筈なのだが一人の人間のように見えて調子が狂いそうだ。
「モード変更解除。その寝台に腰かけるように座ってくれ。」
「畏まりました。」
ピクシーは俺の命令を受諾すると寝台に腰かけるように座り普通は正面を見る筈なのにその視線は俺へ向いている。
…普通にホラーだぞこれ?
座らせたピクシーを《
そして表示される【状態異常】は【憑依汚染】のバッドステータスが。
俺と一緒にピクシーを見る筈だった達也は深雪達の側に今はついているので俺が調査するしかない。
俺が『気にしないでくれ』と心のそこから言ったことで姉さん達も気を持ち直したようで良かったそれは一先ず置いて置くことにして。
それでは確定した情報ではないため迂闊に発言は出来ないしそもそも『瞳』で得た情報をここで知らせるのは良くな
い。
俺の能力がバレてしまう。
その為に俺は後ろに声を掛ける事にした。特殊な《瞳》を持つ同級生に。
「美月?」
「は、はいっ?」
深雪達を叱りつけた美月は若干の自己嫌悪感に陥っている状態だったので俺が話しかけると思っておらず完全に気が抜けていた状態だったので声が裏返っていた。
「…悪いんだけどピクシーの中に巣くってるのが何なのか覗いてくれないか?それと幹比古は美月が瞳にダメージが入らないように守っていてくれ。」
「ピクシーに”ナニか”が憑いている…と考えているのかい?」
「本職のお前さんなら分かるだろうが…確実になにかいるんだろうが…残念ながら俺には分からんからな。美月。幹比古力貸してくれ。」
「分かりました。」
「任せてくれ。」
了承した幹比古は呪符を取り出し念を込めると特殊な結界が張られて美月もメガネを外しピクシーの胸部分を凝視する。
美月が口を開くよりも早くピクシーの表情が変化し微笑んだ。
「います…パラサイトです。」
その言葉を聞いた瞬間に何処かの誰かが息を飲んで俺と達也は素早くホルスターからCADを取り出し魔法発動の準備をして突き付ける。
「ですけど…。」
美月が言葉を続けたことで俺たちの警戒は一瞬途切れた。
「このパターンは…。」
そう美月が告げてうーん、と唸るような声を上げて後ろを振り向くとその視線の先にはほのかがいた。
「へっ?」
「ほのかさんに似ているような…?」
「ええっ!?」
予想外の答えが返ってきて俺も困惑した。
「どういうこった?」
「パラサイトの意識はほのかさんの思念波の影響にあるみたいです。」
そう美月が告げるとここにいる全員の視線がほのかに集中し大慌てで否定した。
「わ、わたしはそんなことしてません!」
「いやいや…誰もそんなこと思ってないから大丈夫だって。…しかしなんでそんなことになったんだ?幹比古は何か分かるか?」
「…光井さんが何か強く願った事でパラサイトがその想念を写し取った…のかも知れないね。それかピクシーの中に宿るパラサイトが光井さんの強い想念が焼き付いたか…前後かの違いだけだけど…光井さんは何か心当たりあるかい?」
そう問いかける幹比古だったが答えを期待しているわけではなくその場の雰囲気で確認をしているだけだと理解したがほのかは、と言うか当事者はそう言われたらびくつくだろう。
「そ、そんなこと言われても…ほ、本当なんですよ八幡さん!」
訴えるように俺に投げ掛けるほのかを見て流石に可哀想になってきたのでフォローする。
「いや大丈夫だから落ち着けほのか。パラサイトがほのかの思念波の影響にあるのはたまたまだから。な?だろ美月。」
「は、はい。意図的ではなく残留思念です。」
そう美月から告げられてほっとするヤカンのように沸々と顔が赤くなり次の瞬間には顔を覆っているほのかの姿が俺の視界に入った。
どうやら心当たりがあるようだったがひどく恥ずかしそうにしている女の子を問い詰めてまで聞くことじゃないだろうと俺は思った。
…と言うよりも聞いてはいけない、と俺の本能が告げていた。
別のアプローチで調べてみるか、と持った矢先。
「私は彼女の強い思念…彼に対する強い想念によって覚醒しました」
唐突に、この場にいる生徒の声ではない者の声が室内に響き渡った。
メンテナンスベッドに腰かけ俺を嬉しそうな表情で見つめたままで俺が改造したときよりも人間らしい自然な口の開き方で人間の声帯に近い音質で滑らかに喋りだした。
「「「「「!?」」」」」」
全員が驚愕するが俺はそう言うものだと思いながら質問を”ピクシー”だったものに質問をしてみた。
結果として《パラサイト》…やはり”彼ら”で良いのだろうか分からないが寄生するのは【自己保存】の為に行動している、と言うことが分かりあのときの戦いの際に器であった人間が爆破され寄生する身体を失って彷徨っていた際に偶々想子反応があったこの”3H…つまりはピクシー”に乗り移ったらしいのだが覚醒…人間のように手足や視覚や聴覚が使えなかった…と知らされた。乗り移ることは出来ても人間のように本能が無いものは動かすことも儘ならない状態だったので動物で言うところの『休眠状態』であったらしいが…。
そして、なかでも強烈だったのが『何故、その機械の体で満足に動け無い筈なのにどう覚醒して動かすことが出来たんだ?』という理由が…正直その俺は聞いてはいけない、と思ったほどだった。
「我々は強い想念によって引き寄せられ人の強い想念…【自我】を形成します。私は個体名【光井ほのか】の想念を獲得する事によって休眠状態から覚醒しました。」
後ろでほのかが声をあげようとした呻き声が俺に届いたので後ろを振り向くと顔を真っ赤にして口元を深雪とエリカに押さえられて「ムー!ム~っ!」と声をあげていた。
俺にはどうすることも出来なかったので質問を続けるしかない。
「想念ってお前達は言ってるけど実際は何なんだ?」
「貴殿方の言葉で言うのなら【祈り】という言葉が妥当でしょうか?」
これは本格的に耳を塞いでいた方がいいか…?と思ったがもう後の祭りで完全にほのか号泣案件になってしまった。
ピクシーは自分が目覚めた理由をある意味で産み主であるほのかにも聞かせるという何とも親孝行?(んなワケあるか。)な情熱的に語り始めた。
「貴方のものになりたい。」
俺の背後で呻き声がさらに激しくなった。
「貴方に仕えたい。」
今度はバタバタと騒ぎ始める音が聞こえる。
「貴方のものになりたい、貴方へ全てを捧げたい。自分が持つ希少性な意味を持つ大事なそうそれはバー、」
押さえられている方も力強いのか手で押さえられているのに関わらず悲鳴に似た絶叫が手から漏れでており押さえている方も息切れしている。
それに止めを指したのがけろっとした顔でとんでもない…男が聞いてはいけない
「ちょ、ちょ待て!落ち着け!ピクシーステイ!!!」
「はい。」
思わず犬のように《待て!》と指示を出してしまうが俺に従順、というのは本当らしくスンとなって俺の言う事を聞いてくれた。
「分かった。分かったからお前を目覚めさせた想念の話は無しだ。いいな?お前が参考にした人物が羞恥で大変なことになるから二度と言うな?おk?」
「はい。」
素直に頷くピクシーにホッとしたが後ろでドサり、と崩れ落ちる音が聞こえ振り返ると顔を真っ赤にした深雪、エリカ、そして今回の被害者であるほのかが女の子座りをしてついに限界を迎えていた。
まぁ…そうだよな…。
俺は掛ける言葉を持ち合わせていなかったので再びピクシーへ向かい合った。
「今の私を構成する核は【貴方のものになりたい】という欲求だけです。故に私は貴方へ従属いたします。」
と、そう言われた俺は間抜けにも。
「あ、ああ。そう、なのね…。」
間の抜けた返答しか出来なかった。
考えても見て欲しい。
今回の事件を引き起こしている《パラサイト》が知り合いの女の子の想念によって光落ちして俺に従順なメイド姿になっている…とここまで書くとただの怪文章にしかならないのだがこれが現実であり事実なのだ。
そう考えると頭痛くなってきたなこれ…本当にどうしような。
しかし、そんな奇妙な出来事に遭遇したことで一つだけ収穫できた情報があった。
『《パラサイト》という存在は本来漂うだけの存在で有り宿主が【望む】事で彼らは確立してしまう』と言うことだった。
つまりはこの事件は…。
いや、結論を急ぐのは止めておこうと俺は思いピクシーに確認を促した。
「ピクシー?お前は”俺に従う”ってことで良いんだよな?」
「はい。それが私の【望み】ですから。」
こちらを真っ直ぐに見つめるアメジスト色の瞳は確かにほのかにそっくりだった。
俺は今後このような騒動が起こらぬよう決意し命じた。
「そうか…それなら俺の命令にしたがってくれ。俺が命令しない限りサイキックの使用は禁止、表情を変えてるのは念動の一種なんだろ?それも禁止だ。」
「いえ。この表情筋の動きはこの体に備え付けられている機能ですので禁止する必要はないかと。」
俺に従属するってのはどこ行ったんでしょうね?このピクシーは…反抗期の娘かって位拒否って来るんですけど?
「ダメだ。他の生徒が混乱するから。」
「…ご命令のままに。」
俺の言葉に反応するかのように取り憑かれていないロボ研に置いてある3Hであるかを証明するかのように声を発するピクシーだったが俺が声帯を改造したせいでロボットには聞こえない。
それどころか本来鉄面皮である筈のピクシーの顔が少し不満げに見えているのは俺のせいでない、と思いたい。