俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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結果は準備の段階で決まる

四月十九日、俺の直属の実働部隊と化している佐織たちの部隊へ裏の調査を依頼して直ぐ様その調査報告が上がってきた。

 

俺は自室にて佐織から報告を受ける。

 

「報告しろ。」

 

「ああ。だがその前にお前の耳に入れておきたいことがある。」

 

「何だ?」

 

「現在、国外の反魔法師団体勢力によってマスコミ工作が仕掛けられているようだ。」

 

「国外…というとUSNAの『人間主義者』か?何で今更そんなことを報告する?」

 

「新たな工作段階に入ったということだ。デモではなくな。」

 

「マスコミを使った反魔法師キャンペーンか。」

 

俺がそう結論付けると佐織が頷いた。

 

「国外の反魔法師団体はマスコミに資金援助も行っているようだ。マスコミだけではなく野党の国会議員にも手が回っているらしい。魔法師の人権を大義名分として魔法の軍事利用を非難、次に魔法大学出身者の四割が軍に所属していることを根拠に学校と軍が”癒着”していると架空の構図を作り出し第一高校を標的にして『軍事利用されている子供たちの解放』をアピールするのが奴らのシナリオらしい。」

 

「…去年の”ブランシュ”といい第一高校はイベントには困らないな本当に。」

 

その話を聞きながら俺は若干の呆れを含ませた表情を浮かばせるが佐織の表情は変わらない。

そしてその後に聞かされた情報の方が思わず耳を疑うしかなかった。

 

父さんがなぜ女優と密談をしていたのかが無関係だとは思えなかった。

 

それは小和村真紀が自らの目的を達成する為、彼女の父親が放送局の社長らしく”自分達は魔法師へのネガキャンを行わない”を理由として戦闘に向かない魔法師の勧誘を自らの目的のために行いたいが為協力を取り付けたらしい。

 

恐らくはその女が自分の味方に引き込みたい為にそう言った行動を取ったのだろうとそしてその件の女優はどうやら七宝家…ではなく七宝琢磨との関係があることが判明した。

恐らく七宝はその女に隙を漬け込まれて好戦的な態度を取っているのかも知れない。

 

一先ず後者よりも前者の問題を対処することが最優先事項だと判断して報告を受け取ってから事の真相を確認するために父さんの書斎へ向かうことにした。

 

◆ ◆ ◆

 

「…良く調べたな八幡。その事についてはお前に知らせていなかった筈だが。」

 

「少し学校で香澄達が七宝達と問題があったのと最近反魔法師団体勢力の動きが活発になってたのが気になってたから佐織たち使って調べさせたらまさかの…だけどな。」

 

書斎にて対面する父さんにそう説明すると顎を触って感心するような表情を浮かべていた。

父さんが小和村真紀と会談をしていた内容を知ったのは偶々だった。

 

「それで父さんはその女優と一体どんな話し合いをしていたんだ?」

 

「それにしても…ほう?小和村真紀が”七宝家”の長男と関係がある…か。なるほど。しかし、お前には話しておこうと思ったが手間が省けた…そうだな」

 

そして父さんからその会談での出来事を確認した。

小和村真紀の父親は放送局の社長であり反魔法師団体と密約を交わしておりメディアを使用して運動を行うつもりであったが其を反故したとの事だ。

其を促したのは小和村真紀であり彼女自身が有害なプロパガンダである、と断定したのは自分の立場と首を絞めるのに他ならないということらしい。

 

そこでだ、彼女は魔法師を軍事や警察だけでなく『報道や映像分野にも活躍の余地がある』として俳優、報道マン、スタッフとして魔法の価値は計り知れない、として戦闘の基準に満たずに不満に甘んじている魔法師のスカウトを許していただきたいとのことで先に述べた『反魔法師団体との密約を反故させた』ということに繋がる。

 

それは女優ではなく交渉人ではないのか?と話を聞いていて思ったが父さん、いや『七草家』が小和村真紀が魔法師のスカウトを黙認させて欲しいという交渉材料としては切れる手札としては最強だったかもしれないがその行動の裏を父さんに見透かされる程に心層の壁の厚さは薄かった。

 

父さんもその意図には気づいていたらしく『報道や映像分野にも活躍の余地がある』というのには全くの大嘘ということではなく本当の意味合いも含まれていたが彼女自身が『魔法師を直接的な手駒にしたい』という思いを見透かされ指摘されて動揺が一瞬走ったらしいがそこは実力派の女優の矜持故か直ぐ様ねじ伏せて父さんの目の前に対峙したらしいが其を見て父さんはこう告げた。

 

「あれは大した女優だったね。」

 

と若干な的はずれな感想を述べていたが。

 

その後の会話で父さんに真意を見破られ自身の敗北を認めたことで彼女の評価点が上がったらしくその健闘を称えこう告げたらしい。

 

『貴女が当家所縁、もしくは関係の有る魔法師に手を出さない限りは邪魔立ては致しません。』

 

そう父さんは告げて彼女はウチを後にした…がそれは思いもよらない伏兵()によってご破算になる。

 

「しかし、七宝の長男と関係を持っていたか…それならば彼女と交わしていた『貴女が当家所縁、もしくは関係の有る魔法師に手を出さない限りは邪魔立ては致しません。』というのは反故されたわけだ。」

 

「あーそれは…ご愁傷さま、としか言えないんだが…?」

 

実際に”七宝”はウチ(七草家)の関係無いと言えないのがが…一応は二十八家に属してるからな。

父さんと小和村真紀との会談の内容とその目的を確認し終えて話題は『反魔法師団体勢力によるマスコミを使っての魔法師へのネガキャン』の話題へ移行した。

 

「聞いた話、というか調べたことによると随分と国内のマスメディアへ反魔法師へのネガティブキャンペーンへの工作が進んでいるようだ。その対象にお前達の通う第一高校も含まれている。」

 

「やっぱりか。」

 

「ああ。それにマスコミが好きそうなネタも上がっていると聞く。」

 

「好きそうなネタ?」

 

「『魔法第一高校の在学中の学生が国防軍の特殊部隊に所属させられている』と言うな。しかし幸いにその所属している生徒の名前と見た目はマスコミには伝わっていないので直接の追求されることにはならないだろうが”情報として出回っている”ということでマスコミは喜んで捏造するだろう。」

 

まぁ国防軍やUSNAは俺を正体不明の戦略級魔法師『黒衣の執行者(エクスキューショナー)』だと疑われているらしいからな…まぁそれはいいとして。

 

恐らく達也の事だろうと直ぐ様考えに結び付いたがあれはあれで守秘義務があるので俺は律儀に守ることにしたが次の父さんから発せられた言葉に俺は耳を疑った。

 

「お前には言っておいたほうが良いかも知れないな…一高に第一○一旅団と深い関わりの有る生徒…司波達也くんは四葉の関係者だ。」

 

その瞬間に俺の脳内に二人の兄弟の姿が浮かび上がる。

 

「達也と深雪が…四葉?」

 

「ああ、と言ってもお前はあまり驚いていないな。」

 

父さんは拍子抜けしていた。

言葉こそ詰まったが動揺の顔が見られなかったからだろうか俺の知り合いが”四葉”と聞いたら何かしらの反応を見せると思ったがそうでもなかったからだ。

 

「まぁ、あり得るかなーぐらいで達也の戦闘力や深雪の魔法力…あれは二十八家…師補十八家の家系じゃないとぽっと出の突然変異魔法師じゃあり得ない、だろと思ってたから驚きはそこまででもないんだよな…。」

 

俺は特別”十師族”という枠組み、家の間でバチバチに対抗意識を燃やすわけではないのでこの反応はおかしいのかも知れないが俺としては通常の反応だ。

 

「そうか…まぁお前はそうかもしれないな。…お前も聞いたことがあるかもしれないが私と四葉家当主である四葉真夜殿は一時期婚約関係に有った。」

 

そう言って父さんは顔の片方を触る仕草を見せた。

室内だがサングラスを掛けており本来ならば眼球が収まっている部分には数十年前に生来あった眼球が”とある事件”により失われ義眼が収まっている。

 

「大亜連合に襲撃された際に私が非力…あの時の私がお前ほど力があれば真夜殿は…まぁそれはいい。真夜殿には姉がいる…深夜さんという女性だ。」

 

そう告げると父さんの顔には若干の陰りがあった。

しかし、その名前に思い当たる節が有った。

 

「深夜さん…まさか達也達の母親…?」

 

「ああ。旧姓四葉深夜…今は司波になっていたなこれは完全にあの兄妹を調べなければ分からなかったことだが」

 

父さんは「全くの偶然だったがね」というがあっけらかんに言っているので父さんもその当初そこまで驚いていないように感じるのは気のせいではないだろうな。

 

その話を聞いたとしても俺が件の二人にその事を話す必要はないだろう。

 

世間…魔法師の世界では”七草”と”四葉”は敵対敵視している関係だと思われているがしかし、蓋を開ければ父さんは四葉現当主に若干?の負い目を感じているようだし息子の俺が四葉の現当主の妹の息子娘と事を荒立てる必要もないしな。

 

「さて…昔話はそこまでにしておいて八幡。お前に仕事を振ろう。」

 

父親の顔から七草家当主への顔に変わる。

 

「今回外部からの反魔法師団体…国内のマスコミを使ってネガティブキャンペーンを行っているのは知っていると思うが七草家は魔法師の一族としてこの行為を看過することは出来ない。」

 

父さんはサングラス越しに俺を見る。

 

「国外の反魔法師団体が行ったものだが日本国内の反魔法師団体も資金援助と情報を受けている。八幡、『世論』…不特定多数における対処方法が何が有効なのか知っているか?」

 

「『分断』…だと思う。『分断』されれば主力の意見から切り離されたグループは勢いは失われていくし大多数の人間ってのは対象に触れる勢い…話題性が無くなれば興味を失ってその話題の流行性は”別のものに差し変わる”もんだからな…今起こっている反魔法師運動も。それは『世論』でも学内での『イジメ』も変わらない。攻撃対象が”グループ”か”個人”かの違いだよ。」

 

これは俺の個人的な感想…というか俺の実体験だからこそだが父さんは俺の返答に満足していた。

 

「そうだな。『世論』という大火事を鎮火させるのには並大抵の事ではない。だが、それに同調するものは全てではないということは分かるな?『全員がそのものに対して悪感情を持っている』訳ではなく一部が対象物からの矛先を変えるために別の反魔法師キャンペーンを演出しようとしている。先に告げた第一高校が対象になっている、というわけだ。」

 

「分断して大火事から小火にするってこと?」

 

「そう言うことだ。」

 

被害を最小に、というのはどこでも一緒だと。

佇まいを正して俺に告げた。

 

「だが今回はお前達が通う第一高校…それにお前の親友が含まれているとなると看過することは出来ない。かといって直接介入すれば攻撃対象は大元に差し変わり日本魔法師の利益を損なうことになるだろう。」

 

「俺に対処しろって?無茶言うなよ。」

 

「マスコミ連中が魔法師の存在が国防…その武力に依存、密接に関わっていることを問題視している、という点だ。逆に考えてみろ八幡、何故マスコミ連中はこの日本が他国に狙われ魔法師の力を国防に組み込みその恩恵を受けているのに関わらずその中心時点から排除しようとしているのか。日本という国とその武力が停滞、低下して喜ぶ国はどこだと思う?」

 

俺の脳裏に先の『横浜騒乱』での出来事、俺に好意を寄せてくれている少女が血まみれで俺の腕の中でその生命が弱まっていった事を思いだし思わず握り拳を作っていたことを自覚する。

 

「大亜連合だろ。」

 

そう呟くと父さんは頷いた。

 

「ああ。きっとこの先もこのような後ろで手を回して我々の行動範囲を狭めてくる可能性が大いにある。それとこの間のように直接的にな。」

 

その悪意有る行動に父さん、姉さんや小町、香澄、泉美が巻き込まれるである可能性は大いにある。

 

ーそれならばー。

 

「思いどおりにはさせない…ってね。連中が声高に魔法師と国防軍との癒着、を騒ぎ立てるなら魔法師が戦う以外で社会的貢献をしている、ってことを逆にマスコミを使って大々的に宣伝してやればいいしな。」

 

その後父さんの書斎を後にした後に佐織からの連絡が入る。

 

『視察日程が確定した。四月二十五日、来週の水曜日に野党の神田議員が取り巻きの記者を引き連れて視察に訪れる。恐らくただのパフォーマンスだろう。』

 

俺はどう対処するか思考を巡らせることにした。

 

◆ ◆ ◆

 

明くる四月二十日、俺は深雪経由で達也に呼ばれて生徒会室に連れ込まれるとそこには中条先輩と五十里先輩が既に待機していた。

 

「えーと…何で俺呼ばれたん?」

 

俺を呼んだことと中条先輩達をここに集合させたのは直近である”神田議員が第一高校へ視察”のイベントの事を告げるためだったらしい。

それを聞いた中条先輩が自分の座席の椅子を倒してしまうほどに動揺していた。

俺はそれを聞いて達也にジト目を向ける。「お前…それ誰から聞いたんだ?」というような視線を向けると「やっぱり知っていたか」というような表情を向けられ追求するのがバカらしくなったのでやり取りを聞くことにした。

 

「…そんなに慌てることかなぁ?」

 

五十里先輩にくっついてきた千代田先輩が能天気に反応を見せていたが嗜めていた。

いや、甘く見すぎですからね先輩。

 

「いや、由々しき事態だよ花音。」

 

五十里先輩が千代田先輩に事の重大さを説明していたが自分よりも中条先輩や俺、達也の肩を持ったことに自分では意識をしていないだろうがムッとしていたが次の言葉ではっとしていた。

 

「軍が魔法師を登用したい事を止めさせたい人物達が権力を握れば僕たち魔法科高校生が卒業後に防衛大に進学、魔法大学の卒業生が卒業後の進路に国防軍に入隊されることを禁止してくるに違いないし、僕たち魔法師が国防に関心を持つことを制限しようとして来るだろうね。」

 

「…まさか、思想統制をしようって腹図もり?」

 

千代田先輩が告げた言葉に五十里先輩が思いもよらない毒舌を発したことで若干鼻白んでいた。

俺たちも優男な雰囲気の有る五十里先輩がそんなことをいうとは…と俺と達也が驚いていた。

一応俺も補足をしておくことにした。

 

「今回の神田議員の来訪は魔法師を国防のから排除したい…シナリオ上で学問を学ぶ学校が魔法師を兵器として教育している軍事教育の場と化していて学校が学生を軍人になることを強制している、と強調したい、これは反魔法師団体勢力によって企てられた一種のイベントですよ。まぁ神田議員の場合は”支援者”からのご機嫌伺いの面があるかと思いますが直近で起こっているメディアを使用した反魔法師運動…恐らく裏には日本の魔法力を削減したい、」

 

俺は言葉を切ってぼかしながら説明した。

こうした方が深刻度が深まると思ったからだ。

 

「先の横浜騒乱…”お隣”の国がこれらに関わっているでしょうね。」

 

「「「……!?」」」

 

俺と達也、深雪を除いた三名が驚愕した表情を浮かべている。

 

「八幡くんのいうように他人事のように考えちゃダメだよ花音。それで、司波くん達はどう対処するつもりなの?」

 

五十里先輩は自分の恋人に強く言い過ぎたのに気がついたのか話題転換のために達也に話題を振った。

達也もその為に呼んだのだと、言わんばかりに深雪に目配せして手に抱えていた電子手帳を手渡した。

 

「八幡の言うとおり”彼ら”は魔法科高校が軍事教育の場と化しており学校が生徒を軍属とすることを良しとしている、と非難したいしたいわけです。ならば軍事目的以外で魔法教育の成果が出ていればいいのではないでしょうか?と自分は考えました。」

 

深雪から渡された電子手帳を見ながら恐らく千代田先輩達と同じ感想をこの提案をした本人に対し向けていた。

が、魔法に無知なもの達にとっては「凄いことをしている」と論点をずらすには十分な実験だった。

だが神田議員を黙らせる十分すぎる実験に俺は内心でほくそ笑んだ。

 

「という訳なので神田議員の来校に合わせて少し派手なデモンストレーションを行いたいと思います。」

 

「…少し?」

 

「これが?」

 

「派手なことを立案したもんだな…。」

 

「準備は大がかりなものになりますが普段から行っている放電実験や爆縮実験と大差有りませんよ。”見かけの上”では、ですが。」

 

その端末上に記された実験内容…加重系魔法の三大難問の一つである『常駐型重力制御魔法式核熱融合炉』の縮小版であるものをこの学校でのデモを行う、とこの仕様書には書いてあるのだ。

中条先輩、五十里先は食い入るように端末を見つめたまま独り言のような呟きを終えた後顔を上げる。

 

「これが司波くんのプランなんですか?」

 

「独自のアイディア、というわけでは有りませんが俺が最終的に目指しているものです。実現までまだ必要となる魔法スキルが足りないため実用化にはほど遠いですがここに加重系統魔法に精通した魔法師と当校の魔法師の実力を持ってすれば短時間と言えども実験炉を安定的に動かすことは可能です。」

 

”精通した”の部分で俺を見たのは巻き込むためだった、と理解しため息を吐きたくなったが事情が事情なので拒む必要もなかった。

逆にこの野党議員のもくろみを潰すための対策をどうしようかと達也に相談をしたかったのでまさに”棚からぼた餅”であったがな。

 

こうしてここにいる全員が達也の『恒星炉実験』に加わることになり俺はその考えに乗っかることになったが達也も俺を利用しているのだろう、と理解した。

 

「この実験に必要な【第四態相転移】を使う人物と機材操作に心当たりがあるんだが…そこは任せてくれないか?」

 

「頼む。」

 

俺はこの際だからと親族を巻き込むことにしたした。

実際に彼女達の魔法力はこの実験に置いて必須だと感じたからだ。

 

◆ ◆ ◆

 

放課後、俺は一年のクラスへ向かうことにした。

恐らく『恒星炉実験』の際に必要になる能力だからだと思ったからだ。

実際に達也に相談してみると「是非頼む」とお願いされた程だったからな。

 

去年まで自分達がいたクラス…の隣の教室に足を運ぶと一年生がぎょっとした表情でみて驚いていた。

ヒソヒソ声は聞こえてくるが「嫌悪感」や「悪意」ではなく何故か「尊敬」や「好感」といった感情が俺へ流れてきていた。

特に下級生の女子生徒からは「あれが七草様…!」と姉さんの九校戦でしか聞いたこの無い呼び方を耳にしてなんとも言えない感情になったのはここだけの話だった。

いや、様って…愛梨じゃないんだからよ。

 

1-Aを通りすぎ目的地である1-Bの入り口から顔を出す。

放課後直後だったのでまだ教室には生徒が多数残っており俺は近くにいた女子生徒に声を掛けた。

 

「あ、すまんちょっと良いか?」

 

声掛けがよくなかったのかもしれないが声を掛けられた女子生徒は怪訝な表情を浮かべてこちらを振り返っていたが俺の顔をみて驚愕に染まっていた。

 

「七草先輩っ!?ど、どう言ったこ用件ですかっ!?」

 

そこまで驚かれるとは思っていなかったのでちょっとショックだったが用件を手短に伝える。

あとこの後輩のリアクションが大きいものだからクラス内が若干ざわつき始め俺の存在を認識し始めていた。

 

「あ、いやこのクラスにいる七草泉美を呼んでほしいんだが…。」

 

「は、はい分かりました!」

 

そう言ってパタパタと教室中心部へ掛けていくと騒ぎが大きくなった。

「あの七草先輩が一年教室に来ている」だとか「後輩の様子を見に来た」とかそんな感じだったが…や妹達を呼びに来ただけなんだけど。

 

好奇の視線が俺に突き刺さりさっさとこの場から立ち去りたい俺の心情を知ってか知らずか双子の妹は素早く俺の元に到着した。

既に生徒会に向かう準備をしていたのか手には鞄をもっている。

 

「お兄様お待たせしました!…でもどうして一年生の教室にいらっしゃったのでしょうか?」

 

首を傾げる双子の妹に愛くるしさを覚えて思わず頭を撫で掛けたが流石に多数生徒に見られる場所で行うほど自制心を失っていないので言葉を掛けた。

 

「ちょっとな…俺も生徒会に用事があったから迎えに来たんだ。それに香澄も今日は生徒会室に呼ぶ。」

 

「用事、ですか?」

 

「ああ。それについては生徒会室に着いてから説明するから。」

 

そう告げると泉美は素直に着いてきてくれた。

その後に香澄と小町の教室を訪れてから共に生徒会室に急いだ。

 

◆ ◆ ◆

 

生徒会室にお邪魔し席に着くと既に生徒会の面々が仕事をしていた光景が目に入る。

今は泉美は荷物を置いて今はほのかと一緒に生徒会の業務トレーニングに勤しんでいた。

話題を切り出そうか、といったタイミングで生徒会室に廿楽先生が到着したことでほのか達は作業の手を止めて俺は達也に促され生徒会室に設置された対面になっているソファーに先生と俺たちで向かい合うように座りテーブルの上では達也が申請をしていたであろう『恒星炉実験』手順が記された端末が置かれていた。

恐らく実験に際して先生が同行することで許可が降りたのだろうと判断した。

 

「実験の手順を拝見しました。とても面白いアプローチだと思います。」

 

ピクシーに指示を出して差し出したお茶で喉を潤してから廿楽先生は好感触の第一声を発した。

 

「それで司波くん。役割分担はどのように考えているのですか?」

 

ここで言う役割分担は『恒星炉実験』に使用する五つの魔法、【重力制御】【クーロン力制御】【第四態相転移(フォースフェイズシフト)】【ガンマ線フィルター】【中性子バリア】の事だ。

 

「まずは【ガンマ線フィルター】に関しては光井ほのかさんにお願いしようと思います。」

 

「え!?わ、私ですか?!」

 

突如として達也から指名され実験の内容を説明されていないのだからすっとんきょうな声を上げるのは当たり前だろう…達也は俺を見て「説明頼む」と視線で告げてきやがったんだがこのにゃろう…?となったが話が進まないので俺がほのかに事後承諾をお願いする。

 

「電磁波の振動数コントロールを行う魔法に掛けてはほのかの右に出るものはいないから…この実験にはほのかの力が必要になる。事後承諾で申し訳ないんだが…引き受けてくれないか?」

 

「…!?はい分かりました!やらせてください!」

 

ほのかの思いきりのよさに承諾に若干の不安を覚えてしまったが一先ずは説得に成功し達也と廿楽先生の会話が続く。

 

「【クーロン力制御】は五十里先輩にお願いしようと思います。」

 

既に話が付いていたので五十里先輩は頷いていた。

 

「【中性子バリア】については一年生に心当たりがありますのでそれは彼女に任せようと思います。」

 

達也の言葉に香澄と泉美がピクリ、と反応していたが俺が視線を向けるとサッと恥ずかしそうに視線を反らしていたが自分達の事だろうと思ったのは無理もない。

実際に【中性子バリア】ではなく別の実験使用魔法の為に呼んだからな。

 

廿楽先生から「一体だれを起用するのか」と問いかけられて従姉妹に当たる美波を起用することにしたらしい。

一瞬一年生を起用すると聞いたときに不安を覚えたようだったが達也が自分の親族です、と伝えた瞬間に懸念の色はなくなり安堵していた。

恐らくは”あの司波兄妹の親族”と言う点で信頼できるとなったのだろう。

 

そして達也が再び俺へ視線を向けてくる。

この人選は俺が説明、ほのかと同じように事後承諾の形になってしまうことになってしまうが俺が廿楽先生へ説明する事にした。

 

「【第四態相転移】に関しては自分の妹である七草香澄、泉美に任せようと思います。廿楽先生もご存じかもしれませんが二人の特性を使えば可能です。香澄、泉美。事後承諾で悪いんだが…引き受けてくれるか?」

 

「勿論だよ。兄さん。」

 

「ご協力いたします。お兄様。」

 

二人は一つ返事で承諾してくれた。

 

「【重力制御】に関しては七草八幡にお願いしたいと思います。」

 

再び説明が達也に切り替わって俺を見ながら配役を説明する。

 

「妥当な人選です。」

 

廿楽先生も安心した表情を浮かべていたのは達也と俺が選出したメンバーがこれ以上にない物だったからだろう。

後で聞いた話だと俺が参加しなかった場合深雪が【重力制御】に携わる予定だったらしいが…。

まぁそれはどうでも良いとして今回の実験は表向きには”神田議員の来訪を知らない”という体で実験装置と準備を進めなければならない。

この秘密を知るものは少ない方が良いし短い期間で実験装置を作り上げなければならないが…論文コンペティションの時とは違い構造物としてのエネルギー炉を作るわけでなく構造上の仕組みを見せるだけだ。

しかし、実験に必要な機材を揃えるのを学校に黙って揃えるのは非常に難しい…がそこは廿楽先生と俺(七草家)のコネを使って実験に必要な機材を揃えることに成功した。

やはり権力……!

 

さらに生徒会だけでは人数が足りないためハードに強い人材を召集することにした。

魔工科に所属、達也と同じクラスに所属する十三束鋼、そして平河千秋に協力をお願いした。

平河は達也に対して敵対心を抱いていたが俺に対しては結構フレンドリーだったのが助かった。

そして機材操作を行うために小町も召集すると「うへ~」と言った表情を浮かべていたが家でもCADの調整を手伝わせているのでこの程度の機材操作なら問題無かった。

 

短い時間でこのような大がかりな実験が成功するのか?という不安視をするのがあったが俺と達也主導で仕組みを見せる実験構造物を組み立てていくとその不安の表情は立ち消え手応えを感じていた。

その中には見慣れない男子生徒…銀髪の少年が俺と達也に憧憬の眼差しを向けた少年が俺に掛けよって「七草先輩のお手伝いを出来るなんて」といわれて怪訝な表情を浮かべていると達也が説明をしてくれた。

この隅守賢人という少年は俺達の九校戦での活躍を見てこの学校へは魔工科を目指して入学したらしい。

キラキラした表情で俺や達也を見るものだから少し居心地が悪かった。

 

数日が経過し結果を省略するが装置は完成、そしてその実験リハーサルも成功し明日来訪する神田議員の到着を待つだけとなった。

 




弘一と十文字のやり取りですが裏で七草家が扇動している訳でないのでカット
→八幡にネガキャンの阻止と並びに達也達が四葉の関係者であることが判明。

神田議員来校とイメージ向上の作戦は本編通り。
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