と言っても触り程度になりますがよろしくお願いします。
私達はお兄様に命を救われました。
当時千葉に存在していた『総武中学校』の方が魔法進学校として名を馳せていてその進学校に進学していていてそこで悪名が広まっていた当時のお兄様の噂を小耳に挟んで不思議な人もいるものですね?と思って他人事のように関わることもないでしょうと思いましたから。
しかし、その噂をただただ鵜呑みにする気も在りませんでした。
魔法師は冷静を心掛けなさい、お姉様からよく言われていましたから。
当時、生徒会長にさせられた、いや自ら生徒会長に立候補したいろはちゃんからその事情を聞いてなんと不器用な方なのだろうと飽きれ半分尊敬半分でした。
一度その先輩と会って話してみたい、そんなことを思ったけれどもいろはちゃんに止められたりしてその少年と私と香澄ちゃんは会うこと無く二学年の冬を向かえていました。
だけどそれは運命の悪戯だったのか。
その日は丁度お迎えの車が故障した、と言うことで自宅に帰るために駅に二人で向かっていました。
学校から駅までは数キロもない距離でしたので歩いて向かうことにしたのですが突然黒塗りの車が目の前に現れ進路を遮ったと思ったら車の中へ連れ込まれました。
勿論私と香澄ちゃんは抵抗しようと魔法を発動させましたがすごく気分が悪く頭痛がした理由は思い当たりました。
私たちを拐った男の一人がキャストジャマーを発動させていたからです。
私と香澄ちゃんはその隙をつかれて首筋にチクり、とした痛みを感じて気を失って目が覚めた時に制服を破かれ下卑な殿方に純潔を散らされそうになりましたが…あら?…私たちどうされたんでしたっけ?あのとき男性達にとてつもないことをさせられそうになった、とだけ覚えているのですが…まぁ、お兄様が疾風の如く現れ腕を捻り軽々と持ち上げ投げ飛ばすその光景に安堵して気絶してしまいました。
此方を見る特徴的な瞳、その後にお兄様から告げられた言葉に私たちは涙するしかなかったんです。
どうしてそんな酷いことが出来るのか、何故他人のために動いたお兄様がこんな酷い扱いを受けなくてはならないのか悔しかったのです。
それから私たちを救ったことでお父様より七草の家に招待され小町ちゃんと一緒とお話をしてお戻りになると私たちとお兄様は兄妹なることを知らされました。
もとよりお兄様は進学校であった総武中学で入学より一位を保持し続けていて身体能力だけでなく魔法力も一流でお姉様を越える程でそれだけでなくCADに対しての造詣も素晴らしかったのです!
それに《術式解体》を使えるとは…。
その日から私と香澄ちゃんの魔法の師匠はお兄様となったのです。
出会いも劇的なものでしたが何より私と香澄ちゃん、お姉様に投げ掛けるその優しいお気持ちと眼差しで次第に惹かれていきました。
そしてお兄様が無事にご入学されその年の夏休み、ご友人の別荘へ私どもと共に招待されたその際に小町ちゃんからお兄様が虐げられた理由と事実に怒りと悲しみが沸き上がりお兄様へ対する感情は完全に”恋慕”的なものに変わったと香澄ちゃんと共にそう確信しました。
それはお兄様を慕う同学年のクラスメイト方々も同じだったようです。
夏休みを境にそれは一変したと言っても良いかもしれないですね。
お兄様は天性の人誑しで唐変木…(人の好意を受け入れられないという理由もある)それなのに女性を勘違いさせる言動と行動をさせるので好意を寄せる女性の中にお姉様も追加されていたのは流石に驚きましたが…。
それにこの間の期間中にUSNAから交換留学された女子生徒にもまた好意を抱かれて…このままではお兄様を狙うライバルが増えすぎて収拾が…。
只でさえお兄様の周りには魅力的な女性が多いですのに…私と香澄ちゃんもアピールをしているのに扱いは”妹扱い”なのは解せませんわ!
お姉様にはあんなにもどぎまぎしていると言うのに!
やはりお兄様は豊満な方がお好きなのでしょうか…?
でも雫さんにも同じような表情をしていたのを見たことがありますので私たちが”妹”だから…?
もういっそのこと私と香澄ちゃんでお兄様に攻め入るしかないのでしょうか…?
ですが今日からはお家だけでなくお兄様と一緒に学園生活が送れることを泉美と香澄ちゃんは嬉しく思います。
◆ ◆ ◆
俺達は無事に魔法大学附属魔法第一高校の二学年に進級した。
同時に一学年空くと言うことは新入学生が入学を決めた、と言うことだ。
その中には当然妹達もその中に含まれるわけで…。
と、それはともかくとして三月に姉さんが卒業して大学というテニスサークルというアレな…とそんなことになったら俺がチャラ男を殺しに行くとして。
話が逸れてしまったが入学式は2日後に控え在校生が進級並びに始業式が始まる。
当然ながらレクリエーションではなく初日から授業だ。(絶望)
そんな足取りが重くなるような出来事が発生する”学校”とやらに一年の頃からお馴染みにの光景となっている達也のクラスのメンバーと俺のクラスのメンバーが一塊になって聞いた噂によるとこの一団は名物になっているらしいがまぁそれはさて置いておいて俺は今向かっているのだが…。
「…なぁ帰って良いか?」
「…新学期早々なんだ八幡。」
「いやだってよ…始業式が始まって直ぐに授業とか…正直詰め込み教育過ぎんだろ?昭和かよ。」
「昭和…旧暦の年号だな。魔法科のカリキュラムは無理のないように組まれているはずだが?」
隣にいる達也に俺は愚痴混じりに告げると呆れられ同時に深雪からも同じ反応が帰ってきた。
そう言うことじゃないのよ達也くん?
ほら学校って青春の時間を無駄にモラトリアムに過ごす所じゃん?
あ、ダメ…魔法師にそんな時間はない。さいですか…。
「ダメですよ八幡さん?今日から二年生、それに先輩として2日後に控えた入学式で入ってくる新入生のお手本にならなくては。それに八幡さんは”七草”の魔法師なんですよ?」
「くっ…!こんなところで七草の名前が足を引っ張るとは…なぁ達也今からでも俺の名字”司波”にならん?…なんてな、って…。」
司波八幡、かそうなれば俺は”七草”の柵がなくなる…って思ったがなんか語呂悪くね?とそんなことを思っていると隣にいる深雪がその白い肌を紅潮させて頭から湯気が出そうな位で隣にいる達也は頭を押さえて天を仰いでいる。
どうしたよ達也、花粉症か?
「そ、そんな八幡さん…と、突然同じ名字にな、なりたいだなんて…その八幡さんは司波家にお婿さんに入りたいとい、いうことですかっ…いやでもわたしが七草家に嫁ぐというのも…。」
ゴニョゴニョ、となんかヤバイことを呟きながら俺に顔を近づける深雪やはりというべきかほんとに整った顔してるな…と思ったが流石に近すぎるっ!
「あ、いや冗談だからな…って!?」
勿論冗談で言ったつもりだったが俺を取り囲む女子達の目がやばかった。
「は、八幡さん!?お婿さんなら”光井”はどうですか?あ、勿論”七草”でもわたしは…。」
モジモジして顔を赤くして俺を見つめるほのかに。
「ん。お婿に来るなら”北山”が良いと思う。それにお婿に来れば仕事しなくても養ってあげるよ?それにわたし専属の魔工師になって?…私が”七草”に嫁いでも良いけど?」
何時ものように起伏が薄い表情を浮かべ…とちょっと頬がほんのり紅潮している。
てか働かずして食う飯ってうまいよな?
「道場破りして”千葉”に婿に来る?あ、でもそうすると八幡の流派的に”刀藤”になるわね…あ、あたしは…”七草”に嫁いであげても良いけど?」
はじめはカラリとしたざっくばらんな言い方だったが嫁ぐの辺りでじっとりと湿度を漂わせてきたエリカ…お前はそんなキャラだったか?妙に瞳に宿る湿度がじっとりしてる…しっとりエリカ、アリだな!(現実逃避)
これ以上の会話は不味い、という俺の警鐘を鳴らしていた。
一先ずの学校の昇降口に向かうまで俺は取り囲まれる女の子達に脇腹を摘ままれその光景を野郎達から生暖かい目、達也からはさっきの俺の発言に呆れたような表情を浮かべていた。
◆ ◆ ◆
さて、今年度より達也の活躍により第一高校には今年度より新設された学科、”魔法工学科”が追加されたことになりなった。
てか一学生の活躍で新学科追加されるとかすげぇ事やってるよ…流石お兄様だな。
と、まぁ達也を茶化すと怒られそうなので止めておくとして俺と深雪、雫、ほのかは今日から配属されることになる2-Aの教室には入りこれはまたお馴染みの顔ぶれが揃っておりいないのはリーナがいないことぐらいだろうか?
始業式を終えてそこから通常の授業を開始し昼休みに入り俺は何故か生徒会室に呼ばれていた。
その場には千代田風紀委員長がおり告げられたことに多少驚いた。
「と言うわけで司波くんには生徒会役員として副会長に就任をして貰うので八幡くんには風紀副委員長として就任して貰うのでよろしくね!」
「その話マジだったんですね千代田先輩…。」
どうも達也と俺を生徒会か風紀委員の副会長並びに副委員長に就任させるかを本人達の意向を無視して両組織トップ同士の会談があって移籍が決定していたらしい。
俺の場合は元より渡辺前委員長から「君が花音を支えてくれたらなぁ~(チラチラ)」と言われていたのでそんな気がしていたがまさか俺が副委員長になるとは思いもしなかったがまぁなったものは仕方がないか。
深雪に至っては達也が生徒会に入り実力を認められたことに喜んでいるのは良いことだろう。
今年度、無事に生徒会並びに風紀委員会の新体制は無事に出向することが出来た。
達也というある意味での特記戦力(言い過ぎではない)が抜けてしまったのでそこは千代田先輩に相談し補充要員の相談をさせて貰った。
「皆さんも知っていると思うけれども自己紹介をさせてね?達也くんが抜けた穴埋め、補充要員として八幡くんの提案もあって入員して貰うことになった2-Aの部活連推薦枠の北山雫さんと生徒会推薦枠の吉田幹比古くんが加入して貰うことになりました。二人とも改めて自己紹介を。」
そう千代田先輩から催促され俺の隣に座る二人が立ち上がり挨拶をした。
「本日より部活連推薦枠で風紀委員会に所属することとなりました2-A北山雫。よろしくお願いします。」
「生徒会推薦枠で同じく風紀委員会に所属することになりました2-Bの吉田幹比古です。よろしくお願いします。」
新年度の今日、顔合わせ的な意味合いも兼ねて生徒会室には中条先輩、五十里先輩にくっつく千代田先輩、達也に深雪、俺の隣に陣取るほのかと雫の顔ぶれが昼食会が開催されていた。
てかあれだな?
「ダメですよ?しっかりお勤めを果たしてくださいね。」
と笑みを浮かべ此方に釘を刺してくる深雪さん。
なんで俺の思っていること分かるの…?エスパー?てか俺の事好きすぎじゃない?…っていうと本当に気持ち悪くなるから止めておくことにして一先ずは生徒会室で昼食を取ることにする。
というか目前で五十里先輩と千代田先輩が俺たちが前に居るというのに人の目を憚らずイチャイチャしてやがるのが風紀委員長としてどうなんですかねぇ…風紀が乱れていませんか?エッチなのはダメ!○刑!と遠い目で見ているとほのかと雫が俺の両サイドをパーソナルスペースガン無視で距離を詰め詰めのパンパンにしてくる。
「お前も大概だと思うぞ八幡…。」
「はぁ?」
理由もなく達也が俺をサゲて来たので解せぬ。
そんないたたまれない空間も昼食時間が半分を過ぎてくると前半で新設科の話題から近々に控える入学式の話に話題は映った。
希望をもって学校に入学するとかマジで止めておいた方が良いからな?
俺は友達一人も中学時代に出来なくて毎日をほぼブルーなアーカイブとは無縁な色彩の欠いた時代だったからな…懐かしい。
俺が自分の能力で感情制御してなかったら危なかったな、皆殺しにしてたかもしれん。
とまぁ物騒なことは置いておくとして…。
「今日も放課後に入学式のリハーサルですか?」
入学式の準備に関わらない幹比古が生徒会の役員の誰もが答えられるような口調で質問すると中条先輩ではなく副会長である深雪が答えた。
「リハーサル…というよりも打ち合わせ、ですね。答辞のリハーサルは春休みと式直前の二回だけですので実際に読み上げ作業をする、というわけではないんですよ。」
「去年も?」
「ええ。そうよ。」
雫の質問に深雪が頷いた。
一年前、昨年全校生徒のまで一年生の際に実際に答辞を読み上げた深雪、全校生徒の前で答辞を読み上げるとか…俺なら絶対にやりたくない。
「あたし達の時はひど、苦労してたからリハーサルを多めにするのかと思っていた。」
「どうせわたしの時は酷かったですよ…。」
千代田先輩が失言を訂正、する前に中条先輩が気づいてしまい不貞腐れた顔をしていた。
どうも中条先輩は一昨年の新入生代表として答辞を読み上げたようだが…まぁ想像に固くないカミッカミのグダグダだったんだろうな…と思ったが仕方がないだろう。
深雪が堂々としすぎているだけだ。
許嫁の失言を五十里先輩が素早くフォローする。
「ま、まぁ中条さんも緊張していたんだし詰まるのは別におかしな事じゃないよ。」
「逆に緊張しなかった深雪がおかしいだけですよ中条先輩。」
達也は深雪にその発言が飛び火しないように予防線を張っていた。
「まぁ、お兄様ったら。私も当日は緊張していたのですよ?それに…。」
深雪の視線が俺へ向けられた瞬間にイヤな感じがした。
「本来であれば手をお抜きにならなかったら八幡さんが昨年の新入生総代としてあの講堂で答辞を読んでいるはずでしたのに?」
「…手を抜いたんじゃない。あのときは体調がチョーっとばかし悪かったんだよ…てか、それを今持ち出しますか深雪さん?」
やっぱりというべきか入学する際に姉さんからいわれた「入学試験一位の子は総代として講堂で答辞を読む」と言うことを聞かされていたので手を抜いた、というか抜かざる得なかった…全校生徒の前で噛んだらそれこそ黒歴史だ。
俺がそう告げると深雪は口に手を当ててクスクス、と笑っている。
その光景に釣られるように全員が笑い出したのを見て俺は溜め息を吐かざるを得なかった。
達也は話題を変更するためにわざとらしく咳払いをした。
「実は俺も深雪も新入生総代に会ったことがないんだ。中条先輩その新入生総代は本日顔合わせで当校に来る、ということでしたが。」
達也にいわれ中条先輩は頷いた。
「はい。今日は入学式の打ち合わせのために来てくれることになっていまして…そろそろだと思いますが。」
「どんな子なんですか?」
五十里先輩が質問した。
その意味合い的にどちらの性別?というのも含まれていてその質問には全員が興味を意識に割いていたように思える。
「今年度は男の子の新入生総代です。」
中条先輩がそう告げると同タイミングで生徒会室の扉がノックされた。
「あ、はいどうぞ!」
中条先輩が生徒会室の電子施錠を解除すると扉が開かれる。
扉が開き入室してきた少年の雰囲気は隠しているように見えたが俺からしてみれは”自分以外は敵だ!”と尖ったような雰囲気を漏れだした少年がそこにはいた。
◆ ◆ ◆
「紹介します。今年度の新入生総代を務めてくれる七宝琢磨くんです。」
入室した七宝は俺たちの存在を確認して一礼する。
「副生徒会長の司波達也です。よろしく七宝くん。」
「”七宝”琢磨です。よろしくお願いします。」
妙に”七宝”の姓を強調して自己紹介し達也の制服のエンブレムをじっと見ていた。
固まった七宝に声を掛ける中条先輩に「見慣れないエンブレム」だったのでと答え先輩は納得していたが深雪はその反応にいたって冷静を装おっていたが俺には分かった。
”怒っている”と。
氷の女王が君臨し入学したばかり(正確には明後日だが)の生徒に深雪のプレッシャーが七宝に襲いかかり先ほどまで自信満々に強気な態度を取っていたのが早速崩れていた。
「同じく、副会長の司波深雪です。」
その冷たい雰囲気に違わず告げた自己紹介はその一文であり興味を示そうともしないのは俺からしてみれば丸分かりだったがここで敢えて指摘してやる必要もないだろう。
その反応に七宝の声が小さくなり、震えていた。
それは恐れ、ではなく怒りから来るものだと俺は理解していた。
深雪は上級生として誉められた態度ではないし七宝も上級生に対して誉められた態度ではないのは誰から見ても分かることでそれを見た中条先輩がおろおろしてた。
ここに姉さんや市原先輩がいたら直ぐに場面転回してくれたんだろうな…と卒業してしまった先輩と姉さんを偉大に思い俺はやらなくてもいい気遣いを発動させざるを得なくわざと大きな咳払いをかました。
「んんっ!…”双方ともにやる気が満ち溢れるのはいいけどな?”それより…中条先輩。新入生を立たせるのも忍びないですし着席してもらったらどうです?彼も予定が詰まっていることでしょうから手早く済ませません?ピクシー。七宝くんにお茶を用意して差し上げろ。」
俺が遠回しに深雪に対して「大人げないぞ?」と指摘すると納得はしていないようだったが自分の反応がそう言うものだった、と理解し不機嫌さを納めて一方で七宝には「先輩には敬意を払えよ?」と目配せすると悔しそうに俺を見ていた。
やる気があるのは良いが噛みつく相手を選べよ?凍らされるからな?
「了解しました。」
俺は空気を変えるために生徒会室に連れてきていたピクシーに指示を出してお茶を用意して貰い俺は立ち上がり空いている座席を引いて着席を促した。
なんで俺がこんなことしてるんですかねぇ…?
「ほら、立ったままだと大変だろ?座れよ。」
「…ありがとうございます。」
渋々、と言った所だが座ってくれたと同時に七宝の前にピクシーが淹れてくれたお茶が差し出され席についたのは立ち上がった深雪も同じだった。
それぞれに自己紹介を行い俺の番になった。
「副風紀委員長の七草八幡だ。よろしくしてもしなくてもいい。」
「……っ!…よろしくお願いします”七草”先輩。」
これだけを告げると先ほど達也に見せていた視線よりも七宝は俺を見る目がより力強いものになっていたのが印象的だった。
恨むように、敵対心を見せるように。
また、”七草”の部分を強調して言われ俺って恨まれるほど全方位に敵を作ったりしてないんだけどなぁ…?と思いつつ壊滅的な空気になっていた生徒会室はほのかの頑張りもあって魔法が飛び交うような事態に発展しなかった。
ありがとうなほのか。…今お前が居てくれてよかったと本当に思うぜ…。
波乱に満ちた顔合わせは無事?に終了した。
◆ ◆ ◆
魔法大学附属第一魔法高校の入学式当日。
俺は風紀委員会の仕事で妹達よりも少し早く学校に来ていた。
…正直雫と幹比古がいるんだから俺働く必要ないよな?そうだよ、と思いたかったが姉さんや深雪にお小言を言われる可能性が会ったので風紀員会詰め所へ入学式二時間前に出頭?していた。
準備室には既に千代田先輩と幹比古と雫が集合していた。
「うぃーっす…おはようございます先輩。はやいっすね?五十里先輩と一緒に来たんすか?」
そう問いかけると千代田先輩は「当然」と言わんばかりであり雫と幹比古ははじめての風紀委員会としての仕事で緊張をしていたとのことで早くに目が覚めてこの時間に登校してしまったらしい。
しばらく喋り入学式の一連の流れを自分で確認しているとその後風紀委員会詰め所に先輩達が入り千代田先輩から内容の業務連絡を告げられた後にそれぞれの配置場所へ向かう。
今回俺が管轄するのは正面入口並びに来賓ゲートの守備に当たることになった。
千代田先輩は渡辺先輩から受け継いだ”お馴染みの号令”を掛けると全員が、まぁ雫と幹比古が出来ていないのは知らされていないのが当然なので出来ていなかったが。
それを皮切りに俺たちは動きだし自分の仕事に取りかかることにした、本当は働きたくないが。
正門に到着し新入生を誘導したりしていたがほぼほぼが魔法高校に夢踊らせ入学してきてるんだろうなーと思うほどに嬉々とした初々しい表情を浮かべている。
その中にはエンブレムを着けたものや着けていないものもいるのは仕方がないことだろう。
そして今年度の入学生として香澄、泉美、小町がいると言うことだ。
二人はともかくとして…小町は俺が勉強を教えていなかったらやばかったかもしれないな…。
小町は地頭が悪い訳じゃなく頭は良いんだが…魔法を感覚的に使うので理論が壊滅であり中学までならそのままでよかったんだがそうも言っていられない。
入試の一ヶ月前に小町を缶詰にして勉強を叩き込んだら「もう無理…」、「許して許して…」と譫言のように言っていたがすまんな小町、これもお前を思っての事なんだ。
そうして無事に小町も入学を決めて一科生として今年から魔法高校の生徒となる。
正直中学の頃は俺と小町が家族であることを俺が意図的に隠してたし普通の学生生活じゃなかったからな…それを思
うと今年からちゃんと俺と小町が”兄妹”です、と名乗れるようになるのが普通に嬉しかったりするのかもしれない。
「あら八くん嬉しそうね?」
そんな当たり前のことが出来るようになるのが嬉しかったのか俺の表情が緩んでいたのか聞きなれた声が聞こえて視線をそちらに向ける。
「あれ姉さんなんでここにいんの?先月卒業したばかりじゃ…。」
「そうそう戻って…って違うわよお父さんの代わりに泉美ちゃん達の付き添いよ。」
「そういやそんなことを前の晩に聞いたような…?」
俺がそんなことを呟くと「まったく」…と呆れられてしまったが仕方がなくない?
前日まで泉美、香澄、小町に渡す特製CADの調整を行っていたのだから。
そんな誰に聞かせるわけでもない言い訳を頭の中で考えていると俺の腕章を見て姉さんは驚いていた。
「あ、八くんはやっぱり風紀委員会に入ったのね?」
「やっぱり…って渡辺先輩が余計なことを言わなきゃ辞めるつもりだったんだが?」
「またまたそんなこと言っちゃって…八くんが他人から頼られたら無下にしない、って千代田さんも分かっていたから風紀委員会…副会長に任命したんでしょう?わたしの弟が学校の風紀を守るNo.2!だなんてかっこいいとお姉ちゃんは思うわよ?」
「給料も発生しないやりがいだけしかないこの仕事に何を見いだせと言うのか。」
「またそんなこと言って…もう仕方のない子ね。」
煽てられてもやる気がでないのだから愚痴の一つは許してほしいものだがまぁ、姉さんがそういうのならやるのも吝かではない。(迫真)
それはともかくとして今日の姉さんは一味違うような気がした。
毎日家で会っているとは言え今年からは同じ学校ではなく魔法大学に進学している。
ある意味で別の場所に活動拠点を移すことになるからだ。
当然ながら着るものも制服では無くなり私服になるが今日着ているのはレディーススーツを身に纏う姉さんはかなり大人びているように感じた。
衣服もそうだが身に付ける装飾品に薄く施した化粧は何処と無く大人なお姉さん、と言う雰囲気を漂わせるのに一躍買っていたが高校生から大学生になった事も相まって家で見るよりそう、思えてしまって見とれていた。
顔立ちが幼いところもあるので美しいと可愛らしいが同居していた。
「どうしたの?」
黙ってしまった俺に怪訝な表情を浮かべていた姉さんによくも考えもせずに出た言葉を告げてしまっていた。
「ああ、いや。姉さんは大人っぽくなったのに可愛らしいなぁ、って。」
「っ!…は、八くん?そう言うのは…その…正面切って言われるのは恥ずかしいと言うか…」
ゴニョゴニョと何かを言ったようだったがまったく聞こえなかった。
「?なにか言った?」
「な、なんでもないわよ?そ、それよりもこの服装でどうかしら?朝八くんは居なかったから…。」
桜色のレディーススーツを見せてくる姉さん。
もちろん告げるべきことはこの事しかない。
「うん、似合ってると思う。一瞬父兄の誰かかと思ったけど。」
「それって遠回しに私のことを香澄ちゃん達の”叔母さん”ってことかなぁ?」
ずいっと顔を近づけ不満げな顔を見せてくる姉さんは頬を少し膨らませ俺に近づいて腰に両手をついて至近距離から睨め上げるようみていたが非常にこの体勢は不味い、と思ったので声を掛けた。
「あの…姉さん?」
「なぁーに八くん?言いたいことがあるなら今言っておいた方が良いわよ?」
姉さんは今俺にしていることが分かっていないようなので指摘させて貰った。
と言うか通りすぎる新入生がこっちを完全にカップルの痴話喧嘩しているようにみているのが不味かった。
いや、俺と姉さんは姉弟だからね?
「離れてくれない?この光景だと第三者からみた場合姉さんが俺にキスをしようとしてる光景になるんだけど?」
「え…?…~~~~~~///!?キャッ!?」
俺が指摘をするとようやく気がついたのか離れる素振りを見せた姉さんだったが状況を理解してその場から離れようと動くと履いている靴がローファーではなく少しかかとの高いヒールを履いていたので体勢を崩してしまった。
体勢の崩れた姉さんを受け止めるために肩と腰に触れて抱き寄せるように転倒を防止させた。
「大丈夫?」
「え、ええ…ありがとう八くん。」
姉さんは背が同年代の女性より低いのもあって俺の腕のなかにすっぽりと収まってしまっていた。
「……///」
俺を見る姉さんの頬が少し紅潮している。
どこか怪我でもしたのだろうかと心配になって声を掛けようとしたところに近づく”三名の気配”を理解した。
振り返るとそこには三人の妹達が立っていた。
「お兄様?このような衆人の中でお姉様と逢瀬ですか?」
ニコニコとしているが少し怒っているように見える泉美。
「おにぃ~?お姉ちゃんとなんでいちゃついてるのかなぁ?」
腰に手を当てて此方を睨め上げるように可愛らしい快活な顔をプリプリと怒らせている香澄。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんと仲良くなるのは良いけど時と場所を考えてよね~。」
呆れたように此方を見る小町がそこにいた。
それをみた姉さんは大慌てで俺から離れて弁明した。
「ち、違うわよ香澄ちゃん泉美ちゃん!これは八くんが私がビックリして倒れないように支えてくれただけだからね?」
その弁明を受けて双子の姉妹は「えぇ?ほんとに?」と疑っていたが流石に俺たちがこの往来の真ん中で言い争っているのは不味い。
現に新入生が此方を怪訝や興味本意で此方をみているのが視線で理解したので妹二人の後ろに移動し頭に拳を軽く落とす。
ポカッ、と軽い音が響いた。
「あいたっ」
「痛いですお兄様っ」
叩かれた頭頂部を押さえて踞り此方を見上げ抗議した。
「お前らな…姉さんが転けそうになってたのに支えただけだって言ったろ?それに入学式早々に問題を起こさないでくれ…。」
「ほほう?お兄ちゃんが言う側になるとはねぇ~?」
「ううっ…申し訳ございませんでしたお兄様…」
「はい、ごめんなさい。おにぃ…」
茶化すんじゃありません小町ちゃん…と俺は内心で思いながら今年度から俺の後輩になる妹達が問題を起こさないかどうか心配になった。
此方を見ていた新入生に威圧感を飛ばして講堂へ向かうように促した。
「さぁ、講堂はもう空いているから向かってくれ俺はもう少し仕事があるから少ししたら向かう。二人ともおとなしくしてるんだぞ?姉さんも三人の付き添いをよろしく。…ああそうだそれに二人の制服姿、とっても似合ってる」
「はいっ、ありがとうございますっ」
「えへへっ。うん、ありがとうおにぃ!」
そう告げると嬉しそうな表情を浮かべて姉さんと共に講堂内へ向かっていった。
そんな後ろ姿を見ながら俺は小町に声を掛けた。
「てか小町は三人についていかなくて良いのか?」
「いや、直ぐに行くよ。ただちょーっとお兄ちゃんに言っておきたいことがあってさ。」
「?」
小町が講堂へ向かう道すがらに此方に振り返り告げた。
「今日から改めて兄妹として同じ学校でもよろしくねお兄ちゃん?」
その満面の笑みは俺の二学年の新たなスタートを告げる言葉になった。
「…ああ。こっちこそよろしくな小町。」