俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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八幡とリーナの戦闘回…ですが少し一方的…?



揺らぐ一番星

「まさかピクシーに《パラサイト》が乗り移るとはまさに付喪神…いやピクシー(妖精)だから出来すぎだろ。」

 

ロボ研でのガレージにて騒動…特にほのかが一番のダメージを受けていたので放課後一人で返すには心配なくらいに放心していたので皆に送る旨を伝えキャビネットに乗って家の前まで送り届けた…。

 

が、までは良かったんだが自分がどうやって家の前まで戻ってきたのか分からないくらい放心して漸く持ち直したと思ったら件の俺が目の前にいたことでマンションの前で泣き出しそうになったので必死に慰めていた。

その光景を近所のおばさま達が此方を見てヒソヒソと話しているので不味い、とおもいその場から立ち去ろうとしたがほのかから腕を取られ逃げられない状況になったのだ。

 

『わ、私が落ち着くまで…一緒にいてくださいっ。お願いしますっ』

 

そう言われ俺は諦めてマンションに連れ込まれほのかの使用しているベッドに腰を下す事になり隣にほのかが密着した状態でずっとそうしていた。

隣でずっとそわそわしてたのはロボ研での出来事を思い出し恥ずかしさで泣きそうになっていただろう。

ピクシーがそう言うことを言ったのはほのかが本来持つ【従属願望】…《エレメント》特有の遺伝子レベルでの願望がそうさせているのだろう。

………前日に告白されてるしつまりはそう言うこと、何だよな?…うーむ困った。

本来は直ぐ様答えを出すべき事案だろうが俺にはその回答をする用意がないし今は、する気がない。

俺の精神的に稚拙な部分がほのかを困らせてしまっているが…。

 

暫くして落ち着きを見せたが流石にショッキングな事があったばかりなので…と俺はほのかに夕食を振る舞って一緒に食事を取って雑談をしていた。

 

『八幡さん…すみませんでした。ロボ研で言ったあの台詞…わたし、八幡さんにピクシーが抱きついたのを見て面白くない、って思っちゃってあの台詞を…本当にごめんなさい。』

 

雑談の最中にほのかが謝罪した。

 

俺は場の雰囲気を和ませようと脳内に有る選択肢を告げた。

 

『大丈夫だ。気にしてないから。…でもほのかみたいな美少女にそんなに想われてるって…これってまだバレンタインのプレゼント続いてたりする?』

 

まさに冗談は顔だけにしておけ、という冗談を言ってみる。

 

『……///』

 

顔を赤くして俯かせてしまった。

ゲームのようにロードが出来るのなら選択肢を選び直したい、そんな気分だった。

ちなみにロボ研のガレージにあったピクシーは名倉さんにお願いして買い取ってもらい別のピクシーが触れられないように見張りを付けている。

ほのかの思念によって覚醒をしたのならば彼女の義理堅さも受け継いでいるはずなので心配は要らない、とは思うが部外者が触れない、とも限らないので一応の保険にはしてある。

 

とまぁそんなこんなで俺はほのかのマンションから出て物陰に隠れポータルから《グレイプニル》を取り出し今バイクに跨がり首都高を風を切って走っている。

今日は少し遅くなってしまったが通常通りバイクツーリングをしていた。

 

 

「ん…?」

 

不意に背後から迫る黒塗りのワゴンから奇妙な雰囲気を感じ取った。

それだけではなく前方にいる同じ型式のワゴンもこちらに接近してきていた。

 

「こいつらは…?」

 

バイクのミラーと周囲を見渡すと対向車線以外今俺が走っている通行車線には後ろと前方には不自然なほど車の通行量がなく前と後ろに黒塗りのワゴンがあるだけだった。

 

その事に気がついた次の瞬間。

 

ワゴンのトランクが開かれサプレッサーとサイレンサーの複合オプションを装着したサブマシンガンにCADを組み込んでいる武装デバイス。

そんな複雑な一体型を開発し使用するのはUSNA兵士しかいない。

フェイスガードを付けて全身黒尽くめの男達が身元が割れないように俺へ向けて弾丸を放ってきた。

 

◆ ◆ ◆

 

八幡が首都高を走行しているのを低軌道の監視衛星で作戦指揮所で確認していたバランスは部下から報告を受けていた。

 

「ターゲットはクラスメイトのマンションから出てきて七草邸宅へ帰宅する模様予定時刻より少し遅いですが普段のように首都高付近をバイクツーリングしているようです。」

 

「よし、そのまま計画通りに追跡し襲撃準備を整えよ。」

 

「イエス・マム!」

 

部下のよく通る声で返答されバランスは自分でも思っていないが満足感を得ていた。

 

「懸念通りであればターゲットは大規模破壊を目的とした戦略級魔法の使い手だが自滅覚悟でなければその使用はないだろう。そして今は民間人が乗った車両が数多くその場所での魔法の使用はないと断言できる。スターダストが牽制の目的で襲撃しその場で拉致を試み反撃を受けた場合は付近一般道へ戻るルートへ下ろし少佐の方へ誘導を掛ける。後は頼んだぞ少佐。」

 

通信機越しに中継移動車にて待機しているシリウスは平坦な声で返答する。

 

「イエス・マム」

 

リーナのその視線は中継車両の座席に置かれた長方形のボックス内部へと視線が注がれていた。

 

『うむ。《ブリオネイク》の調子はどうか。』

 

リーナは淀み無く答える。

 

「点検を行いましたが異常有りませんでした。問題なく作戦に入れます。」

 

その蒼窮のように透き通る筈の蒼の瞳には陰るように雲が掛かる。

リーナの眼前には超兵器《ブリオネイク》が長方形の箱に納められていた。

 

《ブリオネイク》はUSNAが開発したアンジー・シリウス少佐専用の超兵器。

その兵器はリーナの為に作られたものだがそれは統合参謀本部の承認を得られなければリーナの意思では使用できないものでありそれは手持ちの武装でありながら大型戦闘艦の主砲に匹敵するレベルの破壊力を持っているからだ。

そのようなものを易々と個人が携行をするわけには行かないのである。

 

それを見つめながらリーナは作戦開始まで思案していた。

 

(これで…八幡を。)

 

リーナの脳裏にロボ研での出来事が思い浮かぶ。

ホームヘルパーのロボに抱きつかれたときに自分でも分からなかったが得も言われぬ感情に支配され八幡を売るような言動をしてしまったが何故かそうしなければならなかった、と脳内に自分が口に出そうとしてた感情の一節を溢しそうになったが必死に振り払う。

自分は八幡に対してそんな感情は抱いていない!と。

 

そんな雑念を振り払うようにリーナは先日八幡に敗北をした日を思い出し心の中に燻る想いを再点火させる。

 

(八幡、その実力は私が見てきた魔法師中でも上澄み中の上澄み…だけど未だ本気の実力を晒していないように思える…。)

 

実際に戦闘を行ったリーナは八幡の実力を感じ取っていた。

自身が展開していた筈の《仮装行列》をいつの間にか解除させられ《分子ディバイダー》が発動しているコンバットナイフを叩き折りあまつさえコールした《ダンシングブレイズ》か体を通り抜けてしまう、と挙げればキリがないほどにその実力は闇の中で結局何がどうされたのかは分かっていない。

それがこの魔法師の世界で観測されていない新魔法《次元解放(ディメンジョンオーバー)》と《結合崩壊(ネクサス・コラプス)》であると見抜けるものは誰一人としていない。

例え歴戦の軍人魔法師だったしてもだ。

 

そんな実力未知数(アンノウン)に対して一瞬の躊躇が見られたがリーナはそれは自分の矜持と与えられた立場の重さによって自身を説き伏せた

 

(いえ、やれるわ。私はスターズ総隊長、USNA魔法師最強のアンジー・シリウスなのだから。)

 

”対等”と認めた少年に対する想いを心の奥底へ押し潰し”敵”としてその存在を自覚し本国より与えられた任務を遂行する最強の魔法師アンジー・シリウスへと変身し《ブリオネイク》を手にした。

 

◆ ◆ ◆

 

「こんな街中でぶっぱなすのかよっ!」

 

正面から接近する高初速弾が殺到した為と即座に魔法による重力障壁を展開し俺は着弾する筈だった弾丸は首都高の地面へ叩き落とされめり込む。

その瞬間に俺の耳にパチリ、という弾ける音が響いた。

恐らくは殺すための弾丸ではなく俺を生け捕りにするためテーザーガンのような起動式だったのだろうと。

俺はリーナの上司…バランス大佐が俺に対して戦略級魔法の術者として完璧に狙いを定めてきたのか今回俺を襲ってきたのだろう。

…リーナが俺と協力をしていることを伝えているとは思えないし今回は本部主導の作戦なんだろうがこんな街中で尚且つ所属を示すような装備を使ってくるのは正直言って異常だった。

 

しかし、捕まってやるわけにはいかないし夜間とはいえ民間人がいる首都高で跳弾の恐れは無いだろうが流れ弾で巻き込んでしまう可能性が有ったために俺はすぐ近くの高速の一般道へ降車する流入口へバイクを飛ばした。

 

が、そこにも罠が仕掛けられていたらしく高速を降りてすぐに先程の車両と同じタイプが俺の前方へ立ちはだかる。

 

「ちっ!」

 

このままでは激突するので俺はその道中近くにあったちょうど故障したキャビネットを乗せる二階立ての貨物車を見つけた。

運がいいことにそのキャリアーの背面ゲートが空いていたのでそこに勢いよく乗り上げる。

その結果俺はバイクと共に飛び上がり体を横に倒してハンドルを持ち上げる。

バイクを横に倒し俺は横に吹っ飛び進路を妨害していた黒塗りのワゴン車を飛び越えた。

その際にホルスターから超特化型CAD(フェンリル改)を取り出し着地と同時に魔法を発動した。

 

俺を取り囲むように設置されていた黒塗りのワゴンから出来てきた数名の男達は俺へ自動小銃を向けていたが《瞳》によって捉えた《ニブルヘイム》の術式によって凍りつき使い物にならなくなっていた。

驚きの表情を浮かべている襲撃者だったが武器が使用できないことを悟って体術とコンバットナイフを手にもって俺へ攻撃を仕掛けてくる。

 

バスッ!キュキュキュキュッ!

 

着地と同時にバイクのタイヤが勢いよく地面に接触しと大きな音を立てサスペンションが大きく躍動したがそんなことを気にせず俺は飛び降り着地と同時に前転。

音声コマンドにて”変身”した《グレイプニル》のセンサー部分が緑色に輝いて人形になり俺を襲おうとした死角の襲撃者へ単一魔法《エアブリット》を発動し大きく吹き飛ばす。

 

「「「ッ!?」」」

 

バイクが変形したことなのか俺が対処できていることに驚いているのかは知らないがチャンスだった。

素早く【乱戦乱舞・朱雀乃型】を発動し怯みを見せていた襲撃者の鳩尾へ掌底を叩き込むとしたのだが。

 

(固った!?)

 

《朱雀》の拳が弾き返された。

《瞳》で見たのではなく手に伝わる固い感触がそう感じ取ったのだ。

呆けようと時間はなくその場からバク転すると俺がいた場所にナックルダスターを装着した襲撃者が俺を襲いにきていた。

状況を把握するために襲撃者を《瞳》で確認するとそれは悲惨なものだったからだ。

 

(こいつら…体を強化されてる…いわゆる強化人間ってやつか…?)

 

《瞳》を通してみる数々の【身体強化】とそれを上回る【状態異常(バッドステータス)】数々が飛び込む。

それはこの今対峙しているものだけでなく全員がその状態だった。

 

生きているのが不思議なくらいに身体がボロボロになっている筈なのに俺へ向かってくるのはもう後が無いことを悟っているから命令されているからかは分からんが恐らくは前者だろう。

 

そんな状態の襲撃者の俺は情が沸き上がった訳じゃないが早々にご退場願うことにした。

しかし俺を襲撃を命じた人物がこちらを監視しているのは明らかなので《虚空霧散(ボイド・ディスパージョン)》や《結合崩壊(ネクサス・コラプス)》は当然ながら使用は出来ないが問題なかった。

 

襲撃者も当然対応しこちらに攻撃を仕掛けるが向けられた拳をいなし後ろから向かって来る襲撃者にぶち当てる。

直ぐ様使用する型を決定、切り替え想子を纏った俺の腕と手の握り方を変えた拳が捉え情報強化した体をぶち抜き臓物を撒き散らし吹き飛ばす。

 

防御無視【一対破戒・白虎乃型】が体を覆っていた強化されていたエイドススキンごと食い破る。

その光景に動揺を見せていた仲間達、その隙を俺は見逃さなかった。

 

【乱戦・破戒】を組み合わせた【四獣拳】を振るい俺を取り囲んでいた黒尽くめの襲撃者数十名を血の海に沈める…が殺してはいない。

 

これ後で処理するの面倒だなまぁ佐織と防諜3課の人達に任せるとして

 

『こちらは処理が終わったぞ八幡。』

 

後ろで俺の背中を守っていた《グレイプニル》が最後の一人を打ち倒して振り返る。

 

 

しかし、同時に煌めく光条が襲いかかった。

 

『……っ!?』

 

それに対応するため《グレイプニル》が俺の前にたち塞がる。

光条が装甲に激突し不快な悲鳴が響き渡り光を撒き散らす。

光が晴れた頃には当たった部分が熱を帯び赤色していた。

 

『外部より高エネルギーの攻撃を関知、機能保全のため一時的に停止します。』

 

俺はその直前に咄嗟にしゃがんで顔の前に腕をクロスする。

《グレイプニル》は俺が指示する前に俺の前に立っており障壁を展開していたが膝を付いている。

恐らくは高エネルギーのプラズマビームを処理しきれなかったらしい。

其程までに強力な攻撃だったようだ。

 

攻撃を仕掛けてきたであろう術者がいる方向を見つめる。

不自然なまでに人がいない高速流入口へ続く一般車両道の中央部分に該当によって照らされその姿が露になる。

 

深紅の髪に金色の眼。

 

手には杖のようなモノを俺に向けている。

その先端がバチり、と放電をしているのが見て取れるのであれが先程のプラズマビームの発生源の正体なんだろう。

その場にいるのは最強の魔法師”アンジー・シリウス”。

 

その人物が俺を視ていた。

 

◆ ◆ ◆

 

目の前に立つ人物普段学校でみるリーナとは違っていた。

赤い髪に金色の瞳に顔を覆うような仮面がなくとも今目の前にいるのが【アンジェリーナ・クドウ・シールズ】とは到底見分けることとは不可能だろうが俺は一度《瞳》で見抜いているので脳内に表示される情報は【アンジー・シリウス】で無くクラスメイトの【リーナ】だ。

 

(さっきの魔法…あれが噂に名高い【ヘヴィ・メタル・バースト】って奴か。)

 

USNA最強の魔法師アンジー・シリウスが用いる戦略級魔法で重金属を高エネルギープラズマに変換し気体を経てプラズマ化する際の上昇圧力と陽イオンの斥力を使用し照射地点が爆心地になりそこから広範囲にばら蒔く魔法…というのは情報として聞いていたが今先程《グレイプニル》にぶち当たった時は俺が使用している《結合崩壊(ネクサス・コラプス)》と同じ収束ビームになっていた。

 

(なる程…そのギミックはリーナが今持っているその光の”杖”ってわけな。流石はUSNA…良いセンスだ。)

 

某蛇のようなコメントをしてみたが作り的には俺の【超特化型(フェンリル)】とはことなる補助機構が付いているんだろう。

俺の場合は純粋に加重系統で制御して臨界させてからも維持してるからな。

小一時間ほどその道具について話をしてみたいと思うがあいにく俺と話すことはないんだろうが。

 

素直に称賛をしたかったところだが俺とリーナの距離は百メートルもない。

隙を見せればあの杖らしい術式補助装置から放たれるプラズマビームは容赦なく俺を貫くだろう。

次元解放(ディメンジョン・オーバー)》を用いれば回避は簡単だが…向こうの方が展開が早いかもしれないので博打は出来なかった。

 

俺はリーナを暗がりの中で見つめると俺から視線を外し踵を返して走り出した。

その際に俺を一別しその表情に笑みが浮かんでいる。

 

(にゃろう…完璧に誘ってやがんな…?)

 

これは罠だと、小学生でも分かる警告が俺へ届く。

このままバイクに乗って帰宅しても良いんだか…そうするとUSNAからは「腰抜け」だの「シリウスは七草に勝った」と有りもしない(スレット)が立てられそうになるのは俺含め父親や姉さんに迷惑を被るのは真っ平ごめんだった。

其にここで帰宅したとしてもUSNAの精鋭が俺を待ち受けているのが目に見えているので誘いに乗るしかなかった。

 

「……ふっ」

 

俺が覚悟を決めたのを見抜いたのか再び笑みを浮かべ踵を返した足で駆け出していった。

その後ろ姿を追いかけながら思考リンクしている《グレイプニル》をスタン状態から復帰させバイクへ変形させたのを確認して俺は速力を上げた。

 

◆ ◆ ◆

 

リーナを追いかけると都内の公園、ではなく防災区画として更地にされ遊具も置いていない場所へと足を踏み入れる。

踏み入れた瞬間に空間の光が弱くなる。

この防災区画全体に監視衛星や低軌道プラットフォームのカメラを欺瞞する光学系統魔法と認識阻害魔法が掛けられている。

周囲を探るが人の存在はリーナ只一人。

完全に一騎討ちの状態と言う訳だ。

 

追いかけっこは終わりだと”シリウス”は踵を返して此方に振り返る。

しかし其だけでなく俺の目の前で金髪の髪を晒す…あろうことか《仮装行列(パレード)》解除していた。

俺が怪訝な顔を浮かべているとリーナが呆れた表情で声を掛ける。

 

「呆れた…まさかまんまと付いてくるとは思わなかったわ。」

 

「彼処で帰っても良かったんだがそうするとお前後で難癖付けてくるだろ?面倒だから誘いに乗っただけだっつーの…有ること無いこと言うつもりだろおめー。いや、お前のところの所属が、かな?」

 

 

小馬鹿にした回答をぶつけるとリーナの表情が変わった。

恐らく、というよりも明らかにバカにされている、と感じ取ったのだろう。

 

「…でも、今回ばかりは自惚れすぎよ。」

 

俺へ向けて先程の”杖”の先端を此方に向けている。

 

「八幡。投降してちょうだい。《分子ディバイダー》纏ったコンバットナイフをCADから出た赤刃で叩き折ったり攻撃を通り抜けた手品を持っていて貴方は確かに私が知るなかで最強の魔法師だと思うわ。…でもこの【ブリオネイク】を無力化することは出来ないわ。」

 

(【ブリオネイク】?…ケルト神話の明光神が持ってるって言い伝えの光の槍…【ブリューナク】のUSNA読みか?)

 

不意に自分が持っているCADには北欧神話の神や兵器の名前を付けていることを思い出して頭が痛くなった。

まぁ俺も只神話の兵器や神から名前を取っているわけではないんだよなぁ…名前には意味があって其を宿す魂のようなものだからな…其こそ今回のピクシーが良い例なんだけど…とまぁその前に聞いておく必要があった。

 

「ひとつ聞かせてくんない?」

 

「…何よ。」

 

武器を構えたまま此方の動きを観察しているのは流石USNAのトップエースだと感心したがソレは後で良いとして。

 

「今回俺を襲撃を仕掛けたのはUSNAのアンジー・シリウスとして?其とも軍本部からの命令か?」

 

そう俺が問いかけるとリーナは一瞬躊躇いを見せて返答した。

 

「…っ、私は今自分の意思で貴方と対峙している。」

 

嘘だ。

自分の意思でここに来ているのならその綺麗な蒼窮の瞳が曇る筈がない。

視線が定まらず自信の無く俺を視ているのは”自らの意思では無い”と告げているようなものだった。

 

そう問いかけた後にリーナは告げた。

 

「投降する気はないと…そういう回答で良いのね八幡。」

 

俺はただメガネ越しにじっとリーナを見つめていた。

 

「後悔しないでよ…っ!」

 

リーナの握るブリオネイクの先端、その矛先に魔法式が瞬時に構成され俺も《二重詠唱》と《詠唱破棄》による《重力爆散》で対抗しようとしたが向こうの速度の方が早かった。

 

収束した光条が俺の体へ到達する。

 

この距離では《術式解体》は意味を成さず《解体反応装甲(グラム・リアクション・アーマー)》もタイミングが悪すぎる。

 

だがしかし。

この場には今この場の戦闘を覗き視れるのは今、この場で俺と対峙している”リーナ”しかいないのならば…

この手を使う他無かった。

 

俺の腕を炭化させ吹き飛ばす筈だった光条は”俺の体を通り抜け”後ろに有る生け垣を貫き燃やし尽くす前に霧散した。

 

「あのときとまた一緒…!?」

 

その動揺を視た俺はホルスターから【超特化型CAD(フェンリル)】を取り出すと同時に魔法をリーナに向けて発動した。

 

同時にリーナの空間が揺らぐ。

 

気がついたときには俺の背後に立っていた。

その事に気がついて身を捩って回避を行うが一歩遅かった。

 

(くっ…《仮装行列(パレード)》も展開してきやがったか…!)

 

その直後に俺の背中を肩口から刃物のような鋭い武装が切り裂き芝生が敷き詰められた防災公園の地面を大量の血液で濡らした。

くそ…滅茶苦茶痛い。

リーナが使ってた《ダンシング・ブレイズ》って奴の武装一体型CADかもしれない。

 

一先ずこれでは不味い、と俺は飛び込むように前方の生け垣にハリウッドダイブして転がり後方バク転してリーナがいる前方を向くと隠れていた生け垣が灌木だけを残して燃えきった。

目の前にはリーナが居り先程手に持っていた杖の先端が槍先のように鋭く煌めいている。

恐らくは、と言うか先程背中を切られたのはこのプラズマの刃だったのだろうと理解した。

ちなみに生け垣と俺の距離は数センチだったのでもう少し近ければ槍先の刃にであって胴体が泣き別れになっていたかもしれないと思うとゾッとした。

 

俺は肩を押さえながらリーナを見つめる。

 

「くっそ…滅茶苦茶痛ぇじゃねーかよ…これがクラスメイトにする仕打ちかリーナ?」

 

「良くもそんな軽口が叩けるわね?今私に自分の生殺与奪の権利を委ねられているって言うのに随分とお気楽ね。さっきも私の攻撃を回避したときは驚いたけどもう手品の種は割れているわ…改めて言うわ八幡。投降しなさい。」

 

手品…手品と言われればそうかもしれないな。

攻撃を通り抜けた《次元解放》も決して無敵ではない。

俺がいくら多種多様な魔法を組み合わせて使用できると言ってもこの魔法式のコードは複雑に”過ぎる”。

パソコンのOS用語で言うのならばラザニアコードの下にスパゲッティコードが入り込んでいるような状態でその状態では高威力の魔法は使えない。

《次元解放》を展開した状態で《虚空霧散》等の高威力の魔法式を起こすのなら《グレイプニル》の力が必要だが今はリーナの攻撃で装着はままならない。

俺の弱点を付いたことを誉めてやりたいくらいだったが煽らねばならなかった。

 

「は?散々痛め付けておいて今さら投降だぁ?寝ぼけたこと言ってんじゃねーよ。リーナ。」

 

挑発混じりの俺の罵倒によってリーナは【ブリオネイク】を握る手に力が入っているのが視て取れた。

 

「お前は”軍人”なんだろ?だったら命じられるがままにその武器でその力で…俺を殺して見せろよ。自分の手で脱走兵を処断したときみたいにな。」

 

嘲笑うようにリーナに俺は酷く冷たい笑みを浮かべた。

 

「八幡っ!!!」

 

次の瞬間には光条が通りすぎて俺の左半身が炭化し吹き飛んでいた。

立つことすらままならず地面へ落下して頭部は片目を失い陥没し焼け焦げた臓物が血液と共に地面へ吐き散らばると同時に吐血する。

しかし、俺の言葉は止まらず起こせる筈の無い頭がリーナを向いて黄金色の《瞳》で視る。

その瞬間にリーナが「ひっ…!?」と短い悲鳴を上げていたのがしっかりと聞こえた。

 

「お前は、俺を、捕まエて、どう、シた、インダ?」

 

リーナからしてみれば既に致命傷の筈の少年が問いかけてきているのはホラーでしかない。

 

「あ、ああ…。」

 

「ジン、体、実ッケン?先程の”アイツ”らのよう、に無理ナ、強化をして明日もイキレ、ない程の兵器に仕立て上げる、ノカ?」

 

俺が先程戦闘した強化兵士のことを思い出し血の気が引いているのが良く分かる。

 

「ソレ、どモ、大ア、連ゴウのようにオ、レの脳ズ、を増フク、機にして《ソーサリーブースター》でもツク、ル気カ?」

 

「な、何なのよ…!!」

 

片目が無くなり頭蓋が丸見えになって残っている片方の感情の乗っていない黄金色の《瞳》がリーナを射貫く。

 

「オ、レは…オマエ、タチノ、」

 

と言い掛け体を這いずってリーナの足首を生きている左手で掴むとビクり、と震えていたのが感じ取れた。

身体機能を失っているのにか変わらず俺が喋り思考しているのが異常だとリーナの表情はまさに泣き出し発狂寸前だった。

 

 

なんてな。うん、これ以上は本当に泣き出しそうだからそろそろ種明かし、と行くかな。

流石に脅かしすぎたかもしれんし。

 

「ああああああっ!??!!」

 

案の定、恐怖と錯乱でリーナは俺えへトドメを刺すために頭蓋に向けて【ブリオネイク】を構え直しすぐさま起動式が展開され先端から光が放たれ吹き飛んだ…。

 

のは”リーナ”の方だった。

 

「なに…!?一体、これはなんなのよっ!?!?!?」

 

リーナは正に混乱の極み、といった感じだが仕方がない。

俺は【ブリオネイク】の攻撃を受ける瞬間にリーナに対して無系統魔法の精神干渉系魔法《記憶読込(リローデット・メモリ)》をそう…初動の攻撃を避けた時点で発動させていたんだなこれが…。

発動によってリーナは”俺が居ると錯覚した場所を攻撃し瀕死の状態にもかかわらず半死体の俺がリーナに問いかけている”と言う記憶を埋め込んでいたのだ。

 

実際には俺は無事でリーナに勘違いしてもらうために近くで視ていたのだが結構な錯乱状態になりそうだったので止めに入った、と言う具合だ。

少しやり過ぎたかもしれないが…良し!(現場猫)

 

攻撃を仕掛けてきたリーナの【ブリオネイク】目掛け《超特化型(フェンリル改)》から《重力弾(グラビティ・バレット)》を発射し、リーナの手からピンポイントで杖を吹き飛ばす。

【状態異常】で【混乱】が出ているので単一魔法でも今のリーナに対してでも十分な成果を上げる。

 

「あっ」

 

体勢を崩したのを俺は見逃さ無い。

再び俺はCADを起動させリーナに対して《記憶読込(リローデット・メモリ)》を発動させた。

 

「……!?……。」

 

リーナの脳内には”俺から攻撃を受けて先程の俺のような状態にさせられた”存在しない記憶が広がり次の瞬間には地面に崩れ落ち声を上げるよりも先に自己防衛の為に意識を失っていた。

もし仮にこの戦闘が視られていたとしても俺がUSNA側で調査している”ダークマター”と言う証拠はなく”精神干渉系統”の使い手だと言う誤解をしてくれる筈だ。

 

横たわり魘されるリーナに対して俺はぼそり、と呟いた。

 

「お前さんは軍人として俺を撃とうとしたんだろうが…敵の言葉に耳を傾けるなんざお人好しすぎる。」

 

どうしてリーナが躊躇ったのかは分からない。

今も《瞳で》リーナの状態を覗いたときに俺への好感度がかなり高かった。

あり得ない話ではあると思うが俺を友情判定をしていたとしたならばかなりのお笑い話…だが問いただすのも躊躇われた、と言うか何故か聞きたくなかった。

 

視線を外して端末を取り出して連絡を入れる。

 

「あ。」

 

しかし、通信障害が出ていたのを忘れてた俺は舌打ちをして外に出ようと思ったがリーナがやられたことにより前線基地的な車両が待機していることを想定しジャミングか掛けられたこの場所で通信を行うことにした。

 

「…やっぱり来るよな。」

 

向こうから人の気配がしたのを確認し見やるとリーナを回収しに来た隊員が此方に向けて武装一体型のCADを構え発砲をしようとしたのを確認し申し訳ねぇと思いつつ倒れ込んでいるリーナを後ろから羽交い締めにしてショートバレルのCADを突きつける。

 

「「「「…!」」」」

 

その怯んだ隙を付いて変形をしていた《グレイプニル》が銃を向けていた隊員を無力化し地面へ沈めていった。

咄嗟に反応した隊員もいたが俺の魔法によって意識を刈り取られ地面へ崩れ落ちていた。

 

「これで一応終わりか…?」

 

数分も掛からず制圧し羽交い締めしていたリーナを丁寧に地面に寝かし周囲に人がいないことを確認して一旦防災区画の外へ出た。

案の定、防災区画の外には人の気配は無かった。

 

通信を繋ぐ。

 

「《グレイプニル》、佐織達に繋げ。」

 

『承知。』

 

直接諸々の”後始末”を部下へ命令するために連絡をした。

まぁアイツらに任せれば処理はしてくれるだろうし問題はこっちかな…。

通信を切って俺は再びリーナに近づいて再び精神干渉系の魔法を再び使用し先程植え付けた記憶を消し去る。

魘されていたリーナの表情は穏やかな顔へ変わったのみて余程の悪夢がキツかったらしい…まぁ無理もないとそのまま俵担ぎしてその場を後にした。

 

俺に完全に敵対する意思があるならこんな程度じゃ済まなかっただろう、と思う。

まぁ正直腕の1本や2本は無くなっていただろうが…リーナが俺に対しての”悪意”が感じ取れなかったからだ。

正直俺はこいつとマッ缶仲間でいたいしからかうと楽しいからな。

 

…だからこそこいつに”軍人”は似合わないし尚且つ”処刑人”なんて立場は相応しくない、と思っている。

 

後の処理は部下に任せてちょっと上の人に”お話”をしに行こうか?

 

◆ ◆ ◆

 

リーナが目を覚ましたのは都会の喧騒…ではなく何処かから漏れ出る光が顔に当たり眩しく起床した。

借りているマンションの天井でもなく…見知らぬ天井だった。

 

時計は無く、時間は分からない。ただ、朝と言うことだけが分かる状態だ。

快適な空調に思わず二度寝を決めたくなったが朝になっているのに気がつき掛けられていた柔らかな羽毛100%の毛布を剥がし上半身を起こして目蓋を擦り中途半端な覚醒状態で左右を見渡した。

 

そこは清潔でホテルのような内装の一室だった。

 

「ここは…?」

 

しかし、そこでリーナは可笑しい、と一気に脳が覚醒した。

何故ワタシはこのホテルのような一室にいるのか、と。

 

跳び跳ねるように毛布を捲り起き上がる。

先程まで自分がいたのは深夜の防災区画にいた筈なのにどうして、と疑問は強まりベッドから抜け出すと違和感に気がついた。

 

「傷が…無い?…でもどうして傷を負ったんだっけ…?」

 

八幡と戦闘をしてたのは分かる。

だが、”どうやって八幡に敗北したのか”を覚えていない。

”痛烈な痛みを受けて八幡に敗北した”という詳細がスッぽぬけた記憶だけがリーナの記憶に刻み込まれていた。

 

「【ブリオネイク】を吹き飛ばされて…そこから…どうなったんだっけ…?って【ブリオネイク】はっ!?」

 

その事を思い出し青い顔になるリーナだったが見覚えのある長方形の重厚なアタッシュケースをテーブルの上に見つけ中身を確認すると安堵した。

 

「よかった…うん、壊されてない。」

 

無事の【ブリオネイク】を確認して手にとって起動式を展開すると問題なく使用できていた。

その事に安堵し今度は別の事に気がつき赤面した。

 

「戦闘服じゃない…?…って何よこの格好はっ!……ま、まさか…って流石に八幡はこんなことしないわよね…?」

 

リーナがちょうどあった姿鏡に移ると自身が着た…ではなく恐らく着せられた透け透けの大事な所のガードは据え置きなベビードール着替えていた事に気がついて顔を真っ赤にして今度は真っ青になり最悪の事態を想定したが自分が想像している人物がそんなことをする筈がない、と無意識に想っていた事に場違いな想像に首をブンブン、と横に振った。

着れるものが無いかと室内を捜索するとクローゼット中に一着の上着があったことを確認し其を手に取るがそのデザインを見た瞬間に怒った。

 

「なんで男子の制服の上着がここにあるのよっ…って八幡のじゃないっ!」

 

リーナが手にしているのは第一高校の制服の上着でポケットには学生証が入っており”七草八幡”の名前が。

つまりはこれは八幡の制服、と言うことになる。

 

「………そ、そうよこれは仕方なく、仕方なくなんだからっ」

 

誰に言い訳するわけでもなく独り言を大きな声で自分に言い聞かせるようにリーナは八幡の制服の上着に袖を通した。

 

「……///」

 

元よりサイズが男子用のものなのでリーナが羽織るには少々ブカブカで袖が余ってた。

自分が八幡の上着を着ていることに得も言われない羞恥心が襲い顔をブカブカの裾で覆った。

 

「(これが…八幡の…)すんすん…………ぅ~………ってじゃなくて!ここから脱出する手段を探さないと。」

 

リーナは何が、とは言わないが若干トリップし掛けていた自分を叱り付けて動き出す。

探す道中で体に触れてみても体の各所に付けていたCADが無いことを確認して落胆したが捕らわれてる?状態なのだから反撃を許す装備を置いておく筈が無いし動き回れないようにこんな格好をさせたのか、とリーナは八幡に対して怒りを露にした。

 

「…顔を見せたら蹴り上げてやるんだから!」

 

ひとまずドアが空くかどうか確認をするが当然ながら鍵が掛けられており浴室も窓があるものの人が通るには小さすぎたため脱出路としては使えない。

手にしている【ブリオネイク】を使うのを躊躇ったのは彼女の良心故か。

 

其に気がつかぬまま溜め息を吐いてリーナは唯一の可能性が残された窓へ近づく。

 

外を見ると周囲をベッドの近くにある窓の外を覗き見ると景色は何処かの豪邸のようで離れも見える。

試しに窓ガラスを割るために近くあった手にしている【ブリオネイク】で殴り付けてみる。

 

「えっ?」

 

パリン、と割れるのではなくポヨン、と弾き返されててしまう物理法則を無視していた。

交互に窓と手に持った置物を見比べ指で叩くが”コンコン”と固い音がしている。

 

「なんなのよっ!」

 

唖然としキレて手に持ったCADで今度はプラズマを放出するがを窓ガラスには一切傷が付かずに部屋の中もプラズマの嵐でめちゃくちゃになる筈なのにならなかった。

其は数度行っても同じ結果だった。

 

「はぁ…はぁ…なんなのよもうっ…」

 

肩で息して疲労したリーナはベッドに腰掛ける。

 

「どうしよう…。」

 

どう脱出しようかと思考を張り巡らせるが途方に暮れてしまい「うわぁ~!」と声を上げるリーナ。

そこには”アンジー・シリウス”としての威厳もへったくれもないただの”リーナ”がいた。

ベッドに背中から倒れ込むリーナは考えるのを一旦放棄しそうになったがハッとした。

 

「まさか…これは八幡の魔法…?」

 

自分がどうして負けたのかという結果を覚えていないのに”負けた”と納得をしているのか。

身体全体を貫いたあの痛みはどうやって受けたのかを覚えていない。

自分がどうして【ブリオネイク】でも壊せない部屋に閉じ込められているのか。

 

(まさか…精神攻撃…系統外魔法…?)

 

リーナは思わず自分の肩を抱いていた。

自分だけでなく今回の作戦に参加している隊員全員が勘違いをしているのでは、と。

そうであれば説明が行く点が多々見られた。

 

(攻撃をすり抜けたり《分子ディバイダー》を発生させているコンバットナイフ毎叩き折るように見せワタシの《仮装行列》を見抜いたのも高い精神干渉系統に高い適正を持っているから?)

 

そうであれば説明が行くとリーナは持論を展開する。

 

(ワタシに敗北の記憶を埋め込んだり今この部屋に閉じ込められているのも全て幻覚………っ!?)

 

そう考えていると目の前に自分しかいない筈のこの部屋に人の気配を感じ取ったリーナは面を上げると件の人物がた立っていることに気がつき短い悲鳴を上げそうになる。

 

「八幡…?っ、これは貴方の幻術なの?早く解いて頂戴!さもないと撃つわよ!」

 

立ち上がりベッドに立て掛けていたCADを持ち上げ術式を発動待機状態にして八幡に向けるが知らぬ存ぜぬ、と言わんばかりに接近してくる。

 

「…っ!」

 

警告はしたわよ、と言わんばかりにプラズマをぶっぱなすが陽炎のように通り抜ける。

 

「(やっぱり精神干渉系統…!この空間もね…!)…っていない!?…ひゃあああっ!?」

 

五感を支配する精神干渉系統など聞いたことがない!と声に出して言いたいリーナだったが其どころではなかった。

 

「ちょ、ちょっと八幡!?な、何をするのよ…!?」

 

いつの間にか隣に立っていた八幡にベッドに押し倒され手にしていたCADを手から外され覆い被さるように手を押さえ込まれて足も動かせず組伏せられている。

 

はじめて八幡に正体が知られたときのように。

 

「…っ…っ……っ!!」

 

抵抗しようにも振りほどけずに成すがままになっている。

リーナは自分に乱暴を働きかけようとしている八幡の顔を敵対心を露にしてを見る。

 

「えっ…」

 

「……。」

 

しかし、自分に覆い被さる八幡の表情は普段見ないような気の抜けた表情ではなくキリッと真面目な気を失う前に見た凛々しい表情だった。

 

「ちょ、ちょっと…………////」

 

リーナは自分の顔が赤くなるのを感じた。

 

「(ち、違うわよ!ただ顔が近くて恥ずかしいだけで…)ひっ…!?」

 

さらに近づく八幡の顔に思わず腕で遮りたいリーナだったが自分の腕が八幡に押さえ込まれていたことを気がつき顔を逸らすがちらちらと視線は八幡を見ていた。

こんな無理矢理な事をされているのにリーナは振りほどくことをしなかったのは無意識か。

 

「(こ、こうしてみると八幡ってやっぱり顔は整ってるのよね…?……って何を考えてるのよワタシはっ!今危機的状況なのに打開策がないっ…!)ちょ、ちょっと八幡っ!?」

 

時間がないぞ、と言わんばかりに刻一刻に八幡の顔が近づきリーナにその息づかいを感じさせていた。

年頃の同年代…其も異性がこんなことをしているのなら蹴り上げそうなものだがリーナは出来ない。

いや、”したくなかった”と言うべきか、そう自覚してハッとした。

 

「(こ、これじゃあ…ワタシが…そ、その…八幡の事をその…い、しっ…してるみたいじゃないっ!)あ、ちょ、ちょっと八幡!?こ、こういうのはそ、そのっ、清いお付き合い、をしてからじゃなくって!?そもそも、ワタシと貴方は…その…まだ、お、オトモダチ…な訳だし?…ってちょ、ちょっと!?」

 

口調が若干変になって目がぐるぐるしているのは余裕がない現れか。

しどろもどろになって顔色がリンゴのように真っ赤になって意識を失わない自分を誉めてやりたかった。

 

「ちょ、っと…そんな、ダメ、なんだから…ダメよ…」

 

 

しかし、時間は残酷で八幡に対する有効打を取れなかったことで『時間切れ』と言わんばかりにリーナに顔を近づける。

否定するような言葉を放つが次第に弱々しくなって受け入れるようにリーナは咄嗟に目蓋を閉じた次の瞬間に唇の先端へ触れたーーー。

 

 

その時だった。

 

 

「おい、いつまで寝てんだお前…」

 

その直前に不意に声が掛けられ目の前が真っ暗になったリーナ。

 

「へぇっ?」

 

間の抜けた声を出すと同時に視界が開けると見覚えのある

周囲を見渡すと気を失う前に対峙していた黒の上下のライダースを着ている八幡が椅子に腰掛け此方を見ている。

辺りをよく見るとそこは自分が作戦時に使用していた移動中継車として使用していたキャンピングカーの内部だった。

 

 

そしてハッとなって自分の姿を確認すると戦闘服のままだったことに安堵した。

 

「(夢…やっぱり夢………?)……………っ~~~~~~~~~~!!!?」

 

今はこの隣で座っている男に告げねばならないことがあった。

 

が、次の瞬間に”夢”の内容を思い出して某3倍早い○い彗星の搭乗機並みに顔を真っ赤にしたリーナが悲鳴を上げた。

 

「な、なんて夢を見せるのよ八幡!!?」

 

「はい?」

 

何故怒られているのかさっぱりな八幡を潤んだ瞳で睨むリーナ。

…その夢は自分自身の無意識から望んだ夢だったのか八幡の幻術だったのかは分からない。

 

その日七草の養子と金髪美少女留学生は丸1日学校を休んで次の日一緒に登校したことで彼を慕う女性陣から凄い目で見られたとかなんとか。

 

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