そして今回の内容で重要人物の立ち位置がかなり変わります。
そして八幡の重要魔法が知られることに…。
陰謀渦巻く『スティープル・チェース』編開始です!
真実は陽炎の如く
西暦2096年6月25日、月曜日。
日本魔法界の長老である九島烈は現当主であり息子である九島真言と共に旧魔法師開発第九研究所に訪れていた。
その研究所は既に閉鎖されていたが民間の研究所として知覚魔法の研究を続けている…と言うのは表向きの話だ。
研究所の奥深くに進んだ真言と烈は案内された大部屋には複数の人形が並んでいた。
柱に背を預けるようにして並ぶ人形の総数は十六体、女性型ロボット「ガイノイド」と呼ばれるものだ。
何故こんなものがここにあるのか?それはここで研究をしている内容が内容だったからだ。
「研究の進捗状況はどうか?」
真言の問い掛けにここに案内をしてきた研究主任が得意気に説明した。
「パラサイトの培養は順調です。ガイノイドへの定着も成功率六十パーセントまで上昇しております。ご覧の通り定着した総数は十六体を越えました。」
「当初の予定数を達している、と言うわけだな。」
「はい。現在ガイノイドへの忠誠術式の効果により培養パラサイト達はガイノイドの中で休眠状態にあります。当初は見られた抵抗も観測されなくなりました。パラサイドール実用化に置ける最大の課題であった忠誠術式の完成を見た、と申せましょう。ご命令であればいつでも性能テストを行えます。」
「実戦テストはまだ早かろう。忠誠術式を組み込ませたとは言え実験施設の外で自律行動を行わせるの不安が残る。」
「いや、ですからその為のテストを…」
反論する研究主任を真言は制した。
「毎年八月に魔法科九校間試合の九校戦が行われるのは知っているな?そこで今年からスティープルチェースカントリーという種目が採用されることになった。物的障害物と魔法を乗り越えてゴールを目指す競技だ。」
「なるほど…そこでパラサイドールを障害物として使うのですね?」
真言は頷いた。
「そうだ。高校生の競技会に国防軍が人員を割く余裕はない。パラサイドールを使えば生徒から反撃を受けても国防軍の兵士が傷つくことは無くなるし忠誠術式を使い妖力を押さえ込めばパラサイドールの攻撃で魔法科生徒が怪我をすることもない。実験室から出して実地試験を行うには絶好の機会だ。」
そう告げる真言に烈が苦言を呈した。
「しかし真言。大会運営委員会がそれを承諾するだろうか?実験の事が外部、世論に漏れた場合どのような反応を見せるのかを考えると首を縦には振らないと思うがね。」
「いや、運営は首を縦に振りますよ先代。今年の運営競技変更に関して国防軍からの横槍を突っぱねない時点で彼らに我々の要求を断る気骨はありません。」
「だがこの魔法師が軍事に関わることに今の世論は風当たりが強い…その実験を公開される九校戦で行うのは非常に危険だぞ。やはり別の場所で実用試験を行うべきだ。」
そう告げて階層下に安置されている「ガイノイド」を見ながら烈は九校戦で実地テストを行うのは危険だ、と断じた
◆ ◆ ◆
パラサイドール運用を息子の真言に任せ奈良にある生駒、九島家本邸に戻ってきた烈はその本邸にある一室に訪れていた。
「光宣、私だ。」
ノックと共に室内からは慌てたような雰囲気が伝わると部屋のドアが開かれるとその後ろから色白な美少年が顔を出した。
しかし美少年と言っても女性的、というわけではなく典型的な美少年と評した方が正しいだろう。
この少年の名前は九島光宣、烈の息子である真言の息子…つまりは烈の孫に当たる人物で彼は十六歳の魔法科第二高校の一年生だ。
しかし今の時刻は午後三時、通常であれば学校に通っている時間帯だが彼の服装を見れば体調不良で学校を休んでいることを理解できるだろう。
「お祖父様、このような格好で失礼いたします。」
「そのようなことを気にかける必要はない。それよりも起きていて大丈夫なのか?」
パジャマ姿になっている孫へ声を掛ける烈の表情は魔法師九島烈ではなく孫を溺愛するただの老人の姿がそこにはあった。
「心配をお掛けして申し訳ございませんお祖父様、この通り元気に」
なりましたと言い掛けたところで激しく咳き込み二の句が告げない状態で彼は自分のこの身体の状態が疎ましくて仕方がなかったが今は尊敬する祖父に心配を掛けないするのが精一杯だった。
「光宣、ベッドに入って横になっていなさい。」
咳き込む光宣へ肩を貸してベッドへ運び入らせると言い聞かせるように告げた。
「多少欠席が多くなっているからと言って心配する必要するはないのだぞ?お前の魔法力は屈指のものだ。九校戦に出場している魔法科高校と比較してもあの七草八幡くんに匹敵、いやそれ以上の魔法力を持っておるよ。」
「ありがとうございますお祖父様…僕が八幡さんと同じかそれ以上…嬉しいなあ。」
祖父が自分を褒めてくれた事と尊敬する八幡を比較対象にされたことで先程までの自分の身体の不調の憂いを張らすことに成功したが同時に軽率な言葉であった。
「九校戦…出てみたかったな…それに八幡さんに会ってみたい。」
自己憐憫ではなく単純な憧れの意味を込めて窓の外を見ながら呟く光宣を見て烈は心を強く締め付けられた。
「光宣…」
魔法力だけで言えば光宣は百パーセント九校戦の選手に選ばれるだろうが病弱でベッドの上で一年の四分の一を過ごす彼は例え二校生徒の代表として選ばれたとしても迷惑を掛けるとして辞退するしかないだろう。
その理由は光宣が遺伝子調整の産物…魔法因子を”強化しすぎた”調整型魔法師…遺伝子改造人間だったのだ。
彼が生まれて経緯は烈に対して息子の真言が劣等感を覚え狂気の産物の結果だった。
その生まれは本来世間では許されざるものだった。
光宣の遺伝子上の父親は九島真言、そして母親は藤林家に嫁いだ”真言の末の妹”
つまりは光宣は響子の異父弟…実の兄弟の間に生まれた子供なのだ。
近親相姦…実際の性交渉をしたわけではなく精子と卵子を提供しただけにすぎないが狂気の産物であることに変わりがない。
しかし、それは魔法力というのを見れば”成功”だった。
光宣は今現在知られている魔法師の中で言えば最高レベルの素質を持っている。
その魔法力は司波深雪、アンジェリーナ・クドウ・シールズ、そして七草八幡の三名に匹敵する。
しかし、彼の病弱が足を引っ張り戦略級魔法師である五輪澪と違い”虚弱”というわけではなく思った通りに魔法を発動は出来る、しかしちょっとしたことで寝込んでしまうのだ。
病弱な魔法師が活躍できる機会など限られている。
孫がこのような運命を背負ったのは魔法師を”兵器”として扱われたことが原因だ。
パラサイト研究は光宣のような子供を産み出さないための研究だ。
しかし、だからといって今を生きる魔法師の子供たちを巻き込むのは非常に憚られた。
「そんな顔をしないでくださいお祖父様。九校戦だけが力試しの場ではありませんから」
そんな烈の心情を知ってか知らずか光宣が優しく笑いかけるのを見て幾分か心の陰りが薄くなった気がしていた。
「そうだな。お前は優秀な魔法師だ。それに頭も良い。お前の活躍できる機会はこれから幾らでもある。」
ベッドの中から笑みを見せる末孫に烈は心の痛みを隠すように優しく笑い掛ける。
「そういえば今日、響子姉さんが見舞いに来てくれたんです。お祖父様にお目にかかりたかったと言っていました。」
「そうか。よかったな光宣。」
「はい。」
烈の孫の間でも光宣と響子は”実の姉弟”のように仲が良い。
笑みを見せる孫にいたたまれなさを感じ烈は部屋を退出する前に光宣の額に手を置いて熱の状態を確認した。
熱はたいしたことなく一晩休めば良くなる。
烈は元気のない孫を元気付ける為にどうすれば良いか思案し妙案が浮かんだ。
「光宣。」
「なんでしょうかお祖父様?」
首を少し傾げる孫を見て烈は告げた。
「七草八幡くんに会ってみないか?」
烈が提案で八幡を自宅へ招き入れたその結果、”奇跡”が起こるとは思わなかった。
◆ ◆ ◆
「ここか…しかし十師族の家って言うのはどこもかしこもでかいんだな…」
俺は今奈良県の生駒にある”九”が支配する地域…つまりは九島家本邸の前に来ていた。
キャビネットや自動制御されたバスを使わずに《グレイプニル》を用いて東京から奈良までバイクツーリングを楽しんでいた。
いやーやっぱり長距離運転は大変だけど楽しいよな。
因にだが俺のバイクは重粒子反応炉を搭載しているので燃料補給が必要ないのでぶっ続けで走ってきたわけだが…結果として前傾姿勢で乗っていたので肩や腰がバッキバキになっていた。
しかし、身体に《物質構成》を使用すればあら不思議と肩凝り腰痛はなくなる。
…神秘をこんなのに使って良いのか少し複雑だが仕方がない。
何故俺が奈良県にいるのか?それは数週間前に遡る。
「ん…?」
それは突如として鳴り響いた1本の通信端末から始まった。
深夜、といっても差し支えない時間帯に鳴り響いた着信音を確認すると表示された名前に愕然した。
”九島烈”
「え、は、ちょっ…!?」
俺は大急ぎで部屋に備え付けのモニターに出力し応対することにした。
これが深雪なら無視していた…って無視は無理だなと思いながら流石の俺も老師の直電を無視する度胸はないので3コール内に応答した。
『夜分遅くにすまないね八幡くん。』
通話をオンにすると画面には皮張りの椅子に座った老師の姿が見えた。
今年で齢九十を越えているにも関わらずその背筋はしゃんとしていて年齢よりも下に見えるのは気力が漲っているからかもしれないが画面越しに見る老師の気力が少し弱々しく見えるのは気のせいか。
一先ずその事を置いておいて返答することにした。
「いいえ気になさらないでください老師。丁度作業が一段落して休憩していたところでしたので。」
『そうか…差し支えなければ何をしていたかおしえてくれるかな?』
「妹達のCAD調整と自分の使用する加重系魔法の調整です。それで老師どうされたのですか?」
特段話を広げる必要もないと思った俺は単刀直入に老師が俺に連絡をしに来たことを確認するために問いかけた。
『いや、なに若い者と会話をしたくなってな。』
「はぁ…。」
俺は老師が連絡してきた意図が全く分からず首を傾げると老師も俺の反応に自分の問い掛けが遠回り過ぎたのか本題を切り出してきた。
『八幡くん。私には孫が居るのだが…彼は病弱でね。満足に学校に行くことすら叶わぬのだが』
「はい。」
『それで八幡くん。そんな病弱な孫にあって元気を出させてくれないか?うちの孫は君の大ファンでね。ああ、君と同じく高校生で後輩に当たるな。特に九校戦以来君のピンナップやグッズを飾っておってな』
「は、はぁ…そうなんですね。」
その話を聞いて正直驚いた。(老師のお孫さんが俺のファンということもだが)
その事に気を取られていると老師から再び問いかけられていたことに気がついた。
『どうだろうか?是非孫のためにウチに遊びに来てはくれないだろうか?』
そんなことを問いかけられたら(俺の立場よりも上の人物なので)断ることはまず出来ない。
それに老師が溺愛する孫とやら…九島家の子供がどんな人物なのか気になった。
「…分かりました。念のため父にも話は通させて貰いますが…いつ頃お邪魔したらよろしいでしょうか?」
学校を休め、と言われれば喜んで公休にズル休みでもお邪魔させて貰おう。
『構わんよ。此方が無理を言って君に来てもらおうと思っているのだからな。…そうだな○○辺りにでも良いかね?ああ。それと親戚の家に遊びに来るような感覚で来なさい。』
「いや、そういうわけには…。」
そうして俺はその後色々な問答をした後に通話を切って一応父さんに話を通した。
すると。
「先生からのお誘いか…行ってきなさい。」
「軽くね?」
と軽く行くように促されてしまい俺は逃げ道を失い結果として学校を公休扱いで休んでバイクを用いて奈良県生駒にある九島家本邸に来ている、という流れだ。
なーんか父さんが考え事をしているような感じがしたが…。
◆ ◆ ◆
そんなわけで俺はバイクを引っ張りながら正面ゲートまで到着する。
辺りは緑が多いが木々に囲まれた…という感じではないが”異世界”に迷い混んだのか?と錯覚してしまうようなファンタジー…というか某サバイバルホラーのような洋館が目の前にあり周りを水路が巡っていた。
水路の上には洋館を繋ぐ橋が設置されなんともそう言った雰囲気を醸し出し人が数名肩車しなければ触ることすら出来ない巨大な塀には蔦が良い感じに絡みついてた。
装飾みたいなもんなんだろうなこれ。
そして屋敷の周りには魔法的な障壁が展開されていた。
”九”の家系…というか魔法の特色的に古式魔法を現代魔法に落とし込む作業を行っていたので其処らの障壁よりもずっと強度が高そうである。
俺はそんな九島本邸を眺めながらバイクを引き洋館手前の守衛室に立った。
「ご用件は?」
「九島老師よりご招待に預かりました。七草家、七草八幡です。招待状を。」
俺は守衛へ老師より渡された”証拠”を提示すると何処かへ連絡する事数秒…。
「確認が取れましたのでどうぞお進みください。」
守衛がモダンな装飾が施されたゲートを解放する。
俺は道なりに進むと本邸の噴水がある正面入口に迄到達すると扉の前に一人の若いメイドが立っていた。
バイクを邪魔にならないところに停車し正面へ近づくとメイドが此方に気がつき声を掛けてきた。
どうもこのメイドさんは九島家に支えるメイドの一人らしく俺の案内を受け持ったらしい。
そんなメイドさんに案内されてまずは老師の書斎へ案内された。
一礼すると此方に気がついた老師はメイドに指示を出して戻るように指示した。
室内には老師と俺しかいない。
「老師、本日はお招きいただき有り難う御座います。」
「おお、八幡くん良く来てくれたな。」
書斎には九校戦であったときと同じようにスーツを着た老師が皮張りの椅子に腰を落とし入室した俺を見ており、近くまで行き手に持っていた紙袋から小振りな小箱を取り出す。
父さんから老師はお酒…ウイスキーとかコニャックが好きなそうなので良いところの小瓶に入ったもの…小箱に入っていたので結構な額だったが会社を経営している俺からすればちょっとした贅沢程度の金額だ。
それをみた老師の表情は凄く嬉しそうだったから本当に好きなんだろうな。
「手土産は不要だと言ったのだがな…だがせっかく用意してくれたものを無下にするわけにはいかないな。ありがたく頂くとしよう。有り難う八幡くん。」
そう言って烈は小箱を書斎の机の上に丁寧に置いて立ち上がる。
「早速で悪いが孫の部屋に案内しよう。」
そうして俺は老師に案内されて廊下を進む。
九島本邸の内装は洋風であり暗い感じではなく明るい感じ白を基調とした色合いだ。
老師の部屋からそれ程距離は離れていないようでとある一室に到着するとノックする。
室内からは「はい。」という返事が帰ってきたのだが声質的に少年だった。
「光宣、私だ。八幡くんが来てくれたぞ。」
「は、はいお祖父様。どうぞ!」
ドアを開け入室すると整理整頓された室内に此方を見ている美少年がいた。
…こっちを凄いキラキラした目で見ているのが凄くいたたまれないんだが?
「光宣、体調はどうだ?」
「はい、熱も下がって体調も良いです。」
「そうか。改めて七草八幡くんだ。光宣、自己紹介を。」
老師がその少年に声をかけると俺に自己紹介をしてくれた。
「初めまして八幡さん。僕は九島光宣です。お会いできて嬉しいです。」
キラキラした表情で俺を見る光宣君に俺も自己紹介をし終えると老師は退出してしまったがあれか?「後は若い二人で…」的な。
ぶっちゃけると俺は人と話すことは正直そこまで得意じゃないし初めて会う少年に何を話せば良いのか、と考えていると。
「僕、八幡さんに聞きたいことがあったんです!」
と元気良く俺へたたみ掛かるように質問を連投してくる。
学校では普段何をしているのか、九校戦での活躍に論文コンペ…そして10月に発生した「横浜騒乱」の出来事だった。
「一般の方を守りながら迫り来る侵略兵を退けたりまさか《人喰い虎》も倒してしまうなんて…凄いです!」
俺は若干気圧されながら九校戦の裏話(言っても良いこと)を言うと顔色をコロコロ変えて此方に興味をもって話しかけてくるが…あれだな見た目を相まって凄い大型犬…ドーベルマンとかじゃなくて柔和な大型犬に見えてきて俺も色々と喋った。
「まぁあのときは大変だったけどな…一校を優勝させたくない組織が関わってきたりしてたけど。」
「そうだったんですね…凄いなぁ…っ!けほっけほっ…!」
羨ましそうに九校戦へ思いを馳せる光宣。
が、次の瞬間に激しく咳き込んだ。
「お、おい大丈夫か?」
「大丈夫…で、げほっ!ごほっ…!!」
手で咳を押さえながら崩れ落ちる光宣だったが押さえた手の指の隙間から赤いものが垂れていたことを確認した俺は抱き抱えながら《瞳》で状態を確認する。
「っ…!、ちょっと失礼…!」
「げほっ…げほっ!!」
俺は光宣の身体構造に愕然とした。
そして表示される常時のデバフの『身体異常』…”近すぎる遺伝子が配合されて産み出された”という状態に身体の特筆過ぎる魔法力と二重で身体が耐えきれず蝕まれ病弱になっておりしかも今回運悪く気管支に異常があるようで出血している。
出血を伴うほどにこのままでは肺に菌が入り込んで肺炎になる恐れも正直今から病院に連れ込んだとしても入院…いやこれからもずっと彼は自室か病院のベッドの上で大半を生活することになる。
そうなれば魔法師としても人間としても満足にその技能を振るうことが出来なくなる。
俺は先程まで人懐っこい笑みを浮かべて俺に話しかけてきてた光宣を見捨てることは俺には出来なかった。
「光宣っ!どうしたのかね!?」
丁度、といって良いのか分からないが老師が部屋の前を通りかかり大慌てで駆け寄る。
老師のその姿は魔法師”九島烈”ではなく光宣という孫を大切に思うお祖父さんだった。
その光景を見て俺は…”あの魔法”を切ることにした。
「げほっ!ごほっ!…げほげほっ!!はち、まんさん…?」
「八幡くん一体何を…!?」
俺は口から吐血し室内のカーペットを汚し怪訝と困惑の顔を無視して俺は片手を翳す。
『
光宣を中心に金色の幾何学模様と想子が溢れ出す。
「この想子の奔流は…!」
(ログイン開始…
『
遺伝子情報が二親等以内の遺伝子が絡み合っている、それに後付けの魔法強化が施されており俺と同等、いや俺よりも高い魔法力を付与されていたが身体に”合っていない”のだ。
(平行同位物質検索…検索完了…名称検索確定、『九島光宣』の平行同位体と
始……)
”光宣”の平行同位体を確認し”健常な身体”を検索するとすぐさま出てきた。
今の光宣と同じ能力を持った”平行同位体の光宣”が現れたが目を疑うような情報が俺へ飛び込んできた。
(異常確認、精神構造上に《パラサイト》の存在を確認。同期作業を一時中断、対抗処置として精神構造に対して対抗術式を注入開始…。)
今現在の”光宣”に近しい能力を持った同位体に《パラサイト》が巣食っていたのだった。
嘗ての俺ならばそこで中断していたが”異なる敵性体を対処する”術を既に持っている。
俺は《
(対処完了…拒絶反応見られず…完了まで監視継続中…修復開始…開始…半数経過…完了。負傷時の痛み、記憶を消去…実行…完了を確認。全行程を確認。)
光宣の身体は健常体に”戻り”蝕まれた精神構造体も”元に戻った”
臓器移植のようにツギハギのパーツを組み合わせ”九島光宣”という人物を再構成していく。
全ての行程が完了し俺の意識は《物質記録表》からログアウトした。
ゼロ、となった瞬間に声を掛けると先程まで死にそうな(実際)にしていた光宣は突如として身体の倦怠感が消え去ったのに驚いて鳩が豆鉄砲を食らった表情をしている。
「あ、れ…?僕はさっきまで…身体が…軽い…?一体…八幡さん一体僕に何を…?」
「八幡くん今のは一体…。」
「あーそれは…。」
正直言うと複雑な行程を踏みまくったので『
当然ながら自分が突如としてCADを突き付けられたと思ったら身体が軽くなったら驚くだろう。
不思議そうに興味深げに俺を見るその視線に耐えかねて説明した。
「…はぁ…こんなところで使う羽目になるとは思わなかったが…すみません九島老師、出来れば俺のこの”魔法”を黙っていてほしいんです。」
俺は先程使用した魔法を説明すると興奮した面持ちで俺の特異性を称賛した。
無論俺は”人間”という善性というものを信じていないのでもしこの目の前の少年が《嘘》をついているのなら俺の能力で直ぐにわかるのでその際には間髪いれず記憶を消さなければならない、しかし。
「どうしてこんな凄い魔法を秘匿しているんですか?この魔法を使えば魔法師は命を奪う名声ではなく人の命を救ったことで得られる名声に変えられる…凄いことじゃないですか!」
俺に責めるように告げる光宣の肩に老師が優しく手を置いた。
「光宣やめなさい…すまない八幡くん。孫は君のその力を目の当たりにして少し興奮しているようだ…その光景を目の当たりにした私も少々混乱しているが、ね。このような神の如く魔法…何の代償も無しに使用できるはずもない。」
「あっ…す、すみませんでした八幡さん…僕…。」
老師の言葉に自分が興奮していたことに反省し謝罪してきた。
”代償”…と言ってもこの魔法は別段代償という代償もないんだが…まぁ勘違いしておいて貰う。
「私達は八幡くんに感謝はすれどもその力の使い方について貶めるような事は出来ないしその権利もない…その力はあまりにも強大で危険だ…もしそれが軍に知られれば八幡くんは人体実験の道具にされてしまうだろう。孫の命の恩人、いや九島家の恩人にそんな恩を仇で返すような真似は出来んよ。」
その老師の言葉を聞いて光宣もハッとなったようだ。
「すみませんでした…その魔法を知った組織が八幡さんやその親族に危害を加える可能性を考えてませんでした。その…すみません八幡さん。」
「有り難う御座います…それに大丈夫だ。光宣くん身体の調子は?」
「はい!先程までの苦しさが嘘のように消えてます…!」
光宣と老師の言葉に”嘘はない”ということを感じ取っていた。
その後光宣の部屋から移動し老師に連れられて書斎に移動した。
烈は書斎に向かう前に光宣は掛かり付けの医者を呼び身体の状態を確認しに行かせていた。
「さて…八幡くん。改めて礼を言わせて欲しい。ありがとう。」
「やめてください老師、俺が彼を助けたのは偶々ですからお礼を言われるもんじゃないですから。」
日本魔法界の”最巧”の異名を持つ老師にたかだが十数年しか生きていない若造に頭を下げている光景を見たら関係者は卒倒するんじゃないか?と思ったがこの光景とここで話したことは誰にも伝わらない。
「いや、そう言うわけにはいかない。ここまでしてくれた八幡くんに不義理になってしまう。…何か君にお礼をしたいのだが。」
「いや、ですから大丈夫なので…本当に気にしないでください。」
「そう言うわけには行かんよ。君は私の大切な者の恩人だ。」
「……。」
俺は本当に気にしていなかったが老師がそうでないようで…このままはぐらかす、と言うわけには行かないようでこのままでは押し問答になってしまうので俺は考えて一つの妥協案を提出した。
「それでしたら老師。一つお願いしたいことがあります。」
「何かね?」
「それでした今回の件は”貸し”ということにしておいてくれませんか?正直恩を返す、と言われましても考えが思い付かないので…。」
「……ふははっ!!」
「??」
俺がそう告げると老師は突如として笑い出した。
「いや、すまんな八幡くん。君は若いのに物欲がないな、と思ってな…。分かった私に出来ることがあるなら何時でも相談しなさいそれまではこの老体に貸し一つにしておいてくれ。…それなら追加で君にお願いしたいことがあるのだが良いかね?」
「はぁ…。」
「孫の光宣と出来れば仲良くなってあげて欲しい。」
つまりは友達になれ、ということだろうか?俺のような隠し事と目が死んでる男と知り合いにさせるのはあの愛嬌のある大型犬のような少年に悪影響があるのではないか?と思ったが老師はそう思っていないらしい。
「君のように一本筋が通った芯を持っている高校生は見たことがない。君のような少年が友達なら光宣も良い方向に成長するだろう。」
「自分で言うのもなんですが…結構ネジ曲がってると思いますが…。」
「そうかそうか…ところで八幡くん、君に聞いておきたいことがある。」
老師の総評は良く分からなかった。
愉快そうに笑っていた老師だったがその表情と感情が切り替わるのを感じ取った。
どうやら真面目な話題らしい。
「君は…魔法師が兵器であるべきだ、そう思うかね?」
先程までの孫バカのお祖父さんではなく魔法師九島烈として問いかけてきているのを理解した。
その返答に対する答えは一つしかなかった。
「『私たち魔法師は戦争や政治闘争の為の道具じゃない。確かに兵器として産み出されてきたが心まで機械になった訳じゃない。信念を持って、自分で考え必死に生きて涙を、血を流して好きな奴を好きになって恋をして老いてしわしわの顔で笑顔で死んでいく人間なんだ』…これが俺が魔法師として師匠の祖母から伝えられた信念です。魔法師として生まれまて兵器のように戦うことを義務付けられたかもしれません。ですが俺は武器…機械になったつもりは無いですしなるつもりもありません。一人の…人間です。」
「……っ!…そうか…君は魔法師をそう言う観点から見ていたのだな…そうかそうか。」
「???」
俺の指標となる言葉を老師に告げると一瞬驚いた顔を浮かべて懐かしい顔を浮かべている。
一体なんだ…?
「やはり君は若いうちから志がしっかりしている。君は将来魔法師の世界を引っ張っていく魔法師になるだろう。」
「はぁ…。」
そして俺は老師との雑談を終えて九島家本邸にて夕食をご馳走になりお暇しようと思ったが光宣が俺ともっと会話をしたいということで結局泊まりがけになることになりその日を九島本邸で過ごすことになった。
◆ ◆ ◆
「まさか八幡くんがあの言葉を…。」
烈は八幡からお土産でもらったコニャックの瓶を開けてグラスに注ぎ一口いただいて先程八幡が告げた言葉を思い返していた。
「ふっ…彼が…まさかとは思ったが”似ている”のはそう言うことだったか…。」
八幡が告げたその言葉は烈が今よりも若い頃に嘗て師事していた弟子の言葉だったからだ。
「『信念をもって生きてきた』…かふふふ。しっかりと受け継がれているじゃないか”。」
聞き馴染みの無い人名が烈の口から飛び出す。
「これも巡り合わせかお前の”子供”が私の”孫”を救うとはおもわなんだが…今お前はどこにいるんだろうな…。しかし彼がその言葉を”祖母”といったのは気になるな…彼は比企谷の生まれで八幡家の先祖帰りの筈だが…?いや、だが八幡くんが言ったあの台詞は間違いなく…。」
烈は書斎の机に置かれた写真立てをチラリと視線を向けて見つめる。
そこに写ったのはまだ少年といっても差し支えない八幡の義父である弘一、隣に立つのは四葉真夜に姉の深夜、そして”同じく二人の美少女に負けずとも劣らない豊かなで艶やかな黒髪を動きやすいように後ろで結ってポニーテールにして快活そうな美少女”が真夜と深夜の二人の肩を抱き寄せて其々驚きと困惑の向日葵のような笑みを浮かべてそれを弘一が呆れた表情で見て好好爺の表情で見ている烈が写った写真が飾られていた。
三人並んだ美少女の顔の作りは”非常に良く似ていた”。
その写真立ての裏側に文字が書かれていた。
『2061/8/8 私と弘一、真夜、深夜、”朔夜”の四人の愛弟子達』と。
変更点
九校戦の競技変更の【スティープル・チェース・クロスカントリー】にて『ガイノイド』を試験運用使用としていますが本編とは逆で烈は否定的で真言が烈に大しての劣等感を覚えているので推し進めようとしています。
光宣くんの遺伝子疾患が八幡の魔法により感知…パラサイト憑依の時系列が潰れたのでかなり変わります。
そして光宣くんの八幡への好感度が天元突破…八幡を慕う大型ワンコ後輩が爆誕してしまいましたな…古都内乱編が楽しみだぜ…(これから考えるから大変ですけどね…構成は作ってあるのでそ、そこまでは…大変じゃないかな?)
烈…八幡に感謝し友達の少ない孫と仲良くなってくれて嬉しい限り。
しかし借りを作ることになったが同時に後ろめたさも発生。八幡を九島家に取り込めないかと考えている。
そして最後に設定資料で記載していた八幡の”祖母”の名前が出てきました。
八幡と深夜達がどんな関係があるのか…ご期待ください。