【スティープル・チェース】編も執筆してるのでこうご期待。
七宝と香澄、泉美の試合から二日明けて4月28日の土曜日の午後三時。
またしても、と言うか俺は深雪に連れられて第三実習室に訪れていた。
本日は七宝VS十三束の決闘が行われる。
この試合はある意味で部活連執行部預かりになるため先日の試合とは違って審判は服部先輩が務めることになった。
ちなみに立会人は俺、香澄に達也に深雪、風紀委員会として実力者である幹比古、そして沢木先輩に桐原先輩がこの場にいた。
正直十三束に対して七宝がどう対応するのかが気になって着いてきただけなんだがお邪魔すると歓迎されたので問題はないだろう。
まぁ七宝からは露骨に嫌な顔をされたがご愛敬だろう。
この場にいる全員がCADを携帯している。
俺はこの試合があることを忘れて帰ろうとしていた途中だったが桐原先輩は木刀と私物CADを携帯していたのは”いざというとき”に仲裁をするためだったりする。
どうしてそんな物騒なことになったのかと言うと今回のルールが特殊だったからだ。
「ルールを説明する。致死性の攻撃、治癒不能な攻撃を禁ずる。だが『ミリオンエッジ』については使用制限は無しとする。」
本来であればこの試合ルールは七宝が断然有利なルールであるがこれを言い出したのは対戦相手である十三束本人からである。
それ即ち十三束には七宝の『ミリオン・エッジ』を無力化する秘策があると言うこと他ならない。
俺はその”秘策”とやらに興味が湧いた。
「おにぃ…悪い顔してるよ?」
「ん?そうだったか?いや自分にも応用できるのがあれば良いなーって思ってさ。」
俺の企み顔を見て小町が呆れていた。
その”秘策”とやらも十三束自身の特徴から来るものだろうと予測はしていたが実際に試合を見なければ予測の域を脱しない。
そんな中十三束と七宝が向かい合う。
共に衣装は制服ではなく十三束はマジック・マーシャル・アーツのユニフォーム、七宝は野外演習場のツナギを着用している。
「始め!」
服部先輩が掛け声を掛ける。
最初に動いたのは七宝でありハートカバーを開いて『ミリオン・エッジ』を発動させる。
だが百万の紙片をばら蒔くのではなく小出しにだして精密なコントロールをする方法を選んだようで角度、速度は百万の紙片を操っていたときよりも洗練されているように見えた。
対する十三束は迫り来る叢雲を防御姿勢を取りもせずに仁王立ちをしていた。
細かい紙片が四つに別れ十三束の四肢へ狙いを定めている。
恐らく七宝は十三束の移動力の低下を狙って戦闘不能にする腹積もりらしい。
無抵抗な十三束の四肢に絡み付く紙片の大群はその皮膚を切り裂き鮮血を撒き散らそうとする。
がそれは出来なかった。
同時に十三束の四肢、いや全身から青白い光が噴出し纏わり付く紙片の刃が無力化されて”ただの紙屑”へ戻っていく。
先輩達と幹比古は眩しさに目の前に手を翳しており達也達と俺達も眩しさに目を細めていた。
俺と達也はよくよく知っている魔法、得意とする魔法だった。
隣にいる香澄が驚いた声を挙げている。
「『
「ああ。接触型、と枕詞を付けた方が正しいかもな。なるほどこれが十三束の”秘策”か。俺の『
「そのとおり!流石は七草君!よくわかったね!」
打ち落とすならば少々手間だが彼の使う《接触型術式解体》は『ミリオン・エッジ』の天敵だった。
これでは七宝の『ミリオン・エッジ』は通用しない。
(さて七宝…この強敵にどう対応する?馬鹿の一つ覚えで『ミリオンエッジ』を発動していても勝てる相手じゃない、と理解できるか怪しいもんだが…な。)
だが流石に七宝も先日の事で学んだのか使う魔法を変更した。
《エアブリット》を用いた目眩ましを行い本命である『ミリオン・エッジ』で仕留める形に切り替えた。
発想は良い。
だがその程度の小手先の技術では『レンジ・ゼロ』を倒すには至らない。
自己加速術式を用いて追撃を仕掛けようとしたが既に『ミリオン・エッジ』は無力化されて七宝へ十三束のボディブローが二発突き刺さり地面へ崩れ落ちる。
七宝は勘違いしている。
俺の《解体反応装甲》とは違いタイミングを見計らっての発動…ではなく文字通り常時発動していると言うことだ。
即ちその《術式解体》を無力化しない限りは”抜くことは出来ない”のだ。
崩れ落ちる七宝を”ゴミを見るような目”で見て見ていた。
再び立ち上がり十三束に攻撃を仕掛けるだがその本質を理解していない七宝は再び魔法を無力化されて今度こそ決定打となる一撃を入れられ今度こそ勝敗を決した。
「そこまで!勝者、十三束。」
服部先輩からの宣言を受けて一礼する十三束。
そして床に崩れ落ちる七宝の横に跪いて声を掛ける。
「意識はあるか七宝?」
「はい…大丈夫です…。」
「では立って壁際で休んでいろ。」
「…はい。」
俺には十三束がなぜ七宝にそんな指示をだしたのか分からないままその成り行きを見守っていると今度は俺と達也に飛び火した。
今度はまさかの十三束が達也に勝負を持ちかけた。
突然の事に俺も驚いたが一番驚いたのは達也本人だろう。
逃げようにも隣には深雪がおり先日七宝が達也に告げた「雑草のあんたに言われたくない」と言うのがよっぽどお冠だったのかとてつもない威圧感をだして達也に説得に掛かっていた。
その途方もない圧力に達也も思わず頬に汗を流していた程で結果として十三束と達也で試合をする事になった。
結果は割愛するが十三束は達也に一撃を入れたが『術式解体』で十三束の鎧を壊して至近距離でパラサイト戦で見せた『遠当て』をぶち当て吹き飛ばした。
あまりの勢いでノックアウト、結果として達也の勝利となった。
これでお開きか…となったが今度は俺にも飛び火した。
達也が十三束を起き上がらせ互いに称賛していた…が今度は十三束が俺の方へ向かってこんなことを告げた。
「七草君…司波くんと勝負をしてくれないか?」
「はぁ…!?何で俺が試合しなくちゃならんのだ?」
俺が男気に答えて勢いよく「ああ!」とでも言うと思っているんだろうか?
俺は根っからの面倒くさがりな男だぞ?
そんな反応をされると思わなかったのか面白いほどに狼狽している。
「あ、ごめん…そうだよね唐突過ぎたよね…つまりは…」
唐突な提案に俺は間の抜けた声をだしたがそれを援護するように服部先輩が補うように告げた。
「つまりは七草。お前の実力をそこにいる七宝へ見せろ、と言っているんだ。」
「何で俺がそんなことをしないと行けないんですか?上級生の実力なら既に達也と十三束の二人が見せたでしょう?」
そう返答すると服部先輩は首を横に振った。
「いいや、十師族であるおまえの実力を見せることに意味があるんだ。」
先輩の説明は俺を動かすには不十分だった、がそれは香澄の一言で変化する。
「兄さん、是非ともその実力を私たち下級生に見せてくれませんか?」
「香澄?」
「下級生に模範を見せる…風紀委員会副委員長として風紀を乱す下級生にその存在を知らしめることは大切なことだと思います。」
「え、ちょっと言ってること無茶苦茶じゃない?」
困惑する俺に香澄は本音を漏らした。
その呟きが香澄が七宝から受け取った”屈辱”であることを理解するのにそう時間は要らなかった。
そしてその香澄の思いに答えないほど俺は兄として薄情ではなかった。
「私は…兄さんが七草の養子であることで…その実力は本物なのに…その力を疑う者に私は許せません。」
俺は香澄の頭を撫でて落ち着かせる。
「…そっか。分かったよ。…悪い達也。妹の頼みなんで少し力貸してくれないか?」
「おにぃ…。」
「ありがとうな。」
「……///うん。」
香澄の側から離れる前に上着を脱ぐと預かってくれた。
それを確認して定位置に立つ。
「ああ。俺も一度お前と試合をしてみたかったところだ。」
達也の了承を得て俺達はそれぞれの立ち位置に立つ。
実習室に舞い散った紙吹雪は深雪が掃除して会場の準備を整えた。
準備が済んで共に制服のジャケットを脱いで達也はホルスターから拳銃タイプのCADを引き抜いて俺は無型で立つ。
試合のルールは先程と同じく致死性の魔法の禁止、治癒不能な攻撃は禁止それ以外はルール無用と言うことになる。
先程の試合同様審判は服部先輩が受け持つ。
◆ ◆ ◆
「それでは…両者準備は良いな?始め!」
七草家が養子を迎え入れた、と聞いたとき七宝は鼻で笑った。
第三、第七の研究成果を掠め取ったに飽きたらず他所の魔法師の血を取り入れることに。
が、実際にその養子の活躍は凄まじいものだった。
一学期早々に反魔法組織である『ブランシュ』を十文字家合同で壊滅させ九校戦では妨害されながらも第一高校を優勝に導きエンジニア・選手の両面で大活躍。
そして論文コンペの10月に発生した『横浜騒乱』では鬼神の如く活躍で市民、魔法協会から表彰され『横浜騒乱終結の英雄』とまで言われるようになっていた。
しかし、坊主が憎けりゃ袈裟まで憎い理論で七草家を敵視する琢磨は『七草の家名を高めるための工作』と七草八幡を侮ってたが今目の前で起こっている同時に司波達也と言う先輩は二科生から実力で魔法工学科の設立を学校に認めさせ進級した先輩との試合に琢磨は目を釘付けにさせられていた。
正直司波達也という先輩も七草のおこぼれを貰って有名になっただけの人物だと、そう認識していた琢磨だったがその認識は百八十度変化した。
(これが本当に…七草先輩達の実力だってのか…!?)
魔法が飛び交い肉弾戦を繰り広げる、先程まで十三束に一方的に殴られていた自分とは違う”実力者”同士の戦いの光景が琢磨の眼前に広がっていた。
視点は変わり八幡達同学年とその妹と上級生達。
服部が腕を振り下ろすと同時に両者共に距離を取り達也は実習室端まで移動して『シルバーホーン』を向けると『霧散霧消』を発動した。
(お兄様『霧散霧消』を…!?)
深雪がギョッとした表情を向けるがお構い無しにその引き金を引いた。
が、その魔法は八幡を捉える事は出来ずにいつのまにか”中間のラインギリギリにまで移動していた八幡が居る”事にこの試合を見ていた全員が驚愕していた。
(なに…!?)
八幡は既に《偽装工作》を発動しており達也の魔法の照準から逃げており手を翳して『詠唱破棄』による高速発動、『
多重複合の魔法を混線無しに使用している事に琢磨達は絶句した。
爆撃と斬撃が一斉、それも一つではなく複数の魔法を捌ききるために達也は防御へ回るしかなかった。
『術式解体』をセレクトし八幡の魔法を無力化する。
一方で達也が自身に使用していた魔法の正体に気がついて絶句していた。
(達也が俺に使おうとした魔法…『分解』かよ…!だからあんなにも歪な魔法占有されてたのか…一歩間違えば俺の身体が吹き飛んでショッキングな映像をお届けすることになっちまうよこれ…やっぱり達也には通らないわな…だとすると十三束のように接近戦か。が、その前に牽制させて貰う!)
軍事規定でもAランクの殺傷魔法を達也が使えることに驚いたがそれよりも様子見で俺にそれを使うか…?と若干引いていた八幡だったが力を貸して貰っている以上は文句を言えなかった。
達也の死角からの降り注ぐようにドライアイスの弾丸が発射され達也は間一髪で回避するがその銃座の数は”四”。
八幡が真由美からインスパイヤを受けて作成した魔法『魔弾の射手』ならぬ『ファントム・バレット』が達也を狙う。
(くっ…八幡めこれが戦場なら嫌らしいにも程がある!)
達也もそう言いながら回避しながら『術式解体』で銃座ごと潰す作業に移っていたがこれが八幡の狙いだった。
「しっ…!!」
八幡は自身の魔法が悉く解体されているのを冷静に見ながら遠距離では埒が明かないと判断して自身に自己加速術式を発動させ正面から突撃する。
達也へ向かって放たれた拳底は鈍い空を切る音を轟かせたが達也は察知しCADを持っていない方の手でいなし回避する。
空気が破裂する音が響く。
今度は逆に今度は達也がその腕で殴り付けてきたが八幡も受け流し回避し後ろへ少しバックステップを踏んだかと思いきや地面ではなくその場で少し飛び上がって空中を足場にして踏みしめ突撃する。
受け流したと思えば次の攻撃が飛んできており八幡はパチンコ玉のように達也の空間を縦横無尽に跳び跳ねて蹴りや拳を浴びせかけていた。
達也はその攻撃をいなし、無力化することで対処し壮絶な乱打に達也は驚いていた。
逆に殺傷する気は無いにしても防がれていることに八幡も驚いていた。
(くっ…これが八幡の『四獣拳』か…俺の身体技能よりもこれは確かに上だ…!)
(マジかよ!?これを耐えんのか?)
拳打の応酬に観戦していた上級生が度肝を抜かれていた。
「二人とも凄いな…司波くんのは今の試合で見せて貰ったが七草君のこれが噂に聞く『四獣拳』…流石は呂剛虎に勝利しただけある…!」
沢木はワクワクしながら感想を言って。
「逆にこれ下級生が見たら自信失わねーか?現に俺失いそうなんだけど。」
桐原は若干引き気味に感想を呟き。
「これが七草君の格闘能力…凄い…凄いよ!僕も一戦交えたいな!」
十三束は燃える闘志を沸き上がらせながら感想を述べている。
上級生の会話を聞きながら幹比古はただただ驚嘆していた。
話には聞いていたがここまで達也が防戦一方になっている姿に驚きを禁じ得ない。
達也の体術は並みの、いや高校生以上の体術を保有していると言っても良いだろうが八幡はそれを上回り達也を追い詰めている。
非殺傷、と言う縛りがあるからか振り抜く拳は軽く握ったものだが当たれば気絶は逃れられないのは必定だろうと素人目でも理解していた。
(なんなんだよこの先輩達は…!?)
そんな光景を見て琢磨は少し脳を焼かれていた。
勝負が動いたのは八幡が達也に蹴りを浴びせたタイミングだった。
顔を狙った攻撃を達也は腕をクロスし防御するがそれはフェイントでありガードした瞬間を狙って膝に攻撃を当てると達也の体勢は崩された。
その隙を逃す筈もなく『詠唱破棄』による自己加速術式を掛けて達也の背後に回り込んで達也が知覚するよりも早く背中に優しく掌を押し当てると衝撃で吹き飛ばされた。
吹き飛ばされたことを自覚した達也は受け身を取って振り返る、するとその吹き飛ばされた勢いに到達するように八幡が迫ってきていた。
達也は此方に迫る際に八幡が自分自身に二重の自己加速術式を発動していることを《精霊の眼》が知覚した。
その勢いを消滅させるために分解魔法を選択した。
《術式解体》ではなく《術式霧散》を発動。
到達するほどの速度を持った魔法は分解されて八幡の速力は失われその表情に驚きが染まっていた。
慣性は殺せず接近する八幡に対し達也はCADを持っていない方の掌に想子を集約し《徹甲想子弾》が放たれた。
が、しかしそれは”八幡には到達しなかった”
(なに…っ!?)
達也の目の前にいた筈の八幡の情報体が陽炎のように消失している事に気がついたのは再び吹き飛ばされ衝撃で後ろを見たときだった。
達也が『術式解体』を使用することを予め行動に織り込んでいた。
無力化した術式は『自己加速術式』ではなく『偽装工作』で偽ったガワの部分であり八幡自体に既に掛けられていた『二重自己加速術式』はその効果を活かしたままであった。
吹き飛ばされたのはシングルアクションの『エアブリット』。
衝撃で地面に膝を着いて反射的に武器を構え上を見上げると八幡がホルスターからダブルバレルの拳銃型CAD《フェンリル改》を達也の脳天目掛け突き付け背後には展開待機中の『フラッシュエッジ』が複数あることに気がついた達也は手に持っていたCADを地面に置いた。
ここが戦場であれば降伏をせずに『フラッシュキャスト』を用いて反撃することは可能だがこれは実戦、殺し合いではなく学校の試合であることを達也は理解していたので降参のポーズを取った。
同時に達也に突きつけられた特化型は八幡の心臓部分に向けられていた…が心臓から数センチずれていた。
両者共に致命傷であったが八幡は即死ではなかった。
それを瞬時に判断した達也。
しかし、達也も男なので負けたことが悔しかったのか八幡を見据える視線は鋭いものだったがそれに気がついたものは対戦相手の八幡しかいない。
それは同じく八幡も同じ表情を浮かべていた。
八幡と達也もそれを指摘するほど子供ではなかった。
「両者そこまで!勝者七草。」
服部は状態を確認して八幡は達也に手を差し伸べてそれを笑顔で握り返した。
同時に琢磨は第三実習室から駆け出し逃げ出した。
◆ ◆ ◆
七宝は上級生…自分が侮っていた先輩の実力を目の当たりにしてロボ研ガレージすぐ側にある大樹に拳をうち当てていた。
「くそっ、くそって、くそっ…!!」
「あっ、ちょっとやめなよ琢磨くん。血が出ちゃってるよ。」
罵る声が震え始めた頃に自分の名前と行為に対してやめろと制止する声が聞こえた。
その声は先日に試合をした少女によく似た七草の双子ではなく八幡と同じく七草に招き入れられた少女の声だった。
勢いよく振り返るとそこには心配そうに琢磨を見る小町の姿があった。
想像していた少女とは違ってついぞ毒気を抜かれて力無く打ち続けていた拳を下ろした。
「七草…お前か。」
「帰ろうと思ったら目の前を琢磨くんが通り抜けていくんだもんビックリしちゃった。あ、勘違いしないでね別に気になって着いてきた訳じゃないから。」
いや、それは気になって後を着いてきたのでは…?と琢磨は思ったがそんなことを指摘する声を出すほど気力は無くなっていた。
そう告げた小町は自然体で琢磨に近づいて怪我している手を取った。
「何をっ…!?」
「良いから…じっとしてて。うわっ、皮がズル剥け…うわ~グロいなぁ…。」
出血に顔をしかめながら小町は上着に取り付けているポーチから消毒液と包帯を取りだし的確に治療していく。
あまりの手際によさに琢磨は反論を忘れ見惚れていたが消毒をぶっかけられて顔をしかめる。
「骨まで見えてないから大丈夫だと思うけど痛い?」
「大丈夫だ…。」
ぶっきらぼうに答えてしまったのは心配をされたときに真っ直ぐと此方の瞳を心からの「心配」からの気遣いが伝わってきて気恥ずかしくなったからだった。
視線をそらして自分の手元に視線を落とし黙ってしまった琢磨に小町が声を掛ける。
「今日、上級生の先輩と試合して負けたんでしょ?」
「…。」
「それにお兄ちゃんの試合見たんだ。」
「…っ!ああ。」
「どうだった?」
なにも答えない、いや答えられなかったと言うのが正しいかもしれない。
敵視し”大したこと無い”と軽んじていた七草の養子…長男が自分が先程圧倒された十三束を打ち倒した達也から一発も貰わずに降伏させたと言う事実に黙るしかなかったのだ。
「やっぱり上級生の壁は厚いよね。」
「何故だ…。」
「ん、何が?」
絞り出すような反応に小町はわざとおちゃらけて反応するとがばり、と琢磨は俯いていた顔を上げる。
「何であいつらはあんなに強いんだ!」
悲痛な叫びが木霊した。
あいつら、と言うのが兄を指していることを小町は理解した。
「同じ高校生なのに何であんなに違うんだ!?一年しか違わない筈なのに何であいつらはあんなに強いんだよ!?」
「理由なんて無いよ。」
「へっ…?」
「強いから強いの。でもね琢磨くん?それだけじゃ全部を守ることは出来ないんだよ。」
その発言にいつも笑っている筈の小町の表情に陰りが出来たことに琢磨は引っ掛かった。
「何を…言って。」
「強いから強いのは当たり前だよ。でもそうだね、理由を挙げるとするならば…大切なものを守れるように頑張った、って言った方が正しいかな?」
琢磨は小町が言おうとしていることが一部理解できなかったが”努力した”と言うところは理解できた。
「俺だって…。」
「うん、琢磨くんが努力してきてるのは”一目見れば”分かるよ。私だってお兄ちゃんに追い付けるように努力はしてる。でも琢磨くんより強い先輩達、お兄ちゃんはもっと努力してる、ってことなんだよ。」
「……。」
その事を指摘され黙ってしまう琢磨。
「まぁ才能は否定しないよ?うちのお兄ちゃんだって力の大半は凄い才能だー、って思ってるから。」
「……。」
「でもさ、琢磨くんがショックを受けた『強さ』って言うのは別のものかもしれないよ?」
「どうやったら探せるんだろうか…?」
「さぁ?それは分からないよ。他人からコピペしたのは答えじゃない、ってお兄ちゃんも言ってたから…でも琢磨くんが『強くなりたい』って言うのは意味を探す、自分の指標になるでしょ?」
琢磨が顔を上げると小町が居りその表情は優しく微笑み見るような視線だった。
琢磨の眼には悔しさの為か大粒の涙が目尻に貯まって流れ出す。
そんな光景を見た小町はハンカチを差し出して踵を返す。
「見つけられたら教えてね?じゃあね。あ、あとハンカチは返さなくて良いからね?」
そう言って去っていく小町の後ろ姿を琢磨はただただ見送ることしか出来なかった。
「……」
夕日に照らされ七宝は渡されたハンカチを握りしめ袖口で涙を拭った。
七宝と小和村真紀との会話はカットしました。裏でお兄様が対処してます。
十三束と八幡で試合をさせようと思いましたが相性が悪すぎて断念で一方的な試合になるのが明白でした。
(青龍乃型で纏っている十三束のサイオンごと喰らい尽くすし《次元転移》のエンチャントで魔法が通るようになるので接触型解体術式は意味なし。青龍乃型は想子でも行けますが星辰力でも作り出してるので消せません。)
お兄様と試合して一応は八幡が勝ちましたが実戦だとこの作品の八幡とどっちが強いのか…修羅モードでガチの殺し会いになると初手から八幡は達也を次元幽閉して閉じ込める可能性があるからこの作品だと八幡が強いかもしれませんね。
互いに《再成》と《物質構成》の回復技があるので千日手になりそうですけど学校の試合なので…。
なお今回の試合で達也が八幡に《分解魔法》を使用できることを知られた模様…。
七宝くんが小町ちゃんに対して…?
そんなものを寄せようモノならば香澄と泉美に猛犬のごとく吠えられそうですが。