結構あっさり終わります。
あと私が執筆してる二次創作の小説の方からキャラがクロスしてます。
フレーバー程度に見てください。
九日目の本戦の【ミラージバット】の本戦が始まる前…。
「お疲れ様八くん。今年も大活躍じゃない。」
「いやいや…今年の本戦は不甲斐ない感じだったけどな…まあ新人戦で香澄、泉美、小町が優勝してくれたのが大分デカイ。そうじゃなかった今年の優勝は厳しかったぞ…。」
「うんうん♪香澄ちゃん、泉美ちゃん、小町ちゃんも頑張ってたわ。八くんもね?」
「俺はあれだよ…長男として、的な?」
「本当に素直じゃないんだからもう…。」
新人戦が終了したその日の夜。
夕食会が終わり今年は観客として来ていた姉さんが俺たち弟妹に労いを掛けに宿泊先のホテルに来ていたのだ。
まさかのOGの出現に在校生…特に新入生が騒然としていたが幹部組が動いて事なきを得ていた。
姉さんに誉められ嬉しそうな表情を浮かべる妹達を見ながら今年の試合内容について話していると良い時間になったので姉さんを送り届ける、という名目で離れていた。
二人きりになったタイミングで姉さんから口を開いた。
「さて…それで?私は何をしたら良いの?」
「姉さんにはピクシーと偽装車の護衛をお願いしたいんだ。」
「なんかまた危ないことに首突っ込んでない?」
「危ないことじゃない。強いて言うなら来年の小町達の九校戦を守るため…って言った方が良いかな。」
そう告げると姉さんは呆れたようなため息を吐いて頷いた。
「分かった…引き受けてあげましょう?それって恐らくお父さんも調べてる事だと思うから強くは聞かないけど…無茶しちゃ駄目よ?」
「分かってる。それに姉さん一人でも十分だと思うけど佐織達も参加させるから。」
「…佐織ちゃんたちがいるならわたし要らなくないかな?」
ジト目で見てくる姉さん。
「まぁ万が一の事もあるし。」
「はぁ…分かったわ。」
概要を告げたの後本当に姉さんを宿泊してるホテルまで送り届けた後に俺は宿泊先へ戻った。
「”あいつ”に怒られるかもしれんが…確実性を求めるなら”アレ”を使って一撃でだな。」
思い立ったが吉日、と言わんばかりに宿泊先に戻る前に『次元解放』のポータルを開き飛び込む。
”とあるモノ”を拝借するべく行動した。
◆ ◆ ◆
そして九校戦九日目の本戦【ミラージ・バット】。
星空の下、妖精達が舞い上がる準備をしていた。
一校は去年の新人戦で猛威を振るった選手、ほのかと里美がエントリーしており各校が警戒しているのは雰囲気で理解していたがあからさまの警戒に苦笑していた。
この二人の実力ならば当然の如く、予選はストレート抜けであり決勝は他校が出場一名にたいしてこっちはほのかと里美の二人、そしてほのかの担当が俺、里美の担当は達也…と去年の【氷柱倒し】のように同校対決になっていた。
端から見てもこの二人がワンツーフィニッシュを決めるのは必然だろうと思われている。
結果は俺たち調整組ではなく選手両名の実力の発揮次第、といえるだろうが。
「………///」
「………。」
ライトライムを基調とした身体にフィットするユニフォームに着替えたほのかが俺の前に立っているがその表情は赤らんでいる…俺も正直ほのかのその姿は正直に言うと眼福、もとい目に毒であり視線を逸らし俺とほのかの間になんと言えない無言の間が広がっている。
どう声を掛けて良いのか分からなくなるが俺は調整役としてある意味での定型文を告げる。
「CADは異常無し…だな。ほのかも不調はないか?」
手渡したCADを受けとるほのかを見ていたのだが俺と視線がぶつかると赤く俯いていた顔を更に朱色に染めていた。
「い、いえっ。ありませんっ…だ、大丈夫です八幡さんっ」
声が上ずりすぎている。
「大丈夫だから落ち着け。な?…俺外に出てるから…。」
「ま、待ってくださいっ。」
「え?」
俺がここにいるとほのかが全力を出せなくなってしまうと思った俺は控え室から出ようと思ったのだがほのかに咄嗟に手を握られて動けなってしまう。
「………。」
アメジストの綺麗な瞳が俺を潤んで見つめているので眼が離せなくなってしまった。
沈黙がどのくらい続くのだろうか、と思ったがそれはほのかの一言、とんでもない提案で崩れ去った。
「わ、わたし…すごく緊張しれるので…その…だきゅしめてくれませんかっ」
「ほのか落ち着け。」
手で制し逆にこっちが落ち着いた。
「………。」
しかし、ほのかがこう提案してしまった以上は撤回しないだろうな…と思ったので隣の控え室にいる達也里美ペアがこちらに来る気配はない。
俺は溜め息をついてほのかに握られた手を引っ張って抱き寄せる。
「え、あ、えっ…はち、まんさん…?」
自分で提案したのにも関わらず困惑するほのかを尻目に抱き締める。
その困惑は一瞬で身体が硬直していたが直ぐ様それを受け入れて力が抜けていくのを感じる。
「ほのかなら出来るさ。…俺が調整したCADと実力があれば里美にも勝てる。俺一割ほのか九割ぐらいの実力の内訳でな?」
「ふふっ…それだと八幡さん殆ど仕事してないじゃないですか……ふぁぁぁっ…」
抱きついてきたほのかの頭を撫でると声が漏れ出ておりくすぐったい。
本当に緊張がほぐれたのか笑っているが俺にかなり密着して抱きついている。
なんでこんなボーイミーツガールな事になってるんだろう…俺とほのかは別に付き合ってる訳じゃないしすごく不純な感じがしてるんだが…。
めっちゃいい匂い、あと、凄く…ほのかの”あれ”が俺に当たってるので精神衛生上宜しくなくってよ?…このままだとR-18のスチルカット入っちゃう!…なんて割とアホで洒落にならない事を考えていると小さく名前を呼ばれた。
「八幡さん…」
「どうした?」
「わたし、頑張って優勝します!八幡さんの不敗神話はわたしが守って見せます!」
逆に気負いすぎじゃね?と突っ込みたくなったがここで水を差すのは逆効果であるとこの一年で理解していたのでなにも言わずにただただ頭を撫でる。
「そっか…今のほのかなら無敵だな。」
「はいっ!」
ほのかの眩いやる気満タンの笑みで頷いていた。
【ミラージバット】決勝戦はまさにほのかの有言実行になった。
一位はほのか、二位は里美を独占し三位に三校選手が入り込んだが得点が一校総合百八十点、三校二十点。
総合順位で一校が首位に躍り出た。
◆ ◆ ◆
八月十五日、ついに九校戦最終日になった。
今日のスケジュールは朝イチで【スティープルチェース】が始まる。
女子が九時半から男子が午後二時から開始される…のだが不用意に動かなかった。
俺は達也に【黒衣の執行者】として疑われているし競技にも出ないといけないそれに深雪達が競技に出ている間は天幕に居なければならない。
司波達也に疑われている、ということは四葉家に存在を疑われている事と同義だ。
『…面倒だな。』
思わず口に出てしまいそうになるが寸でのところで脳内の独り言として踏み留まった。
今回女子の部で参加し担当するメンバーは女子が達也と半分、男子も半分とかなりの重労働ではあるが”私”たちだけではなく九校戦のエンジニア全員で行うためそこまではなかった。
悪態をつきたくなったが朝の七時からの二時間で全てを終わらせて天幕で女子の部がスタートするところを幹比古達と一緒に見ていることにすると達也は「一休みする」といって出ていった。
恐らく【スティープルチェース】の妨害に向かったのだろう。
一先ずはクリア、と言ったところか。
立ち去った達也の後ろ姿に興味をなくしモニターに関心を向けていた。
◆ ◆ ◆
ここではない何処か。
学園だろうその場所にある『生徒会室』と記載されたプレートの部屋の主は皮張りの高級な椅子に背を預ける腰まである豊かな煌びやかな金髪を持つ少女は見たこともないブレザーを改造した制服を着用し物憂げに机に置かれた写真を見つめる。
「……。」
その視線の写真に写るのはその少女と銀髪の少女、どちらも美少女でありその間に囲まれている中心のいる少年は蒼縁の伊達メガネを掛けて髪型は普通、だが一部がピンと跳ねている。
桜が咲いている時期に撮ったのだろうそれは背景が鮮やかなピンク色と瑞々しい緑が映える。
今日もまた無気力な一日を過ごすのか、そう思ったとき1本の通信が学園の装備局より入ってきた。
『何者かによって装備が奪われた』、と。
その事を聞き急ぎ装備局へ向かう少女。
地下へ降りるエレベーターに飛び乗り到着する時間すらもどかしい少女は扉が開いた瞬間に目的の場所へ駆け寄ると問題の場所には詰めている研究員と警備員が集っていた。
状況を話しかけられるのも億劫な少女は聞き流しその現場に到着し目撃した。
そこには床から六角形のユニットがせり出していた
模様に見えた六角形の模様は武器を収容するコンテナの役割を果たしていたようだった。
その内部に納められていた筈の”武装”、の発動体。
そこに納められていたのはその世界において己の欲望を掛けて戦う《星武祭》、それを勝ち抜いた《戦士王》の渾名された少年が使用していた”その者にしか完全に扱うことが出来なかった”最凶の魔剣”。
それが”もぬけの殻”になっていたのだ。
その格納容器に近づいてあることに気がついた少女は目を細め口角を少し上げる。
「……ふっ」
慌てふためく研究員と警備員達だったがその中でただ一人少女だけが笑っていた。
「まったくもう…変わりませんね”八幡”」
◆ ◆ ◆
調整が終わり全員がスタート位置にて準備をしているその前。
一つの影が疾走していた。
「ピクシー、現在地を教えてくれ。」
『此方ですマスター。』
”影”はその身体に鎧を纏い頭部に搭載されたモニターにピクシーがリンクさせた【パラサイドール】の位置を表示されている。
その位置はゴール寄り、ゴールライン付近で展開しているのが分かった。
恐らく先頭集団が到達するまでは最短で十分、先頭が深雪だと想定するとそこまで時間を掛けていられない。
尚且つ俺の存在を国防軍、達也に知られるわけにはいかない。
だからこそ”調整”の最中を抜け出して今ここを疾走しているのだ。
駆け抜けているときに通信が入る。
『八くん、準備完了よ。』
「分かった。ピクシーがパラサイドールの位置を把握してる、つまりは向こうもピクシーの所在をつかんでいるってことだからその偽装車両が襲撃を受ける恐れが十分にある。気をつけてくれ姉さん。」
自分の姿は姉に見えていない
『分かったわ。』
「佐織。」
『なんだ。』
ハスキーな声が聞こえるのは部下である佐織が返答したからだ。
「姉さんとピクシーを頼むぞ。」
『フッ、了解した。』
移動しながら通信を切りモニターに映し出された最初のパラサイドールがいる地点まで数百メートルを切ったのを確認し腰のホルダーから筒状のモノを引き抜く。
力を込めるとそれは形を変えて鍔を作り出し黄金色の攻撃的な刀身を発生した大剣が手元にある。
パチリ、と弾ける音が響くと最初に遭遇を想定していた
「遅いな。」
が、その疾走する影がすれ違うと斬っ、とその機械で構成された胴体は二つに分かれてしまう。
『……っ!?』
【パラサイドール】の胴体に封じ込められていたパラサイトが逃げ出そうとするが胴体が真っ二つにされた際に既に”この世から”消滅していた。
「……。」
一体目を一秒もかからずに切り捨てた影は一瞥もせずに次の目標へ駆け出していった。
◆ ◆ ◆
配置された【パラサイドール】の一体目が切り捨てられたときに異変に気がついたのは国防軍であった。
「未確認魔法師の侵入を確認しました。」
「映像に出せるか?」
「リアルタイムでの出力は無理です。カメラが足りません。」
「録画で良い。出せ。」
「ハッ」
軍人達の感心は既に侵入者に向いていた。
一体どこの誰が侵入してきたのか、今の彼らが気にしているのは競技に参加する女子生徒ではない。
同じ演習林、ゴールライン付近に配置した切り捨てられたパラサイドールの残骸…ではなく侵入してほどない場所のカメラの映像、薄暗い森の中で疾走する黒い残像。
「もっと明るくならんのか?」
「ハッ、ただいま。」
データが明度と解像度をあげて最初から再生された映像はやはり詳細にその姿を表すことが出来ていない。全体的にボヤけており分かることと言えばロボットのようなツインアイが蒼く輝き彼らが配備している戦闘飛行服とも違う”全く別のもの”を身に纏っている、と言うことだけだ。
しかし、それだけでもその存在を知ら示すには十分すぎる情報だった。
「一体こいつは何者なのだ…?」
「あの情報が本当だったと言うのか…佐伯少将の部隊が邪魔をしに来たのか?」
それぞれの反応を見せる男達。
正体不明の魔法師がなぜこの学生の行事に首を突っ込んでくるのだ…!そしてなぜ邪魔をする!と思わず叫びたくなった。
男達は国防軍の兵士だと思っているので貴重な魔法師を殺すわけにはいかないと指示を出す。
「九島の技術者に連絡を。乱入してきた魔法師を殺さぬようにしろ、とな。」
九島家・九島真言は飛び込んできた通信に顔をしかめた。
「乱入してきた魔法師を殺すな、か…ドールの攻撃目標を侵入者に変更。協力し侵入者を殺さない程度の攻撃を許可すると伝えよ。」
真言は苛立ちながら通信機向こうの研究主任へ指示を飛ばす。
苛立つその声は結果的に妨害している侵入者へ向けていた。
「真言様は随分とお怒りのようだ。」
怒声を浴びせられた研究主任はけろっとした表情で隣にいる助手へ話しかける。
「確かに…邪魔だ…な、なんだと!?」
研究主任の前の画像にはリアルタイムで最初に配備したパラサイドールに接近する疾走する影がいたのだが一瞬だけ目を離した隙に一体目のパラサイドールが切り捨てられていたのだ。
その事の重大さを理解したのか早口で部かに命ずる。
「侵入者を攻撃対象へ変更、最終目的は捕獲だが多少痛め付けても構わない。それにドールを感知していた個体がいたはずだ。そいつはこれとの協力関係にある。そっちにも人員を回して捕獲しろ!」
開発主任は侵入者を攻撃目標へ設定し補助しているピクシーに狙いを定め預けられた私兵を使いピクシー確保に動き始めた。
◆ ◆ ◆
さて、侵入者が一体目を切り捨て奥に進むと次の刺客が現れたことを『ピクシー』の通信によってその存在を認識する。
(所詮は機械…アルディ達のように殺気を感じ取れなきゃ実戦で役に立つかこんなもん)
一体目は『
魔法の動作が見られずに異常な速度の攻撃を仕掛けてくるが回避する。
その攻撃は心当たりがあった。
(魔法…じゃなくて念動力か。)
加重系統魔法が放たれ先程までいた場所には重機で押し潰したような窪みが出来る。
その事を確認し腰を深く落とし武器を構え突貫する。
再びパラサイドールは念動力で迫り来る襲撃者を叩き潰そうとするがそれは目前で霧散する。
腕につけたCADが脳波リンクし起動、煌めいて魔法を吹き飛ばしたのだ。
本来止めるはずの魔法が無力化されラグが発したように硬直するパラサイドールを尻目に手にした大剣を振るうと四肢はバラバラにされ胴体に切っ先が突き刺されると大きく身体が跳ね上がるが直ぐ様その活動を終了する。
見た目が人間に近いのでショッキングな光景かもな、と内心で思っていたが直ぐ様その場から駆け出した。
◆ ◆ ◆
ピクシーと真由美、そして佐織達が護衛する偽装車両に九島の私兵部隊が迫ってきていた。
そんな彼らは歩兵用の戦闘ミサイルに匹敵する戦闘力を持つ現代魔法の使い手であった。
しかしそんな彼らは襲撃を命じられた偽装車両に手を出すことも触れることすら出来なかった。
攻撃を仕掛けようとしたその瞬間に私兵達の意識が重く沈んでいく感覚を覚えていた。
周囲には霧のようなものが広がっているのを認識したのを最後に全員がその場に崩れ落ちた。
なぜそうなったのか、それは真由美が【マルチスコープ】を使用して接近する私兵の位置を特定、二酸化炭素をかき集め直ぐ様佐織が気流操作と部分的に展開した障壁魔法を発動し襲撃者を二酸化炭素中毒にして意識を奪ったのだった。
数十名いた筈の私兵はたった二人の女性魔法師に鎮圧されその身柄を拘束されてしまったのだった。
◆ ◆ ◆
「ピクシー。次に近い場所にいるパラサイドールはどこだ?」
『そこから七時の方向、マスターに向けて二体のパラサイドールが接近中。マスター、気を付けてください』
「…ありがとう」
襲撃者はそのピクシーの一言に毒気抜かれた。
呆れたのではなくほのぼのしてしまっていたのだ。
その声色が嘗て自分が護ろうと決意した女性の声色に似てきたことに若干の気まずさを覚えていたが今は目の前のことに集中しよう駆け抜ける。
◆ ◆ ◆
「馬鹿な…こいつは本当に人間なのか…!?」
移動ラボにいる研究主任が悲鳴にも似た怒りの声をあげる。
彼の自信作がまるで紙細工のようにバラバラにされていく。
左右から同時の攻撃、十師族でも避けきれない攻撃をまるで時を止めてその場から移動し気がついたときには既に背後に回り込み手にした詳細不明な光の大剣で切り刻まれている。
パラサイドールの攻撃を全て回避している、まるで”未来予知”でもしているかのように。
避けるその動作はもう人間が持つ直感のレベルを越えており更にその手に持つ武装が魔法的な兆候は見られていない全くの未知の技術だったのだ。
「こいつは一体何をやったのです!一体何が起こったのですか!?」
狂乱しかけている研究主任のリアクションと共にライブ映像が国防軍の高級士官室でも共有されている。
「こいつは化け物か…?」
「この魔法師が使う魔法…それにあの武器は一体なんなのだ!?それにどれも回避が出来ない攻撃の筈なのにどうして避けられる…?まるで攻撃がここに来る、と予知しているみたいじゃないか?!」
監視カメラの映像は先程の戦闘が終了し四体一の勢力図に変化しており圧倒的に襲撃者の方が不利な筈なのに【パラサイドール】側が押されており一人、また一人と光刃に沈んでいく光景が広がるが彼らにとっては地獄絵図でしかない。
二体同時に襲いかかるパラサイドールを片方は光刃の錆にしてもう片方をいつの間にか取り出していた拳銃型のCADが魔法を発動すると襲いかかったパラサイドールは”虚無”へと還っていった。
その魔法を見た一人の男が呟く。
「『
「何?」
酒井大佐が問いかける。
「昨年の横浜事変、並びに今年に入って海軍の秘密研究所を消し去り日本内外からその存在が知られた非公認戦略級魔法師『
「…そういえば聞いたことがある。どこからか現れ大亜連合の軍港に終結した戦艦と司令部を消し去り先の海軍研究所では跡形もなく消し去ったと…まさかあの者が?」
「はい、装備が違っていますが状況から察するに『
そう下士官が告げると酒井は近くにあった台を叩き苛立ちを表した。
「くそっ!…どうしてそんな奴が高校の大会ごときに乱入をしてくるのだ…!」
◆ ◆ ◆
(このまま行けば順当だな…達也がこっちに来るまでになんとかしたいけど…。)
十二体目のパラサイドールをガラクタに早変わりさせてタイムリミットを確認すると女子グループが出発するまで残り十分、言ったところだろうと考え事をしながら突き進むと声を掛けられる。
外からではなく内側からだ。
『やれやれ…久々の休眠から目覚めたと思えばなんとも手応えのない連中だ。これでは我の相手には相応しくない。これでは我を手にしたものを呪い殺していた方がましだったか。』
『久々に解放してやったんだ。感謝しろよ《グラム》』
武器と話している…訳ではなくテレパスのようなもので通信しているだけなので声は発していない。
『ふん、よくいう。あの大会の後に戻ると言い張ってクローディア女史や綺凛殿を泣かせたのは何処の誰だったか…。』
『うるせえ…へし折るぞてめぇ…!』
ミシミシ、と柄部分が悲鳴をあげると脳内に語り掛けてくる。
『あっやめろぉ!!我を殺すつもりか!』
『そんなんで死ぬタマかお前。』
言い争う二人?は口論を交わしながら突き進む。
『ふぅ……しかし、クローディア女史と綺凛殿もお前の帰りを待っているのだぞ?良いのか?』
『…俺はあの世界の住人じゃない、ここが帰る世界なんだ。…それに俺はあいつらに答えられる人間じゃない。』
『…そうか。で、あれば少し働くとするか。』
手にした武器が紫電を景気よく弾かせたのはやる気を見せたからか分からないが。
駆け抜けると目の間には残り四体のパラサイドールの姿が。
襲撃者は仕事を終えるために勢いよく飛び込んだ。
◆ ◆ ◆
(うおっ!?)
切りかかろうとしたその瞬間に目の前に拳大の砲弾が飛んできていることに気がついて片手に持ったCADで『
一息つく前に今度は加重系統の『圧斬り』が飛んできているのを確認し手にした大剣で切り飛ばす。
攻撃に移ろうとした襲撃者に反撃の隙を与えないつもりなのか別の一体が両手に大型コンバットナイフを手に襲いかかる。
その斬撃は十分早い。
並みの魔法師であれば反撃する間もなく切り落とされ心臓を一刺しされていただろうが”予測”していた。
その攻撃を回避し大剣の腹で押して雷でダメージを与える。
態勢を崩したコンバットナイフを持ったドールを始末するために武器を構えるが想定外のことが起きた。
(なんだと?)
いつの間にか四体目が出現し魔法障壁を展開し弾き飛ばされてしまう。
そのため仕留めることが出来ずに四体は合流しまるでスーパー戦隊のフォーメーションのように陣取る。
(こいつらはさっきの連中みたいに一筋縄ではいかなさそうだ。)
目の間に出現した思わぬ強敵に武器を構え打開策を模索しながら突撃した。
◆ ◆ ◆
「良いぞ!プライム・フォー!そのままやっておしまいなさい!」
九島の移動ラボでは、パラサイドールの研究主任が画面に映る最後の四体のパラサイドールを見て『
「そこです!切り裂いてしまいなさい!」
突然興奮した患者…ではなく興奮した研究主任に遠慮がちに近くにいた部下から声をかけられていた。
「あの…主任。殺してはならない、というご命令では?」
「何をいっているんです?あの魔法師は未来を読み取るように攻撃を避けているではありませんか!?それこそ殺す気で攻撃をしなければ生け捕りにすることすら不可能ですよ」
モニターを目で捉えたまま狂気的な感情が籠った口調で部下に返答し取りつく島などなかった。
◆ ◆ ◆
(くっ…流石に未来予知の使いすぎか…頭が痛てぇ…!)
頭に響くはまるで至近距離で銅鑼を叩かれているような重低音の頭痛。
《
限界ギリギリで使用をしていたが限界が近いことを悟った襲撃者は解除し身体能力で回避しようにも向こうの連携が邪魔だった。
どうしたもんかな、と思っている矢先に今度はピクシーの言葉が入ってくる。
『マスター右です!』
ピクシーの咄嗟の声に反応するように身体を捻ると肩の部分を削るように砲弾が飛んでいく。
『再装填まで五十秒。右から斬撃が来ます!右へ1メートル回避を。』
言われた通りに避けると圧斬りは真横を通りすぎている。
『ピクシー!敵の攻撃が分かるのか?』
ナイフを持った高速移動してくるパラサイドールを柄頭で殴り付け想子を纏わせた蹴りを食らわせ吹き飛ばす。
『砲弾が来ます!狙いは頭部!…はい。私には彼女達の会話が聞こえます。』
『聞こえる?こいつらは独自の行動で動いているんじゃないのか?』
大剣の腹で砲弾を弾き飛ばし向かってくるナイフを持ったパラサイドールが発動していた自己加速術式を《術式解体》で無力化して拳をぶつけようとしたが目の前に障壁が展開て阻まれる。
『その四体は常時思考を交換しながら戦闘をしています。』
『ピクシー、お前がいてくれてよかったと心から本当に思うわ。その会話を俺に中継してくれ。』
『……///お任せください。私がマスターの目と耳になります。』
心なしか機械でありながら頬を赤く染めているような幻視を襲撃者の脳裏に浮かんだ。
ピクシーにより相手の思考が筒抜けになったプライム・フォー達はまさに”まな板の上の鯉”状態だった。
まず最初に突撃してきた二刀ナイフ使いのパラサイドールの攻撃は右部分を集中して狙ってきていたのが判明したため《次元解放》を使い反対側に回り込み大剣でその身体を一刀二閃が煌めき四等分にされてそのコンビネーションは文字通り崩れ去った。
中に封じられているパラサイトが”消滅”したのは手にした武装に”破壊・消滅”の概念が付与されているからだ。
自らに加速術式を発動し咄嗟に展開された障壁を《次元虚空霧散》で消滅、圧斬りを発動させようとしていた遠距離攻撃タイプの持っていたナイフの手を持ち胴体にCADを押し当て上半身を文字通り”吹き飛ばす”。
後方に移動していた砲弾を発射しようとしていた個体に向けて”何もないところ”よりビームが発射され射出された砲弾ごと消し炭にする。
残った防御役の障壁魔法を張る個体に向けて加速する。
眼前に強固な壁が数十枚、十文字の《ファランクス》のような障壁が行く手を阻むがその程度ではこの襲撃者を止められない。
『
起動式が走り次の瞬間に”左手の大剣”が右手に鏡映しのように左手に装備され紫電が迸る。
『終わりだ。』
剣閃が煌めく。
一瞬にして障壁は紙屑のように破壊され残った最後の個体は加速術式によって接近を許し切り刻まれ地に伏したのだった。
静寂が戻った生い茂った森には襲撃者しか立っていない。
『マスター!おめでとうございます!』
『ああ。ありがとうピクシーよくやったな。』
『もったいないお言葉…ピクシーは嬉しく思いますっ。』
もう人間にしか聞こえないピクシーの感情の現しに困惑を覚えるが彼女がいなければこうもいかなかっただろう。
『マスター急いでください。もうすぐ女子の【スティープルチェース】が始まります。』
『分かった、離脱する。…でもその前にやっておくことがある。』
通信を切ってその場から目的の場所へ《次元解放》で跳躍する。
最後の一仕事を”彼ら”にやって貰わなければ。
◆ ◆ ◆
女子の【スティープルチェース・クロスカントリー】が始まると同時刻。
酒井大佐のグループは大急ぎで指令室・分棟を後にしていた。
自分達があのパラサイドールを圧倒した魔法師…『
彼らが司令室・分棟から駐車場に到着した瞬間に移動車両を護衛していた兵士が全員崩れ落ちた。
周囲に明確な殺気が自分達にぶつけられていることを理解してしまいそこから動けなくなった。
「こ、これは…!」
次の瞬間。
周囲を押し潰すような重力が発生し酒井大佐は思わず膝を就いた。
そして何もないところの空間の裂け目が開き人影が現れる。
ボロ布を纏った漆黒の体躯、その四肢は金属質な機械で構成されており酒井大佐達を射貫くツインアイが怒りを現しているようにすら錯覚する。
「お、お前は…!?」
「『
魔法を発していないのにも関わらず重苦しい空気が支配し動けない。
執行者が口?を開いた。
『お前達にはやって貰うことがある。なに、死ぬよりはマシだ。当方の慈悲、感涙に咽び泣け。』
手を翳す。
やけに芝居掛かった機械音声、その瞬間に酒井大佐の意識は漆黒の闇に落ちていった。
◆ ◆ ◆
少し時間が遡る。
「これは…どういうことだ?」
深雪達が競技中、達也はムーバル・スーツを着用しパラサイドールの破壊を目論んでいたのだが…。
現場に到着した達也だったが現場にはバラバラにされたパラサイドールの残骸が転がっており情報にあった”十六体”が転がっている。
「一校天幕に八幡がいた筈なのに…一体誰が…?八幡と『黒衣の執行者』は関係がないのか?」
自分の中でイコールとなっていた存在の仮定が崩れ去ってしまった。
確かにこの場所に来るまでに天幕で椅子に座って中継画面をみていた八幡の姿を確認している為に余計にだ。
目的は達成されてしまっているのでここに留まる理由は達也にはなかった。
踵を返してムーバル・スーツを返還し一校の天幕に戻ってくるとやはり先程確認した場所に腕を組んでいる位置は変わっていたが確かにその場にいた。
達也はその場所にいるのに無性に納得できていなかった。
肩透かしを食らったような、鳩が豆鉄砲を食らったような…達也はそんな感じを覚えていた。
◆ ◆ ◆
「ふぅ…なんとか勘ぐられずに済んだかな。姉さんに協力を依頼していたとはいえ俺が『
達也が居なくなったタイミングで《偽装工作》…ではなく次元解放の応用《
そもそも《グレイプニル》の魔法演算領域は同質の物を搭載しているので魔法的な探りをいれたり覗いたところでバレることは無い。
ただまぁ、一つ欠点を上げるとすると俺と動作が違うの良く見るとバレる、ということか。
「それに”後始末”も済んだし…これでなんとかなって欲しいもんだけどな。」
そんなことを思いつつ深雪達の競技をみていると達也が戻ってきており俺を驚いた表情で見ていた。
恐らくは俺がこの場に居ることに驚いていたんだろうな…悪いな達也今俺の隠し事を知られるわけにはいかないんだわ。
お前が自分で”四葉の関係者”と名乗ってくれるのならまぁ…考えなくもないが。
そんなことを考えていると午後、男子の部が始まるので準備することにした。
結果として【スティープルチェース・クロスカントリー】は女子が深雪、男子は一条の優勝で終わった。
俺も参加していたがつかれていたので一条の後を気配を消して追従したので楽なゴールで二位に就いた。
そして総合優勝は一校、途中で苦戦したこともあって一校選手団のはしゃぎ様は去年以上のものだ。
最後の最後で一条がスティープルチェースで優勝したことで三校は満足げな表情を浮かべて後夜祭に参加し自信をもって深雪をダンスに誘っている。
そんな清々しい表情をした一条の気分に当てられて俺たちの薦めもあって一緒に踊っている。
俺も香澄、泉美、なんでか小町、雫、ほのか、戻ってきた深雪、三校の愛梨といろはと踊り疲れ果てていた。
「お客様~?大丈夫ですか」
「…エリカか。水くれ。」
全員を相手にして椅子に座っているとメイド服姿のエリカがお盆にミネラルウォーターを持って隣に立っていた。
「はい、どーぞ。」
「さんきゅ………んぐっ、んぐっ、んぐっ……ぷはっ…。」
疲労が洗い流されていく…わきゃないが喉は潤った。
飲み干したペットボトルを捨てようと立ち上がるとエリカからトゲのある言葉が飛んできた。
「…随分と大人気じゃない?」
「何処がだよ…なんか刺々しくない?」
「べっつにー?なんでもないわよ?」
…明らかに不機嫌になっているエリカを見て困惑しているといつの間にか来ていた小町に手を引っ張られ移動した。
「…ちょっとお兄ちゃん。」
「なに小町ちゃん?」
「なに?じゃないよ全く…お兄ちゃんってモテるくせに女心に疎いよね…心配だよ。」
「女心と数学は理解できないだろ…。」
「なんでそれなのに座学できる…ってそれはどうでも良いから。エリカさん踊りに誘わないと。」
「?それと不機嫌の何が関係あるんだ。」
疑問を浮かべていると小町に蹴られた。痛い。
「寝ぼけたこというとお婆ちゃんに教わった技叩き込んじゃうよ♪」
「わーったよ…たくっ。」
小町から離れて先程の場所に手持ちぶさたに待つエリカ。
「なに?私仕事で忙しいのですけどー?…あっ。」
他の男が声を掛ける前に俺はエリカの手をそっと握り率直な感想を述べる。
「不肖この七草八幡と踊ってくださいませんか。可愛いメイドさん?」
「…///お、踊ってあげなくもないわよ?」
顔を赤らめて俺の手を握り返してくれるエリカ。
その表情は年頃の可愛らしい女の子の表情を浮かべている。
「それじゃあ一曲。」
「きゃっ、ちょ、ちょっと八幡っ」
エリカの手を取って敢えてフロア中央に引っ張り出して優雅に踊る。
なんだなんだと視線が集中するが無視する。
「は、恥ずかしいんですけど…!」
「今さらだろ?」
「もう…///」
それなりに勉強してきた…というか回数をこなせば慣れるものだ。
制服姿の俺とメイド服姿のエリカをリードしてダンスを続けると暗かった表情は普段通りのエリカになっていた。
それはさておいて俺が先程酒井大佐を捕らえて”下ごしらえ”をしたのはとある情報を『記憶読込』で改竄するためだった。
俺が改竄した情報、それは…。
『酒井大佐が九島家当主をそそのかして協力させて”九島烈”を陥れるために烈の名前を持ち出して未来ある魔法科高生の九校戦を舞台に自立魔法兵器の実験を推進しておりました』という自白の音声データ、そして佐織達を使って改竄した『国防軍の対大亜連合推進派が行った自立魔法兵器』の実験データ二種だ。
一応全部”国防軍の対大亜連合過激派の酒井大佐”達が独自に行った、ということに仕立て上げた。
匿名で一○一旅団の佐伯少将の机に場所を調べて直接物理的に《次元解放》で置いてきたので今ごろ活用してくれていることだろう。
九校戦を舞台にした裏で暗躍してた連中の目論見を潰すことに成功した。
これで老師が責任追及をされることもないだろう。
九島家がもしかすると責任追及される可能性があるかもしれないが…些細な問題かもしれないが…。
”老師”の権力が健在、ということが大切だ。最悪こっちの陣営に引き込んでしまうか?
一先ず難しいことを無視して俺はエリカとダンスしながら後夜祭を過ごしていた。