俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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人間関係って複雑だよな

講堂の入り口で真由美と分かれた香澄と泉美、それに合流した小町はちょうど空いている席を三つを確保して着席した。

並び順は後ろから見て左から小町香澄泉美の順番だった。

全員が着席したのを確認して香澄がヒソヒソ声で二人の妹達(年齢は一緒)に声を掛けた。

 

「ねぇ泉美、小町?」

 

「なんですか香澄ちゃん。」

 

「どうしたの香澄。」

 

まだ式が開始されるまで時間があるため周りも大きな声で近隣の今日知り合った新入生と会話をしているのでヒソヒソと話す必要がないのだが声を潜めて話しかけてきた意図を理解し三人で顔を近づけるように会話する。

 

「さっきの広場でおにぃとお姉ちゃんが密着してたでしょ?」

 

「はい、とーってもくっついてました。」

 

「それがどうしたのさ。別にお兄ちゃんがお姉ちゃんを転けるのから助けただけでしょ…まぁお姉ちゃんの顔あかくなってたねぇ~」

 

小町が意地の悪い顔を浮かべると双子は「やっぱり…!」と言った表情を浮かべている。

 

「お姉ちゃんもバレンタインの時にお兄ちゃんに渡してたチョコ”本命”だったらしいから…もうそう言うことでしょ?」

 

「お姉様もやはりお兄様を…。」

 

「お姉ちゃんもかぁ…。」

 

やっぱり…という表情を浮かべていたが小町は嬉しそうな表情を浮かべていることに二人は質問した。

 

「どうして小町は嬉しそうなの?」

 

「小町ちゃんは嬉しそうなんですか?」

 

満面な笑みでその返答を告げる小町。

 

「だってさ?お兄ちゃんを幸せにしてくれる人が増えるんだよ?良いことじゃない。妹として鼻が高いよ…しかも誰もかも気立ての良い美少女と来たら喜ぶしかないでしょ?」

 

その発言の中には真由美達ももちろん入っているので双子はなんとも言えない気分になった。

 

「まぁ、そう言ってくれるのはありがたいんだけどさぁ…。」

 

「でもお兄様とそう言う関係になるのは一人と言うか…。」

 

「十師族の一人息子なら奥さんの一人や二人平気でしょ?あ、でもそれで泉美と香澄、お姉ちゃんが…家族同士で喧嘩するのは小町みたくないなぁ…。」

 

少し顔に影を落とす(ふり)小町のその発言に双子は慌てた。

 

「だ、大丈夫だよ小町、仲違いなんてしないって!」

 

「そ、そうですよ小町ちゃん、お兄様を巡って仲違いはしませんからね?」

 

「そう?ならよかった。」

 

満面の笑みを浮かべる小町に二人は勝てなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

入学式はつつがなく終了し去年のように問題が起こったわけではなく平和だった。

俺も小町達と一緒に帰宅しようとしたが風紀委員会の仕事が残っておりそれを片付けた後に帰宅しようとしたが達也達生徒会メンバーと…まぁ何時もの面々が昇降口に集合しこれまた何時もの喫茶店である意味での『お疲れ様会』が開かれていた。

 

店内に入って座席に着席し商品を頼んだ辺りで達也から隣にいた少女の自己紹介を受けた。

 

「八幡紹介する。桜井水波だ。水波自己紹介を。」

 

紹介を受けた水波がわざわざ立ち上がりペコリ、とお辞儀をして見せた。

 

「初めまして七草八幡様。ご紹介預かりました桜井水波と申します、よろしくお願いします。」

 

お辞儀をした顔をよくよく見てみるとその表情は見知った顔だった。

それに名字が桜井…?俺の脳内で一度達也の家にお邪魔させて貰ったときに深夜さんのお付きをしていた女性を思い出した。

 

「桜井…?穂波さんの娘さんか?」

 

そう問いかけると達也は頷いた。

頷いた、と言っても『娘』ということを肯定の意味でなく『関係者』という意味でだった。

 

「ああ。水波は穂波さんの姪…俺たちは従姉妹なんだ。」

 

「そうだったのか…よろしく桜井さん。うちの妹達も同学年だからよろしくして貰えると嬉しいんだが…。」

 

「名字ではなく名前でお呼びください八幡様。叔母を救ってくださってありがとうございました。このご恩はこの桜井水波忘れません。」

 

神妙な顔でそんなことを言うもんだから他の連中が食い付いてしまった。

沖縄のあの話は正直大っぴらにしたくない。

荒れていたあの時の俺の話を聞かれたくない、ってものあるがいつまでの少女に頭を下げさせるのはいかがなものかと。

 

「あーいや気にしないでくれ。それに恩義を感じてるってんなら同じ学年のうちの妹達と仲良くしてくれると助かるよ。」

 

「畏まりました。」

 

「それに俺には敬語は要らないからな?」

 

そう言うと虚をつかれたような表情を浮かべ達也と深雪をみる水波だったが二人の表情をみて戸惑いながらも普通の呼び方にしてくれた。

 

「畏まりました七草先輩。よろしくお願いいたします。」

 

言葉が固いのはそう言う風に教育を受けてきているからだろうと直感的に理解し訂正する気にはならなかった。

ちょうど注文した商品が座席に到着しドーナツとコーヒーを片手に雑談を楽しんでいる。

 

コーヒーがそれぞれにカップの半分になった辺りで雫が話しかけていた。

 

「そう言えば小町ちゃん達も第一高校に入学したんだね。」

 

「ああ。全員無事に合格してくれてよかったよ。まぁあの三人なら合格して当たり前だからなぁ…。」

 

「まぁそうだよね。」

 

と雫は微笑みを向けて頷いた。

 

「そう言えば首席くんの勧誘はどうなったの?」

 

雫がそう訪ねたのは俺との会話の転換点として話題に出して話を他の人に振って広げようとして野次馬根性や好奇心に引っ張られて、いやそれもあったと思うが意図的なものでは無かったがその話題を振った瞬間にほのかが1拍空いて黙った後に告げた。

 

「…ダメだった。」

 

雫はほのかのその反応を見て「聞かなきゃよかった」と自己嫌悪に陥っていたがそこは空気が読める幹比古がエントリーして空気清浄機の如く、その一言で空気を変えた。

 

「え?七宝君は生徒会入りを断ったのかい?」

 

「本人は部活を頑張りたいから、と言ったらしいからな。他にやりたいことがあるのなら無理強いはできないだろう。」

 

達也の一言はほのかに対して「気にするな」と言い聞かせているように聞こえた。

それに乗っかるようにフォローする。

 

「まぁ無理強いは出来ないだろうしな。気にやむことじゃないだろ。」

 

ほのかの表情はどんより雨雲模様から薄曇りへ変化した。

 

「それよりも生徒会に誰を勧誘するかを考えた方が建設的ですよね?」

 

深雪のその発言に俺を含めた全員の意識は七宝から離れて「誰を生徒会に辞退した生徒の代わりに所属させるか」への意識に切り替わった為七宝の事は外れていた。

 

「そうだな。今年度誰も生徒会に入らないというのは後々の事を考えると不味いからな…。」

 

達也が真面目な表情で呟くと深雪がなにかを思い付いたように手を叩いて提案した。

 

「そうですお兄様。水波ちゃんを生徒会役員にするというのは。」

 

「えっ!?」

 

深雪の発言に驚く水波に達也は助け船を出した。

 

「おいおい深雪、流石にそれは水波がかわいそうだぞ?それに主席を生徒会に勧誘するのが定例なら成績順に勧誘するのが良いだろう?」

 

「次席は誰だっけ?」

 

雫が生徒会書記として成績を把握しているほのかに質問をしている時に俺はコーヒーを啜っていた。

ほのかの告げた成績に思わず咳き込みそうになった。

 

「えーっと…あ。…七草泉美さん…それに三位は七草香澄さん…それに四位は七草小町ちゃんだね。」

 

「ぶふぉっ!?けほっ!けほっ…!?」

 

「うわっ汚いわね八幡っ!」

 

思わず対面に座っていたエリカに思わず口に含んでいたコーヒーをぶっかかりそうになったが寸でのところで踏み留まった。

 

「だ、大丈夫ですか八幡さん?」

 

は、え?うちの妹達上位独占なの?それに小町ちゃんも入ってる…?そっか俺の詰め込み教育が功をそうしたのかぁ

咳き込む俺の背を擦る深雪に介護させつつほのかが表示していた端末を確認するとうちの妹達の顔が並んでいた。

 

「この四人は本当に僅差でほぼ差がなかったと言っても良かったんですよ。それも四位を大きく離す程の成績差でしたね。八幡さんは三人の成績をご存じ無かったのですか?」

 

ほのかと同じく生徒会に所属している深雪が問いかけてくる。

 

「けほっ、けほっ……あー…まぁあの二人なら成績上位だろうなと思ったから特段聞くことも無いだろうと思って聞かなかったんだが…。」

 

「ならどうして咳き込んだの?」

 

雫が不思議そうに此方に顔を覗いてくる。

正直ここに小町がいて聞かれたら脛に『乱戦乱舞・朱雀【烈旋脚】』が飛んで来て俺の足の感覚が無くなりそうになるだろうが仕方がないだろう。

 

何故ならば…。

 

「小町は魔法理論が大の苦手でさぁ…ずっと直感的に魔法を使うもんだから壊滅的なのよ。平たくいうとちょっとおバカというか…俺が春休み中ずっと家庭教師してたから…さ。」

 

「そこまでなのか?でもお前の昔話を聞く限り小町さんはそっちの方面でも」

 

「精神干渉でそっちも誤魔化してたんだよなぁ…まぁ小町自身頑張ってたのもあるけど流石に俺と比べちゃうとな。」

 

「そうか、大変だな…。」

 

俺が力無く答えると達也もそれ以上追求するのをやめていた。

小町は地頭が悪いわけでもなく物覚えが悪い訳じゃない。

”論理的に説明が苦手で直感的に魔法を使ってしまう”という癖があるのだ。

 

が、成績で他の生徒に当てはめると理論も十分優秀な成績を中学から叩き出しているので問題はないのだがどうしても香澄、泉美に比べるとやっぱり劣ってしまうので並ぶとは思わなかったのだ。

 

「じゃあ八幡の妹さん達誰かが生徒会に所属して役員になっても可笑しくはない、ってことになるね。」

 

幹比古がそう言うと深雪はそれほど表情に出ていなかったがほのかが困ったような表情を浮かべている。

ほのかが懸念しているのも何となく分かってしまうのが俺的にもなんともむず痒い。

 

妹達(香澄と泉)がほのかと深雪を敵視しているからだ。

 

「あー…二人ともなんかすまん。順当に行くと生徒会には泉美が風紀委員会には香澄が行くと思うが…。」

 

そう俺が告げると二人とも嫌そうな表情を浮かべていたが雫は嬉しそうだ。

しかしなんで敵対心を向けているんだろうな…特にほのかと深雪に対してだけ向けてるのはつまり…”アレ”の有無なのだろうか?と考えていると雫がジト目で俺の目を見て脇腹をつねりほのかが頬を膨らませ俺の脇腹をつまみ深雪が干渉領域で俺のコーヒーカップを凍らせてエリカは目線で「変態…」と若干蔑んだ目で見られた。解せぬ。

 

余計なことを考えすぎたせいだな。うん。

 

気を取り直してほのかと深雪は非常に言いづらそうだ。

 

「小町さんが一緒に来ていただけるのでしたらほのかも私も…その非常に有り難いのですが…。」

 

「わ、私も出来れば泉美ちゃん達と仲良くしたいんですが…。」

 

「此方で説得してみるよ…(姉さんにも頼んでみるか。)ごめんな気難しい妹達で。」

 

それだけ告げて残ったコーヒーとドーナツを胃袋に納め少し雑談をしたのちに行きつけの店を後に解散した。

 

◆ ◆ ◆

 

同日、七草家の香澄自室。

 

「ねぇ香澄ちゃん、泉美ちゃん、小町ちゃん。」

 

「どうしたのお姉ちゃん?」

 

入学式が終了し自宅へ戻った三姉妹は香澄の部屋に集合し今後の学校生活における相談をしていた。

投げ掛けられた声掛けに小町が纏めて返答した。

それぞれが普段の部屋着に着替え真由美を正面に三人が並んだ状態だ。

 

「三人はどの部活動に参加する予定なの?」

 

そう問いかけられて小町が最初に答えた。

 

「私は特に部活とかには入る予定がないけど…なんで?」

 

「八くんから聞いたんだけど主席の子が生徒会入りを断ったと聞いたから声を掛けられるのは恐らく…というよりも成績順から見ると香澄ちゃん達だろうと思ってね…三人はどう?生徒会。」

 

真由美が香澄の部屋に来たのは八幡から相談を受けての事だった。

現に彼女は魔法科の卒業生であるし後輩と学校運営に支障をきたすのは良しとしないし尚且つ妹達が八幡を慕う深雪達を敵視(一方的に)しているのは思うところが有ったためにこのようなことを聞いていた。

 

「僕は生徒会って柄じゃないし…そもそも…。」

 

「私は入るなら生徒会でしょうか?ですけれど…。」

 

言い淀む香澄と泉美に真由美が苦笑しながら一拍置いて指摘した。

 

「…深雪さんとほのかさんがいるから生徒会にいるから入りづらい、ってことね?」

 

そう告げると香澄と泉美がバツが悪そうにしている。

思っていることを言い当てられた、と言わんばかりの表情だ。

 

「まぁお姉ちゃんも分からなくは無いけれども…。」

 

「そこ同意しちゃうんだお姉ちゃん…?」

 

しかし、この姉自分の弟に他の女子生徒が近づくのを良しとしないところが有るため説得しようにも同調してしまい小町に突っ込まれる始末である。

小町を一瞥し咳払いをする真由美は意味合い的に「小町ちゃん?話がこじれるからちょーっと静かにしててね?」というものだったが当の小町は「はーい」と返事するだけだった。

 

「それに八くんが深雪さん達と香澄ちゃん達が喧嘩とか険悪な雰囲気になってたら表情には出さないと思うけど悲しむと思うわよ?それに八くんは『誰が好き』とは言っていないしね?」

 

「「うっ…!」」

 

そう指摘されて言葉に詰まる双子。

それを見ていた小町は内心で

 

(いや恐らくお兄ちゃんの事だから呆れてるだけだと思うけどなぁ…)

 

面白いことになりそうなので黙っていた。

 

少し思案して双子の共通意見を述べた。

 

それを聞いた香澄と泉美が姉に質問をした。

タイミング的に丁度良い、と思ったからだ。

 

「お姉ちゃんはその…おにぃの事…どっちとして好きなの?弟?それとも異性?」

 

「お姉様はどちらの感情でお兄様と何時もくっついているのでしょうか?」

 

「え…?」

 

「おおう…まさかのカウンターに二の句が告げないお姉ちゃん…いやー鋭いところ突いたねー二人とも」

 

「小町!?」「「小町ちゃん!?」」

 

七草三姉妹が一斉に小町の方を向くが楽しそうにしているので言うに言えずに黙り込むしかなかった。

暫くの沈黙の後に真由美が口を開いた。

 

「…そうね私は八幡の事を”弟”としてではなく一人の”男性”として見ているわ…それに好意も…ね?」

 

いつぞやに告げた『お姉ちゃんは泉美ちゃん達の恋の応援しちゃうわ。八くん程の格好いい男の子はいないもの。家族だけれども血は繋がっていないからいけるわよ~?』

と言ったことを思い出し妹達の恋を応援しようとそう思っていたのでこの横恋慕的な報告は真由美にとっても非常に申し訳ない気持ちと好きになってしまったものは仕方がないでしょう!?と言った感じで妹達から苦言が飛んでくるかもしれない、と思ったが香澄と泉美は違った。

顔を見合わせて笑みを浮かべている。

 

「お姉ちゃんのお兄ちゃんの人誑しにやられたわけだね…。」

 

「やはり私たち姉妹は同じような男性趣味になるわけですね?」

 

「えーと…。」

 

困惑する真由美に双子は満面の笑みで答えた。

 

「さっきも言ったけどもうこうなったらお兄ちゃんに三人とも娶って貰おうよ。」

 

「そうですね香澄ちゃん、それが一番の平和的な解決法方かと…」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい二人ともっ!」

 

「どうしたのお姉ちゃん?そんなに慌てて。」

 

「どうしたんですのお姉様?」

 

合法的な考えに持っていこうとしていた双子だが今の日本で一夫多妻制が通るはずもない、非合法な考え方に真由美は「待った!」を掛けそれに乗っかるように小町が告げる。

 

「小町はお兄ちゃんを巡って身内同士で骨肉の争いになるのは見たくないからね?それにお父さんなら三人がお兄ちゃんのお嫁さんになるなら認めてくれそうだけどね?それに魔法師なんだから優秀な遺伝子がいくら有っても困らないでしょう?」

 

そう言うと七草の三姉妹は「そんな馬鹿な…」と考えが一致したが八幡に入れ込んで信頼している父親を思い出して

 

「「「あり得るかも…」」」

 

息ぴったりに呟いた。

 

それを聞いた小町が釘を刺すわけではないが有る意味自分の決意表明のようなことをボソり、告げた。

 

「まぁ…お兄ちゃんを悲しませないようにしてくれると小町は嬉しいかな?」

 

小町の目が青縁メガネ越しにの瞳が一瞬だけ金色に輝いていた。

それは偏光レンズのメガネのせいで外からの変化は分からないが表情を視た三姉妹。

 

(((絶対に小町だけは怒らせないようにしないと…)))

 

と決意したとかしないとか。

結果として香澄、泉美、小町は風紀委員会と生徒会に所属することを決めて深雪達とは兄のトラウマを解消するために普通に協力していこうと決めていた。

 

◆ ◆ ◆

 

姉さんに泉美達三人が深雪達と仲良くなってくれるように説得して貰うこと翌日。

俺は生徒会室に来ていた。

いや、俺風紀委員会であって生徒会のメンツと関わり無いはずだよなと思ったが同じクラスの深雪とほのかに頼まれていたからだ。

そしてこの間言っていた次席を生徒会に入れる…ということでこの昼食時の生徒会には香澄、泉美そして何故か小町がこの場に来ていた。

 

対面に三人が座り反対側に中条先輩率いる生徒会と千代田先輩と五十里先輩、ついでに俺の風紀委員会メンバーが集結してこの光景に思わず苦笑してしまいそうになった。

 

(そういや去年は姉さんに連れてこられてこの生徒会に来たんだが…その時は達也の風紀委員会入りのために色々有ったが…今度は達也達が勧誘する側になるとは…”因果は巡る”とはまさにこの事なのか。)

 

そして俺は過去の出来事から学校運営に対して良い思い出がないのでほっぽってやろう、と思ったがそうも行かずに二年目も風紀委員会…それに副委員長として活動していた。

そんな光景を見ながら深雪達が泉美達に話しかけているの見ていた。

 

「それでは私たちのどちらかを生徒会役員として取り立てて下さる、ということですか?」

 

同じ背格好で顔は違うが雰囲気が似てきた三人の少女が深雪が告げた言葉を反芻させるように代表して泉美が問い掛ける。

小町を除く二人…香澄と泉美は深雪とほのかを視界に入れた瞬間に普段ならば親の仇か、という程威嚇をするようなことをしていたのだがそれは鳴りを潜めて大人しくしておりその光景を見た当の二人は驚いていた。

達也もそれを知っていたのでまるで狐につままれたような反応を見せていた。

 

いや、俺も正直ビックリしてるんだが…姉さんなに言ったんだ?

 

「この若輩の身で生徒会に入る上で少しお願いがあるのですが…。」

 

泉美が生徒会に入る事を承認した上での条件を提示してきた。

 

「なんでしょうか?」

 

中条先輩が首を傾げていると深雪とほのかが構えていた。

いやいや…「生徒会に入るのは良いですけれどあの先輩二人やめさせるなら良いですよ?」何て事は言わんからな?え、言わないよね…?

 

えも言われぬ緊張感が生徒会室に広がったところで泉美が口を開く。

 

「一緒に妹である小町も所属をさせていただきたいのです。」

 

そう告げられて俺を除く全員が小町の方を向くと少し居心地が悪そうに頬を掻いて苦笑いをしていた。

 

「七草小町さんも一緒にですか?そ、そうですね…。」

 

新入生で二人同時に採用というのが前例が無いため中条先輩にそれを問うのは中々に酷だろう。

何せ前例がないからな。

戸惑ってどもっている中条先輩とそれを問う泉美達に助け船を出すことにした。

 

「中条先輩?」

 

「は、はいなんですか八幡くん。」

 

「小町は元々中学校で生徒会での組織運営をやっていた経験がありますし成績では泉美達に次ぐものですので…どうですか?」

 

問い掛けると諦めたようにほっとしたように溜め息を吐いて此方を見る。

 

「……そうですね、きっと七草前生徒会長ならこういうでしょう。『何事も前例は覆すために有るのよ』と。」

 

そう中条先輩が告げると身構えていた全員の肩の力が抜けたように見える。

特に顕著だったのがほのか達であったが一番は俺だったかもしれない。

友達と妹がバチバチにギスッてるのは正直みたくはないからな…。

 

「それではお二人とも生徒会に入っていただける、ということでよろしいでしょうか?」

 

中条先輩が小町と泉美に問い掛けると前者は「仕方ないなぁ…いいよ?」後者は「よろしくお願いします」とそれぞれの反応を見せてお辞儀した。

 

「七草香澄さんは生徒会にはどうですか?」

 

ほのかが残された香澄に声を掛けるが首をふった。

 

「光井先輩、私は申し訳有りませんが生徒会に所属する気は有りません。」

 

泉美は割りきっているような感じだったが香澄はまだほのか達に敵視しているような感じを放っており泉美がなにか言いたそうにしていたが小町に宥められていた。

 

再び空気が変わったのを感じ取ったのか変えようとしたのがまさかの千代田先輩だった。

 

「生徒会に所属する意思がないのなら風紀委員会に所属しない?貴女の実力ならお兄さんに負けずとも劣らない結果を出してくれるだろうと思うから…どう?」

 

「おにぃ…いや兄と…ですか?」

 

「ええ。どう?」

 

そう千代田先輩に言われて考える香澄の顔は少し嬉しそうだったのは気のせいだろうか?

少し考える素振りを見せてから答えた。

 

「分かりました。やらせていただきます。」

 

香澄、泉美、小町の三姉妹はそれぞれに風紀委員会と生徒会に所属することになった。

…よくよく考えたらそれって大丈夫なんだろうか?

そんな兄の心配など気にしない、と言わんばかりに目の前の三姉妹はハイタッチをしており微笑ましい光景が広がっていたが兄としては妹達と知り合いが仲良くやってくれることを祈るしかなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

再び…というか一年前にも行ったが入学式から数日経過しお馴染みの熾烈な各クラブの新入部員獲得の戦いが始まる。《新入生勧誘週間》が始まろうとしていた。

 

新人を獲得するために戦わなければ予算が増えない(生き残れない)

天丼だな。

 

ここかぁ…騒ぎの場所は…?違反者ぁ…鬼ごっこが好きなのか?

俺が王○サバイブになって違反者にファイナルベント叩き込めば平和になるのでは?と考えながら構内を巡回していると俺の姿が現れると新入生を取り合っている部活同士が譲り合いを始めるものだから今までに見たことの無い光景に思わず俺は宇宙猫になるしかなかったが余計な揉め事を起こしてくれないのならそれで良いに越したことはないからな。

 

一通りの巡回を終えて部活連本部に顔を出した。

千代田先輩の命令で問題が起きた際の実力行使込みで制圧する人員の一人として待機を命じられたのだ。

だったら俺巡回しなくても良いんじゃない?と思ったが千代田先輩曰く。

 

「八幡くんが巡回すると面白いぐらいにいざこざが起ころうとしていた部活同士が新入生を譲り合うんだもの?だったら一度全部を巡回して貰ってその付近に風紀委員の子を配置しておけば問題が起こらないじゃない?仕事は減るし一石二鳥ね!」

 

いや、俺の負担が増えるからやめてほしいんですけど…?

 

実際に問題は目に見えて減っているらしくて一緒に随伴していた風紀委員会に入った香澄は

 

「なんだか拍子抜けだよおにぃ…もっと魔法が飛び交っているのかと思ったけど…平和だね。」

 

そんな魔法が飛び交うような無法地帯だと思われていたのだろうかうちの学校は…?

一応香澄と分かれる際に「率先して問題ごとを起こさないようにしてくれよ?」と釘を刺して置いたがそこまで短絡的ではないし魔法師としての心得は育っている、筈だ。

 

「えへへ…頑張ってきますっ」

 

一人で巡回する前に何時ものように香澄の頭を撫でてやると気持ち良さそうに部活勧誘をしている部活棟の方へ駆け出していった。

 

「うぃーっす…お疲れさまっす。」

 

部活連本部に顔を出すと待機人員として生徒会からは達也と深雪が在中していた、うんこの二人がいれば大丈夫なのでは?と思ったほどだ。

恐らく深雪の魔法力は俺よりも上かもしれないし達也に至っては実践に裏付けされた戦闘力があるのでこの二人で十分だろうと疑いようもない”事実”だった。

そしてその部活連本部に座っているのは十文字先輩からその後を任せられた服部先輩とその部活連の治安部隊である執行部の面々が控えていた。

 

…うん、やっぱり俺要らなくない?過剰戦力すぎやしませんかね?

 

「ん、来たか七草。そこに掛けてくれ。」

 

服部先輩から促され俺は「失礼します」と入室の許可を経て生徒会側のメンバー…つまりは達也達、深雪のとなりに必然的に座ることになる。

 

「お疲れさまです八幡さん。」

 

「おう。深雪と達也もお疲れさん。」

 

「お前が外回りをしてくれたお陰で問題を起こす部活動がなくて此方としては大助かりだからな…」

 

俺が「このやろっ…!」と思っている深雪は此方を尊敬の眼差しで見てくるので言うに言えない状態だったが対面には見知った顔の先輩が声を掛ける。

 

「いやしかし七草が外回りの巡回をしてくれたお陰で初めてじゃないか?こんなに平和な勧誘週間は見たこと無いぜ?」

 

桐原先輩が腕を頭を後ろにして椅子にもたれ掛かりながらそう答えると服部先輩が反応していた。

 

「確かに…七草が巡回しているお陰でこっちに連絡が入ってこないから閑古鳥が鳴いているが本来がこれが正しい勧誘週間だろう。」

 

いや、俺の仕事量増えるからやめてくれませんかねそれ?

 

「流石に七草が出張れば生徒達は大人しくなるよな?それにしても去年は問題を起こしていた俺がまさか今年は取り締まる側になるなんてよ。」

 

「俺は暴力装置じゃないんですけど…てかそれ自分で言っちゃうんすか先輩?」

 

「取り締まった俺が言うのもなんですが…自分で仰いますか先輩。」

 

「桐原…あまり余計なことを言わないでくれ。変な勘違いをする奴が出てきたら困るんだが」

 

服部先輩はこめかみを押さえて深刻そうに深い溜め息を吐いていたが桐原先輩は我関せず、といった感じに先輩の反応を無視していた。

 

「無視かよ……ん?」

 

そのやり取りの最中1本の電話が和やかな雰囲気をぶち壊す。

問題発生の通報のベルが鳴り響いた、と同時に俺の通信端末に応援の要請が入る。

 

「…了解した。司波、司波さん。」

 

服部先輩が立ち上がり達也達に出動命令が下され俺は俺で別場所にて発生した魔法の打ち合いを止めるために現場に急行した。

まぁ、そう簡単に平和な部活勧誘週間が有るわけないだよなぁ…。

 

俺は体育館で発生した魔法競技クラブの鎮圧と達也と深雪達は部活棟の有るロボ研のガレージへ向かっていった。

…ん?部活棟で問題発生?そっちには香澄がいた筈なんだが手が回らなかったのだろうか?

結局俺がその場に到着し殺気を出して威圧すると借りてきた猫のようになった部員達、それに対して釘を刺して戻ってくると先に戻っていた深雪と達也に事の事情を聞いて俺は頭を抱えざるえなかった。

事の事情は、

 

『執行部見習いの七宝琢磨と風紀委員会見習い七草香澄が仲裁そっちのけで魔法を使用しかけていた』ということだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「…ってことでスッゴク感じ悪かったんだよ。」

 

「はぁ…香澄ちゃんよく我慢しましたね。」

 

「よく我慢したね香澄。エライエライ。」

 

「ちょっと何すんのさ小町…ん…うんあと後の事を考えるとこっちから手を出さなくてよかったなーと思ったけど本心的にはブッ飛ばしてやりたかったよっ」

 

香澄は小町に頭を撫でられながら満更でもないように同日、八幡より先に帰宅していた香澄達は香澄の自室に集合し今日のあらましを報告していた。

ロボ研とバイク部が同学年の男子生徒を取り合う、という何時もの勧誘光景だったのだが仲裁に入るために部活連と風紀委員会、生徒会と三竦みが集まり一触即発を見せていた。

香澄は状況解決のために動いていたが琢磨が絡んできた…と香澄は語るが実際は売り言葉に買い言葉で深雪の領域干渉によって魔法が不発とかして危うくルールそっちのけで問題を起こしそうになっていた、ということだが関係者一人からの発言なのでそれを、それも肉親に告げるにはその第一声を信じる他無かった。

 

自室に置いてあるクッションを強く抱き締めながら不満げに漏らすその姿を八幡が見たらただただ「かわいい」と言って頭を撫でるだろうが今の八幡の心理状態をこの三人は知らない。

 

「それにしても…お話を聞いた限りですと七宝君は非友好的な態度過ぎますね…。」

 

「あれは非友好的ってもんじゃないよ、”喧嘩腰”って言うの。」

 

「どうどう…それで香澄に見せた七宝君の態度は部活連執行部員が風紀委員会に対しての対抗意識で…って言うのじゃないの?」

 

宥めて小町が問い掛けると香澄はクッションを抱きながら頭を振った。

 

「違うよ!あいつが言ったのが『七草…(七宝)に喧嘩を売っているのか?』って七宝が七草(うち)に喧嘩を売ってきたんだって!」

 

「七宝…はともかくとして彼自身が香澄ちゃん(七草)に喧嘩を売ってきたように思えますね。」

 

泉美は話を聞きながらそれを癇癪から来る感情論ではなく”私的な私怨”ではないか?と指摘すると香澄が二度ほど瞬きをしていた。

 

「七宝琢磨としてじゃなくてあいつ個人の私怨ってこと?」

 

「私怨というには言い過ぎな気もしますが…どうですか小町ちゃん?」

 

話を振られた小町は考える素振りを見せながら返答した。

 

「うーん…小町はそんなに詳しい訳じゃないからうちって十師族じゃない?七宝君の家名って師補十八家、つまりは十師族になれる二十八家だからこそ同じ”七”の家名だからこそ対抗意識を燃やしてるんじゃないかなーって思うんだけど。」

 

「「なるほど…」」

 

小町の的確な指摘に泉美が自分へ問い掛けるように呟いた。

 

「今の七宝家のご当主様が温厚な方…というのは噂程度でしか聞いたことがありませんがその方が当家(七草家)に挑んでくるとは到底…。」

 

「それだったらお兄ちゃんとお姉ちゃんに聞いてみたら?」

 

小町の提案により三姉妹は兄のいる部屋へ向かった。

 

時間は少し遡って学校から自室に戻りそこから《アハト・ロータス・ワークス》の主任研究室へ《次元解放》のポータルを繋げ新CADの作成に一区切りつけて戻ってきたタイミングで部屋のドアが叩かれる音と声がした。

 

「はい?」

 

『八くん今良い?』

 

その声の主は真由美だった。

 

「いいよ。」

 

ちょうど制服の上着をハンガーに掛けたタイミングだったので声を掛けると私服に着替えていた真由美が入室してくる。

八幡はベッドに腰掛け真由美も当然のように八幡のベッドに腰を掛けるが指摘しないのはこれが普通になっているからだ。

 

「どうしたの?」

 

「先ほどお父さんのお客様で珍しい方が来ていてね。」

 

「珍しい客?誰のこと?」

 

「小和村真紀、という女優の方がいらっしゃったのだけれど…八くんは知ってる?」

 

真由美が手に持った端末を見せると恐らくは宣材写真だろう年若い女性が写っていた。

名前と顔を見ても八幡はピンと来なかった。

 

「小和村真紀?…知らないな。そもそも俺そう言うのに興味がわかないっつーか…。」

 

八幡は興味なさそうに「誰だよ…」という表情を浮かべていたが予定調和だった。

 

弟がそう言うのに興味がないことを知っていたがついつい聞きたくなって聞いてみたが案の定の返答にちょっとだけ真由美は内心で意外さを求めていたがすぐさま霧散した。

だが、八幡の疑問に真由美が心の中で燻っていた不信感と一致してちょっとした爽快感を与えていた。

 

「でもなんで女優がうち(七草家)に訪れたんだ?政治家や実業家、軍人ならまだ知らずそこらの芸能人がましてや地位の有る父さんにわざわざ家に訪れて密会もどきをするのはあり得ないだろ?そこまで詳しくないけど芸能界のいざこざを解決、起こそうとするのは”十師族”の力を使うのは逆にリスキー過ぎないか?」

 

勘の良すぎる弟に真由美は若干苦笑いを浮かべながら同じことを思っていたと頷いた。

 

「また父さんがなにか企んでいる、って思ってるんだろ姉さんは。」

 

「ええ。そうね。でも…どう思う?」

 

「まぁ父さんなら上手いこと相手を利用してこっちの利を得ようとするだろうし…ってことは俺もその企てに参加させられる訳ね…しかし…なんで女優がうちに何の用なんだか…?」

 

父親の企み事に八幡は頭を抱えて遠い目をしていたが真由美の手が八幡の膝に置いた手に重ねる。

渡された端末を見ながらそんなことを呟くと心なしか隣に座る真由美の距離が近くなった気がした。

 

「ね、姉さん…ど、どうした?」

 

「……(なんだか香澄ちゃん達に言ったけれども私も八くんのことが好きだけど…学校を卒業してしまって四六時中いられる訳じゃないし…深雪さん達にアトバンテージをとれる”自宅”にいる間に八くんと両想いにならないと!ちょっと香澄ちゃん達には悪いけどちょっとだけ抜け駆けして…。)ねぇ八くん?」

 

「うおっ!?」

 

真由美は無意識だっただろうが八幡が端末に写る女優に意識が向いていたので会話の最中自分を見ていないことに少しご立腹になり頬を膨らませながら八幡に対して顔を近づける。

 

「お姉ちゃんと話しているときに他の女性の写真見ながら会話するのはどうかと思うな?」

 

「いや手渡したの姉さんじゃないか…って本当に近いんだけど!?」

 

「へっ…?あっ、ごめん八くん…きゃっ!?」

 

「姉さんっ」

 

近づく真由美に対して八幡が体を反るようにしていたのは距離を取るためだった。

このままでは何かの間違いで唇が触れてしまいそうな距離にまで接近していたことに真由美自体が気づいていなく八幡の指摘によってようやく気がついた。

互いに見つめ合い顔を紅潮させて時が止まっていたがそれを崩す様にドアがノックされた。

真由美が無音の中で響いたドアのノック音で驚き体勢を崩してしまう真由美を受け止めざる得なかった。

 

「……。」

 

「……。」

 

「八くん…」

 

「姉さん…」

 

互いに心臓の鼓動と息づかいを感じとり視線を離すことが出来ずに見つめ合う二人。

見つめ合い次第にその距離は互いを求めるよう縮まって…いくことはなかった。

 

「お兄様入ります……ってお姉様い、一体何をされていらっしゃるのですかっ!?」

 

「おにぃもお姉ちゃんも何やってんの!?」

 

「泉美ちゃんに香澄ちゃん、小町ちゃん!?」

 

「てかお前ら俺が良いよって言ってないのに勝手に入ってくるなよ?」

 

ドアのロックをそもそもにおいてしていない為ノックして直ぐ様に開ける妹も妹達なのだが…今はそれどころでなく双子は姉が兄を押し倒そうとしているしか見えない場面を見て混乱していた。

 

ギャーギャー、ワーワー言い合うその場面を収拾するのに少々時間がかかったがその光景を小町がずっとニコニコしてみていたのは当事者からは分からなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

危うく姉さんとToLoveるになるところだったがそんなことをしたら俺が姉さん含む多数から呪詛を投げ掛けられるに決まっているのでひと安心した。

大騒ぎしていた香澄と泉美は小町が宥めたので落ち着いている。

 

「んで?どうして俺の部屋に来たんだ?」

 

今現在俺と姉さんが横並びで座り対面には俺から見て右から香澄、泉美、小町が座っている。

 

「お姉ちゃん達って七宝家のご当主様ってどんな人だが知ってる?」

 

香澄の質問に姉さんは「どうしてそんなことを…?」と思っただろうが思い当たる節に気がついて目が据わっているのに気がついたがそれを告げる前に俺は”生徒会にいる知り合いから聞かされた”事に対して香澄の目を見ながら告げた。

 

「香澄?お前七宝と問題起こしそうになったろ?」

 

「うぐっ!?ど、どうしてそれをお兄ちゃんが知って…はっ!?」

 

「香澄ちゃん…貴女七宝君といざこざを起こしたのね?」

 

「そ、それは…その…。」

 

「貴女ね…。」

 

俺の誘導で完全に自爆した香澄に姉さんの据わった視線が突き刺さり○いかわのように震えている。

これは完全に俺が窘める前に姉さんからの雷が落ちるな…と思いフォローに入ろうと思ったが泉美が割って入った。

 

「お待ちくださいお姉様、確かに香澄ちゃんは七宝君と私闘になり掛けましたが事の発端は香澄ちゃんではなく七宝君に大きな責があると申します。」

 

姉さんは据わった目で香澄と泉美を疑うような目で見る。

その気迫は香澄をびくつかせるには十分すぎるほどの気迫があった。

 

「(…流石にそれは本当だからフォローしてやるか。)姉さん、確かに香澄は風紀委員会として問題解決のために動いただけで先に難癖をつけてきたのは七宝の方からだったそうだ、ってのを達也から聞いたから間違いない。」

 

泉美と俺の言葉を聞いて姉さんは疑うような顔を解除した。

 

「分かった。二人の言葉を信じましょう。」

 

その言葉を聞いて香澄がホッとした表情を浮かべて泉美を見た後に俺の方を向いて「おにぃありがとう!」と言う表情を浮かべていたが事の発端を引き起こしたのは俺なので何と言う吊り橋効果だ、と内心で俺は自嘲した。

 

香澄が七宝家にたいして何か聞きたそうだったが俺はよくよく知らないので姉さんに視線を向けると俺の意図を理解してくれたのか頷いた後に三姉妹の方を向いて語りだした。

 

「それで七宝家当主について聞きたいんだったわね…そうね私も直接存じ上げているわけではないけど”堅実で周到な方”といった方が良いかしら?」

 

「堅実で周到な方、ですか?」

 

妹達が鸚鵡返しで姉さんの言葉を返す。

その印象に俺も入学式前に見た七宝琢磨の印象とは大分異なっていた。

 

「そう、堅実で周到、一目見ただけでは分からない。幾重にも策を巡らせてリスクを最小に押さえて確実に利益を取る、そんなタイプの方だったと思うけど。」

 

「でもそれって…。」

 

「ええ。やっぱり七宝君が香澄ちゃんに見せた印象とは正反対、対照的なスタイルですね。」

 

「七宝家がなにか企んでいる、って訳じゃなさそうだけどね?」

 

妹達がなにかを言い合っているが恐らく七宝家が七草家に対して何かの工作手段を講じていた、と思っていんだろう。

 

「ですが、なにかを企てるといっても高校生では出来ることに制限があります。それこそ魔法力が高くてもそれが師補十八家、二十八家であったとしても高が知れていること分かっている筈です。」

 

「アイツには七宝家以外に後ろ盾があるのかな?」

 

「…流石にそれは飛躍しすぎじゃない?」

 

妹達の会話に姉さんも思わず口を挟まずにはいられなかったが俺は考え事をしていた。

 

(七宝家…七宝琢磨が七草を敵視しているのは何となく分かる…だが…。)

 

俺は七宝が俺たち七草家を敵視しているのは高校生と言う子供から大人に掛けての丁度良い中間位置に立って魔法師としての能力、年齢問わずに見られ俺は凄い敵無しの万能である、と勘違いし始める時期に差し掛かって”そういう心持ち”になると言うのは誰もが通る道だろうと考え若干胃が痛くなったがそれはどうでも良いとして…。

 

(父さんがうちに女優を招待して密談しているのが気になる…このタイミングで、だ。)

 

「八くん、難しい顔をしてどうしたの?」

 

「おにぃ?どうしたの?」

 

「お兄様?」

 

「お兄ちゃん?」

 

「…ああいや。流石にそれは考えすぎだろ、って思ってな。」

 

考えていると声を掛けられその思考を中断し合わせるために姉さんの言葉を此方も真似するように告げる。

 

「あはっ、そうだね。」

 

「確かに考えすぎですね。」

 

「そうそう、考えすぎだよ二人とも。」

 

香澄、泉美、小町の三人は考えすぎか、とそう言って笑い合っている。

 

(少し佐織達を使って探りを入れてみるか…”七宝”と小和村真紀という女優…何らかの繋がりがあるかもな…もしそれで姉さんや妹達に危害が加わるようなら…。)

 

俺は裏で起こっていることを確認するために”猟犬”を放つことに決めた。

敵意や害悪を向けるのなら容赦はしない、そう心に誓って。

 

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