少しモチベが低下していたので投稿が遅れてました。
所々はしょってたりしますがうまく繋がってる…かな?といった感じです。
八月五日、つい2096年度の九校戦が開幕した。
今年は種目変更だけでなく運営要項が変更された。
それにともなって生徒への疲労度合いが肉体的・精神的に相当なものになる。
そして一日目は本選のアイス・ピラーズ・ブレイク・ペアの男女ロアーアンドガンナー・ペアが開催される。
今回俺はもう嘆きたくなった。
「競技時間重なってるのは…俺に恨みでもあるんか?」
俺は予定表をみて額に青筋を立てているのはもし子供が見たら泣き出しそうな表情を浮かべていることだろう。
「まぁまぁ八幡くん…。」
「俺が代わろうか八幡?」
「いや雫は俺がやる…他の奴のは数分で終わる。」
朝一番の一校のテントで大会本部の選手団向けの情報ページを確認して俺は絶望し五十里先輩は苦笑、そして達也が可哀想なモノを見るような目で俺を見て窘めている。
なんでそんなことになったのかと言うと”俺が担当する選手の競技が同時に開催される”為だ。
【氷柱倒し】には男子二人、女子で雫が参加し【ロアガン】(…ロアー・アンド・ガンナー長いので省略し【ロアガン】)には担当選手は明智のペアだ。
…なんだこれは?俺を過労死させたいのだろうか。
しかし、ここで嘆いていても仕方がないと報酬のでない労働に悪態を吐きながら立ち上がる。
クソみたいな労働環境…報酬がなければやっていられないんだが?
「んじゃまぁ他選手の調整に行ってきますわ。」
「五十里先輩、自分も行ってきます。」
「う、うん。二人とも頑張ってね。特に八幡くんは無理しないように。」
「大丈夫っすよ。この怒りを参加選手にぶつけてくるので」
何処ぞの機動戦士の歌詞のごとく正義の怒りぶつけてきますよぉ…!
「ははは…僕も後ですぐに行くから頑張ってね。」
俺たちは五十里先輩に見送られ退出した。
◆ ◆ ◆
「今回の九校戦の件…達也は何処まで聞いてんだ?」
スタート地点に横に設けられた選手・スタッフの第一高校の控え室に向かう最中に俺は唐突に話しかけた。
そうすると達也がパッと見分かりにくいがぎょっとしたような表情を浮かべているが分かる。
「…今回の九校戦の競技変更の理由と誰が、いつ、どんな目的で新兵器の実地試験を行うのかを知っている。」
「まぁお前の場合は国防軍との情報源があるからな…藤林少尉か?」
「いや、直接教えられた訳じゃない。匿名のメールで知らされたんだ。…後は知り合いからの情報だ。」
一瞬だけ良い淀んだ達也に対して怪訝に思ったが黒羽の双子を思い出してそこからかもな…と自分で納得した。
「お前も妨害に入るのか?」
「当然だ。深雪が出る競技での実地試験だ…妨害をしないわけがないだろう。」
まぁ、当然と言えるだろう…お前が深雪に危険が及ぶのを無視する筈がない、と考えていると次の達也の台詞に驚いた。
「それに今回の実地試験で《
「…へぇ(なんで出ることを知ってるんだ…?)正体不明の戦略級魔法師がこんな学生間の催し物に顔出すかね?」
「…八幡には言っていなかったが今年の三月、南楯島で研究所消滅にその戦略級が関わっていてな。」
そう言いながら達也を俺を見ている。
その視線は明らかに疑いの眼差し、「お前が《
俺は達也に向けられた視線を逸らさずに返答した。
「物好きな奴なんだなそいつは。」
「そうかもな。…お前も深雪と同じく【スティープルチェース】に参加するから”こっちにまで手が回らない筈”だろう?こっちは俺に任せて競技と調整に集中してくれ。」
「それ言うならこっちの台詞だっつーの…十師族でもないお前がいざこざに突っ込むのはリスキーだな。」
「深雪が害悪に曝される方が問題だ。それをいうならお前は七草だろう?バレたら内政問題に発展しかねない。お前は只でさえ目立つんだからな。」
それだけ告げて俺たちは第一高校に割り振られた控え室に到着した。
国防軍に繋がり…そして四葉の直系に連なっている達也に知られるわけにはいかねぇな。
しかし、達也に釘を刺されちまった…どうする?
◆ ◆ ◆
初日の結果は明智達のペアが予選を一位で突破し男子は三位。雫と千代田先輩のペアは決勝リーグに勝ち進み男子ペアも同じく決勝へ進出した。
「エイミィ、ナイスゲームだったね。ほとんど打ち漏らしがなかったじゃないか。」
「ありがとースバル。自分でもビックリですよ~。」
わいわい和やかに夕食会場で会話する選手陣だったが幹部組がお通夜ムード…とは行かないが反省会が繰り広げていた。
ポイントの獲得についての相談をしていたのだが千代田先輩が暴論を繰り出した。
「…やっぱりさ司波くんと七草くんでそれぞれのロアガンのソロを担当した方が良いんじゃなかったの?司波さんなら誰が担当しても優勝するんだろうし。」
この先輩は毛に心臓でも生えているのだろうかというほど強心臓でありこの場で言うには蛮勇過ぎるものだ。
凍てつくようなプレッシャーが襲い反射的に構えた千代田先輩を五十里先輩が抑え深雪を達也が抑えることで場外乱闘が不発…と互いの行動ではなく辺りを重く潰すような空気が支配する。
「…今からエンジニアの担当変更はできないっすよ?それに俺が担当したからと言っても必ず優勝できる限りません。選手が最大限の実力を発揮してくれないと俺もどうしようもないんですが?散々去年其れでエンジニア不足で大変になったの忘れたんすか?それに俺には選手とエンジニア…」
「ご、ごめん!本当にごめん…ごめんなさい八幡くん…」
「…も、申し訳ございません八幡さん。」
全てを言いきる前に千代田先輩が謝罪してきたので俺は口を閉じると深雪も何故か冷気を引っ込めて此方を申し訳なさそうに見ていた。
それは俺が冷気を展開していた深雪の領域干渉を無意識に押さえ込み千代田先輩並びに幹部他の選手一同も威圧していたからか。
「は、八幡さん…。」
ほのかが俺をフォローしようとしているのだが言葉が思い付かないのかアワアワしていた。
自分が広げた雰囲気とは言え重苦しくしたのは非常に申し訳ない、と思いながら皿に乗せた料理に手を付けた。
妙に口にした料理の味がしなかったのは気のせいだっただろうか。
◆ ◆ ◆
気不味い空気が流れていた夕食会が終わり(まぁ俺が原因?なんだが)ホテルに戻ろうとしたが雫達に捕まって雑談に興じていると時刻は既に二十二時、健全な青少年が出歩いてはいけない時間になったので女子グループを送り届けた後に自室に戻ろうとしたのだが俺は今達也に疑われている状態だ。
その状態で自室で”調べ物”をするのは非常に良くないと思った俺は踵を返してホテルの駐車場へ向かう。
辺りは真っ暗で人っ子一人いなく駐車場を照らす明かりも疎らだ。
九校戦の最中だからか止まっている車両は多いので俺が持ち込んだ偽装車は怪しまれていないだろう。
『お帰りなさい、マスター。』
偽装車の荷台に手を掛けると両手で耳を塞ぎ目を閉じていたピクシーが俺が入ってきたことを関知して座っていたが立ち上がる。
俺は直ぐ様手で制し座らせて確認した。
「どうだ?」
『同胞の存在は関知できません。』
「そうか…休眠状態だと感知できないか。」
期待していたわけではないがこうも空振りだと気が滅入るのは仕方がない。
佐織達を第九研へ向かわせて妨害があったため詳細を知ることは出来なかったが”多少の事”を知ることが出来た。
パラサイドールとパラサイト。
この二つは本質的に同じものであり老師がおそらく何処かで知ったのかピクシーの情報を元にパラサイトの培養しその器として男性型のロボットではなく女性型のロボットをその器にしたのだろう。
その器も家事をするものではなく”戦闘用”に作られたタイプ…なんだろうが其れならば男性型のロボットでもいいと思うのだが…何故女性型にしたのかは老師がこの『ピクシー』を見たからか、分からんけど。
それはともかくとしてパラサイト同士は交信、個体の存在を認知することが出来る筈なのだが以前にもあったがそれは向こう側…パラサイトがピクシーを探すときにピクシーの中に眠るパラサイトが休眠状態であったとき探すことが出来ていなかった、というのは既に理解している。
通信が出来ない、ということはパラサイドールが休眠状態に入っているということだ。
既に九校戦が始まっているのに未だ第九研に安置されている、というのは考えづらいし存在とその総数がどのくらいいるのか、ということを調べることは出来なかったが本番にならないとその正確な数と場所は不明、という『分からないことが分かった』ので余計に疲れてしまった。
「ピクシー。ご苦労様。俺が出たら扉を閉めて休んでいろ。」
『畏まりました。』
今日はもうやることがなくなってしまったのでホテルの部屋へ戻ることにした。
◆ ◆ ◆
大会の二日目。
本日は【氷柱倒し】の男女予選が行われる。
総合優勝に向けた一校の作戦では両者の優勝を想定しておりもっとも点数が取れる試合であり俺はともかくとして深雪が予選敗退をするとは思えないが…総大将である中条先輩は緊張した面持ちなのは彼女が心配性だからか。
「頑張りましょうね八幡さん。」
「ああ。とっとと予選突破だ。」
「行くぞ。深雪、八幡。」
「三人とも頑張ってきてくださいね!」
俺と達也、深雪と共に選手控え室に向かう。
◆ ◆ ◆
結果はダイジェストでお送りしようと思う。
結果的に俺と深雪両者は相手を寄せ付けずに予選を突破した。
しかし、幹部達が懸念した通り【ロアガン】は男女ソロ共に四位、得点がゼロのまま終了し一位が七校、二位が三校、そして一校が三位という結果に落ち着いている。
その結果に一校首脳部は落胆していたが俺はこれが当然の結果だと思っている。
「去年までが凄すぎたんだよ。いつまでも過去の栄光を引きずってるからこうなるんだ。」
正直に言うと姉たちの世代が破格すぎて今の先輩達も一般的な魔法師の観点から見れば十分”優秀”という判断が下るだろうが彼女達は”破格”過ぎた。
「確かに八幡さんの言う通りかもしれませんけど…そのもう少し手心と言うか…。」
またしてもほのかが俺の発言にフォローに入る。
最近失言が多いのは俺がイラついているからかも知れん。
夕食で俺はカルシウムの多い魚料理に手を伸ばし恐らく、というか総合優勝を目指すのならば明日以降の試合を全て優勝、という形を成し遂げなければならない。
それは俺たち二年生以降がやることであり一年生は去年の俺たちのようにモノリスやら何やらで全部を優勝をかっさらう得点の比重の偏りがないといけない。
今年に限っては妹達がいるため心配はしていない。
まぁ正直九校戦の優勝なんてものは俺からしてみれば姉さんがいない今年はどうでもいいのだが来年、妹達の事を考えると去年までの競技内容に変更しておかないと”軍事教練”じみた競技にでて怪我でもしたら俺は今すぐにでもこの馬鹿げた陰謀を企んだ者を抹殺しかねないからな。
…全くどうして俺が給料もでないこんなボランティアじみたことをしなければならないのかと何度目か分からない独白とため息を人知れずに吐いた。
◆ ◆ ◆
今夜もまた雫達に誘われてお茶会を開こう、となったのだが明日以降俺と達也の忙しさが最大ピーク、繁忙期のサービス業の如く、出勤シフトへ変貌する。
まずは達也が明日以降の試合【氷柱倒し】のソロの深雪と【シールド・ダウン】のペア、【シールドダウン】のソロ中心メンバーである沢木、そして多数の選手を引き受け其れ以外でも数多く引き受けている。
俺は【氷柱倒し】に参加する俺…はまぁいれなくともいいか。
その他だと【氷柱倒し】ペアでの雫、【ミラージ】だとほのか、新人戦だと香澄、泉美、小町の調整があるが…仕方がない。
キーボードを叩く音がキャンピングカー内部に響く。
「お兄ちゃん。北山先輩のCADの電圧チェック終わったよ。」
「サンキュ、んじゃ其れをオートデバッカーのプログラム1からオールまでランダム抽出で掛けといてくれ。」
「わかったー。」
「わぁ…お兄様本当に凄いです…。」
「やっぱりおにぃのこれを見てると…うちのクラスの男子なんて大したことないね。」
「香澄ちゃん…まぁお兄ちゃんのこれを見せられたらねぇ…?」
「?別にそんなに凄いことはしてないと思うが。」
キャンピングカーには七草兄弟が勢揃いしていた。
先に小町が来ていたのは今回の九校戦にて俺の助手として参加させているのは直感的な行動を訂正するための訓練、といった方がいいのだが…其れでも直感で成功させてしまうので何とも言えないのだが…。
だがいくら座学が苦手といっても其れは俺から見た”総評”であり他者から見た場合は”優秀”に相当するだろうか。
そろそろ作業も終わりが見えてきたときに開けっ放しにしていた車のドアがノックされた。
「ちょっといいか七草…ってお邪魔だったか?」
「一条か。いや大丈夫だ。CADの調整をしていただけだしな…っとそう言えば挨拶してなかったな。香澄、泉美、小町。一条家の長男だ。」
「七草香澄です、兄さんがお世話になっております。一条将輝さん。」
「七草泉美です。兄がお世話になっております。」
「七草小町です!よろしくお願いします将輝さん。」
三者三様の挨拶に一条は面食らっていたが直ぐ様その表情を整え挨拶していた。
「一条将輝だ。君たちのお兄さんには世話になっている。…すまないが君のお兄さんを借りてもいいかな?」
そう問うと妹達は頷いた。
俺は作業を中断し車の外にでる。
夜、といってもそとは未だ暑く不快な外気が体に纏わりつくので魔法によって涼しい環境におかれていたのが一変し直ぐ様汗が吹き出してくるが外気を遮り冷気を出す魔法を発動し直ぐ様汗を引っ込める。
一条が話の切っ掛けを作り出す。
「仲が良いんだな。」
「ああ。」
「其れにしても…一年生にエンジニアを任せているのか?」
「小町は俺の助手だよ。まぁ俺がいなくとも一年の担当を任せられるくらいには優秀だけどな。其れを言ったら俺たちだって去年は新人だっただろ。」
俺の発した言葉に一条が苦笑いを浮かべていた。
「それで?お前がこっちに用があるなんて【スティープルチェース】の事だが…なにかわかったのか?」
そう問いかけると一条は一瞬イヤな顔を見せたがここで無駄話をしている暇はないと、そう判断したのか直ぐ様言葉を紡ぐ。
「ああ。その通りだ。だが思ったよりもきな臭い。」
「?」
体の位置を一条の方へ向け視線を定めると其れを見据えていた。
「未だ完全にわかった訳じゃない。ただ、国防軍の強硬派閥…対大亜連合強硬派が一枚噛んでいるみたいだ。」
「対大亜連合の強硬派閥?其れがこの九校戦の裏で暗躍していると?」
一条からのその話に俺は内心で首を傾げた。
それであれば九校戦でのこの暗躍…九島家と強硬派を結びつけるのは俺は想像が出来なかった。
老師は魔法師の兵器化に対して否定的であるのはこの間光宣くんとあった時に感じ取れていたのもあってこの国の貴重な”人材”とも言える若い魔法師をモルモットとして使うことは無いと断言できる。
と、なれば九島家が主導で行っている「パラサイドール」の運用は老師ではなくその現当主が行っている…?
もし老師が主導しているのならあの可愛い孫を戦場に出させないための策、だったのかも知れないが残念ながら俺が光宣くんの治療を行ってしまったためある意味でご破算になったのかもな。
だとすれば、九島家現当主が強行して九校戦に兵器運用を捻り込んだ?
「対大亜連合強硬派の酒井大佐は俺たち魔法科の学生が防衛大学を経由しないで直接国防軍に入隊してくれることを望んでいるそうだ。」
なるほど。
そうであれば否定的な九島家と強硬派が対立する、というのは起こらない。
即戦力的な意味で魔法科高校の生徒を志願兵に引き立てる為に人間が元来持つ”破壊衝動”と”闘争本能”の解放の仕方を九校戦の競技に仕込むことで
しかし、未だ謎に思うところがある。
何故《パラサイドール》の術式を暴走させる術式を仕込んでいるのか、その説明がつかない。
其れにその事を国防軍側が何処まで知っている、もしくは知らないという事もあり得る。
そんな疑問がふつふつと沸き上がってくると同時に一条の言葉に違和感を覚えた。
「…なんでその首謀者の名前まで知ってるんだ?」
「…酒井大佐はうちの親父…一条剛毅の昔馴染みなんだよ。」
面食らった。
「まさかとは思うが一条、お前の家もその計画に…。」
「其れは違うぞ七草、誤解するなよ!」
面白いぐらいに狼狽する一条を見て俺はひと安心した。
九島家、強硬派閥、そして一条家が関わっていた、なんて事になれば俺含めて四つ巴の戦いになり、収集がつかなくなって面倒なことになってしまう。
そうなれば俺は力尽くで盤面をひっくり返すところだったからな。
そんなことを思っていると聞いてもいないのに次々と情報を話してくれる一条、【反乱】という言葉に眉を潜めた。
ベラベラしゃべるこいつに少し不安を覚えたがこいつとは別に友達でもないし仲間意識があるわけでもないからな。
一条の調査によって誰が敵に定めて擦り付けるかが決まった。
「冗談だ。お前が器用なことが出来ると思ってねぇよ。そもそもお前が隠し事苦手なのは…何となく察した。」
「うぐっ…と、ともかく一条家と酒井大佐は一切関わりはない。これだけは覚えておいてくれ。」
「わかってるよ。参考になったわ。」
そう思った俺は素直に頭を下げて面をあげると一条はいそいそと三校の陣地へと戻っていった。
その後ろ姿が完全に俺の視界から消えたことを確認し呟く。
「対大亜連合の強硬派閥の酒井大佐、か。ふぅん…”擦り付ける相手”としちゃ上玉だ。」
恐らくだが酒井大佐とやらの名前、そして反乱、という行動…筒抜けになっているのは情報封鎖が甘いか内部の”誰か”が意図的に漏らしているのかは分からないがな。
◆ ◆ ◆
翌日、大会の結果は【シールドダウン】の男子ペアは優勝、女子は予選落ち、【氷柱倒し】男子・女子ペア共に優勝を獲得し総合得点は三校を抜いた。
女子の【シールドダウン】が勝っていれば大きく得点差を広げることが出来ただろうがそうはうまく行かないのが人生だからな。
《千見の盟主》と《戦律の魔女》のペアならば優勝できていたかもな嘗ての相棒達を思い出して今回の試合内容を思い出していた。
其れはさておいておいて担当した雫が【氷柱倒し】で優勝してくれたのは素直にホッとした。
夕食会場では其れほど盛り上がらなかった優勝者への賛美の言葉だったが…。
「雫優勝おめでとう!」
「まぁ雫の実力と八幡のCADの調整技術があれば優勝確実だもんね。」
「うんうん。おめでとう雫。」
「おめっとさん雫。流石だな。」
「ん。ありがとう…八幡が私のCADを調整してくれたからだよ。それにありがとう皆も。」
お茶会に参加しているメンバーからの賛辞に雫は顔を赤らめはにかんでいる。
可愛い。
「明日は深雪と八幡の番だね。」
少し照れ臭そうに、しかし照れ隠しで言ったのではないということが雫の表情から伝わってくる。
「ええ。わたしも頑張らないと。」
「俺も明日頑張らないとな。」
深雪も俺も冗談や誤魔化しの無い表情で雫を見て答えるとヤジが飛んできた。
「深雪も七草くんも頑張ろう、なんて考えない方が良いじゃないかな?肩に力が入ると思わぬ落とし穴に嵌まるかもしれないよ?」
「落とし穴に嵌まったぐらいで負けるかな?二人とも自力で穴から出てきそうだし…気を付けなきゃ行けないのはせいぜいフライングで失格になることくらい?」
「其れが最大の落とし穴…まぁ七草くんの場合は威力が高すぎる魔法を使う…事かもね。」
「もう…スバルもエリカもわたしをそんなドジだと思っているの?」
「俺に至ってはヤバイ魔法しか使わない認識になってるんだが…?」
「当然でしょ?去年の魔法といい…今年の魔法も大概よ?」
エリカの発言に先ほどまで俺と同じく「やらかすなよ?」といわれた深雪が寝返り向こう側についてしまい頷いている。
「別に対した魔法を使った訳じゃないだろ。正式に登録されてる魔法だ。」
「いや、あんな雷撃の嵐見たこともないんだが!?」
俺が使ったのは去年の【絶対零度】ではなく【ムスペルスヘイム】。
なんか実況がうるさく騒いでいたが無視した。
別にあんなの珍しい魔法じゃないだろ…使ってる奴は見たこと無いが。
「んなもん別に大したこと無いだろ。同じ魔法使っても芸がない、って言われるより。」
そんなことを言うと全員がとんでもないモノを見るような目で俺を見ている。
解せぬ。
そんなこんなでお茶会は進行し一日目はおらずいつもの快活さが抜けていた顔を浮かべていたエリカだったがそんなものは何処へやら、といった感じに楽しく笑って会話に参加している。
…これはいつぞや幹比古が言っていたエルンストの件があるのかもしれないが今は九校戦の件を優先させてもらう。
そしていつの間にか明智が十三束との関係の話になりその件で不機嫌になる明智。
不機嫌な理由は十三束のCAD調整を担当した平河がイチャついていた、ということが原因だったらしい。
不機嫌なのか?と問われて隠すように否定するが第三者が気にしている、と言っている方が信頼性がある。
しかし、そこで踏み込んだのが雫だった。
「エイミィ、十三束くんはダメだよ。」
「何が!?」
分かりやすすぎる反応を見せ、隠す気があるのかも疑わしくなってしまう…というよりも雫がかなりの挑発的に聞こえるのは出力した言葉が省略され過ぎたからか。
「十三束くんは八幡と違って”本当”に鈍感なんだからはっきり言ってあげないとダメだよ?」
おい、俺がとばっちりを受けてんじゃねーかよ。
まさかの雫の発言に俺が巻き込まれ事故が発生し俺は飲んでいたコーヒーを吹き出し掛ける。
雫の発言に俺以外の男子と女子が頷いている。
俺がとばっちりじゃねーかよ!と反抗の意思を見せたかったが不意にお茶くみをしていたピクシーからテレパスで通信が入る。
『マスター。』
『どうした。』
テレパスを使用するときは緊急時だけにしていたのだが今が其れと言うことが。
表情を変えずに俺も言葉を発するが【次元解放】を通じて会話するので今いる雫達には聞こえない。
「『今そっちにいく。』…少しコーヒー飲みすぎたかも。少しお花摘みに言ってくるわ。」
離れるときに定型文を言い残しホテルのラウンジにあるお手洗いに向かう振りをして物陰に入り【次元解放】のポータルを潜り偽装車の内部へ飛んだ。
「どうなった?」
『こちらの地点で反応が見られました。』
偽装車に到着し室内に備え付けられた大型モニターに【スティープルチェース】のコースが表示される。
その地点はコースの中心地点、対岸の軍用車両が走っている地点に近い。
「反応は未だ続いてるか?」
表情が豊かになり人間にしか見えないその難しい表情で答えた。
『未だ続いています。それに私の存在も認識されてしまったようです。』
「そうか…相手が何機いるか分かるか?」
『十六体の存在が確認されています。』
「佐織の情報通りだな。」
『あっ…。』
「どうした。」
こちらの存在が認知された、といっていたのでまさか襲撃を掛けてきたのか、と思い俺は戦闘準備を仕掛けたが違ったらしい。
『同胞の反応が一瞬にして消失。休眠に入ったものだと思われます。』
「移動の兆候は?」
『ありません。』
そう言い切ったピクシーの言葉を受けて俺は考える。
(大っぴらに【パラサイドール】を動かすのは不可能な筈だ。それ自体秘匿レベルは最高位、国防軍の中でも知っているものは極少数…であるならば移動ラボ的なものをそのまま持ってきてここに移動しに来てるのかもしれない…それにしてもピクシーが”相手に認識された”といっていたが運用する部隊がこっちの存在を認識した可能性もあるな、だとしたらピクシーの確保に九島家、国防軍の部隊がこっちに向かってくるかもな。)
俺がパラサイドールと相手取っている時にこの偽装車両に攻め込まれたらひとたまりもないのは明らかで《グレイプニル》も今回の作戦で使わざる得なくなったので置いてはおけない。
(仕方がない、か…姉さんを巻き込むようで悪いが協力して貰うか…)
幸いに新人戦が明後日から始まるのでそれに合わせて姉さんが見に来る。
申し訳ない、と思いながら俺は端末を手にとって”弟からのお願い”をすることにした。
◆ ◆ ◆
大会四日目の午前、俺と深雪が参加する【氷柱倒し】は決勝リーグ二戦はいずれも1分以内に終了した。
深雪は【インフェルノ】と【ニブルヘイム】、俺は【ムスペルスヘイム】を使用し相手にトラウマを植え付けたがどうでもいい。
俺の場合は圧倒的な暴力に観客達は拍手を忘れ畏怖の表情が浮かんでいたが深雪の場合は会心の笑みに客席は魅いられていたのは感じ取った。
去年暴れまわった新人戦の選手が暴れまわったお陰で活気を取り戻す一校は破竹の勢いで得点を伸ばした。
現在一位である七校にあと六十点に迫る得点差でありそれは直ぐ様逆転した。
翌日の新人戦初日、香澄が参加する【ロアガン】の男女ともに一位。
俺が女子と達也が男子を担当したエンジニアペアが魔改造(ルール通り)したCAD調整を行い無事に優勝した香澄は秘策として姉さんの特異技能である【疑似マルチスコープ】を発動できるバイザーを装備させ【風撃鉄槌】で豪快にターゲットと移動するボートをなぎ倒した。
「…っ!おにぃやったよ~!!」
「うおっ!?…頑張ったな。」
「えへへっ♪」
表彰が終わり嬉しそうな表情でずぶ濡れのウェットスーツのままで俺に抱きついてくるものだから困ったものでその光景を同じチームの女子が微笑ましいやら生暖かいやらの表情を向けられていた。
そして翌日に行われる男女の【シールド・ダウン】。
女子の部が始まり小町が参加しその戦い方に一校の選手、幹部陣達が驚いた。
盾を持ち独特な構えをする小町。
その構えは俺を中心とする知り合い達が声を上げる。
「まさかあの動きは…《四獣拳》ですか?」
「小町さんも使えたのか…。」
驚く達也と深雪。
「まぁな。」
身体技能で言ったら恐らく一年生時の達也に劣るかも知れないがそれでも今の一校一年男女の中で勝てるものは誰もいない。
盾をもって地面を蹴り上げ距離を詰める小町に恐怖を覚えた選手が魔法を発動するがそれは目前に掻き消される。
その現象を関係者席にいる全員は知っていた。
「『術式解体』、七草さんはあれも使えるの!?」
驚く声をあげたのは千代田先輩だった。
「まぁ小町も俺と同じく大体の魔法が使えますよ?ただ俺と違って数十発撃ったら想子切れになると思いますけど。」
「いや、本来使えるようなものじゃないからね…どれだけ規格外なのよあなた達兄妹…。」
呆れるような表情を浮かべ俺は肩を竦めるが観客達は大盛り上がりだ。
『せいやぁぁぁぁぁっ!!』
気合いを入れるために小町が口上を告げて叩きつける。
そんな千代田先輩の呟きも空しく間合いに入った小町の正拳突き、【破壊・白虎之型】で相手のシールドを破壊して体ごと場外へ吹き飛ばし勝利した。
そして並みいる魔法科選手を叩きのめし文句無しの一位になった小町は表彰台で笑みを浮かべていた。
結果として男女の【シールドダウン】は優勝を決めた。
そして同日行われる【氷柱倒し】には泉美が出場した。
衣装は去年の深雪と同じように巫女服、なのだが少し”現代風”な意匠が施されたもので丈が短く泉美の白い太ももがチラリ、と覗かせ見た目の良さもあって観客席の男どもが下卑な視線を向けるので俺は抹殺しなければならないと決意したが衣装を選んだのは泉美なので着たかったのだろうか責められなかった。
結果として一年生の【氷柱倒し】は泉美の独壇場…いつぞやで使っていた【ヒートストーム】の単体バージョンである【ヒート・ブラスト】で氷柱を砕き溶かし別試合で相手陣地の氷柱に狙いを定めた振動魔法【アースクエイク】で無慈悲に全てを砕く光景が広がっていた。
こっちも相手のメンタルを砕きかねないものだったが…知らね。
試合が終了し一校の天幕に戻ってきた泉美は俺に飛び込んできた。
喜色を浮かべて。
「お兄様っ」
「っとぉ…危ないぞ?ってお前もか泉美…はぁ…頑張ったな。」
「~~~♪」
抱きつく泉美を抱き留めいつものように頭を撫でて称賛すると蕩けたような表情を浮かべていたのはなぜだったのか。
そしてその光景を見ていた深雪とほのかが何かを言いたそうな表情をしていたが一先ず無視することにした。
あとがなんでか怖いなぁ…。
そして四日目と五日目新人戦最終日。
このまま好調に新人戦を勝ち抜いていくかと思いきやそうではなかった。
一校は【ミラージ・バット】と【モノリスコード】。
この二つで一位をとれば一校は一位に躍り出るがそうもいかなかった。
【ミラージ・バット】は四校の黒羽亜夜子が優勝し一校は二位についた。
「あの四校の黒髪の一年生…あれは疑似瞬間移動か?」
隣にいる雫が驚く。
「え、うそ?そんな魔法が…。」
「実際に使える奴がいたとは思えなかったが…すごいな。あいつより先に点数を取るならボールが光るより先に予測し跳ばないと無理だな。」
コケティッシュな見た目の少女が表彰台でウインクをしているのを見て俺は「四葉の関係者って全員あんな化け物なのかぁ…」と感心していたが。
続いての【モノリスコード】は七宝率いる新人チームが総当たりで全戦全勝、優勝候補であった三校を倒しこのまま…と新人チームは優勝ムード漂っていたが三校が四校に負けたのを目の当たりにして気を引き締めていた。
そして一校と四校の決勝戦。
対するは各チームのリーダーである七宝と三校を蹂躙した黒羽文弥が対峙する。
七宝はオフェンスではなくデュフェンスでモノリスを守護して敵を尽く撃退してきたが今回の相手はそうはいかない。
「くっ…!?」
群体制御を巧みに扱い迫る黒羽を攻撃するが牛若丸のごとく岩場を縦横無尽に駆け巡る。
そして琢磨に浴びせられる攻撃が精神を蝕んでいく。
(あれって俺に使おうとしてた【ダイレクトペイン】って奴か…?えぐい技を使いやがる…七宝はこの間より成長してるみたいだが…この勝負黒羽の勝ちだな。)
案の定幻衝に紛れた【ダイレクトペイン】が琢磨に襲いかかり倒れる。
それは最後に残っていた琢磨が倒れたということであり決着の合図であった。
新人戦モノリスコードは残念ながら二位で終わってしまったが新人戦総合優勝は一校がもぎ取った。
この結果にひと安心したのだが…。
「頑張ったよ七宝くん…よしよし。」
「さ、七草…やめろよ////」
なんだか七宝と小町ちゃんが良い雰囲気になっていたので俺はその光景に青筋を立てざる得なかった。
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