俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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アンケート投票ありがとうございます。
二学年に移る前に劇場版【星を呼ぶ少女】を挿入したいと思います。
八幡がどう活躍するか…。


断章:『星を呼ぶ少女』
chapter1:助けてと叫ぶ声が


魔法。

 

それが現実の技術となって既に一世紀。

魔法の才能に秀でたものはその国の兵器でありその国の力となった。

中でも一撃で大都市を破壊し一国の軍を退ける魔法の使い手は《戦略級魔法師》と呼ばれて世界情勢を左右する軍事力の象徴となっておりその者達は十三使徒(ナンバーズ)、と呼ばれ各国によって制御されていた。

 

日本には非公認の戦略級魔法師が”二名”存在していた。

片方が国防軍特殊部隊の特尉として…残るもう一人。

 

存在自体を確認はされていたが”存在その者が正体不明”で敵か味方か分からないコードネーム【黒衣の執行者(エクスキューショナー)】。

 

その存在を知るものはただ一人。

七草に拾われ養子になった七草八幡、本人だけだ。

 

2096年、3月26日。

小笠原諸島南楯島から東に160km沖合いに国防海軍所属対空ミサイル艦”だいこく”が海原の真ん中で停泊していた。

その艦内の一室…公立高校の体育館より少し大きい空間に特殊な機材とワークステーションが複数台設置され白衣を着用した科学者達が機材を立ち上げていく。

 

『ラグランジュ2との宇宙望遠鏡ヘイルダムとのデータリンク完了』

 

『標準の確認照準固定しました。』

 

『起動式最終確認フォーマット全て正常。』

 

『変数、照合完了。』

 

『定数、照合完了。』

 

『サイオンアクティビティ基準値以上。』

 

各セクションが機材を立ち上げ状況を読み上げていく、クリーンであった。

その読み上げ報告を聞いた研究員らしき四十代頃の女性が次のフェイズへ移行するための合図を告げた。

 

「各バイタル指数いずれも許容範囲内。」

 

その報告を受けた白髪頭の初老の男性が指示を下す。

 

「『わたつみ』シリーズ、サイオンウェーブ同調開始。」

 

男性が指示を出すと空間に設置された特殊な機材が起動する。

それらは下部が展開し十二個ある大昔のロボットアニメに出てくるようなコックピットの様な装置が設置されておりその部分に病院服のようなものを着させられた”幼い少女”が乗せられている。

指示があるとそれらは特殊な大型機材に吸い込まれていく。

 

『サイオンウェーブ同調開始、3、4、5必要レベルに到着。』

 

『サイオン自動吸入、起動出入力用サイオン確保』

 

各セクションがサイオンがこの機材が必要一定数の出力を確保したことを確認できたことを報告する。

 

「起動式出力開始。」

 

男性がそう告げると特殊な機材は起動を始め起動式が展開される。

幾何学模様と膨大なアルファベットの文字羅列がその機材を中心として広がりを見せながら収束を見せる。

 

『起動式読み込み順調に開始………間もなく起動式読み込み間で残り90%」

 

その報告を聞いた男性は指示を出す。

 

「最終セイフティー解除、【ミーティアライト・フォール】起動。」

 

「最終セイフティー解除、起動式読み取り完了。」

 

『【ミーティアライト・フォール】発動します。』

 

その言葉と共に起動式の封が切られその魔法は収束を完了し”だいこく”から光の柱として放たれた。

 

 

同時刻

大亜連合の工作艦破壊任務を受けていた特殊なアーマーに身を包んだ男性が作戦を完了させて浮上した甲板の上でフルフェイスのバイザーを解除しながらその光景を見上げていた。

浮上した戦艦、いや潜水艦はUSNA所属の原子力潜水艦である【ニューメキシコ】。それは国防海軍の対空ミサイル艦から放たれた魔法式を関知してタイミング良く浮上した。

 

「あれが…大戦時代の遺物。」

 

◆ ◆ ◆

 

少女は飛行する機内の中で一人熱に浮かされていた。

 

(しちゃったわ…ワタシ…八幡にその…ファーストキス…~~~~~~~~っ!?)

 

夢にでも出そうな程覚えているその言葉はリーナにとって一生忘れることは出来ないだろう。

 

『今さら気を使う必要もないだろ。それに、今回が最後じゃない。』

 

『言ったろ。辞めたきゃ俺を頼ってくれ。これでも七草の息子だからな。それなりにコネはある。』

 

諦念が混じっていた言葉を八幡がそれを書き消す言葉を告げた。

 

『だからこそ、俺はお前に”サヨナラ”は言わない。』

 

『お前が本当にやりたいことを見つけてこっちに戻ってくるなら全力でサポートしてやる。』

 

『お前は俺にとって掛けがえの無い(唯一無二のマッ缶を愛飲する仲間)存在だからな。』

 

その言葉がリーナの脳内でリフレインし柔らかな唇をなぞるように触れる。

 

(また…逢えるわよね…ううん、絶対に会いに行くんだから。)

 

日本で逢った好敵手と初恋の少年に想いを馳せていると航空機が空港に到着したことを告げて妄想していたものが霧散した。

 

「シルヴィ!」

 

日本から発った飛行機は北アメリカ合衆国アルバカーキ空港。

リーナは乗ってきた飛行機から搭乗口ゲートから日本で買ったお土産を乗せたカートとともに降りるとロビーにて先に帰国していたシルヴィアがロビーにて待っていた。

その表情は困惑を浮かべていたが。

 

「お帰りなさい総隊長殿。」

 

リーナの姿を視認し困惑を浮かべていたが直ぐ様シルヴィア”准尉”としてリーナに敬礼した。

こんな往来でましてや任務中でもないのにそうされてしまったことにリーナはあわてふためく。

 

「い、今は任務中でないですからリーナでいいですよ。ほらお土産をたくさん買ってきたんですよほら!」

 

そう言ってリーナはお土産袋から購入したお土産を取り出す。

パッと開いて裏地は赤い唐草模様で表には日の丸に『あっぱれ』と書いてあった。

 

「はい、これ!」

 

「あ、いえ実は…。」

 

「?」

 

いい淀むようなシルヴィアのコメントに首を傾げるリーナだったが差し出された物に対して更にその疑問符が大きくなった。

 

「参謀本部の命令です、総隊長。」

 

差し出されたのはホノルル行きの航空便チケット。

 

「ホノルルへ向かってください総隊長。」

 

「………って、えええっ!?!?私今戻ってきたばかりですよっ!?」

 

一瞬の沈黙の後に空港のロビーで思わず大声をあげてしまったリーナはハッとなり口を抑えた。

付近にいた利用客は何事か?と視線が集中したが直ぐ様自分の行動に移り興味の対象から外れている。

 

「い、いったい何の任務なんですか!?」

 

「さぁ?詳しくは向こうの指令室で通達を受けてください。」

 

リーナにホノルル行きの航空券を手渡して後ろ向きへと肩をつかんで回らせシルヴィアは荷物のカートを手に取る。

 

「せ、せめて休ませてください!」

 

「大丈夫です。向こうについたら少しは休める筈ですから。」

 

「そ、そんなこと言ったって分からないじゃないですか!」

 

手にもった扇子がひゅんひゅん、と振り回すリーナだったがそれはシルヴィアに没収されてしまった。

 

「え?」

 

「すみませんリーナ。」

 

笑みを浮かべるシルヴィアを見てリーナは悟った。

 

「え、あ、ちょ、ちょっと!?」

 

そしていつのまにか現れたUSNAの軍人がリーナを再び搭乗口へ凄まじい勢いで連れていく。

 

「シルヴィ!?」

 

「すみませんリーナ。あ、お土産ありがとうございます!」

 

遠くなるシルヴィアを見ながらリーナは目尻に涙を浮かべた。

 

「~~~~~~っ!」

 

搭乗させられた機内でリーナの悲痛?な叫びが木霊した。

 

「シルヴィの薄情者ーーーーーー!!!」

 

◆ ◆ ◆

 

魔法第一高校は今春休みを向かえてそろそろ終盤…。

俺は雫の好意によって小笠原諸島聟島列島 媒島にある北山家の別荘にお邪魔させてもらっていた。

まぁその前にリーナの件で女子四人から俺が悪いわけではない筈なのだがこってりと絞られ環境的に真夏で海を楽しむ筈だったがダウンし俺は冷房の効いた客室で惰眠を貪っていた。

 

「Zzz…。」

 

「八幡起きて。」

 

ゆさゆさ、と俺の体を揺らすリアクションが起こされ直前まで『アハト・ロータス・ワークス』で開発している新製品のアイディアが降りてきたことも相まって夢中になっていたら朝…惰眠を貪りながら柔らかなベッドにその身を任せていたかったが許されないらしい。

 

そのリアクションと声色は雫であることが分かっていた。

 

「んあ…?雫か。」

 

「おはよう。もう朝だよ?」

 

むくり、ベッドから起き上がると目の前には当然雫がいたがその服装が寝起きには刺激が強かった。

 

「何で水着?」

 

「なんで…って別荘に来て海があるんだから着替えるでしょ?」

 

俺の目の前にいる雫が着用しているのはこの間の夏の物と少しデザインが違う水着にパーカーは羽織っていない。

なんと言う破壊力…少しは俺の前で羞恥心というものを持って欲しい。

あ、なるほど俺男として見られていないのかもしれない。

 

「似合う?」

 

その場で一回転して水着の品評を確認しに来た。

 

「まぁ…そりゃな。似合ってる、としか言いようが無いんだが。」

 

雫が着用しているのはラベンダー色のシンプルなデザインのタンクトップ・ビキニ…通称タンキニと呼ばれるものでありそこまでいいのだがついつい俺は雫の水着姿…下半身を覆うパンツ部分は鼠径部が丸見えになりそうな程際どい物で正直目のやり場に困ってしまう程、だが雫の魅力はお尻にあると俺はそう思う。

あとその背中に当たる部分に菱形で穴が空いているのは何故なんだろうか…八幡は考えた、が分からん。

 

それに昨年よりも大人びた雫が着用するとなんとも淫靡な魅力を醸し出していた。

やはり雫が一番エロいのでは?

 

「ふふっ、そっか。ありがとう八幡。」

 

そう言って雫は俺が未だ使用しているベッドに腰かけて俺に近づいてきた。

 

「なんで座ったの…俺を起こしに来たのってこの空調の効いた部屋から外へ環境に連れ出すためじゃないのか?」

 

「それもあったけど…ううん、やっぱり変更する。」

 

そう言って雫は俺へ近づいた。

その距離はもう手を伸ばせば抱き締められる距離にまで接近している。

 

「お、おい雫…。」

 

「この三ヶ月間八幡に逢えなくてずっと不満だった。」

 

それは話し相手がいなかった、という意味なんだろうか?

 

「いや、だって交換留学だから仕方ないだろそれ?」

 

「私が寂しい、って思っているときにほのか達が一杯八幡成分を吸ってるのに…それに私の代わりに日本に来た美少女を惚れさせてたよね八幡?」

 

「またかよ…だからあれは事故だって。俺とリーナとは別にそんなんじゃない。好敵手みたいなもんだって。」

 

そうこの雫の別荘宅に来るまで先日のリーナとの件でずっと擦られ続けていたのだ。

雫は飛行に乗ったときもここにいる時も俺の隣をずっとスタンバって今現在に至る、というわけだ。

 

「このまま八幡と二人で空調の効いた部屋でイチャイチャするのもいいかも。あの時みたいに。」

 

そう言って俺に顔を近づける雫。

 

あの時…恐らくは去年俺の誕生日を雫家で祝ってくれたときだろう。

その事を思い出したのか雫の顔色が少し紅く上気してる。

いや恥ずかしがるぐらいなら思い出さないでくれよ。

俺は呆れ気味に雫を離す。

 

「あのなぁ…年頃の女の子が勘違いされるようなことを言うんじゃありません。間違いで俺が手を出したらお前の両親に殺されるわ。」

 

そう告げて優しく雫を離すと不満げな表情を浮かべて離れようとしない。

所々柔らかいところが当たって俺の理性のメンタル強度が今鋼になってる。

 

「む…なかなか強情…好きな人じゃなきゃこんなことしない…って前にも言った気がする。」

 

「ああ。聞いたことある台詞だなそれ…って頼むから離れてくれよ雫…!」

 

「つまるところ私以外の女の子がハチマンニウムを一杯摂取しているのに私は摂取出来てないから摂取させてほしい。これは私の権利で義務。」

 

なんだよハチマンニウムて…新手の健康被害が出そうな有害物質かな?

 

「ハチマンニウムは八幡からしか検出されない特殊な成分。摂取すると幸福感現れて肌が艶々になる。だけど…過剰な抱擁は中毒症状が出やすい。」

 

「例えば?」

 

「ずっとくっついて離れたくなくなる。」

 

「捨ててしまえそんな成分!!…っておい!」

 

そう言って雫が俺に抱きつく。

ちょ、ヤバイって…!水着ではあるが殆ど下着と変わらない防御力とどこがとは言わないが”成長している感じがする部分”が当てられて俺の精神値がごりごりと削られてく…っこのままだとSAN値ピンチ!になってしまう…!

 

「あ、雫!」

 

と、俺と雫で攻防を繰り広げていると部屋のドアが開かれた。

 

「帰ってこないな~って思ったら雫!それに八幡さんも離れてくださいっ!」

 

「むぅ…邪魔が入った。」

 

「助かったぜほのか…。」

 

「へぇっ?…って雫早く八幡さんから離れて!」

 

部屋に飛び込んできたのはほのかで彼女も当然だが水着を着用していた。

オレンジ色のフリルがあしらわれたセパレートタイプの水着で下着はスカートの様になっていた。

その姿を見て去年の夏…ほのかの”あれ”を思い出してしまったが気を紛れさせるために褒めることにした。

 

「ナイスタイミングだぜほのか…それとその水着似合ってるな。」

 

「えへへ…ありがとうございます八幡さん。…雫、抜け駆けしないって約束したでしょ?」

 

「不用意に寝ている八幡が悪い。私は悪くない。だから私は謝らない。」

 

プラズマチョチョウ!…ではなくて酷くねぇか雫さんよ。

 

「全く…それよりも八幡さんも着替えて海に行きましょう?せっかくの海なんですから。」

 

「うん。ほのかの言う通り。」

 

「わーったよ…着替えるから外に出てくれ。」

 

こうして半強制的に水着着替えさせられてビーチに出ることになった。

 

ビーチに出ると既にレオ達がスイカ割りに勤しんでいた。

どうやら美月がスイカ割りのプレイヤーとなってエリカ達の指示を受けていたが美月はエリカの指示を聞いて見当違いの場所を叩いていた。

 

「全然違う場所じゃねーかよエリカ、ちゃんと誘導してやれよ。」

 

俺の声にその場にいた四名がこちらを振り向いた。

 

「あ、おっそ~い。待ちくたびれて先にスイカ割りをしちゃってたわよ?」

 

「ちょっと野暮用でな。」

 

俺の目の前で腰に手を当ててポーズを決めるエリカ。

ピンクを基調としたカラーリングのビキニを着用しており出るところは出てて締まるところはキュッと締まっている体つきが美しいエリカにはピッタリのデザインの水着を着用していた。

下着部分の横がビキニなのでヒモになるのは分かるんだがその下にもう一段角度のえぐい黒い布があるのが気になった。

その黒い布は今着用しているピンクの布地よりも鼠径部のラインが際どい…ピンクの水着失くなったらそれほぼ覚悟ガンギマリ礼装じゃないか…それは言ったい何のためにあるんですか…?

 

「あ、八幡さんが来たんですか?お待ちしてました。」

 

タオルを当てられて前が見ない美月だったが声の方向…俺がいる方向を確認し体を向けている。

 

美月はエメラルドグリーンを基調としたシンプルなデザインのセパレートを着用しており、ビキニほどではないにしろ胸元の深いカットが双方の果実の主張を強調して、いつものおとなしさからは想像できないほどの艶かしさを醸し出している。

やっぱりこの中だと一番の巨峰の持ち主かもしれない。

しかし、そんな邪な目で見るのは近くにいる幹比古に悪いし直ぐ様視線を外し二人の水着を褒めることにした。

そうしないと今ここにはいないがイマジナリー小町に怒られそうだからである。

 

「ちょっとな…それよりもエリカと美月の水着とっても似合ってんぞ。」

 

「えへっ…ありがとっ。」

 

そう告げると二人は少しほほを赤らめてような顔色を浮かべていた。

 

スイカ割りを行っていたが結局エリカが美月からバットを借り受け魔法できれいに等分してしまった。

レオからは。

 

「いやいや…お前がやっちまったら意味ねーじゃねーかよ…。」

 

「スイカを砂浜に撒き散らすよりかはマシだろうな…いつ見ても見事な剣術だな。」

 

「へへっ~そうでしょ?」

 

得意気にするエリカの笑みに全員が釣られて笑った。

 

「遅かったな八幡。寝ていたのか?」

 

「ああ。ちょっとした新アイディアが降りてきてな…纏めるのに夢中になってたら朝になってた。」

 

「もう、無理はダメです八幡さん?」

 

俺たちは砂浜から上がって別荘のテラスに設置された椅子に腰かけると達也と深雪が先にいた。

 

「ごめんごめん…アイディアは熱いうちに打てって言葉があるくらいだし。」

 

「それを言うなら”鉄は熱いうちに打て”だろう?」

 

「まぁ、そうとも言う。」

 

達也とそんな会話を交わしていると雫家の家政婦である黒沢さんが俺の前にグラスに入った南国のトロピカルティーを置いてくれた。

それを遠慮無く一口を付けて飲み干す、様々な果物の甘味が広がり昨日の徹夜の疲労が吹き飛びそうだった。

 

「ふぅ…。」

 

「……(そわそわ)」

 

チラリ、深雪に一瞥くれるとそわそわしている。

当然ながら深雪も様式に則って水着を着用している。

青を基調としたレースタイプの上はタンクトップに近く下着はスカート仕様の水着でビキニほどではないが攻めすぎでない深雪と言う少女と女性の中間にある艶かしさが言い意味で霧散し可愛らしさを印象付けるデザインの水着を着用し有無を言わせない程よく似合っていた。

ここでもまた俺のなかに存在するイマジナリー小町が『早く褒めないとダメだよお兄ちゃん!』とダメ出しされた気がしたので深雪に声を描ける。

 

「深雪の水着似合ってるな。」

 

「あ、ありがとうございます八幡さんっ。」

 

ともかく無事に女性陣の水着を褒めることに成功した俺は一息吐くために再びトロピカルティーに手を付けようとしたその時だった。

 

「この音は…?」

 

別荘近くに響き渡る航空機のエンジンの音。

それは全員が気がついて達也が告げた。

 

「珍しいな…国防軍の飛行挺だ。」

 

視線の先には彩度の低い軍用機に”日の丸”が描かれた日本国防軍所属の飛行挺がこの別荘に近づいてきた。

その理由は深雪と俺以外は分かっていないだろう。

 

「仕事か達也?」

 

「ああ。だろうな。深雪達を頼む。」

 

「おう。頑張ってこいよ。」

 

そう親友に告げると深雪とともに別荘の割り当てられいる部屋へと戻っていった。

 

◆ ◆ ◆

 

翌日の3月29日、小笠原諸島父島ホテル。

ここには卒業旅行で訪れていた真由美と摩利が宿泊していた。

 

「…ん。」

 

ピピピピ、と通信端末のアラームが鳴り響きその持ち主である真由美がその音で起床しベットから這い上がるように手にとって確認する。

 

「ん…何かしら。」

 

いまだ覚醒しきっていない真由美だったが端末の届いた情報を確認するとその眠気は吹き飛んだ。

 

「暗号メール…っ!?」

 

直ぐ様ベッドから這い出して室内に設置されていた自動コーヒーマシンを起動させ濃いめのコーヒーを受けとり口を付ける。

少し強めの苦味が真由美の眠気を吹き飛ばす。

持ち込んできたタブレットを起動させ端末を接続しパスワードを入れて送られた暗号メールを解除し開封し確認すると眠気は完全に吹き飛んだ。

 

「摩利起きて!」

 

「ううん…。」

 

中々起きようにない同室の摩利を起こすためにホテルのカーテンを引き起こす。

窓から入る窓の光に強制的に起床させられた。

 

「ちょっと早すぎないか…?」

 

「もう朝よ?」

 

そう言って真由美はさっき入れたばかりのコーヒーを手渡す。

それに口を付ける摩利。

 

「にがっ…。」

 

「これを見て。」

 

そう言って真由美はタブレットを摩利へ向ける。

その寝ぼけていた摩利の意識はその内容に覚醒せざる得なかった。

 

「これは…!」

 

そう告げた摩利の言葉に頷く真由美。

 

「八幡くんにも伝えておいた方がいいんじゃないのか?」

 

「そうね…たしか八くんも小笠原諸島聟島辺りにある北山さんの別荘にいるって言ってたわね…。」

 

「都合が良いかもしれないな。準備を終えたらすぐに行こう。」

 

「ええ。」

 

◆ ◆ ◆

 

3月29日、小笠原諸島父島南楯島。

ここは観光客向けのレジャー施設と国防海軍の基地が隣接する少し風変わりな島だ。

俺たちは北山家所有のティルトローター機に乗り込み訪れていた。

その観光施設は千葉県にある某夢の国のような景観が広がっている。

そこ行く観光客は誰も彼もが楽しそうな表情を浮かべていた。

 

この時代では魔法師は自由に海外旅行をすることは許されていないためこのように日本国内にこのような観光施設を作りなんちゃって南国気分を味合わせよう、と日本政府が苦肉の策としてだろうが…。

とりあえず俺たちはこの南の島を味わうことにした。

女子達は買い物を堪能し男連中は女子の荷物持ちとして随伴する。

まぁ女子の買い物の長いこと長いこと…仕方がないと言えば仕方がないのだが幹比古に至ってはちょっとバテていた。

もうちょっと体を鍛えような…。

 

「ふぅ…歩いた歩いた…。」

 

買い物が一段落し施設すぐ側の広場にある植木の花壇に腰を掛けるエリカ。

俺たちもそれに続いて一休みする。

 

「こんなに荷物持ちさせやがって…自分で持てる量を買えよな全く…。」

 

「ほしいものがあったんだから仕方ないでしょ?」

 

そう言うエリカは楽しそうにしている。

それは他の女子にも言えることで楽しそうにしている。

 

「ふーん…あっちが海軍基地の本丸か…。」

 

それにレオが反応した。

 

「基地とモールが陸続き…ってか人工地盤続きって訳じゃねーんだな。」

 

「こっちも一応軍の施設とはいえ軍の基地の余剰生産力を使った民間向けの施設と本当の意味の基地とじゃ一緒には出来ないよ。」

 

幹比古のいうことには一理ある。

 

「まぁ確かに日本は島国だし海上拠点は必要だろうな…お隣や海の向こう側から攻め入られない、ということは絶対にないからな。だったらそう言った場所を作ることも加味しながら防衛拠点は利にかなってる。」

 

俺がそう言うとレオをと幹比古は苦笑していた。

む、この場で言うことじゃ無かったかもしれない。

 

「吉田くん~、レオくん~、八幡さん~。そろそろお昼にしませんか?」

 

遠くから美月の呼ぶ声が聞こえたので振り返ると女子組は広場入り口に集合していた。

その呼び掛けにレオが立ち上がり腹を撫でる。

時刻的にはちょうど昼食を取るのにちょうど良い時間だった。

 

「おお。ようやくか…待ちくたびれたぜ。」

 

それに続けと幹比古が立ち上がり俺もそれに続こうとしたが不意にポケットの端末が震える。

 

「なんだ…?」

 

端末を開くとそこには姉さんのメール…暗号通信だった。

 

「なんで暗号通信…?」

 

俺は怪訝に思いパスワードを入れて解除し中身を確認すると俺の眉をひそませるには十分な内容だった。

 

「八幡さん、どうされたのですか?」

 

続いてこない俺を見て深雪がわざわざ駆け寄ってきていたのに気がつかず思わずどもってしまうがこれを知られるわけには行かなかった。

 

「ああいや…、すまん先にみんなで昼食を取っててくれ。少し用事を思い出したんだ。」

 

「え、八幡さん?」

 

「少し時間がかかるから発着場で合流しよう。じゃっ。」

 

「あっ…。」

 

俺はかなり強引に深雪達の集まりから俺は素早く離れ人混みと軍施設に向けて《瞳》の力を発動させて駆け出した。

周囲を探るように見渡す。

目的の人物は直ぐ様見つかった。

俺は建物の影に隠れ施設内の魔法使用感知装置を欺く為【偽装工作】を展開しその対象人物に接近するため《次元解放》を使用し跳躍した。

 

◆ ◆ ◆ 

 

少女は”逃げろ”といわれて施設を飛び出した。

息を切らせて着の身着のままその施設から飛び出す。

施設内が慌ただしくなって銃を持った大人が少女を追いかける。

 

追いかけられたことで本能的に逃げることを選択した。

だけれども体力の無い少女は直ぐ様銃を持った大人に捕まりそうになる。

 

「……っ!」

 

足音がもうすぐ側までやってきているのが聞こえる。

銃の動作音が耳には入り動いている足がすくみ動けなくなりそうだったけれども必死で動かした。

伸ばす手が少女を掴もうとしたのを理解した。

もう、ダメだ。そう少女が思ったその瞬間その気配は霧散してしていた。

思わず足を止めて後ろを振り返るとそこには地面に倒れ込む軍服を来た大人達、そして立ちはだかるように一人の少年が居たのだ。

 

「…。」

 

くるり、とその場で回って顔を見せてくれた。

目付きは怖いけれどその見つめる眼差しはとても暖かく優しい視線が少女に突き刺さる。

思わず少女は少年に問いかける。

 

「…わたしを…助けてくれる…ですか?」

 

そう少女が問いかけると頷き手を伸ばす。

 

「ああ、お前さんがそう望むのなら。」

 

少女は手を伸ばし少年が手を取る。

抱き寄せられその瞬間少女の視界が海軍基地の倉庫から切り替わり自家用機の座席に座っていたのだった。

 

「…???ここは…?」

 

「大丈夫だ。」

 

少女はその少年の言うことを素直に聞き入れてしまうほど安堵していた。

 

◆ ◆ ◆

 

「八幡遅いわね…何をしてんのかしら。」

 

レジャー施設内に併設されているフードコートで食事をしているエリカ達。

食事を先に取るように、と指示を受けたが少し待っていたが何時まで待っても来ないため仕方なく先に食事を取っていた。

各々好き好きに店の料理を注文し舌鼓を打っていた。

其々が食事を食べ終えて食後の飲み物を飲みながら雑談を交わす。

 

「美月も達也くんも来年度からは新学科…それに幹比古は転科かぁ…。」

 

その雑談の内容は4月から二年生になる其々の学科の変更だった。

 

「ミキは一科生かあ」

 

それに反応した幹比古。

 

「ねえミキ?晴れて『ブルーム』になった感想はどう?」

 

「やめてくれよエリカ。別にブルームとかウィードとかおもってないから…ってどうしたのレオ?」

 

会話に参加していないレオの挙動をみた幹比古が問いかける。

 

「なんか…外が殺気立ってないか?」

 

レオの台詞にエリカと幹比古が反応し外を見る。

そこには”MP”と書かれた腕章をつけた憲兵が施設内を巡回監視していた。

 

「基地で脱走兵でも出たんだろうか…?」

 

「にしてはちょっとヤバイ雰囲気ね…雫、早く別荘に戻った方が良いかも。」

 

幹比古に反応したエリカが答える不味いと感じ取ったエリカが雫に提案すると頷いた。

それに呼応するように全員が素早く座席から立ち上がり店を後にした。

 

空港に到着した雫達。

異変に気がついた雫が声を上げた。

 

「あれ?タラップが開いている…?」

 

出掛ける前に閉めた筈なのに可笑しい、と思った雫は機内に乗り込むとそこには見知った顔が既に搭乗していた。

 

「八幡戻っていたんだ。」

 

そこにはリクライニングの座席を倒して寛いでいる八幡の姿が。

 

「ああ。連絡を入れるの遅れて悪かったな。今さっき用事が終わって戻ってきたところだったんだ?少し疲れてな…先に休ませ貰ったんだ。それにしても随分と早いご帰宅だな。何かあったのか?」

 

「ちょっとね…施設の方で憲兵達が脱走兵を探しているみたいで。」

 

「物騒だな。ならさっさと別荘に引き上げた方が正しいな。」

 

「うん。わたしもそう思う。…所でその女の子は一体…どなた?」

 

全員の視線がその者に突き刺さる。

 

「……っ!」

 

その者は八幡の腕に抱きつき体を隠すように八幡の後ろに移動した。

 

「ああ。実家からの仕事でな…”この子を迎えに行け”って言われてな…だからさっきみんなから離れたんだ。大丈夫だ。みんなお前さんの味方だよ。」

 

「…うん。」

 

優しげに語り掛ける八幡の姿に全員が見入っていた。

 

そのやり取りを行っている最中に自家用機に最後に搭乗したのはレオでタラップと入り口を閉じるボタンを操作する。

次の瞬間に軍用のジープがエンジンを唸りを上げて近づいてきてるのが分かった。

そのジープは直ぐ様北山家所有の自家用機の隣に停車し威圧的な声を上げた。

 

「機内を改める!そこの自家用機タラップを降ろせ!」

 

横暴とも言えるその言い方にエリカが反応していた。

 

「あいつら…。」

 

「あ、エリカ…?」

 

そう言って立ち上がりタラップ昇降口に歩き出す。

八幡はその光景を見て立ち上がり後を追う。

 

「おわっ。」

 

レオを押し退けタラップの操作をして扉を開くエリカ。

押し退けられたレオに八幡は声を掛けた。

 

「ちょっとレオは後ろに下がってくれ。」

 

「ん?何でだ?」

 

「あのトラブル娘が余計なことを言う前に止める必要があるからな俺には。」

 

そうレオを会話する八幡を尻目にエリカは憲兵と会話をしていた。

 

「何のよう?」

 

タラップが解放されそこに立っていた人物を認識した憲兵は驚愕の顔色を浮かべる。

 

「げっ!エリカお嬢さん…!?」

 

「あんた達この飛行機に何の用?機内を改める、って言ってたけど」

 

そう問い詰められた憲兵は良い淀んでいた。

 

「いや、その…基地内の病院から特殊な患者が脱走したらしくてですね…。」

 

(特殊な患者ね…よくもまぁそんなことが言えたもんだ。)

 

その話を聞いて八幡は思うところがあったが口を出さなかった。

 

「らしい?」

 

その曖昧な返答にエリカは切れた。

 

「あ、はいそう我々は聞かされています。」

 

対峙している海兵は冷や汗を浮かべている、見ていると可哀想だなと八幡は思い苦笑した。

 

「この飛行機には乗ってないわよ。」

 

エリカはきっぱりと言い切った。

 

「いや、しかしですねお嬢さん一応探させていただかないと…自分も仕事ですので…。」

 

エリカは威圧感たっぷりに腕を組んで上からの場所できっぱりと告げた。

 

ここには居ないって言ったでしょ?それとも…あたしの言葉が信じられない?

 

完全に二人の海兵はエリカの放つ威圧感に完全に呑まれていた。

それを見かねた俺はエリカを退けた。

 

「すみませんね憲兵さん達。どうぞなかを改めて貰って構いません。」

 

「ちょっと八幡…!さっきの子…。」

 

小声で詰め寄られエリカに睨まれた八幡だったが不敵な笑みを浮かべていた。

 

「大丈夫、任せろ。」

 

「そ、それでは失礼する…!」

 

八幡が許可が出た海兵達の顔色は戻った。

二名の憲兵は北山家の自家用機の中に入り込み座席にお手洗いに貨物室を検分していた捜索するとこ数十分、結果として探していた人物は見つからなかった。

 

「きょ、協力感謝する。」

 

「ええ。ご苦労様でした。」

 

八幡はタラップから降りる憲兵を見送ると操作しタラップを閉じて室内に戻る。

同時に自家用機が飛行場が飛び立つ。

 

「なんだよエリカ…そんな不貞腐れた顔して。」

 

室内に戻るとエリカが不貞腐れて窓際に頬杖を付いていた。

 

「べつに?なんでもないわよ。」

 

「あのな…あの人たちだって仕事でやってるんだから顔を立ててやらんと…知り合いなんだろ?」

 

「だからって…さっきの子がいたのに…ってどうしてあの子が見つからなかったの?」

 

エリカがなにかを言おうとしていたが頭に疑問符を浮かべていた。

 

「確かに…どうして?」

 

雫が頭を傾げているのを見た八幡は思い出したかの様に左腕を持ち上げフィンガースナップを行う。

パチン、した音が響くと魔法が解除される。

 

「うそ…!?」

 

空間が割れるように八幡の右腕にくっついたままの目が隠れた少女が現れた。

その光景と自分達が今までその少女の事を知っていた筈なのに”認識していなかった”事に驚いた。

 

「中に入れたところで見つけられなきゃ意味がないからな。だったら下手に断って押し入られるよりこちらの方が建設的だろ?」

 

手をヒラヒラさせた八幡。

精神干渉系統で認識を逸らし『偽装工作』で少女を海兵から見ればスーツを着た男性にしか見えなかったのだ。

 

「一先ず別荘に戻って話を聞くとしよう…話してくれるか?」

 

そう八幡が問い掛けると少女は頷いた。

 

「悪いが雫。事後承諾で悪いんだけどこの子を別荘に連れていく許可をくれ。」

 

「うん、分かった。」

 

「とりあえず別荘に着くまで時間があるとりあえず座ろう。」

 

「はい。」

 

飛行場から飛び立った自家用機は一路別荘へと飛び立ったのだった。

 

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