俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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chapter3:南盾島強襲

同日3月30日。

媒島 北山家別荘桟橋。

 

姉さん達が乗ってきた七草家の自家用機に雫、ほのか、美月、渡辺先輩、九亜、姉さん達を乗せて別荘から飛び立ったのを確認し俺達はクルーザーが停泊している桟橋に向かってた。

 

「エリカそれは何?」

 

エリカの肩には打刀程度の大きさの竹刀袋が掛けられてた。

 

「ああこれ?大蛇丸のダウンサイジングバージョンの『ミズチ丸』。雫に頼んでこっそり持ち込んでおいたんだ。」

 

「相変わらずねエリカ。」

 

「用意がいいって言ってよ深雪。」

 

そういって飛び乗るようにクルーザーに乗り込むエリカ。

レオもレオで『レグルスパーク』とアミュレット一式を持ち込んできたことに呆れを隠しきれていない俺を見て達也が「まぁまぁ…」という表情を浮かべていたのが印象的だったが。

桟橋で見送りに来ている深雪と幹比古に言葉を掛けた。

 

「それじゃ留守番を頼む。」

 

「はい、八幡さんもお兄様もエリカ達もお気を付けて。」

 

深雪達の見送りを貰い俺はクルーザーを操作して南盾島へと向かうのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

時を同じくして大平洋上空。

 

七草家所有自家用機内は和気藹々とした会話が繰り広げられていたが真由美が機の外を見て異変に気がついた。

 

「どうした真由美?」

 

摩利が声を掛けて真由美は立ち上が動揺が広がらないように小声で話す。

 

「うちの自家用機に近づく機影があるの、操縦席に行くからよろしくね。」

 

「…っ、わかった。」

 

摩利の席から離れて操縦席へ向かう真由美。

入室と同時に運転を任せている竹内から声を掛けられた。

 

「お嬢様。」

 

同時に接近していると思われる機影から通信が入った。

 

『JA85942 当機の指示に従い南盾島空港へ着陸せよ。』

 

自家用機を日の丸を付け南盾島基地より発進した国防軍の正式採用戦闘が3機が取り囲むように随伴し着陸するために戻れ、と指示を出していた。

 

「お嬢様どういたしましょう。」

 

竹内は淡々と驚く素振りも見せずに真由美に問いかけるが…。

 

「無視してください。」

 

そうにっこりと笑みを浮かべて指示を出した。

返答せず飛行を続ける七草家の自家用機に再度の指示が入る。

 

『JA85942 こちらの指示に従え!』

 

語気を荒げて命令をしてくる戦闘機のパイロットに真由美がうんざりしながら返答することにした。

竹内よりヘッドセットを預かり装着し返答する。

 

「仕方がないわねぇ。…こちらJA85942 誠に申し訳御座いませんがご指示には従いかねます。ここから南盾島に戻ったのでは燃料が足りませんので。」

 

『ふざけるな!!』

 

「~~っ。」

 

戦闘機のパイロットからの怒号に思わずヘッドセットを装着していた真由美は耳を押さえた。

戦闘機が自家用機の頭上を押さえるように移動し後ろへ回り込んだ。

 

『羽田に向かうより南盾島へ向かう方が近いだろう!』

 

戦闘機のパイロットも言うことは最もではあるが今南盾島に戻れば着陸した瞬間に突入され九亜は奪われ乗客の安全も危険にさらされることは真由美も理解していたので其らしいことを告げて誤魔化そうとしたのだが…。

 

「生憎と追加の燃料代を用意しておりませんので東京に帰れなくなってしまいます。」

 

おしとやかにあくまで下手に出ていたが向こうも我慢の限界なのか最後通達をしてきた。

 

『JA85942 改めて勧告する、当機の指示に従え。』

 

「ですから燃料が足りないと、」

 

真由美が燃料が足りない、と告げると後ろへ回り込んだ戦闘機がエアブロック上部に搭載された30㎜機関砲のセーフティを解除し前方にいる真由美達の機体へ威嚇射撃を開始し機体をスレスレに通り過ぎた。

通り過ぎた弾丸を真由美はそれを強化ガラスによって覆われている天井から見ていた。

威嚇が通用した、そう思った戦闘機のパイロットは先程までの苛立ちが消え去りこちらに優位になったと淡々と命令していた。

 

『JA85942 これは警告で次は命中させる。我々は本気だ。』

 

「はぁ…。それは困りましたね。」

 

真由美は溜め息を吐いて目蓋を閉じて彼女の特有のスキルである『マルチスコープ』は発動させる。

自家用機を中心として取り囲んでいる戦闘機の場所を空間把握する。

続いて左手首に着けたブレスレット型のCADを操作した。

 

コンマの狂いもなく戦闘機の真下、起動式が起こり『魔弾の射手』が発動した。

発動した魔法が海水を利用し巨大な氷柱が戦闘機へ襲いかかる。

貫通させる威力はないが戦闘機を大きく揺らし動揺させるには持ってこいであった。

 

『うわああっ!!』

 

真由美はヘッドセット越しに攻撃を受けた戦闘機のパイロットの悲鳴が聞こえて囲んでいた隊列が崩れるのを確認した。

 

逆に今度は真由美がこの状況でのアドバンテージを獲得し無慈悲に告げた。

 

「今のは威嚇です。次は貫通させます。」

 

『…っ!』

 

戦闘機パイロットの息を飲む声が聞こえた真由美は駄目押しをした。

 

私は本気ですよ?

 

後方いる戦闘機に向けて視線を向けながらそう言い放つと出撃した3機の戦闘機は機動を変えて南盾島基地へ帰還するのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

南盾島民間用停泊所。

停泊したクルーザーをあとに”野暮用”を終わらせて戻ってくるとエリカ達が寛いでいた。

 

「さてと…エリカにレオ。二人はこれに着替えてくれ。」

 

大きめのバックパックをクルーザーの床においた。

おもむろにチャックを開いて中身を取り出し確認するとエリカが若干引いていた。

 

「ねぇ八幡…これってどこで手に入れたのかな…?」

 

そう問いかけるエリカに俺はこう答えた。

 

「さっき出掛けたのは南盾島の憲兵詰め所を襲、」

 

「いや、いい。てか言わないで…。」

 

俺がその答えを告げようと思ったが遮られてしまったの告げずに話題を変える。

まぁ、実際さっき憲兵詰め所に忍び込んで制服を奪ってきただけなんだがな。

そんなことを思っているとレオとエリカがそれぞれの個室に入り着替えをしているところに今度は達也に手渡すアイテムを背中に着けた『ナノトランサー』から取り出そうとしたが自前で持ってきていた。

仕方がないので俺が装着することにする。

え、《グレイプニル》じゃないのかって?救出の案件にあれを使うのは過剰戦力過ぎる。

 

「達也には魔法研究所に入って俺の援護をしてくれ。」

 

ナノトランサーから取り出したのは縦長の結構大きめのスーツケース。

中身をそれを見た達也は俺へ問いかける。

 

「…一般のナノトランサーでもここまで大きなものは入れられないはずだぞ?それにブラックボックス化したシステムが搭載されている筈だから兵器の類いは格納できない…まさか八幡ロックを解除したのか?」

 

「そこはまぁ平和的な利用、ってことで。」

 

「…それでこれは?」

 

呆れた表情だったがスーツケースの中身が気になるようで教えてやった。

達也が使用していたムーバル・スーツの様に全身を覆う戦闘服が格納されており違う点と言えば頭部が双貌が空洞で骸骨のようなものではなく単眼のモノアイが特徴的だ。

 

「お前が横浜騒乱で使ってたムーバル・スーツ、ではなく俺が試しに開発した強化外骨格スーツの試作品だ。」

 

「なる程な。」

 

俺が用意したスーツケースの上部に付いているボタンを押すと変形し簡易的なメンテハンガーへ変形し固定される。

達也は上着と下を脱いで下着姿になると体を預けるようにするとスーツが自動的に解放され達也の体へ装着をされていく、あ。某クソ映画のようにメットが外れなくなる、ということはないので安心してほしい。

そのような機能を付けないことに、本当に申し訳ない…。

 

装着が完了し手首や首元を確認する。

 

「着心地はどうなんだ?」

 

「まぁまぁかな。それにこのスーツには外付けの試作品の想子バッテリーを装着と飛行デバイスを装着してるからこっから本島の手前まで本人の想子保有と合わせれば余裕で戻れるくらいの能力がある。」

 

「すごいな。」

 

「それに本人の新陳代謝向上と回復治癒魔法の能力向上と術式が体全体に刻印されてるから少しの傷なら回復できるようにしてる。」

 

「…これ軍に納入しないか八幡?」

 

「未だ試作品だ、完成形じゃない。」

 

「そうか…。」

 

達也が非常に残念?そうな表情を浮かべているように思えた(マスク越しなので当然わからないが)。

そしてちょうどいいタイミングで先に着替えが終わってレオが個室から出てきて数分後にエリカが出てきた。

達也と俺の姿に驚いていたが用意したもの、と告げると納得していた。

 

「なるほどね…ねぇ八幡?」

 

「あん?」

 

「どうして憲兵の格好なのに私のこれ、この格好なのかなぁ?」

 

「この格好…って良く似合ってるじゃないか?不満か?」

 

そう告げるとちょっぴり嬉しそうにしているエリカだったが直ぐ様質問に切り替わる。

 

「じゃなくって!…どうしてあたしはこの格好なのよ。」

 

そういって腰に手を当てて自分の着替えた姿を見せてくるエリカ、別段おかしな事はないと思うのだが…。

防護ヘルメットにオリーブドライの軍服に『MP』と掛かれた腕章、下に身に付けているのは女性用のハーフカーゴパンツにオーバーニーソックスにブーツ、特段おかしな事は無い筈だが?

 

「女性用の制服がそれなんだろ?知らんけど。」

 

ひとまずはエリカの服を置いておいて。

エリカ、レオ、達也の端末に研究が行われている場所の地図を送信し俺と達也で先に潜入して九亜達と盛永女史を施設より脱出させて保護を頼んだ。

 

俺と達也は研究施設へ潜入をするために飛行魔法で向かった。

 

◆ ◆ ◆

 

同時刻、南盾島近海。

USNA所属原子力潜水艦『ニューメキシコ』

 

潜水艦前部ハッチが解放され準備の整った水陸強襲揚陸挺が発進する。

その内部に搭乗しているシリウスが潜水艦を臨時司令部として確認するために通信をする。

 

「司令部、島周辺に民間人は残っていませんね?」

 

『こちら司令部、島内への民間人の姿は確認できず。』

 

その返答を確認しシリウスは作戦開始の合図を告げた。

 

「予定どおりですね…それでは作戦開始!」

 

『Yes,MA'AM!!』

 

シリウスの号令と共に勇いい返礼が返ってくる。

別動隊として動くカノープスとラルフがスラスト・スーツを着用し搭載された飛行魔法で飛翔する。

水陸強襲揚陸挺を吐き出したニューメキシコは潜水を開始した。

所定の位置に付いたシリウスは揚陸挺のハッチを解放して専用CADを東部基地へ銃口を向けた。

 

同時刻、南盾島海軍基地。

発令所では警報が鳴り響いていた。

国籍不明潜水艦が領海侵犯をしていたからだ。

 

「…貴艦は我が国の領海を侵犯している。直ちに浮上し艦名と国籍を明らかにせよ!」

 

オペレーターとして下士官が問いかけるが向こうの潜水艦は問いかけに応じる気が無いようであった。

 

「繰り返す!国籍不明艦直ちに浮上せよ!」

 

オペレーターは再度に渡っての問いかけに応答する気がない不明艦から視線をはずして指令へ体を向ける。

 

「駄目です司令!通信に応じません!」

 

その事を聞いた南盾島海軍基地司令は指示を出す。

 

「防衛陣地対潜ミサイル起動。」

 

「撃沈するのでありますか?」

 

「まずは威嚇からだ。管制官、至近弾照準合わせ!」

 

基地司令の号令共に発令所が世話しなく動き始める。

命令と共に管制官達が基地に配備された対潜ミサイルランチャーの設備を立ち上げ照準を定めた。

 

同時敵基地の装備群がアクティブになった、という情報が揚陸挺に搭乗しサポートするハーディーが確認しハッチから顔を出すシリウスにデータ転送を行う。

 

「ロケットランチャーの起動を確認、衛星映像を転送します。」

 

シリウスの装備しているスラスト・スーツのHMDに映像が投影され手に持った専用CADのロックオンシステムと連動した。

 

「映像を確認、敵中央ロケットランチャーを照準。」

 

HMDのターゲットサイトが照準を捉え合わせたことを確認できターゲティング完了の効果音が鳴り響きシリウスは読み上げを完了する。

次の瞬間にシリウスは専用CADの引き金を引いて起動式を起こし魔法を発動させた。

 

「【ヘビィ・メタル・バースト】発動。」

 

ロックオンされたミサイルランチャーを起点としUSNA最強の魔法師アンジー・シリウスが用いる戦略級魔法で重金属を高エネルギープラズマに変換し気体を経てプラズマ化する際の上昇圧力と陽イオンの斥力を使用し照射地点が爆心地になりそこから広範囲にばら蒔く魔法…【ブリオネイク】を使用していたときとは打って変わりプラズマが広がっていく。

 

何千度にも熱せられた金属が海へ流れ落ちると巨大な水蒸気が巻き上がったのをシリウスはヘッドギア越しに見ていた。

それを上空で見つめる二人の兵士、一人はこの場所に似つかわしくない高笑いを上げていた。

 

「ウヒャヒャヒャハッ!!総隊長これまた派手にやったもんだ!」

 

眼科には無惨に爆惨した基地の防衛施設が全滅し煙を上げて炎を吹き出し雲が出来て青白い雷…プラズマを放出している。

 

「ウヒャヒャヒャ!」

 

「ラルフ、その高笑いをやめろ。」

 

「ですが隊長どうします?このままじゃ俺達も突入できませんぜ?」

 

眼下に広がる惨状を見てカノープスもそれには同意した。

 

「確かにな。」

 

◆ ◆ ◆

 

達也と分かれ別方向からの潜入を試みようと思った矢先に島全体が揺れに包まれた。

地震か…と思ったがどうやら違うようでその方向に目を向けると南盾島海軍基地がある方向…東部の基地防衛がある場所に雲が立ち上がりその中で青白い光が稲光の如く鳴り響いているのが見てとれた。

俺はその魔法について知っていた。

 

「今のはリーナの【ヘヴィ・メタル・バースト】…どうしてリーナ達USNAの魔法師部隊スターズがここに来てんだよ…!?」

 

俺は背中に装備した打刀『漆喰丸』を抜いてその光景を見ながらこれを好機、と捉えた。

 

「シリウスが軍を引っ掻き回してくれているから潜入はしやすくなってるが…未だ民間人がこの島に残ってることを知らないのか…?」

 

余計なことを考えさせずに自軍に利益をもたらすのは何処の軍も一緒だろうがその事を後に知ったリーナは恐らく、壊れてしまうだろう。

 

「ちっ…どうにか後でリーナを止めないと。恐らく目的は研究施設の破壊、関係者の殺害か。」

 

俺はその騒乱に乗じて基地施設の守衛室を確認し突入、憲兵達を無力化しゲート解放用のカードキーを奪って基地内部へ侵入することにした。

 

基地内部を疾走する。

先程の騒動で兵士達が突撃銃と耐弾アーマーを着用しそれぞれのセクションを守護していたが途中途中で兵士達が廊下に崩れ落ち至るところから出血し崩れ落ちているのが見てとれたが恐らくは達也の仕業だろうと。

 

俺は独房エリアへ向かうと兵士が数名いる場所を通りがかって瞬時に俺の存在に気がついて銃を向け飛翔する特殊成型のハイパワーライフル弾がこちらに向かうが俺には通用しない。

 

「「ぐぁぁああああっ!?」」

 

向かってくるライフル弾を全て切り落とし武装と手足の健を断ち無力化する。

兵士達が守っていた重厚な扉を『漆喰丸』で両断すると薄暗い室内には妙齢の女性が監禁されているのを確認できた。

《瞳》を使い確認する、間違いなく彼女が九亜を逃がした盛永女史だった。

 

「っ!あ、あなたは…。」

 

怯える盛永女史に説明をする、時間が惜しかった。それに正体を知られるわけには行かない。

 

「九亜に頼まれて助けに来た。脱出する、『わたつみ』シリーズの娘達は今どこにいる。」

 

「っ!九亜を知っているの?彼女は無事なの!?それより貴方は?」

 

「無事ですよ。彼女は七草真由美に保護されて今は東京に着いている筈です。俺は彼女の使いだ。」

 

七草の弟、とばらすには少しリスキーだったので半分本当と嘘を混ぜて話させて貰う。

 

「それよりも貴女がここにいる、ということは九亜を逃がしたことを知られてしまったからか?」

 

盛永さんは首を横に振って否定した。

 

「いいえ。でも実験体に逃げられた、ということで処分されるには十分な結果です。」

 

「私は七草真由美と九亜から貴女と残る『わたつみ』シリーズ救出を依頼されています。」

 

「あの子達を助けてくれるんですか!?」

 

俺は頷くと盛永女史は俺へすがり付くように懇願してきた。

 

「お願いします!私たちの事はどうなってもいい…!あの子達を…助けてください!」

 

俺は盛永さんがなぜこんなに懇願した理由を聞きたくなった。

 

「どうしてそんなにあの子達を心配しているのにそんな馬鹿げた実験を強行したんですか?精神の強制リンクなんて絶対にろくでもない結果を産み出すだけしょう?」

 

沈痛な面持ちで自分の白衣の裾を力強く握りしめる盛永女史は後悔するように呟いた。

 

「ええ。その通りです。私たちは思い上がっていたの…昨年十月、大亜連合艦隊を殲滅して見せた陸軍が所有する戦略級魔法、それに世界で初めて観測されたブラックホールを完全制御し軍司令部を消滅させた謎の戦略級魔法…『灼熱と漆黒のハロウィン』をもたらした魔法と同等の威力を持つ戦略級魔法の開発を海軍は求めていたの」

 

その答えを聞いて俺の考えはビンゴ、だったということを知り呆れた。

 

「ですがそれは私たちの罪…あの子達は犠牲者であり謂れを被る必要がない子達なんです!あの子達のためなら私はどうなってもいい…!ですから…!」

 

「…残りの八人を救出しに行きましょう。場所を教えてください。」

 

「っ!案内しますこちらへ!」

 

俺は盛永さんへ連れられ九亜達がいる場所へ向かった。

その場所へ向かう道中に兵士と戦闘があったが適当にあしらって目的地へ進む、その際にこの基地でどんな魔法が開発されていたのかを確認する必要があった。

 

「ここで開発をされていた魔法というのは?」

 

「私たちは【ミーティアライト・フォール】、隕石爆弾と呼んでいました。地球近傍に来た小惑星の軌道を操作して地球に落下させる魔法です。」

 

「隕石爆弾…。」

 

なかなかにクレイジーな魔法だな、と思った。

 

「エレベーターを使わない方がいいですね…。」

 

階段を駆け上がっていたが結構な段数があったため盛永さんが肩で息をしていた。

 

「そして今彼女達は実験中なんです…。」

 

「その実験というのは?」

 

「今行われているのは軌道離脱実験…隕石落下の起動式を反転させて現在、将来的に障害となる人工衛星を衛星軌道から外して宇宙の彼方へ吹き飛ばす実験です。」

 

しかし俺はその目的に合点が行かなかった。

 

「普通人工衛星ってのは大気圏突入の際に燃え尽きるように設計されてる筈ですよ。そうじゃなきゃ地球の周りはごみだらけのスペースデブリの星だ。そんな人工衛星をわざわざ衛星軌道上から退去させるさせるなんていったい貴女達は何を実験台にしようとしていたんですか?」

 

階段を上り研究所がある場所へ踏み入れるとそこは混沌としていた

研究員達は悲鳴を上げてコンソールはエラーと警告音が鳴り響く地獄と化し「俺は悪くない」「私は悪くない」「再設定が出来ない」と言ったマイナス要素しか聞こえてこない。

 

急ぎメインコンソールへ近づきその原因を知り俺は驚く他無かった。

 

「今回の標的は…USNAの廃棄戦略軍事衛星、『セブンス・プレイク』…」

 

コンソールを確認しそのやばさが伝わる。

大戦中に建造され終結ともに廃棄された軍事衛星でありその機体内部に劣化ウラン弾を六十トンを抱え外装部には対地ミサイルが三十発搭載されたままであり魔法式の軌道変更だけで発射される可能性すらあり世界大戦の口火を開くには十分すぎる火力を持っていた。

 

混乱の最中俺の肩を叩く奴がいた、振り返るとムーバル・スーツを纏う達也の姿が。

 

「情報を見たな?」

 

「ああ。とんでもないことをしてくれやがってって感じだが…。」

 

既に起動式が発動し魔法が行使されていた。『セブンス・プレイグ』が落ちてくるまであと二十四時間しかない。

 

「これはいったい何事ですか!?」

 

「…盛永くんか。」

 

「所長!まさか実験に失敗したんじゃないでしょうね!?」

 

「間も無く、『セブンス・プレイグ』は落ちてくる。」

 

メガネを掛けた白髪頭の初老の男性が力無くそう答えた。

 

「っ!!だから言ったじゃありませんか!!本来十二人で行う筈の実験を八名で行うことが無理だったと!」

 

「実験の準備に瑕疵はなかった…、実験は完璧だった今回のデータは次回実験に大きく役立つだろう。」

 

「っ!?ふざけないで!次なんてありません!いい加減にしてください!」

 

盛永さんにそういわれた博士は力無くメインコンソールのキーボードを叩く。

 

「…予期せぬ結果になったのは想定外の爆発…防衛陣地に大規模な魔法攻撃の影響で起動式が狂ったんだ、無法な侵略者のせいだ。」

 

「そんなことで魔法式が狂う筈がないでしょう!?」

 

「…私は悪くない…私は……ぶほっ!?」

 

「えっ?」

 

俺は気付けば博士を殴り飛ばして近くにあったコンソールへ激突させる。

 

「たった一人の魔法式に精神リンクした魔法式が狂わされるわけあるかこのハゲ。」

 

「うぐっ…な、なんだね一体…!?」

 

胸ぐらを掴み博士を持ち上げる。

 

「そもそもにおいて実験が完璧なんてのがあり得ない。研究員はその事をリスクマネジメントしながら魔法開発するもんなんだ『俺は悪くない』『相手が悪い』?そんなことを言っていいのは小学生の夏休みの宿題までだってわかんねぇのか?お前が言う魔法式が完璧なら他者から妨害される筈ないだろ…それに手前が作ってたのは大量の命を奪う戦略級魔法だ!貴様のその『私の魔法は完璧』っていう思い込みで世界大戦の撃鉄を起こすか貴様…っ!」

 

「……っ!?」

 

俺の言葉が止めになったのか黙ってしまい投げ飛ばす。

そのまま気絶してしまった。

俺は達也にコンソールからデータを引き出すようにアイコンタクトして下の階を見下ろすためのガラスを魔法で消し去った。

俺はこの場にいる研究員に警告するために上空へ《グラビティバレット》を発動し機材を破壊し地面へ激突させる。

「見世物ではない」、その意味を感じ取ったのか一斉に研究員が逃げ出す。

盛永さんは下のフロアにいる九亜達を救う手伝いのために外へ出たのを確認し俺は達也とアイコンタクトを交わして崩した窓から飛び降り着地した。

着地し巨大CADの制御装置を操作して中に格納されている九亜達の同族を助け出す。

騒ぎを聞き付けた兵士を早撃ちの要領で《グラビティ・バレット》を叩き込み無力化する。

 

「四亜、四亜!」

 

一人男性職員が排出した機器の座席にぐったりして意識が消えている少女に四亜、呼び掛けている。

《瞳》で視認すると完全に意識が融合してしまって廃人と、言っても差し支えないレベルだった。

 

「退いてくれ。」

 

男性職員をどかして《物質構成》で意識が融合する前の状態に戻すと目を開けた。

 

「誰…?」

 

警戒心を露にして俺を見つめる九亜にそっくりな少女、こちらの少女の方が年相応の情緒をしているようだ。

 

「九亜に頼まれて助けに来た。」

 

「九亜が…?」

 

「ああ。君たちを助け出してほしいってな。」

 

四亜は疑いの視線で俺を見る。

 

「…出来るの?」

 

「ああ。俺なら出来る。」

 

四亜は確かな足取りで抱きついて上目使いで俺を見た。

 

「なら、お願い…助けて!」

 

俺は達也に強化外骨格に搭載されている通信機器を使用し声を使わずに連絡する。

 

『達也。』

 

『この声は…八幡か。』

 

『ああ。俺はこれから九亜達の仲間を連れて脱出する。お前はそっちで『セブンス・プレイグ』の落下予測の計測データとこの基地で行われていた研究データの破壊を頼む。』

 

『予測データ、って八幡あれをどうするつもりだ?』

 

『壊すしかないだろ。』

 

俺の回答に絶句していたが世界大戦を引き起こすよりましだろう。

 

『分かった。こっちの方は任せておけ。そっちは九亜達の脱出を。』

 

『ああ。俺も手伝いにすぐ戻る。後急げよ?この基地にUSNAが来てる。』

 

『…!?どうしてUSNAが?』

 

『大方この研究所で行われていた魔法がUSNAにとって害有るもの、って判断されたからだろ。頼むぞ。』

 

通信を切って声を掛ける。

 

「脱出だ。ここにもういる必要はない。」

 

こうして俺は『わたつみ』達と盛永さん、そして男性職員を連れて地上階へ向けて走り出した。

 

◆ ◆ ◆

 

「大丈夫?!」

 

「無事だったか!」

 

「エリカ、レオ。ちょうど良いところに来てくれた。」

 

研究所地上階へ出ると変装していたエリカとレオが姿を見せる。

二人とも怪我をした様子もなかったので安心した。

 

「合流できてよかったよ。一先ずこの子達と盛永女史達を安全な場所まで避難させよう。」

 

「わかった。」

 

「わかったぜ。」

 

レオとエリカが後ろを守り俺が先頭に立って警戒しつつ前進する。

研究所入り口、車両搬入口の坂を上るとその先から銃声と爆発音が聞こえる。

恐らくは守備隊と潜入したUSNAが戦闘を繰り広げているのだろうと《瞳》を使い人数把握を行う。

…守備隊は二十名…攻めてきているのは二人、たった二人か?

しかし、その二人はかなりの手練れらしくナイフと日本刀を持っているのは随分な日本人かぶれなメリケンだな。

 

「どうしたの?」

 

「上がったところで戦闘をしてる。」

 

「一体誰とだよ?侵入したのは俺達だけだろ?」

 

「外国からの”おともだち”のようだぜ。見てくる、エリカとレオはここで待機を。」

 

「あ、ちょっと!」

 

エリカの声を無視して搬入口付近が崩れて物陰になっていたのでそこから様子を伺うとまさに文字通り”一方的であった”。

 

弾丸を掻い潜り懐に入り込みナイフで致命傷になる部分を刺す、または切り裂いて刀を持った男は遮蔽物にしていた横転している車両を兵士事真っ二つにし生き残った兵士はナイフを持った男に殺されていた。

次第に銃声の数と悲鳴は少なくなり聞こえるのは炎が爆ぜる音と遠くに聞こえる警報音だけだ。

その光景を物陰から見ていると背後から駆け出す音と制止する声が。

 

「ダメよ!戻りなさい!」

 

四亜がレオ達の制止を振り切り出てきてしまったのだ。

ナイフを持った男が守備隊最後の男を背後から羽交い締めしてナイフで頸動脈を切り裂き鮮血が四亜の目の前で赤い花弁が咲き誇る。

咄嗟に盛永さんが目の前を覆い姿を隠そうとしたが一歩遅かったようでその声に反応しナイフを持った男がこちらを見る。

 

「ヒャハハ…ん?新手かMPになんだかおもしれぇ格好をしてるのがいるじゃねーか!」

 

「ムーバル・スーツじゃねぇ…手前ら一体何者だ!」

 

レオが前方にいる二名に問いかけるが刀を持った兵士の視線が動いたのがわかった。

その視線は俺達の後ろ…四亜達であることが理解できた。

 

「ラルフ、彼らの後ろにいる少女達が『ミーティアライト・フォール』のオペレーターだ。」

 

「へぇ…。」

 

ナイフを持った少し挙動のおかしい男が獲物を見つけた、といわんばかりに手元のナイフを弄り始める。

まるで曲芸のようだ。

 

「…ってことは…こいつら皆殺しにしても良いんですね?

 

「……やむを得まい。」

 

次の瞬間不快な笑い声が俺達の耳へ届いた。

 

ヒャハハハハハ!!グゥレイトォォォォ!!!

 

その瞬間エリカがメット脱いでレオが構える俺も背中の刀の拵に手を掛ける。

 

「盛永女史は下がっていろ。巻き込まれる。」

 

不安そうな表情を浮かべる四亜達。

 

「安心しろ。俺は言葉を違えたりしない。」

 

四亜から視線をそらし何時でも抜刀できる状態にして二人の兵士へ視線を向ける。

 

「ヒャハハハハ!まぁ早々慌てんなよ?まぁ…こっちもあんまりゆっくりしてられないんでな?」

 

ナイフを逆手に持ち異様なナイフスタイルを見せていた男が殺気を向ける。

レオがそちらに向かいエリカは日本刀を持った兵士に対峙しそれぞれが武器、魔法式を発動させると先端が切って落とされた。

 

◆ ◆ ◆

 

戦況は芳しくなかった。

レオは『レグルスパーク』を用いてナイフ使いと戦闘を繰り広げるが”人殺し”の経験の差から押されていた。

同時にエリカもカノープスと打ち合いをしていたが途中途中で攻撃を中断し普段通りの打ち込みが出来ていない。

状況を観察しながらエリカと対峙している兵士の魔法は見覚えがあった。

 

(分子ディバイダー…!これじゃあエリカと相性が悪いな…だから何時もみたいに打ち込みが出来ていないのか…。)

 

レオもレオでどうやらフェイントを織り混ぜ戦闘を得意とするタイプのようで翻弄されっぱなしだった。

状況が動いたのはレオがラルフに一撃を喰らった瞬間だった。

 

「ぐほっ…!?」

 

レオの使用していた硬化系魔法「ジークフリード」かなりのエネルギーを消耗させるため持続がさせにくく長期にしようするには不向きでありトリッキーな相手にはなおさらであった。

現に腕に着けていた武装一体型の『レグルスパーク』が切り裂かれていたのだ。

魔法が切れたことを理解したラルフは加速術式を用いて突進してきた。

 

「貰ったぁ!!」

 

ナイフがレオへ到達する、その前に俺が重力障壁を展開しようと思ったがレオの付近で二人以外の魔法が発動していることを知覚した八幡はすぐ様中断すると突進していたラルフは吹っ飛ばされ見えない壁に押し潰されカエルのようになっていた。

思わずレオも釣られるように彼方に吹っ飛んだラルフを見ながらポカンとしていたが次の瞬間に地面が割れる勢いで着地する何者かがいた。

 

煙が晴れて現れたのは巌のような漢。

そんな姿に思わずエリカも打ち合いを中断してレオと一緒の驚く反応を見せた。

 

「「十文字先輩!?」」

 

八幡は脳裏に何処でも追跡してくる某作品の黒コートのBOWを思い出していた。

 

(いや、登場の仕方よ…先輩どっかのBOWかなんすか…?)

 

八幡達の頼れる先輩である十師族・十文字家当主代理である十文字克人が現れたのだった。

 

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